(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119671
(43)【公開日】2023-08-29
(54)【発明の名称】棟換気装置
(51)【国際特許分類】
E04D 13/16 20060101AFI20230822BHJP
E04D 3/40 20060101ALI20230822BHJP
E04D 1/30 20060101ALI20230822BHJP
E04B 7/18 20060101ALI20230822BHJP
E04B 1/70 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
E04D13/16 F
E04D3/40 C
E04D1/30 603B
E04B7/18 B
E04B1/70 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022022651
(22)【出願日】2022-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】595133736
【氏名又は名称】株式会社トーコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100189717
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 貴章
(72)【発明者】
【氏名】森村 匡弘
【テーマコード(参考)】
2E001
2E108
【Fターム(参考)】
2E001DB02
2E001FA16
2E001FA17
2E001NA07
2E001NB01
2E001NC01
2E001ND26
2E108AA02
2E108BB04
2E108CC01
2E108EE01
2E108GG18
2E108JJ13
2E108JJ19
(57)【要約】
【課題】軒先側から吹き上げられる雨水が水抜き孔から侵入することを阻止でき、雨水をスムーズに排出し、さらに換気性能も向上することができる棟換気装置を提供すること。
【解決手段】本発明の棟換気装置は、立上誘導板22の立上板下部22uと傾斜誘導板23の傾斜板下部23uとの間を遮蔽する底面遮蔽板15を設け、立上誘導板22と前面板11との間には凹部空間16が形成され、傾斜誘導板23と底面遮蔽板15と立上誘導板22とによって排水ストック空間17が形成され、凹部空間16の雨水を、水抜き孔21によって排水ストック空間17に導き、排水ストック空間17に導かれた雨水を、風雨誘導部20の両端部20sから排出することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
勾配を有した屋根面の頂部付近に配置され、
軒先側に配置される前面板に前面開口を形成し、前記屋根面の前記頂部側に配置される背面板に背面開口を形成する通気部と、
前記前面板から所定間隔離れた位置に配置して前記前面開口に対向させた風雨誘導部と、
前記通気部の上面を覆うとともに、前記背面開口と野地板に形成した開口部との間で換気通路を形成する天面カバーと
を備え、
前記風雨誘導部は、立上誘導板と傾斜誘導板とを有し、
前記立上誘導板は前記前面板に対向した位置に配置され、
前記傾斜誘導板は前記立上誘導板より前記軒先側に配置され、
前記立上誘導板には水抜き孔を有する
棟換気装置であって、
前記立上誘導板の立上板下部と前記傾斜誘導板の傾斜板下部との間を遮蔽する底面遮蔽板を設け、
前記立上誘導板と前記前面板との間には凹部空間が形成され、
前記傾斜誘導板と前記底面遮蔽板と前記立上誘導板とによって排水ストック空間が形成され、
前記凹部空間の雨水を、前記水抜き孔によって前記排水ストック空間に導き、
前記排水ストック空間に導かれた前記雨水を、前記風雨誘導部の両端部から排出する
ことを特徴とする棟換気装置。
【請求項2】
前記傾斜板下部には前記立上板下部の方向に延出させた傾斜板下部延出板を設け、
前記通気部の下面を覆う下面板の後端部に前記背面板を設け、
前記底面遮蔽板の底面遮蔽板前端部を前記傾斜板下部延出板に重ねて設置する
ことを特徴とする請求項1に記載の棟換気装置。
【請求項3】
前記立上板下部には前記前面板の方向に延出させた立上板下部延出板を設け、
前記立上板下部延出板と前記下面板とが重なる位置を締結材による締結位置とし、前記立上板下部延出板が前記下面板の上方で重なる
ことを特徴とする請求項2に記載の棟換気装置。
【請求項4】
前記天面カバーの軒先側端部に前記前面板を設け、
前記前面板の前面板下部を前記軒先側に延出させた前面板延出板を設け、
前記前面板延出板が前記締結位置に配置され、
前記締結材によって前記前面板延出板を締結する
ことを特徴とする請求項3に記載の棟換気装置。
【請求項5】
前記天面カバーの軒先側端部に前記前面板を設け、
前記天面カバーと前記前面板との角度を90度より大きくした
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の棟換気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、勾配を有した屋根面の頂部付近に配置される棟換気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年勢力を増している大型台風での強風を伴う雨でも雨水が入らない棟換気が望まれており、短時間で大量の雨が降るゲリラ豪雨に対しても十分な防水性能が要求されている。
住宅の長寿命化には小屋裏換気が重要であり、防水性能の向上と同時に換気性能の向上も要求されている。さらに、棟換気自体もすっきりした外観で棟換気装置が目立たないデザインが好まれている。
特許文献1から特許文献3は、軒先側に配置される前面板に前面開口を形成し、屋根面の頂部側に配置される背面板に背面開口を形成する通気部に対して、前面開口に対向させた風雨誘導部を設けた換気装置を提案している。
特許文献1から特許文献3では、通気部の下面を覆う下面板の軒先側端と風雨誘導部の誘導板下端とを連続して形成し、風雨誘導部の下端に水抜き孔を設けることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-265631号公報
【特許文献2】特開2006-63725号公報
【特許文献3】特開2021-14717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1から特許文献3に記載の換気装置では、短時間で大量の雨が降ると、通気部の前面板と風雨誘導部との間に雨水が溜まりやすく、特に緩勾配の屋根に設置される場合にはオーバーフローすることがある。
また、オーバーフローさせないように風雨誘導部に形成する水抜き孔を多く設けると、大型台風のような強風によって水抜き穴から雨水が浸入してしまうことがある。
さらに、横風を伴う風雨に対しては邪魔板などを設ける対策が従来技術として一般的であり、防水性能と換気性能はトレードオフの関係だった。
【0005】
そこで本発明は、軒先側から吹き上げられる雨水が水抜き孔から侵入することを阻止でき、雨水をスムーズに排出することができ、横風を伴う風雨に対して防水性能と換気性能をともに向上させる棟換気装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の本発明の棟換気装置は、勾配を有した屋根面の頂部付近に配置され、軒先側に配置される前面板11に前面開口11Aを形成し、前記屋根面の前記頂部側に配置される背面板12に背面開口12Aを形成する通気部10と、前記前面板11から所定間隔離れた位置に配置して前記前面開口11Aに対向させた風雨誘導部20と、前記通気部10の上面を覆うとともに、前記背面開口12Aと野地板3に形成した開口部5との間で換気通路を形成する天面カバー30とを備え、前記風雨誘導部20は、立上誘導板22と傾斜誘導板23とを有し、前記立上誘導板22は前記前面板11に対向した位置に配置され、前記傾斜誘導板23は前記立上誘導板22より前記軒先側に配置され、前記立上誘導板22には水抜き孔21を有する棟換気装置であって、前記立上誘導板22の立上板下部22uと前記傾斜誘導板23の傾斜板下部23uとの間を遮蔽する底面遮蔽板15を設け、前記立上誘導板22と前記前面板11との間には凹部空間16が形成され、前記傾斜誘導板23と前記底面遮蔽板15と前記立上誘導板22とによって排水ストック空間17が形成され、前記凹部空間16の雨水を、前記水抜き孔21によって前記排水ストック空間17に導き、前記排水ストック空間17に導かれた前記雨水を、前記風雨誘導部20の両端部20sから排出することを特徴とする。
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載の棟換気装置において、前記傾斜板下部23uには前記立上板下部22uの方向に延出させた傾斜板下部延出板24を設け、前記通気部10の下面を覆う下面板14の後端部に前記背面板12を設け、前記下面板14の下面板前端部を前記傾斜板下部延出板24に重ねて設置することを特徴とする。
請求項3記載の本発明は、請求項2に記載の棟換気装置において、前記立上板下部22uには前記前面板11の方向に延出させた立上板下部延出板25を設け、前記立上板下部延出板25と前記下面板14とが重なる位置を締結材52、53による締結位置とすることを特徴とする。
請求項4記載の本発明は、請求項3に記載の棟換気装置において、前記天面カバー30の軒先側端部に前記前面板11を設け、前記前面板11の前面板下部を前記軒先側に延出させた前面板延出板11Cを設け、前記前面板延出板11Cが前記締結位置に配置され、前記締結材53によって前記前面板延出板11Cを締結することを特徴とする。
請求項5記載の本発明は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の棟換気装置において、前記天面カバー30の軒先側端部に前記前面板11を設け、前記天面カバー30と前記前面板11との角度γを90度より大きくしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の棟換気装置によれば、立上誘導板の立上板下部と傾斜誘導板の傾斜板下部との間を遮蔽する底面遮蔽板を設けることで、軒先側から吹き上げられる雨水が、立上誘導板に設けた水抜き孔から侵入することを阻止でき、一方、水抜き孔によって排水ストック空間に導かれた雨水を、風雨誘導部の両端部から排出することで、特に天面カバーから凹部空間に流れ落ちる雨水をスムーズに排出することができる。
また、横風が吹いたとき、風雨誘導部によって凹部空間には負圧が発生し、発生する負圧によって、通気部から小屋裏内の空気が引っ張られ、換気が促進される。
風雨誘導部に立上誘導板を有することで、凹部空間に発生した負圧が、効果的に通気部の空気を排出するため、防水性能と換気性能の両方を実現することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図8】本実施例による棟換気装置を用いた棟換気装置の施工状態を示す側面断面図
【
図15】本発明の更に他の実施例による棟換気装置を示す図
【
図16】本発明の更に他の実施例による棟換気装置を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の第1の実施の形態による棟換気装置は、立上誘導板の立上板下部と傾斜誘導板の傾斜板下部との間を遮蔽する底面遮蔽板を設け、立上誘導板と前面板との間には凹部空間が形成され、傾斜誘導板と底面遮蔽板と立上誘導板とによって排水ストック空間が形成され、凹部空間の雨水を、水抜き孔によって排水ストック空間に導き、排水ストック空間に導かれた雨水を、風雨誘導部の両端部から排出するものである。本実施の形態によれば、立上誘導板の立上板下部と傾斜誘導板の傾斜板下部との間を遮蔽する底面遮蔽板を設けることで、軒先側から吹き上げられる雨水が、立上誘導板に設けた水抜き孔から侵入することを阻止でき、一方、水抜き孔によって排水ストック空間に導かれた雨水を、風雨誘導部の両端部から排出することで、特に天面カバーから凹部空間に流れ落ちる雨水をスムーズに排出することができる。
また、横風が吹いたとき、風雨誘導部によって凹部空間には負圧が発生し、発生する負圧によって、通気部から小屋裏内の空気が引っ張られ、換気が促進される。
風雨誘導部に立上誘導板を有することで、凹部空間に発生した負圧が、効果的に通気部の空気を排出するため、防水性能と換気性能の両方を実現することが出来る。
【0010】
本発明の第2の実施の形態は、第1の実施の形態による棟換気装置において、傾斜板下部には立上板下部の方向に延出させた傾斜板下部延出板を設け、通気部の下面を覆う下面板の後端部に背面板を設け、底面遮蔽板の底面遮蔽板前端部を傾斜板下部延出板に重ねて設置するものである。本実施の形態によれば、底面遮蔽板の底面遮蔽板前端部を傾斜板下部延出板に重ねて設置することで、軒先側から吹き上げられる雨水が排水ストック空間に侵入することがない。なお、下面板は下面板の前端部を傾斜板下部延出板に重ねることによって底面遮蔽板とすることが出来る。
【0011】
本発明の第3の実施の形態は、第2の実施の形態による棟換気装置において、立上板下部には前面板の方向に延出させた立上板下部延出板を設け、立上板下部延出板と下面板とが重なる位置を締結材による締結位置とし、立上板下部延出板が下面板の上方で重なるものである。本実施の形態によれば、背面開口を形成する背面板を設けた下面板と、風雨誘導部とを、立上板下部延出板を用いて締結材で締結することができ、締結した下面板と風雨誘導部とを屋根面に設置し、その後に天面カバーを設置することで施工を行えるために施工性に優れている。さらに、下面板は表面に露出することが無いため天面カバーや風雨誘導部の色調に関係なく部品化出来る。結果として、下面板の仕掛品の種類を少なく出来るため生産性の向上や在庫量の減少といった効果を発揮する。
【0012】
本発明の第4の実施の形態は、第3の実施の形態による棟換気装置において、天面カバーの軒先側端部に前面板を設け、前面板の前面板下部を軒先側に延出させた前面板延出板を設け、前面板延出板が締結位置に配置され、締結材によって前面板延出板を締結するものである。本実施の形態によれば、背面開口を形成する背面板を設けた下面板と、風雨誘導部と、前面開口を形成する前面板を設けた天面カバーとを、立上板下部延出板と前面板延出板とを用いて締結材で屋根面に取り付けることができるために施工性に優れている。
【0013】
本発明の第5の実施の形態は、第1から第3のいずれかの実施の形態による棟換気装置において、天面カバーの軒先側端部に前面板を設け、天面カバーと前面板との角度を90度より大きくしたものである。本実施の形態によれば、天面カバーを流れ落ちる雨水が前面板に沿って落下しやすいために、雨水を凹部空間に導きやすく、天面カバーの保管時や搬送時に、デッドスペースが生じることなく天面カバーを積み上げることができる。
【実施例0014】
以下本発明の一実施例による棟換気装置について説明する。
図1は本実施例による棟換気装置を示す図であり、
図1(a)は同棟換気装置の斜視図、
図1(b)は同棟換気装置の断面図である。
図2は、
図1の要部拡大図であり、
図2(a)は
図1(a)の要部拡大図、
図1(b)は
図1(b)同棟換気装置の断面図である。
【0015】
本実施例による棟換気装置は、勾配を有した屋根面の頂部付近に配置され、軒先側に配置される前面板11に前面開口11Aを形成し、屋根面の頂部側に配置される背面板12に背面開口12Aを形成する通気部10と、前面板11から所定間隔離れた位置に配置して前面開口11Aに対向させた風雨誘導部20と、通気部10の上面を覆うとともに、背面開口12Aと野地板3(
図8参照)に形成した開口部5(
図8参照)との間で換気通路を形成する天面カバー30とを有している。
風雨誘導部20は、立上誘導板22と傾斜誘導板23とを有している。立上誘導板22は前面板11に対向した位置に配置され、傾斜誘導板23は立上誘導板22より軒先側に配置されている。立上誘導板22には水抜き孔21を形成している。
下面板14は、通気部10の下面を覆っている。背面板12は、下面板14の後端部に設けている。
通気部10は、前面板11、背面板12、下面板14、及び天面カバー30で囲まれる空間である。通気部10の両端部は、通気部側面板18によって閉塞されている。
底面遮蔽板15は、立上誘導板22の立上板下部22uと傾斜誘導板23の傾斜板下部23uとの間を遮蔽する。
立上誘導板22と前面板11との間には凹部空間16が形成され、傾斜誘導板23と底面遮蔽板15と立上誘導板22とによって排水ストック空間17が形成される。
風雨誘導部20の両端部20sは開放している。風雨誘導部20の両端部20sを開放することで、排水ストック空間17に導かれた雨水を、風雨誘導部20の両端部20sから排出することができる。
背面板12の上端は、折り曲げられて天面カバー30の下面に沿って延長されて締結面12Bを形成し、締結面12Bを形成した後に下面板14の方向に折り曲げられて、背面垂下部12Cを形成している。
図2(a)に示すように、傾斜板下部23uには立上板下部22uの方向に延出させた傾斜板下部延出板24を設けている。
そして、下面板14の下面板前端部を傾斜板下部延出板24に重ねて設置する。このように、下面板14の下面板前端部を傾斜板下部延出板24に重ねて設置し、下面板14によって底面遮蔽板15を形成することで、軒先側から吹き上げられる雨水が排水ストック空間17に侵入することがない。
【0016】
このように、本実施例によれば、立上誘導板22の立上板下部22uと傾斜誘導板23の傾斜板下部23uとの間を遮蔽する底面遮蔽板15を設けることで、軒先側から吹き上げられる雨水が、立上誘導板22に設けた水抜き孔21から侵入することを阻止でき、一方、水抜き孔21によって排水ストック空間17に導かれた雨水を、風雨誘導部20の両端部20sから排出することで、特に天面カバー30から凹部空間16に流れ落ちる雨水をスムーズに排出することができる。
【0017】
図3は同棟換気装置の要部断面図である。
下面板14を基準に、風雨誘導部20の高さをHa、天面カバー30の高さをHbとすると、Ha>Hbとすることが好ましい。
立上誘導板22の立上板下部22uと傾斜誘導板23の傾斜板下部23uとの距離をWとすると、距離Wは、立上誘導板22と傾斜誘導板23との角度αが、30度≦α≦40度となるように決定する。
下面板14を基準にした立上誘導板22の立上角度βは、90度とすることが好ましい。
このようなパラメータとすることで、屋根材4(
図8参照)や屋根面の勾配に寄らずに所定の防水性能を発揮する。また、距離Wの長さに応じて、降雨時に排水ストック空間17に溜まる雨水の排水性能が向上する。
角度αは、大きくするほど、防水性能が高まる反面、美観的には好ましくなく、防水性能と美観性の観点からは35度とすることが好ましい。
【0018】
図4は同棟換気装置の分解斜視図である。
本実施例による棟換気装置は、天面カバー30と、風雨誘導部20と、下面板14とで構成することができる。
【0019】
図5は、同棟換気装置を構成する天面カバーを示す図であり、
図5(a)は同天面カバーの斜視図、
図5(b)は同天面カバーの断面図である。
天面カバー30には、複数の第1締結用孔31を有している。第1締結用孔31は、天面カバー30と締結面12Bとの締結に用いられる。天面カバー30と締結面12Bとの締結には、第1締結材51(
図1から
図3を参照)が用いられる。第1締結材51には例えばリベットを用いる。
第1締結材51によって天面カバー30と締結面12Bとを締結することで、下面板14及び背面板12を天面カバー30に取り付けることができ、通気部10が形成される。
天面カバー30の軒先側端部に前面板11を設け、前面板11の前面板下部を軒先側に延出させた前面板延出板11Cを設けている。
前面板延出板11Cには、複数の第2締結用孔32を有している。第2締結用孔32は、前面板延出板11Cと立上板下部延出板25(
図6参照)と下面板14との締結に用いられる。前面板延出板11Cと立上板下部延出板25と下面板14との締結には、第2締結材52(
図1から
図3を参照)が用いられる。第2締結材52には例えばリベットを用いる。
第2締結材52によって前面板延出板11Cと立上板下部延出板25と下面板14とを締結することで、風雨誘導部20及び下面板14を天面カバー30に取り付けることができる。
前面板延出板11Cには、複数の第3締結用孔33を有している。第3締結用孔33は、前面板延出板11C、風雨誘導部20、及び下面板14の屋根面への取り付けに用いられる。前面板延出板11C、風雨誘導部20、及び下面板14の屋根面への取り付けには、第3締結材53(
図8)が用いられる。第3締結材53には例えばビスを用いる。
【0020】
本実施例では、天面カバー30と前面板11との角度γを90度より大きくしている。
従って、天面カバー30を流れ落ちる雨水が前面板11に沿って落下しやすいために、雨水を凹部空間16に導きやすく、天面カバー30の保管時や搬送時に、デッドスペースが生じることなく天面カバー30を積み上げることができる。
【0021】
図6は、同棟換気装置を構成する風雨誘導部を示す図であり、
図6(a)は同風雨誘導部の斜視図、
図6(b)は同風雨誘導部の断面図である。
立上板下部22uには前面板11の方向に延出させた立上板下部延出板25を設けている。
立上板下部延出板25には、複数の第4締結用孔34を有している。
第4締結用孔34は、前面板延出板11Cと立上板下部延出板25と下面板14との締結に用いられる。前面板延出板11Cと立上板下部延出板25と下面板14との締結には、第2締結材52(
図1から
図3を参照)が用いられる。
立上板下部延出板25には、複数の第5締結用孔35を有している。第5締結用孔35は、前面板延出板11C、風雨誘導部20、及び下面板14の屋根面への取り付けに用いられる。前面板延出板11C、風雨誘導部20、及び下面板14の屋根面への取り付けには、第3締結材53(
図8)が用いられる。
【0022】
図7は、同棟換気装置を構成する下面板を示す図であり、
図7(a)は同下面板の斜視図、
図7(b)は同下面板の断面図である。
背面板12には、背面開口12Aの下方に、背面立上部12Dを形成している。背面垂下部12C及び背面立上部12Dを形成することで、水密性能を高めることができる。
締結面12Bには、複数の第6締結用孔36を有している。第6締結用孔36は、天面カバー30と締結面12Bとの締結に用いられる。天面カバー30と締結面12Bとの締結には、第1締結材51(
図1から
図3を参照)が用いられる。
下面板14には、複数の第7締結用孔37を有している。第7締結用孔37は、前面板延出板11Cと立上板下部延出板25と下面板14との締結に用いられる。前面板延出板11Cと立上板下部延出板25と下面板14との締結には、第2締結材52(
図1から
図3を参照)が用いられる。
下面板14には、複数の第8締結用孔38を有している。第8締結用孔38は、前面板延出板11C、風雨誘導部20、及び下面板14の屋根面への取り付けに用いられる。前面板延出板11C、風雨誘導部20、及び下面板14の屋根面への取り付けには、第3締結材53(
図8)が用いられる。
【0023】
以上のように、本実施例は、立上板下部延出板25と下面板14とが重なる位置を第2締結材52による締結位置としており、背面開口12Aを形成する背面板12を設けた下面板14と、風雨誘導部20とを、立上板下部延出板25を用いて第2締結材52で締結することができ、締結した下面板14と風雨誘導部20とを屋根面に設置し、その後に天面カバー30を設置することで施工を行えるために施工性に優れている。
また、本実施例は、立上板下部延出板25と下面板14とが重なる位置を第3締結材53による締結位置とし、前面板延出板11Cを締結位置に配置し、背面開口12Aを形成する背面板12を設けた下面板14と、風雨誘導部20と、前面開口11Aを形成する前面板11を設けた天面カバー30とを、傾斜板下部延出板24と前面板延出板11Cとを用いて第3締結材53で屋根面に取り付けることができるために施工性に優れている。
【0024】
以下本発明の一実施例による棟換気装置を用いた棟換気装置の施工方法について説明する。
図8は本実施例による棟換気装置を用いた棟換気装置の施工状態を示す側面断面図であり、陸棟に対する施工状態を示している。
図8ではスレート平棟の屋根構造を示している。
図8に示す建造物では、柱の上端に棟木2を設け、棟木2の上部には垂木1を斜め下方に傾斜して設けている。垂木1の上部には野地板3を設け、野地板3の上面に屋根材4が敷設されている。開口部5は、野地板3の棟側端部の一部に形成されている。野地板3の開口端部には捨水切60を取り付けている。
棟換気装置は、第3締結材53によって野地板3に固定される。
図8(b)に示すように、本実施例によれば、風雨誘導部20に底面遮蔽板15を設けることで、軒先側から吹き上げられる雨水が、水抜き孔21から侵入することを阻止できる。
以上のように、
図1から
図7に示す棟換気装置は、スレート平棟の屋根構造に設置でき、両流れ屋根用として説明したが、片流れ屋根用にも適用できる。
【0025】
図9は本実施例による作用効果を示す説明図である。
図9(a)は本実施例による棟換気装置であり、
図9(b)は比較例としての棟換気装置である。なお、矢印は空気流れを示している。
図に示すように横風が吹いたとき、風雨誘導部20によって凹部空間16には負圧が発生し、発生する負圧によって、通気部10から小屋裏内の空気が引っ張られ、換気が促進される。
この場合に、本実施例の風雨誘導部20のように立上誘導板22を有することで、比較例に示すように立上誘導板22が無い場合と比較して凹部空間16が狭いために、より高い負圧効果によって換気促進効果を高めることができる。
【0026】
図10から
図14を用いて、本発明の他の実施例による棟換気装置について説明する。本実施例は、金属屋根用に用いる棟換気装置であり、既に説明した構成部材と同一部材には同一符号を付して説明を省略する。
図10は
図1に対応する棟換気装置を示す図、
図11は
図5に対応する図、
図12は
図6に対応する図、
図13は
図7に対応する図、
図14は
図8に対応する図である。
【0027】
図10(b)に示すように、本実施例による棟換気装置では、天面カバー30と下面板14との間には柱状弾性材45を設けている。天面カバー30と下面板14との間に柱状弾性材45を設けることで、特に天面カバー30の強度を高めることができる。
図11に示すように、天面カバー30には、複数の第9締結用孔39を有している。第9締結用孔39は、柱状弾性材45を固定するとともに、天面カバー30と下面板14との屋根面への取り付けに用いられる。天面カバー30と下面板14との屋根面への取り付けには、第4締結材54(
図14)が用いられる。第4締結材54には例えばビスを用いる。
本実施例による棟換気装置では、
図12に示す複数の第5締結用孔35は用いない。なお、第5締結用孔35を設ける場合は、スレート平棟の屋根構造に設置できる棟換気装置の部材としても共用することができる。
図13に示すように、下面板14には、複数の第10締結用孔40を有している。第10締結用孔40は、柱状弾性材45を固定するとともに、天面カバー30と下面板14との屋根面への取り付けに用いられる。天面カバー30と下面板14との屋根面への取り付けには、第4締結材54(
図14)が用いられる。
図14に示すように、本実施例による棟換気装置は、金属平棟の屋根構造に設定できる。
本実施例においても、風雨誘導部20に底面遮蔽板15を設けることで、軒先側から吹き上げられる雨水が、水抜き孔21から侵入することを阻止できる。
なお、本実施例による棟換気装置は、片流れ屋根用にも適用できる。
【0028】
図15及び
図16は、本発明の更に他の実施例による棟換気装置を示す図である。
図15(a)及び
図16(a)に示すように、部材を取り付けた状態では
図1(b)と同一構成である。
【0029】
図15に示す実施例では、
図15(b)に示すように、天面カバー30と風雨誘導部20とを同一部材で形成している。すなわち、天面カバー30と風雨誘導部20とを1枚の板材によって形成している。
なお、
図15(c)に示すように、下面板14については、
図7及び
図13と同一構成である。
図16に示す実施例では、
図16(c)に示すように、風雨誘導部20と下面板14とを同一部材で形成している。すなわち、風雨誘導部20と下面板14とを1枚の板材によって形成している。
そして、
図16(d)に示すように、底面遮蔽板15を独立した別部材として用いる。
なお、
図16(a)に示すように、天面カバー30については、
図7と同一構成である。
図15及び
図16では、
図1から
図8に示す実施例に対応する棟換気装置として説明したが、
図15及び
図16に示す実施例は、
図10から
図14に示す実施例の棟換気装置についても適用できる。