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特開2023-119829樹脂組成物、プリプレグ、及びプリプレグの製造方法
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  • 特開-樹脂組成物、プリプレグ、及びプリプレグの製造方法 図1
  • 特開-樹脂組成物、プリプレグ、及びプリプレグの製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119829
(43)【公開日】2023-08-29
(54)【発明の名称】樹脂組成物、プリプレグ、及びプリプレグの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/20 20060101AFI20230822BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20230822BHJP
   C08F 283/10 20060101ALI20230822BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
C08G59/20
C08J5/24 CFC
C08F283/10
C08F2/44 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022022916
(22)【出願日】2022-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】302019599
【氏名又は名称】ミズノ テクニクス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】593165487
【氏名又は名称】学校法人金沢工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 毅
(72)【発明者】
【氏名】内海 陽吉
(72)【発明者】
【氏名】中 裕里
(72)【発明者】
【氏名】西田 裕文
【テーマコード(参考)】
4F072
4J011
4J026
4J036
【Fターム(参考)】
4F072AB10
4F072AB22
4F072AD09
4F072AD23
4F072AD55
4F072AE02
4F072AF30
4F072AG03
4F072AH04
4F072AH21
4F072AJ22
4F072AL02
4F072AL04
4F072AL17
4J011AA05
4J011AC04
4J011BA04
4J011PA34
4J011PA86
4J011PB30
4J011PC02
4J011PC08
4J011QA03
4J011QB19
4J011RA10
4J011SA21
4J011UA01
4J011VA01
4J011WA07
4J026AB04
4J026BA30
4J026BB01
4J026DB13
4J026DB25
4J026DB36
4J026FA09
4J026GA07
4J026GA08
4J036AA01
4J036AD08
4J036AF06
4J036CA21
4J036DA05
4J036DA10
4J036DC26
4J036DC31
4J036DC35
4J036GA20
4J036HA02
4J036JA11
(57)【要約】
【課題】タックフリーであって、形状保持性の良好なプリプレグを提供する。
【解決手段】第1剤と第2剤とからなり、プリプレグを製造するために強化繊維基材に塗布される樹脂組成物であって、前記第1剤は、(A)成膜性を有する固形エポキシ樹脂、(B)液状エポキシ樹脂、(C)エポキシ樹脂用潜在性硬化剤、(D)1分子中に1個の(メタ)アクリロイルオキシ基及び1個以上のエポキシ基を有する化合物、(E)有機過酸化物を含有し、前記第2剤は、(F)還元剤を含有している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1剤と第2剤とからなり、プリプレグを製造するために強化繊維基材に塗布される樹脂組成物であって、
前記第1剤は、
(A)成膜性を有する固形エポキシ樹脂、
(B)液状エポキシ樹脂、
(C)エポキシ樹脂用潜在性硬化剤、
(D)1分子中に1個の(メタ)アクリロイルオキシ基及び1個以上のエポキシ基を有する化合物、
(E)有機過酸化物
を含有し、
前記第2剤は、
(F)還元剤
を含有していることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
前記第1剤は、(G)光ラジカル開始剤
をさらに含有していることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の樹脂組成物と強化繊維基材とを含むことを特徴とするプリプレグ。
【請求項4】
請求項1に記載の樹脂組成物が強化繊維基材に含浸され、複数層積層して前記樹脂組成物を熱硬化させることによって成形品を成形するために使用されるプリプレグの製造方法であって、
前記強化繊維基材をローラに沿って搬送する搬送工程と、
前記強化繊維基材の少なくとも一方の面に前記第1剤を塗布して第1塗布体を形成する第1塗布工程と、
前記第1塗布体において前記第1剤が塗布された面に前記第2剤を塗布して塗布体を形成する第2塗布工程と
前記塗布体を巻取りローラに巻き取る巻取り工程と
を備え、
前記第1塗布工程は、周面に前記樹脂組成物が供給されたオイリングローラに沿わせながら前記強化繊維基材を搬送することを特徴とするプリプレグの製造方法。
【請求項5】
前記第1塗布工程は、(G)光ラジカル開始剤を含有している前記第1剤を塗布し、
前記塗布体の両面にUV照射する光硬化工程をさらに備えていることを特徴とする請求項4に記載のプリプレグの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリプレグを製造するために使用する樹脂組成物、プリプレグ、及びプリプレグの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維強化樹脂材料は、軽量でありながら強度に優れていることから、スポーツ用品、医療用材料、航空・宇宙用材料、自動車用材料、建築用材料等様々な分野で広く利用されている。繊維強化樹脂材料からなる成形品は、通常、強化繊維基材にマトリックス樹脂を含浸させたいわゆるプリプレグと呼ばれる成形基材を積層し、加圧及び加熱して、マトリックス樹脂を賦形することにより成形される。
【0003】
プリプレグとしては、シートプリプレグ、プリプレグテープ、トウプリプレグ等が知られている。シートプリプレグとしては、強化繊維基材としての織物や編物にマトリックス樹脂を含浸させたシート状の成形基材(強化繊維ファブリック)や、一方向に並行して配列させた複数本の強化繊維からなる強化繊維基材にマトリックス樹脂を含浸させたシート状の成形基材(UD材)がある。プリプレグテープは、シートプリプレグを所定の幅に切り出した成形基材である。トウプリプレグは、複数本の強化繊維からなる強化繊維束にマトリックス樹脂を含浸させた成形基材である。
【0004】
特許文献1には、プリプレグシートの製造方法が記載されている。ここでは、エポキシ樹脂を離型紙上に塗布した樹脂フィルムと炭素繊維シートを積層して、炭素繊維シートにエポキシ樹脂を含浸している。また、特許文献2には、トウプリプレグの製造方法が記載されている。ここでは、周面にエポキシ樹脂が供給された溝付きローラに沿って強化繊維束を搬送し、エポキシ樹脂が塗布された強化繊維束をU溝が形成されたローラに押し当てることで、強化繊維束内部にエポキシ樹脂を含浸している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-108058号公報
【特許文献2】特開2003-266551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、成形基材の製造と成形品の賦形とを同じ現場で行わず、あらかじめマトリックス樹脂の含浸のみを行ったプリプレグを、成形現場に持ち込んで、賦形、固化させる場合がある。しかし、従来知られている樹脂組成物は粘着性が高いため、離型紙なしでの巻取り性や解舒性が良好ではない。また、樹脂による強化繊維の拘束力が弱いため、成形時にプリプレグの形状が変化したり、繊維が滑ってプリプレグの積層形状が崩れたりする。そのため、作業性が低下したり、成形品の品質が低下したりするといった問題が生じる。
【0007】
タックフリーであって、形状保持性の良好なプリプレグが要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明は、第1剤と第2剤とからなり、プリプレグを製造するために強化繊維基材に塗布される樹脂組成物であって、前記第1剤は、(A)成膜性を有する固形エポキシ樹脂、(B)液状エポキシ樹脂、(C)エポキシ樹脂用潜在性硬化剤、(D)1分子中に1個の(メタ)アクリロイルオキシ基及び1個以上のエポキシ基を有する化合物、(E)有機過酸化物を含有し、前記第2剤は、(F)還元剤を含有している。
【0009】
常温では、(C)エポキシ樹脂用潜在性硬化剤による(A)成膜性を有する固形エポキシ樹脂及び(B)液状エポキシ樹脂の重合反応は起こらないが、(A)成膜性を有する固形エポキシ樹脂がフィルム形成能を有するため、(B)液状エポキシ樹脂の共存下でも、樹脂組成物全体の流動性が失われて固形となる。また、(D)1分子中に1個の(メタ)アクリロイルオキシ基及び1個以上のエポキシ基を有する化合物は、(A)成膜性を有する固形エポキシ樹脂の溶剤として作用するとともに、(E)有機過酸化物、及び(F)還元剤の作用によってREDOX重合して溶剤の機能を失う。
【0010】
そのため、強化繊維基材に樹脂組成物を塗布したプリプレグでは、樹脂組成物のREDOX反応が進行する。プリプレグの表面がタックフリーとなって、離型紙なしでも巻取り性や解舒性が良好である。扱い易く、保管性も良好である。また、重合した樹脂組成物によって、強化繊維基材の強化繊維が拘束される。プリプレグの形状保持性が良好となり、成形現場での作業性を向上させることができる。
【0011】
(B)液状エポキシ樹脂は、(A)成膜性を有する固形エポキシ樹脂と混合することにより、微妙な流動性のバランスを取ることが可能であり、加温されたときには樹脂組成物全体を適度に再流動化させることができる。また、(D)成分は、1分子中に1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する1官能性であるため、REDOX重合により直鎖状ポリマーとなる。
【0012】
そのため、樹脂組成物全体の流動性が失われて固形となるものの、加温により再流動化し、樹脂組成物全体の流動変形、融着を阻害し難い。
一方、(C)エポキシ樹脂用潜在性硬化剤は、硬化温度まで加熱されると、(A)成膜性を有する固形エポキシ樹脂及び(B)液状エポキシ樹脂のエポキシ基と反応して、樹脂組成物全体を熱硬化させる。また、加熱により(E)有機過酸化物が分解してラジカルを生成し、(D)成分の(メタ)アクリロイルオキシ基をラジカル重合させる開始剤として作用する。(D)成分がREDOX重合した直鎖状ポリマーには1個以上のエポキシ基が存在しているため、(C)エポキシ樹脂用潜在性硬化剤が熱硬化する温度では、(A)成分及び(B)成分と同様に、(D)成分も(C)成分と反応して、最終的には同じ分子ネットワーク中に取り込まれる。
【0013】
そのため、(C)エポキシ樹脂用潜在性硬化剤の硬化温度まで加熱すると、強化繊維基材に樹脂組成物を塗布したプリプレグの内部でも重合反応が進行して熱硬化する。強度に優れた成形品を成形することができる。成形品の品質が向上する。
【0014】
上記の構成において、前記第1剤は、(G)光ラジカル開始剤をさらに含有していることが好ましい。
(G)光ラジカル開始剤は、UV照射によりラジカルを発生する化合物で、(D)成分の(メタ)アクリロイルオキシ基をラジカル重合させる。(E)成分及び(F)成分による(D)成分のREDOX重合反応には、比較的時間を要するが、(G)光ラジカル開始剤を含有する樹脂組成物にUV照射することにより、(D)成分の重合反応が、プリプレグの表面から、より速く進行する。樹脂組成物を塗布したプリプレグでの重合反応を速く進行させることができる。これにより、例えば、プリプレグを製造する際、強化繊維基材を搬送しながら樹脂組成物を塗布、含浸して、巻き取っていくような場合、高速で搬送することが可能となる。プリプレグの生産効率を向上させることができる。
【0015】
上記の課題を解決するため、本発明のプリプレグは、前記樹脂組成物と強化繊維基材とを含む。
上記の構成によれば、タックフリーであって、形状保持性の良好なプリプレグが得られる。
【0016】
上記の課題を解決するため、本発明のプリプレグの製造方法は、前記樹脂組成物が強化繊維基材に含浸され、複数層積層して前記樹脂組成物を熱硬化させることによって成形品を成形するために使用されるプリプレグの製造方法であって、前記強化繊維基材をローラに沿って搬送する搬送工程と、前記強化繊維基材の少なくとも一方の面に前記第1剤を塗布して第1塗布体を形成する第1塗布工程と、前記第1塗布体において前記第1剤が塗布された面に前記第2剤を塗布して塗布体を形成する第2塗布工程と前記塗布体を巻取りローラに巻き取る巻取り工程とを備え、前記第1塗布工程は、周面に前記樹脂組成物が供給されたオイリングローラに沿わせながら前記強化繊維基材を搬送する。
【0017】
上記の構成によれば、第1塗布工程、第2塗布工程を経た塗布体には、前記樹脂組成物が塗布、含浸されている。そのため、ローラに沿って搬送しながら、前記樹脂組成物が塗布、含浸されたプリプレグを製造することができる。表面がタックフリーで形状保持性の良好なプリプレグを効率的に製造することができる。
【0018】
上記の構成において、前記第1塗布工程は、(G)光ラジカル開始剤を含有している前記第1剤を塗布し、前記塗布体の両面にUV照射する光硬化工程をさらに備えていることが好ましい。
【0019】
上記の構成によれば、(D)1分子中に1個の(メタ)アクリロイルオキシ基及び1個以上のエポキシ基を有する化合物の重合反応を速く進行させることができる。表面がタックフリーで形状保持性の良好なプリプレグを高速で製造することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、タックフリーであって、形状保持性の良好なプリプレグが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本実施形態のプリプレグの製造方法について説明する図である。
図2】樹脂組成物を塗布、含浸したプリプレグの形状保持性について評価した実施例について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を具体化した樹脂組成物、及び樹脂組成物を塗布、含浸してプリプレグを製造する製造方法について説明する。
<樹脂組成物について>
まず、樹脂組成物について説明する。
【0023】
強化繊維基材に塗布、含浸される樹脂組成物は、(A)成膜性を有する固形エポキシ樹脂、(B)液状エポキシ樹脂、(C)エポキシ樹脂用潜在性硬化剤、(D)1分子中に1個の(メタ)アクリロイルオキシ基及び1個以上のエポキシ基を有する化合物、(E)有機過酸化物、(F)還元剤、(G)光ラジカル開始剤を含有している。以下では、(A)成膜性を有する固形エポキシ樹脂を、単に(A)固形エポキシ樹脂という場合がある。また、(C)エポキシ樹脂用潜在性硬化剤を、単に(C)潜在性硬化剤という場合がある。さらに、(D)1分子中に1個の(メタ)アクリロイルオキシ基と1個以上のエポキシ基を有する化合物を、単に(D)1官能性(メタ)アクリロイルオキシ基化合物という場合がある。
【0024】
本実施形態の樹脂組成物は、第1剤と第2剤とからなる2液混合型であり、強化繊維基材に塗布する直前に混合する。第1剤は、(A)固形エポキシ樹脂、(B)液状エポキシ樹脂、(C)潜在性硬化剤、(D)1官能性(メタ)アクリロイルオキシ基化合物、(E)有機過酸化物、及び(G)光ラジカル開始剤を含有している。第2剤は、(F)還元剤を含有している。
【0025】
(A)固形エポキシ樹脂は、樹脂組成物の主成分であり、フィルム形成能を有する。(A)固形エポキシ樹脂は、(B)液状エポキシ樹脂の共存下でもなお樹脂組成物全体の流動性を失わせることができる。(B)液状エポキシ樹脂は、(A)固形エポキシ樹脂のフィルム形成能、表面タック、接着性、硬化性などの調整のために使用される成分である。(B)液状エポキシ樹脂は、(A)固形エポキシ樹脂と混合することにより微妙な流動性のバランスを取り、加温されたときには樹脂組成物全体を適度に再流動化させる。(C)潜在性硬化剤は、(A)固形エポキシ樹脂、及び(B)液状エポキシ樹脂を硬化させるために使用される成分である。硬化温度まで加熱されると(A)固形エポキシ樹脂及び(B)液状エポキシ樹脂のエポキシ基と反応して、樹脂組成物全体を硬化させる。(D)1官能性(メタ)アクリロイルオキシ基化合物は、(A)固形エポキシ樹脂の溶剤として作用し、第1剤と第2剤との混合により、(E)有機過酸化物及び(F)還元剤の作用によってREDOX重合する化合物である。また、(D)1官能性(メタ)アクリロイルオキシ基化合物は、(G)光ラジカル開始剤によって光ラジカル重合する。
【0026】
以下、各成分について説明する。
<(A)固形エポキシ樹脂について>
(A)固形エポキシ樹脂は、比較的大きな数平均分子量を有するエポキシ樹脂である。(A)固形エポキシ樹脂の数平均分子量は、600~20000であることが好ましく、900~6000であることがより好ましい。(A)固形エポキシ樹脂とは、温度20℃において固体のエポキシ樹脂である。(A)固形エポキシ樹脂の軟化点は、50~200℃であることが好ましく、60~150℃であることがより好ましい。
【0027】
(A)固形エポキシ樹脂としては、例えば、エピコート1001(数平均分子量(MW)900、エポキシ当量475g/eq、軟化点64℃)、エピコート1002(MW1060、エポキシ当量650g/eq、軟化点78℃)、エピコート1003(エポキシ当量720g/eq、軟化点89℃)、エピコート1055(MW1350、エポキシ当量850g/eq、軟化点93℃)、エピコート1004(MW1600、エポキシ当量925g/eq、軟化点97℃)、エピコート1007(MW2900、エポキシ当量1975g/eq、軟化点128℃)、エピコート1009(MW3750、エポキシ当量2850g/eq、軟化点144℃)、エピコート1010(MW5500、エポキシ当量4000g/eq)等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0028】
(A)固形エポキシ樹脂の配合量は、樹脂組成物中の(A)~(G)成分を100重量部とした場合、10~50重量部であることが好ましく、20~40重量部であることがより好ましい。
【0029】
<(B)液状エポキシ樹脂について>
(B)液状エポキシ樹脂は、(A)固形エポキシ樹脂のフィルム形成能、表面タック、接着性、硬化性などの調整のために使用される成分である。(B)液状エポキシ樹脂における液状とは、(A)固形エポキシ樹脂における固形と区別するためのものである。温度20℃において固形でなければよく、液状~ペースト状であればよい。
【0030】
(B)液状エポキシ樹脂は、固形エポキシ樹脂より数平均分子量が小さいエポキシ樹脂である。(B)液状エポキシ樹脂の数平均分子量は、100~3000であることが好ましく、200~1500であることがより好ましい。(A)固形エポキシ樹脂単独では一般にエポキシ基の含有率が低く、硬化性が不充分である。(B)液状エポキシ樹脂はそれを補う必要性の点から、フェノール性OH基から誘導されるグリシジルエーテル基を有し、エポキシ当量が300g/eq以下であるものが好ましい。
【0031】
(B)液状エポキシ樹脂としては、例えば、液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンジグリシジルエーテル等)、液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂、液状フェノールノボラック型エポキシ樹脂、液状ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、液状ナフタレン型エポキシ樹脂(ジヒドロキシナフタレンジグリシジルエーテル等)、液状グリシジルエステル型エポキシ樹脂(フタル酸ジグリシジルエステル等)、液状グリシジルエーテル型エポキシ樹脂(カテコールジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、モノ-tert-ブチルヒドロキノンジグリシジルエーテル等)、液状グリシジルアミン型エポキシ樹脂、液状複素環式エポキシ樹脂、液状ジアリールスルホン型エポキシ樹脂およびそれらの変性液状物等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0032】
(B)液状エポキシ樹脂の配合量は、樹脂組成物中の(A)~(G)成分を100重量部とした場合、10~50重量部であることが好ましく、20~40重量部であることがより好ましい。また、(A)固形エポキシ樹脂と(B)液状エポキシ樹脂の割合は、1:2~2:1の範囲であることが好ましい。
【0033】
<(C)潜在性硬化剤について>
(C)潜在性硬化剤は、(A)固形エポキシ樹脂、及び(B)液状エポキシ樹脂を硬化させる成分である。硬化温度まで加熱されると(A)固形エポキシ樹脂及び(B)液状エポキシ樹脂のエポキシ基と反応して、樹脂組成物全体を硬化させる。しかし、室温や80℃程度までの温度での加温では反応せず、硬化させるためには100℃以上の温度で加熱する必要がある。
【0034】
(C)潜在性硬化剤は、従来公知のものを適宜選択して使用することができる。例えば、ジシアンジアミド、二塩基酸ジヒドラジド、三フッ化ホウ素アミン錯塩、グアナミン類、メラミン、イミダゾール類、変性アミン等が挙げられる。
【0035】
また、(C)潜在性硬化剤として、市販品を使用することもできる。例えば、ジシアンジアミド型潜在性硬化剤としては、アデカハードナーEH-3636S、アデカハードナーEH-4351S等が挙げられる。イミダゾール型潜在性硬化剤としては、アデカハードナーEH-5011S、アデカハードナーEH-5046S等が挙げられる。ポリアミン型潜在性硬化剤としては、アデカハードナーEH-4357S、アデカハードナーEH-5057P、アデカハードナーEH-5057PK(以上、株式会社ADEKA製)等が挙げられる。アミンアダクト系潜在性硬化剤としては、アミキュアPN-23、アミキュアPN-40等が挙げられる。ヒドラジド系潜在性硬化剤としては、アミキュアVDH(以上、味の素ファインテクノ株式会社製)等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0036】
(C)潜在性硬化剤の配合量は、樹脂組成物中の(A)~(G)成分を100重量部とした場合、5~30重量部であることが好ましく、10~20重量部であることがより好ましい。
【0037】
<(D)1官能性(メタ)アクリロイルオキシ基化合物について>
(D)1官能性(メタ)アクリロイルオキシ基化合物は、(A)固形エポキシ樹脂の溶剤として作用し、(E)有機過酸化物、及び(F)還元剤の作用によってREDOX重合する化合物である。また、(G)光ラジカル開始剤によって光ラジカル重合する化合物である。
【0038】
(D)成分は、1分子中に1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する1官能性であるため、REDOX重合によって直鎖状ポリマーとなる。また、直鎖状ポリマーには1個以上のエポキシ基が存在しているため、(C)潜在性硬化剤が硬化する温度では、(A)成分や(B)成分が(C)成分と反応するのと同様に、(D)成分も(C)成分と反応して最終的には同じ分子ネットワーク中に取り込まれる。
【0039】
(A)~(C)成分の混合物は室温で固形となるため、この混合物のままでは強化繊維基材に含浸させることは困難である。後に説明する第1塗布工程13は、強化繊維基材に樹脂組成物を塗布、含浸する工程であるが、第1塗布工程13では、樹脂組成物は低粘度でなければならない。そのため、粘度を低下させるために溶剤が必要である。溶剤としての(D)成分は、塗布した後、揮発により除去することなくREDOX重合させることにより、溶剤としての機能を失わせることを目的としている。
【0040】
(D)1官能性(メタ)アクリロイルオキシ基化合物としては、例えば、グリシジルメタクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸とのハーフエステル等が挙げられる。これらの中では、粘度が低く、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の混合物を効果的に低粘度化させて、強化繊維基材に含浸しやすくする希釈効果に大変優れた反応性溶剤である点から、グリシジルメタクリレートが好ましい。
【0041】
(D)1官能性(メタ)アクリロイルオキシ基化合物の配合量は、樹脂組成物中の(A)~(G)成分を100重量部とした場合、10~50重量部であることが好ましく、20~40重量部であることがより好ましい。
【0042】
<(E)有機過酸化物について>
(E)有機過酸化物は、加熱により分解してラジカルを生成する化合物である。(F)還元剤とともに(D)1官能性(メタ)アクリロイルオキシ基化合物のREDOX重合反応を開始する。本実施形態の(E)有機過酸化物は、高温にならないとラジカルを生成しない種類のものを選択している。そのため、単独では室温では実質的には作用しない。
【0043】
(E)有機過酸化物としては、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、tーブチルパーオキシベンゾエート、クメンハイドロパーオキサイド、p-メンタンハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンジハイドロパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0044】
(E)有機過酸化物の配合量は、樹脂組成物中の(A)~(G)成分を100重量部とした場合、1~10重量部であることが好ましく、0.5~5重量部であることがより好ましい。
【0045】
<(F)還元剤について>
(F)還元剤は、(E)有機過酸化物を低温で還元分解して、強制的にラジカルを放出させる。このREDOX反応は、(E)有機過酸化物と分子レベルで混合しなくても接触するだけで起こり、開始したラジカル重合反応はある程度の距離なら攪拌しなくても伝播していくという特徴を有する。
【0046】
(F)還元剤としては、例えば、種々のアミンとアルデヒドとの反応縮合物、N,N-ジメチルパラトルイジン、2-メルカプトベンズイミダゾール、メチルチオ尿素、ジブチルチオ尿素、テトラメチルチオ尿素、エチレンチオ尿素、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸銅、バナジウム化合物等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0047】
(F)還元剤の配合量は、樹脂組成物中の(A)~(G)成分を100重量部とした場合、0.1~1重量部であることが好ましく、0.2~0.8重量部であることがより好ましい。
【0048】
<(G)光ラジカル開始剤について>
(G)光ラジカル開始剤は、UV照射により分解してラジカルを生成する化合物である。(G)光ラジカル開始剤は、(D)1官能性(メタ)アクリロイルオキシ基化合物光ラジカル重合する。
【0049】
(G)光ラジカル開始剤としては、(メタ)アクリレート系単量体の光重合に使用されている公知の光ラジカル発生剤から適宜選択して使用することができる。例えば、ベンゾフェノン、ベンジル、ミヒラーズケトン、チオキサントン誘導体、ベンゾインエチルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、アシルフォスフィンオキサイド誘導体、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルスルファイド等があげられる。これらは単独で使用してもよく2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0050】
<その他の添加剤について>
本発明の樹脂組成物には、硬化性等の機能を損なわない範囲で、必要に応じ、その他の添加材を加えてもよい。その他の添加材としては、例えば、反応促進剤、硬化調整剤、貯蔵安定剤、増量剤、物性調整剤、補強剤、着色剤、難燃剤、沈殿防止剤、酸化防止剤、老化防止剤、香料、顔料、染料等が挙げられる。
【0051】
<強化繊維基材について>
次に、強化繊維基材について説明する。
強化繊維基材を構成する強化繊維は、従来公知の強化繊維から適宜選択することができる。具体的には、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、バサルト繊維、ボロン繊維、炭化ケイ素繊維、スチール繊維、アルミナ繊維、チラノ繊維、アモルファス繊維等が挙げられる。中でも、軽量であって、強度に優れた炭素繊維が好ましい。
【0052】
強化繊維基材を構成する強化繊維の本数、繊維径、繊度、密度、引張強度等は、特に限定されない。強化繊維基材としては、市販のものを適宜選択して使用することができる。
<プリプレグの製造方法について>
次に、樹脂組成物を塗布、含浸してプリプレグを製造する製造方法についての一実施形態について、図1に従って説明する。本実施形態のプリプレグは、複数本の強化繊維からなる強化繊維基材としての強化繊維束Fに、樹脂組成物を含浸させてなるトウプリプレグである。以下では、単にプリプレグPと言う。
【0053】
図1に示すように、本実施形態のプリプレグPの製造方法では、強化繊維束Fに樹脂組成物を塗布して含浸させた後、UV照射してプリプレグPを製造する。プリプレグPの製造方法は、巻出し工程11、開繊工程12、第1塗布工程13、搬送工程14、第2塗布工程15、光硬化工程16、及び巻取り工程17を備えている。
【0054】
プリプレグPは、図1に示すプリプレグ製造装置10で製造する。プリプレグ製造装置10の最上流には給糸ボビン21が配置されている。巻出し工程11は、給糸ボビン21から強化繊維束Fを引き出す工程である。給糸ボビン21から引き出された強化繊維束Fは、複数のガイドローラ22に沿って搬送されてオイリングローラ23に送られる。
【0055】
開繊工程12では、強化繊維束Fを搬送しながら開繊して、強化繊維が引き揃えられた状態とする。強化繊維束Fは、オイリングローラ23に搬送されるまでに、開繊された状態とされる。開繊工程12が設けられていることにより、強化繊維束Fの幅精度が向上し、最終的に製造されるプリプレグPの幅精度が向上する。
【0056】
第1塗布工程13は、強化繊維束Fの一方の面に樹脂組成物の第1剤を塗布及び含浸させる工程である。オイリングローラ23は、その外周面が搬送される強化繊維束Fに接触する位置に配置されるとともに、強化繊維束Fの搬送方向Aに沿って回転するように構成されている。
【0057】
オイリングローラ23の下部には、樹脂タンク25が配置されている。樹脂タンク25はオイリングローラ23の下部に当接する箱状部材である。オイリングローラ23の外周面と樹脂タンク25の下壁及び側壁との間には、第1剤を貯留する貯留空間が形成されている。オイリングローラ23は、その外周面の回転軌跡の一部において、樹脂タンク25に貯留された第1剤を通過して外周面に第1剤を付着させることによって、樹脂タンク25からの第1剤の供給を受ける。オイリングローラ23の表面に供給された第1剤は、オイリングローラ23の側部に配置されたスクレーパ24によって所定厚みに調整されている。
【0058】
第1塗布工程13では、樹脂タンク25からの強化繊維束Fへの第1剤の塗布量が所定の目標値となるように制御されている。具体的には、オイリングローラ23に供給する第1剤が貯留された樹脂タンク25の重量を一定時間ごとに測定して、オイリングローラ23から強化繊維束Fに供給された樹脂量を算出する。このようにして、オイリングローラ23による第1剤の塗布量(第1塗布体S1の樹脂含有量Rc)が、所定の目標値に収束するように制御する。
【0059】
オイリングローラ23で塗布された第1剤は、強化繊維束Fの内部にまで含浸される。第1剤が塗布、含浸された強化繊維束Fを第1塗布体S1と言うものとする。
搬送工程14では、第1塗布体S1は、複数のガイドローラ22に沿って搬送される。
【0060】
第2塗布工程15は、第1塗布体S1において第1剤が塗布された一方の面に樹脂組成物の第2剤を塗布する工程である。第2剤を塗布することにより、樹脂組成物のREDOX反応が開始される。
【0061】
第2塗布工程15では、塗布装置26によって第2剤を噴射する。塗布装置26の形状、大きさ、長さ、塗布量等は、適宜選択することができる。塗布装置26としては、スプレー法やインクジェット法のような非接触の微小液滴吐出装置が好ましい。非接触の塗布装置26を使用するのは、第1剤中の各成分と第2剤の(F)還元剤とが分子レベルで混合されなくてもREDOX反応が開始し、開始したラジカル重合はある程度の距離なら攪拌しなくても伝播していくという性質があるためである。第2剤が塗布、含浸された強化繊維束Fを第2塗布体S2と言うものとする。
【0062】
第2塗布体S2では、第1剤に含有された(D)1官能性(メタ)アクリロイルオキシ基化合物が、(E)有機過酸化物、及び第2剤に含有された(F)還元剤の作用によってREDOX重合する。
【0063】
第2塗布体S2は、UV照射装置27に送られる。UV照射装置27は、塗布装置26に近接して配置されている。光硬化工程16は、第2塗布体S2をUV照射装置27内で搬送することにより、第2塗布体S2の両面にUV照射する工程である。UV照射装置27は、内部に複数のUV照射ランプが配置された箱状の装置である。UV照射装置27の内面は鏡張りされている。そのため、複数のUV照射ランプからのUV光は、UV照射装置27の内面で反射して、搬送される第2塗布体S2の表面に効率よく照射される。UV照射装置27内を搬送された第2塗布体S2では、(D)1官能性(メタ)アクリロイルオキシ基化合物が、(G)光ラジカル開始剤の作用によって光ラジカル重合する。これにより、(D)1官能性(メタ)アクリロイルオキシ基化合物の重合反応が速く進行して、表面がタックフリーのプリプレグPが得られる。
【0064】
UV照射装置27の形状、大きさ、長さや、UV照射ランプの数、配置、光量等は、適宜調整すればよい。これらは、第2塗布体S2における樹脂組成物の塗布量、第2塗布体S2の厚み、搬送速度等との関係から設定、調整することができる。
【0065】
プリプレグ製造装置10の最下流には巻取りローラ28が配置されている。巻取り工程17は、タックフリーのプリプレグPを巻取りローラ28に巻き取る工程である。UV照射装置27から搬送されたプリプレグPは、ガイドローラ22に沿って搬送されて、所定の圧力を掛けながら、巻取りローラ28に巻き取られる。
【0066】
本実施形態の巻取り工程17では、プリプレグPを巻取りローラ28にレコード巻きしている。レコード巻きとは、巻取りローラ28に対するプリプレグPの巻き付け位置をずらさずに、プリプレグPの幅方向両端を揃えて重ねるように巻き付ける方法である。プリプレグPの表面はタックフリーとなっているため、表面に強化繊維束F由来の強化繊維が露出していない。順次同じ位置に巻き付けていくレコード巻きにしても、強化繊維同士が嵌まり込んで解舒し難いという事態が起こり難い。また、プリプレグPに塗布された樹脂組成物同士が粘着しない状態になっており、常温でも粘着性が発現しない状態で保存可能である。
【0067】
以上の工程を経て、プリプレグ製造装置10によってプリプレグPが製造される。
<プリプレグPの作用について>
次に、樹脂組成物が塗布、含浸されたプリプレグPの作用について説明する。
【0068】
常温では、(C)潜在性硬化剤による(A)固形エポキシ樹脂及び(B)液状エポキシ樹脂の重合反応は起こらないが、(A)固形エポキシ樹脂がフィルム形成能を有するため、(B)液状エポキシ樹脂の共存下でも、樹脂組成物全体の流動性が失われて固形となる。また、(D)1官能性(メタ)アクリロイルオキシ基化合物は、(A)固形エポキシ樹脂の溶媒として作用するとともに、(E)有機過酸化物及び(F)還元剤の作用によってREDOX重合して溶媒の機能を失う。
【0069】
これらの作用によって、プリプレグPの表面はタックフリーとなるとともに、プリプレグPの内部でも(D)1官能性(メタ)アクリロイルオキシ基化合物が重合していく。そのため、プリプレグP全体で重合物の濃度揺らぎが抑制された状態となる。また、内部まで樹脂組成物が重合することで、強化繊維束Fを構成する繊維同士の拘束力が大きくなる。プリプレグPを加熱、加圧した場合に、その形状、幅が変化することが抑制される。
【0070】
ここで、強化繊維束Fを構成する強化繊維が、例えば炭素繊維だった場合を想定する。炭素繊維は黒色である。そのため、(G)光ラジカル開始剤のみによって光ラジカル重合させるような場合には、UVが炭素繊維に当たると、それ以上内部にまでUVが到達し難いことになる。そのため、第2塗布体S2の内部では光ラジカル反応が起こり難く、樹脂組成物が未硬化状態となる。これは、強化繊維が濃色の炭素繊維、アラミド繊維、バサルト繊維等である場合に顕著である。また、透明なガラス繊維等であっても、強化繊維束Fの厚みが厚いような場合には、内部の樹脂組成物にUVが到達し難く、内部での光硬化が進まない場合がある。
【0071】
この点、本実施形態の樹脂組成物は、(E)有機過酸化物、及び(F)還元剤を含有していることによってREDOX重合反応による(D)1官能性(メタ)アクリロイルオキシ基化合物の重合が進行する。これにより、例えば、濃色の強化繊維束Fであっても、プリプレグPの内部まで樹脂組成物の重合反応が進行する。
【0072】
樹脂組成物は、(G)光ラジカル開始剤をさらに含有しており、光硬化工程16では、第2塗布体S2がUV照射装置27によるUV照射を受ける。UV照射によって、樹脂組成物中の、(G)光ラジカル開始剤が、(D)1官能性(メタ)アクリロイルオキシ基化合物の光ラジカル重合反応を促進する。これにより、樹脂組成物の重合反応が促進される。
【0073】
常温では、(C)潜在性硬化剤による(A)固形エポキシ樹脂及び(B)液状エポキシ樹脂の重合反応は起こらないが、(A)固形エポキシ樹脂がフィルム形成能を有するため、(B)液状エポキシ樹脂の共存下でも、樹脂組成物全体の流動性が失われて固形となる。(B)液状エポキシ樹脂は、(A)固形エポキシ樹脂と混合することにより、微妙な流動性のバランスを取ることが可能であり、加圧、加温されたときには樹脂組成物全体を適度に再流動化させることができる。
【0074】
また、(D)1官能性(メタ)アクリロイルオキシ基化合物は、(A)固形エポキシ樹脂の溶剤として作用するとともに、(E)有機過酸化物、及び(F)還元剤の作用によってREDOX重合して溶剤の機能を失う。そして、(D)成分は、1分子中に1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する1官能性であるため、REDOX重合により直鎖状ポリマーとなる。
【0075】
そのため、樹脂組成物が液体ではなくなるものの加温により再流動化し、樹脂組成物全体の流動変形、融着を阻害し難い。
プリプレグPを使用して成形品を成形する場合、例えば、プリプレグPを所定の芯材に巻き付けて積層する。この際、プリプレグPに対して所定の圧力を掛け、加温しながら巻き付ける。加圧、加温されたときには樹脂組成物全体が適度に再流動化するため、成形時には、プリプレグPが適度な粘着性を発現する。プリプレグPの粘着性は、わずかな加圧、加温により発現する。これにより、プリプレグPの積層時にプリプレグP同士がずれ難くなる。こうした流動化状態は、40℃程度の低温での加温によっても発現する。樹脂組成物が流動化状態を発現することにより、積層したプリプレグPの位置ずれが抑制されて、積層性が良好となる。アクリル化合物が網目状に架橋した場合に比べて、低温での加熱、加温で粘着性を発現し易く、積層し易いプリプレグPとなる。
【0076】
一方、(D)1官能性(メタ)アクリロイルオキシ基化合物が、(E)有機過酸化物及び(F)還元剤の作用によってREDOX重合することで、強化繊維束Fが重合した樹脂組成物によって拘束されている。この拘束力は、80℃程度までの加温では変化は見られない。そのため、粘着性を発揮するように低温で加温したとしても、プリプレグPの形状保持性は良好である。
【0077】
成形品の成形時に、プリプレグPを積層して、(C)潜在性硬化剤の硬化温度まで加熱すると、(C)潜在性硬化剤が(A)固形エポキシ樹脂及び(B)液状エポキシ樹脂のエポキシ基と反応して硬化させる。また、加熱により(E)有機過酸化物が分解してラジカルを生成し、(D)成分の(メタ)アクリロイルオキシ基をラジカル重合させる開始剤として作用する。(D)成分がREDOX重合した直鎖状ポリマーには1個以上のエポキシ基が存在しているため、(C)潜在性硬化剤が硬化する温度では、(A)成分及び(B)成分と同様に、(D)成分も(C)成分と反応して、最終的には同じ分子ネットワーク中に取り込まれる。
【0078】
このように、プリプレグPを積層した状態で、(C)潜在性硬化剤の硬化温度まで加熱すると、樹脂組成物が硬化する。これにより、成形品の強度が向上する。
次に、上記実施形態の樹脂組成物、及びプリプレグPの製造方法の効果について説明する。
【0079】
(1)プリプレグPの製造方法に使用される樹脂組成物は、第1剤と第2剤とからなる2液混合型であり、第1剤は、(A)固形エポキシ樹脂、(B)液状エポキシ樹脂、(C)潜在性硬化剤、(D)1官能性(メタ)アクリロイルオキシ基化合物、(E)有機過酸化物を含有している。第2剤は、(F)還元剤を含有している。
【0080】
第1剤と第2剤を混合することにより、第1剤に含有される(D)1官能性(メタ)アクリロイルオキシ基化合物に、(E)有機過酸化物及び第2剤に含有される(F)還元剤が反応して、(D)1官能性(メタ)アクリロイルオキシ基化合物のREDOX重合反応が進行する。プリプレグPの表面はタックフリーとなって、離型紙なしでの巻き取りや解舒をスムーズに行うことができる。また、プリプレグPの内部でも重合物の濃度揺らぎが抑制されて、強化繊維束Fの拘束力が大きくなる。これにより、プリプレグPの形状保持性が良好となって、プリプレグPの積層時に位置ずれすることが抑制される。
【0081】
(2)(B)液状エポキシ樹脂は、(A)固形エポキシ樹脂と混合することにより、微妙な流動性のバランスを取ることが可能であり、加温されたときには樹脂組成物全体を適度に再流動化させることができる。そのため、樹脂組成物全体の流動変形、融着を阻害し難い。
【0082】
(3)第1剤に含有される(A)固形エポキシ樹脂がフィルム形成能を有するため、(B)液状エポキシ樹脂の共存下でも、樹脂組成物全体の流動性が失われて固形となる。(B)液状エポキシ樹脂は、(A)固形エポキシ樹脂と混合することにより、微妙な流動性のバランスを取ることが可能であり、加圧、加温されたときには樹脂組成物全体を適度に再流動化させることができる。
【0083】
そのため、表面がタックフリーでありながら、加圧、加温により適度な粘着性を有するプリプレグPが得られる。プリプレグPを成形時に積層する場合、積層されたプリプレグPが位置ずれし難く、扱い易い。良質な成形品を成形することができる。
【0084】
(4)プリプレグPの表面がタックフリーである。そのため、室温での保管が可能であり、保管性が良好である。
(5)樹脂組成物は、(G)光ラジカル開始剤を含有している。そして、上記実施形態では、(D)成分を、(E)有機過酸化物、及び(F)還元剤によりREDOX重合反応させるとともに、UV照射により光ラジカル重合させている。
【0085】
そのため、樹脂組成物が塗布、含浸された第2塗布体S2にUV照射すると、(G)光ラジカル開始剤によって(D)1官能性(メタ)アクリロイルオキシ基化合物の光ラジカル重合反応が促進される。樹脂組成物の重合反応を、プリプレグPの表面から速く進行させることができる。強化繊維束Fを高速で搬送しながらプリプレグPを製造することができる。
【0086】
また、UV照射でUVが届くのは、第2塗布体S2の表面から50μm程度の深さまでである。この範囲では、(D)成分はラジカル重合するが、それ以上の深部ではラジカル重合が進行しない。そのため、(D)成分の全てがREDOX重合するのに時間を要しても、UV照射により(D)成分の重合反応を促進することができる。プリプレグPの表面を早くタックフリーとして、巻取りを可能にすることにより、プリプレグPの生産効率を向上させることができる。
【0087】
(6)樹脂組成物は、(D)1官能性(メタ)アクリロイルオキシ基化合物を含有している。REDOX重合反応や光ラジカル反応によって、直鎖状に重合する。
そのため、プリプレグPを加温、加圧しながら積層したとき、加温により再流動化した樹脂組成物の流動変形、溶着を阻害し難い。プリプレグPが適度な粘着性を発現し、プリプレグPの積層性が良好となる。
【0088】
(7)(D)1官能性(メタ)アクリロイルオキシ基化合物が直鎖状に重合しているため、アクリル化合物が網目状に架橋している場合に比べて、低温での加温でも粘着性を発現し易い。熱容量の大きな加熱工程を備えた成形装置が不要となり、よりコンパクトな成形装置での成形が可能となる。
【0089】
(8)(D)1官能性(メタ)アクリロイルオキシ基化合物は、REDOX重合反応により重合する。
そのため、強化繊維束Fを構成する強化繊維が濃色の炭素繊維等であっても、(D)1官能性(メタ)アクリロイルオキシ基化合物の重合が、第2塗布体S2の内部まで濃度揺らぎなく進行する。
【0090】
(9)上記実施形態のプリプレグPの製造方法では、強化繊維束Fをガイドローラ22に沿って搬送する搬送工程14と、強化繊維束Fの一方の面に第1剤を塗布して第1塗布体S1を形成する第1塗布工程13と、第1塗布体S1において第1剤が塗布された面に第2剤を塗布して第2塗布体S2を形成する第2塗布工程15と、第2塗布体S2を巻取りローラ28に巻き取る巻取り工程17とを備えている。第1塗布工程13では、周面に樹脂組成物が供給されたオイリングローラ23に沿わせながら強化繊維束Fを搬送する。
【0091】
そのため、搬送される第2塗布体S2では、(D)1官能性(メタ)アクリロイルオキシ基化合物が、(E)有機過酸化物、及び(F)還元剤によってREDOX重合する。樹脂組成物を離型紙に塗布したものを強化繊維束Fに貼り付けたり、離型紙を剥がしたりする必要がなく、その工程が簡略化する。タックフリーであって、形状保持性の良好なプリプレグPを効率よく製造することができる。
【0092】
(10)上記実施形態のプリプレグPの製造方法は、第2塗布体S2の両面にUV照射する光硬化工程16を備えている。
そのため、(D)1官能性(メタ)アクリロイルオキシ基化合物が、(G)光ラジカル開始剤によって光ラジカル重合する。これにより、(D)1官能性(メタ)アクリロイルオキシ基化合物の重合反応がより速く進行することになる。強化繊維束FやプリプレグPを高速で搬送することが可能となる。プリプレグPの表面の樹脂組成物を速く重合させることができる。プリプレグPの表面を速くタックフリーとすることができて、プリプレグPを効率よく製造することができる。
【0093】
(11)光硬化工程16は、内面が鏡張りされたUV照射装置27の内部で第2塗布体S2を搬送している。
そのため、第2塗布体S2の両面に対して、むらなくUV照射をすることができる。プリプレグPの表面全体が均質にタックフリーとなり、その品質が安定する。また、搬送しながら光硬化させることができるため、装置構成が簡略化する。
【0094】
(12)光硬化工程16では、UV照射装置27の内部で第2塗布体S2を搬送している。
そのため、UV照射装置27の形状、大きさ、長さや、UV照射ランプの数、配置、光量や、第2塗布体S2の搬送速度等を調整することにより、プリプレグPの表面を所望の状態にすることができる。
【0095】
(13)プリプレグPの製造方法は、開繊工程12を備えている。
そのため、強化繊維束Fを構成する強化繊維が引き揃えられた状態となって、強化繊維束Fの幅精度が向上する。
【0096】
(14)開繊工程12は、第1塗布工程13の上流に配置されている。
そのため、引き揃えられた状態の強化繊維束Fに樹脂組成物が塗布、含浸される。プリプレグPの幅精度が向上する。
【0097】
(15)第1塗布工程13は、周面に樹脂組成物供給されたオイリングローラ23に沿わせながら強化繊維束Fを搬送している。
そのため、強化繊維束Fの表面に連続的に樹脂組成物を塗布することができる。高速での樹脂含浸が可能である。
【0098】
上記実施形態は、次のように変更することができる。なお、上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて適用することができる。
・樹脂組成物は、トウプリプレグの製造に使用するだけでなく、シートプリプレグやプリプレグテープの製造に使用することもできる。
【0099】
・第1剤は(G)光ラジカル開始剤を含有していなくてもよい。
・第2剤は(F)還元剤に加えて、(A)固形エポキシ樹脂、(B)液状エポキシ樹脂、(C)潜在性硬化剤、及び(D)1官能性(メタ)アクリロイルオキシ基化合物を含有していてもよい。第2剤が(A)~(D)成分を含有していると、第1剤と粘度、含有比率を等しくすることができて第1剤と混合しやすい。第2剤が(A)~(D)成分を含有している場合、含有していない場合に比べて粘度が高くなることから、第2塗布工程15は、第1塗布工程13と同様にオイリングローラによって第2剤を塗布することが好ましい。
【0100】
・第1塗布工程13では、強化繊維束Fの両面に第1剤を塗布してもよい。この場合、オイリングローラ23の下流に、さらにオイリングローラを配置すればよい。そして、オイリングローラ23に沿わせながら搬送して、強化繊維束Fの一方の面に第1剤を塗布し、下流のオイリングローラに沿わせながら搬送して、強化繊維束Fの他方の面に第1剤を塗布するようにすればよい。また、下流側のオイリングローラに供給する第1剤の樹脂量は、オイリングローラ23から強化繊維束Fに供給された樹脂量に基づいて調整すればよい。このようにすれば、2つのオイリングローラによる第1剤の塗布量(第1塗布体S1の樹脂含有量Rc)を、所定の目標値に収束するように制御することができる。
【0101】
・第1塗布工程13で2つのオイリングローラで強化繊維束Fの両面に第1剤を塗布する場合、上記のように、強化繊維束Fの搬送方向Aに沿って2つのオイリングローラが配置されている場合に限定されない。オイリングローラが強化繊維束Fの両面を同時に挟むような位置に配置されていてもよい。
【0102】
・第2塗布工程15では、第1塗布体S1の両面に第2剤を塗布してもよい。
・オイリングローラ23への樹脂組成物の供給は、樹脂タンク25によるものでなくてもよい。例えば、オイリングローラ23の表面に所定量の樹脂組成物を滴下、或いは塗布するようにしてもよい。
【0103】
・プリプレグ製造装置10は図1に示す構成に限定されない。例えば、強化繊維束F、第1塗布体S1、第2塗布体S2、及びプリプレグPの搬送速度を調整したり、張力を付加したりするための、公知のフィードローラ、ニップローラ、ダンサーローラ等が配置されていてもよい。また、ガイドローラ22が図示のものより多くてもよい。
【実施例0104】
本発明を具体化した樹脂組成物を塗布、含浸したプリプレグPの形状保持性について評価した。
(実施例)
樹脂組成物として、(A)~(G)成分を含有するものを調製した。ここでは、第1剤、第2剤を別個に調製するのではなく、(A)~(G)成分をすべて含有する状態で調製した。(A)成分はJER(登録商標)1004(三菱ケミカル株式会社製)、(B)成分はJER(登録商標)828(三菱ケミカル株式会社製)、(C)成分はジシアンジアミド、(D)成分はグリシジルメタクリレート、(E)成分はメチルエチルケトンパーオキサイド、(F)成分ナフテン酸コバルト、(G)成分はOmnirad184(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)である。調製した樹脂組成物を、デュポン社製テドラー(登録商標)PVFフィルムに塗布した。樹脂組成物中の各成分の含有量(単位:g)は、表1に示すとおりである。樹脂組成物を塗布、含浸する強化繊維束Fとして、炭素繊維束であるテナックス(登録商標)フィラメントSTS40(肉厚0.6mm、帝人株式会社製)を使用した。
【0105】
樹脂組成物を塗布したデュポン社製テドラー(登録商標)PVFフィルムを炭素繊維束に貼り合わせ、炭素繊維束に樹脂組成物が塗布、含浸されたものを実施例のプリプレグPとした。続いて、実施例のプリプレグPを加熱した台上に載置して、上方からローラにてプリプレグPを4kg・mー1・sー2で加圧した。加熱温度は、40℃、60℃、80℃の各温度で行った。加熱、加圧後のプリプレグPの炭素繊維束の幅を測定して、加熱、加圧前の幅に対する変化率(%)を算出した。変化率(%)は、プリプレグPの炭素繊維束の3箇所で測定した平均値とした。その結果を図2に示した。
【0106】
(比較例1)
(F)成分を含有しない以外は実施例と同様の組成の樹脂組成物を、実施例と同様にして強化繊維束Fに塗布、含浸した。その後、UV照射して、(D)1官能性(メタ)アクリロイルオキシ基化合物を、(G)光ラジカル開始剤によって光ラジカル重合させたものを比較例1のプリプレグPとした。光ラジカル重合後、実施例と同様に加熱、加圧して、加熱、加圧後の炭素繊維束の幅の変化率(%)を算出した。その結果を図2に示した。
【0107】
(比較例2)
(D)~(G)成分を含有しない以外は実施例と同様の組成の樹脂組成物を、実施例と同様にして強化繊維束Fに塗布、含浸したものを比較例2のプリプレグPとした。実施例と同様に加熱、加圧して、加熱、加圧後の炭素繊維束の幅の変化率(%)を算出した。その結果を図2に示した。
【0108】
【表1】
【0109】
図2より、実施例では、40℃、60℃、80℃のいずれの温度に加熱した場合も、炭素繊維束の幅に変化は見られなかった。形状保持性が良好であった。また、実施例のプリプレグPでは、表面がタックフリーとなっていた。一方、比較例2では、40℃に加熱した場合でも炭素繊維束の幅は30%以上広がっていた。60℃、80℃の加熱では、40℃の場合より幅の変化率が大きかった。また、プリプレグPに塗布、含浸された樹脂組成物の粘度が高く、プリプレグPの表面はタック性を有していた。
【0110】
実施例のプリプレグPでは、炭素繊維束に塗布、含浸された樹脂組成物に(G)光ラジカル開始剤が含有されているが、この実施例では、プリプレグPに対するUV照射は行っていない。この点、プリプレグPにUV照射を行うと、(D)1官能性(メタ)アクリロイルオキシ基化合物が光ラジカル重合することによって、(D)1官能性(メタ)アクリロイルオキシ基化合物の重合反応がより速く進行することになる。そのため、結果は示していないが、実施例のプリプレグPにUV照射した場合にも、加熱、加圧によって炭素繊維束の形状は変化しないと考えられる。そして、この効果は、実施例のプリプレグPより早く発現すると考えられる。
【0111】
比較例1のプリプレグPでは、炭素繊維束の幅の変化率は、比較例2より小さかったものの、5~6%程度であった。比較例1の樹脂組成物は、(D)1官能性(メタ)アクリロイルオキシ基化合物と(G)光ラジカル開始剤を含有し、UV照射により(D)1官能性(メタ)アクリロイルオキシ基化合物を(G)光ラジカル開始剤によって光ラジカル重合させている。比較例1では、40℃という比較的低温で加熱した場合でも、炭素繊維束の幅は約5%広がっていた。今回は、肉厚0.6mmの炭素繊維束を使用しているが、肉厚が0.6mmより厚い炭素繊維束ではさらに変化率が大きくなると考えられる。
【0112】
炭素繊維は黒色の繊維であるため、比較例1のプリプレグPでは、照射されたUVが炭素繊維に当たると、それより内部の樹脂組成物にはUVが到達せず、内部での光ラジカル重合が進行しない。そのため、比較例1では、プリプレグPの表面と内部とで樹脂組成物の重合度が異なり、内部では、未硬化状態の樹脂組成物が残存した状態となっている。これが、上記のように、加熱、加圧時の炭素繊維束の幅の変化率となって表れていると考えられる。
【符号の説明】
【0113】
F…強化繊維束(強化繊維基材)
P…プリプレグ
S1…第1塗布体
S2…第2塗布体(塗布体)
13…第1塗布工程
15…第2塗布工程
16…光硬化工程
17…巻取り工程
23…オイリングローラ
図1
図2