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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119883
(43)【公開日】2023-08-29
(54)【発明の名称】免震構造物
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/02 20060101AFI20230822BHJP
   E04B 1/34 20060101ALI20230822BHJP
   B66B 7/00 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
E04H9/02 331Z
E04H9/02 301
E04B1/34 A
B66B7/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022022995
(22)【出願日】2022-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100213388
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 康司
(72)【発明者】
【氏名】濱田 聡
(72)【発明者】
【氏名】清水 隆
(72)【発明者】
【氏名】桑 素彦
(72)【発明者】
【氏名】千田 啓吾
(72)【発明者】
【氏名】太田 行孝
(72)【発明者】
【氏名】川又 哲也
【テーマコード(参考)】
2E139
3F305
【Fターム(参考)】
2E139AA01
2E139AC26
2E139AD01
2E139BA03
2E139BA04
2E139BA12
2E139BA19
2E139BD35
2E139CC08
3F305BA07
(57)【要約】
【課題】本発明は、昇降路40の下端に免震支承を設けないことにより、昇降路40の下の空間22に作業空間を確保できる免震構造物1を提供する。
【解決手段】免震構造物1は、下部構造体20と、下部構造体20の上に免震装置30を介して支持される上部構造体10と、上部構造体10に上端が固定され、かつ、下部構造体20の中を下方へ延びる鉄筋コンクリート造の昇降路40と、を備える。昇降路40は、エレベータかご42が昇降する内部空間43を形成するための壁部44と、壁部44の下端で内部空間43を閉塞する底部46と、壁部44内を上部構造体10から底部46へ向かって延びる複数の第1緊張材51及び第2緊張材52と、を含む。壁部44は、複数の第1緊張材51及び第2緊張材52に引張力が付与されたプレストレストコンクリート構造である。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部構造体と、
前記下部構造体の上に免震装置を介して支持される上部構造体と、
前記上部構造体に上端が固定され、かつ、前記下部構造体の中を下方へ延びる鉄筋コンクリート造の昇降路と、
を備え、
前記昇降路は、エレベータかごが昇降する内部空間を形成するための壁部と、前記壁部の下端で前記内部空間を閉塞する底部と、前記壁部内を前記上部構造体から前記底部へ向かって延びる複数の緊張材と、を含み、
前記壁部は、前記複数の緊張材に引張力が付与されたプレストレストコンクリート構造であることを特徴とする、免震構造物。
【請求項2】
請求項1において、
前記複数の緊張材は、それぞれの上端が前記上部構造体に固定されることを特徴とする、免震構造物。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記複数の緊張材は、複数の第1緊張材と、前記第1緊張材よりも短い複数の第2緊張材と、を含み、
前記複数の第1緊張材は、前記上部構造体から前記底部まで延び、
前記複数の第2緊張材は、前記上部構造体から前記壁部の全高の半分の位置よりも高い位置まで延びることを特徴とする、免震構造物。
【請求項4】
請求項3において、
前記昇降路は、エレベータの乗降用の開口を有し、
前記壁部は、前記複数の緊張材の内、前記開口に最も近い部分に前記第1緊張材が配置されることを特徴とする、免震構造物。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか一項において、
前記壁部は、鉄筋コンクリート造を構成する縦筋及び横筋より内側に前記複数の緊張材が配置されることを特徴とする、免震構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータの昇降路を備える免震構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
免震装置より下方に延びるエレベータ用の下部昇降路を備える免震構造物が提案されている(特許文献1)。
【0003】
特許文献1の下部昇降路は免震建物から吊下げられるため縦梁と横梁とからなる軽量化した骨組構造とされ、下部昇降路の下には水平方向に移動できる緩衝器が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9-202561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の免震構造物であっても地下の階層が深くなり下部昇降路が長くなると自重による負荷が大きくなり、下部昇降路の下端に免震支承を設けて下部昇降路を支持することが予想される。しかしながら、下部昇降路の下に特許文献1のような水平方向に移動できる緩衝器が設置されたり、免震支承を設けたりすると、下部昇降路の下の空間が制限されることになる。
【0006】
そこで、本発明は、昇降路の下端に免震支承を設けないことにより、昇降路の下の空間を確保できる免震構造物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
【0008】
[1]本発明に係る免震構造物の一態様は、
下部構造体と、
前記下部構造体の上に免震装置を介して支持される上部構造体と、
前記上部構造体に上端が固定され、かつ、前記下部構造体の中を下方へ延びる鉄筋コンクリート造の昇降路と、
を備え、
前記昇降路は、エレベータかごが昇降する内部空間を形成するための壁部と、前記壁部の下端で前記内部空間を閉塞する底部と、前記壁部内を前記上部構造体から前記底部へ向かって延びる複数の緊張材と、を含み、
前記壁部は、前記複数の緊張材に引張力が付与されたプレストレストコンクリート(Prestressed Concrete)構造であることを特徴とする。
【0009】
[2]上記免震構造物の一態様において、
前記複数の緊張材は、それぞれの上端が前記上部構造体に固定されることができる。
【0010】
[3]上記免震構造物の一態様において、
前記複数の緊張材は、複数の第1緊張材と、前記第1緊張材よりも短い複数の第2緊張材と、を含み、
前記複数の第1緊張材は、前記上部構造体から前記底部まで延び、
前記複数の第2緊張材は、前記上部構造体から前記壁部の全高の半分の位置よりも高い位置まで延びることができる。
【0011】
[4]上記免震構造物の一態様において、
前記昇降路は、エレベータの乗降用の開口を有し、
前記壁部は、前記複数の緊張材の内、前記開口に最も近い部分に前記第1緊張材が配置されることができる。
【0012】
[5]上記免震構造物の一態様において、
前記壁部は、鉄筋コンクリート造を構成する縦筋及び横筋より内側に前記複数の緊張材が配置されることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る免震構造物の一態様によれば、プレストレストコンクリート構造を用いた昇降路によって昇降路の下に免震支承を設ける必要がないため、昇降路の下の空間を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態に係る免震構造物の縦断面図である。
図2】昇降路の縦断面図である。
図3】昇降路の平面図である。
図4】昇降路の部分拡大縦断面図である。
図5】変形例に係る昇降路の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0016】
1.免震構造物の概要
図1を用いて、本実施形態に係る免震構造物1について説明する。図1は、本実施形態に係る免震構造物1の縦断面図である。
【0017】
図1に示すように、免震構造物1は、下部構造体20と、下部構造体20の上に免震装置30を介して支持される上部構造体10と、上部構造体10に上端が固定され、かつ、下部構造体20の中を下方へ延びる鉄筋コンクリート造の昇降路40と、を備える。免震構造物1は、エレベータを備える。
【0018】
上部構造体10は、地盤面GLより下に設けられる複数の免震装置30に支持されて上方へ延びる複数階層を備える建築物である。1階床は、上部スラブ13の上面に形成される。上部構造体10は、例えば中央にエレベータかご42が昇降する上部昇降路が形成されるが、図1では省略する。上部構造体10に固定されて下方へ延びる昇降路40については後述する。昇降路40と図示が省略された上部昇降路とは、上下(Z方向)で連続するように形成されるが、上部昇降路がないエレベータであってもよい。
【0019】
下部構造体20は、免震装置30より下に設けられる下方へ延びる複数階層を備える地下建築物であるが、免震装置30が地盤面GLより上に設けられている場合には地上建築物を含んでもよい。下部構造体20は、例えば中央にエレベータかご42が昇降する昇降
路40が配置される筒状の空間が形成され、その筒状の空間の下端には昇降路の下の空間22が形成される。空間22には昇降路40を支持する免震支承は存在しない。そのため、空間22に十分な作業空間を確保できる。
【0020】
免震装置30は、下部構造体20と上部構造体10との間にある免震層32に設けられる。免震装置30は、下部構造体20の上に複数個間隔を空けて設置され、免震装置30の上に載置された上部構造体10を支持する。免震装置30は、上部構造体10に伝わる地震等の水平方向の揺れを低減させ、かつ、上部構造体10の相対位置の変化を元に戻す力を付与する機構であり、いわゆるアイソレータである。免震装置30は、積層ゴム、すべり支承及び転がり支承の少なくともいずれか一つを含む。免震装置30は、減衰装置をさらに備えてもよく、減衰装置としては、例えば、オイルダンパー、鉛ダンパー、鋼材ダンパー、摩擦ダンパー等を採用できる。
【0021】
2.昇降路
図1図4を用いて、昇降路40について説明する。図2は、昇降路40の縦断面図であり、図3は、昇降路40の平面図であり、図4は、昇降路40の部分拡大縦断面図である。図2は、図3におけるA-A断面図である。図4は、図3における丸で囲んだ部分を拡大して示す。
【0022】
図1及び図2に示すように、昇降路40は、上部構造体10に上端が固定され、かつ、下部構造体20の中を下方へ延びる鉄筋コンクリート造の構造物である。昇降路40は、エレベータシャフトとも称される。昇降路40は、その上端が上部構造体10に固定されるため、地震等による水平方向のエネルギーが入力された場合には上部構造体10と一体となって免震建物の一部として動作する。そのため、昇降路40と昇降路40の周囲にある下部構造体20とは、昇降路40の水平移動を許容する間隔を隔てて配置される。
【0023】
図2に示すように、昇降路40は、エレベータかご42が昇降する内部空間43を形成するための壁部44と、壁部44の下端で内部空間43を閉塞する底部46と、壁部44内を上部構造体10から底部46へ向かって延びる複数の緊張材(51,52)と、を含む。
【0024】
壁部44は、複数の緊張材(51,52)に引張力が付与されたプレストレストコンクリート構造である。プレストレストコンクリート構造とは、PC鋼材とよばれる高強度の鋼線、鋼撚線または鋼棒等を緊張し、コンクリート部材端部に定着することによってプレストレスが与えられたコンクリート構造である。壁部44がプレストレストコンクリート構造であることにより、昇降路40の自重による引張応力を要因とするコンクリート躯体のひび割れを防止することができる。また、壁部44がプレストレストコンクリート構造であることにより、壁部44の部材断面を縮小することができ、昇降路40が省スペースとなる。
【0025】
壁部44がプレストレストコンクリート構造であるため、底部46の下(昇降路40の下の空間22)には免震支承が存在しない。そのため、免震構造物1は、プレストレストコンクリート構造を用いた昇降路40によって昇降路40の下に免震支承を設ける必要がないため、昇降路40の下の空間22に作業空間を確保できる。
【0026】
複数の緊張材(51,52)は、それぞれの上端55が上部構造体10に固定されることができる。上端55が上部構造体10に固定されることにより、上部構造体10側に昇降路40の自重を確実に伝達することができる。複数の緊張材(51,52)は、複数の第1緊張材51と、第1緊張材51よりも短い複数の第2緊張材52と、を含むことができる。複数の第1緊張材51は、上部構造体10から底部46まで延びる。第1緊張材5
1が上部構造体10から底部46まで延びることにより、壁部44はその全高H1に渡って圧縮応力を受けることができる。そのため、壁部44は、その全高H1でコンクリートのひび割れを防止することができる。複数の第2緊張材52は、上部構造体10から壁部44の全高H1の半分の高さ位置H2よりも高い位置まで延びる。第2緊張材52は、下端56が固定される高さが異なるだけで基本的な構成は第1緊張材51と同じである。第2緊張材52を設けることにより、底部46側にある壁部44の下部よりも上部構造体10側にある壁部44の上部の方を補強することができる。上部構造体10側を補強することにより、壁部44に対する地震時の曲げ剛性及び曲げ耐性を高めることができる。
【0027】
第1緊張材51及び第2緊張材52の材質は、公知のPC(Prestressed Concrete)鋼材を採用することができ、本実施形態ではPC鋼棒が用いられているが、PC鋼線であってもよいし、他の金属を用いたものであってもよい。
【0028】
図3に示すように、昇降路40は、エレベータの乗降用の開口48,48を有する。本実施形態ではY方向における壁部44の両端側に開口48,48が設けられる。開口48は、エレベータかご42(図3では省略する)への出入り口である。互いに対向する2つの壁部44は、内部空間43を挟んでY方向に沿って直線状に延びる。開口48には壁部44が設けられておらず、壁部44のY方向の両端部が開口48の端部を形成する。上部スラブ13上には壁部44に沿って複数の上部定着板53と第1緊張材51及び第2緊張材52とが並ぶ。壁部44は、複数の緊張材(51,52)の内、開口48に最も近い部分に第1緊張材51が配置されることが好ましい。壁部44が連続していない開口48付近を全高H1に渡って補強するためである。
【0029】
図4に示すように、第1緊張材51は、下端56が底部46の内部に定着された下部定着板54にナット57で固定され、上端55が上部スラブ13の上面に定着された上部定着板53にナット57で固定される。第1緊張材51及び第2緊張材52(第2緊張材52は図2を参照)の固定手段としてはPC鋼材に用いられる公知の方法を採用することができる。上部スラブ13は、1階床を構成する鉄筋コンクリート造の梁を含んでもよい。第1緊張材51及び第2緊張材52の周囲には第1緊張材51及び第2緊張材52と間隔を空けて管体58が設けられ、第1緊張材51及び第2緊張材52と壁部44を構成するコンクリートとを縁切りしている。管体58は、金属製または合成樹脂製の管状であり、第1緊張材51及び第2緊張材52よりもわずかに大きな内径を有する。図示しないジャッキで上端55を上方へ引っ張り上げた状態でナット57により上端55を上部定着板53に固定することで上部定着板53と下部定着板54との間で第1緊張材51及び第2緊張材52に引張力が作用し、上部定着板53と下部定着板54との間にあるコンクリートに圧縮応力が作用する。この圧縮応力は、壁部44及び底部46の自重により壁部44に作用する引張力と同じかそれより大きくなるように設定されることが好ましい。また、この圧縮応力により壁部44を構成するコンクリートのひび割れが防止できる。なお、昇降路40の構築方法については後述する。
【0030】
壁部44は、鉄筋コンクリート造を構成する縦筋44a及び横筋44bより内側に複数の第1緊張材51が配置されることができる。すなわち、縦筋44a及び横筋44bが壁部44の表面に近い位置にあり、第1緊張材51が壁部44の中央に位置する。第1緊張材51と縦筋44a及び横筋44bとは互いに干渉しないように配置される。したがって、壁部44は、縦筋44a及び横筋44bによる補強と第1緊張材51による圧縮応力によりひび割れ耐性及び曲げモーメント耐性とを備える。なお、図示しないが第2緊張材52も第1緊張材51と同様に縦筋44a及び横筋44bより内側に配置される。
【0031】
底部46は、内部空間43を挟んで対向する2つの壁部44の下端で内部空間43を閉塞する。底部46は、X-Y方向に延びる鉄筋コンクリート造の平面である。底部46は
、下部構造体20との間に昇降路40の下の空間22を形成する。壁部44の下端からさらに下方へ延びる第1緊張材51の下端56が底部46の内部にある下部定着板54を介して底部46のコンクリートに固定される。
【0032】
上部スラブ13は、昇降路40の上端が接続されるX-Y方向に延びる鉄筋コンクリート造の平面である。上部スラブ13は鉄骨を含んでもよい。上部スラブ13は、Z方向で底部46に対向する部分が開口し、図示しない上部昇降路に内部空間43が接続する。上部スラブ13の上面には上部定着板53が定着され、上部定着板53を貫通して第1緊張材51の上端55が突出する。上端55を覆うように上部スラブ13の上にコンクリートを打ち増ししてもよい。
【0033】
3.昇降路の構築方法
昇降路40の構築方法は、例えば、底部46の構築、壁部44の構築、第1緊張材51及び第2緊張材52の緊張の順に実行できる。昇降路40は、現場打ちしてもよいし、プレキャストしたものを上部構造体10に取り付けてもよい。
【0034】
まず、底部46の構築は、底部46の配筋と、下部定着板54の取り付けを行い、下部定着板54に対しナット57で第1緊張材51を取り付け、第1緊張材51の周囲に管体58を配置し、コンクリートを打設する。次に、壁部44の構築は、底部46の上方に縦筋44a及び横筋44bを配筋し、底部46側から徐々に例えば複数回に分けて打ち継ぎしてコンクリートを打設する。また、図2に示すように壁部44の半分の高さ位置H2を超えた所定位置に下部定着板54を固定し、第1緊張材51と同様にナットで第2緊張材52を下部定着板54に固定し、第2緊張材52の周囲に管体58を配置し、コンクリートを打設する。壁部44の配筋作業は、底部46の打設前に、底部46の配筋作業と連続して行ってもよい。次に、第1緊張材51及び第2緊張材52の緊張は、上部定着板53が固定される上部スラブ13のコンクリートが打設されてから実行する。具体的には、図示しないジャッキで上端55を上方へ引っ張り上げ、その状態でナット57により上端55を上部定着板53に固定して第1緊張材51及び第2緊張材52の緊張状態を保持することにより行う。第1緊張材51及び第2緊張材52の周囲は管体58によってコンクリートと縁切りされているので、コンクリートの打設後であっても第1緊張材51及び第2緊張材52に引張応力を作用させることができる。所定の緊張状態とした後に、管体58の内部へグラウト材を導入し、第1緊張材51及び第2緊張材52を壁部44と一体化させる。また、上部スラブ13から上端55が突出しているため、1階床面高さまでコンクリートを打ち増しして上端55を埋設する。
【0035】
4.変形例
図5を用いて変形例に係る免震構造物1の昇降路40aについて説明する。図5は、変形例に係る昇降路40aの平面図である。図5に示す昇降路40は、図1図4で説明した昇降路40aと基本的に同じ構成であるため、各構成については同じ符号を用いて説明し、重複する説明を省略する。
【0036】
図5に示すように、昇降路40aは、Y方向の一方のみにエレベータの乗降用の開口48が設けられる。昇降路40aの壁部44は、破線で示すように開口48を除いて矩形状に内部空間43を囲んで形成される。開口48が形成された壁部44の辺とその辺と対向する辺には第1緊張材51及び第2緊張材52が設けられていない。壁部44に設けられた複数の緊張材(51,52)の内、開口48に最も近い部分に第1緊張材51が配置される。
【0037】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、
方法、及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0038】
1…免震構造物、10…上部構造体、13…上部スラブ、20…下部構造体、22…空間、30…免震装置、32…免震層、40,40a…昇降路、42…エレベータかご、43…内部空間、44…壁部、44a…縦筋、44b…横筋、46…底部、48…開口、51…第1緊張材、52…第2緊張材、53…上部定着板、54…下部定着板、55…上端、56…下端、57…ナット、58…管体、H1…全高、H2…半分の高さ位置
図1
図2
図3
図4
図5