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特開2023-119675バリアフィルム、包装フィルム、包装容器及び包装製品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119675
(43)【公開日】2023-08-29
(54)【発明の名称】バリアフィルム、包装フィルム、包装容器及び包装製品
(51)【国際特許分類】
   B32B 9/00 20060101AFI20230822BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
B32B9/00 A
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022022657
(22)【出願日】2022-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100129296
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 博昭
(72)【発明者】
【氏名】西川 健
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AA01
3E086AB01
3E086BA13
3E086BA15
3E086BA35
3E086BB01
3E086BB51
3E086CA01
3E086CA11
3E086CA28
3E086CA31
4F100AA01A
4F100AA01B
4F100AA16D
4F100AA17A
4F100AB01A
4F100AC04A
4F100AH00C
4F100AK03E
4F100AK07A
4F100AL05A
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100BA10D
4F100BA10E
4F100CC00D
4F100DE01A
4F100EJ65C
4F100GB15
4F100GB16
4F100JC00A
4F100JD02
4F100JD02D
4F100JL12E
4F100YY00A
(57)【要約】
【課題】環境負荷を低減しつつ、バリア性の低下を抑制できるバリアフィルム、包装フィルム、包装容器及び包装製品を提供すること。
【解決手段】基材層及び無機物層を備えるバリアフィルムであって、基材層が、バイオポリプロピレンを含む樹脂と、無機粒子とを含む樹脂組成物からなる、バリアフィルム。バリアフィルムは、基材層の上に少なくとも無機物層を形成してなり、基材層が、バイオプロピレンを含む原料を、無機粒子の存在下で反応させて得られるものであり、無機粒子が、金属及び金属酸化物の少なくとも一方を含んでもよい。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層及び無機物層を備えるバリアフィルムであって、
前記基材層が、バイオポリプロピレンを含む樹脂と、無機粒子とを含む樹脂組成物からなる、バリアフィルム。
【請求項2】
前記バリアフィルムが、前記基材層の上に少なくとも前記無機物層を形成してなり、
前記基材層が、バイオプロピレンを含む原料を、前記無機粒子の存在下で反応させて得られるものであり、
前記無機粒子が、金属及び金属酸化物の少なくとも一方を含む、請求項1に記載のバリアフィルム。
【請求項3】
前記無機粒子が金属酸化物を含む、請求項1に記載のバリアフィルム。
【請求項4】
前記金属酸化物がゼオライトである、請求項3に記載のバリアフィルム。
【請求項5】
前記基材層のバイオマス度が50%以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載のバリアフィルム。
【請求項6】
前記基材層と、前記無機物層との間にアンカーコート層をさらに含み、
前記アンカーコート層が有機物を含有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のバリアフィルム。
【請求項7】
前記無機物層を被覆するガスバリア性被覆層をさらに備え、
前記ガスバリア性被覆層が、Si及びCを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のバリアフィルム。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載のバリアフィルムと、
前記バリアフィルムの前記無機物層側に設けられるシーラント層と、を備える包装フィルム。
【請求項9】
請求項8記載の包装フィルムを用いて得られる包装容器。
【請求項10】
請求項9に記載の包装容器と、前記包装容器内に封入される内容物とを備える包装製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、バリアフィルム、包装フィルム、包装容器及び包装製品に関する。
【背景技術】
【0002】
食品、医薬品等の包装に用いられる包装袋などの包装容器においては、内容物の変質や腐敗などを抑制し、それらの機能や性質を保持するために、水蒸気、酸素、その他の内容物を変質させる気体の侵入を遮断するガスバリア性が要求される。そのため、従来、これら包装容器においてはバリアフィルムが用いられている。バリアフィルムは一般に、基材層と、無機物層と、ガスバリア性被覆層とを備えており、基材層には、ポリプロピレンフィルムが使用されることがある。例えば下記特許文献1では、透明なポリプロピレンフィルムなどからなる基材上に、無機化合物からなる薄膜層及びガスバリア性被膜をこの順に積層してなる透明積層体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-264292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、環境負荷の小さいプラスチックポリマーとしてバイオマス由来の原料を用いたものが注目されており、ポリプロピレンについても、バイオマス由来のポリプロピレン(バイオポリプロピレン)を用いることが検討されつつある。
【0005】
しかし、上記特許文献1に記載の透明積層体は、基材層のポリプロピレンにバイオポリプロピレンを用いた場合、環境負荷を低減することは可能になるものの、バリア性の低下抑制の点で改善の余地を有していた。
【0006】
本開示は、上記課題に鑑みてなされたものであり、環境負荷を低減しつつ、バリア性の低下を抑制することができるバリアフィルム、包装フィルム、包装容器及び包装製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題が生じる原因について検討した。まず、本発明者らは、基材層のプロピレンをバイオポリプロピレンにすると、低分子量成分が多くなる傾向があることに気付いた。このため、この低分子量成分が基材層の表面までブリードアウトして表面に現れ、この低分子量成分に起因して無機物層が基材層から剥離してバリア性が低下するのではないかと本発明者らは考えた。そこで、本発明者らは、さらに検討を重ねた結果、以下の発明により上記課題を解決することを見出した。
【0008】
すなわち、本開示の一側面は、基材層及び無機物層を備えるバリアフィルムであって、前記基材層が、バイオポリプロピレンを含む樹脂と、無機粒子とを含む樹脂組成物からなる、バリアフィルムである。
【0009】
本開示のバリアフィルムによれば、基材層中にバイオポリプロピレンの低分子量成分が含まれる場合、基材層中に無機粒子が含まれることで、低分子量成分は、基材層の表面に達するまでに無機粒子を避けて通る必要が生じる。このため、低分子量成分がブリードアウトして基材層の表面に達するまでの経路長が長くなる。その結果、低分子量成分が基材層の表面に現れにくくなり、無機物層が基材層から剥離にくくなり、無機物層と基材層との間に隙間が生じることが抑制され、バリア性の低下が抑制される。また、バリアフィルムは、基材層中にバイオポリプロピレンを含む。したがって、本開示のバリアフィルムによれば、環境負荷を低減しつつ、バリア性の低下を抑制することができる。
【0010】
上記バリアフィルムが、前記基材層の上に少なくとも前記無機物層を形成してなり、前記基材層が、バイオプロピレンを含む原料を、前記無機粒子の存在下で反応させて得られるものであり、前記無機粒子が、金属及び金属酸化物の少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0011】
この場合、無機粒子が、金属及び金属酸化物の少なくとも一方であると、金属及び金属酸化物は、バイオプロピレンを含む原料からバイオポリプロピレンを形成する反応において、酸触媒又は塩基触媒よりも良好な触媒として作用し、バイオポリプロピレンの高分子量化を促進する。そのため、バイオプロピレンを含む原料を、無機粒子の存在下で反応させると、反応が効果的に行われ、バイオポリプロピレンの低分子量成分の量が減少する。すなわち、ブリードアウトにより基材層の表面に現れる低分子量成分の量が減少する。その結果、基材層の上に無機物層が形成されやすくなり、密な無機物層が形成され、バリア性の低下がより抑制される。
例えば無機粒子が金属である場合、まず、下記式(1)に示すように、金属(Metal)に、二重結合を有する2つのバイオプロピレン(第1プロピレン)が吸着し、その後、金属からの第1プロピレンの二重結合への電子移動により金属と第1プロピレンとが結合して結合体が形成される。このとき、結合体中の金属は、自由電子が働いて反応を進行させやすい状態となっている。次に、下記式(2)に示すように、結合体に他のバイオプロピレン(第2プロピレン)が近付くと、金属と第1プロピレンとの結合が切断された後、金属に第2プロピレンが吸着して金属から第2プロピレンに電子が移動し、この第2プロピレンに、結合が切断された第1プロピレンが結合する。こうして、下記式(3)に示すように、結合体に第2プロピレンが結合した新たな結合体が形成され、高分子量化したバイオポリプロピレンが形成される。なお、下記(1)~(3)では、バイオプロピレンについては、結合前は二重結合を有する部分(-C=C-)のみを示し、結合後は、二重結合を単結合に変更して示す。
【化1】

なお、金属に代えて金属酸化物が用いられる場合、金属酸化物は、酸素を介在した電子移動により、金属と同様に作用すると考えられる。
【0012】
上記バリアフィルムにおいては、前記無機粒子が前記金属酸化物を含むことが好ましい。
【0013】
この場合、バリアフィルムにおいて、バリア性の低下を効果的に抑制することができる。
【0014】
上記バリアフィルムにおいては、前記金属酸化物がゼオライトであることが好ましい。
【0015】
この場合、金属酸化物がゼオライト以外の金属酸化物である場合に比べてバリア性の低下をより効果的に抑制することができる。
【0016】
上記バリアフィルムにおいては、前記基材層のバイオマス度が50%以上であることが好ましい。
【0017】
この場合、基材層のバイオマス度が50%未満である場合に比べて、バリア性の低下をより効果的に抑制することができる。
【0018】
上記バリアフィルムは、前記基材層と、前記無機物層との間にアンカーコート層をさらに含み、前記アンカーコート層が有機物を含有することが好ましい。
【0019】
この場合、アンカーコート層によって基材層と無機物層との密着性がより向上する。
【0020】
上記バリアフィルムは、前記無機物層を被覆するガスバリア性被覆層をさらに備え、前記ガスバリア性被覆層がSi及びCを含むことが好ましい。
【0021】
この場合、ガスバリア性被覆層がSiを含むことで、ガスバリア性被覆層と無機物層との密着性がより向上し、ガスバリア性被覆層がCを含むことで、ガスバリア性被覆層の柔軟性が向上し、バリアフィルムに過大な曲げ応力が加わってもクラックが生じることを抑制することができる。
【0022】
また、本開示の別の一側面は、上述したバリアフィルムと、前記バリアフィルムの前記無機物層側に設けられるシーラント層と、を備える包装フィルムである。
【0023】
この包装フィルムは、上述したバリアフィルムを有するため、環境負荷を低減しつつバリア性の低下を抑制することができる。
【0024】
本開示のさらに別の一側面は、上述した包装フィルムを用いて得られる包装容器である。
【0025】
この包装容器は、上述した包装フィルムを用いて得られるため、環境負荷を低減しつつ、バリア性の低下を抑制できる。したがって、包装容器内に内容物を封入しても、内容物の品質の低下を長期間にわたって抑制することができる。
【0026】
また、本開示の別の一側面は、上述した包装容器と、前記包装容器内に封入される内容物とを備える包装製品である。
【0027】
この包装製品は、上述した包装容器を用いて得られるため、環境負荷を低減しつつ、バリア性の低下を抑制できる。したがって、本開示の包装製品によれば、内容物の品質の低下を長期間にわたって抑制することができる。
【発明の効果】
【0028】
本開示によれば、環境負荷を低減しつつ、バリア性の低下を抑制できるバリアフィルム、包装フィルム、包装容器及び包装製品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本開示のバリアフィルムの一実施形態を示す断面図である。
図2】本開示の包装フィルムの一実施形態を示す断面図である。
図3】本開示の包装製品の一実施形態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本開示の実施形態について詳細に説明する。
【0031】
<バリアフィルム>
まず、本開示のバリアフィルムの一実施形態について図1を参照しながら説明する。図1は、本開示のバリアフィルムの一実施形態を示す断面図である。図1に示すように、バリアフィルム10は、基材層1と、無機物層3と、ガスバリア性被覆層4とをこの順に備える。ここで、基材層1はバイオポリプロピレンを含む樹脂と、無機粒子とを含む樹脂組成物からなる。なお、バリアフィルム10は、基材層1と無機物層3との間にアンカーコート層2をさらに有してもよい。
【0032】
このバリアフィルム10によれば、基材層1中にバイオポリプロピレンの低分子量成分が含まれる場合、基材層1中に無機粒子が含まれることで、低分子量成分は、基材層1の表面に達するまでに無機粒子を避けて通る必要が生じる。このため、低分子量成分がブリードアウトして基材層1の表面に達するまでの経路長が長くなる。その結果、低分子量成分が基材層1の表面に現れにくくなり、無機物層3が基材層1から剥離にくくなり、無機物層3と基材層1との間に隙間が生じることが抑制され、バリア性の低下が抑制される。また、バリアフィルム10は、基材層1中にバイオポリプロピレンを含む。したがって、バリアフィルム10によれば、環境負荷を低減しつつ、バリア性の低下を抑制することができる。
【0033】
以下、基材層1、アンカーコート層2、無機物層3及びガスバリア性被覆層4について詳細に説明する。
【0034】
(基材層)
基材層1は、アンカーコート層2、無機物層3及びガスバリア性被覆層4の支持体となる層であり、バイオポリプロピレンを含む樹脂と、無機粒子とを含む樹脂組成物からなる。
【0035】
バイオポリプロピレンは、バイオプロピレンのホモ重合体でもバイオプロピレンと他の重合性モノマーとの共重合体であってもよい。他の重合性モノマーは、バイオマス由来のモノマーでも石油由来のモノマーでもよい。バイオポリプロピレンは、バイオプロピレンを含む原料を重合させることによって得ることができる。バイオプロピレンは、例えばバイオエタノール及びバイオエチレンの少なくとも一方を原料として反応させることによって得ることができる。バイオエタノールは、バイオマス由来の多糖類(例えばコーンやさとうきび)を原料として用い、この原料を発酵させることにより得ることができる。バイオエチレンはバイオエタノールを脱水することにより得ることができる。
【0036】
上記樹脂は、必要に応じてバイオポリプロピレン以外の樹脂をさらに含んでいてもよい。このような樹脂としては、例えば石油由来のポリプロピレンのほか、ポリエチレンなどのオレフィンが挙げられる。オレフィンは、石油由来であってもバイオマス由来であってもよい。
【0037】
上記無機粒子は無機物で構成されていれば特に制限されるものではなく、上記無機粒子としては、金属、金属酸化物、シリカ、ガラスなどが挙げられる。これらはそれぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。なお、無機粒子を使用するのは、バイオポリプロピレンの低分子量成分の通過を阻止するためである。
【0038】
但し、無機粒子は金属酸化物を含むことが好ましい。この場合、バリアフィルム10において、バリア性の低下を効果的に抑制することができる。
【0039】
金属は、特に制限されるものではなく、遷移金属、非遷移金属、又はこれらの混合物でもよいが、遷移金属を含むことが好ましい。遷移金属としては、ニッケル、白金、銀などが挙げられる。これらはそれぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。非遷移金属としては、亜鉛などが挙げられる。
【0040】
金属酸化物において、金属は、上記金属と同様のものを用いることができる。金属酸化物としては、酸化ニッケル、酸化亜鉛、二酸化マンガン、アルミナ、ゼオライト及び硝酸イリジウムなどが挙げられる。これらはそれぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。中でも、金属酸化物はゼオライトであることが好ましい。この場合、金属酸化物がゼオライト以外の金属酸化物である場合に比べてバリア性の低下をより効果的に抑制することができる。
【0041】
無機粒子は、必要に応じてリン、カリウムをさらに含んでいてもよい。
【0042】
無機粒子の平均粒子径は、特に制限されるものではないが、0.005~1000μmであることが好ましい。この場合、無機粒子の平均粒子径が0.005μm未満である場合に比べて、低分子量成分がブリードアウトして基材層の表面に達するまでの経路長がより長くなり、バリア性の低下を効果的に抑制することができる。また、無機粒子の平均粒子径が上記範囲にあることで、無機粒子の平均粒子径が1000μmを超える場合に比べて、基材層1の表面の平滑性がより向上し、無機物層3の厚さの均一性がより向上するため、無機物層3におけるバリア性の均一性がより向上する。
【0043】
無機粒子の配合量は、特に限定されないが、樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上であり、より好ましくは0.05質量部以上であり、特に好ましくは0.1質量部以上である。この場合、樹脂100質量部に対する無機粒子の配合量が0.01質量部未満である場合に比べて、バリア性の低下を効果的に抑制することができる。但し、無機粒子の配合量は、樹脂100質量部に対して、好ましくは1質量部以下であり、より好ましくは0.5質量部以下である。この場合、樹脂100質量部に対する無機粒子の配合量が1質量部を超える場合に比べて、無機粒子の配合量が少なくなるため、基材層1に過大な曲げ応力が加えられても、クラックが発生することがより抑制される。
【0044】
基材層1のバイオマス度は特に制限されるものではないが、好ましくは50%以上であり、より好ましくは70%以上である。基材層1のバイオマス度が50%以上であると、基材層1のバイオマス度が50%未満である場合に比べて、バリアフィルム10のバリア性の低下をより効果的に抑制することができる。但し、バリアフィルム10のバリア性の低下をより抑制する観点からは、好ましくは98%以下であり、より好ましくは95%以下である。
【0045】
「バイオマス度」とは、バイオマスポリプロピレンフィルム中のバイオマス由来の炭素濃度であり、放射性炭素(C14)測定によるバイオマス由来の炭素の含有量を測定した値である。基材層1中の全炭素原子中に含まれるC14の割合を測定することにより、バイオマス由来の炭素の割合を算出することができる。本開示においては、基材層1中のC14の含有量をAとした場合のバイオマス度は、下記式に基づいて算出することができる。
バイオマス度(%)=A/105.5×100
【0046】
上記樹脂組成物は、コポリマー又はターポリマーを得る場合にはエチレンやブテン等をさらに含んでもよい。また、上記樹脂組成物は、必要に応じて、粘着付与剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、スリップ剤、核剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料、染料、無機または有機の充填剤等の各種添加剤を、本開示の目的を損なわない範囲でさらに含んでいてもよい。
【0047】
基材層1は、延伸フィルムでもよいし、非延伸フィルムでもよいが、ガスバリア性の観点からは、延伸フィルムであることが好ましい。ここで、延伸フィルムとしては、一軸延伸フィルム及び二軸延伸フィルムが挙げられるが、二軸延伸フィルムが、耐熱性を向上させることから、好ましい。
【0048】
基材層1の厚みは、特に制限されないが、例えば0.1mm以下であればよい。中でも、基材層1の厚みは、40μm以下であることが好ましく、35μm以下であることがより好ましく、30μm以下であることが特に好ましい。基材層1の厚みが40μm以下であると、基材層1の厚みが40μmを超える場合に比べて、バリアフィルム10の柔軟性がより向上し、バリアフィルム10の酸素ガスバリア性をより向上させることができる。但し、強度を向上させる観点からは、10μm以上であることが好ましく、12μm以上であることがより好ましい。
【0049】
(アンカーコート層)
アンカーコート層2は、基材層1と無機物層3との密着性をより向上させるための層であり、基材層1と無機物層3との間に設けられている。
【0050】
アンカーコート層2を構成する材料は、基材層1と無機物層3との密着性を向上させることが可能なものであれば特に制限されるものではないが、このような材料は、有機物を含むことが好ましい。この場合、アンカーコート層2によって基材層1と無機物層3との密着性がより向上する。有機物としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂(ポリエステルウレタン、アクリルウレタン、ポリオールとイソシアネートを反応させた樹脂)、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、セルロース樹脂などの樹脂が挙げられる。これらはそれぞれ単独で又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0051】
アンカーコート層2はSiを含んでいてもよい。この場合、アンカーコート層2は、例えば上記樹脂及びシランカップリング剤を含む樹脂組成物を硬化させることにより得ることができる。
【0052】
アンカーコート層2の厚みは、基材層1と無機物層3との密着性を向上させることが可能な厚みであれば特に制限されるものではないが、好ましくは30nm以上である。この場合、アンカーコート層2の厚みが30nm未満である場合に比べて、基材層1の表面よりもアンカーコート層2の表面の平滑性をより向上させることが可能となり、無機物層3の厚みをより均一にすることが可能となるとともに、ガスバリア性をより向上させることもできる。このため、バリアフィルム10のガスバリア性をより一層向上させることができる。アンカーコート層2の厚みは40nm以上であることがより好ましく、50nm以上であることがさらに好ましい。アンカーコート層2の厚みを大きくすることにより、延伸等の外力がかかった場合の水蒸気バリア性の低下を一層抑制することができる。アンカーコート層2の厚みは300nm以下であることが好ましい。この場合、アンカーコート層2の厚みが300nm以上である場合に比べて、バリアフィルム10の柔軟性がより向上する。アンカーコート層2の厚みは200μm以下であることがより好ましい。
【0053】
(無機物層)
無機物層3は、無機物を含むバリア層である。バリアフィルム10は、無機物層3を有することにより、バリアフィルム10の厚さを抑えつつガスバリア性をより向上させることができる。
【0054】
無機物としては、金属、金属酸化物、金属窒化物及び金属酸窒化物が挙げられる。金属としては、金属アルミニウム(Al)等が挙げられ、金属酸化物としては、酸化ケイ素(SiOx)、酸化アルミニウム(AlO)等が挙げられる。金属窒化物としては、シリコンナイトライド(SiN)等が挙げられ、金属酸窒化物としては、シリコンオキシナイトライド(SiON)等が挙げられる。
透明性及びバリア性の観点からは、無機物層3の構成材料は、酸化アルミニウム又は酸化ケイ素であることが好ましい。また、加工時に引張り延伸性に優れることから、無機物層3の構成材料は、酸化ケイ素であることが特に好ましい。
無機物層3として酸化ケイ素膜を用いる場合、ガスバリア性の観点から、O/Si比(モル比)は1.2~1.9とすることが好ましい。
【0055】
無機物層3は単層からなっていてもよく、複数層からなっていてもよい。
【0056】
無機物層3の厚みは特に制限されるものではないが、5nm以上であることが好ましい。この場合、無機物層3の厚みが5nm未満である場合に比べて、バリアフィルム10のガスバリア性がより向上する。無機物層3の厚みは10nm以上であることがより好ましく、20nm以上であることが特に好ましい。
【0057】
また、無機物層3の厚みは100nm以下であることが好ましい。この場合、無機物層3の厚みが100nmを超える場合に比べて、無機物層3の内部応力による変形によりクラックが発生することが抑制され、ガスバリア性の低下が抑制され易くなる。また、材料使用量を抑えることができ、膜形成時間の短縮等に起因してコストを低下させ易くなる。無機物層3の厚みは、コストを低減する観点からは、50nm以下であることがより好ましく、40nm以下であることが特に好ましい。
【0058】
(ガスバリア性被覆層)
ガスバリア性被覆層4は、ガスバリア性被覆層形成用組成物の硬化体で構成される。
【0059】
ガスバリア性被覆層4は、Si及びCを含むことが好ましい。
【0060】
この場合、ガスバリア性被覆層4がSiを含むことで、ガスバリア性被覆層4と無機物層3との密着性がより向上し、ガスバリア性被覆層4がCを含むことで、ガスバリア性被覆層4の柔軟性が向上し、バリアフィルム10に過大な曲げ応力が加わってもクラックが生じることを抑制することができる。
【0061】
なお、ガスバリア性被覆層4がSi及びCを含むことは、例えばX線光電子分光法(以下、「XPS」ともいう)によりガスバリア性被覆層4の表面においてSi及びCが検出されるかどうかによって確認することができる。
具体的には、XPSでは、以下の測定機器を使用し、以下の測定条件でナロー分析を行ってスペクトルを取得することによりSi及びCが検出されるかどうかを確認することができる。
<測定機器>
日本電子株式会社製、JPS-9030型光電子分光装置
<測定条件>
(スペクトル採取条件)
入射X線:MgKα(単色化X線、hν=1253.6eV)
X線出力:10W(10kV・10mA)
X線走査面積(測定領域):直径6mmの円形領域
光電子取込角度:90°
【0062】
ガスバリア性被覆層4は、具体的には主にポリビニルアルコール系樹脂及びシラン化合物を含む。
【0063】
ポリビニルアルコール系樹脂は、ビニルエステル単位がケン化されてなるビニルアルコール単位を有するものであればよく、ポリビニルアルコール系樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)が挙げられる。汎用性、溶解性等の観点から、PVAを好適に用いることができる。
【0064】
PVAとしては、例えば、酢酸ビニル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、ピバル酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のビニルエステルを単独で重合させた後、ケン化した樹脂を用いることができる。
【0065】
PVAは、共重合変性PVA又は後変性された変性PVAであってもよい。共重合変性PVAは、例えばビニルエステルと、ビニルエステルと共重合可能な不飽和モノマーを共重合させた後にケン化することで得られる。後変性された変性PVAは、ビニルエステルを重合させた後にケン化して得られたPVAに、重合触媒の存在下で不飽和モノマーを共重合させることで得られる。変性PVAにおける変性量は、充分なガスバリア性を発現する観点から、50モル%未満とすればよく、変性による効果を得る観点から10モル%以上とすればよい。
【0066】
上記の不飽和モノマーとしては、例えばエチレン、プロピレン、イソブチレン、α-オクテン、α-ドデセン、α-オクタデセン等のオレフィン;3-ブテン-1-オール、4-ペンチン-1-オール、5-ヘキセン-1-オール等のヒドロキシ基含有α-オレフィン;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、ウンデシレン酸等の不飽和酸;アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のニトリル;ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド;エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸;アルキルビニルエーテル、ジメチルアリルビニルケトン、N-ビニルピロリドン、塩化ビニル、ビニルエチレンカーボネート、2,2-ジアルキル-4-ビニル-1,3-ジオキソラン、グリセリンモノアリルエーテル、3,4-ジアセトキシ-1-ブテン等のビニル化合物;塩化ビニリデン、1,4-ジアセトキシ-2-ブテン、ビニレンカーボネート、ポリオキシプロピレン、ポリオキシプロピレンビニルアミン等が挙げられる。ガスバリア性の観点からは、不飽和モノマーとしてはオレフィンが好ましく、特にエチレンが好ましい。
【0067】
重合触媒としては、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウリル等のラジカル重合触媒が挙げられる。重合方法は特に制限されず、塊状重合、乳化重合、溶媒重合等を採用することができる。
【0068】
PVAの重合度は特に制限されないが、300~3000であることが好ましい。重合度が300以上であるとバリア性が低下し難くなり、3000以下であると粘度が高くなりすぎず、塗工適性の低下を抑制し易い。PVAのケン化度は80モル%以上が好ましく、90モル%以上がより好ましく、98モル%以上がさらに好ましい。また、PVAのケン化度は100モル%以下であっても、99.9モル%以下であってもよい。PVAの重合度及びケン化度は、JIS K 6726(1994)に記載の方法に準拠して測定できる。
【0069】
EVOHは、一般にエチレンと、酢酸ビニル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、ピバル酸ビニル、バーサチック酸ビニル等の酸ビニルエステルとの共重合体をケン化して得られる。
【0070】
EVOHのエチレン単位含有量は特に制限されないが、10モル%以上であることが好ましく、15モル%以上がより好ましく、20モル%以上がさらに好ましく、35モル%より大きいことが特に好ましい。また、EVOHのエチレン単位含有量は65モル%以下が好ましく、55モル%以下がより好ましく、50モル%未満がさらに好ましい。エチレン単位含有量が10モル%以上であると、高湿度下におけるガスバリア性あるいは寸法安定性を良好に保つことができる。一方、エチレン単位含有量が65モル%以下であると、ガスバリア性を高めることができる。
【0071】
EVOHのエチレン単位含有量は、NMR法により求めることができる。
【0072】
ケン化はアルカリ又は酸で行うことができるが、ケン化速度の観点からアルカリを用いることができる。アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、ナトリウムエチラート、カリウムエチラート、リチウムメチラート等のアルカリ金属アルコキシドが挙げられる。
【0073】
シラン化合物としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等のテトラアルコキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等のシラザンなどが挙げられる。シラン化合物としては、一般的にシランカップリング剤として用いられる化合物や、シロキサン結合を有するポリシロキサン化合物を用いてもよい。シラン化合物の中でも、シランカップリング剤が好ましい。シランカップリング剤を用いることでガスバリア性被覆層4内の強度がより向上し、バリア性や耐水性が向上し易くなる。
【0074】
シランカップリング剤としては、例えば、エポキシシラン(グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等)、(メタ)アクリルシラン(アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等)、アミノシラン、ウレイドシラン、イソシアネートシラン、イソシアヌレートシラン(トリス(3-トリアルコキシシリルプロピル)イソシアヌレート等)、メルカプトシラン等が挙げられる。
【0075】
ガスバリア性被覆層4を形成する際、シラン化合物の量は、ガスバリア性被覆層4と無機物層3との密着性、及び、ガスバリア性被覆層4のガスバリア性を維持する観点から、ポリビニルアルコール系樹脂1質量部に対して好ましくは0.1~5.0質量部であり、より好ましくは0.3~5.0質量部であり、さらに好ましくは0.4~4.5質量部であり、特に好ましくは0.5~4.0質量部である。
【0076】
ガスバリア性被覆層4の厚みは特に制限されるものではないが、50nm以上であることが好ましい。
【0077】
この場合、ガスバリア性被覆層4の厚みが50nm未満である場合に比べて、バリアフィルム10のガスバリア性がより向上する。
【0078】
ガスバリア性被覆層4の厚みは、ガスバリア性を向上させる観点から、100nm以上であることがより好ましく、200nm以上であることが特に好ましい。
【0079】
一方、ガスバリア性被覆層4の厚みは700nm以下であることが好ましい。ガスバリア性被覆層4の厚みが700nmを超える場合に比べて、バリアフィルム10の柔軟性がより向上する。
【0080】
ガスバリア性被覆層4の厚みは、バリアフィルム10の柔軟性をより向上させる観点からは、500nm以下であることがより好ましく、400nm以下であることが特に好ましい。
【0081】
バリアフィルム10は、基材層1の上に無機物層3及びガスバリア性被覆層4を形成してなるものであり、基材層1が、バイオプロピレンを含む原料を、上記無機粒子の存在下で反応させて得られるものであり、上記無機粒子が、上記の金属及び金属酸化物の少なくとも一方を含むことが好ましい。この場合、無機粒子が、金属及び金属酸化物の少なくとも一方であると、金属及び金属酸化物は、バイオプロピレンを含む原料からバイオポリプロピレンを形成する反応において、酸触媒又は塩基触媒よりも良好な触媒として作用し、バイオポリプロピレンの高分子量化を促進する。そのため、バイオプロピレンを含む原料を、無機粒子の存在下で反応させると、反応が効果的に行われ、バイオポリプロピレンの低分子量成分の量が減少する。すなわち、ブリードアウトにより基材層1の表面に現れる低分子量成分の量が減少する。その結果、基材層1の上に無機物層3が形成されやすくなり、密な無機物層3が形成され、バリア性の低下がより抑制される。
【0082】
原料中のバイオプロピレンの含有率は0質量%より大きければ特に制限されるものではないが、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上である。
【0083】
原料は、バイオプロピレンのほか、必要に応じて、石油由来のエチレン又はエタノールをさらに含んでもよい。エチレンとしては、接触分解法又は蒸気分解法により製造したエチレン、又は、石炭のフィッシャートロプシュ合成により得られたエチレン等、既知の製造方法で製造したエチレンを使用することができる。エタノールとしては、エチレンの水和反応又は合成ガスから製造できるものを使用してよい。合成ガスとは、石炭や天然ガス、バイオマスなどの炭化水素をガス化したものをいう。
【0084】
反応温度は、例えば300~700℃とすればよい。原料と無機粒子とを接触させる方法は、特に限定されないが、例えば無機粒子を充填した反応器内に原料を導入する方法が挙げられる。反応器としては、固定床反応器、流動床反応器、回分式反応器、半回分式反応器等を例示することができるが、バイオポリプロピレンの生産性の観点からは、固定床反応器又は流動床反応器が好ましく、固定床反応器がさらに好ましい。
【0085】
無機粒子は、上記金属及び金属酸化物の少なくとも一方で構成されればよく、金属のみ、金属触媒のみ、又は金属と金属酸化物との混合物でもよい。但し、無機粒子は金属酸化物を含むことが好ましい。この場合、バリアフィルム10において、バリア性の低下を効果的に抑制することができる。
【0086】
無機粒子はそのままの状態で用いてもよいが、バインダー中に配合された状態で用いてもよい。
【0087】
無機粒子の平均粒子径は、その無機粒子の合成条件により異なるため、特に制限されないが、好ましくは0.01~500μmであり、より好ましくは0.05~300μmである。この場合、無機粒子の平均粒子径が0.01μm未満である場合に比べて無機粒子が部分的に凝集しにくくなり、ハンドリング性が向上する。また、無機粒子の平均粒子径が上記範囲にあることで、無機粒子の平均粒子径が500μmを超える場合に比べて比表面積が大きくなり触媒活性が向上する。
【0088】
無機粒子の使用量は、特に限定されないが、原料100質量部に対して0.00000002~0.0002質量部であることが好ましい。また、原料の供給速度も特に限定されないが、例えば無機粒子1トン当たり、0.002~200トン/hであればよく、0.02~20トン/hであることがより好ましい。無機粒子と原料との接触時間は特に限定されず、例えば、0.001秒~1時間であり、好ましくは0.1秒~1分である。
【0089】
<バリアフィルムの製造方法>
次に、バリアフィルム10の製造方法について説明する。
【0090】
まず基材層1を用意する。基材層1は、バイオプロピレンを含む原料を、上記無機粒子の存在下で反応させることによって用意してもよく、バイオポリプロピレンと無機粒子とを溶融混練することによって用意してもよい。
【0091】
基材層1は、得られたバイオポリプロピレンを含む樹脂組成物を単層押出し成形または共押出し成形することによって得ることができる。成形装置は特に限定されず、成形装置としては、多層T-ダイ押出機又は多層インフレーション成形機等を用いることができる。基材層1を構成する層の数は1層でも複数層でもよいが、1~5層であることが、製造の容易性の観点から好ましい。
【0092】
また、無延伸の基材層1を製造する場合には、基材層1は、公知のキャスト装置で製造することもできる。
また、延伸された基材層1を製造する場合には、基材層1は、成形により得られるフィルムを、同時二軸延伸装置又は逐次二軸延伸装置を用いて延伸することによって製造することができる。
延伸の条件としては、例えば公知のOPPフィルムを得るときの条件を採用することができる。より具体的には、逐次二軸延伸法では、例えば、縦延伸温度を100℃~145℃、縦延伸倍率を4.5~6倍の範囲、横延伸温度を130℃~190℃、横延伸倍率を9~11倍の範囲にすればよい。
【0093】
次に、基材層1の一面上にアンカーコート層2を形成する。
【0094】
具体的には、基材層1の一面上に、アンカーコート層2を形成するアンカーコート層形成用組成物を塗布し加熱して乾燥させることによってアンカーコート層2を形成する。このとき、加熱温度は、例えば、50~200℃であり、乾燥時間は、例えば、10秒~10分程度である。
【0095】
次に、アンカーコート層2の上に無機物層3を形成する。
【0096】
無機物層3は、例えば真空成膜法により形成することができる。真空成膜法としては、物理気相成長法及び化学気相成長法が挙げられる。物理気相成長法としては、真空蒸着法、スパッタ蒸着法、イオンプレーティング法等を挙げることができる。物理気相成長法としては、真空蒸着法が特に好ましく用いられる。真空蒸着法としては、抵抗加熱式真空蒸着法、EB(Electron Beam)加熱式真空蒸着法、誘導加熱式真空蒸着法が挙げられる。化学気相成長法としては、熱CVD法、プラズマCVD法、光CVD法等を挙げることができる。
【0097】
次に、無機物層3上にガスバリア性被覆層4を形成する。
【0098】
ガスバリア性被覆層4は、例えば、無機物層3上にガスバリア性被覆層形成用組成物を塗布し、硬化させることによって形成できる。
【0099】
ガスバリア性被覆層形成用組成物の塗布方法としては、公知の方法を採用することができる。塗布方法としては、具体的には、グラビアコート法、ディップコート法、リバースコート法、ワイヤーバーコート法、ダイコート法等のウェット成膜法が挙げられる。
【0100】
硬化は、例えば加熱などによって行うことができる。
【0101】
硬化を加熱によって行う場合、加熱温度及び加熱時間は、ガスバリア性被覆層形成用組成物中の固形分の硬化と水性媒体等の液体の除去を同時に行うことができるように設定すればよい。加熱温度は、例えば80~250℃とすればよく、加熱時間は、例えば3秒~10分とすればよい。
【0102】
以上のようにしてバリアフィルム10が得られる。
【0103】
<包装フィルム>
次に、本開示の包装フィルムの実施形態について図2を参照しながら説明する。なお、図2において、図1と同一の構成要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0104】
図2は、本開示の包装フィルムの一実施形態を示す断面図である。図2に示すように、包装フィルム20は、バリアフィルム10と、バリアフィルム10の無機物層3側に設けられるシーラント層21とを備えている。図2に示すように、バリアフィルム10において、ガスバリア性被覆層4とシーラント層21とが接着剤層22によって接着されていてもよい。
【0105】
この包装フィルム20は、上記バリアフィルム10を備えるため、環境負荷を低減しつつバリア性の低下を抑制することができる。
【0106】
接着剤層22の材料としては、例えば、ポリエステル-イソシアネート系樹脂、ウレタン樹脂、ポリエーテル系樹脂などを用いることができる。
【0107】
(シーラント層)
シーラント層21の材質としては、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂などの熱可塑性樹脂が挙げられるが、ポリオレフィン樹脂が一般的に使用される。具体的に、ポリオレフィン樹脂としては、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-αオレフィン共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体などのエチレン系樹脂、ホモポリプロピレン樹脂(PP)、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-エチレンブロック共重合体、プロピレン-αオレフィン共重合体などのポリプロピレン系樹脂、又はこれらの混合物等を使用することができる。シーラント層21の材質は、上述した熱可塑性樹脂の中から、使用用途によって適宜選択できる。
【0108】
シーラント層21を構成する熱可塑性樹脂は、延伸されていても延伸されていなくてもよいが、融点を低下させ、ヒートシールを容易にする観点からは、延伸されていない方が好ましい。
【0109】
シーラント層21の厚みは、内容物の質量や、包装袋の形状などにより適宜定められ、特に限定されるものではないが、包装フィルム20の柔軟性及び接着性の観点から、30~150μmであることが好ましい。
【0110】
<包装製品>
次に、本開示の包装製品の実施形態について図3を参照しながら説明する。なお、図3は、本開示の包装製品の一実施形態を示す側面図である。図3において、図1又は図2と同一の構成要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0111】
図3に示すように、包装製品40は、包装容器30と、包装容器30内に封入される内容物Cとを備えている。図3に示す包装容器30は、一対の包装フィルム20を用い、シーラント層21同士を対向させた状態で包装フィルム20の周縁部をヒートシールすることによって得られたものである。なお、図3において、包装フィルム20の接着剤層22は省略して示してある。
【0112】
この包装製品40は、包装容器30を備えており、包装容器30は上述した包装フィルム20を用いて得られるため、環境負荷を低減しつつ、バリア性の低下を抑制できる。したがって、本開示の包装製品によれば、内容物の品質の低下を長期間にわたって抑制することができる。
【0113】
なお、包装容器30は、1つの包装フィルム20を折り曲げ、シーラント層21同士を対向させた状態で包装フィルム20の周縁部をヒートシールすることによっても得ることができる。
【0114】
包装容器30としては、包装袋、ラミネートチューブ容器、液体紙容器などが挙げられる。
【0115】
内容物Cは、特に限定されるものではなく、内容物Cとしては、食品、液体、医薬品、電子部品などが挙げられる。
【0116】
本開示は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、包装フィルム20において、シーラント層21が、バリアフィルム10の基材層1のガスバリア性被覆層4側に配置されているが、シーラント層21は、基材層1のガスバリア性被覆層4と反対側に配置されていてもよい。
【0117】
また、上記実施形態では、バリアフィルム10は、ガスバリア性被覆層4を備えているが、バリアフィルム10は、必ずしもガスバリア性被覆層4を備えていなくてもよい。
【符号の説明】
【0118】
1…基材層、2…アンカーコート層、3…無機物層、4…ガスバリア性被覆層、10…バリアフィルム、20…包装フィルム、21…シーラント層、30…包装容器、40…包装製品。
図1
図2
図3