(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119750
(43)【公開日】2023-08-29
(54)【発明の名称】壁紙切断用下敷きテープ及びその製法
(51)【国際特許分類】
E04F 21/18 20060101AFI20230822BHJP
【FI】
E04F21/18 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022022768
(22)【出願日】2022-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】392029982
【氏名又は名称】三正通商株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】508079175
【氏名又は名称】栗田煙草苗育布製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】中村 彰宏
(72)【発明者】
【氏名】栗田 昌幸
(57)【要約】
【課題】下地材を効果的に保護しつつも、軽量かつ柔軟であって良好な取扱い性が得られるようにする。
【解決手段】柔軟な網状シート12の表裏両面に合成樹脂製のフィルム13,14が配設された壁紙切断用下敷きテープ11において、網状シート12を構成する経糸21と緯糸22との交点部23をフィルム13,14に対して接着固定する。またフィルム13,14間における交点部23に対応する部分以外の部位に、フィルム13,14同士を非接着とする空間部16を形成する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柔軟な網状シートの表裏両面に合成樹脂製のフィルムが配設された壁紙切断用下敷きテープであって、
前記網状シートを構成する経糸と緯糸との交点部が、前記フィルムに対して接着固定され、
前記フィルム間における前記交点部に対応する部分以外の部位に、前記フィルム同士を非接着とする空間部が形成された
壁紙切断用下敷きテープ。
【請求項2】
前記網状シートにおける前記交点部以外の部位に、前記フィルムに対して非接着の非拘束部が形成された
請求項1に記載の壁紙切断用下敷きテープ。
【請求項3】
柔軟な網状シートの表裏両面に合成樹脂製のフィルムが配設された壁紙切断用下敷きテープの製造方法であって、
前記網状シートに接着剤を塗布する塗布工程と、
接着剤が塗布された前記網状シートに対してエアを吹き付けて前記網状シートにおける経糸及び緯糸の単独部分の接着剤を除去するそぎ落とし工程と、
前記網状シートの両面に前記フィルムを貼り付けて、前記網状シートの前記経糸と前記緯糸との交点部を前記フィルムに対して接着固定するとともに、前記フィルム間における前記交点部に対応する部分以外の部位に前記フィルム同士を非接着とする空間部を形成する貼り合わせ工程を備える
壁紙切断用下敷きテープの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、壁面等に壁紙(クロス)を張り付ける際に壁紙の継ぎ合わせ部分と下地材との間に敷いて、壁紙の切断時に下地材が傷つかないように保護する壁紙切断用下敷きテープに関する。
【背景技術】
【0002】
壁紙切断用下敷きテープとして、下記特許文献1に開示のものがある。
【0003】
この壁紙切断用下敷きテープは、柔軟な網状シートの表裏両面に合成樹脂フィルムを被せたものであって、網状シートと表裏の合成樹脂フィルムの両側縁部のみが互いに接着剤で接着された構成である。
【0004】
このような構成であるため、網状シートが合成樹脂フィルムの袋に包まれた状態となっており、幅方向の中間部は各層が互いに分離している。カッターを用いて壁紙の切断作業を行うと、上側の合成樹脂フィルムを切り裂いたカッターの刃先は網状シートの柔軟な横糸に引っ掛かる。このとき、網状シートの緯糸は動くので、直ちに切断されずにカッターの刃先に引っ掛かったまま下側のフィルム上を切断方向へスライドする。このため、カッターの刃先は下地材に当たっても断続的であるため、下地材に連続的な傷はつきにくく、非常に効果的に下地材を保護できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の下敷きテープは、網状シートの両側縁部のみが合成樹脂フィルムに接着された構造であるので、切断時に緯糸が引っ張られる網状シートと合成樹脂フィルムとの一体化のためには、接着部分の幅はある程度必要である。
【0007】
しかし、接着剤の塗布領域が広いと、下敷きテープが重くなるとともに硬くなり、取扱い性が悪くなる。特に、下敷きテープが硬いと、壁紙の下から下敷きテープを除去する作業がしにくい。
【0008】
そこで、この発明は、下地材を効果的に保護しつつも、軽量かつ柔軟であるようにすることを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そのための手段は、柔軟な網状シートの表裏両面に合成樹脂製のフィルムが配設された壁紙切断用下敷きテープであって、網状シートを構成する経糸と緯糸との交点部が、フィルムに対して接着固定され、フィルム間における交点部に対応する部分以外の部位に、フィルム同士を非接着とする空間部が形成された壁紙切断用下敷きテープである。
【0010】
この構成では、網状シートとフィルムとが、全面にわたって分布する経糸と緯糸の交点部、つまり複数の点で互い接着されており、壁紙切断用下敷きテープは接着剤の使用量を低減しつつ全体として1枚のシート状に形成される。1枚のシート状でありながらも、フィルム同士の間の空間部は、刃先が表面のフィルムから裏面のフィルムに到達するまでに時間差をつけて周囲の変形を促し、切断具の刃先の力を分散して、テープの耐切創性を上げる。網状シートとの一体性が高いフィルムには、ごく薄く軽量のフィルムを使用可能である。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、接着剤の使用量を抑えることができるので、軽量化をはかり柔軟性を得ることもできる。しかも、互いに接着された網状シートとフィルムは全体的に一体性の高い構造であるので、フィルムにはごく薄く柔らかいものを使用でき、この点からも柔軟性を高めることができ、取扱い性を向上できる。
【0012】
また、網状シートとフィルムとの接着は全体に分布する複数の点でなされているので、従来の特許文献1のテープのような袋状の構成とは異なり、切断時に刃先に引っかかった緯糸が引っ張られる領域が狭く、かかる負荷を良好に分散できる。このため、網状シートに切れにくい材料を使用せずに、切れやすい安価なものを使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図4】壁紙切断用下敷きテープの製造方法を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明を実施するための一形態を、以下図面を用いて説明する。
【0015】
図1に、壁紙切断用下敷きテープ11(以下、「下敷きテープ」という)の斜視図を示す。下敷きテープ11は、柔軟な網状シート12の表裏両面に合成樹脂製のフィルム13,14が配設された構成であり、
図1に示したように一定幅のテープ状に形成されている。前述のように積層構造であるものの、下敷きテープ11は全体として1枚のフィルムのような態様である。
【0016】
すなわち、下敷きテープ11は、網状シート12を構成する経糸21と緯糸22との交点部23が、表裏両面のフィルム13,14に対して接着固定されている。接着は接着剤15によって行われ、
図2に示したように交点部23に接着剤15が存在する。交点部23のみに接着剤15が存在する構成であるのが好ましいが、交点部23以外の部分にも接着剤15が存在する構成、換言すれば、交点部23を主とした部分に接着剤15が存在する構成であってもよい。
【0017】
前述のような接着により、網状シート12を挟むフィルム13,14同士の間における交点部23に対応する部分以外の部位には、フィルム13,14同士を非接着とする空間部16が形成される。
【0018】
また、網状シート12における交点部23以外の部位に、フィルム13,14に対して非接着の非拘束部24が形成される。非拘束部24は、表面のフィルム13と、裏面のフィルム14の双方に対して非拘束であるほか、いずれか一方のみに非拘束であってもよい。なお、接着剤15は交点部23を主とした部分に存在する構成であってもよいので、経糸21と緯糸22におけるすべての直線状の部分が非拘束部24である必要はない。
【0019】
網状シート12は、紡績糸からなる経糸21と緯糸22で構成され、適宜の目合いを有する。緯糸22同士の間隔は、柔軟性と下地材に対する切創性低下の観点から、2mm~5mm程度に設定されるとよい。経糸21同士の間隔は、それより広くてもよい。
【0020】
網状シート12の材料は、柔軟性を有するものであれば、例えばナイロン(登録商標)やビニロン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル、アラミド、ポリアリレート等の合成繊維、コットン(棉)、麻、ウール(毛)、絹等の天然繊維が例示できる。なお、経糸21と緯糸22の素材は同一素材であっても異なる素材であっても良い。この下敷きテープ11においては、使用時にカッターの刃先によって切れてもよい、例えばポリエステル製のものを用いることができる。なお、網状シート12は例えば合成樹脂製のモノフィラメントなど、他の材料で構成されてもよい。
【0021】
フィルム13,14は、例えばポリエチレン製、ポリプロピレン製など適宜のフィルムを使用でき、厚みは8~25μm程度で軽く、薄く柔らかいものを用いるのが望ましい。表裏両面のフィルム13,14は互いに同じものであってもよいが、材質等を異なるものとしてもよい。フィルム13,14には例えばエンボス加工を施したものを使用することもできる。
【0022】
網状シート12とフィルム13,14を接着する接着剤15は、透明であるのが好ましいが、網状シート12が白色又は透明であり、フィルム13,14が透明である場合には、下敷きテープ11が使用時に見えにくくなる。このため、その場合には接着剤15として、薄い色が付されているものを用いるとよい。
【0023】
接着剤15には、硬化したときに柔軟なものとして、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、アクリル酢酸ビニル系粘着剤等が例示できる。これらは1種もしくは2種以上混合して使用しても良い。接着剤15は、
図2に示したように網状シート12における交点部23に塗布されて、網状シート12の両面にフィルム13,14を接着保持する。これにより、
図2のA-A断面図である
図3に示したように、フィルム13,14間には、前述の空間部16が形成されることになる。空間部16を構成する表面のフィルム13と裏面のフィルム14は互いに自由であり、相対変位可能な状態である。
【0024】
また、網状シート12における交点部23がフィルム13,14に接着されており、交点部23以外の部位、つまり経糸21と緯糸22がそれぞれ直線状に延びる部分には、フィルム13,14に対して非接着の前述した非拘束部24が形成されることになる。この非拘束部24においては、表裏両面のフィルム13,14、網状シート12の経糸21及び緯糸22が互いに自由であり、相対変位可能な状態である。
【0025】
このような構成の下敷きテープ11は、網状シート12の交点部23のみに接着剤15を塗布してフィルム13,14の接着を行って製造するとよいが、次のように行うと既存の設備を利用して生産性よく製造できる。
【0026】
すなわち、その製造方法は、
図4に示したように、塗布工程S1と、そぎ落とし工程S2と、貼り合わせ工程S3を備えるものである。塗布工程S1は、網状シート12に接着剤15を塗布する工程である。そぎ落とし工程S2は、接着剤15が塗布された網状シート12からその経糸21及び緯糸22の単独部分の接着剤15を除去する工程である。貼り合わせ工程S3は、網状シート12の両面にフィルム13,14を貼り付けて、前述した空間部16と非拘束部24を形成する工程である。
【0027】
塗布工程S1と貼り合わせ工程S3は既存の装置で行え、そぎ落とし工程S2は既存の乾燥装置54を利用して行える。つまり、貼り合わせ工程S3は、網状シート12が巻回されたロールから繰り出して、この網状シート12に対して、バックアップロール51とグラビアロール52で液槽53内の接着剤15を塗布する。なお
図4において網状シート12は、破線であらわしている。
【0028】
このあと、接着剤15が塗布された網状シート12を乾燥装置54に内に搬送し、乾燥装置54におけるエア54aを網状シート12に対して吹き付けて、付着している接着剤15のうち主に交点部23以外の部分に付着している接着剤15を払い落とす。交点部23は経糸21と緯糸22が交差して接着剤15を吸着保持しやすい構造であるので、エア54aを吹き付けても接着剤15が落ちにくい一方で、経糸21と緯糸22の単独部分、すなわち交点部23間の直線状の部分では、接着剤15が吹き飛ばされる。これによって、主に交点部23に接着剤15が残存することになる。
【0029】
このようにして余分な接着剤15がそぎ落とされた網状シート12は貼り合わせロール55,56に送られて、フィルムロールから送り出したフィルム13,14を両面に重ねて貼り合わせがなされる。
【0030】
このあと、図示しないスリット工程で一定幅に切断されたのち、複数のロールに巻取られて、ロール状に巻かれた下敷きテープ11となる。
【0031】
以上のような構成の下敷きテープ11は、
図5に示したように、壁の下地材71の上に張り付けられる壁紙72,73の合わせ目に敷いて、壁紙72,73の切断に際して下地材71を保護する。使用に当たってはまず継ぎ合わされる壁紙72,73同士の端が重なり合うように壁紙72,73を下地材71に貼り付ける。このときに、下地材71側に位置する下の壁紙72の下に下敷きテープ11を敷く。
【0032】
敷くときに下敷きテープ11の表裏は関係なく、いずれのフィルム13,14を下にしてもよい。
【0033】
つぎに、壁紙72,73の重なり合った部分をカッターで縦方向に真っすぐ切断する。切断後は、下敷きテープ11を壁紙72,73の下から引っ張り出して除去し、壁紙72,73を下地材71に張り付ける。
【0034】
壁紙72,73の切断時には、
図6に示したように、カッター75の刃先が壁紙72,73を貫き、下敷きテープ11の一部又は全部に切り込む深さとなるようにする。切断を行うと、表面のフィルム13にカッター75の刃先が刺さって貫通しても、空間部16の存在により、裏面のフィルム14に同時に刃先が達することはなく、それまでには時間差ができる。そして、表面のフィルム13は切り込む刃先によって、裏面のフィルム14に対して僅かに相対移動する。
【0035】
また刃先に引っ掛かった緯糸22は刃先に引っ張られて、非拘束部24ではフィルム13,14とは別に変形し移動する。
【0036】
このように空間部16は、その周囲の変形・変位を促進し、刃先の力を分散する。この結果、下地材71に対して耐切創性を上げることができる。
【0037】
しかも、網状シート12とフィルム13,14の接着は、全体に広がる交点部23においてなされ、その交点部23は下敷きテープ11の全体に均等に分布している。このため、緯糸22における刃先よって直接的に引っ張られる部分は下敷きテープ11の幅方向の広い領域ではなく、目合いの大きさに相当する狭い領域であって、刃先にかかる荷重は交点部23において分散される。この点からも耐切創性を上げることができ、この結果、網状シート12に切れにくい材料を使用せずに、切れてもよい安価なものを使用することも可能になる。
【0038】
さらに、網状シート12とフィルム13,14は面方向に分布する複数の点で互い接着された構成であるため、一定幅の部分に所定の接着強度を持たせるように接着する場合と比べて接着剤15の使用量を低減できる。しかも、厚み方向で分離する領域の多い袋状のものとは異なり、全体として1枚の薄いシート状に形成できるので、フィルムを極薄いもので構成することもできる。このような軽量化と柔軟性の向上によって、取扱い性をより良くすることが可能である。
【0039】
以上のように、下地材71を効果的に保護しつつも、軽量かつ柔軟で取扱い性の良好な下敷きテープ11が得られる。
【符号の説明】
【0040】
11…壁紙切断用下敷きテープ
12…網状シート
13,14…フィルム
15…接着剤
16…空間部
21…経糸
22…緯糸
23…交点部
24…非拘束部
54a…エア
S1…塗布工程
S2…そぎ落とし工程
S3…貼り合わせ工程