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  • 特開-電動式火力調節弁 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119687
(43)【公開日】2023-08-29
(54)【発明の名称】電動式火力調節弁
(51)【国際特許分類】
   F23K 5/00 20060101AFI20230822BHJP
   F16K 31/04 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
F23K5/00 301D
F16K31/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022022676
(22)【出願日】2022-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】弁理士法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】加藤 聖也
【テーマコード(参考)】
3H062
3K068
【Fターム(参考)】
3H062AA02
3H062AA14
3H062BB05
3H062BB24
3H062CC02
3H062DD01
3H062EE06
3H062HH02
3H062HH10
3K068AA01
3K068BB01
3K068BB13
3K068BB20
(57)【要約】
【課題】ステッピングモータ2の回転で運動変換機構3を介して弁体4を直線運動させることにより弁開度を可変するように構成された火力調節弁であって、弁体4を閉じ方向と開き方向との一方に移動させるステッピングモータ2の回転方向を正転方向として、ステッピングモータ2を正転方向に回転させて弁体4を前記一方のストローク端位置に移動させると共に、その後の更なる正転方向の回転でステッピングモータ2を脱調させて原点出しする脱調運転を行うものにおいて、脱調運転による運動変換機構3での食付きロックの発生を防止できるようにする。
【解決手段】脱調運転を行う直前のステッピングモータ2の回転位置を脱調前回転位置として記憶し、脱調運転時に、ステッピングモータ2を脱調前回転位置から原点位置まで回転させるのに必要な必要角度に所定角度を加えた回転角度だけ正転方向に回転させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バーナへのガス供給路に介設される電動式火力調節弁であって、ステッピングモータの回転で運動変換機構を介して弁体を直線運動させることにより弁開度を可変するように構成され、更に、弁体を閉じ方向と開き方向との一方に移動させるステッピングモータの回転方向を正転方向として、ステッピングモータを正転方向に回転させて弁体を前記一方のストローク端位置に移動させると共に、その後の更なる正転方向の回転でステッピングモータを脱調させる脱調運転を行い、脱調運転停止時のステッピングモータの回転位置を原点位置として、この原点位置を基準にして弁開度に対応するステッピングモータの回転位置を決定する制御を行うものにおいて、
脱調運転を行う直前のステッピングモータの回転位置を脱調前回転位置として記憶し、脱調運転時に、ステッピングモータを脱調前回転位置から原点位置まで回転させるのに必要な必要角度に所定角度を加えた回転角度だけ正転方向に回転させることを特徴とする電動式火力調節弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーナへのガス供給路に介設される電動式火力調節弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電動式火力調節弁は、一般的に、ステッピングモータの回転で運動変換機構を介して弁体を直線運動させることにより弁開度を可変するように構成されている(例えば、特許文献1,2参照)。また、このものでは、弁体を閉じ方向と開き方向との一方に移動させるステッピングモータの回転方向を正転方向として、ステッピングモータを正転方向に回転させて弁体を前記一方のストローク端位置に移動させると共に、その後の更なる正転方向の回転でステッピングモータを脱調させる脱調運転を行い、脱調運転停止時のステッピングモータの回転位置を原点位置として、この原点位置を基準にして弁開度に対応するステッピングモータの回転位置を決定する制御を行っている。
【0003】
ここで、従来は、脱調運転開始前にステッピングモータがどのような回転位置に存していても、脱調運転中に弁体が前記一方のストローク端位置に到達してステッピングモータが脱調するように、脱調運転時のステッピングモータの回転角度を設定している。そのため、脱調運転開始前のステッピングモータの回転位置が、前記一方のストローク端位置に弁体が到達する回転位置に近い場合、脱調運転時に弁体がストローク端位置に到着した後もステッピングモータが長い間正転方向に回転し続けることになる。ここで、弁体がストローク端位置に到着した後もステッピングモータを正転方向に回転させると、運動変換機構に作用する応力が強くなる。そして、弁体がストローク端位置に到着した後もステッピングモータが長い間正転方向に回転し続けることで、運動変換機構に長い間強い応力が作用し続けて、運動変換機構での食付きロックが発生し、弁体がうまく動かなくなることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-82296号公報
【特許文献2】特開2021-92341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の点に鑑み、脱調運転による運動変換機構での食付きロックの発生を防止できるようにした電動式火力調節弁を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、バーナへのガス供給路に介設される電動式火力調節弁であって、ステッピングモータの回転で運動変換機構を介して弁体を直線運動させることにより弁開度を可変するように構成され、更に、弁体を閉じ方向と開き方向との一方に移動させるステッピングモータの回転方向を正転方向として、ステッピングモータを正転方向に回転させて弁体を前記一方のストローク端位置に移動させると共に、その後の更なる正転方向の回転でステッピングモータを脱調させる脱調運転を行い、脱調運転停止時のステッピングモータの回転位置を原点位置として、この原点位置を基準にして弁開度に対応するステッピングモータの回転位置を決定する制御を行うものにおいて、脱調運転を行う直前のステッピングモータの回転位置を脱調前回転位置として記憶し、脱調運転時に、ステッピングモータを脱調前回転位置から原点位置まで回転させるのに必要な必要角度に所定角度を加えた回転角度だけ正転方向に回転させることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、脱調運転時のステッピングモータの回転角度が脱調前回転位置に応じて可変設定されることになる。そのため、脱調前回転位置が上記一方のストローク端位置に弁体が到達する回転位置に近い場合でも、弁体が上記一方のストローク端位置に到着した後にステッピングモータが長い間正転方向に回転し続けることはない。従って、運動変換機構に長い間強い応力が作用し続けることはなく、運動変換機構での食付きロックの発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態の電動式火力調節弁の切断側面図。
図2】実施形態の電動式火力調節弁の要部の分解状態の斜視図。
図3】実施形態の電動式火力調節弁におけるステッピングモータの回転位置と弁開度との関係を示す特性図。
図4】実施形態の電動式火力調節弁で行う脱調運転制御の内容を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1を参照して、Aは、コンロバーナ等のバーナBへのガス供給路Gに介設する本発明の実施形態の電動式火力調節弁である。この火力調節弁Aは、ガス供給路Gの上流側部分と下流側部分とを夫々接続する流入口11と流出口12とを有する弁筐1を備えている。弁筐1内には、流入口11に連通する弁室13と、弁室13の一端の弁座14とが設けられ、弁座14に、流出口12に連通する弁孔15が開設されている。
【0010】
電動式火力調節弁Aは、コントローラCで制御されるステッピングモータ2により運動変換機構3を介して弁体4を直線運動させることにより弁開度を可変するように構成されている。図2も参照して、弁体4は、弁室13に、弁座14に接近する閉じ方向(図1の右方)と弁座14から離隔する開き方向(図1の左方)とに移動自在に設けられた主弁体41と、主弁体41に対し開き方向に対向する副弁体42とで構成されている。主弁体41は、第1弁バネ411により開き方向に付勢され、副弁体42は、主弁体41に対し第2弁バネ421により第1弁バネ411よりも強い付勢力で開き方向に付勢される。また、主弁体41に対する副弁体42の開き方向への移動を定位置で制止するストッパ手段43が設けられている。
【0011】
主弁体41は、弁孔15に挿入可能なニードル部412と、弁座14に着座可能な、ゴム等の弾性材料で形成された環状の閉塞部413とを備えている。主弁体41には、更に閉塞部413が弁座14に着座した状態でも主弁体41の上流側から下流側にガスを流すバイパス孔414と、副弁体42が着座可能で、バイパス孔414が開口する副弁座415とが形成されている。バイパス孔414には、バーナの最小火力を規定するオリフィス部414aが設けられている。また、主弁体41の開き方向の端部には、副弁体42を囲うようにして開き方向にのびるガイド筒部416が結合されている。ガイド筒部416の外周面には、弁室13の周壁面に摺接する複数の突条416aが突設され、また、ガイド筒部416の基端部には、ガイド筒部416の内外を連通する透孔416bが形成されている。副弁体42の外周面には、主弁体41のガイド筒416の内周面に摺接するガイド部422が設けられている。
【0012】
ストッパ手段43は、主弁体41のガイド筒部416に形成した窓孔431と、副弁体42の外周面に突設した、窓孔431に遊びを持って挿入される爪部432とで構成されている。そして、副弁体42が主弁体41に対し開き方向に移動して、窓孔431の開き方向の端縁に爪部432が係合したところで、副弁体42が主弁体41に対しそれ以上開き方向に移動しないようにしている。
【0013】
運動変換機構3は、ステッピングモータ2の出力軸21に連結される雄ねじ31と、雄ねじ31が螺合する、回り止めされた摺動子32とから成る送りねじ機構と、摺動子32が当接する、送りねじ機構の配置部を弁室13に対し仕切るダイヤフラム33と、ダイヤフラム33に連結された直動体34とで構成されている。直動体34の閉じ方向の端面は、球面状の凸面に形成されており、この凸面を、副弁体42の開き方向の端面に当接させている。
【0014】
図1に示す如く、主弁体41(正確には、主弁体41の閉塞部413)が弁座14に着座すると共に、副弁体42が主弁体41の副弁座415に着座してバイパス孔414を閉塞する状態が、電動式火力調節弁Aの全閉状態であって、バーナBへのガス供給が停止される。この全閉状態からステッピングモータ2により運動変換機構3の直動体34を開き方向に移動させると、副弁体42が第2弁バネ421の付勢力により直動体34に追従して開き方向に移動する。主弁体41に対する副弁体42の開き方向への移動がストッパ手段43で制止されるまでは、主弁体41の開き方向への移動が第2弁バネ421の付勢力によって阻止されて、主弁体41が弁座14に着座した状態に維持されると共に、副弁体42が副弁座415から離隔して、バイパス孔414が開放され、電動式火力調節弁Aは、バーナBの火力を最小にする最小火力状態になる。主弁体41に対する副弁体42の開き方向への移動がストッパ手段43で制止された後、副弁体42を更に開き方向に移動させれば、主弁体41が第1弁バネ411の付勢力により副弁体42に追従して開き方向に移動し、主弁体41が弁座14から離隔して、バーナBの火力が次第に増加する。
【0015】
ここで、弁体4を閉じ方向に移動させるステッピングモータ2の回転方向を正転方向、弁体4を開き方向に移動させるステッピングモータ2の回転方向を逆転方向として、ステッピングモータ2の回転位置と弁開度(バーナBの火力)との関係は、ステッピングモータ2を正転方向に回転させるときは、図3のa線で示す通りになり、ステッピングモータ2を逆転方向に回転させるときは、図3のb線で示す通りになる。そして、同じ弁開度になるようにステッピングモータ2を正転方向に回転させたときの回転位置と逆転方向に回転させたときの回転位置との間には、運動変換機構3が持つ遊びによる回転角度差、即ち、ヒステリシスθhsを生ずる。
【0016】
また、電動式火力調節弁Aの上流側に設ける図外の電磁安全弁を閉弁させるバーナ消火時に、ステッピングモータ2を正転方向に回転させて弁体4を閉じ方向のストローク端位置(上記全閉状態となる位置)に移動させると共に、その後の更なる正転方向の回転でステッピングモータ2を脱調させる脱調運転を行う。そして、コントローラCは、脱調運転停止時のステッピングモータ2の回転位置を原点位置として、この原点位置を基準にして図3に示す特性線に従って弁開度に対応するステッピングモータ2の回転位置を決定する制御を行う。ここで、弁体4が閉じ方向のストローク端位置に到着した後もステッピングモータ2が長い間正転方向に回転し続けると、運動変換機構3(特に雄ネジ31と摺動子32との螺合部)に長い間強い応力が作用し続けて、運動変換機構3での食付きロックが発生し、弁体4がうまく動かなくなることがある。
【0017】
そこで、本実施形態では、コントローラCにより図4に示す脱調運転制御を行うようにしている。この制御では、先ず、STEP1でステッピングモータ2の現在の回転位置を記憶更新することをSTEP2で消火指令が出されたと判断されるまで繰り返す。そして、消火指令が出されたときに、STEP2からSTEP3に進み、STEP1での回転位置の更新を終了する。従って、STEP1で記憶した回転位置は、脱調運転を行う直前のステッピングモータ2の回転位置である脱調前回転位置となる。STEP3では、脱調前回転位置から原点位置まで回転させるのに必要な必要角度に所定角度を加えた角度を脱調時回転角度として算出する。尚、必要角度に所定角度を加えるのは、通常の火力調節中の意図しないステッピングモータ2の脱調で、ステッピングモータ2を正転方向に必要角度回転させても、弁体4が閉じ方向のストローク端位置に到達しない可能性があるためである。所定角度は、全開位置から原点位置までのステッピングモータ2の回転角度の10%程度(例えば、35°)に設定される。尚、所定角度を一定角度にせずに、例えば、必要角度の10%に設定する等、変化させてもよい。
【0018】
上記の如く脱調時回転角度を算出すると、STEP4に進み、ステッピングモータ2を脱調時回転角度だけ正転方向に回転させた後、脱調運転を停止する。次に、STEP5において、今回の脱調運転停止時のステッピングモータ2の回転位置たる新たな原点位置を基準して決定される所定の点火開度に対応する回転位置までステッピングモータ2を逆転方向に回転させて、一連の処理を終了する。
【0019】
本実施形態の制御によれば、脱調運転時のステッピングモータ2の回転角度が脱調前回転位置に応じて可変設定されることになる。そのため、脱調前回転位置が閉じ方向のストローク端位置に弁体4が到達する回転位置に近い場合でも、弁体4が閉じ方向のストローク端位置に到着した後にステッピングモータ2が長い間正転方向に回転し続けることはない。例えば、ステッピングモータ2が原点位置まで回転したところで、弁体4が閉じ方向のストローク端位置に到達すれば、その後ステッピングモータ2は上記所定角度だけ正転方向に回転するだけになる。従って、運動変換機構3に長い間強い応力が作用し続けることはなく、運動変換機構3での食付きロックの発生を防止することができる。
【0020】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記実施形態では、弁体4を閉じ方向に移動させるステッピングモータ2の回転方向を正転方向としているが、弁体4を開き方向に移動させるステッピングモータ2の回転方向を正転方向として、ステッピングモータ2の正転方向の回転により弁体4を開き方向のストローク端位置に移動させて、ステッピングモータ2を脱調させるようにしてもよい。また、運動変換機構3に、上記実施形態の送りねじ機構に代えて回転運動を直線運動に変換するカム機構を組み込むことも可能である。更に、上記実施形態では、弁体4を主弁体41と副弁体42とで構成しているが、弁体を単一構造のものとすることも可能である。
【符号の説明】
【0021】
A…電動式火力調節弁、B…バーナ、G…ガス供給路、2…ステッピングモータ、3…運動変換機構、4…弁体。
図1
図2
図3
図4