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特開2023-119852余盛りコンクリート除去軽減装置と余盛りコンクリート除去軽減方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119852
(43)【公開日】2023-08-29
(54)【発明の名称】余盛りコンクリート除去軽減装置と余盛りコンクリート除去軽減方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 5/34 20060101AFI20230822BHJP
【FI】
E02D5/34 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022022950
(22)【出願日】2022-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 正嘉
【テーマコード(参考)】
2D041
【Fターム(参考)】
2D041AA01
2D041BA33
2D041BA37
2D041BA39
2D041CA01
2D041CB01
2D041CB05
2D041DA03
2D041EA04
2D041EB10
(57)【要約】
【課題】場所打ちコンクリート体の施工に際して、余盛りコンクリートの除去作業を軽減することのできる、余盛りコンクリート除去軽減装置と余盛りコンクリート除去軽減方法を提供する。
【解決手段】地盤Gに造成され、安定液Bが注入されている掘削孔70に対して鉄筋籠50が挿入され、コンクリートCが打設されることにより場所打ちコンクリート体Pが施工される際に、場所打ちコンクリート体Pの頭部に形成される、余盛りコンクリートCSの除去を軽減する、余盛りコンクリート除去軽減装置40であり、エアの注入と抜き取りにより、膨縮自在である袋体10と、袋体10を鉄筋籠50の頭部の外周に固定するために、袋体10の少なくとも下方において直接的もしくは間接的に設けられている、紐材19とを有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に造成され、安定液が注入されている掘削孔に対して鉄筋籠が挿入され、コンクリートが打設されることにより場所打ちコンクリート体が施工される際に、該場所打ちコンクリート体の頭部に形成される、余盛りコンクリートの除去を軽減する、余盛りコンクリート除去軽減装置であって、
エアの注入と抜き取りにより、膨縮自在である袋体と、
前記袋体を前記鉄筋籠の頭部の外周に固定するために、該袋体の少なくとも下方において直接的もしくは間接的に設けられている、紐材とを有することを特徴とする、余盛りコンクリート除去軽減装置。
【請求項2】
前記鉄筋籠の外周に、一つの無端状の前記袋体、もしくは、周方向に隣接する複数の前記袋体が配設されていることを特徴とする、請求項1に記載の余盛りコンクリート除去軽減装置。
【請求項3】
前記袋体のうち、少なくとも前記鉄筋籠に当接する側にはフレーム材があり、
前記袋体もしくは前記フレーム材のいずれか一方に、前記紐材が挿通される挿通部が設けられていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の余盛りコンクリート除去軽減装置。
【請求項4】
前記袋体が膨張姿勢とされた際に、該袋体の底面が、外側から鉄筋籠側である内側に向かって、テーパー状もしくは湾曲状に上方へ傾斜していることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の余盛りコンクリート除去軽減装置。
【請求項5】
前記フレーム材が、鉄筋籠に当接する側の第一フレームと、前記袋体の底面側の第二フレームを有し、該第二フレームにより、該袋体の膨張姿勢の際の底面の形状が保持されることを特徴とする、請求項4に記載の余盛りコンクリート除去軽減装置。
【請求項6】
前記袋体における鉄筋籠側の背面に第一ポケットが設けられ、該袋体の底面に第二ポケットが設けられており、
前記第一ポケットに前記第一フレームの少なくとも一部が収容され、前記第二ポケットに前記第二フレームの少なくとも一部が収容されていることを特徴とする、請求項5に記載の余盛りコンクリート除去軽減装置。
【請求項7】
地盤に造成され、安定液が注入されている掘削孔に対して鉄筋籠が挿入され、コンクリートが打設されることにより場所打ちコンクリート体が施工される際に、該場所打ちコンクリート体の頭部に形成される、余盛りコンクリートの除去を軽減する、余盛りコンクリート除去軽減方法であって、
エアの注入と抜き取りにより膨縮自在である袋体の少なくとも下方を、該袋体を収縮させた状態で前記鉄筋籠の外周に紐材を介して取り付け、該鉄筋籠を前記掘削孔に挿入する、A工程と、
前記袋体を膨張させ、コンクリートを前記掘削孔に打設し、該鉄筋籠の頭部まで上昇してきたコンクリートを該袋体により該鉄筋籠の内側に案内する、B工程と、
前記鉄筋籠の内側に案内された余盛りコンクリートの硬化前もしくは硬化後に、該余盛りコンクリートの除去と、前記袋体からのエアの抜き取りと前記紐材の取り外しと該袋体の地上への回収を行う、C工程とを有することを特徴とする、余盛りコンクリート除去軽減方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、余盛りコンクリート除去軽減装置と余盛りコンクリート除去軽減方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の基礎を支持する場所打ちコンクリート杭に代表される場所打ちコンクリート体の施工においては、地盤に掘削孔を造成し、掘削孔に安定液を注入して孔壁を保護した状態で、掘削孔に鉄筋籠が挿入され、コンクリートを掘削孔の下方から順に打設する方法が適用されている。場所打ちコンクリート杭の鉄筋籠は、所定径の周方向に所定ピッチで並ぶ鉛直方向に延設した複数の主筋と、複数の主筋の周囲において鉛直方向に所定ピッチで並ぶ環状の帯筋とを備えている。
掘削孔の上方に上昇してきた(打ち上がってきた)コンクリートには、杭底や掘削孔の途中で発生する泥土、安定液を含む泥水などが多分に含まれていることから、低品質のコンクリートとなる。
そこで、場所打ちコンクリート体の頭部の強度(品質)を確保するべく、場所打ちコンクリート体の設計長よりも例えば50cm乃至100cm程度余分にコンクリートを打設する、余盛りコンクリートが一般に施工される。この余盛りコンクリートが硬化した後、ブレーカーやドリル、コールピックハンマー等を用いて余盛りコンクリートを除去する、所謂杭頭処理を行うことにより、低品質のコンクリート体を頭部に備えていない、場所打ちコンクリート体を施工することができる。
【0003】
上記する余盛りコンクリートの除去においては、鉄筋籠の内側近傍の余盛りコンクリートを破砕する作業の際に、鉄筋籠を破損させないように余盛りコンクリートのみを斫り除去する必要があることから、除去作業速度は著しく低下し、杭頭処理に要する作業時間が長時間に及ぶといった課題があり、場所打ちコンクリート体の数が増えるにつれて、この課題は一層顕著になる。
【0004】
ここで、特許文献1には、場所打ちコンクリート杭を施工する際に行う杭頭処理方法が提案されている。具体的には、杭頭部の帯筋の内側に押さえ鉄筋を取り付け、帯筋と押さえ鉄筋の隙間部に、空気で膨らませた柱状形態の杭頭処理袋を配設し、帯筋に沿って環状に固定した後にコンクリートを打設し、コンクリートの固化後に杭頭処理袋を取り除くことにより、鉄筋籠の内側近傍の余盛り除去作業を行う方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-151842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の杭頭処理方法によれば、特に杭頭処理の効率の低下の要因となっていた鉄筋籠の内側近傍の余盛りをドリル等で破砕する必要がなくなり、杭頭処理の作業効率を向上できるとしている。
しかしながら、帯筋と押さえ鉄筋の隙間部において、複数の杭頭処理袋を順次膨らませていく過程で、先行して膨らんでいる杭頭処理袋は、当初の挟持された姿勢の際に受けていた圧力が解放されることに起因して、隙間部から抜けてしまう恐れがある。
また、鉄筋籠はそれ自体もひずみ得ることから、隙間部に単に杭頭処理袋が挟まれただけの状態では容易にずれてしまい、ずれた際に隙間部から抜けてしまう恐れもある。
また、帯筋の内側に押さえ鉄筋を配筋することから、この押さえ鉄筋が余盛りコンクリートの破砕の障害になるとともに、コンクリート打設の際に鉄筋籠の内部に挿入されるトレミー管の昇降の際に、押さえ鉄筋がトレミー管と干渉する恐れもある。
さらに、特許文献1には、帯筋の外側に押さえ鉄筋を配設する別形態に関する記載もあるが、帯筋の外側には所定のかぶりが確保されていることに対して、このかぶりの内部に配筋することにより所定のかぶりが確保できなくなることから、設計上許容されるものではない。
【0007】
本発明は、場所打ちコンクリート体の施工に際して、余盛りコンクリートの除去作業を軽減することのできる、余盛りコンクリート除去軽減装置と余盛りコンクリート除去軽減方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成すべく、本発明による余盛りコンクリート除去軽減装置の一態様は、
地盤に造成され、安定液が注入されている掘削孔に対して鉄筋籠が挿入され、コンクリートが打設されることにより場所打ちコンクリート体が施工される際に、該場所打ちコンクリート体の頭部に形成される、余盛りコンクリートの除去を軽減する、余盛りコンクリート除去軽減装置であって、
エアの注入と抜き取りにより、膨縮自在である袋体と、
前記袋体を前記鉄筋籠の頭部の外周に固定するために、該袋体の少なくとも下方において直接的もしくは間接的に設けられている、紐材とを有することを特徴とする。
【0009】
本態様によれば、エアの注入と抜き取りにより膨縮自在である袋体の少なくとも下方に、直接的もしくは間接的に紐材が設けられていて、紐材が鉄筋籠の頭部の外周に取り付けられることにより、エアの注入によって膨らんだ袋体が鉄筋籠の頭部から抜け出ることが防止され、鉄筋籠の頭部における袋体の固定姿勢を保持することができる。
このことにより、鉄筋籠の頭部の外周に膨らんだ平面視無端状(環状や枠状)の袋体が配設され、この状態で下方から上昇してきたコンクリートは、環状の袋体の内部(鉄筋籠の内部)に導かれて硬化し、袋体の内部に余盛りコンクリートが形成されることになる。鉄筋籠の外周に余盛りコンクリートが存在しないことより、余盛りコンクリートの除去性能が格段に向上する。
【0010】
ここで、「場所打ちコンクリート体」には、断面が例えば円形の場所打ちコンクリート杭の他にも、地中連続壁を形成するエレメント等が含まれる。場所打ちコンクリート体が場所打ちコンクリート杭の場合は、平面視円形に沿って所定のピッチで配筋されている主筋の周囲に、平面視環状の袋体が配設される。一方、場所打ちコンクリート体が地中連続壁のエレメントの場合は、平面視矩形に沿って所定のピッチで配筋されている縦筋(鉛直筋)の周囲に、平面視矩形の袋体が配設される。
鉄筋籠の頭部の周囲に配設されている、無端状の袋体の内側に形成された余盛りコンクリートは、コンクリートが硬化する前に吸引等により除去されてもよいし、コンクリートが硬化した後に斫り除去されてもよい。
【0011】
また、「袋体の少なくとも下方に紐材を有する」とは、膨らんだ袋体には、安定液の内部にあることで浮力が作用し、さらに、下方から上昇してきたコンクリート(フレッシュコンクリート)によって上方への押し上げ力(圧力)が作用することになるが、袋体の少なくとも下方が鉄筋籠に紐材を介して固定されていることにより、浮力や押し上げ力を受けた袋体を下方の紐材が下方へ引っ張ることにより、袋体の固定姿勢を保持する作用を奏する構成である。
【0012】
また、「袋体の少なくとも下方」には、袋体の下方のみに紐材を有する形態の他に、袋体の下方と上方に紐材を有する形態、袋体の下方と上方とそれらの間の中央に紐材を有する形態等を含んでいる。
【0013】
さらに、「袋体に直接的もしくは間接的に紐材が設けられている」とは、袋体に紐材が直接取り付けられている形態と、袋体に取り付けられている別部材(例えば、以下で説明するフレーム材等)に紐材が取り付けられている形態を含んでいる。
【0014】
また、本発明による余盛りコンクリート除去軽減装置の他の態様は、
前記鉄筋籠の外周に、一つの無端状の前記袋体、もしくは、周方向に隣接する複数の前記袋体が配設されていることを特徴とする。
【0015】
本態様によれば、鉄筋籠の外周に、一つの無端状(環状や枠状)の袋体、もしくは、周方向に隣接する複数の袋体が配設されていることにより、鉄筋籠の頭部の周囲を膨らんだ袋体により完全に包囲することができ、上昇してきたコンクリートを効果的に鉄筋籠の内側へ導くことができ、余盛りコンクリートの除去領域を鉄筋籠の内側に限定することができる。
【0016】
また、本発明による余盛りコンクリート除去軽減装置の他の態様において、
前記袋体のうち、少なくとも前記鉄筋籠に当接する側にはフレーム材があり、
前記袋体もしくは前記フレーム材のいずれか一方に、前記紐材が挿通される挿通部が設けられていることを特徴とする。
【0017】
本態様によれば、袋体のうち、少なくとも鉄筋籠に当接する側にフレーム材があることにより、膨らんだ袋体の鉄筋籠側の側面形状をフレーム材に応じた形状に調整することができる。
このことにより、例えば場所打ちコンクリート杭の平面視円形の鉄筋籠の周方向に沿って、膨らんだ袋体の鉄筋籠側の形状を、平面視が湾曲もしくは屈曲したフレーム材の形状に応じて調整できることから、膨らんだ袋体の形状を鉄筋籠の外周に沿った態様に設定でき、例えば膨らんだ袋体が鉄筋籠の内側に入り込み過ぎて、鉄筋籠の内側の余盛りコンクリートを斫る際に入り込んでいる袋体を破損させることを防止できる。
【0018】
ここで、フレーム材は、異形棒鋼や丸鋼等の鉄筋を曲げ加工したり、複数の鉄筋を溶接等することにより形成できる。また、「少なくとも鉄筋籠に当接する側にフレーム材がある」とは、鉄筋籠側にのみ鉛直姿勢のフレーム材がある形態の他、鉄筋籠側にある鉛直姿勢のフレーム材から、外側へ水平姿勢や傾斜姿勢のフレーム材が張り出している三次元的なフレーム材を含んでいる。
また、袋体やフレーム材のいずれか一方に設けられる紐材の挿通部は、例えば鳩目(金具)等により形成できる。
【0019】
また、本発明による余盛りコンクリート除去軽減装置の他の態様は、
前記袋体が膨張姿勢とされた際に、該袋体の底面が、外側から鉄筋籠側である内側に向かって、テーパー状もしくは湾曲状に上方へ傾斜していることを特徴とする。
【0020】
本態様によれば、袋体が膨張姿勢とされた際に、袋体の底面が外側から鉄筋籠側である内側に向かってテーパー状もしくは湾曲状に上方へ傾斜していることにより、上昇してきたコンクリートを、袋体の底面において鉄筋籠の内側へ効果的に導くことができる。
【0021】
また、本発明による余盛りコンクリート除去軽減装置の他の態様は、
前記フレーム材が、鉄筋籠に当接する側の第一フレームと、前記袋体の底面側の第二フレームを有し、該第二フレームにより、該袋体の膨張姿勢の際の底面の形状が保持されることを特徴とする。
【0022】
本態様によれば、フレーム材を構成する袋体の底面側の第二フレームにより、袋体の膨張姿勢の際の底面の形状が保持されることから、上昇するコンクリートから作用する押し上げ力に抗しながら、袋体の傾斜した面形状を保持することができる。
【0023】
また、本発明による余盛りコンクリート除去軽減装置の他の態様は、
前記袋体における鉄筋籠側の背面に第一ポケットが設けられ、該袋体の底面に第二ポケットが設けられており、
前記第一ポケットに前記第一フレームの少なくとも一部が収容され、前記第二ポケットに前記第二フレームの少なくとも一部が収容されていることを特徴とする。
【0024】
本態様によれば、袋体がその背面と底面に第一ポケットと第二ポケットを備え、第一ポケットに第一フレームの少なくとも一部が収容され、第二ポケットに第二フレームの少なくとも一部が収容されていることにより、フレーム材を構成する第一フレーム及び第二フレームと袋体との一体化を、簡易な構成により実現することができる。例えば、側面視略L字状のフレーム材(の第一フレームと第二フレーム)を、袋体の下方から対応する第一ポケットと第二ポケットにそれぞれ挿通することにより、複数とフレーム材の一体化を容易に図ることができる。
【0025】
また、本発明による余盛りコンクリート除去軽減方法の一態様は、
地盤に造成され、安定液が注入されている掘削孔に対して鉄筋籠が挿入され、コンクリートが打設されることにより場所打ちコンクリート体が施工される際に、該場所打ちコンクリート体の頭部に形成される、余盛りコンクリートの除去を軽減する、余盛りコンクリート除去軽減方法であって、
エアの注入と抜き取りにより膨縮自在である袋体の少なくとも下方を、該袋体を収縮させた状態で前記鉄筋籠の外周に紐材を介して取り付け、該鉄筋籠を前記掘削孔に挿入する、A工程と、
前記袋体を膨張させ、コンクリートを前記掘削孔に打設し、該鉄筋籠の頭部まで上昇してきたコンクリートを該袋体により該鉄筋籠の内側に案内する、B工程と、
前記鉄筋籠の内側に案内された余盛りコンクリートの硬化前もしくは硬化後に、該余盛りコンクリートの除去と、前記袋体からのエアの抜き取りと前記紐材の取り外しと該袋体の地上への回収を行う、C工程とを有することを特徴とする。
【0026】
本態様によれば、鉄筋籠の外周において紐材を介して固定している袋体を膨張させた後に、掘削孔にコンクリートを打設して上昇してきたコンクリートを袋体によって鉄筋籠の内側へ導くことにより、袋体にコンクリートから作用する浮力や押し上げ力に抗しながら鉄筋籠への袋体の固定姿勢を保持することができ、鉄筋籠の内側へコンクリートを確実に導くことができる。このことにより、余盛りコンクリートの除去領域を鉄筋籠の内側に限定して、鉄筋籠の内側にある余盛りコンクリートを効率的に除去することが可能になる。
また、袋体の撤去の際は、紐材を切断等して取り外すのみで、袋体を鉄筋籠から容易に取り外して地上へ回収することができる。
このように、紐材を介して袋体を鉄筋籠に固定することにより、袋体の鉄筋籠への良好な固定性と、撤去時の良好な取り外し性の双方が得られる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の余盛りコンクリート除去軽減装置と余盛りコンクリート除去軽減方法によれば、場所打ちコンクリート体の施工に際して、余盛りコンクリートの除去作業を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】実施形態に係る余盛りコンクリート除去軽減装置を形成する、袋体の一例と、袋体に装着されるフレーム材の一例の分解斜視図である。
図2】鉄筋籠に袋体が固定されている状態の側面図である。
図3】実施形態に係る余盛りコンクリート除去軽減装置の一例を、鉄筋籠の頭部とともに示す斜視図である。
図4】実施形態に係る余盛りコンクリート除去軽減方法の一例の工程図である。
図5図4に続き、実施形態に係る余盛りコンクリート除去軽減方法の一例の工程図である。
図6図5に続き、実施形態に係る余盛りコンクリート除去軽減方法の一例の工程図である。
図7図6に続き、実施形態に係る余盛りコンクリート除去軽減方法の一例の工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、実施形態に係る余盛りコンクリート除去軽減装置と余盛りコンクリート除去軽減方法について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0030】
[実施形態に係る余盛りコンクリート除去軽減装置]
はじめに、図1乃至図3を参照して、実施形態に係る余盛りコンクリート除去軽減装置の一例について説明する。ここで、図1は、実施形態に係る余盛りコンクリート除去軽減装置を形成する、袋体の一例と、袋体に装着されるフレーム材の一例の分解斜視図である。また、図2は、鉄筋籠に袋体が固定されている状態の側面図であり、図3は、実施形態に係る余盛りコンクリート除去軽減装置の一例を、鉄筋籠の頭部とともに示す斜視図である。以下の説明では、施工対象の場所打ちコンクリート体として場所打ちコンクリート杭を取り上げて説明するが、その他、地中連続壁を構成する各エレメント等も施工対象に含まれる。
【0031】
余盛りコンクリート除去軽減装置(以下、軽減装置)40を構成する袋体10は、平面視円形の場所打ちコンクリート杭の周方向に取り付けられるものであり、図1に示すように、複数の袋体10が膨らんだ状態で場所打ちコンクリート杭の周囲を完全に包囲するように構成されている。平面視円形の鉄筋籠の外周に沿って取り付けられることから、膨らんだ状態の袋体10は、図示するように平面視くの字状に屈曲している。
【0032】
袋体10は、耐摩耗性を有し、エア等の流体の注入と抜き取りにより膨縮自在である、樹脂性のシートにより形成される。
【0033】
袋体10は、複数(図示例は四面)の側面11と、鉄筋籠側にある背面13と、上面12と、底面14を有し、上面12には、エアの注入と抜き取りを行うためのエアバルブ12aが取り付けられている。
【0034】
図3に示すように、地上にあるコンプレッサ30に通じるエアダクト32がエアバルブ12aに装着され、コンプレッサ30から圧縮エアが供給されることによって袋体10が膨らみ、余盛りコンクリートを除去して袋体10を回収する際は、袋体10からエアが抜かれるようになっている。ここでエアバルブ12aには、例えば逆止弁が装着されており、エアを抜く際は先行して逆止弁がエアバルブ12aから取り外される。
【0035】
図1に戻り、袋体10の背面13の下方と上方にはそれぞれ、複数(図示例は三つ)の挿通部15a,16aを備えている下固定片15と上固定片16が設けられている。これら下固定片15と上固定片16も側面11等と同材質の片であり、変形性能を有している。
【0036】
挿通部15a,16aは鳩目により形成されており、それぞれの挿通部15a,16aに結束バンド等の紐材19が挿通されるようになっている。図2に示すように、袋体10が鉄筋籠50の主筋51に沿って取り付けられるに当たり、主筋51の上下位置に装着されている固定治具60に対して、各紐材19が固定されるようになっている。ここで、鉄筋籠50は、平面視円形の周方向に所定のピッチで配筋されている主筋51と、余盛りコンクリートの形成領域よりも下方において鉛直方向に所定のピッチで配筋されて、各主筋51の周囲を包囲する帯筋52とを有する。
【0037】
図示例は、袋体10の備える各挿通部15a,16aに対して紐材19が直接的に設けられる形態であるが、例えば以下で説明するフレーム材20に紐材19が取り付けられてもよく、この形態では、袋体10に対して紐材19が間接的に設けられることになる。
【0038】
図1に戻り、背面13には第一ポケット17が設けられており、底面14には第二ポケット18が設けられている。鉄筋籠50に取り付けられている袋体10には、図2に示すように掘削孔70内に注入されている安定液Bから浮力が作用し、下方から打ち上がってくるコンクリートから押し上げ力が作用する。
【0039】
これらの作用力に対して袋体10の形状を保持するべく、第一ポケット17と第二ポケット18にはフレーム材20が挿通される。
【0040】
フレーム材20は、第一ポケット17に対してX1方向に挿通されて袋体10の鉛直方向の姿勢を保持する第一フレーム21と、第二ポケット18に対してX2方向に挿通されて袋体10の底面14の姿勢を保持する第二フレーム22を有する。
【0041】
第一フレーム21と第二フレーム22はいずれも丸鋼等を曲げ加工等することにより形成され、第二フレーム22の立ち上がり部と第一フレーム21の一部が例えば溶接接合される。
【0042】
図2に示すように、袋体10の底面14は、外側から鉄筋籠50側である内側に向かって、テーパー状に上方へ傾斜している。従って、底面14に設けられている第二ポケット18も同様にテーパー状に傾斜していることから、図2に示すように、鉛直姿勢の第一フレーム21に対して、第二フレーム22は傾斜した姿勢で接合される。ここで、底面14は、図示例のようにテーパー状に傾斜することの他に、湾曲状に傾斜してもよい。
【0043】
図示例のように、袋体10の底面14が外側から鉄筋籠50側である内側に向かってテーパー状に上方へ傾斜していることにより、下方から上昇してきたコンクリートを、袋体10の底面14において鉄筋籠50の内側へ効果的に導くことができる。
【0044】
また、このように、下方から上昇してきたコンクリートによって底面14は押し上げ力を直接受けることになるが、底面14の第二ポケット18に第二フレーム22が挿通されていることにより、作用する押し上げ力に抗しながら、底面14の傾斜姿勢を保持することができる。
【0045】
図3に示すように、掘削孔70の内部に挿入された鉄筋籠50の周囲のうち、杭頭の余盛りコンクリート領域において、膨らんだ状態の複数の袋体10が隙間なく配設される。ここで、各袋体10は、側面11や背面13に不図示の取り付け紐や、取り付け紐が挿通される挿通孔等を有していて、隣接する袋体10同士が紐等によって相互に接続されることにより、隣接する袋体10が離れないように構成されている。
【0046】
また、既に説明したように、鉄筋籠50における余盛りコンクリート領域において、各袋体10が紐材19を介して対応する主筋51(に装着されている固定治具60)に固定される。
【0047】
以下の余盛りコンクリート除去軽減方法で説明するが、掘削孔70に鉄筋籠50を挿入するに当たり、各袋体10を萎んだ状態で地上にて鉄筋籠50に固定し、各袋体10の備えるエアバルブ12aには、コンプレッサ30に通じるエアダクト32を取り付けておく。
【0048】
ここで、図3は、各袋体10の備えるエアバルブ12aに対して対応するエアダクト32が取り付けられている形態を示しているが、複数の袋体10が側面同士で連通して一つの袋体ユニットを形成し、袋体ユニットを構成する一つの袋体のみがエアダクト32を備えていてもよい。また、複数の袋体に変わり、一つの環状の袋体が鉄筋籠50の周囲を包囲するようにして固定される形態であってもよい。
【0049】
いずれの形態であっても、各エアバルブ12aに接続されて地上のコンプレッサ30に通じるエアダクト32が、掘削孔70内にコンクリートを打設する際に使用されるトレミー管の昇降を阻害しないように、エアダクト32が配設される。
【0050】
このように、鉄筋籠50の周囲に配設される複数の袋体10と、各袋体10を鉄筋籠5に対して固定する紐材19と、各袋体10に対してエアを供給するコンプレッサ30とにより、軽減装置40が形成される。
【0051】
軽減装置40によれば、エアの注入と抜き取りにより膨縮自在である袋体10が、紐材19を介して鉄筋籠50の頭部の外周に取り付けられることにより、エアの注入によって膨らんだ袋体10が鉄筋籠50の頭部から抜け出ることが防止され、鉄筋籠50の頭部における袋体10の固定姿勢を保持することができる。
【0052】
このことにより、鉄筋籠50の頭部の外周において、膨らんだ状態の平面視無端状の複数の袋体10に対して、下方から上昇してきたコンクリートから押し上げ力が作用するが、この押し上げ力に対しても、各袋体10の鉄筋籠50への固定姿勢を保持することができる。
【0053】
そして、各袋体10のテーパー状に傾斜する底面14により、コンクリートは鉄筋籠50の内側へ効果的に導かれて、余盛りコンクリートを鉄筋籠50の内側に制限することができ、鉄筋籠50の外周に余盛りコンクリートが形成されることを解消できる。鉄筋籠の外周に余盛りコンクリートが存在しないことより、余盛りコンクリートの除去性能が格段に向上する。
【0054】
[実施形態に係る余盛りコンクリート除去軽減方法]
次に、図4乃至図7を参照して、実施形態に係る余盛りコンクリート除去軽減方法の一例について説明する。ここで、図4乃至図7は順に、実施形態に係る余盛りコンクリート除去軽減方法の一例の工程図である。
【0055】
実施形態に係る余盛りコンクリート除去軽減方法(以下、軽減方法)は、地盤Gに造成され、安定液Bが注入されている掘削孔70に対して鉄筋籠50が挿入され、コンクリートCが打設されることにより場所打ちコンクリート杭P(場所打ちコンクリート体の一例)が施工される際に、場所打ちコンクリート杭Pの頭部に形成される、余盛りコンクリートCSの除去を軽減する、軽減方法である。
【0056】
まず、図4に示すように、エアの注入と抜き取りにより膨縮自在である複数の袋体10を収縮させた状態で、鉄筋籠50の外周に配設し、鉄筋籠50に装着されている固定治具60に紐材19を介して袋体10を地上にて取り付ける。この鉄筋籠50への袋体10の取り付け位置は、余盛りコンクリートに対応する位置である。
【0057】
その後、安定液Bが注入されている掘削孔70に対して鉄筋籠50を挿入する。ここで、各袋体10の備えるエアバルブ12aには、地上にある不図示のコンプレッサ30に通じるエアダクト32が接続されている(以上、A工程)。
【0058】
次に、図5に示すように、各袋体10にエアを供給して膨らませた後、トレミー管Tを鉄筋籠50の内部に挿通させ、掘削孔70にコンクリートCをY1方向に打設する。
【0059】
打設されたコンクリートC(フレッシュコンクリート)は掘削孔70内をY2方向に上昇し、鉄筋籠50の上方の杭頭領域において、鉄筋籠50の周囲にある各袋体10の底面14に到達する。
【0060】
袋体10の底面14に到達したコンクリートCは、テーパー状に傾斜する底面14により、鉄筋籠50の内側へY3方向に案内され、鉄筋籠50の内側に余盛りコンクリートCSが打ち上げられる。
【0061】
袋体10の底面14には、上昇してきたコンクリートCから押し上げ力Fが作用するが、鉄筋籠50に対して袋体10が紐材19を介して固定されていることにより、袋体10の鉄筋籠50に対する固定姿勢が保持される。尚、掘削孔70内に注入されている安定液Bにより、袋体10には浮力が作用しているが、この浮力に対しても同様に、袋体10の鉄筋籠50に対する固定姿勢が保持される(以上、B工程)。
【0062】
鉄筋籠50の内側に余盛りコンクリートCSが打ち上がった段階で、余盛りコンクリートCSが硬化する前に、作業員が例えばかんじき等を履いて余盛りコンクリートCSの上に入り、地上にあるバキューム装置にて余盛りコンクリートCSを吸引することにより、図6に示すように鉄筋籠50の内部にあった余盛りコンクリートCSを除去する。
【0063】
ここで、余盛りコンクリートCSの除去に関しては、余盛りコンクリートCSが硬化した後に、斫り除去してもよい。
【0064】
余盛りコンクリートCSが除去された後、図7に示すように、鉄筋籠50に対して袋体10を固定していた紐材19を切断等して取り外し、袋体10を地上へ回収することにより、場所打ちコンクリート杭Pが施工される(以上、C工程)。
【0065】
図示する軽減方法によれば、鉄筋籠50の外周に紐材19を介して固定している袋体10を膨張させた後に、掘削孔70に打設されて上昇してきたコンクリートCを袋体によって鉄筋籠50の内側へ導くことにより、袋体10にコンクリートCから作用する浮力や押し上げ力Fに抗しながら鉄筋籠50への袋体10の固定姿勢を保持することができ、鉄筋籠50の内側へコンクリートCを確実に導くことができる。このことにより、余盛りコンクリートCSの除去領域を鉄筋籠50の内側に限定して、鉄筋籠50の内側にある余盛りコンクリートCSを効率的に除去することが可能になる。
【0066】
また、袋体10の撤去の際は、紐材19を切断等して取り外すのみで、袋体10を鉄筋籠50から容易に取り外して地上へ回収することができる。
【0067】
このように、紐材19を介して袋体10を鉄筋籠50に固定することにより、袋体10の鉄筋籠50への良好な固定性と、撤去時の良好な取り外し性の双方が得られ、余盛りコンクリートCSの除去作業を軽減することが可能になる。
【0068】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0069】
10:袋体
11:側面
12:上面
12a:エアバルブ
13:背面
14:底面(テーパー面)
15:下固定片
15a:挿通部(鳩目)
16:上固定片
16a:挿通部(鳩目)
17:第一ポケット
18:第二ポケット
19:紐材(結束バンド)
20:フレーム材
21:第一フレーム
22:第二フレーム
30:コンプレッサ
32:エアダクト
40:余盛りコンクリート除去軽減装置(軽減装置)
50:鉄筋籠
51:主筋
52:帯筋
60:固定治具
70:掘削孔
B:安定液
T:トレミー管
C:コンクリート
CS:余盛りコンクリート
P:場所打ちコンクリート杭(場所打ちコンクリート体)
F:押し上げ力
G:地盤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7