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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119677
(43)【公開日】2023-08-29
(54)【発明の名称】発光装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/12 20060101AFI20230822BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20230822BHJP
   H10K 50/15 20230101ALI20230822BHJP
   H10K 50/16 20230101ALI20230822BHJP
【FI】
H05B33/12 C
H05B33/14 A
H05B33/22 D
H05B33/22 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022022660
(22)【出願日】2022-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000221926
【氏名又は名称】東北パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100127236
【弁理士】
【氏名又は名称】天城 聡
(72)【発明者】
【氏名】高橋 純
【テーマコード(参考)】
3K107
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107BB02
3K107CC04
3K107CC07
3K107DD50
3K107DD51
3K107DD71
3K107DD74
3K107FF13
(57)【要約】
【課題】赤色光及び赤外線光の双方の発光効率を向上させる。
【解決手段】電荷制御層300は、陽極100と陰極200との間に位置している。赤外線発光層410は、陽極100と電荷制御層300との間に位置している。正孔輸送層510は、陽極100と赤外線発光層410との間に位置している。赤色発光層420は、陰極200と電荷制御層300との間に位置している。電子輸送層520は、陰極200と赤色発光層420との間に位置している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極と、
陰極と、
前記陽極と前記陰極との間に位置する電荷制御層と、
前記陽極と前記電荷制御層との間に位置する赤外線発光層と、
前記陰極と前記電荷制御層との間に位置する赤色発光層と、
を備える発光装置。
【請求項2】
請求項1に記載の発光装置において、
前記赤外線発光層及び前記赤色発光層の少なくとも一方が前記電荷制御層に接している、発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子を備える様々な発光装置が開発されている。例えば特許文献1に記載されているように、発光装置は、陽極、正孔注入層(HIL)、正孔輸送層(HTL)、赤色発光層、第1中間層、青色発光層、緑色発光層、第2中間層、赤外線発光層、電子輸送層(ETL)、電子注入層(EIL)及び陰極を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-38245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発光装置の用途においては、赤色光及び赤外線光の双方の発光が要請されることがある。しかしながら、例えば特許文献1に記載されているように、陽極と中間層との間に赤色発光層が設けられ、陰極と中間層との間に赤外線発光層が設けられても、赤色光及び赤外線光の双方の発光効率が十分に高くならないことがある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題としては、赤色光及び赤外線光の双方の発光効率を向上させることが一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、
陽極と、
陰極と、
前記陽極と前記陰極との間に位置する電荷制御層と、
前記陽極と前記電荷制御層との間に位置する赤外線発光層と、
前記陰極と前記電荷制御層との間に位置する赤色発光層と、
を備える発光装置である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態に係る発光装置の断面模式図である。
図2】実施形態に係る発光装置の陽極、正孔輸送層、赤外線発光層、電荷制御層、赤色発光層、電子輸送層及び陰極のエネルギー準位を示す図である。
図3】比較形態に係る発光装置の陽極、正孔輸送層、赤色発光層、電荷制御層、赤外線発光層、電子輸送層及び陰極のエネルギー準位を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書において「AがB上に位置する」という表現は、例えば、AとBの間に他の要素(例えば、層)が位置せずにAがB上に直接位置することを意味してもよいし、又はAとBの間に他の要素(例えば、層)が部分的又は全面的に位置することを意味してもよい。さらに、「上」、「下」、「左」、「右」、「前」及び「後ろ」等の向きを示す表現は、基本的に図面の向きと合わせて用いるものであって、例えば本明細書に記載された発明品の使用する向きに限定して解釈されるものではない。
【0009】
本明細書中における陽極とは、発光材料を含む層(例えば有機層)に正孔を注入する電極のことを示し、陰極とは、発光材料を含む層に電子を注入する電極のことを示す。また、「陽極」及び「陰極」という表現は、「正孔注入電極」及び「電子注入電極」又は「正極」及び「負極」等の他の文言を意味することもある。
【0010】
本明細書において「Aの端」という表現は、一方向から見たときのAとその他の要素との境界を意味し、「Aの端部」という表現は、当該境界を含むAの一部の領域を意味し、「Aの端点」という表現は、当該境界のある一点を意味する。
【0011】
本明細書における「発光装置」とは、ディスプレイや照明等の発光素子を有するデバイスを含む。また、発光素子と直接的、間接的又は電気的に接続された配線、IC(集積回路)又は筐体等も「発光装置」に含む場合もある。
【0012】
本明細書において「接続」とは、複数の要素が直接的又は間接的を問わずに接続している状態を表す。例えば、複数の要素の間に接着剤又は接合部材が介して接続している場合も単に「複数の要素は接続している」と表現することがある。また、複数の要素の間に、電流、電圧又は電位を供給可能又は伝送可能な部材が存在しており、「複数の要素が電気的に接続している」場合も単に「複数の要素は接続している」と表現することがある。
【0013】
本明細書において、特に断りがない限り「第1、第2、A、B、(a)、(b)」等の表現は要素を区別するためのものであり、その表現により該当要素の本質、順番、順序又は個数等が限定されるものではない。
【0014】
本明細書において、各部材及び各要素は単数であってもよいし、又は複数であってもよい。ただし、文脈上、「単数」又は「複数」が明確になっている場合はこれに限らない。
【0015】
本明細書において、「AがBを含む」という表現は、特に断らない限り、AがBのみによって構成されていることに限定されず、AがB以外の要素によって構成され得ることを意味する。
【0016】
本明細書において「断面」とは、特に断らない限り、発光装置を画素や発光材料等が積層した方向に切断したときに現れる面を意味する。
【0017】
本明細書において「有さない」、「含まない」、「位置しない」等の表現は、ある要素が完全に排除されていることを意味してもよいし、又はある要素が技術的な効果を有さない程度に存在していることを意味してもよい。
【0018】
本明細書において、「~後に」、「~に続いて」、「~次に」、「~前に」等の時間的前後関係を説明する表現は、相対的な時間関係を表しているものであり、時間的前後関係が用いられた各要素が必ずしも連続しているとは限らない。各要素が連続していることを表現する場合、「直ちに」又は「直接」等の表現を用いることがある。
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0020】
図1は、実施形態に係る発光装置10の断面模式図である。図1では、Z方向を示す矢印が付されている。Z方向を示す矢印は、矢印の基端から先端に向かう方向がZ方向の正方向であり、矢印の先端から基端に向かう方向がZ方向の負方向であることを示している。Z方向の正方向は、後述する陽極100が位置する側から後述する陰極200が位置する側に向かう方向である。Z方向の負方向は、陰極200が位置する側から陽極100が位置する側に向かう方向である。
【0021】
実施形態に係る発光装置10は、陽極100、陰極200、電荷制御層300、赤外線発光層410、赤色発光層420、正孔輸送層510及び電子輸送層520を備えている。陽極100、陰極200、電荷制御層300、赤外線発光層410、赤色発光層420、正孔輸送層510及び電子輸送層520は、陽極100のZの負方向側に位置する不図示の基板上に位置している。この基板は、例えば、ガラス基板又は樹脂基板である。また、この基板は、可撓性を有していてもよい。なお、図1において、陽極100、陰極200、電荷制御層300、赤外線発光層410、赤色発光層420、正孔輸送層510及び電子輸送層520は模式的に示されている。したがって、図1に示すこれらの要素のZ方向の厚さは、これらの要素の実際のZ方向の厚さを示唆するものではない。
【0022】
Z方向の負方向からZ方向の正方向に向かうにつれて、陽極100、正孔輸送層510、赤外線発光層410、電荷制御層300、赤色発光層420、電子輸送層520及び陰極200は、この順で積層されている。すなわち、電荷制御層300は、陽極100と陰極200との間に位置している。赤外線発光層410は、陽極100と電荷制御層300との間に位置している。正孔輸送層510は、陽極100と赤外線発光層410との間に位置している。赤色発光層420は、陰極200と電荷制御層300との間に位置している。電子輸送層520は、陰極200と赤色発光層420との間に位置している。
【0023】
陽極100、正孔輸送層510、赤外線発光層410、電荷制御層300、赤色発光層420、電子輸送層520及び陰極200のうち発光装置10のZ方向に隣り合う層は、互いに接していてもよいし、又は所定の層を介して発光装置10のZ方向に積層されていてもよい。実施形態においては、赤外線発光層410及び赤色発光層420の双方が電荷制御層300に接している。
【0024】
正孔輸送層510及び電子輸送層520の少なくとも一方は設けられていなくてもよい。また、陽極100と正孔輸送層510との間には、正孔注入層が位置していてもよい。陰極200と電子輸送層520との間には、電子注入層が位置していてもよい。
【0025】
陽極100は、透光性を有している。陽極100の可視光の透過率は、例えば、75%以上100%以下である。陽極100は、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、IWZO(Indium Tungsten Zinc Oxide)、ZnO(Zinc Oxide)、IGZO(Indium Gallium Zinc Oxide)等の酸化物半導体を含んでいる。陽極100のZ方向の厚さは、特に限定されないが、例えば、20nm以上300nm以下である。
【0026】
陰極200は、遮光性、具体的には光反射性を有している。陰極200は、例えば、金属又は合金を含んでいる。金属又は合金は、例えば、Al、Au、Ag、Pt、Mg、Sn、Zn及びInからなる群の中から選択される少なくとも1つの金属又はこの群から選択される金属の合金である。陰極200のZ方向の厚さは、特に限定されないが、例えば、50nm以上300nm以下である。
【0027】
電荷制御層300は、図2を用いて後述するように、電荷制御層300に対して赤色発光層420が位置する側で発生した励起子のすべてが赤外線発光層410へエネルギー移動することを抑制している。例えば、電荷制御層300は、正孔輸送性材料を含んでいる。電荷制御層300に用いられる正孔輸送性材料としては、TCTA(トリス(4-カルバゾイル-9-イルフェニル)アミン)、2-TNATA(4,4’,4’ ’-トリス[2-ナフチル(フェニル)アミノ]トリフェニルアミン)等のスターバースト型アミン誘導体が例示される。ただし、電荷制御層300は、電子輸送性材料を含んでいてもよい。電荷制御層300のZ方向の厚さは、特に限定されないが、例えば、3nm以上10nm以下である。
【0028】
赤外線発光層410は、第1ホスト材料及び赤外線発光材料を含んでいる。ただし、赤外線発光層410は、第1ホスト材料を含んでいなくてもよい。赤外線発光層410は、赤外線発光材料の有機ELによって赤外線光を発する。具体的には、赤外線発光層410は、波長が780nm以上2.5μm以下の近赤外線光を発する。赤外線発光材料としては、ErQ3(トリス(8-ヒドロキシキノリナト)エルビウム(III))等のエルビウム錯体や、BBTD(ベンゾ[1,2-c:4,5-c’]ビス([1,2,5]チアジアゾール))等のD-π-A-π-D型誘導体が例示される。赤外線発光層410は、電荷制御層300に対して、陽極100及び正孔輸送層510が位置する側に位置している。このため、赤外線発光層410の第1ホスト材料は、正孔輸送性材料であることが好ましい。赤外線発光層410の第1ホスト材料として用いられる正孔輸送性材料としては、ルブレン等のテトラセン誘導体や、α-NPD(N,N’-ジ-1-ナフチル-N,N’-ジフェニルベンジジン)等の芳香族アミン誘導体が例示される。赤外線発光層410のZ方向の厚さは、特に限定されないが、例えば、5nm以上50nm以下である。
【0029】
赤色発光層420は、第2ホスト材料及び赤色発光材料を含んでいる。赤色発光層420は、赤色発光材料の有機ELによって赤色を発する。赤色発光材料としては、DBP(5,10,15,20-テトラフェニルビスベンズ[5,6]インデノ[1,2,3-cd:1’,2’,3’-lm]ペリレン)等のペリレン誘導体、DCJTB(4-(ジシアノメチレン)-2-tert-ブチル-6-(1,1,7,7-テトラメチルジュロリジン-4-イル-ビニル)-4H-ピラン)等のピラン誘導体が例示される。赤色発光層420は、電荷制御層300に対して、陰極200及び電子輸送層520が位置する側に位置している。このため、赤色発光層420の第2ホスト材料は、電子輸送性材料であることが好ましい。赤色発光層420の第2ホスト材料として用いられる電子輸送性材料としては、ADN(9,10-ビス(2-ナフチル)アントラセン)等のアントラセン誘導体や、DPVBi(4,4’-ビス(2,2-ジフェニルエテニル)-1,1’-ビフェニル)等のジスチリルビフェニル誘導体が例示される。赤色発光層420のZ方向の厚さは、特に限定されないが、例えば、5nm以上50nm以下である。
【0030】
正孔輸送層510は、陽極100から赤外線発光層410へ正孔を輸送している。正孔輸送層510に用いられる材料としては、α-NPD等の芳香族アミン誘導体が例示される。正孔輸送層510のZ方向の厚さは、特に限定されないが、例えば、20nm以上200nm以下である。
【0031】
電子輸送層520は、陰極200から赤色発光層420へ電子を輸送している。電子輸送層520に用いられる材料としては、BCP(2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)等のフェナントロリン誘導体や、Alq3(トリス-(8-ヒドロキシキノリン)アルミニウム)等のアルミニウム錯体が例示される。電子輸送層520のZ方向の厚さは、特に限定されないが、例えば、20nm以上80nm以下である。
【0032】
図1において、発光装置10は、ボトムエミッションである。すなわち、赤外線発光層410から発せられた赤外線光と、赤色発光層420から発せられた赤色光と、は陽極100からZ方向の負方向側に向けて出射されている。
【0033】
図2は、実施形態に係る発光装置10の陽極100、正孔輸送層510、赤外線発光層410、電荷制御層300、赤色発光層420、電子輸送層520及び陰極200のエネルギー準位を示す図である。
【0034】
図2の左側に付された矢印は、エネルギー準位を示している。矢印の基端から先端に向かうほど、エネルギー準位が高くなっている。
【0035】
図2に示す陽極100は、陽極100の仕事関数を示している。図2に示す陰極200は、陰極200の仕事関数を示している。陰極200の仕事関数のエネルギー準位は、陽極100の仕事関数のエネルギー準位より高くなっている。
【0036】
図2において、正孔輸送層510を示す長方形の高エネルギー準位側の短辺は、正孔輸送層510のLUMO(最低空軌道)を示している。図2において、正孔輸送層510を示す長方形の低エネルギー準位側の短辺は、正孔輸送層510のHOMO(最高被占軌道)を示している。正孔輸送層510のLUMOは、約-2.4eVとなっている。正孔輸送層510のHOMOは、約-5.4eVとなっている。
【0037】
図2において、電荷制御層300を示す長方形の高エネルギー準位側の短辺は、電荷制御層300のLUMOを示している。図2において、電荷制御層300を示す長方形の低エネルギー準位側の短辺は、電荷制御層300のHOMOを示している。電荷制御層300のLUMOのエネルギー準位は、正孔輸送層510のLUMOのエネルギー準位より低くなっている。電荷制御層300のHOMOのエネルギー準位は、正孔輸送層510のHOMOのエネルギー準位より低くなっている。電荷制御層300のLUMOは、約-2.5eVとなっている。電荷制御層300のHOMOは、約-5.5eVとなっている。
【0038】
図2において、電子輸送層520を示す長方形の高エネルギー準位側の短辺は、電子輸送層520のLUMOを示している。図2において、電子輸送層520を示す長方形の低エネルギー準位側の短辺は、電子輸送層520のHOMOを示している。電子輸送層520のLUMOのエネルギー準位は、電荷制御層300のLUMOのエネルギー準位より低くなっている。電子輸送層520のHOMOのエネルギー準位は、電荷制御層300のHOMOのエネルギー準位より低くなっている。電子輸送層520のLUMOは、約-2.5eVより低くなっている。電子輸送層520のHOMOは、約-5.5eVより低くなっている。
【0039】
図2において、赤外線発光層410は、第1ホスト材料412及び赤外線発光材料414を含んでいる。図2において、第1ホスト材料412を示す長方形の高エネルギー準位側の短辺は、第1ホスト材料412のLUMOを示している。図2において、第1ホスト材料412を示す長方形の低エネルギー準位側の短辺は、第1ホスト材料412のHOMOを示している。図2において、赤外線発光材料414を示す長方形の高エネルギー準位側の短辺は、赤外線発光材料414のLUMOを示している。図2において、赤外線発光材料414を示す長方形の低エネルギー準位側の短辺は、赤外線発光材料414のHOMOを示している。赤外線発光材料414のLUMOのエネルギー準位は、第1ホスト材料412のLUMOのエネルギー準位より低くなっている。赤外線発光材料414のHOMOのエネルギー準位は、第1ホスト材料412のHOMOのエネルギー準位より高くなっている。
【0040】
第1ホスト材料412のLUMOのエネルギー準位は、電荷制御層300のLUMOのエネルギー準位より低くなっている。第1ホスト材料412のHOMOのエネルギー準位は、電荷制御層300のHOMOのエネルギー準位より高くなっている。
【0041】
図2において、赤色発光層420は、第2ホスト材料422及び赤色発光材料424を含んでいる。図2において、第2ホスト材料422を示す長方形の高エネルギー準位側の短辺は、第2ホスト材料422のLUMOを示している。図2において、第2ホスト材料422を示す長方形の低エネルギー準位側の短辺は、第2ホスト材料422のHOMOを示している。図2において、赤色発光材料424を示す長方形の高エネルギー準位側の短辺は、赤色発光材料424のLUMOを示している。図2において、赤色発光材料424を示す長方形の低エネルギー準位側の短辺は、赤色発光材料424のHOMOを示している。赤色発光材料424のLUMOのエネルギー準位は、第2ホスト材料422のLUMOのエネルギー準位より低くなっている。赤色発光材料424のHOMOのエネルギー準位は、第2ホスト材料422のHOMOのエネルギー準位より高くなっている。
【0042】
第2ホスト材料422のLUMOのエネルギー準位は、電荷制御層300のLUMOのエネルギー準位より低くなっている。第2ホスト材料422のHOMOのエネルギー準位は、電荷制御層300のHOMOのエネルギー準位より低くなっている。
【0043】
図3は、比較形態に係る発光装置10Kの陽極100、正孔輸送層510、赤色発光層420K、電荷制御層300、赤外線発光層410K、電子輸送層520及び陰極200のエネルギー準位を示す図である。比較形態に係る発光装置10Kは、以下の点を除いて、実施形態に係る発光装置10と同様である。
【0044】
比較形態に係る赤外線発光層410Kは、電荷制御層300と電子輸送層520との間に位置している。比較形態に係る赤外線発光層410Kは、第1ホスト材料412K及び赤外線発光材料414Kを含んでいる。比較形態に係る赤色発光層420Kは、電荷制御層300と正孔輸送層510との間に位置している。比較形態に係る赤色発光層420Kは、第2ホスト材料422K及び赤色発光材料424Kを含んでいる。
【0045】
比較形態に係る第1ホスト材料412KのLUMOのエネルギー準位は、実施形態に係る第2ホスト材料422のLUMOのエネルギー準位と同様にして、電荷制御層300のLUMOのエネルギー準位より低くなっている。比較形態に係る第1ホスト材料412KのHOMOのエネルギー準位は、実施形態に係る第2ホスト材料422のHOMOのエネルギー準位と同様にして、電荷制御層300のHOMOのエネルギー準位より低くなっている。
【0046】
比較形態に係る第2ホスト材料422KのLUMOのエネルギー準位は、実施形態に係る第1ホスト材料412のLUMOのエネルギー準位と同様にして、電荷制御層300のLUMOのエネルギー準位より低くなっている。比較形態に係る第2ホスト材料422KのHOMOのエネルギー準位は、実施形態に係る第1ホスト材料412のHOMOのエネルギー準位と同様にして、電荷制御層300のHOMOのエネルギー準位より高くなっている。
【0047】
図2及び図3を参照して、実施形態と、比較形態と、を比較する。
【0048】
図3に示すように、比較形態において、第1ホスト材料412KのLUMOのエネルギー準位は、第2ホスト材料422KのLUMOのエネルギー準位より低くなっている。また、比較形態において、第1ホスト材料412KのHOMOのエネルギー準位は、第2ホスト材料422KのHOMOのエネルギー準位より低くなっている。したがって、比較形態では、電荷制御層300と赤外線発光層410Kとの界面が、発光サイト、すなわち、励起子生成サイトとなっている。
【0049】
図2に示すように、実施形態において、第2ホスト材料422のLUMOのエネルギー準位は、第1ホスト材料412のLUMOのエネルギー準位より低くなっている。実施形態における第1ホスト材料412のLUMOのエネルギー準位に対する第2ホスト材料422のLUMOのエネルギー準位の比は、比較形態における第2ホスト材料422KのLUMOのエネルギー準位に対する第1ホスト材料412KのLUMOのエネルギー準位の比と等しくなっている。また、第2ホスト材料422のHOMOのエネルギー準位は、第1ホスト材料412のHOMOのエネルギー準位より低くなっている。実施形態における第1ホスト材料412のHOMOのエネルギー準位に対する第2ホスト材料422のHOMOのエネルギー準位の比は、比較形態における第2ホスト材料422KのHOMOのエネルギー準位に対する第1ホスト材料412KのHOMOのエネルギー準位の比と等しくなっている。したがって、実施形態では、電荷制御層300と赤色発光層420との界面が、発光サイト、すなわち、励起子生成サイトとなっている。
【0050】
比較形態では、電荷制御層300に対して陽極100が位置する側に位置する赤色発光材料424Kの一重項励起状態S1又は三重項励起状態T1のエネルギーが、電荷制御層300に対して陰極200が位置する側に位置する赤外線発光材料414Kの一重項励起状態S1又は三重項励起状態T1のエネルギーより高くなっている。このため、比較形態では、電荷制御層300と赤外線発光層410Kとの間において励起子が発生しても、励起子は、電荷制御層300を経由して赤色発光層420Kに向けてエネルギー移動しにくくなっている。このため、比較形態では、赤色発光層420Kが発光しにくくなっている。
【0051】
これに対して、実施形態では、電荷制御層300に対して陽極100が位置する側に位置する赤外線発光材料414の一重項励起状態S1又は三重項励起状態T1のエネルギーが、電荷制御層300に対して陰極200が位置する側に位置する赤色発光材料424の一重項励起状態S1又は三重項励起状態T1のエネルギーより低くなっている。このため、実施形態では、電荷制御層300と赤色発光層420との界面において励起子が発生した場合、一部の励起子は赤色発光層420に向けてエネルギー移動し、他の一部の励起子は電荷制御層300を経由して赤外線発光層410に向けてエネルギー移動する。このため、実施形態では、赤外線発光層410及び赤色発光層420の双方を発光させることができる。したがって、実施形態では、比較形態と比較して、赤色光及び赤外線光の双方の発光効率を向上させることができる。
【0052】
次に、実施形態と、赤外線発光層410と赤色発光層420との間に電荷制御層300が設けられていない場合と、を比較する。
【0053】
赤外線発光層410と赤色発光層420との間に電荷制御層300が設けられていない場合においては、赤外線発光層410と赤色発光層420とが接している。この場合、赤外線発光層410と赤色発光層420との界面で励起子が発生しても、ほぼすべての励起子が赤外線発光層410へエネルギー移動する。これは、赤外線発光材料414の一重項励起状態S1又は三重項励起状態T1のエネルギーが赤色発光材料424の一重項励起状態S1又は三重項励起状態T1のエネルギーより低いためである。このため、赤外線発光層410と赤色発光層420との間に電荷制御層300が設けられていない場合、赤色発光層420が発光しにくくなる。これに対して、実施形態において、電荷制御層300は、電荷制御層300と赤色発光層420との界面で発生した励起子のすべてが赤外線発光層410へエネルギー移動することを抑制している。したがって、実施形態においては、赤外線発光層410と赤色発光層420との間に電荷制御層300が設けられていない場合と比較して、赤色光及び赤外線光の双方の発光効率を向上させることができる。
【0054】
次に、実施形態と、赤色発光層420に代えて、緑色発光層、青色発光層等、赤色光より短波長側の可視光発光層が設けられている場合と、を比較する。以下、必要に応じて、緑色発光層、青色発光層等、赤色光より短波長側の可視光発光層を短波長発光層という。
【0055】
赤色発光層420に代えて短波長発光層が設けられている場合、短波長発光層に含まれる発光材料の一重項励起状態S1又は三重項励起状態T1のエネルギーと赤外線発光材料414の一重項励起状態S1又は三重項励起状態T1のエネルギーとの差は、赤色発光材料424の一重項励起状態S1又は三重項励起状態T1のエネルギーと赤外線発光材料414の一重項励起状態S1又は三重項励起状態T1のエネルギーとの差より大きくなる。したがって、赤色発光層420に代えて短波長発光層が設けられている場合、電荷制御層300と短波長発光層との界面において励起子が発生しても、励起子は、実施形態と比較して、電荷制御層300を経由して、赤外線発光層410に向けてエネルギー移動しにくくなっている。これに対して、実施形態では、赤色発光層420に代えて短波長発光層が設けられている場合と比較して、励起子が電荷制御層300を経由して赤外線発光層410に向けてエネルギー移動しやすくなっている。このため、実施形態では、赤色発光層420に代えて短波長発光層が設けられている場合と比較して、赤外線発光層410の発光効率を短波長発光層の発光効率よりも高くすることができる。
【0056】
次に、実施形態に係る発光装置10の用途について説明する。
【0057】
例えば、発光装置10は、赤外線カメラに利用することができる。この例では、赤外線発光層410は、赤外線カメラの光源となる。赤色発光層420は、赤外線カメラが動作していることを知らせるランプの光源となる。
【0058】
或いは、発光装置10は、LiDAR(Light Detection and Ranging)等の距離センサに利用することができる。この例では、赤外線発光層410は、赤外線センサの光源となる。赤色発光層420は、レーザセンサの光源となる。
【0059】
以上、図面を参照して実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0060】
例えば、実施形態に係る発光装置10は、赤色光及び赤外線光の2つの波長帯の光を発している。しかしながら、例えば、電荷制御層300と赤色発光層420との間、又は赤色発光層420と電子輸送層520との間に、緑色発光層、青色発光層等の可視光発光層を設けて、赤色光、赤外線光及びその他の波長帯の光の3つ以上の波長帯の光が発せられてもよい。
【符号の説明】
【0061】
10 発光装置
10K 発光装置
100 陽極
200 陰極
300 電荷制御層
410 赤外線発光層
410K 赤外線発光層
412 第1ホスト材料
412K 第1ホスト材料
414 赤外線発光材料
414K 赤外線発光材料
420 赤色発光層
420K 赤色発光層
422 第2ホスト材料
422K 第2ホスト材料
424 赤色発光材料
424K 赤色発光材料
510 正孔輸送層
520 電子輸送層
図1
図2
図3