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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119884
(43)【公開日】2023-08-29
(54)【発明の名称】モータ、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/18 20060101AFI20230822BHJP
   H02K 15/06 20060101ALI20230822BHJP
   H02K 15/02 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
H02K1/18 C
H02K1/18 D
H02K15/06
H02K15/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022022996
(22)【出願日】2022-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹本 心路
(72)【発明者】
【氏名】廣川 剛士
【テーマコード(参考)】
5H601
5H615
【Fターム(参考)】
5H601AA07
5H601CC01
5H601CC15
5H601DD01
5H601DD09
5H601DD11
5H601EE12
5H601GA02
5H601GB05
5H601GB12
5H601GB33
5H601GB48
5H601GD02
5H601GD07
5H601GD08
5H601GD10
5H601GD18
5H601GD22
5H601HH18
5H601KK30
5H615AA01
5H615BB01
5H615BB07
5H615BB14
5H615PP07
5H615PP13
5H615QQ03
5H615QQ06
5H615SS09
(57)【要約】      (修正有)
【課題】歪の発生を抑えつつ、ステータコアを小型化したモータを提供する。
【解決手段】モータ100は、ロータ200と、ステータ300と、を備える。ロータは、軸方向に延びる中心軸を中心にして回転可能である。ステータは、ロータと径方向に対向するステータコア301を有する。ステータコアは、複数のコアバック片1と、ティース部2と、を有する。複数のコアバック片は、中心軸を中心にして周方向に配置される。ティース部は、径方向に延びる。周方向に隣り合うコアバック片は、ティース部の径方向におけるコアバック片側の端部を介して周方向に接続される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に延びる中心軸を中心にして回転可能なロータと、
前記ロータと径方向に対向するステータコアを有するステータと、
を備え、
前記ステータコアは、
前記中心軸を中心にして周方向に配置される複数のコアバック片と、
径方向に延びるティース部と、
を有し、
周方向に隣り合う前記コアバック片は、前記ティース部の径方向における前記コアバック片側の端部を介して周方向に接続される、モータ。
【請求項2】
前記コアバック片は、前記コアバック片の周方向端部に配置される第1接続面を有し、
前記ティース部は、前記ティース部の径方向における前記コアバック片側の端部に配置されて、前記第1接続面と接続される第2接続面を有し、
前記第1接続面及び前記第2接続面は、径方向と斜めに交差する方向に広がる、請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記コアバック片は、前記コアバック片の周方向端部から周方向内方に向かうにつれて径方向外方に広がる傾斜面をさらに有し、
前記傾斜面は、前記第1接続面が配置される前記コアバック片の周方向端部において、前記第1接続面よりも径方向外方に配置される、請求項2に記載のモータ。
【請求項4】
前記第1接続面及び前記第2接続面の一方面には、前記第1接続面及び前記第2接続面の他方面から前記一方面に向かって凹む第1凹部が配置され、
前記他方面には、前記他方面から前記一方面に向かって突出し、前記第1凹部に配置される凸部が配置される、請求項2又は請求項3に記載のモータ。
【請求項5】
前記ステータコアの径方向外側面において、前記コアバック片及び前記ティース部の接続部分の外縁部は、前記ステータコアの外部に露出する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項6】
周方向に隣り合う前記コアバック片は、間隔を空けて周方向に並び、
前記ティース部の径方向における前記コアバック片側の端部の少なくとも一部は、前記ステータコアの外部に露出する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項7】
周方向に隣り合う前記コアバック片の周方向端部同士が周方向に接する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項8】
前記ロータの少なくとも一部と前記ステータの少なくとも一部とを収容するハウジングをさらに備え、
前記ハウジングは、前記ステータよりも径方向外方に配置されて軸方向に延びる筒部を有し、
前記ステータコアは、前記筒部の径方向内端部に保持され、
前記ティース部の径方向における前記コアバック片側の端部の少なくとも一部は、前記筒部と隙間を空けて径方向に対向する、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項9】
前記ハウジングは、前記筒部の径方向内側面に配置されて径方向外方に凹む第2凹部を有し、
前記第2凹部は、周方向に隣り合う前記コアバック片間に向かって径方向に開口する、請求項8に記載のモータ。
【請求項10】
前記ティース部は、周方向において隣り合う前記コアバック片の周方向端部間に配置される第3凹部を有し、
前記第3凹部は、前記ティース部の径方向における前記コアバック片側の端部から径方向に凹む、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項11】
前記コアバック片及び前記ティース部の表面には、電気絶縁性を有する材料から成る絶縁コーティング層が配置される、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載のモータの製造方法であって、
周方向に隣り合う前記コアバック片を前記ティース部の径方向における前記コアバック片側の端部を介して周方向に接続する接続ステップを含む、モータの製造方法。
【請求項13】
前記ステータコアに配置されるコイル部を有するモータの製造方法であって、
空芯コイルに前記ティース部を挿通する挿通ステップをさらに備え、
前記接続ステップにおいて、
周方向に隣り合う前記コアバック片は、前記空芯コイルが挿通された前記ティース部の径方向における前記コアバック片側の端部を介して周方向に接続される、請求項12に記載のモータの製造方法。
【請求項14】
前記接続ステップにおいて、
前記コアバック片及び前記ティース部はそれぞれ、電気絶縁性を有する材料を用いて形成された絶縁コーティングで予め被覆される、請求項12又は請求項13に記載のモータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、環状のコアバックにティースを固定するステータコアを有するモータが知られている。たとえば、筒状のステータヨークの内側面に凹溝が配置され、ティース部の凸部が凹溝に配置される。そして、これらは、樹脂モールドにより固定される。(中国特許出願公開第106532992号明細書参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】中国特許出願公開第106532992号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ティースの径方向外方側にあるコアバックが薄くなると、コアバックの強度が低下する恐れがあるため、ティースの径方向外方側におけるコアバックの径方向厚さを十分に確保する必要がある。そのため、ステータコアの径サイズが大きくなり易い。また、上述のように、環状のコアバックの径方向内側面に凹部を配置すると、凹部付近においてコアバックが薄くなる箇所があるため、軸方向から見たコアバックの形状が正円形状から歪み易くなる。一方、凹部付近のコアバックが薄くなる箇所を厚くすると、ステータコアの径サイズがさらに大きくなる。
【0005】
本発明は、歪の発生を抑えつつ、ステータコアを小型化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の例示的なモータは、ロータと、ステータと、を備える。前記ロータは、軸方向に延びる中心軸を中心にして回転可能である。前記ステータは、前記ロータと径方向に対向するステータコアを有する。前記ステータコアは、複数のコアバック片と、ティース部と、を有する。複数の前記コアバック片は、前記中心軸を中心にして周方向に配置される。前記ティース部は、径方向に延びる。周方向に隣り合う前記コアバック片は、前記ティース部の径方向における前記コアバック片側の端部を介して周方向に接続される。
【0007】
本発明の例示的なモータの製造方法は、上述のモータの製造方法であって、接続ステップを含む。前記接続ステップでは、周方向に隣り合う前記コアバック片を前記ティース部の径方向における前記コアバック片側の端部を介して周方向に接続する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の例示的なモータ、及びその製造方法によれば、歪の発生を抑えつつ、ステータコアを小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、モータの構成例を示す断面図である。
図2図2は、実施形態に係るステータコアの要部の構成例を示す断面図である。
図3図3は、実施形態に係るステータコアの要部の他の構成例を示す断面図である。
図4図4は、モータの製造方法の一例を説明するためのフローチャートである。
図5A図5Aは、コイル部の配置例を示す。
図5B図5Bは、接続部分の接続前におけるステータコアの構成例を示す。
図5C図5Cは、接続部分の接続後におけるステータコアの構成例を示す。
図6図6は、第1変形例に係るステータコアの要部の構成例を示す断面図である。
図7図7は、第2変形例に係るステータコアの要部の構成例を示す断面図である。
図8図8は、第3変形例に係る筒部の構成例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を参照して例示的な実施形態を説明する。
【0011】
なお、本明細書では、中心軸Jと平行な方向を「軸方向」と呼ぶ。また、中心軸Jに直交する方向を「径方向」と呼び、中心軸Jを中心とする回転方向を「周方向」と呼ぶ。径方向のうち、中心軸Jへと近づく向きを「径方向内方」と呼び、中心軸Jから離れる向きを「径方向外方」と呼ぶ。
【0012】
また、任意の構成要素において、所定方向において構成要素の中央部から端部に向かう向きを「所定方向の外方」と呼び、所定方向において構成要素の端部から中央部に向かう向きを「所定方向の内方」と呼ぶ。たとえば、周方向において任意の構成要素の中央部から端部に向かう向きを「周方向外方」と呼び、周方向において任意の構成要素の端部から中央部に向かう向きを「周方向内方」と呼ぶ。
【0013】
また、本明細書において、「環状」は、中心軸Jを中心とする周方向の全域に渡って切れ目の無く連続的に一繋がりとなる形状のほか、中心軸Jを中心とする全域の一部に1以上の切れ目を有する形状を含む。また、中心軸Jを中心として、中心軸Jと交差する曲面において閉曲線を描く形状も含む。
【0014】
また、方位、線、及び面のうちのいずれかと他のいずれかとの位置関係において、「平行」は、両者がどこまで延長しても全く交わらない状態のみならず、実質的に平行である状態を含む。また、「垂直」及び「直交」はそれぞれ、両者が互いに90度で交わる状態のみならず、実質的に垂直である状態及び実質的に直交する状態を含む。つまり、「平行」、「垂直」及び「直交」はそれぞれ、両者の位置関係に本発明の主旨を逸脱しない程度の角度ずれがある状態を含む。
【0015】
なお、これらは単に説明のために用いられる名称であって、実際の位置関係、方向、及び名称などを限定する意図はない。
【0016】
<1.モータ100>
図1は、モータ100の断面図である。図1は、中心軸Jと垂直な方向に広がる仮想の平面で後述するコアバック片1及びティース部2などを切断したモータ100の断面構造を示す。
【0017】
図1に示すように、モータ100は、ロータ200と、ステータ300と、ハウジング400と、を備える。
【0018】
<1-1.ロータ200>
ロータ200は、軸方向に延びる中心軸Jを中心にして回転可能である。前述の如く、モータ100は、ロータ200を備える。ロータ200は、シャフト201と、ロータコア202と、マグネット203と、を有する。
【0019】
シャフト201は、円柱形状であって、中心軸Jに沿って軸方向に延びる。
【0020】
ロータコア202は、シャフト201の径方向外端部に固定され、シャフト201を囲んで軸方向に延びる。ロータコア202は、磁性体材料を用いて形成され、マグネット203のヨークとして機能する。ロータコア202は、本実施形態では、径方向に広がる環状の電磁鋼板が軸方向に積層された積層体である。
【0021】
マグネット203は、ロータコア202の径方向外端部に配置される。マグネット203では、互いに異なる磁極(N極及びS極)が周方向において交互に配列する。マグネット203は、中心軸Jを囲む環状の部材であってもよいし、周方向に配置される複数の磁石片を含む構成であってもよい。
【0022】
<1-2.ステータ300>
ステータ300は、ステータコア301を有する。前述の如く、モータ100は、ステータ300を備える。ステータコア301は、ロータ200と径方向に対向する。本実施形態では、ステータ300は、ロータ200よりも径方向外方に配置される。
【0023】
ステータ300は、複数のコイル部302をさらに有する。コイル部302は、導線(図示省略)が成型された部材であり、ステータコア301に配置される。より詳細には、コイル部302はティース部2に配置される。導線は、たとえばエナメル被覆銅線、絶縁部材で被覆された金属線などである。コイル部302に駆動電流が供給されると、ステータ300は、励磁されてロータ200を駆動する。
【0024】
<1-3.ハウジング400>
ハウジング400は、ロータ200の少なくとも一部とステータ300の少なくとも一部とを収容する。前述の如く、モータ100は、ハウジング400を有する。ハウジング400は、筒部401を有する。筒部401は、ステータ300よりも径方向外方に配置されて、軸方向に延びる。筒部401は、ロータ200及びステータ300を囲む筒状体である。筒部401の径方向内側面には、ステータコア301が保持される。
【0025】
<1-4.ステータコア301の構成>
次に、図1及び図2を参照して、ステータコア301の構成を説明する。図2は、ステータコア301の要部の構成を示す断面図である。図2は、図1の破線で囲まれた部分IIを拡大した図である。
【0026】
ステータコア301は、中心軸Jを中心にして周方向に配置される複数のコアバック片1と、径方向に延びるティース部2と、を有する。各々のコアバック片1は、周方向に延びて、中心軸Jを囲む環状に並び、筒部401の径方向内側面に固定される。周方向に隣り合うコアバック片1は、間隔を空けて周方向に並ぶ。コアバック片1及びティース部2はそれぞれ、磁性体材料から成り、本実施形態では電磁鋼板が軸方向に積層された積層体である。周方向に隣り合うコアバック片1は、ティース部2の径方向におけるコアバック片1側の端部を介して周方向に接続される。たとえば、図2の破線で囲まれた部分は、両者の接続部分Cを示す。
【0027】
ステータコア301を上述のように構成することにより、たとえば径方向に延びるティースを環状のコアバックの径方向側面に接続する構成と比べて、本実施形態では、コアバック片1の径方向外端部とティース部2の径方向におけるコアバック片1側の端部との間の間隔をより狭くできる。従って、ステータコア301を小型化できる。よって、ステータ300の径サイズをより小さくでき、モータ100を小型化できる。
【0028】
また、環状のコアバックの径方向内側に径方向に凹む凹部を設けて該凹部にティースの径方向端部を接続する構成と比較して、ステータコア301の強度が低減することを抑制できる。詳細に記載すると、環状のコアバックに凹部を設けることで、コアバックにおいて凹部の径方向外側の領域が、凹部を設けていない領域と比較して径方向の厚みが薄くなる。したがって、径方向の厚みが薄くなる領域を無くして、複数のコアバック片1を周方向に配置することで、強度が弱い領域がなくなるため、ステータコア301の強度が低減することを抑制できる。
【0029】
また、たとえば径方向に延びるティースを環状のコアバックの径方向側面に接続する構成と比べて、複数のコアバック片1をより精度良く環状に配置できる。詳細には、前者の環状のコアバックの場合、コアバックの径方向側面がティースにより径方向に押されることで、軸方向から見たコアバックの形状が正円形状から歪み易い。一方、本実施形態では、たとえば、コアバック片1及びティース部2のうちの一方を固定した状態で他方を接続することにより、コアバック片1及びティース部2の配置位置をずらすことなく、両者を接続することができる。従って、複数のコアバック片1をより正円に近い環状に配置することができる。従って、歪を抑えつつステータコア301を小型化できる。たとえば、軸方向から見たステータコア301の形状をより円形状に近くできる。よって、ステータ300における磁束密度分布を周方向においてより均等に形成できる。
【0030】
ティース部2は、柱部21と、アンブレラ部22と、を有する。柱部21は、径方向に延びる柱状体である。本実施形態では、柱部21の径方向外端部は、周方向に隣り合うコアバック片1間に接続される。柱部21は、周方向に隣り合うコアバック片1間から径方向内方に延びる。柱部21には、コイル部302が配置される。コイル部302は、柱部21に挿通された空芯コイル3である。但し、この例示に限定されず、コイル部302は、柱部21に対する導線の巻き回しによって、柱部21に配置されてもよい。アンブレラ部22は、柱部21の径方向内端部から周方向の両側に延びる。柱部21の径方向内端部及びアンブレラ部22は、ロータ200と径方向に対向する。
【0031】
また、ステータコア301は、コアバック片1の表面を覆う絶縁コーティング層10と、ティース部2の表面を覆う絶縁コーティング層20と、をさらに有する。つまり、コアバック片1及びティース部2の表面には、電気絶縁性を有する材料から成る絶縁コーティング層10,20が配置される。絶縁コーティング層10,20には、本実施形態では、フッ素樹脂が用いられる。但し、この例示に限定されず、絶縁コーティング層10,20には、フッ素樹脂以外の電気絶縁性樹脂、セラミックなどを用いることができる。こうすれば、ステータコア301に配置されるコイル部302とコアバック片1及びティース部2との間の電気絶縁性を確保できる。たとえば、絶縁コーティング層10がコアバック片1に配置されることにより、コイル部302及びコアバック片1間をより確実に絶縁できる。また、絶縁コーティング層10がティース部2に配置されることにより、コイル部302及びティース部2間をより確実に絶縁できる。
【0032】
また、本実施形態では、絶縁コーティング層10,20は、薄膜である。但し、この例示は、両者の少なくとも一方が上述の薄膜でない構成を排除しない。たとえば、両者の少なくとも一方は、塗膜であってもよいし、コアバック片1,ティース部2の表面処理層などを含んでいてもよい。
【0033】
次に、コアバック片1は、径方向と斜めに交差する方向に広がる第1接続面11を有する。第1接続面11は、コアバック片1の周方向端部に配置され、周方向内方に向かうにつれて径方向内方に広がる。本実施形態では、第1接続面11は、軸方向と平行な平面であり、コアバック片1の周方向両端部に配置される。たとえば、コアバック片1の周方向一方端部に配置される第1接続面11は、周方向他方に向かうにつれて径方向内方に広がる。同様に、コアバック片1の周方向他方端部に配置される第1接続面11は、周方向一方に向かうにつれて径方向内方に広がる。
【0034】
また、ティース部2は、径方向と斜めに交差する方向に広がる第2接続面23をさらに有する。第2接続面23は、ティース部2の径方向におけるコアバック片1側の端部に配置される。第2接続面23は、コアバック片1の第1接続面11と接続される。第2接続面23は、第1接続面11と平行であり、周方向内方に向かうにつれて径方向外方に広がる。第2接続面23は、第1接続面11とともに接続部分Cを構成する。本実施形態では、第2接続面23は、軸方向と平行な平面であり、柱部21の径方向外端部における周方向両側に配置される。たとえば、柱部21の径方向外端部の周方向一方側に配置される第2接続面23は、周方向他方に向かうにつれて径方向外方に広がる。同様に、柱部21の径方向外端部の周方向他方側に配置される第2接続面23は、周方向一方に向かうにつれて径方向外方に広がる。
【0035】
なお、接続部分Cにおいて、第1接続面11及び第2接続面23は、本実施形態ではレーザ溶接により接続される。但し、両者の接続手段は、この例示に限定されない。両者は、レーザ溶接以外の手段で接続されてもよく、たとえばろう付けなどの接着手段により接続されてもよい。
【0036】
接続部分Cについて、第1接続面11及び第2接続面23が径方向と斜めに交差する方向に広がることにより、コアバック片1とティース部2との接続面積をより広くできる。従って、両者の接続部分Cに係る応力をより広い接続面積で分散できる。従って、ステータコア301の強度を向上できる。
【0037】
また、ティース部2の径方向におけるコアバック片1側の端部に上述のような第2接続面23を配置することにより、軸方向から見て、上述のティース部2の端部の周方向幅をコアバック片1に向かうにつれて狭くできる。従って、たとえばティース部2に空芯コイル3を配置する際(たとえば後述の図5A参照)、空芯コイル3(特に導線の絶縁被膜)を傷つけることなく、空芯コイル3を容易に挿入できる。
【0038】
但し、上述の例示は、第1接続面11及び第2接続面23の広がる方向が径方向と斜めに交差する方向でない構成を排除しない。たとえば、第1接続面11及び第2接続面23は、径方向と平行な平面であってもよいし、径方向と垂直な平面であってもよい。
【0039】
次に、ステータコア301の径方向外側面において、コアバック片1及びティース部2の接続部分Cの外縁部(たとえば径方向外端部)は、ステータコア301の外部に露出する。また、ステータコア301の軸方向端面において、コアバック片1及びティース部2の接続部分Cの外縁部(たとえば軸方向端部)は、ステータコア301の外部に露出する。こうすれば、ステータコア301の外部(たとえば径方向外方側)からコアバック片1及びティース部2間を接続できる。従って、両者の接続を容易に実施できる。
【0040】
また、コアバック片1は、傾斜面12をさらに有する。傾斜面12は、コアバック片1の周方向端部から周方向内方に向かうにつれて径方向外方に広がる。傾斜面12は、第1接続面11が配置されるコアバック片1の周方向端部において、第1接続面11よりも径方向外方に配置される。本実施形態では、傾斜面12は、全てのコアバック片1において、その周方向両側に配置される。たとえば、コアバック片1の周方向一方端部に配置される傾斜面12は、周方向他方に向かうにつれて径方向外方に広がる。同様に、コアバック片1の周方向他方端部に配置される傾斜面12は、周方向一方に向かうにつれて径方向外方に広がる。但し、この例示に限定されず、少なくとも1つのコアバック片1において、傾斜面12は、コアバック片1の周方向片側のみに配置されてもよい。好ましくは、傾斜面12は、周方向に隣り合うコアバック片1の周方向端部の少なくともどちらかに配置される。詳細には、傾斜面12は、周方向一方側のコアバック片1の周方向他方端部と、周方向他方側のコアバック片1の周方向一方端部とのうちの少なくともどちらかに配置される。
【0041】
こうすれば、コアバック片1及びティース部2間の接続部分Cの径方向外端部において、バリなどが生じても、バリを接続部分Cの近傍で広がるようにして、バリがコアバック片1よりも径方向外方に延びることを抑制できる。従って、バリが他の部材(たとえば筒部401)に当たらないようにできる。
【0042】
また、ティース部2を介して隣り合うコアバック片1間を接続するための作業空間をより広く確保できるので、その作業性を向上できる。
【0043】
但し、上述の例示は、少なくとも1つのコアバック片1に傾斜面12が配置されない構成を排除しない。
【0044】
また、好ましくは、ティース部2の径方向におけるコアバック片1側の端部の少なくとも一部は、ステータコア301の外部に露出する。詳細には、少なくとも1つのティース部2は、露出面24をさらに有する。露出面24は、柱部21の径方向外端部に配置され、筒部401の径方向内側面と径方向に対向する。本実施形態では、露出面24は、柱部21の径方向外端部において、2つの第2接続面23間に配置される。露出面24の周方向端部は、第2接続面23の径方向外端部に接続される。こうすれば、コアバック片1及びティース部2間を接続するための作業空間をより広く確保できるので、両者を接続する際の作業性を向上できる。
【0045】
また、好ましくは、ティース部2の径方向におけるコアバック片1側の端部の少なくとも一部は、筒部401と隙間Sを空けて径方向に対向する。たとえば、図2に示すように、露出面24は、筒部401の径方向内側面と隙間Sを空けて径方向に対向する。こうすれば、ステータコア301の外部に露出するコアバック片1及びティース部2間の接続部分Cの外縁部は、筒部401から径方向に離れるので、筒部401の径方向内側面には接しない。従って、上述の外縁部が粗くなっていても、ステータコア301を容易に筒部401内に挿入して配置できる。
【0046】
但し、上述の例示は、ティース部2の径方向におけるコアバック片1側の端部と筒部401との間に隙間Sが無い構成を排除しない。たとえば、露出面24は、筒部401の径方向内側面と接してもよい。
【0047】
また、上述の例示は、ティース部2の径方向におけるコアバック片1側の端部がステータコア301の外部に露出しない構成を排除しない。たとえば、少なくとも1つのティース部2は、露出面24を有しなくてもよい。言い換えると、周方向に隣り合うコアバック片1の少なくとも1つにおいて、図3に示すように、周方向に隣り合うコアバック片1の周方向端部同士が周方向に接してもよい。詳細には、周方向に隣り合うコアバック片1のうち、周方向一方側のコアバック片1の周方向他方端部は、周方向他方側のコアバック片1の周方向一方端部と接してもよい。こうすれば、たとえば図3のように、周方向に隣り合うコアバック片1同士を周方向に溶接、接着などの手段で接続できる。従って、周方向に隣り合うコアバック片1間におけるステータコア301の強度を向上できる。また、モータ内部に水滴等が浸入した場合においても、ステータコア301の径方向外側面において、水がティース部2につくことを抑制できる。従って、水の付着によるティース部2(特に接続部分Cの径方向外端部)での錆の発生、腐食などを防止できる。よって、モータ100の性能低下を抑制できる。
【0048】
<1-5.モータ100の製造方法>
次に、図4から図5Cを参照して、モータ100の製造方法を説明する。図4は、モータ100の製造方法の一例を説明するためのフローチャートである。図5Aは、コイル部302の配置例を示す。図5Bは、接続部分Cの接続前におけるステータコア301の構成例を示す。図5Cは、接続部分Cの接続後におけるステータコア301の構成例を示す。なお、図5Aは、ティース部2及び空芯コイル3を軸方向から見ている。また、図5B及び図5Cは、図1の一点鎖線で囲まれた部分Vに対応する。
【0049】
まず、各々のコアバック片1に絶縁コーティング層10が配置されるとともに、各々のティース部2に絶縁コーティング層20が配置される(ステップS1)。なお、各々のコアバック片1において、絶縁コーティング層10は、本実施形態ではコアバック片1の全ての表面を覆うが、その表面の一部を覆ってもよい。たとえば、絶縁コーティング層10は、コアバック片1の表面のうち、接続部分Cの形成後においてコイル部302が接する領域のみを覆ってもよい。同様に、各々のティース部2において、絶縁コーティング層20は、本実施形態ではティース部2の全ての表面を覆うが、その表面の一部を覆ってもよい。たとえば、絶縁コーティング層20は、ティース部2の表面のうち、接続部分Cの形成後においてコイル部302が接する領域のみを覆ってもよい。
【0050】
各々のティース部2にコイル部302が配置される(ステップS2)。たとえば図5Aに示すように、空芯コイル3にティース部2が挿通される。
【0051】
周方向に隣り合うコアバック片1をティース部2の径方向におけるコアバック片1側の端部を介して周方向に接続する(ステップS3)。たとえば、図5Bに示すように、複数のコアバック片1を周方向に沿って並べ、周方向に隣り合うコアバック片1間にティース部2の径方向外端部を配置する。そして、図5Cに示すように、コアバック片1の第1接続面11にティース部2の第2接続面23が重なって接触し、両者がその外縁部からレーザ溶接される。
【0052】
以上のステップS1からS3により、ステータ300が形成される。
【0053】
次に、ハウジング400の内部にロータ200及びステータ300が収容されて、ステータ300が筒部401の径方向内側面に固定される(ステップS4)。そして、図4の工程が終了する。
【0054】
上述の工程によれば、本実施形態のモータ100の製造方法は、周方向に隣り合うコアバック片1をティース部2の径方向におけるコアバック片1側の端部を介して周方向に接続する接続ステップS3を含む。
【0055】
こうすれば、たとえば径方向に延びるティースを環状のコアバックの径方向側面に接続する構成と比べて、コアバック片1の径方向外端部とティース部2の径方向におけるコアバック片1側の端部との間の間隔をより狭くできる。従って、ステータコア301を小型化できる。よって、ステータ300の径サイズをより小さくでき、モータ100を小型化できる。
【0056】
また、環状のコアバックの径方向内側に径方向に凹む凹部を設けて該凹部にティースの径方向端部を接続する構成と比較して、ステータコア301の強度が低減することを抑制できる。詳細に記載すると、環状のコアバックに凹部を設けることで、コアバックにおいて凹部の径方向外側の領域が、凹部を設けていない領域と比較して径方向の厚みが薄くなる。したがって、径方向の厚みが薄くなる領域を無くして、複数のコアバック片1を周方向に配置することで、強度が弱い領域がなくなるため、ステータコア301の強度が低減することを抑制できる。
【0057】
また、たとえば径方向に延びるティースを環状のコアバックの径方向側面に接続する構成と比べて、複数のコアバック片1をより精度良く環状に配置できる。たとえば、コアバック片1及びティース部2の一方を固定した状態で他方を接続することにより、コアバック片1及びティース部2の配置位置をずらすことなく、両者を接続することができる。従って、複数のコアバック片1をより正円に近い環状に配置することができる。従って、歪を抑えつつステータコア301を小型化できる。たとえば、軸方向から見たステータコア301の形状をより正円に近くできる。よって、ステータ300における磁束密度分布を周方向においてより均等に形成できる。
【0058】
また、上述の工程は、ステータコア301に配置されるコイル部302を有するモータ100の製造方法であり、空芯コイル3にティース部2を挿通する挿通ステップS2をさらに備える。また、接続ステップS3において、周方向に隣り合うコアバック片1は、空芯コイル3が挿通されたティース部2の径方向におけるコアバック片1側の端部を介して周方向に接続される。
【0059】
こうすれば、予め成型された空芯コイル3をティース部2に挿入した後にステータコア301を形成するので、ステータコア301に容易且つ素早くコイル部302を配置できる。従って、モータ100の生産性を向上できる。
【0060】
なお、上述の例示に限定されず、コイル部302は、前述の如く、導線を柱部21に巻き回すことによって、ティース部2に配置されてもよい。この場合、コイル部302の配置は、接続ステップS3の後に実施される。
【0061】
また、上述の工程では、接続ステップS3において、コアバック片1及びティース部2はそれぞれ、電気絶縁性を有する材料を用いて形成された絶縁コーティング層10,20で予め被覆される。
【0062】
こうすれば、予め絶縁コーティング層10,20が被覆されたコアバック片1及びティース部2を接続することによって、ステータコア301を形成できる。つまり、ステータコア301及びコイル部302間を電気的に絶縁するためのインシュレータをステータコア301の形成後に配置しなくもよい。従って、簡易な方法でステータ300を形成できる。
【0063】
<2.実施形態の変形例>
次に、実施形態の第1変形例から第3変形例を説明する。以下では、第1変形例から第3変形例について、上述の実施形態と異なる構成を説明する。また、上述の実施形態及び他の変形例と同様の構成要素には同じ符号を付し、その説明を省略することがある。また、実施形態及びその第1変形例から第3変形例は、特に矛盾が生じない範囲において、互いに組み合わせて実施可能である。
【0064】
<2-1.第1変形例>
図6は、第1変形例に係るステータコア301の要部の構成例を示す断面図である。なお、図6は、図1の破線で囲まれた部分IIに対応する。
【0065】
図6では、少なくとも1つのコアバック片1は、凹部111をさらに有する。凹部111は、第1接続面11に配置され、第2接続面23から第1接続面11に向かう方向に凹む。また、凹部111を有する上述のコアバック片1と接続されるティース部2は、凸部231をさらに有する。凸部231は、第2接続面23に配置され、第2接続面23から第1接続面11に向かう方向に突出する。
【0066】
なお、凹部111及び凸部231の配置は、図6とは逆であってもよい。つまり、少なくとも1つのコアバック片1において、凸部231は、第1接続面11に配置されてもよい。この場合、凸部231は、第1接続面11から第2接続面23に向かう方向に突出する。また、凹部111は、凸部231を有する上述のコアバック片1と接続されるティース部2の第2接続面23に配置されてもよい。この場合、凹部111は、第1接続面11から第2接続面23に向かう方向に凹む。
【0067】
上述のように、第1変形例では、第1接続面11及び第2接続面23の一方面には、凹部111が配置される。凹部111は、第1接続面11及び第2接続面23の他方面から上述の一方面に向かって凹む。なお、凹部111は、本発明の「第1凹部」の一例である。また、上述の他方面には、凸部231が配置される。凸部231は、上述の他方面から上述の一方面に向かって突出し、凹部111に配置される。こうすれば、コアバック片1及びティース部2間を接続する際、凹部111及び凸部231の嵌合構造により両者の位置決めを容易にできる。
【0068】
<2-2.第2変形例>
図7は、第2変形例に係るステータコア301の要部の構成例を示す断面図である。なお、図7は、図1の破線で囲まれた部分IIに対応する。
【0069】
第2変形例では、ティース部2は、凹部241を有する。凹部241は、本発明の「第3凹部」の一例であり、周方向において隣り合うコアバック片1の周方向端部間に配置される。図7では、凹部241は、露出面24に配置される。凹部241は、ティース部2の径方向におけるコアバック片1側の端部から径方向に凹み、ステータコア301の外部に開口する。凹部241は、単数の孔であってもよいし、軸方向に並ぶ複数の孔であってもよい。或いは、凹部241は、軸方向に延びる溝であってもよい。
【0070】
第2変形例によれば、コアバック片1及びティース部2を接続する際、凹部241に治具を取り付けることにより、周方向におけるティース部2の配置位置を精度良く位置決めできる。従って、ステータコア301を精度良く環状に形成できる。
【0071】
<2-3.第3変形例>
図8は、第3変形例に係る筒部401の構成例を示す断面図である。なお、図8は、図1の破線で囲まれた部分IIに対応する。
【0072】
第3変形例では、ハウジング400は、凹部402をさらに有する。凹部402は、本発明の「第2凹部」の一例であり、筒部401の径方向内側面に配置される。凹部402は、径方向外方に凹み、周方向に隣り合うコアバック片1間に向かって径方向に開口する。凹部402は、単数であってもよいし、複数であってもよい。各々の凹部402は、少なくとも1つのティース部2に対して、その径方向外端部と径方向に対向する位置に配置される。
【0073】
こうすれば、ステータコア301の外部に露出するコアバック片1及びティース部2間の接続部分Cの外縁部は、周方向に隣り合うコアバック片1間に形成されるので、凹部402と径方向に対向する。従って、上述の外縁部は、筒部401の径方向内側面に接しない。よって、上述の外縁部が粗くなっていても、ステータコア301を容易に筒部401内に挿入して配置できる。
【0074】
<3.その他>
以上、本発明の実施形態及びその第1変形例から第3変形例を説明した。なお、本発明の範囲は上述の実施形態に限定されない。本発明は、発明の主旨を逸脱しない範囲で上述の実施形態及びその第1変形例から第3変形例に種々の変更を加えて実施することができる。また、上述の実施形態及びその第1変形例から第3変形例で説明した事項は、矛盾が生じない範囲で適宜任意に組み合わせることができる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、コアバックから径方向に延びるティースにコイル部が配置されるモータに有用である。
【符号の説明】
【0076】
100・・・モータ、200・・・ロータ、201・・・シャフト、202・・・ロータコア、203・・・マグネット、300・・・ステータ、301・・・ステータコア、302・・・コイル部、400・・・ハウジング、401・・・筒部、402・・・凹部、1・・・コアバック片、10・・・絶縁コーディング層、11・・・第1接続面、111・・・凹部、12・・・傾斜面、2・・・ティース部、20・・・絶縁コーディング層、21・・・柱部、22・・・アンブレラ部、23・・・第2接続面、231・・・凸部、24・・・露出面、241・・・凹部、3・・・空芯コイル、J・・・中心軸、S・・・隙間、C・・・接続部分
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8