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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119670
(43)【公開日】2023-08-29
(54)【発明の名称】中子製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22C 9/10 20060101AFI20230822BHJP
   B22C 1/10 20060101ALN20230822BHJP
   B22C 1/00 20060101ALN20230822BHJP
【FI】
B22C9/10 E
B22C1/10 D
B22C1/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022022650
(22)【出願日】2022-02-17
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】508033225
【氏名又は名称】ウインズテック株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000117102
【氏名又は名称】旭有機材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154014
【弁理士】
【氏名又は名称】正木 裕士
(74)【代理人】
【識別番号】100154520
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 祐子
(72)【発明者】
【氏名】永延 将明
(72)【発明者】
【氏名】案納 亨介
(72)【発明者】
【氏名】平山 博
(72)【発明者】
【氏名】高間 智宏
(72)【発明者】
【氏名】浦 哲也
【テーマコード(参考)】
4E092
4E093
【Fターム(参考)】
4E092AA02
4E092AA03
4E092AA04
4E092AA05
4E092AA06
4E092AA07
4E092AA09
4E092AA45
4E092AA51
4E092AA52
4E092AA53
4E092AA55
4E092BA20
4E092CA02
4E092EA02
4E092GA10
4E093QA01
4E093QB01
4E093QB07
4E093QC10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】品質を向上させることができると共に、任意の形状を製造することができ、さらには、一般的な中子製造装置を使用することができる中子製造方法を提供する。
【解決手段】第1層と第2層の少なくとも2層で構成される中子製造方法であって、
第1層の中子10を製造した後、該第1層の中子10の外周面に第2層の中子11を製造し、
第1層の中子10の外周面には、第2層の中子11との密着性を高める形状が施され、
第1層の中子10の外周面に第2層の中子11を製造するにあたって、第2層用中子造形用金型3に第1層の中子10を保持させた状態で、第2層の中子11が製造され、
第1層の中子10と、第2層の中子11との断面積の比率が、第2層の中子11の断面積/第1層の中子10の断面積≦1.0である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1層と第2層の少なくとも2層で構成される中子製造方法であって、
前記第1層の中子を製造した後、該第1層の中子の外周面に前記第2層の中子を製造し、
前記第1層の中子の外周面には、前記第2層の中子との密着性を高める形状が施され、
前記第1層の中子の外周面に前記第2層の中子を製造するにあたって、所定の金型に該第1層の中子を保持させた状態で、前記第2層の中子が製造され、
前記第1層の中子と、前記第2層の中子との断面積の比率が、前記第2層の中子の断面積/前記第1層の中子の断面積≦1.0である中子製造方法。
【請求項2】
第1層と第2層の少なくとも2層で構成される中子製造方法であって、
前記第1層の中子を製造した後、該第1層の中子の外周面を塗型し、該塗型した第1層の中子の外周面に前記第2層の中子を製造し、
前記塗型した第1層の中子の外周面には、前記第2層の中子との密着性を高める形状が施され、
前記塗型した第1層の中子の外周面に前記第2層の中子を製造するにあたって、所定の金型に該第1層の中子を保持させた状態で、前記第2層の中子が製造され、
前記第1層の中子と、前記第2層の中子との断面積の比率が、前記第2層の中子の断面積/前記第1層の中子の断面積≦1.0である中子製造方法。
【請求項3】
前記密着性を高める形状は、凹部、凸部、凹条部、又は、凸条部の何れかを少なくとも1種含んでなる請求項1又は2に記載の中子製造方法。
【請求項4】
前記第1層の中子は、中実状又は中空状の何れかに形成されてなる請求項1~3の何れか1項に記載の中子製造方法。
【請求項5】
前記第1層の中子の外周面の一部又は全部を覆うように、前記第2層の中子が形成されてなる請求項1に記載の中子製造方法。
【請求項6】
前記塗型した第1層の中子の外周面の一部又は全部を覆うように、前記第2層の中子が形成されてなる請求項2に記載の中子製造方法。
【請求項7】
前記第1層の中子の外周面に前記第2層の中子を製造するにあたって、該第1層の中子を事前に、常温以上300℃以下の温度範囲にて加温してなる請求項1に記載の中子製造方法。
【請求項8】
前記塗型した第1層の中子の外周面に前記第2層の中子を製造するにあたって、該第1層の中子を事前に、常温以上300℃以下の温度範囲にて加温してなる請求項2に記載の中子製造方法。
【請求項9】
前記所定の金型は、前記第1層の中子を固定保持することができる請求項1に記載の中子製造方法。
【請求項10】
前記所定の金型は、前記塗型した第1層の中子を固定保持することができる請求項2に記載の中子製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中子製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の中子製造方法として、特許文献1に記載のような中子製造装置が知られている。この中子製造装置は、粒度指数の異なる熱硬化性樹脂被覆砂で形成された外層と内層とからなり、外層が内層より大きい粒度指数で形成されてなる中子を製造するための中子製造装置であって、水平回転軸線周りに回転可能な一対の金型と、金型を所要温度に加熱する加熱手段と、金型の上方で金型接離方向と同方向に移動可能な可動枠と、可動枠の上部側に可動枠の移動方向前後に一定ピッチで設けられた外層用砂タンク及び内層用砂タンクと、両砂タンクの夫々真下の砂受給位置から両金型の真上のブロー位置に対して進退可能な外層用ブローユニット及び内層用ブローユニットとからなるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5042055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような中子製造装置は、金型の成形室内に外層用熱硬化性樹脂被覆砂を充填した後、金型反転駆動手段により開口が下を向くように反転して、未硬化の外層用熱硬化性樹脂被覆砂を開口から下方へ排出し、それよって、金型の成形室内に中子の外層を形成するようにしている。しかしながら、このように、金型を反転させて未硬化の外層用熱硬化性樹脂被覆砂を排出する際、上手く排出されず、もって、品質が低下する可能性があるという問題があった。さらには、金型を反転させて砂を排出させる必要があることから、中子の形状が制約されるという問題があった。そしてさらには、一般的な中子製造装置は使用できないという問題もあった。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑み、品質を向上させることができると共に、任意の形状を製造することができ、さらには、一般的な中子製造装置を使用することができる中子製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記本発明の目的は、以下の手段によって達成される。なお、括弧内は、後述する実施形態の参照符号を付したものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0007】
請求項1の発明によれば、第1層と第2層の少なくとも2層で構成される中子製造方法であって、
前記第1層の中子(10)を製造した後、該第1層の中子(10)の外周面(10a)に前記第2層の中子(11)を製造し、
前記第1層の中子(10)の外周面(10a)には、前記第2層の中子(11)との密着性を高める形状が施され、
前記第1層の中子(10)の外周面(10a)に前記第2層の中子(11)を製造するにあたって、所定の金型(第2層用中子造形用金型3)に該第1層の中子(10)を保持させた状態で、前記第2層の中子(11)が製造され、
前記第1層の中子(10)と、前記第2層の中子(11)との断面積の比率が、前記第2層の中子(11)の断面積/前記第1層の中子(10)の断面積≦1.0であることを特徴としている。
【0008】
請求項2の発明によれば、第1層と第2層の少なくとも2層で構成される中子製造方法であって、
前記第1層の中子(10)を製造した後、該第1層の中子(10)の外周面(10a)を塗型し(図5参照)、該塗型した第1層の中子(10)の外周面(10a)に前記第2層の中子(11)を製造し、
前記塗型した第1層の中子(10)の外周面(10a)には、前記第2層の中子(11)との密着性を高める形状が施され、
前記塗型した第1層の中子(10)の外周面(10a)に前記第2層の中子(11)を製造するにあたって、所定の金型(第2層用中子造形用金型3)に該第1層の中子(10)を保持させた状態で、前記第2層の中子(11)が製造され、
前記第1層の中子(10)と、前記第2層の中子(11)との断面積の比率が、前記第2層の中子(11)の断面積/前記第1層の中子(10)の断面積≦1.0であることを特徴としている。
【0009】
請求項3の発明によれば、上記請求項1又は2に記載の中子製造方法において、前記密着性を高める形状は、凹部、凸部、凹条部、又は、凸条部の何れかを少なくとも1種含んでなることを特徴としている。
【0010】
請求項4の発明によれば、上記請求項1~3の何れか1項に記載の中子製造方法において、前記第1層の中子(10)は、中実状又は中空状の何れかに形成されてなることを特徴としている。
【0011】
請求項5の発明によれば、上記請求項1に記載の中子製造方法において、前記第1層の中子(10)の外周面(10a)の一部又は全部を覆うように、前記第2層の中子(11)が形成されてなることを特徴としている。
【0012】
請求項6の発明によれば、上記請求項2に記載の中子製造方法において、前記塗型した第1層の中子(10)の外周面(10a)の一部又は全部を覆うように、前記第2層の中子(11)が形成されてなることを特徴としている。
【0013】
請求項7の発明によれば、上記請求項1に記載の中子製造方法において、前記第1層の中子(10)の外周面(10a)に前記第2層の中子(11)を製造するにあたって、該第1層の中子(10)を事前に、常温以上300℃以下の温度範囲にて加温してなることを特徴としている。
【0014】
請求項8の発明によれば、上記請求項2に記載の中子製造方法において、前記塗型した第1層の中子(10)の外周面(10a)に前記第2層の中子(11)を製造するにあたって、該第1層の中子(10)を事前に、常温以上300℃以下の温度範囲にて加温してなることを特徴としている。
【0015】
請求項9の発明によれば、上記請求項1に記載の中子製造方法において、前記所定の金型(第2層用中子造形用金型3)は、前記第1層の中子(10)を固定保持することができることを特徴としている。
【0016】
請求項10の発明によれば、上記請求項2に記載の中子製造方法において、前記所定の金型(第2層用中子造形用金型3)は、前記塗型した第1層の中子(10)を固定保持することができることを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
次に、本発明の効果について、図面の参照符号を付して説明する。なお、括弧内は、後述する実施形態の参照符号を付したものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0018】
請求項1及び2に係る発明によれば、従来のように金型を反転させて砂を排出させる必要がないから、中子の品質を向上させることができる。また、従来のように中子の形状が制約されることがないから、任意の形状を製造することができる。そしてさらには、従来のような中子製造装置は不要であるから、一般的な中子製造装置を使用することができる。
【0019】
一方、密着性を高める形状は、請求項3に記載のように、凹部、凸部、凹条部、又は、凸条部の何れかを少なくとも1種含んでなることが好適で、第1層の中子(10)は、請求項4に記載のように、中実状又は中空状の何れかに形成されていることが好適である。
【0020】
また、請求項5に記載のように、第1層の中子(10)の外周面(10a)の一部又は全部を覆うように、第2層の中子(11)が形成されるのが好適で、請求項6に記載のように、塗型した第1層の中子(10)の外周面(10a)の一部又は全部を覆うように、第2層の中子(11)が形成されるのが好適である。
【0021】
一方、請求項7及び8に記載のように、第1層の中子(10)を事前に、常温以上300℃以下の温度範囲にて加温しておけば、第2層の中子(11)を製造する製造時間を短縮させることができる。
【0022】
また、請求項9及び10に記載のようにすれば、第1層の中子(10)の位置がずれて、第2層の中子(11)がうまく製造できなくなる可能性があるという問題を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態に係る中子製造方法の工程を説明する説明図である。
図2】同実施形態に係る第2層用中子造形用金型に第1層の中子を固定した状態を示す縦断面図である。
図3】同実施形態に係る第2層用中子造形用金型に第1層の中子を固定した状態を示す半縦断面図である。
図4】他の実施形態に係る第2層用中子造形用金型に第1層の中子を固定した状態を示す分解斜視図である。
図5】他の実施形態に係る2層の中子を示す一部縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る中子製造方法の一実施形態を、図面を参照して具体的に説明する。なお、以下の説明において、上下左右の方向を示す場合は、図示正面から見た場合の上下左右をいうものとする。
【0025】
本実施形態に係る中子製造方法は、主として、アルミダイカスト用砂型中子の製造方法であって、図1に示すような工程を経て行われる。具体的には、図1(a)に示すように、まず、第1層用の中子を造形する第1層用中子造形用金型1を用意する。この第1層用中子造形用金型1は、図示では、矩形状に形成されており、半割状に分割可能であって、図1(a)では、一対の金型1a,1bが接合した状態を示している。そして、このような第1層用中子造形用金型1には、上面2aが開口され下面2bが閉止された円筒状の成形室2が形成されている。しかして、このように形成された成形室2内に上面2aから第1層用鋳物砂(例えば、レジンコーテッドサンドなど)をブローする。これによって、図1(b)に示すように、第1層の中子10(図示では、中実円形状を例示している)が製造されることとなる。
【0026】
次いで、図1(b)に示すように製造された第1層の中子10は、図1(c)に示すように、第1層用中子造形用金型1より取り出される。なお、この取り出しにあたっては、第1層用中子造形用金型1、すなわち、一対の金型1a,1bを分離することによって、第1層の中子10を取り出すようにすれば良い。
【0027】
次いで、図1(d)に示すように、第2層用の中子を造形する第2層用中子造形用金型3を用意する。この第2層用中子造形用金型3は、図示では、矩形状に形成されており、半割状に分割可能であって、図1(d)では、一対の金型3a,3bが接合した状態を示している。そして、このような第2層用中子造形用金型3には、上面4aが開口され下面4bが閉止された円筒状の成形室4が形成されている。しかして、この成形室4内には、第1層の中子10が載置され、成形室4内に上面4aから第2層用鋳物砂(例えば、レジンコーテッドサンドなど)がブローされる。これによって、図1(e)に示すように、第1層の中子10の外周面10aを覆うように第2層の中子11が製造されることとなる。
【0028】
ところで、このような成形室4内に、第1層の中子10を載置した際、第1層の中子10の姿勢が保持できるように、成形室4内に、第1層の中子10が固定できるようになっている。具体例を用いて説明すると、図2に示すように、第2層用中子造形用金型3は、例えば、第1金型3Aと、第2金型3Bと、で構成されており、第1金型3Aは、半割状に分割可能である。そして、第2金型3Bは、第1金型3Aの下面3Aaより第1金型3Aに挿入可能なものであって、縦断面視凸状に形成されており、上面3Baには、複数の凹孔3Ba1(図示では、2個)が形成されている。
【0029】
一方、第1層の中子10は、正面視矩形状の本体10Aと、本体10Aの下面に一体的に設けられている一対の脚部10Bと、で構成されている。この場合、本体10Aは、成形室4内に設置され、一対の脚部10Bは、成形室4の下面4bに設けられている複数の凹孔3Ba1内に挿入される。そして、このような第1層の中子10には、図3に示すように、本体10Aの外周面10Aa一側面に、一対の固定用孔10Aa1が設けられており、この固定用孔10Aa1内に、図3に示すように、第2層用中子造形用金型3(第1金型3A)内に設けられている固定支持部材5の固定ピン5bが挿入されるようになっている。すなわち、この固定支持部材5は、図3に示すように、矩形状の支持部5aを有し、この支持部5aの両側部に、一対の固定ピン5bが内向き方向に突出して設けられている。しかして、この一対の固定ピン5bが、一対の固定用孔10Aa1内にそれぞれ挿入されることによって、第1層の中子10は、成形室4内に姿勢が保持された状態で固定されることとなる。しかるに、このようにすれば、成形室4内に上面4aから第2層用鋳物砂(例えば、レジンコーテッドサンドなど)をブローした際、第1層の中子10の姿勢を保持させ続けることが可能となる。それゆえ、成形室4内に上面4aから第2層用鋳物砂をブローした際、第1層の中子10の位置がずれて、第2層の中子11がうまく製造できなくなる可能性があるという問題を解決することができる。
【0030】
一方、成形室4内に、第1層の中子10を固定するにあたっては、上記説明した方法に限らず、図4に示すような方法でも良い。すなわち、図4に示すように、第1層の中子10が、本体10Aと、本体10Aの下面に一体的に設けられている一対の脚部10Bと、本体10Aの両側面に外方向に一体的に設けられている矩形状の幅木10Cと、で構成されていた場合、第2層用中子造形用金型3(第1金型3A)内には、この幅木10Cを固定支持する固定支持部6が設けられることとなる。すなわち、この固定支持部6は、幅木10Cの形状と略同一に形成された凹状に形成されており、この固定支持部6内に幅木10Cが挿入されることによって、幅木10Cが固定支持部6にて固定支持されることとなる。しかして、幅木10Cが固定支持部6にて固定支持されることによって、第1層の中子10は、成形室4内に姿勢が保持された状態で固定されることとなる。それゆえ、このようにしても、成形室4内に、第1層の中子10を固定することが可能となる。なお、幅木10Cは、固定支持部6内で固定支持されることから、幅木10Cに第2層用鋳物砂がブローされることはない。それゆえ、幅木10Cの外周面を、第2層の中子11が覆うことはない。
【0031】
かくして、このようにして、図1(e)に示すように、第1層の中子10の外周面10aを覆うように第2層の中子11が製造されると、図1(f)に示すように、第2層用中子造形用金型3より取り出される。なお、この取り出しにあたっては、第2層用中子造形用金型3、すなわち、一対の金型3a,3bを分離することによって、第1層の中子10の外周面10aを覆うように製造された第2層の中子11を取り出すようにすれば良い。
【0032】
かくして、このような製造工程を経ることにより、第1層と第2層の少なくとも2層で構成される中子を製造することができる。なお、本実施形態においては、2層しか例示していないが、同様の方法で、第3層以上製造することも可能である。
【0033】
ところで、第1層の中子10の外周面10aには、第2層の中子11との密着性を高めるため、凹部、凸部、凹条部、又は、凸条部の何れかを少なくとも1種含んだ形状が施されている。すなわち、第1層用中子造形用金型1の成形室2内に、凹部、凸部、凹条部、又は、凸条部の何れかを少なくとも1種含んだ形状を形成しておくか、或いは、図1(c)に示すように、第1層用中子造形用金型1より第1層の中子10を取り出した後、ヤスリ等を用いての後加工、あるいは、機械的又は化学的に表面を荒らす処理等によって、凹部、凸部、凹条部、又は、凸条部の何れかを少なくとも1種含んだ形状を形成するようにしておけば良い。これにより、第1層の中子10の外周面10aには、凹部、凸部、凹条部、又は、凸条部の何れかを少なくとも1種含んだ形状が施されることとなるから、第2層の中子11との密着性を高めることができる。なお、第1層の中子10の外周面10aに形状を施す方法は、目的を果たすためであれば、上記記載の方法に限らずどのような方法でも良い。
【0034】
また、上記説明した第1層と第2層の少なくとも2層で構成される中子の第1層の中子10の良好な崩壊性を確保するために、第1層の中子10と、第2層の中子11との断面積の比率が、第2層の中子11の断面積/第1層の中子10の断面積≦1.0となるのが好ましい。すなわち、第1層の中子10の断面積が第2層の中子11の断面積より大きければ、第2層の中子11に比べ、第1層の中子10は、崩壊し易くなる。そのため、第1層の中子10と、第2層の中子11との断面積の比率が、第2層の中子11の断面積/第1層の中子10の断面積≦1.0となるのが好ましい。なお、本明細書における断面積とは、横断面、縦断面など様々な断面を含む断面の断面積をいうものである。
【0035】
ところで、第2層用鋳物砂は、第1層用鋳物砂よりも大きい粒度指数で形成されている。
【0036】
第2層用鋳物砂は、注湯に耐え得る強度を必要とするため、第1層用鋳物砂より相対的に高強度、具体的には曲げ強度が30Kgf/cm以上に設計される。そして、第2層用鋳物砂を構成する熱硬化性樹脂の使用量としては、所要強度及びその他の鋳型特性(低熱膨張性など)を考慮して選択された耐火性粒子(種類及び粒度)及び熱硬化性樹脂(種類)に応じて決定されるが、一般的には耐火性粒子に対し1~10重量%の範囲であり、更に製造し易さ及び品質の安定さを考慮すると、好ましくは2~6重量%の範囲である。
【0037】
また、第2層用鋳物砂の粒度指数は、一般的には80以上、更に、製造し易さを考慮すると、好ましくは90~160の範囲である。なお、粒度指数が大きいことは細粒を意味し、粒度指数が小さいことは粗粒を意味する。
【0038】
また、第2層用鋳物砂としては、従来から使用されている鋳物砂であれば、特に限定されるものではないが、第2層の薄肉化及び第1層の緊密接合化の観点から、その硬化時間80秒以上、特に90秒以上である遅硬性熱硬化性樹脂被覆砂が好適である。なお、硬化時間とは、250℃熱板上においた環状金型(50mmΦ×5mm)内に第2層用鋳物砂を充満させた時からその表面が針で刺さらなくなるまでの時間をいうものである。
【0039】
一方、第1層用鋳物砂としては、鋳型に良好な崩壊性を付与するため、第2層用鋳物砂より相対的に低強度、具体的には曲げ強度が30Kgf/cm 未満、好ましくは20Kgf/cm以下に設定される。そして、第1層用鋳物砂を構成する熱硬化性樹脂の使用量は、鋳型の崩壊性やガス欠陥(発生量の抑制)を考慮して選択された耐火性粒子(種類及び粒度)及び熱硬化性樹脂(種類)に応じて決定されるが、一般的には耐火性粒子に対して2重量%未満であり、またその下限は第2層の補強効果の観点から0.5重量%程度である。また、第1層用鋳物砂は、ガス欠陥(高通気度化)の観点から、一般には第2層用鋳物砂より小さい粒度指数(80未満)に設定されるが、好ましくは、20~50の範囲である。
【0040】
かくして、このような、第1層用鋳物砂及び第2層用鋳物砂は、従来慣用の混練被覆法、例えば、ドライホットコート法、セミホットコート法、コールドコート法及び粉末溶剤法によって耐火性粒子の表面に熱硬化性樹脂を溶融被覆及び/又は付着して製造することができる。中でも、ドライホットコート法によれば生産上及び品質上有利に製造することができる。また、第1層用鋳物砂及び第2層用鋳物砂には必要に応じて各種の添加剤、例えば、鋳型の崩壊剤、硬化促進剤、固結防止剤、離型剤、消臭剤、ベンガラ、砂鉄、黒鉛等を配合しても差し支えない。
【0041】
一方、耐火性粒子は、鋳型の基体をなすものであって、鋳造に耐え得る耐火性と鋳型形成に適した粒径を有する粒子であれば、その種類については特に限定されない。このような耐火性粒子の例としては、ケイ砂、オリビンサンド、ジルコンサンド、クロマイトサンド、アルミナサンド等の特殊砂、フェロクロム系スラグ、NEサンド(商品名)のようなフェロニッケル系スラグ、転炉スラグ等のスラグ系粒子、ナイガイセラビーズ♯1700(商品名)のような多孔質粒子、砂鉄、カーボン粒子、ガラス粒子、陶磁器粒子及びこれらの再生粒子又はダストが挙げられる。これらは1種で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
また、熱硬化性樹脂は、架橋剤の存在下又は非存在下で熱硬化して耐火性粒子を結合保持する結合剤機能を有するものであれば、その種類については特に限定されない。このような熱硬化性樹脂の例としては、例えばフェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂が挙げられる。これらは1種又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0043】
しかして、以上説明した本実施形態によれば、従来のように金型を反転させて砂を排出させる必要がないから、中子の品質を向上させることができる。また、従来のように中子の形状が制約されることがないから、任意の形状を製造することができる。そしてさらには、従来のような中子製造装置は不要であるから、一般的な中子製造装置を使用することができる。
【0044】
一方、図1(c)に示すように第1層の中子10を製造した後、常温以上300℃以下の温度範囲にて第1層の中子10を加温しても良い。このようにすれば、第1層の中子10の外周面10aを覆うように第2層の中子11を製造する際、第2層の中子11が第1層の中子10の外周面10aからの熱伝達によって硬化促進を図ることが可能となり、もって、製造時間を短縮させることができる。なお、ここでの加温温度は、常温以上300℃以下が好ましい。常温未満であると、硬化促進を得ることが難しくなり、また、300℃よりも高くなると、熱硬化性樹脂の劣化によって、強度等の特性の低下を引き起こす可能性があるためである。
【0045】
なお、本実施形態において示した中子製造方法は、あくまで一例であり、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において種々の変形・変更が可能である。例えば、本実施形態においては、第1層の中子10を中実状に製造する例を示したが、それに限らず、中空状に製造しても良い。
【0046】
また、本実施形態においては、図1では、第1層の中子10の外周面10aを全て覆うように第2層の中子11を製造する例を示したが、それに限らず、第1層の中子10の外周面10aの一部だけを覆うように第2層の中子11を製造するようにしても良い。
【0047】
また、図5に示すように、第1層の中子10の外周面10aに第1層用塗型10Aを施した上で、第1層用塗型10Aを施した第1層の中子10の外周面10aを、第2層の中子11にて覆い、そして、第2層の中子11の外周面11aに第2層用塗型11Aを施すようにしても良い。すなわち、アルミダイカストでは、塗型を施していても鋳造圧力等により砂中子の砂粒間にアルミが差し込む現象が起きやすい。これは、砂中子を通して空気が逃げるため、鋳造圧力が掛かった際にアルミが塗型を押込み易いのではないかと考えられる。そこで、図5に示すように、第1層の中子10の外周面10aにも、第1層用塗型10Aを施すようにすることで、空気の逃げ代を少なくすることができ、もって、上記のような問題を解決することができる。
【0048】
ところで、図5に示すような中子を製造するにあたっては、図1(c)に示すように、第1層の中子10を製造した後、第1層の中子10の外周面10aに第1層用塗型10Aを施すようにする。なお、第1層の中子10の外周面10aには、上記説明したように、第2層の中子11との密着性を高めるため、凹部、凸部、凹条部、又は、凸条部の何れかを少なくとも1種含んだ形状が施されているため、この形状に沿って、第1層の中子10の外周面10aに第1層用塗型10Aが施されることとなる。
【0049】
かくして、外周面10aに第1層用塗型10Aが施された第1層の中子10は、上記説明したように、成形室4内に固定され、成形室4内に上面4aから第2層用鋳物砂がブローされることとなる。これにより、第1層用塗型10Aを施した第1層の中子10の外周面10aを、第2層の中子11にて覆うことができる。そして、その後、第2層の中子11の外周面11aに第2層用塗型11Aを施すようにすれば、図5に示すような中子を製造することができる。なお、本実施形態においては、2層しか例示していないが、同様の方法で、第3層以上製造することも可能である。また、第1層の中子10と、第2層の中子11との断面積の比率は、上記説明した通り、第2層の中子11の断面積/第1層の中子10の断面積≦1.0となるのが好ましい。
【0050】
しかして、このようにしても、従来のように金型を反転させて砂を排出させる必要がないから、中子の品質を向上させることができる。また、従来のように中子の形状が制約されることがないから、任意の形状を製造することができる。そしてさらには、従来のような中子製造装置は不要であるから、一般的な中子製造装置を使用することができる。
【0051】
また、外周面10aに第1層用塗型10Aが施された第1層の中子10は、常温以上300℃以下の温度範囲にて加温されても良い。このようにすれば、外周面10aに第1層用塗型10Aが施された第1層の中子10の外周面10aを覆うように第2層の中子11を製造する際、第2層の中子11が第1層の中子10の外周面10aからの熱伝達によって硬化促進を図ることが可能となり、もって、製造時間を短縮させることができる。なお、ここでの加温温度は、常温以上300℃以下が好ましい。常温未満であると、硬化促進を得ることが難しくなり、また、300℃よりも高くなると、熱硬化性樹脂の劣化によって、強度等の特性の低下を引き起こす可能性があるためである。
【0052】
また、図5では、第1層の中子10の外周面10aを全て覆うように第2層の中子11を製造する例を示したが、それに限らず、第1層の中子10の外周面10aの一部だけを覆うように第2層の中子11を製造するようにしても良い。
【符号の説明】
【0053】
1 第1層用中子造形用金型
3 第2層用中子造形用金型(所定の金型)
10 第1層の中子
10a 外周面
10A 第1層用塗型
11 第2層の中子
11A 第2層用塗型





図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2022-12-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1層と第2層の少なくとも2層で構成される中子製造方法であって、
前記第1層の中子を製造した後、該第1層の中子の外周面に前記第2層の中子を製造し、
前記第1層の中子の外周面には、前記第2層の中子との密着性を高める形状が施され、
前記第1層の中子の外周面に前記第2層の中子を製造するにあたって、所定の金型に該第1層の中子を保持させた状態で、前記第2層の中子が製造されてなる中子製造方法。
【請求項2】
第1層と第2層の少なくとも2層で構成される中子製造方法であって、
前記第1層の中子を製造した後、該第1層の中子の外周面を塗型し、該塗型した第1層の中子の外周面に前記第2層の中子を製造し、
前記塗型した第1層の中子の外周面には、前記第2層の中子との密着性を高める形状が施され、
前記塗型した第1層の中子の外周面に前記第2層の中子を製造するにあたって、所定の金型に該第1層の中子を保持させた状態で、前記第2層の中子が製造されてなる中子製造方法。
【請求項3】
前記密着性を高める形状は、凹部、凸部、凹条部、又は、凸条部の何れかを少なくとも1種含んでなる請求項1又は2に記載の中子製造方法。
【請求項4】
前記第1層の中子は、中実状又は中空状の何れかに形成されてなる請求項1~3の何れか1項に記載の中子製造方法。
【請求項5】
前記第1層の中子の外周面の一部又は全部を覆うように、前記第2層の中子が形成されてなる請求項1に記載の中子製造方法。
【請求項6】
前記塗型した第1層の中子の外周面の一部又は全部を覆うように、前記第2層の中子が形成されてなる請求項2に記載の中子製造方法。
【請求項7】
前記第1層の中子の外周面に前記第2層の中子を製造するにあたって、該第1層の中子を事前に、常温以上300℃以下の温度範囲にて加温してなる請求項1に記載の中子製造方法。
【請求項8】
前記塗型した第1層の中子の外周面に前記第2層の中子を製造するにあたって、該第1層の中子を事前に、常温以上300℃以下の温度範囲にて加温してなる請求項2に記載の中子製造方法。
【請求項9】
前記所定の金型は、前記第1層の中子を固定保持することができる請求項1に記載の中子製造方法。
【請求項10】
前記所定の金型は、前記塗型した第1層の中子を固定保持することができる請求項2に記載の中子製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
請求項1の発明によれば、第1層と第2層の少なくとも2層で構成される中子製造方法であって、
前記第1層の中子(10)を製造した後、該第1層の中子(10)の外周面(10a)に前記第2層の中子(11)を製造し、
前記第1層の中子(10)の外周面(10a)には、前記第2層の中子(11)との密着性を高める形状が施され、
前記第1層の中子(10)の外周面(10a)に前記第2層の中子(11)を製造するにあたって、所定の金型(第2層用中子造形用金型3)に該第1層の中子(10)を保持させた状態で、前記第2層の中子(11)が製造されてなることを特徴としている。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
請求項2の発明によれば、第1層と第2層の少なくとも2層で構成される中子製造方法であって、
前記第1層の中子(10)を製造した後、該第1層の中子(10)の外周面(10a)を塗型し(図5参照)、該塗型した第1層の中子(10)の外周面(10a)に前記第2層の中子(11)を製造し、
前記塗型した第1層の中子(10)の外周面(10a)には、前記第2層の中子(11)との密着性を高める形状が施され、
前記塗型した第1層の中子(10)の外周面(10a)に前記第2層の中子(11)を製造するにあたって、所定の金型(第2層用中子造形用金型3)に該第1層の中子(10)を保持させた状態で、前記第2層の中子(11)が製造されてなることを特徴としている。