IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧 ▶ 富士通テン株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-車両用電源装置 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119789
(43)【公開日】2023-08-29
(54)【発明の名称】車両用電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20230822BHJP
【FI】
H02M3/155 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022022847
(22)【出願日】2022-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 辰徳
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 考生
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA20
5H730AS04
5H730AS05
5H730AS08
5H730AS17
5H730BB13
5H730BB14
5H730BB57
5H730DD04
5H730EE57
5H730FD11
5H730XX02
5H730XX22
(57)【要約】
【課題】過電流の発生を抑制しつつ遮断スイッチの閉固着故障を判定できるようにする。
【解決手段】車両用電源装置は、直流電源と、直流電源から直流電源スイッチを介して電力が供給されるDC-DCコンバータと、直流電源スイッチとDC-DCコンバータとの間に接続され且つ直流電源からの電力供給を遮断する遮断スイッチと、直流電源スイッチと遮断スイッチとの間に設けられた蓄電素子と、蓄電素子の残電圧を検出する電圧モニタと、を備える。車両用電源装置は、直流電源スイッチが開の状態において、遮断スイッチを閉にしたうえでDC-DCコンバータによる昇圧動作を行うことによって蓄電素子のチャージを実行し、上記チャージの実行後に遮断スイッチを開にしたうえでDC-DCコンバータによる降圧動作を実行し、降圧動作の実行後に電圧モニタによって残電圧が検出されない場合、遮断スイッチに閉固着故障が生じていると判定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源と、
前記直流電源から直流電源スイッチを介して電力が供給されるDC-DCコンバータと、
前記直流電源スイッチと前記DC-DCコンバータとの間に接続され、前記直流電源からの電力供給を遮断する遮断スイッチと、
前記直流電源スイッチと前記遮断スイッチとの間に設けられた蓄電素子と、
前記蓄電素子の残電圧を検出する電圧モニタと、
を備える車両用電源装置であって、
前記車両用電源装置は、前記直流電源スイッチが開の状態において、
前記遮断スイッチを閉にしたうえで、前記DC-DCコンバータによる昇圧動作を行うことによって前記蓄電素子のチャージを実行し、
前記チャージの実行後に、前記遮断スイッチを開にしたうえで前記DC-DCコンバータによる降圧動作を実行し、
前記降圧動作の実行後に前記電圧モニタによって前記残電圧が検出されない場合、前記遮断スイッチに閉固着故障が生じていると判定する
車両用電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、直流電源からDC開閉器を介して電力が供給されるコンバータを含む電力変換装置を開示している。この電力変換装置は、直流電源からの供給電流を検出する電流検出器による過電流の検出、あるいはコンバータの出力電圧を検出する電圧検出器による過電圧の検出に基づいて異常発生を判断した場合に、上記異常発生の判断に応じてDC開閉器を動作させて直流電源からの電力供給を遮断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-007909号公報
【特許文献2】特開2018-129951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
直流電源から直流電源スイッチを介して電力が供給されるDC-DCコンバータと、直流電源スイッチとDC-DCコンバータとの間に接続され且つ直流電源からの電力供給を遮断する遮断スイッチと、を備える車両用電源装置における遮断スイッチの異常検出には、次のような課題がある。すなわち、遮断スイッチの閉固着故障とDC-DCコンバータ内部の地絡故障とが発生している場合、遮断スイッチの異常を検出するためにDC-DCコンバータが直流電源に接続されると(換言すると、直流電源スイッチが閉とされると)、過電流が発生する恐れがある。
【0005】
本開示は、上述のような課題に鑑みてなされたものであり、過電流の発生を抑制しつつ遮断スイッチの閉固着故障を判定できるようにした車両用電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る車両用電源装置は、直流電源と、DC-DCコンバータと、遮断スイッチと、蓄電素子と、電圧モニタと、を備える。DC-DCコンバータには、直流電源から直流電源スイッチを介して電力が供給される。遮断スイッチは、直流電源スイッチとDC-DCコンバータとの間に接続され、直流電源からの電力供給を遮断する。蓄電素子は、直流電源スイッチと遮断スイッチとの間に設けられている。電圧モニタは、蓄電素子の残電圧を検出する。車両用電源装置は、直流電源スイッチが開の状態において、遮断スイッチを閉にしたうえでDC-DCコンバータによる昇圧動作を行うことによって蓄電素子のチャージを実行し、上記チャージの実行後に遮断スイッチを開にしたうえでDC-DCコンバータによる降圧動作を実行し、降圧動作の実行後に電圧モニタによって残電圧が検出されない場合、遮断スイッチに閉固着故障が生じていると判定する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、直流電源スイッチを閉とする必要なしに、遮断スイッチの閉固着故障を判定できる。このため、遮断スイッチの閉固着故障とともにDC-DCコンバータ内部の地絡故障が生じている場合であっても、DC-DCコンバータに過電流が発生することを抑制しつつ、遮断スイッチの閉固着故障を判定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態に係る車両用電源装置の構成の一例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本開示の実施の形態について説明する。ただし、以下に示す実施の形態において各要素の個数、数量、量、範囲等の数に言及した場合、特に明示した場合や原理的に明らかにその数に特定される場合を除いて、その言及した数に、本開示に係る技術思想が限定されるものではない。
【0010】
1.車両用電源装置の構成
図1は、実施の形態に係る車両用電源装置10の構成の一例を示す回路図である。車両用電源装置10は、直流電源12と、直流電源スイッチ14と、DC-DCコンバータ16と、遮断スイッチ18と、蓄電素子20と、第1及び第2の電圧モニタ22、24と、を備えている。
【0011】
直流電源12は、車両に電力を供給する。より詳細には、一例として、直流電源12は、48Vのバッテリである。直流電源スイッチ14の開閉は、図示が省略された電子制御ユニット(ECU)によって制御される。
【0012】
DC-DCコンバータ16は、制御IC(制御集積回路)26と、スイッチング素子28、30と、リアクトル32、34と、コンデンサ36、38と、を備え、直流電源12から直流電源スイッチ14を介して供給される電力のDC-DC変換を行うように構成されている。より詳細には、一例として、DC-DCコンバータ16は、直流電源12からの48Vのバッテリ電圧を、車載補機用バッテリ(図示省略)の電圧(例えば、12V)に変換する。制御IC26は、プロセッサを含み、スイッチング素子28、30を制御することによってDC-DCコンバータ16による昇圧動作及び降圧動作を制御可能に構成されている。図1には、降圧動作時にDC-DCコンバータ16の内部を流れる降圧電流が表されている。制御IC26は、直流電源12以外の電源(例えば上記の車載補機用バッテリ)から供給される電力によって作動する。
【0013】
図1に示す一例では、DC-DCコンバータ16、遮断スイッチ18、蓄電素子20、並びに第1及び第2の電圧モニタ22、24は、1つのDC-DCコンバータユニットとして構成されている。
【0014】
遮断スイッチ18は、直流電源スイッチ14とDC-DCコンバータ16との間に接続され、直流電源12からの電力供給を遮断する。遮断スイッチ18は、DC-DCコンバータ16の保護のために設けられている。遮断スイッチ18の開閉は、制御IC26によって制御される。
【0015】
蓄電素子(例えば、コンデンサ)20は、直流電源スイッチ14と遮断スイッチ18との間に設けられている。より詳細には、蓄電素子20の一端は、直流電源12の高電位電極に接続された高電位ラインPに接続されており、その他端は信号用接地に接続されている。付け加えると、蓄電素子20は、DC-DCコンバータ16から見て、遮断スイッチ18の外側に配置されている。
【0016】
第1の電圧モニタ22は、直流電源スイッチ14と蓄電素子20との間に設けられており、DC-DCコンバータ16の入力電圧V1を検出する。第1の電圧モニタ22は、入力電圧V1を検出するための電気抵抗40及び42を含む。より詳細には、直列に接続された電気抵抗40及び42の組の一端は高電位ラインPに接続されており、その他端は信号用接地に接続されている。付け加えると、入力電圧V1は、DC-DCコンバータ16から見て、遮断スイッチ18の外側における入力電圧に相当する。また、第1の電圧モニタ22は、後述の遮断スイッチ18の異常検出処理における蓄電素子20の残電圧の検出に用いられる。このため、第1の電圧モニタ22は、本開示に係る「電圧モニタ」の一例に相当する。
【0017】
第2の電圧モニタ24は、遮断スイッチ18とDC-DCコンバータ16との間に設けられており、DC-DCコンバータ16の入力電圧V2を検出する。第2の電圧モニタ24は、入力電圧V2を検出するための電気抵抗44及び46を含む。より詳細には、直列に接続された電気抵抗44及び46の組の一端は高電位ラインPに接続されており、その他端は信号用接地に接続されている。付け加えると、入力電圧V2は、DC-DCコンバータ16から見て、遮断スイッチ18の内側における入力電圧に相当する。
【0018】
2.遮断スイッチの異常検出処理
上述のように構成された車両用電源装置10において、制御IC26は、遮断スイッチ18の異常検出処理を次のように実行する。なお、当該異常検出処理は、例えば、車両のパワースイッチ(イグニッションスイッチ)がONとされた後に、DC-DCコンバータ16の正規の動作を開始する前に実行される。
【0019】
具体的には、異常検出処理は、直流電源12がDC-DCコンバータ16に接続される前に(すなわち、直流電源スイッチ14が開の状態(OFF状態)において)、次のような手順1~7で実行される。なお、手順1、2、及び5のそれぞれにおける後述の移行の条件が成立しない場合、制御IC26は、遮断スイッチ18又はDC-DCコンバータ16等、車両用電源装置10のシステムの構成要素に異常があると判断し、異常検出処理を中止する。そして、制御IC26は異常通知を行う。
【0020】
<手順1>
制御IC26は、遮断スイッチ18を閉(ON)とする。ここで、第1の電圧モニタ22は、入力電圧V1が閾値未満の場合には所定のLo電圧を制御IC26に対して出力し、入力電圧V1が閾値以上の場合には所定のHi電圧を制御IC26に対して出力する。このことは、第2の電圧モニタ24についても同様である。制御IC26は、受け取った入力電圧V1及びV2がともにLo電圧であることを条件として、次の手順2に移行する。
【0021】
<手順2>
制御IC26は、直流電源12以外の電源(例えば、上記の車載補機用バッテリ)からの電力を利用して、DC-DCコンバータ16による昇圧動作を行う。その結果、蓄電素子20がチャージされる。遮断スイッチ18が閉状態で行われた当該昇圧動作による蓄電素子20のチャージが完了すると、入力電圧V1及びV2はともにHi電圧になるはずである。そこで、制御IC26は、入力電圧V1及びV2はともにHi電圧であることを条件として、次の手順3に移行する。
【0022】
<手順3>
制御IC26は、DC-DCコンバータ16による上記の昇圧動作を停止する。
【0023】
<手順4>
制御IC26は、遮断スイッチ18を開(OFF)とする。
【0024】
<手順5>
制御IC26は、直流電源12以外の電源(例えば、上記の車載補機用バッテリ)からの電力を利用して、DC-DCコンバータ16による降圧動作を行う。遮断スイッチ18が開の状態で当該降圧動作が行われると、遮断スイッチ18の内側の入力電圧V2が低下するはずである。そこで、制御IC26は、入力電圧V2がLo電圧であることを条件として、次の手順6に移行する。
【0025】
<手順6>
制御IC26は、DC-DCコンバータ16による上記の降圧動作を停止する。
【0026】
<手順7>
制御IC26は、遮断スイッチ18の外側の入力電圧V1がHi電圧であるかLo電圧であるかを判定する。換言すると、制御IC26は、蓄電素子20の残電圧があるか否かを判定する。
【0027】
その結果、入力電圧V1がHi電圧である場合(つまり、蓄電素子20の残電圧が検出された場合)には、制御IC26は、遮断スイッチ18は正常であると判定する。一方、入力電圧V1がLo電圧である場合(つまり、蓄電素子20の残電圧が検出されない場合)には、制御IC26は、遮断スイッチ18は異常である(つまり、遮断スイッチ18に閉固着故障が生じている)と判定する。
【0028】
3.効果
以上説明したように、本実施形態に係る異常検出処理によれば、直流電源スイッチ14を閉(ON)とする必要なしに、遮断スイッチ18の閉固着故障を判定できる。このため、遮断スイッチ18の閉固着故障とともにDC-DCコンバータ16内部の地絡故障が生じている場合であっても、DC-DCコンバータ16に過電流が発生することを抑制しつつ、遮断スイッチ18の閉固着故障を判定することが可能となる。
【符号の説明】
【0029】
10 車両用電源装置
12 直流電源
14 直流電源スイッチ
16 DC-DCコンバータ
18 遮断スイッチ
20 蓄電素子
22 第1の電圧モニタ
24 第2の電圧モニタ
26 制御IC
図1