(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119731
(43)【公開日】2023-08-29
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 15/06 20060101AFI20230822BHJP
【FI】
B60C15/06 B
B60C15/06 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022022736
(22)【出願日】2022-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】信國 真吾
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BA01
3D131BA20
3D131BB01
3D131BC02
3D131BC05
3D131BC31
3D131HA37
3D131HA38
3D131KA06
(57)【要約】
【課題】耐久性の低下を小さく抑えながら、転がり抵抗の低減を達成できる、タイヤ2の提供。
【解決手段】ビード10のエイペックス32は、エイペックス本体48とストリップエイペックス50と中間エイペックス52とを備える。ストリップエイペックス50の内端はカーカスプライ38のプライ本体38aとエイペックス本体48との間に位置する。中間エイペックス52の内端はストリップエイペックス
50とエイペックス本体48との間に位置する。エイペックス本体48の外端は中間エイペックス52の内端と外端との間に位置する。中間エイペックス52はストリップエイペックス
50の内端と外端との間に位置する。中間エイペックス52はエイペックス本体48よりも硬く、ストリップエイペックス50は中間エイペックス52よりも硬い。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のビードと、一対の前記ビードのうち第一のビードと第二のビードとの間を架け渡すカーカスと、を備える、タイヤであって、
それぞれのビードが、コアと、エイペックスとを備え、
前記カーカスがカーカスプライを備え、
前記カーカスプライが、前記第一のビードのコアと前記第二のビードのコアとの間を架け渡すプライ本体と、前記プライ本体に連なり軸方向内側から外側に向かって前記コアの周りで折り返される一対の折り返し部とを備え、
前記エイペックスが、前記コアの径方向外側に位置するエイペックス本体と、前記プライ本体の軸方向外側に位置するストリップエイペックスと、前記ストリップエイペックスの軸方向外側に位置する中間エイペックスとを備え、
前記エイペックス本体が外向きに先細りであり、
前記ストリップエイペックスの内端が、前記プライ本体と前記エイペックス本体との間に位置し、
前記中間エイペックスの内端が、前記ストリップエイペックスと前記エイペックス本体との間に位置し、
前記エイペックス本体の外端が、径方向において、前記中間エイペックスの内端と外端との間に位置し、
前記中間エイペックスが、径方向において、前記ストリップエイペックスの内端と外端との間に位置し、
前記中間エイペックスが前記エイペックス本体よりも硬く、
前記ストリップエイペックスが前記中間エイペックスよりも硬い、
タイヤ。
【請求項2】
前記中間エイペックスの長さが15mm以上25mm以下である、
請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記中間エイペックスの内端から前記エイペックス本体の外端までの長さが5mm以上15mm以下である、
請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記中間エイペックスの硬さHmと前記エイペックス本体の硬さHaとの差(Hm-Ha)が5以下である、
請求項1から3のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記ストリップエイペックスの硬さHsと前記中間エイペックスの硬さHmとの差(Hs-Hm)が5以下である、
請求項1から4のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記エイペックス本体の硬さHaが60以上80以下である、
請求項1から5のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記エイペックス本体の長さが15mm以上45mm以下である、
請求項1から6のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項8】
前記エイペックス本体の最大幅の、前記エイペックス本体の長さに対する比が0.2以上0.7以下である、
請求項7に記載のタイヤ。
【請求項9】
前記エイペックス本体の外端に対応する、前記プライ本体の位置から前記ストリップエイペックスの内端側に15mm離れた、前記プライ本体の位置が第一基準位置であり、
前記中間エイペックスの外端に対応する、前記プライ本体の位置から、前記ストリップエイペックスの外端側に10mm離れた、前記プライ本体の位置が第二基準位置であり、
前記エイペックス本体の硬さHa、前記ストリップエイペックスの硬さHs及び前記中間エイペックスの硬さHm、並びに、前記プライ本体の法線に沿って計測される、前記エイペックス本体の厚さta、前記ストリップエイペックスの厚さts及び前記中間エイペックスの厚さtmを用いて、次の式(1)で示される剛性指数Rで前記プライ本体各位置における前記エイペックスの剛性が表され、
R = Ha×ta+Hs×ts+Hm×tm (1)
前記第一基準位置における、前記エイペックスの剛性指数Rを基準剛性指数Rbとしたとき、前記第一基準位置から前記第二基準位置までのゾーンの任意の位置における、前記エイペックスの剛性指数Rの、前記基準剛性指数Rbに対する比率が100%以上110%以下である、
請求項1から8のいずれか一項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
環境への配慮から、車両に装着されるタイヤにおいては、転がり抵抗の低減が求められている。転がり抵抗の低減のために、例えば、薄いサイドウォールが採用される。この場合、サイド部の剛性が低下する。良好な操縦安定性を維持するために、ビードのエイペックスを、従来のビードエイペックスであるエイペックス本体と硬質なストリップエイペックスとで構成し、カーカスプライのプライ本体とエイペックス本体との間にストリップエイペックスを設けることで、タイヤが良好な操縦安定性を維持できることが知られている(例えば、下記の特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述のストリップエイペックスを採用したタイヤでは、ストリップエイペックスの内端部分がプライ本体とエイペックス本体との間に挟まれる。エイペックス本体は外向きに先細りである。エイペックス本体の外端付近では、このエイペックス本体とストリップエイペックスとの間の剛性差は大きい。タイヤにおいて、エイペックス本体の外端付近には歪が集中する。この剛性差は、耐久性の低下を招く恐れがある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものである。本発明の目的は、耐久性の低下を小さく抑えながら、転がり抵抗の低減を達成できる、タイヤの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るタイヤは、一対のビードと、一対の前記ビードのうち第一のビードと第二のビードとの間を架け渡すカーカスと、を備える。それぞれのビードは、コアと、エイペックスとを備える。前記カーカスはカーカスプライを備える。前記カーカスプライは、前記第一のビードのコアと前記第二のビードのコアとの間を架け渡すプライ本体と、前記プライ本体に連なり軸方向内側から外側に向かって前記コアの周りで折り返される一対の折り返し部とを備える。前記エイペックスは、前記コアの径方向外側に位置するエイペックス本体と、前記プライ本体の軸方向外側に位置するストリップエイペックスと、前記ストリップエイペックスの軸方向外側に位置する中間エイペックスとを備える。前記エイペックス本体は外向きに先細りである。前記ストリップエイペックスの内端は、前記プライ本体と前記エイペックス本体との間に位置する。前記中間エイペックスの内端は、前記ストリップエイペックスと前記エイペックス本体との間に位置する。前記エイペックス本体の外端は、径方向において、前記中間エイペックスの内端と外端との間に位置する。前記中間エイペックスは、径方向において、前記ストリップエイペックスの内端と外端との間に位置する。前記中間エイペックスは前記エイペックス本体よりも硬く、前記ストリップエイペックスは前記中間エイペックスよりも硬い。
【0007】
好ましくは、このタイヤでは、前記中間エイペックスの長さは15mm以上25mm以下である。
【0008】
好ましくは、このタイヤでは、前記中間エイペックスの内端から前記エイペックス本体の外端までの長さは5mm以上15mm以下である。
【0009】
好ましくは、このタイヤでは、前記中間エイペックスの硬さHmと前記エイペックス本体の硬さHaとの差(Hm-Ha)は5以下である。
【0010】
好ましくは、このタイヤでは、前記ストリップエイペックスの硬さHsと前記中間エイペックスの硬さHmとの差(Hs-Hm)は5以下である。
【0011】
好ましくは、このタイヤでは、前記エイペックス本体の硬さHaは60以上80以下である。
【0012】
好ましくは、このタイヤでは、前記エイペックス本体の長さは15mm以上45mm以下である。
【0013】
好ましくは、このタイヤでは、前記エイペックス本体の最大幅の、前記エイペックス本体の長さに対する比は0.2以上0.7以下である。
【0014】
好ましくは、このタイヤでは、前記エイペックス本体の外端に対応する、前記プライ本体の位置から前記ストリップエイペックスの内端側に15mm離れた、前記プライ本体の位置が第一基準位置であり、前記中間エイペックスの外端に対応する、前記プライ本体の位置から、前記ストリップエイペックスの外端側に10mm離れた、前記プライ本体の位置が第二基準位置である。前記エイペックス本体の硬さHa、前記ストリップエイペックスの硬さHs及び前記中間エイペックスの硬さHm、並びに、前記プライ本体の法線に沿って計測される、前記エイペックス本体の厚さta、前記ストリップエイペックスの厚さts及び前記中間エイペックスの厚さtmを用いて、次の式(1)で示される剛性指数Rで前記プライ本体各位置における前記エイペックスの剛性が表される。
R = Ha×ta+Hs×ts+Hm×tm (1)
前記第一基準位置における、前記エイペックスの剛性指数Rを基準剛性指数Rbとしたとき、前記第一基準位置から前記第二基準位置までのゾーンの任意の位置における、前記エイペックスの剛性指数Rの、前記基準剛性指数Rbに対する比率は100%以上110%以下である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、耐久性の低下を小さく抑えながら、転がり抵抗の低減を達成できる、タイヤが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るタイヤの一部を示す断面図である。
【
図2】
図2は、タイヤのビード部を示す断面図である。
【
図3】
図3は、エイペックスの剛性コントロールを説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて、本発明が詳細に説明される。
【0018】
タイヤはリムに組まれる。タイヤの内部には空気が充填され、タイヤの内圧が調整される。本開示において、リムに組まれたタイヤは、タイヤ-リム組立体である。タイヤ-リム組立体は、リムと、このリムに組まれたタイヤとを備える。
【0019】
本開示においては、タイヤを正規リムに組み、タイヤの内圧を正規内圧に調整し、このタイヤに荷重をかけていない状態は、正規状態と称される。
【0020】
本開示においては、特に言及がない限り、タイヤ各部の寸法及び角度は、正規状態で測定される。
正規リムにタイヤを組んだ状態で測定できない、タイヤの子午線断面における各部の寸法及び角度は、回転軸を含む平面に沿ってタイヤを切断することにより得られる、タイヤの断面(以下、基準切断面)において、左右のビード間の距離を、正規リムに組んだタイヤにおけるビード間の距離に一致させて、測定される。
【0021】
正規リムとは、タイヤが依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。
【0022】
正規内圧とは、タイヤが依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。
【0023】
正規荷重とは、タイヤが依拠する規格において定められた荷重を意味する。JATMA規格における「最大負荷能力」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「LOAD CAPACITY」は、正規荷重である。
【0024】
本開示において、タイヤを構成する要素のうち、架橋ゴムからなる要素の硬さは、JIS K6253の規定に準じて、23℃の温度条件下でタイプAデュロメータを用いて測定される。
【0025】
本開示において、タイヤのトレッド部とは、路面と接地する、タイヤの部位である。ビード部とは、リムに嵌め合わされる、タイヤの部位である。サイド部とは、トレッド部とビード部との間を架け渡す、タイヤの部位である。タイヤは、部位として、トレッド部、一対のビード部及び一対のサイド部を備える。
【0026】
図1は、本発明の一実施形態に係るタイヤ2の一部を示す。このタイヤ2は、乗用車やバンタイプの小型商用車、小型トラック等に好適に使用される。
図1に示されたタイヤ2は、ピックアップトラックに適合し得る乗用車用の空気入りタイヤである。本開示のタイヤ2は、このような使用態様に限定されるものではない。
タイヤ2はリムRに組まれる。リムRは正規リムである。タイヤ2の内部には空気が充填され、タイヤ2の内圧が調整される。
【0027】
図1は、タイヤ2の回転軸を含む平面に沿った、このタイヤ2の断面(以下、子午線断面)の一部を示す。
図1において、左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の径方向である。
図1の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の周方向である。一点鎖線CLはタイヤ2の赤道面を表す。
【0028】
図1において符号PWで示される位置はタイヤ2の軸方向外端である。模様や文字等の装飾が外面にある場合、軸方向外端PW(以下、外端PW)は、正規状態のタイヤ2において、装飾がないと仮定して得られる仮想外面に基づいて特定される。第一の外端PWから第二の外端PWまでの軸方向距離は、このタイヤ2の断面幅(JATMA等参照)である。断面幅はタイヤ2の最大幅であり、外端PWはこのタイヤ2が最大幅を示す位置(以下、最大幅位置)である。
【0029】
このタイヤ2は、トレッド4、一対のサイドウォール6、一対のクリンチ8、一対のビード10、カーカス12、ベルト14、バンド16、インナーライナー18及び一対のチェーファー20を備える。
【0030】
トレッド4は、トレッド面22において路面と接地する。トレッド4は路面と接地するトレッド面22を有する。トレッド4には溝24が刻まれる。これにより、トレッドパターンが構成される。
【0031】
トレッド4は、キャップ部26と、ベース部28とを備える。
キャップ部26はトレッド面22を含む。キャップ部26は、耐摩耗性及びグリップ性能が考慮された架橋ゴムからなる。
ベース部28はキャップ部26の径方向内側に位置する。ベース部28はキャップ部26で覆われる。ベース部28はベルト14及びバンド16を覆う。ベース部28は低発熱性の架橋ゴムからなる。
【0032】
それぞれのサイドウォール6は、トレッド4の端に連なる。サイドウォール6は、トレッド4の径方向内側に位置する。サイドウォール6は、耐カット性を考慮した架橋ゴムからなる。
転がり抵抗の低減の観点から、最大幅位置PWにおけるサイドウォールの厚さは5.0mm以下であることが好ましい。サイド部の剛性確保の観点から、この厚さは3.0mm以上であることが好ましい。
【0033】
それぞれのクリンチ8はサイドウォール6の径方向内側に位置する。クリンチ8はリムRのフランジと接触する。クリンチ8は耐摩耗性が考慮された架橋ゴムからなる。
【0034】
それぞれのビード10はクリンチ8の軸方向内側に位置する。ビード10はサイドウォール6の径方向内側に位置する。
ビード10は、コア30と、エイペックス32とを備える。コア30は周方向にのびる。図示されないが、コア30はスチール製のワイヤーを含む。エイペックス32はコア30の径方向外側に位置する。エイペックス32は架橋ゴムからなる。
【0035】
カーカス12は、トレッド4、一対のサイドウォール6及び一対のクリンチ8の内側に位置する。カーカス12は、一対のビード10のうちの第一ビード10と第二ビード10との間を架け渡す。カーカス12は少なくとも1枚のカーカスプライ34を含む。
【0036】
このタイヤ2のカーカス12は2枚のカーカスプライ34で構成される。図示されないが、それぞれカーカスプライ34は並列された多数のカーカスコードを含む。これらカーカスコードは赤道面と交差する。このタイヤ2のカーカス12はラジアル構造を有する。このタイヤ2では、有機繊維からなるコードがカーカスコードとして用いられる。有機繊維としては、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエステル繊維及びアラミド繊維が例示される。
【0037】
2枚のカーカスプライ34のうち、トレッド4の内側において径方向内側に位置するカーカスプライ34が第一カーカスプライ36である。トレッド4の内側において第一カーカスプライ36の径方向外側に位置するカーカスプライ34が第二カーカスプライ38である。
【0038】
第一カーカスプライ36は、第一プライ本体36aと、一対の第一折り返し部36bとを含む。第一プライ本体36aは、第一ビード10のコア30と第二ビード10のコア30との間を架け渡す。それぞれの第一折り返し部36bは、第一プライ本体36aに連なり軸方向内側から外側に向かってコア30の周りで折り返される。
【0039】
第二カーカスプライ38は、第二プライ本体38aと、一対の第二折り返し部38bとを含む。第二プライ本体38aは、第一コア30と第二コア30との間を架け渡す。それぞれの第二折り返し部38bは、第二プライ本体38aに連なり軸方向内側から外側に向かってコア30の周りで折り返される。
【0040】
このタイヤ2では、第一折り返し部36bの端は軸方向外端PWの径方向外側に位置する。第二折り返し部38bの端は外端PWの径方向内側に位置する。第二折り返し部38bの端は径方向において後述するエイペックス本体の外端とコア30との間に位置する。第二折り返し部38bは第一折り返し部36bの軸方向内側に位置する。
【0041】
ベルト14はトレッド4の径方向内側に位置する。ベルト14はカーカス12に積層される。ベルト14は、内側層40と、外側層42とを備える。
内側層40は第二プライ本体38aの径方向外側に位置し、第二プライ本体38aに積層される。外側層42は内側層40の径方向外側に位置し、内側層40に積層される。
【0042】
図示されないが、内側層40及び外側層42はそれぞれ、並列した多数のベルトコードを含む。これらベルトコードはトッピングゴムで覆われる。それぞれのベルトコードは赤道面に対して傾斜する。内側層40に含まれるベルトコードの傾斜の向きは、外側層42に含まれるベルトコードの傾斜の向きと逆向きである。ベルトコードの材質はスチールである。
【0043】
バンド16は、径方向においてトレッド4とベルト14との間に位置する。バンド16はベルト14に積層される。
図示されないが、バンド16は、らせん状に巻かれたバンドコードを含む。バンドコードはトッピングゴムで覆われる。バンドコードは実質的に周方向に延びる。詳細には、バンドコードが周方向に対してなす角度は、5°以下である。バンド16はジョイントレス構造を有する。有機繊維からなるコードがバンドコードとして用いられる。有機繊維としては、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエステル繊維及びアラミド繊維が例示される。
【0044】
このタイヤ2のバンド16はフルバンド44と一対のエッジバンド46とを備える。
フルバンド44は赤道面を挟んで相対する両端を有する。フルバンド44はベルト14に積層される。
一対のエッジバンド46は赤道面を挟んで軸方向に離して配置される。それぞれのエッジバンド46はフルバンド44に積層される。エッジバンド46はフルバンド44の端の部分を覆う。
このバンド16がフルバンド44のみで構成されてもよく、一対のエッジバンド46のみで構成されてもよい。
【0045】
インナーライナー18は、カーカス12の内側に位置する。インナーライナー18はタイヤ2の内面を構成する。インナーライナー18は、空気遮蔽性に優れた架橋ゴムからなる。インナーライナー18は、タイヤ2の内圧を保持する。
【0046】
それぞれのチェーファー20は、ビード10の径方向内側に位置する。チェーファー20は、布とこの布に含浸したゴムとからなる。チェーファー20はリムRのシートと接触する。
【0047】
図2は、
図1に示されたタイヤ2の一部を示す。
図2はタイヤ2のビード部を示す。
前述したように、このタイヤ2のビード10はコア30とエイペックス32とを備える。このタイヤ2のエイペックス32は、エイペックス本体48と、ストリップエイペックス50と、中間エイペックス52とを備える。
【0048】
エイペックス本体48はコア30の径方向外側に位置する。エイペックス本体48はコア30に積層される。エイペックス本体48はその底面48bにおいてコア30と接触する。このタイヤ2の子午線断面においてエイペックス本体48は、外向きに先細りである。エイペックス本体48は架橋ゴムからなる。エイペックス本体48の硬さHaは60以上80以下であることが好ましい。
【0049】
図2において符号Pmで示される位置は、エイペックス本体48の底面48bの中心である。中心Pmは、軸方向における底面48bの中心位置により表される。
符号Lで示される長さは、中心Pmとエイペックス本体48の外端48gとを結ぶ線分の長さである。本開示においては、この長さLがエイペックス本体48の長さである。この長さLはタイヤの子午線断面において得られる。底面48bが外向きに凸な形状を有する場合は、この底面48bの径方向外端(言い換えれば、頂点)とエイペックス本体48の外端48gとを結ぶ線分の長さで、エイペックス本体48の長さLが表される。
このタイヤ2では、耐久性向上の観点から、エイペックス本体48の長さLは15mm以上であることが好ましい。質量及び転がり抵抗への悪影響を抑える観点から、この長さLは45mm以下であることが好ましく、40mm以下であることがより好ましく、35mm以下であることがさらに好ましい。
【0050】
図2において符号Cで示される長さはエイペックス本体48の最大幅である。前述したように、このタイヤ2のエイペックス本体48は外向きに先細りである。このエイペックス本体48の軸方向幅は中心Pmにおいて最大幅Cを示す。最大幅Cは、中心Pmを通り軸方向にのびる直線とエイペックス本体48との交線の長さで表される。
このタイヤ2では、耐久性向上の観点から、エイペックス本体48の最大幅Cの、エイペックス本体48の長さLに対する比(C/L)は0.2以上であることが好ましい。安定にタイヤ2を製造できる観点から、比(C/L)は0.7以下であることが好ましい。
【0051】
ストリップエイペックス50は第二プライ本体38aの軸方向外側に位置する。ストリップエイペックス50はシート状の部材により構成される。ストリップエイペックス50はその全体が第二プライ本体38aに積層される。
ストリップエイペックス50の内端50nは第二プライ本体38aとエイペックス本体48との間に挟まれる。ストリップエイペックス50の内端50nは、エイペックス本体48の外端48gの径方向内側に位置する。エイペックス本体48の外端48gは、径方向において、ストリップエイペックス50の内端50nと外端50gとの間に位置する。
ストリップエイペックス50の外端50gは第一折り返し部36bの端の径方向内側に位置する。ストリップエイペックス50の外端50gは第二プライ本体38aと第一折り返し部36bとの間に位置する。ストリップエイペックス50の外端50gは第二プライ本体38aと第一折り返し部36bとの間に挟まれる。
ストリップエイペックス50は架橋ゴムからなる。ストリップエイペックス50の硬さHsは80以上100以下であることが好ましい。
【0052】
中間エイペックス52はストリップエイペックス50の軸方向外側に位置する。中間エイペックス52はシート状の部材により構成される。中間エイペックス52はその全体がストリップエイペックス50に積層される。
中間エイペックス52の内端52nはストリップエイペックス50の内端50nの径方向外側に位置する。中間エイペックス52の内端52nはエイペックス本体48の外端48gの径方向内側に位置する。中間エイペックス52の内端52nはストリップエイペックス50とエイペックス本体48との間に挟まれる。
中間エイペックス52の外端52gはストリップエイペックス50の外端50gの径方向内側に位置する。中間エイペックス52の外端52gはエイペックス本体48の外端48gの径方向外側に位置する。中間エイペックス52の外端52gはストリップエイペックス50と第一折り返し部36bとの間に位置する。中間エイペックス52の外端52gはストリップエイペックス50と第一折り返し部36bとの間に挟まれる。
中間エイペックス52は架橋ゴムからなる。中間エイペックス52の硬さHmは70以上90以下であることが好ましい。
【0053】
このタイヤ2では、ストリップエイペックス50の内端50nは第二プライ本体38aとエイペックス本体48との間に位置する。
中間エイペックス52の内端52nはストリップエイペックス50とエイペックス本体48との間に位置する。
エイペックス本体48の外端48gは径方向において中間エイペックス52の内端52nと外端52gとの間に位置する。中間エイペックス52は径方向においてストリップエイペックス50の内端50nと外端50gとの間に位置する。
このタイヤ2では、エイペックス本体48の外端48gとストリップエイペックス50との間に、全体がストリップエイペックス50に積層された中間エイペックス52が位置する。しかも中間エイペックス52はエイペックス本体48よりも硬く、ストリップエイペックス50は中間エイペックス52よりも硬い。言い換えれば、中間エイペックス52はエイペックス本体48よりも硬質で、ストリップエイペックス50よりも軟質である。
前述したように、エイペックス本体48は外向きに先細りである。エイペックス本体48の外端48gの部分は、他の部分の剛性に比べて低い剛性を有する。エイペックス本体48の外端48g部分とストリップエイペックス50との間の剛性差はかなり大きい。
このタイヤ2では、エイペックス本体48の外端48gとストリップエイペックス50との間に、ストリップエイペックス50よりも軟質で、エイペックス本体48よりも硬質な中間エイペックス52が位置する。この中間エイペックス52が、ストリップエイペックス50とエイペックス本体48との間に生じる剛性差を緩和する。このタイヤ2では、エイペックス本体48の外端48g付近に歪が集中することが抑えられる。このタイヤ2は、ストリップエイペックス50とエイペックス本体48との間に中間エイペックス52が設けられていない従来のタイヤに比べて、高い耐久性を有する。このタイヤ2では、転がり抵抗の低減と操縦安定性の向上のためにストリップエイペックス50を採用しているにもかかわらず、耐久性が向上する。
このタイヤ2は、転がり抵抗のために薄いサイドウォールを採用しても、良好な操縦安定性を維持しながら、必要な耐久性を得ることができる。
このタイヤ2は、耐久性の低下を小さく抑えながら、転がり抵抗の低減を達成できる。
【0054】
図2において、符号aで示される長さは中間エイペックス52の長さである。長さaは、このタイヤ2の子午線断面において、中間エイペックス52の内端52nから外端52gまでの長さを中間エイペックス52とストリップエイペックス50との界面に沿って計測することにより得られる。符号bで示される長さは、中間エイペックス52の内端52nからエイペックス本体48の外端48gまでの長さである。この長さbは、中間エイペックス52とエイペックス本体48との重複長さでもある。この重複長さbは、このタイヤ2の子午線断面において、中間エイペックス52の内端52nからエイペックス本体48の外端48gまでの長さを中間エイペックス52とエイペックス本体48との界面に沿って計測することにより得られる。
【0055】
このタイヤ2では、中間エイペックス52の長さaは15mm以上25mm以下であることが好ましい。
長さaが15mm以上に設定されることにより、中間エイペックス52がストリップエイペックス50とエイペックス本体48との間に生じる剛性差の緩和に効果的に貢献できる。このタイヤ2では耐久性の向上が図れる。この観点から、長さaは17mm以上であることがより好ましい。
長さaが25mm以下に設定されることにより、中間エイペックス52による転がり抵抗への影響が抑えられ、低い転がり抵抗が維持される。この観点から、長さaは23mm以下であることがより好ましい。
【0056】
このタイヤ2では、中間エイペックス52の内端52nからエイペックス本体48の外端48gまでの長さbは5mm以上15mm以下であることが好ましい。
長さbが5mm以上に設定されることにより、中間エイペックス52がストリップエイペックス50とエイペックス本体48との間に生じる剛性差の緩和に効果的に貢献できる。このタイヤ2では耐久性の向上が図れる。この観点から、長さbは7mm以上であることがより好ましい。
長さbが15mm以下に設定されることにより、中間エイペックス52による転がり抵抗への影響が抑えられ、低い転がり抵抗が維持される。この観点から、長さbは13mm以下であることがより好ましい。
【0057】
前述したように、このタイヤ2では、中間エイペックス52はエイペックス本体48よりも硬い。中間エイペックス52がエイペックス本体48よりも硬すぎると、中間エイペックス52とエイペックス本体48との間に大きな剛性差が生じ、耐久性が低下することが懸念される。良好な耐久性が維持される観点から、中間エイペックス52の硬さHmとエイペックス本体48の硬さHaとの差(Hm-Ha)は5以下であることが好ましい。中間エイペックス52がストリップエイペックス50とエイペックス本体48との間に生じる剛性差の緩和に効果的に貢献できる観点から、この差(Hm-Ha)は2以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましい。
【0058】
前述したように、このタイヤ2では、ストリップエイペックス50は中間エイペックス52よりも硬い。言い換えれば、中間エイペックス52はストリップエイペックス50よりも軟い。中間エイペックス52がストリップエイペックス50よりも軟らかすぎると、ストリップエイペックス50と中間エイペックス52との間に大きな剛性差が生じ、耐久性が低下することが懸念される。良好な耐久性が維持される観点から、ストリップエイペックス50の硬さHsと中間エイペックス52の硬さHmとの差(Hs-Hm)は5以下であることが好ましい。中間エイペックス52がストリップエイペックス50とエイペックス本体48との間に生じる剛性差の緩和に効果的に貢献できる観点から、この差(Hs-Hm)は2以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましい。
【0059】
このタイヤ2では、良好な耐久性が得られる観点から、中間エイペックス52の硬さHmとエイペックス本体48の硬さHaとの差(Hm-Ha)は5以下であり、ストリップエイペックス50の硬さHsと中間エイペックス52の硬さHmとの差(Hs-Hm)は5以下であることがより好ましい。
【0060】
このタイヤ2では、好ましくは、エイペックス本体48の外端48g付近のエイペックス32の剛性が、このエイペックス32を構成する要素(すなわち、エイペックス本体48、ストリップエイペックス50及び中間エイペックス52)の硬さと厚さとの積で表される剛性指数を用いてコントロールされる。
図3は、エイペックス32の剛性コントロールを説明する断面図である。この
図3は、エイペックス32の剛性コントロールに用いる剛性指数を説明するために、エイペックス32の断面を概念図として示す。
【0061】
このタイヤ2では、ストリップエイペックス50全体が積層される第二プライ本体38a各位置におけるエイペックス32の剛性が剛性指数で表される。この剛性指数をRとしたとき、この剛性指数Rは、エイペックス本体48の硬さHa、ストリップエイペックス50の硬さHs及び中間エイペックス52の硬さHm、並びに、第二プライ本体38aの法線に沿って計測される、エイペックス本体48の厚さta、ストリップエイペックス50の厚さts及び中間エイペックス52の厚さtmを用いて、次の式(1)で示される。
R = Ha×ta+Hs×ts+Hm×tm (1)
【0062】
次に、この式(1)を用いた剛性指数Rの算出方法が説明される。
図3において符号Pagで示される位置は、エイペックス本体48の外端48gを通る、第二プライ本体38aの外面の法線とこの外面との交点である。この位置Pagは、エイペックス本体48の外端48gに対応する、第二プライ本体38aの位置である。この位置Pagはエイペックス本体48の外端対応位置とも称される。
符号PB1で示される位置は第二プライ本体38aの外面上の位置である。この位置PB1は、エイペックス本体48の外端対応位置Pagからストリップエイペックス50の内端50n側に15mm離れた位置である。本開示においては、この位置PB1は第一基準位置である。外端対応位置Pagから第一基準位置PB1までの長さは、第二プライ本体38aとストリップエイペックス50との界面に沿って計測される。
図3には、一例として、第一基準位置PB1が中間エイペックス52の内端52nの径方向内側に位置する場合が示されるが、この第一基準位置PB1の位置が中間エイペックス52の内端52nの位置と一致していてもよく、第一基準位置PB1が中間エイペックス52の内端52nの径方向外側に位置していてもよい。
【0063】
図3において符号Pmgで示される位置は、中間エイペックス52の外端52gを通る、第二プライ本体38aの外面の法線とこの外面との交点である。この位置Pmgは、中間エイペックス52の外端52gに対応する、第二プライ本体38aの位置である。この位置Pmgは中間エイペックス52の外端対応位置とも称される。
符号PB2で示される位置は第二プライ本体38aの外面上の位置である。この位置PB2は、中間エイペックス52の外端対応位置Pmgからストリップエイペックス50の外端50g側に10mm離れた位置である。本開示においては、この位置PB2は第二基準位置である。外端対応位置Pmgから第二基準位置PB2までの長さは、第二プライ本体38aとストリップエイペックス52との界面に沿って計測される。
【0064】
図3において、実線L1は第二プライ本体38aの外面の法線である。この法線L1は、第一基準位置PB1と中間エイペックス52の内端52nとの間のゾーン(以下、第一ゾーン)に位置する。
図3に示されるように、第一ゾーンに位置するエイペックス32の要素はエイペックス本体48とストリップエイペックス50である。
図3において符号ts1で示される長さは法線L1の位置におけるストリップエイペックス50の厚さである。符号ta1で示される長さは法線L1の位置におけるエイペックス本体48の厚さである。厚さts1及び厚さta1は法線L1に沿って計測される。
この第一ゾーンには、中間エイペックス52は含まれない。したがって、この第一ゾーンにおける中間エイペックス52の厚さtm1は0(ゼロ)mmである。そのため、この第一ゾーンでは、第二プライ本体38aの各位置におけるエイペックス32の剛性指数R1は、次式(1a)で表される。
R1 = Ha×ta1+Hs×ts1 (1a)
【0065】
図3において、実線L2も第二プライ本体38aの外面の法線である。この法線L2は、第二基準位置PB2と中間エイペックス52の外端52gとの間のゾーン(以下、第二ゾーン)に位置する。
図3に示されるように、第二ゾーンに位置するエイペックス32の要素はストリップエイペックス50である。
図3において符号ts2で示される長さは法線L2の位置におけるストリップエイペックス50の厚さである。厚さts2は法線L2に沿って計測される。
この第二ゾーンには、エイペックス本体48及び中間エイペックス52は含まれない。したがって、この第二ゾーンにおけるエイペックス本体48の厚さta2は0(ゼロ)mmであり、中間エイペックス52の厚さtm2も0(ゼロ)mmである。そのため、この第二ゾーンでは、第二プライ本体38aの各位置におけるエイペックス32の剛性指数R2は、次式(1b)で表される。
R2 = Hs×ts2 (1b)
【0066】
図3において、実線L3も第二プライ本体38aの外面の法線である。この法線L3は、中間エイペックス52の内端52nとエイペックス本体48の外端48gとの間のゾーン(以下、第三ゾーン)に位置する。
図3に示されるように、第三ゾーンに位置するエイペックス32の要素はエイペックス本体48、ストリップエイペックス50及び中間エイペックス52である。
図3において符号ts3で示される長さは法線L3の位置におけるストリップエイペックス50の厚さである。符号tm3で示される長さは、法線L3の位置における中間エイペックス52の厚さである。符号ta3で示される長さは、法線L3の位置におけるエイペックス本体48の厚さである。厚さts2、厚さtm3及び厚さta3は法線L3に沿って計測される。
この第三ゾーンにはエイペックス32を構成する全ての要素が含まれる。そのため、この第三ゾーンでは、第二プライ本体38aの各位置におけるエイペックス32の剛性指数R3は、次式(1c)で表される。
R3 = Ha×ta3+Hs×ts3+Hm×tm3 (1c)
【0067】
図3において、実線L4も第二プライ本体38aの外面の法線である。この法線L4は、エイペックス本体48の外端48gと中間エイペックス52の外端52gとの間のゾーン(以下、第四ゾーン)に位置する。
図3に示されるように、第四ゾーンに位置するエイペックス32の要素はストリップエイペックス50及び中間エイペックス52である。
図3において符号ts4で示される長さは法線L4の位置におけるストリップエイペックス50の厚さである。符号tm4で示される長さは、法線L4の位置における中間エイペックス52の厚さである。厚さts4及び厚さtm4は法線L4に沿って計測される。
この第四ゾーンには、エイペックス本体48は含まれない。したがって、この第四ゾーンにおけるエイペックス本体48の厚さta4は0(ゼロ)mmである。そのため、この第四ゾーンでは、第二プライ本体38aの各位置におけるエイペックス32の剛性指数R4は、次式(1d)で表される。
R4 = Hs×ts4+Hm×tm4 (1d)
【0068】
このタイヤ2では、第一基準位置PB1から第二基準位置PB2までのゾーンの任意の位置における、エイペックスの剛性指数Rが、前述の式(1a)から式(1d)のいずれかの式を用いて得られる。そして、このタイヤ2では、第一基準位置PB1における、エイペックス32の剛性指数Rを基準剛性Rbとしたとき、第一基準位置PB1から第二基準位置PB2までのゾーンの任意の位置における、エイペックス32の剛性指数Rの、基準剛性指数Rbに対する比率(R/Rb)は100%以上110%以下であることが好ましい。これにより、エイペックス本体48の外端48g付近におけるエイペックス32の剛性に、過剰に高い剛性を有する部分や、過剰に低い剛性を有する部分が構成されることが抑えられる。このタイヤ2では、エイペックス本体48の外端48g付近に歪が集中することが効果的に抑えられる。
このタイヤ2では、転がり抵抗の低減と操縦安定性の向上のためにストリップエイペックス50を採用しているにもかかわらず、耐久性が向上する。
このタイヤ2は、転がり抵抗のために薄いサイドウォールを採用しても、良好な操縦安定性を維持しながら、必要な耐久性を得ることができる。
【0069】
以上説明したように、本発明によれば、耐久性の低下を小さく抑えながら、転がり抵抗の低減を達成できる、タイヤ2が得られる。
【実施例0070】
以下、実施例などにより、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
【0071】
[実施例1]
図1に示された基本構成を備え、下記の表1に示された仕様を備えた乗用車用の空気入りタイヤ(タイヤの呼び=215/70R16)を得た。
【0072】
この実施例1では、エイペックス本体の硬さHa、ストリップエイペックスの硬さHs及び中間エイペックスの硬さHm並びにエイペックス本体の長さLが表1に示される通りに設定された。
中間エイペックスの長さaは20mmに設定され、中間エイペックスの内端からエイペックス本体の外端までの長さbは10mmに設定された。
最大幅位置PWにおけるサイドウォールの厚さは3.0mmに設定された。
【0073】
[比較例1]
比較例1は従来のタイヤである。サイドウォールの厚さは5.0mmであった。エイペックス本体のみでエイペックスが構成された。この比較例1には、ストリップエイペックス及び中間エイペックスは用いられていない。エイペックス本体の硬さHaは80であった。
【0074】
[比較例2]
サイドウォールに薄いサイドウォールを採用した他は比較例1と同様にして、比較例2のタイヤを得た。
【0075】
[比較例3]
エイペックス本体の長さLを40mmにした他は比較例2と同様にして、比較例3のタイヤを得た。
【0076】
[比較例4]
ストリップエイペックス(硬さHs=80)を追加した他は比較例2と同様にして、比較例4のタイヤを得た。ストリップエイペックスの仕様は、硬さ以外は実施例1と同様の構成を有するように設定された。
【0077】
[実施例2-7及び比較例5-8]
硬さHs、硬さHm及び硬さHaを下記の表2-3に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例2-7及び比較例5-8のタイヤを得た。
【0078】
[タイヤ質量]
タイヤの質量を計測した。その結果が比較例1を100とした指数で下記表1-3に示されている。数値が小さいほどタイヤは軽い。
【0079】
[転がり抵抗]
転がり抵抗試験機を用い、試作タイヤが下記の条件でドラム上を速度80km/hで走行するときの転がり抵抗係数(RRC)を測定した。その結果が比較例3を100とした指数で下記表1-3に示されている。数値が大きいほど、タイヤの転がり抵抗は低い。
リム:16×6.5J
内圧:240kPa
縦荷重:4.82kN
【0080】
[耐久性]
試作タイヤをリム(サイズ=16×6.5J)に組み、空気を充填して内圧を375kPaとした。このタイヤをドラム式走行試験機に装着した。14kNの縦荷重をタイヤに負荷し、このタイヤを、80km/hの速度で、ドラム(半径=1.7m)の上で走行させた。タイヤに損傷が確認されるまでの走行距離を測定した。その結果が指数で下記表1-3に示されている。数値が大きいほど損傷が生じにくく、耐久性に優れる。
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
表1-3に示されているように、実施例では、耐久性の低下を小さく抑えながら、転がり抵抗の低減が達成されることが確認されている。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
それぞれのサイドウォール6は、トレッド4の端に連なる。サイドウォール6は、トレッド4の径方向内側に位置する。サイドウォール6は、耐カット性を考慮した架橋ゴムからなる。
転がり抵抗の低減の観点から、最大幅位置PWにおけるサイドウォール6の厚さは5.0mm以下であることが好ましい。サイド部の剛性確保の観点から、この厚さは3.0mm以上であることが好ましい。