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  • 特開-予混合装置 図1
  • 特開-予混合装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119689
(43)【公開日】2023-08-29
(54)【発明の名称】予混合装置
(51)【国際特許分類】
   F23N 5/24 20060101AFI20230822BHJP
   F23D 14/62 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
F23N5/24 102A
F23D14/62
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022022682
(22)【出願日】2022-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】弁理士法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】則竹 克哉
(72)【発明者】
【氏名】三浦 卓也
【テーマコード(参考)】
3K003
3K017
【Fターム(参考)】
3K003QA05
3K003QB01
3K003QB05
3K017CA01
3K017CB08
3K017CC01
3K017CE03
(57)【要約】
【課題】空気に燃料ガスを混合し、混合気をファン5を介してバーナ1に供給する予混合装置であって、ファン5の上流側の空気供給路6に設けられたガス吸引部61に下流端が接続されたガス供給路7に、上流側から順に元弁72とゼロガバナ73と可変絞り弁74とが介設され、バーナ1の火炎に晒されるフレームロッド9で検出される火炎電流に基づいて割出される混合気の空気過剰率が適正値になるように可変絞り弁74の開度を調節する制御を行うものにおいて、元弁72の開故障を生じた状態でのポストパージ運転時の燃料ガスの放出を抑制できるようにする。
【解決手段】ポストパージ運転を行うときに、フレームロッド9が火炎電流を検出したときは、元弁72の開故障を生じたと判断して、可変絞り弁74の開度をバーナ1が消火するように設定された最小開度まで絞る制御を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気に燃料ガスを混合し、混合気をファンを介してバーナに供給する予混合装置であって、ファンの上流側の空気供給路と、空気供給路に設けられたガス吸引部に下流端が接続されたガス供給路と、ガス供給路に上流側から順に介設された、元弁と、二次ガス圧を大気圧に調圧するゼロガバナと、可変絞り弁とを備えると共に、バーナの火炎に晒されるフレームロッドと、制御手段とを備え、制御手段は、フレームロッドで検出される火炎電流に基づいて割出される混合気の空気過剰率が適正値になるように可変絞り弁の開度を調節する制御を行うように構成されるものにおいて、
制御手段は、燃焼停止指令が出て、元弁を閉弁させた状態でファンを駆動するポストパージ運転を行うときに、フレームロッドが火炎電流を検出しなければ、可変絞り弁の開度を燃焼停止指令が出される直前の開度に保持するが、フレームロッドが火炎電流を検出した場合は、元弁の開故障を生じたと判断して、可変絞り弁の開度をバーナが消火するように設定された最小開度まで絞る制御を行うように構成されることを特徴とする予混合装置。
【請求項2】
前記可変絞り弁の前記最小開度は、燃料ガスの流れを遮断する全閉開度であることを特徴とする請求項1記載の予混合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気に燃料ガスを混合し、混合気をファンを介してバーナに供給する予混合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の予混合装置として、ファンの上流側の空気供給路と、空気供給路に設けられたガス吸引部に下流端が接続されたガス供給路と、ガス供給路に上流側から順に介設された、元弁と、二次ガス圧を大気圧に調圧するゼロガバナとを備えるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。ここで、燃料ガスの供給量は、二次ガス圧である大気圧とガス吸引部に作用する負圧との差圧に応じて変化する。そして、ガス吸引部に作用する負圧がファン回転数に応じて変化するため、燃料ガスの供給量はファン回転数、即ち、空気の供給量に比例して変化する。従って、要求燃焼量に応じてファン回転数を制御することにより、要求燃焼量に応じた量の混合気がバーナに供給され、混合気の空気過剰率(一次空気量/化学量論的空気量)は一定になる。
【0003】
ところで、燃料ガスとして同じガス種を使用していても、時間により燃料ガスの発熱量(ウォッベ指数)が変動することがある。上記従来例のものでは、燃料ガスの発熱量が変動しても、空気の供給量に対する燃料ガスの供給量の比は一定であるため、燃料ガスの発熱量の変動で混合気の空気過剰率が変動して、燃焼不良が発生してしまう。
【0004】
そこで、従来、ゼロガバナの下流側のガス供給路の部分に介設された可変絞り弁と、バーナの火炎に晒されるフレームロッドと、制御手段とを備え、フレームロッドで検出される火炎電流に基づいて割出される混合気の空気過剰率が所定値になるように、制御手段で可変絞り弁の開度を調節する制御を行う予混合装置も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
ところで、上記従来例の予混合装置では、元弁の開故障(開弁したままになる故障)を生じても、ファンを駆動しない限り燃料ガスは吸引されないので、ファン停止時に燃料ガスが放出されることはない。然し、燃焼停止指令が出て、元弁を閉弁させた状態でファンを駆動するポストパージ運転を行うときには、元弁の開故障を生じていると、燃料ガスが放出されてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-179447号公報
【特許文献2】特開2021-25722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上の点に鑑み、元弁の開故障を生じた状態でのポストパージ運転時の燃料ガスの放出を抑制できるようにした予混合装置を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、空気に燃料ガスを混合し、混合気をファンを介してバーナに供給する予混合装置であって、ファンの上流側の空気供給路と、空気供給路に設けられたガス吸引部に下流端が接続されたガス供給路と、ガス供給路に上流側から順に介設された、元弁と、二次ガス圧を大気圧に調圧するゼロガバナと、可変絞り弁とを備えると共に、バーナの火炎に晒されるフレームロッドと、制御手段とを備え、制御手段は、フレームロッドで検出される火炎電流に基づいて割出される混合気の空気過剰率が適正値になるように可変絞り弁の開度を調節する制御を行うように構成されるものにおいて、制御手段は、燃焼停止指令が出て、元弁を閉弁させた状態でファンを駆動するポストパージ運転を行うときに、フレームロッドが火炎電流を検出しなければ、可変絞り弁の開度を燃焼停止指令が出される直前の開度に保持するが、フレームロッドが火炎電流を検出したときは、元弁の開故障を生じたと判断して、可変絞り弁の開度をバーナが消火するように設定された最小開度まで絞る制御を行うように構成されることを特徴とする。
【0009】
ここで、元弁の開故障を生じた状態でのポストパージ運転時には、燃料ガスが吸引されて、バーナでの燃焼が継続するため、フレームロッドが火炎電流を検出する。そして、本発明によれば、ポストパージ運転を行うときに、フレームロッドが火炎電流を検出した場合は、可変絞り弁の開度を最小開度まで絞るため、バーナが消火すると共に燃料ガスの放出が抑制される。また、本発明によれば、元弁が開故障しておらず、ポストパージ運転時にフレームロッドが火炎電流を検出しなければ、可変絞り弁の開度は、燃焼停止指令が出される直前の開度に保持される。そのため、次の点火時に、混合気の空気過剰率に基づく可変絞り弁の開度調節が不要になり、迅速な点火動作が可能になる。更に、混合気の空気過剰率を適正値に維持するために設ける可変絞り弁とフレームロッドとを元弁の開故障時のガス放出防止手段に兼用できるため、別途部品を必要とせずコスト的にも有利である。
【0010】
また、本発明において、可変絞り弁の上記最小開度は、燃料ガスの流れを遮断する全閉開度であることが望ましい。これによれば、元弁の開故障を生じた状態でのポストパージ運転時に燃料ガスが放出されることを確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態の予混合装置とこの予混合装置から混合気が供給されるバーナを具備する燃焼装置とを示す説明図。
図2】実施形態の予混合装置の制御手段が実行する燃焼停止指令が出されたときの制御内容を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に示す燃焼装置は、全一次燃焼式のバーナ1と、バーナ1の燃焼面1aから噴出する混合気の燃焼空間を囲う燃焼筐2と、燃焼筐2内に配置した熱交換器3とを備える熱源機である。混合気の燃焼で生ずる燃焼ガスは、熱交換器3を加熱した後に燃焼筐2の端部に接続される排気筒4を介して外部に排出される。また、本発明の実施形態の予混合装置Aにより、空気に燃料ガスを混合し、混合気をファン5とその下流側の混合気供給路51とを介してバーナ1に供給している。
【0013】
予混合装置Aは、ファン5の上流側の空気供給路6と、燃料ガスを供給するガス供給路7と、ファン5、後述するバタフライ弁62、元弁72及び可変絞り弁74を制御する制御手段たるコントローラ8とを備えている。ガス供給路7の下流端は、空気供給路6に設けられたガス吸引部61に接続されている。ガス吸引部61の上流側に隣接する空気供給路6の部分には、バタフライ弁62を配置した部分よりも小径なベンチュリ部63が設けられている。ベンチュリ部63の下流側に隣接する空気供給路6の部分は、ベンチュリ部63より大径の筒部64で囲われている。そして、ベンチュリ部63の下流端部を筒部64の上流端部に環状の隙間を存して挿入し、この隙間でガス吸引部61を構成している。ガス供給路7の下流端には、筒部64を囲うようにして、ガス吸引部61に連通するガス室71が設けられている。また、ガス供給路7には、上流側から順に、元弁72と、二次ガス圧を大気圧に調圧するゼロガバナ73と、可変絞り弁74とが介設されている。
【0014】
ガス吸引部61を介して供給される燃料ガスの量は、二次ガス圧である大気圧とガス吸引部61に作用する負圧との差圧に応じて変化する。ここで、ガス吸引部61に作用する負圧は、ファン5の回転数に応じて変化する。そのため、燃料ガスの供給量はファン5の回転数、即ち、空気の供給量に比例して変化する。また、燃料ガスの供給量と空気の供給量との比率は、可変絞り弁74の開度(図示省略した弁体と弁座との間の隙間量)によって変化する。可変絞り弁74の開度を使用するガス種に応じた所定の基準開度にすることで、混合気の空気過剰率が所定の適正値(例えば、1.3)になる。そして、要求燃焼量(設定湯温の温水を出湯するために必要な燃焼量)に応じてファン5の回転数を制御することにより、空気過剰率が適正値で要求燃焼量に応じた量の混合気がバーナ1に供給される。
【0015】
尚、排気筒4への風の侵入で排気不良を生じないようにするため、即ち、耐風性能を確保するため、ファン5の下限回転数をあまり低く設定することはできない。そして、要求燃焼量がファン5の下限回転数に対応する所定値以下になった場合には、要求燃焼量に対応する量の空気を供給できなくなる。
【0016】
そこで、ガス吸引部61より上流側の空気供給路6の部分に、当該部分の通気抵抗を大小2段に切換えるために、図1に実線で示す閉じ姿勢と仮想線で示す開き姿勢とに切換えられるバタフライ弁62を配置している。そして、要求燃焼量が上記所定値以下になった場合には、バタフライ弁62を閉じ姿勢にして、空気供給路6の通気抵抗を大きくし、ファン5の回転数を下限回転数以下にせずに、所定値以下の要求燃焼量に対応する量の空気を供給できるようにしている。但し、バタフライ弁62を閉じ姿勢にして、空気供給路6の通気抵抗を大きくするだけでは、空気供給路6内の負圧が増加して、燃料ガスの供給量が過大となり、バーナ1に供給される混合気の空気過剰率が適正値を下回ってしまう。そのため、要求燃焼量が比較的小さな場合には、バタフライ弁62を閉じ姿勢にして、空気供給路6の通気抵抗を大きくすると共に、可変絞り弁74を基準開度から所定開度分だけ絞って、ゼロガバナ73の下流側のガス供給路7の部分の通気抵抗を大きくした小能力状態として、空気過剰率が適正値で比較的小さな要求燃焼量に対応する量の混合気がバーナ1に供給されるようにし、要求燃焼量が比較的大きな場合には、バタフライ弁62を開き姿勢にして、空気供給路6の通気抵抗を小さくすると共に、可変絞り弁74を基準開度まで開いて、ゼロガバナ73の下流側のガス供給路7の部分の通気抵抗を小さくした大能力状態として、空気過剰率が適正値で比較的大きな要求燃焼量に対応する量の混合気がバーナ1に供給されるようにしている。
【0017】
また、燃料ガスとして同じガス種を使用していても、時間により燃料ガスの発熱量(ウォッベ指数)が変動することがある。この場合、空気の供給量に対する燃料ガスの供給量の比が一定であると、燃料ガスの発熱量の変動で混合気の空気過剰率が変動して、燃焼不良が発生してしまう。
【0018】
ここで、火炎検知のために設けられる、バーナ1の火炎に晒されるプレームロッド9で検出される火炎電流値は、混合気の空気過剰率が1.0であるときに最大になり、空気過剰率が1.0から増加したり減少したりするのに伴い減少する。そのため、フレームロッド9で検出される火炎電流値に基づいて混合気の空気過剰率を割出すことができる。そこで、火炎電流値に基づいて割出される混合気の空気過剰率が適正値になるように、コントローラ8により可変絞り弁74の開度を調節する制御を行っている。
【0019】
また、コントローラ8は、出湯が停止されて燃焼停止指令が出されたときに、図2に示すポストパージ運転制御を行う。この制御では、先ず、STEP1でファン5の駆動を継続したまま元弁72を閉弁させる。ここで、元弁72の開故障を生じていると、ファン5の吸引力によりガス吸引部61から燃料ガスが吸引されて、混合気がバーナ1に供給され、バーナ1での燃焼が継続して、フレームロッド9が火炎電流を検出する。そこで、STEP2において、フレームロッド9が検出した火炎電流値Ifrが消火の基準となる所定の閾値YI以下になったか否かを判別する。そして、Ifr≦YIであれば、STEP3で一定時間が経過したか否かを判別し、一定時間経過したときに、STEP4でファン5を停止してポストパージ運転を停止する。
【0020】
一方、Ifr>YIであれば、元弁72の開故障を生じていると判断してSTEP5に進み、可変絞り弁74の開度をバーナ1が消火するように設定された最小開度まで絞る。尚、最小開度は、具体的には、弁体が弁座に当接し、ガス供給量が燃焼限界以下となってバーナ1が消火するように設定される。その後、STEP6でファン5を停止すると共に、STEP7で元弁72の開故障を生じていることを表示するエラー表示を行う。
【0021】
以上の制御によれば、ポストパージ運転を行うときに、フレームロッド9が火炎電流を検出した場合(Ifr>YIの場合)は、可変絞り弁74の開度を最小開度まで絞るため、バーナ1が消火すると共に燃料ガスの放出が抑制される。一方、元弁72が開故障しておらず、ポストパージ運転時にフレームロッド9が火炎電流を検出しない場合(Ifr≦YIの場合)は、可変絞り弁74の開度を変化させる制御が行われないため、可変絞り弁74の開度は、燃焼停止指令が出される直前の開度に保持される。そのため、次の点火時に、混合気の空気過剰率に基づく可変絞り弁74の開度調節が不要になり、迅速な点火動作が可能になる。更に、混合気の空気過剰率を適正値に維持するために設ける可変絞り弁74とフレームロッド9とを元弁72の開故障時のガス放出防止手段に兼用できるため、コスト的にも有利である。
【0022】
また、可変絞り弁74を、弁体と弁座との一方に装着したゴム等のシール部材を有するものとしてもよい。この場合、弁体が弁座にメタルタッチではなくシール部材を介して当接するため、可変絞り弁74を燃料ガスの流れを遮断する全閉開度まで絞ることができる。そして、STEP5で可変絞り弁74の開度を最小開度たる全閉開度まで絞ることが望ましい。これによれば、元弁72の開故障を生じた状態でのポストパージ運転時に燃料ガスが放出されることを確実に防止できる。
【0023】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0024】
A…予混合装置、1…バーナ、5…ファン、6…空気供給路、61…ガス吸引部、7…ガス供給路、72…元弁、73…ゼロガバナ、74…可変絞り弁、8…コントローラ(制御手段)、9…フレームロッド。
図1
図2