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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119781
(43)【公開日】2023-08-29
(54)【発明の名称】薬剤分包装置
(51)【国際特許分類】
   A61J 3/00 20060101AFI20230822BHJP
【FI】
A61J3/00 310D
A61J3/00 310K
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022022827
(22)【出願日】2022-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】593129342
【氏名又は名称】株式会社タカゾノ
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】水上 敏
(72)【発明者】
【氏名】森川 泰行
(72)【発明者】
【氏名】松本 貴光
【テーマコード(参考)】
4C047
【Fターム(参考)】
4C047JJ03
4C047JJ06
4C047JJ13
4C047JJ26
4C047JJ28
4C047JJ31
4C047JJ40
(57)【要約】
【課題】適切な順序で薬剤を量り取ることで高い作業効率を実現した薬剤分包装置を提供する。
【解決手段】薬剤分包装置は、量り取り部と、複数の排出部と、搬送部と、分包部と、を備える。量り取り部は、薬剤容器に収容された薬剤を供給容器に量り取る。排出部は、供給容器をセット可能であり、セットされた供給容器の薬剤を分配皿に排出する。搬送部は、量り取り部から排出部まで供給容器を搬送する。分包部は、分配皿に排出された薬剤を分包する。量り取り部は、少なくとも第1薬剤と、第1薬剤よりも目標量の少ない第2薬剤と、について量り取りを行う場合、第1薬剤の量り取りを第2薬剤の量り取りよりも先に開始する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤容器に収容された薬剤を供給容器に量り取る量り取り部と、
前記供給容器をセット可能であり、セットされた前記供給容器の薬剤を分配皿に排出する複数の排出部と、
前記量り取り部から前記排出部まで前記供給容器を搬送する搬送部と、
前記分配皿に排出された薬剤を分包する分包部と、
を備え、
前記量り取り部は、少なくとも第1薬剤と、前記第1薬剤よりも目標量の少ない第2薬剤と、について量り取りを行う場合、前記第1薬剤の量り取りを前記第2薬剤の量り取りよりも先に開始することを特徴とする薬剤分包装置。
【請求項2】
請求項1に記載の薬剤分包装置であって、
前記量り取り部は、複数の薬剤の量り取りを並行して実行可能であり、
前記第1薬剤の量り取りが完了する前に、前記第2薬剤の量り取りが開始されることを特徴とする薬剤分包装置。
【請求項3】
請求項2に記載の薬剤分包装置であって、
前記搬送部は、
前記第2薬剤の量り取りが前記第1薬剤の量り取りよりも先に完了した場合、前記第2薬剤が収容された前記供給容器の搬送を待機し、
前記第1薬剤の量り取りと、前記第1薬剤が収容された前記供給容器の前記排出部への搬送と、が完了した後に、前記第2薬剤が収容された前記供給容器を前記排出部へ搬送することを特徴とする薬剤分包装置。
【請求項4】
請求項2に記載の薬剤分包装置であって、
前記搬送部は、
前記第2薬剤の量り取りが前記第1薬剤の量り取りよりも先に完了した場合、前記第1薬剤が収容された前記供給容器の搬送よりも先に、前記第2薬剤が収容された前記供給容器を前記排出部へ搬送することを特徴とする薬剤分包装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、薬剤容器に収容された薬剤を量り取って分包する薬剤分包装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、薬剤を分包する薬剤分包装置を開示する。薬剤分包装置は、量り取り部と、搬送部と、排出部と、分包部と、を備える。量り取り部は、中間容器に薬剤を量り取る。搬送部は、中間容器を排出部まで搬送する。排出部は、中間容器に収容された薬剤を分配皿に排出する。分包部は、分配皿に排出された薬剤を分配して包装材で包装する。また、複数の薬剤を混合して包装する場合は、薬剤毎に量り取りが順次行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-29555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、複数の薬剤を量り取る順序について言及されていない。そのため、薬剤を量り取る順序が適切でない場合、全ての薬剤の排出が完了するまでの時間が長くなり、作業効率が低くなる可能性があった。
【0005】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、適切な順序で薬剤を量り取ることで高い作業効率を実現した薬剤分包装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0007】
本発明の観点によれば、以下の構成の薬剤分包装置が提供される。即ち、薬剤分包装置は、量り取り部と、複数の排出部と、搬送部と、分包部と、を備える。前記量り取り部は、薬剤容器に収容された薬剤を供給容器に量り取る。前記排出部は、前記供給容器をセット可能であり、セットされた前記供給容器の薬剤を分配皿に排出する。前記搬送部は、前記量り取り部から前記排出部まで前記供給容器を搬送する。前記分包部は、前記分配皿に排出された薬剤を分包する。前記量り取り部は、少なくとも第1薬剤と、前記第1薬剤よりも目標量の少ない第2薬剤と、について量り取りを行う場合、前記第1薬剤の量り取りを前記第2薬剤の量り取りよりも先に開始する。
【0008】
これにより、目標量が多い薬剤を先に量り取ることで、排出が完了するまでの時間が短くなるため、作業効率を高くすることができる。
【0009】
前記の薬剤分包装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記量り取り部は、複数の薬剤の量り取りを並行して実行可能である。前記第1薬剤の量り取りが完了する前に、前記第2薬剤の量り取りが開始される。
【0010】
これにより、適切な順序で並行して量り取りができるので、作業効率を更に高くすることができる。
【0011】
前記の薬剤分包装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記第2薬剤の量り取りが前記第1薬剤の量り取りよりも先に完了した場合、前記第2薬剤が収容された前記供給容器の搬送を待機する。前記第1薬剤の量り取りと、前記第1薬剤が収容された前記供給容器の前記排出部への搬送と、が完了した後に、前記第2薬剤が収容された前記供給容器を前記排出部へ搬送する。
【0012】
これにより、排出に時間が掛かる第1薬剤を優先して排出するため、全ての薬剤の排出が完了するまでの時間を短くすることができる。
【0013】
前記の薬剤分包装置においては、前記第2薬剤の量り取りが前記第1薬剤の量り取りよりも先に完了した場合、前記第1薬剤が収容された前記供給容器の搬送よりも先に、前記第2薬剤が収容された前記供給容器を前記排出部へ搬送することが好ましい。
【0014】
これにより、量り取り部から供給容器を早期に移動させることができるので、次の薬剤の量り取りを早期に開始できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態の薬剤分包装置を示す模式図。
図2】供給容器の斜視図。
図3】適切な順序で量り取りを行って分包を行う処理を示すフローチャート。
図4】調剤データの目標量に基づいて量り取りの順序を決定した例を示す表。
図5】比較例と第1実施形態のタイミングチャート。
図6】第2実施形態及び第3実施形態の薬剤分包装置を示す模式図。
図7】第2実施形態と第3実施形態のタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、図面を参照して本発明の第1実施形態を説明する。図1は、第1実施形態の薬剤分包装置1を示す模式図である。
【0017】
薬剤分包装置1は、薬局又は病院に設置される。薬剤分包装置1は、1又は複数の薬剤をそれぞれ量り取って分包する。薬剤分包装置1が行う薬剤の量り取り及び分包は、オペレータにより入力された又は外部から受信した調剤データに基づいて行われる。
【0018】
薬剤の量り取りとは、薬剤容器等に収容された薬剤を必要な量だけ取り出すことをいう。本実施形態の量り取りは、薬剤容器から供給する薬剤を計量することにより行われる。本実施形態の薬剤分包装置1は、薬剤として散剤(粉状、細粒状、又は顆粒状の薬剤)を量り取る。また、本実施形態の薬剤分包装置1は、量り取った散剤を分包する。ただし、薬剤分包装置1が、散剤に加えて錠剤を分包可能な構成であってもよい。
【0019】
薬剤分包装置1は、図1に示すように、容器保管部11と、搬送部14と、薬剤容器15と、量り取り部30と、排出部32と、分包部33と、制御部50と、を備える。
【0020】
容器保管部11は、薬剤が収容されていない複数の供給容器91を保管する。供給容器91には、量り取りの対象である薬剤が収容される。容器保管部11は、例えば、複数の供給容器91を待機させるための複数の支持台を有し、それぞれの支持台で各供給容器91の底面を支持する。ただし、供給容器91を実質的に保管できる限り、容器保管部11の構成は任意に変更することができる。
【0021】
供給容器91は、図2に示すように、収容部91aと、排出経路部91bと、開閉部91cと、情報表示部(表示部)91dと、を備える。
【0022】
収容部91aは、供給容器91が実質的に薬剤を収容する部分である。収容部91aは、上方を開放させた中空状に形成されている。
【0023】
排出経路部91bは、収容部91aの内部空間と外部空間とを接続する細い通路として構成されている。排出経路部91bは、収容部91aの端部に連通するように形成されている。
【0024】
開閉部91cは、シャッター状の可動部材として構成されている。開閉部91cは、収容部91aと排出経路部91bとの接続部分を開閉することができる。
【0025】
情報表示部91dは、調剤データ及び調剤に関する情報を表示可能なディスプレイである。情報表示部91dは、例えば、マイクロカプセル式又は電気泳動式の電子ペーパを用いて情報を表示する。
【0026】
本実施形態の薬剤分包装置1では、同じ形状の供給容器91が複数用意されている。なお、互いに収容部91aの大きさが異なる複数種類の供給容器91が用意されていてもよい。この場合、多種の薬剤の量り取り等、量り取りを行う様々な状況に対応することができる。
【0027】
搬送部14は、供給容器91を搬送する。搬送部14は、図1に示すように、第1搬送部14aと、第2搬送部14bと、を備える。
【0028】
第1搬送部14a及び第2搬送部14bのそれぞれの動作は、制御部50により制御される。第1搬送部14aと第2搬送部14bとは、搬送を行う範囲が異なるだけであり、搬送を行う構成は実質的に同じであるため、以下では第1搬送部14aを例に挙げて説明する。
【0029】
第1搬送部14aは、供給容器91を保持するための容器保持部を備える。容器保持部は、薬剤分包装置1に設けられたレールに沿って移動する。第1搬送部14aは、供給容器91を容器保持部に保持した状態で、容器保持部をレールに沿って移動させることで、供給容器91を搬送する。
【0030】
図1には、第1搬送部14aの経路(レール)が破線で示され、第2搬送部14bの経路(レール)が2点鎖線で示されている。第1搬送部14aと第2搬送部14bは、個別の駆動源を備えており、それぞれが独立して動作する。従って、薬剤分包装置1は、第1搬送部14aによる容器の搬送と、第2搬送部14bによる容器の搬送と、を並行して行うことができる。
【0031】
搬送部14が容器を保持する構成は様々であり、例えば、容器をチャックで掴んだり、容器を吸引して保持したりしてもよい。また、例えば、伸縮可能又は回転可能なアームの先端に容器保持部を設け、アームを伸縮させたり回転させたりして容器保持部の位置を変更する構成としてもよい。この場合、レールを省略することができる。
【0032】
薬剤容器15には、薬剤が収容されている。それぞれの薬剤容器15には、薬剤を容器外に排出して供給するための開口が形成されている。複数の薬剤容器15には、それぞれ異なる薬剤が収容される。ただし、例えば使用頻度が高い薬剤に関しては、同一の薬剤が複数の薬剤容器15に収容されてもよい。薬剤容器15の外面には、RFIDタグ等の情報記憶部が設けられている。情報記憶部には、薬剤容器15に収容された薬剤に関する情報(薬剤名、薬剤の残量等)が記憶されている。情報記憶部に記憶された情報は、RFIDリーダライタ等の情報読取部により読み取ることができる。
【0033】
量り取り部30は、薬剤供給機構17と、計量部18と、を備える。
【0034】
薬剤供給機構17は、薬剤容器15から供給容器91に薬剤を供給することができる。薬剤供給機構17は、保持体と、移動機構と、供給機構と、を備える。保持体には、複数の薬剤容器15が着脱可能に保持される。移動機構は、保持体に保持された薬剤容器15を所定位置に移動させる。供給機構は、所定位置に移動させた薬剤容器15に作用し、薬剤容器15の開口を介して、収容されている薬剤を下方に供給する。
【0035】
計量部18は、薬剤容器15から供給容器91に供給する薬剤を計量することができる。計量部18は、載置台18aと、検出部18bと、を備える。
【0036】
載置台18aは、薬剤供給機構17が備える上記の保持体の下方に配置されている。載置台18aには、供給容器91が載置される。第1搬送部14aは、容器保持部に保持した供給容器91を搬送して、載置台18aに置いたり、載置台18aから取り去ったりすることができる。
【0037】
検出部18bは、載置台18aに供給容器91が載せられた状態で、容器の内部の薬剤を計量する。具体的には、計量部18は電子天秤であり、載置台18aは電子天秤における計量皿の部分に相当する。検出部18bは、例えば電磁式又はロードセル式の荷重センサである。
【0038】
量り取り部30は、薬剤情報が示す薬剤のそれぞれについて全服用分を量り取るように、制御部50により制御される。制御部50は、薬剤情報が示す薬剤が収容された薬剤容器15を、薬剤供給機構17により載置台18aの真上に適宜移動させる。その後、制御部50は、載置台18aに載置された供給容器91に対して、薬剤容器15の薬剤の供給を行うとともに、供給される薬剤について検出部18bにより計量を行う。
【0039】
第1実施形態の量り取り部30は、2つ以上の薬剤容器15に収容された薬剤を同時に量り取ることができない。ただし、後述するように、2つ以上の薬剤容器15に収容された薬剤を同時に量り取ることが可能であってもよい。
【0040】
排出部32は、供給容器91をセット可能であり、セットされた供給容器91内の薬剤を排出する。排出部32には、第2搬送部14bにより搬送された供給容器91がセットされる。また、排出部32には、供給容器91を手動でセットすることも可能である。排出部32は、後述する1つの分配部34に対して複数設けられている。それぞれの排出部32は、容器取付部32aと、振動装置32bと、を備える。
【0041】
容器取付部32aは、供給容器91を取付可能である。容器取付部32aへの供給容器91の取付けは、第2搬送部14bによって行われる。容器取付部32aは、容器の開閉部91cを閉鎖状態から開放状態に移動させる。容器取付部32aに取り付けられるまでは、収容部91aと排出経路部91bとの接続部分は開閉部91cにより閉鎖されている。そして、容器取付部32aに供給容器91が取り付けられることにより、容器取付部32aは開閉部91cを移動させる。これにより、収容部91aと排出経路部91bとの接続部分が開放した状態になり、薬剤の排出が可能となる。
【0042】
振動装置32bは、振動を発生させるモータ等を含んで構成されている。振動装置32bは制御部50によって制御されている。振動装置32bは、制御部50からの制御信号に応じて振動を発生させる。振動装置32bが発生させた振動は、容器取付部32aに取り付けられた供給容器91に伝達される。
【0043】
第1実施形態の排出部32は、2つの供給容器91から薬剤を同時に排出できるが、3つ以上の供給容器91から薬剤を同時に排出可能であってもよい。また、排出部32、第1搬送部14a、及び第2搬送部14bは独立して動作可能であるため、供給容器91の搬送と排出部32の排出を並行して行うことができる。
【0044】
分包部33は、量り取り部30によって量り取られた薬剤を分包する。分包部33は、量り取り部30によって量り取られた薬剤を一服用分ごとに分包するように、制御部50により制御される。分包部33は、分配部34と、包装部35と、を備える。
【0045】
分配部34は、排出部32によって排出された薬剤を分配する。本実施形態の薬剤分包装置1では、分配部34が1つ設けられているが、分配部34が複数設けられてもよい。分配部34には、2つの排出部32が設けられる。分配部34は、分配皿34aと、送り部34bと、を備える。分配皿34aは、鉛直方向の軸を中心として回転可能に構成されている。排出部32は、回転する分配皿34a上に薬剤を排出する。送り部34bは、分配皿34aに排出された薬剤を所定の量ずつ下方へ落下させる。
【0046】
包装部35は、分配部34によって分配された薬剤を、包装材40によって包装する。包装部35は、ホッパ35aと、ヒータ35bと、を備える。包装部35は、分配部34から分配された薬剤を、ホッパ35aを通じて包装材40に落下させつつ、ヒータ35bにより包装材40を熱で溶着する動作を繰り返す。これにより、所定量ずつ供給された薬剤が区分され、包装材40にそれぞれ封入される。薬剤が入れられた包装材40は、薬剤分包装置1の外部又は内部の貯留部へ送り出される。
【0047】
薬剤分包装置1において、量り取りを行う部分と、分包を行う部分と、の境界には、排出待機部23が設けられている。排出待機部23には、薬剤を収容する供給容器91を必要に応じて置いて待機させることができる。
【0048】
排出待機部23を設けることで、計量部18から排出部22まで供給容器91を搬送できない場合であっても、供給容器91を排出待機部23に待機させることができる。その結果、量り取り部30を用いて、別の供給容器91に対して量り取りを行うことができる。
【0049】
また、排出待機部23は、第1搬送部14aと第2搬送部14bの中継点としても機能する。すなわち、第1搬送部14aが供給容器91を排出待機部23まで移動させた後、この供給容器91は、適宜のタイミングで第2搬送部14bによって搬送される。
【0050】
制御部50は、調剤データに基づいて、薬剤分包装置1の各部(具体的には、量り取り部30及び分包部33等)を制御することができる。制御部50は、公知のコンピュータとして構成されており、CPU等の演算装置と、フラッシュメモリ又はハードディスク等の記憶装置と、外部と通信するための入出力部と、を備える。記憶装置には、各種のプログラムや設定値が記憶されている。演算装置は、各種プログラム等を記憶装置から読み出し、薬剤分包装置1の各部に設けられたセンサの検出値及び記憶装置に記憶された各種の設定値等に基づいて、薬剤分包装置1の各部の動作を制御する。
【0051】
次に、図3及び図4を参照して、調剤データに基づいて適切な順序で量り取りを行う処理について説明する。
【0052】
初めに、制御部50は、調剤データを取得する(S101)。オペレータは、例えば薬剤分包装置1に設けられた操作部を操作することにより、調剤データを入力する。これにより、制御部50は、調剤データを取得する。あるいは、薬剤分包装置1が外部機器と通信を行うことにより、調剤データを取得してもよい。調剤データには、例えば、服用者、薬剤情報、及び目標量等が含まれる。薬剤情報とは、服用する1又は複数の薬剤名、服用法、服用量を含む情報である。
【0053】
次に、制御部50は、調剤データに含まれる薬剤毎の目標量に基づいて、量り取りの順序を決定する(S102)。制御部50は、目標量が多い薬剤の量り取りが先に行われるように、量り取りの順序を決定する。これにより、目標量が多い薬剤を先に量り取ることで、排出が完了するまでの時間を短くすることができる(詳細は後述)。
【0054】
図4には、量り取りの順序を決定する例が3つ示されている。図4(1)の調剤データには、2つの薬剤(第1薬剤と第2薬剤)が含まれる。第1薬剤の目標量は第2薬剤の目標量よりも多い。制御部50は、目標量が多い方の第1薬剤について、量り取りの順序を先(1番目)にする。
【0055】
図4(2)の調剤データには、3つの薬剤(第1薬剤と第2薬剤と第3薬剤)が含まれる。目標量が多い順に、第1薬剤、第3薬剤、及び第2薬剤である。制御部50は、目標量が多い順に量り取りの順序を決定する。
【0056】
図4(3)の調剤データは、図4(2)と同じであるが、順序の決定方法が異なる。図4(3)では、目標量に基づいて薬剤をグループ分けする。具体的には、目標量が多い(基準値より大きい)薬剤である第1薬剤を第1グループに決定し、目標量が少ない(基準値以下)薬剤である第2薬剤及び第3薬剤を第2グループに決定する(この場合、基準値は例えば10.0gに設定される。)。制御部50は、初めに第1グループに属する薬剤の量り取りを行い、第1グループに属する薬剤の量り取りを全て開始した後に、第2グループに属する薬剤の量り取りを開始する。同一のグループに属する薬剤を量り取る順序は任意である。また、グループ分けの方法は、基準値を用いたものに限られない。例えば、目標量が多い順に所定数の薬剤を第1グループに決定し、残りの薬剤を第2グループに決定してもよい。また、グループ数は2に限られず、3以上であってもよい。
【0057】
次に、制御部50は、第1搬送部14aを制御して、容器保管部11にある供給容器91を量り取り部30に搬送する(S103)。次に、制御部50は、薬剤供給機構17を制御して、最初に量り取りを行う薬剤の量り取りを行う(S104)。具体的には、制御部50は、薬剤供給機構17の移動機構を制御して、量り取りの対象の薬剤が収容された薬剤容器15を供給容器91の上方に移動させる。次に、制御部50は、薬剤供給機構17の供給機構を制御して、薬剤容器15の開口から供給容器91に薬剤を供給させる。制御部50は、検出部18bによる計量値が目標量に到達したタイミングで、薬剤供給機構17の供給機構を制御して、薬剤の供給を停止させる。
【0058】
次に、制御部50は、第1搬送部14a及び第2搬送部14bを制御して、供給容器91を排出部32に搬送する(S105)。排出部32に搬送された供給容器91は、容器取付部32aに取り付けられる。次に、制御部50は、振動装置32bを制御して振動を発生させることで薬剤を分配部34へ排出する(S106)。
【0059】
次に、制御部50は、調剤データに記載された薬剤のうち未排出の薬剤があるか否かを判定する(S107)。制御部50は、未排出の薬剤がある場合、ステップS102で決定した量り取りの順序に基づいて、次に排出する薬剤を決定する(S108)。なお、ステップS107~ステップS108の処理は、ステップS101において調剤データを取得した後からステップS106の処理が完了するまでの間に実行することが可能である。制御部50は、次に排出する薬剤について、上述のステップS103からS106の処理を行う。これらの処理は、調剤データに記載された全ての薬剤の排出が完了するまで行われる。なお、次に排出する薬剤に関するステップS103~ステップS104の処理は、前に排出する薬剤に関するステップS105の処理の時点(詳しくは、第1搬送部14aにより供給容器91が排出待機部23に搬送された時点)で実行することが可能である。
【0060】
制御部50は、調剤データに記載された全ての薬剤の排出が完了したと判定した場合、分包部33を制御して、排出された薬剤を分包する(S109)。以上により、1つの調剤データに記載された薬剤の分包が完了する。なお、未処理の調剤データが残存している場合、制御部50は、その調剤データに関しても同様の処理を行う。
【0061】
次に、図5を参照して、目標量が多い薬剤を先に量り取ることによる利点を説明する。以下の説明では、制御部50が別の装置を制御して動作させる旨の説明を簡略化することがある。
【0062】
図5のタイミングチャートには、量り取り及び排出等を行うタイミングが薬剤毎に記載されている。図5の例において、調剤データには第1薬剤と第2薬剤が記載されており、第1薬剤の目標量は第2薬剤の目標量よりも多い。比較例では、目標量が少ない方の第2薬剤を先に量り取る場合の流れが示されている。第1実施形態では、目標量が多い方の第1薬剤を先に量り取る場合の流れが示されている。
【0063】
比較例では、供給容器91を搬送して第2薬剤を量り取った後に、供給容器91を排出部32まで搬送して第2薬剤を排出させる。その後、第2薬剤の排出中において、供給容器91を搬送して第1薬剤を量り取った後に、供給容器91を排出部32まで搬送して第1薬剤を排出させる。第1薬剤は目標量が多いため、量り取りに掛かる時間、及び、排出に掛かる時間は第2薬剤よりも長くなる。つまり、比較例では、第1薬剤に関する処理の時間が長いにもかかわらず、第2薬剤の量り取りが完了するまで第1薬剤に関する処理を開始できない。その結果、全ての薬剤の排出が完了するまでの時間が長くなるので、作業効率の観点で改善の余地がある。
【0064】
これに対し、第1実施形態では、供給容器91を搬送して第1薬剤を量り取った後に、供給容器91を排出部32まで搬送して第1薬剤を排出させる。その後、第1薬剤の排出中において、供給容器91を搬送して第2薬剤を量り取った後に、供給容器91を排出部32まで搬送して第2薬剤を排出させる。つまり、第1実施形態では、第1薬剤に関する処理の時間が長いことを考慮して、第1薬剤に関する処理を第2薬剤に関する処理に優先して行う。その結果、全ての薬剤の排出が完了するまでの時間が比較例よりも短くなる。
【0065】
第1実施形態で示したタイミングチャートは一例であり、以下のように変更してもよい。例えば、量り取り部30から排出部32への搬送(第1薬剤に関する処理)と、容器保管部11から量り取り部30への搬送(第2薬剤に関する処理)と、を並行して行うことが可能な構成であれば、これらの搬送を並行して行ってもよい。また、調剤データに3種類以上の薬剤が含まれる場合も同様に処理される。即ち、N番目の薬剤の量り取り及び排出部32への搬送が完了した後に、次にN+1番目の薬剤の量り取り及び排出部32への搬送が行われる。
【0066】
次に、図6及び図7を参照して、第2及び第3実施形態について説明する。なお、以後の説明においては、第1実施形態と同一又は類似の部材には説明を省略する。
【0067】
第1実施形態の量り取り部30は、計量部18が1つであるため、同時に1つの薬剤の量り取りしか行うことができない。これに対し、第2及び第3実施形態の量り取り部30は、計量部18が2つあるため、同時に2つの薬剤の量り取りを行うことができる。
【0068】
図6に示すように、量り取り部30は、薬剤供給機構17と、2つの計量部18と、を備える。薬剤供給機構17は、薬剤保管部17aと、薬剤搬送部17bと、を備える。薬剤保管部17aには、複数の薬剤容器15が保管されている。薬剤搬送部17bは、薬剤保管部17aに保管されている薬剤容器15を保持して計量部18まで搬送する。薬剤搬送部17bは、例えば薬剤容器15の側面を把持するハンドを含むロボットアームである。ただし、薬剤搬送部17bは、ロボットアームとは別の構成であってもよい。
【0069】
薬剤保管部17aは2つの計量部18で共通して用いられる。言い換えれば、薬剤保管部17aに保管されている全ての薬剤容器15は、2つの計量部18の何れにも搬送できる。従って、少なくとも1つの計量部18が不使用であれば、全ての薬剤容器15に収容された薬剤の量り取りを行うことができる。その結果、待ち時間を抑制できる。
【0070】
第2及び第3実施形態の量り取り部30は、2つの計量部18を用いることにより、2つの薬剤容器15に収容された薬剤の量り取りを並行して行うことができる。なお、量り取り部30は、3つ以上の薬剤容器15に収容された薬剤の量り取りを並行して行うことが可能であってもよい。
【0071】
この特徴を用いることにより、薬剤分包装置1は、図7に示すタイミングチャートで薬剤の量り取り、排出、及び分包を行うことができる。以下、第2実施形態及び第3実施形態のタイミングチャートを詳細に説明する。
【0072】
第2及び第3実施形態においても、調剤データには第1薬剤と第2薬剤が記載されており、第1薬剤の目標量は第2薬剤の目標量よりも多い。第2及び第3実施形態においても、目標量が多い第1薬剤の量り取りを先に行い、次に第2薬剤の量り取りを行う。また、第3実施形態のタイミングチャートでは、次の調剤データに含まれる第3薬剤に関する処理についても記載されている。以下の説明では、第1薬剤の量り取り及び排出を行うために薬剤を収容する供給容器91を第1薬剤の供給容器91と称する(第2薬剤、第3薬剤についても同様)。
【0073】
第2実施形態では、初めに、第1薬剤の供給容器91を容器保管部11から1つ目の計量部18まで搬送する。次に、1つ目の計量部18に第1薬剤の供給容器91を載せた後に、第2薬剤の供給容器91を容器保管部11から取り出し、2つ目の計量部18まで搬送する。従って、第2実施形態では、第1薬剤の量り取りと、第2薬剤の供給容器91の計量部18への搬送と、を並行して行う。
【0074】
ここで、第2薬剤の量り取りが先に完了したとする。第2実施形態では、第2薬剤の量り取りが完了した後であっても、第1薬剤の量り取りが完了するまで、第2薬剤の供給容器91の排出部32への搬送を行わない。つまり、何れの薬剤の量り取りが先に終わるか否かに関係なく、第1薬剤の供給容器91の排出部32への搬送が完了した後に、第2薬剤の供給容器91の排出部32への搬送が行われる。従って、第1薬剤の排出と、第2薬剤の供給容器91の排出部32への搬送と、が並行して行われる。
【0075】
第2実施形態では、量り取り部30が2つの薬剤容器15に収容された薬剤の量り取りを並行して行うことができ、その機能を活かしているため、第1実施形態と比較して、更に早期に分包を完了させることができる。
【0076】
第3実施形態では、初めに、第1薬剤の供給容器91を容器保管部11から1つ目の計量部18まで搬送する。次に、1つ目の計量部18に第1薬剤の供給容器91を載せた後に、第2薬剤の供給容器91を容器保管部11から取り出し、2つ目の計量部18まで搬送する。
【0077】
第3実施形態では、第2薬剤の量り取りが完了した後において、第1薬剤の量り取りの完了を待たずに、第2薬剤の供給容器91の排出部32への搬送を行う。これにより、第2実施形態の処理と比較して、第2薬剤に関する搬送を早期に完了できる。そのため、第3実施形態では、第1薬剤の量り取りを行う間に第2薬剤に関する搬送を行うことで、第2実施形態と比較して早期に、現在の調剤データに関する搬送(第1薬剤および第2薬剤に関する搬送)を完了できる。これにより、第3実施形態では、図7に示すように、次の調剤データに関する処理を早期に開始できる。その結果、複数の調剤データの合計の処理時間を短くすることができる。
【0078】
第2実施形態と第3実施形態は、制御部50が行う処理の順序が異なるだけであり、薬剤分包装置1の構成としては同一である。従って、第2実施形態の処理を行うか第3実施形態の処理を行うかを選択可能な薬剤分包装置1を実現してもよい。この場合、薬剤分包装置1は、ユーザによる事前設定に応じて、第2実施形態の処理を行うか第3実施形態の処理を行うかを選択する。また、ユーザによる事前設定に代えて、制御部50が状況に応じて、第2実施形態の処理を行うか第3実施形態の処理を行うかを選択してもよい。制御部50は、例えば、次の調剤データが設定されていない場合は、第2実施形態の処理を行うと決定する。
【0079】
以上に説明したように、本実施形態の薬剤分包装置1は、量り取り部30と、複数の排出部32と、搬送部14と、分包部33と、を備える。量り取り部30は、薬剤容器15に収容された薬剤を供給容器91に量り取る。排出部32は、供給容器91をセット可能であり、セットされた供給容器91の薬剤を分配皿34aに排出する。搬送部14は、量り取り部30から排出部32まで供給容器91を搬送する。分包部33は、分配皿34aに排出された薬剤を分包する。量り取り部30は、少なくとも第1薬剤と、第1薬剤よりも目標量の少ない第2薬剤と、について量り取りを行う場合、第1薬剤の量り取りを第2薬剤の量り取りよりも先に開始する。
【0080】
これにより、目標量が多い薬剤を先に量り取ることで、排出が完了するまでの時間が短くなるため、作業効率を高くすることができる。
【0081】
本実施形態の薬剤分包装置1において、量り取り部30は、複数の薬剤の量り取りを並行して実行可能である。第1薬剤の量り取りが完了する前に、第2薬剤の量り取りが開始される。
【0082】
これにより、適切な順序で並行して量り取りができるので、作業効率を更に高くすることができる。
【0083】
本実施形態の薬剤分包装置1において、第2薬剤の量り取りが第1薬剤の量り取りよりも先に完了した場合、第2薬剤が収容された供給容器91の搬送を待機する。第1薬剤の量り取りと、第1薬剤が収容された供給容器91の排出部32への搬送と、が完了した後に、第2薬剤が収容された供給容器91を排出部32へ搬送する。
【0084】
これにより、排出に時間が掛かる第1薬剤を優先して排出するため、全ての薬剤の排出が完了するまでの時間を短くすることができる。
【0085】
本実施形態の薬剤分包装置1において、第2薬剤の量り取りが第1薬剤の量り取りよりも先に完了した場合、第1薬剤が収容された供給容器91の搬送よりも先に、第2薬剤が収容された供給容器91を排出部32へ搬送する。
【0086】
これにより、量り取り部30から供給容器91を早期に移動させることができるので、次の薬剤の量り取りを早期に開始できる。
【0087】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0088】
上記実施形態で示したフローチャートは一例であり、一部の処理を省略したり、一部の処理の内容を変更したり、新たな処理を追加したりしてもよい。例えば、供給容器91の清掃に関する処理を追加してもよい。
【0089】
上記実施形態で示したタイミングチャートは一例であり、適宜変更可能である。例えば、供給容器91の清掃に関する搬送が追加されてもよい。
【0090】
第2及び第3実施形態では、1つの薬剤保管部17aが設けられるが、2つの計量部18にそれぞれ対応するように2つの薬剤保管部17aが設けられてもよい。
【符号の説明】
【0091】
1 薬剤分包装置
14 搬送部
30 量り取り部
32 排出部
33 分包部
34 分配部
34a 分配皿
34b 送り部
91 供給容器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7