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特開2023-119891スキャンによって変化した歯のエッジ部分を復元する方法及び装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119891
(43)【公開日】2023-08-29
(54)【発明の名称】スキャンによって変化した歯のエッジ部分を復元する方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   A61C 19/04 20060101AFI20230822BHJP
   A61C 13/34 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
A61C19/04 Z
A61C13/34 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022023010
(22)【出願日】2022-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】390011143
【氏名又は名称】株式会社松風
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100183265
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 剣一
(72)【発明者】
【氏名】山本 眞
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 朝
(72)【発明者】
【氏名】井上 智之
【テーマコード(参考)】
4C052
【Fターム(参考)】
4C052AA20
4C052NN02
4C052NN03
4C052NN04
4C052NN15
(57)【要約】
【課題】歯のスキャンデータの品質を向上させる。
【解決手段】本発明に係る方法は、歯のスキャンデータを取得するステップ、歯のエッジ部分のスキャンデータを削除するステップ、複数の板が放射状に配置された第1データをスキャンデータに重ねて配置するステップ、第1データの複数の板によって切断されたスキャンデータの断面のそれぞれにおいて、削除した部分を間に挟んで、スキャンデータの外形ラインを示す第1断面曲線及び第2断面曲線を作成するステップ、第1データの複数の板によって切断された前記スキャンデータの断面のそれぞれにおいて、削除した部分のスキャンデータを補う方向に、第1断面曲線及び第2断面曲線を延長するステップ、第1データの複数の板によって切断されたスキャンデータの断面のそれぞれにおいて延長した第1断面曲線と延長した第2断面曲線とに基づいて、歯のエッジ部分を復元するステップ、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スキャンによって変化した歯のエッジ部分の形態をコンピュータによって復元する方法であって、
歯のスキャンデータを取得するステップ、
前記スキャンデータにおいて、前記歯のエッジ部分のスキャンデータを削除するステップ、
複数の板が放射状に配置された第1データを、前記スキャンデータに重ねて配置するステップ、
前記第1データの前記複数の板によって切断された前記スキャンデータの断面のそれぞれにおいて、前記削除した部分を間に挟んで、前記スキャンデータの外形ラインを示す第1断面曲線及び第2断面曲線を作成するステップ、
前記第1データの前記複数の板によって切断された前記スキャンデータの断面のそれぞれにおいて、前記削除した部分のスキャンデータを補う方向に、前記第1断面曲線及び前記第2断面曲線を延長するステップ、
前記第1データの前記複数の板によって切断された前記スキャンデータの断面のそれぞれにおいて延長した第1断面曲線と延長した第2断面曲線とに基づいて、前記歯のエッジ部分を復元するステップ、
を含む、方法。
【請求項2】
前記歯のエッジ部分を復元するステップは、
前記第1データの前記複数の板によって切断された前記スキャンデータの断面のそれぞれにおいて、前記延長した第1断面曲線と前記延長した第2断面曲線とが交差する交点を算出すること、
前記算出された交点を連結して交差ラインを作成すること、
前記交差ラインに基づいて前記歯のエッジ部分を復元すること、
を有する、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
更に、
前記スキャンデータにおいて、前記削除した部分を囲う境界線を抽出するステップを含み、
前記交差ラインに基づいて前記歯のエッジ部分を復元することは、前記境界線から前記交差ラインまでの形状データを作成すること、を有する、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1断面曲線及び第2断面曲線を延長するステップは、
前記第1データの前記複数の板によって切断された前記スキャンデータの断面のそれぞれにおいて、前記第1断面曲線の終端における前記第1断面曲線の曲率又は曲率の変化率を維持して前記第1断面曲線を延長すること、
前記第1データの前記複数の板によって切断された前記スキャンデータの断面のそれぞれにおいて、前記第2断面曲線の終端における前記第2断面曲線の曲率又は曲率の変化率を維持して前記第2断面曲線を延長すること、
を有する、
請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1データは、前記複数の板が交差する中心軸を有し、
前記第1データを、前記スキャンデータに重ねて配置するステップは、前記第1データの前記中心軸を、前記歯の歯軸方向に沿って配置すること、を有する、
請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1データの前記中心軸を、前記歯の歯軸方向に沿って配置することは、前記歯の歯冠から歯根に向かう方向から見て、前記第1データの前記中心軸を前記歯の中央に配置すること、を有する、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
更に、
複数の板が配列された第2データを、前記スキャンデータに重ねて配置するステップ、
前記第2データの前記複数の板によって切断された前記スキャンデータの断面のそれぞれにおいて、前記削除した部分を間に挟んで、前記スキャンデータの外形ラインを示す第3断面曲線及び第4断面曲線を作成するステップ、
前記第2データの前記複数の板によって切断された前記スキャンデータの断面のそれぞれにおいて、前記削除した部分のスキャンデータを補う方向に、前記第3断面曲線及び前記第4断面曲線を延長するステップ、
を含み、
前記歯のエッジ部分を復元するステップは、前記延長した第1断面曲線、前記延長した第2断面曲線、延長した第3断面曲線及び延長した第4断面曲線に基づいて、前記歯のエッジ部分を復元する、
請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記歯のエッジ部分を復元するステップは、
前記第1データの前記複数の板によって切断された前記スキャンデータの断面のそれぞれにおいて、前記延長した第1断面曲線と前記延長した第2断面曲線とが交差する第1交点を算出すること、
前記第2データの前記複数の板によって切断された前記スキャンデータの断面のそれぞれにおいて、前記延長した第3断面曲線と前記延長した第4断面曲線とが交差する第2交点を算出すること、
前記算出された第1交点及び第2交点に基づいて交差ラインを作成すること、
前記交差ラインに基づいて前記歯のエッジ部分を復元すること、
を有する、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
更に、
前記スキャンデータにおいて、前記削除した部分を囲う境界線を抽出するステップを含み、
前記交差ラインに基づいて前記歯のエッジ部分を復元することは、前記境界線から前記交差ラインまでの形状データを作成すること、を有する、
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1データは、前記複数の板が交差する中心軸を有し、
前記第1データを、前記スキャンデータに重ねて配置するステップは、前記中心軸が前記歯の歯軸方向に沿うように前記第1データを配置すること、を有し、
前記第2データを、前記スキャンデータに重ねて配置するステップは、前記複数の板の配列方向と前記歯の歯軸方向とが交差するように前記第2データを配置すること、を有する、
請求項7~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第2データにおける前記複数の板は、等間隔で配列されている、
請求項7~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
更に、
前記第2データにおける前記複数の板の配列される第1方向と異なる第2方向に沿って複数の板が配列された第3データを、前記スキャンデータに重ねて配置するステップ、
前記第3データの前記複数の板によって切断された前記スキャンデータの断面のそれぞれにおいて、前記削除した部分を間に挟んで、前記スキャンデータの外形ラインを示す第5断面曲線及び第6断面曲線を作成するステップ、
前記第3データの前記複数の板によって切断された前記スキャンデータの断面のそれぞれにおいて、前記削除した部分のスキャンデータを補う方向に、前記第5断面曲線及び前記第6断面曲線を延長するステップ、
を含み、
前記歯のエッジ部分を復元するステップは、前記延長した第1断面曲線、前記延長した第2断面曲線、延長した第3断面曲線、延長した第4断面曲線、延長した第5断面曲線及び延長した第6断面曲線に基づいて、前記歯のエッジ部分を復元すること、を有する、
請求項7~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記第3データにおける前記複数の板は、等間隔で配列されている、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1データにおける前記複数の板の数は、60枚以上3500枚以下である、
請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記第1データにおける前記複数の板は、等間隔で配置される、
請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記歯のエッジ部分は、支台歯、窩洞、維持溝又は歯列のエッジ部分のうち少なくとも1つを含む、
請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
コンピュータに請求項1~16のいずれか一項に記載の方法を実行させるためのプログラム。
【請求項18】
コンピュータに請求項1~16のいずれか一項に記載の方法を実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項19】
スキャンによって変化した歯のエッジ部分の形態を復元する装置であって、
1つ又は複数のプロセッサ、
前記1つ又は複数のプロセッサによって実行可能な命令を記憶したメモリ、
を有し、
前記命令は、
歯のスキャンデータを取得するステップ、
前記スキャンデータにおいて、前記歯のエッジ部分のスキャンデータを削除するステップ、
複数の板が放射状に配置された第1データを、前記スキャンデータに重ねて配置するステップ、
前記第1データの前記複数の板によって切断された前記スキャンデータの断面のそれぞれにおいて、前記削除した部分を間に挟んで、前記スキャンデータの外形ラインを示す第1断面曲線及び第2断面曲線を作成するステップ、
前記第1データの前記複数の板によって切断された前記スキャンデータの断面のそれぞれにおいて、前記削除した部分のスキャンデータを補う方向に、前記第1断面曲線及び前記第2断面曲線を延長するステップ、
前記第1データの前記複数の板によって切断された前記スキャンデータの断面のそれぞれにおいて延長した第1断面曲線と延長した第2断面曲線とに基づいて、前記歯のエッジ部分を復元するステップ、
を含む、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スキャンによって変化した歯のエッジ部分を復元する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、スキャンによって変化した支台歯形態を推定復元する方法が開示されている。特許文献1に記載の方法は、支台歯のエッジ部分の仮フィニュッシュラインを削除し、削除した部分において歯冠側仮フィニッシュライン及び歯冠側仮フィニッシュラインを延長している。また、特許文献1に記載の方法は、延長した歯冠側仮フィニッシュラインと延長した歯根側仮フィニッシュラインに基づいて、削除したスキャンデータのエッジ部分よりも外側に形成されるエッジ部分のフィニッシュラインを推定復元している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-080839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の方法においては、歯のスキャンデータの品質を向上させるといった点で未だ改善の余地がある。
【0005】
本発明は、歯のスキャンデータの品質を向上できる方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る方法は、
スキャンによって変化した歯のエッジ部分の形態をコンピュータによって復元する方法であって、
歯のスキャンデータを取得するステップ、
前記スキャンデータにおいて、前記歯のエッジ部分のスキャンデータを削除するステップ、
複数の板が放射状に配置された第1データを、前記スキャンデータに重ねて配置するステップ、
前記第1データの前記複数の板によって切断された前記スキャンデータの断面のそれぞれにおいて、前記削除した部分を間に挟んで、前記スキャンデータの外形ラインを示す第1断面曲線及び第2断面曲線を作成するステップ、
前記第1データの前記複数の板によって切断された前記スキャンデータの断面のそれぞれにおいて、前記削除した部分のスキャンデータを補う方向に、前記第1断面曲線及び前記第2断面曲線を延長するステップ、
前記第1データの前記複数の板によって切断された前記スキャンデータの断面のそれぞれにおいて延長した第1断面曲線と延長した第2断面曲線とに基づいて、前記歯のエッジ部分を復元するステップ、
を含む。
【0007】
本発明の一態様に係る装置は、
スキャンによって変化した歯のエッジ部分の形態を復元する装置であって、
1つ又は複数のプロセッサ、
前記1つ又は複数のプロセッサによって実行可能な命令を記憶したメモリ、
を有し、
前記命令は、
歯のスキャンデータを取得するステップ、
前記スキャンデータにおいて、前記歯のエッジ部分のスキャンデータを削除するステップ、
複数の板が放射状に配置された第1データを、前記スキャンデータに重ねて配置するステップ、
前記第1データの前記複数の板によって切断された前記スキャンデータの断面のそれぞれにおいて、前記削除した部分を間に挟んで、前記スキャンデータの外形ラインを示す第1断面曲線及び第2断面曲線を作成するステップ、
前記第1データの前記複数の板によって切断された前記スキャンデータの断面のそれぞれにおいて、前記削除した部分のスキャンデータを補う方向に、前記第1断面曲線及び前記第2断面曲線を延長するステップ、
前記第1データの前記複数の板によって切断された前記スキャンデータの断面のそれぞれにおいて延長した第1断面曲線と延長した第2断面曲線とに基づいて、前記歯のエッジ部分を復元するステップ、
を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る方法及び装置によれば、歯のスキャンデータの品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態1に係るスキャンによって変化した歯のエッジ部分を復元する方法のフローチャート
図2】延長した第1断面曲線と延長した第2断面曲線とに基づいて、歯のエッジ部分を復元する工程を説明するためのフローチャート
図3A】実物の歯の一例を示す模式図
図3B】復元前の支台歯のスキャンデータの一例を示す概略図
図4】スキャンデータの歯のエッジ部分を削除する工程を示す概略図
図5】境界線を抽出する工程を示す概略図
図6A】複数の板が放射状に配置された第1データの一例を示す平面図
図6B】複数の板が放射状に配置された第1データの一例を示す側面図
図7A】第1データをスキャンデータに重ねて配置する工程を示す概略図
図7B】第1データをスキャンデータに重ねて配置する工程を示す概略図
図8】第1断面曲線及び第2断面曲線を作成する工程を示す概略図
図9】第1断面曲線及び第2断面曲線を延長する工程を示す概略図
図10】交差ラインを示す概略図
図11】境界線と交差ラインとに基づいて復元されたエッジ部分を示す概略図
図12】復元後の支台歯のスキャンデータの一例を示す概略図
図13A】実物の歯のエッジ部分の一例を示す模式図
図13B】復元前の歯のエッジ部分の一例を示す模式図
図13C】歯のエッジ部分を削除する工程を説明する模式図
図13D】境界線を抽出する工程を説明する模式図
図13E】第1断面曲線及び第2断面曲線を作成する工程を説明する模式図
図13F】第1断面曲線及び第2断面曲線を延長する工程を説明する模式図
図13G】第1断面曲線及び第2断面曲線の交点を算出する工程を説明する模式図
図13H】歯のエッジ部分を復元する工程を説明する模式図
図13I】復元後の歯のエッジ部分の一例を示す模式図
図14】復元前と復元後の歯のエッジ部分を説明するための模式図
図15】本発明の実施の形態1に係るスキャンによって変化した歯のエッジ部分を復元する装置の構成を示す概略ブロック図
図16A】復元前の窩洞形成歯のスキャンデータの一例を示す概略図
図16B】復元後の窩洞形成歯のスキャンデータの一例を示す概略図
図17A】復元前の維持溝を有する歯のスキャンデータの一例を示す概略図
図17B】復元後の維持溝を有する歯のスキャンデータの一例を示す概略図
図18A】復元前の歯列のスキャンデータの一例を示す概略図
図18B図18Aに示すスキャンデータのZ1部分の概略拡大図
図18C】復元後の歯列のスキャンデータの一例を示す概略図
図18D図18Cに示すスキャンデータのZ2部分の概略拡大図
図18E図18Dに示すA-A線で切断した概略断面図
図18F図18Eに示すZ3部分の概略拡大図
図19】本発明の実施の形態2に係るスキャンによって変化した歯のエッジ部分を復元する方法のフローチャート
図20】延長した第1断面曲線、延長した第2断面曲線、延長した第3断面曲線及び延長した第4断面曲線に基づいて、歯のエッジ部分を復元する工程を説明するためのフローチャート
図21】復元前の窩洞形成歯のスキャンデータの一例を示す概略図
図22】第1データをスキャンデータに重ねて配置する工程を示す概略図
図23】複数の板が配列された第2データの一例を示す斜視図
図24】第2データをスキャンデータに重ねて配置する工程を示す概略図
図25】第3断面曲線及び延長した第4断面曲線を作成する工程を示す概略図
図26A】本発明の実施の形態3に係るスキャンによって変化した歯のエッジ部分を復元する方法のフローチャート
図26B】本発明の実施の形態3に係るスキャンによって変化した歯のエッジ部分を復元する方法のフローチャート
図27】延長した第1断面曲線、延長した第2断面曲線、延長した第3断面曲線、延長した第4断面曲線、延長した第5断面曲線及び延長した第6断面曲線に基づいて、歯のエッジ部分を復元する工程を説明するためのフローチャート
図28】第3データをスキャンデータに重ねて配置する工程を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0010】
(本発明に至った経緯)
特許文献1では、支台歯又は支台歯模型をスキャンして得たスキャンデータから、支台歯又は支台歯模型が本来有するフィニッシュライン近傍の形状とフィニッシュラインを推定復元する方法が開示されている。
【0011】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、支台歯又は支台歯模型のエッジ部分の推定復元に適用できるが、複雑な形状を有する歯のエッジ部分を推定復元することに適していない。例えば、窩洞形成歯や維持溝を有する歯においても、スキャンによって窩洞のマージン又は維持溝のマージンが、実物の形状よりも丸められてしまう。特許文献1に記載の方法では、窩洞のマージン又は維持溝のマージンのような複雑な形状のエッジ部分のスキャンデータを実物により近い形態に復元することが難しいという問題がある。
【0012】
また、特許文献1に記載の方法では、推定復元を行う処理時間が長くなりやすく、短時間で歯のエッジ部分の形態を復元することができないという問題もある。
【0013】
そこで、本発明者らは、これらの問題を解決すべく、以下の発明に至った。
【0014】
本発明の第1態様に係る方法は、
スキャンによって変化した歯のエッジ部分の形態をコンピュータによって復元する方法であって、
歯のスキャンデータを取得するステップ、
前記スキャンデータにおいて、前記歯のエッジ部分のスキャンデータを削除するステップ、
複数の板が放射状に配置された第1データを、前記スキャンデータに重ねて配置するステップ、
前記第1データの前記複数の板によって切断された前記スキャンデータの断面のそれぞれにおいて、前記削除した部分を間に挟んで、前記スキャンデータの外形ラインを示す第1断面曲線及び第2断面曲線を作成するステップ、
前記第1データの前記複数の板によって切断された前記スキャンデータの断面のそれぞれにおいて、前記削除した部分のスキャンデータを補う方向に、前記第1断面曲線及び前記第2断面曲線を延長するステップ、
前記第1データの前記複数の板によって切断された前記スキャンデータの断面のそれぞれにおいて延長した第1断面曲線と延長した第2断面曲線とに基づいて、前記歯のエッジ部分を復元するステップ、
を含む。
【0015】
本発明の第2態様に係る方法において、前記歯のエッジ部分を復元するステップは、
前記第1データの前記複数の板によって切断された前記スキャンデータの断面のそれぞれにおいて、前記延長した第1断面曲線と前記延長した第2断面曲線とが交差する交点を算出すること、
前記算出された交点を連結して交差ラインを作成すること、
前記交差ラインに基づいて前記歯のエッジ部分を復元すること、
を有してもよい。
【0016】
本発明の第3態様に係る方法は、更に、
前記スキャンデータにおいて、前記削除した部分を囲う境界線を抽出するステップを含み、
前記交差ラインに基づいて前記歯のエッジ部分を復元することは、前記境界線から前記交差ラインまでの形状データを作成すること、を有していてもよい。
【0017】
本発明の第4態様に係る方法において、前記第1断面曲線及び第2断面曲線を延長するステップは、
前記第1データの前記複数の板によって切断された前記スキャンデータの断面のそれぞれにおいて、前記第1断面曲線の終端における前記第1断面曲線の曲率又は曲率の変化率を維持して前記第1断面曲線を延長すること、
前記第1データの前記複数の板によって切断された前記スキャンデータの断面のそれぞれにおいて、前記第2断面曲線の終端における前記第2断面曲線の曲率又は曲率の変化率を維持して前記第2断面曲線を延長すること、
を有していてもよい。
【0018】
本発明の第5態様に係る方法において、前記第1データは、前記複数の板が交差する中心軸を有し、
前記第1データを、前記スキャンデータに重ねて配置するステップは、前記第1データの前記中心軸を、前記歯の歯軸方向に沿って配置すること、を有していてもよい。
【0019】
本発明の第6態様に係る方法において、前記第1データの前記中心軸を、前記歯の歯軸方向に沿って配置することは、前記歯の歯冠から歯根に向かう方向から見て、前記第1データの前記中心軸を前記歯の中央に配置すること、を有していてもよい。
【0020】
本発明の第7態様に係る方法は、更に、
複数の板が配列された第2データを、前記スキャンデータに重ねて配置するステップ、
前記第2データの前記複数の板によって切断された前記スキャンデータの断面のそれぞれにおいて、前記削除した部分を間に挟んで、前記スキャンデータの外形ラインを示す第3断面曲線及び第4断面曲線を作成するステップ、
前記第2データの前記複数の板によって切断された前記スキャンデータの断面のそれぞれにおいて、前記削除した部分のスキャンデータを補う方向に、前記第3断面曲線及び前記第4断面曲線を延長するステップ、
を含み、
前記歯のエッジ部分を復元するステップは、前記延長した第1断面曲線、前記延長した第2断面曲線、延長した第3断面曲線及び延長した第4断面曲線に基づいて、前記歯のエッジ部分を復元してもよい。
【0021】
本発明の第8態様に係る方法において、前記歯のエッジ部分を復元するステップは、
前記第1データの前記複数の板によって切断された前記スキャンデータの断面のそれぞれにおいて、前記延長した第1断面曲線と前記延長した第2断面曲線とが交差する第1交点を算出すること、
前記第2データの前記複数の板によって切断された前記スキャンデータの断面のそれぞれにおいて、前記延長した第3断面曲線と前記延長した第4断面曲線とが交差する第2交点を算出すること、
前記算出された第1交点及び第2交点に基づいて交差ラインを作成すること、
前記交差ラインに基づいて前記歯のエッジ部分を復元すること、
を有していてもよい。
【0022】
本発明の第9態様に係る方法は、更に、
前記スキャンデータにおいて、前記削除した部分を囲う境界線を抽出するステップを含み、
前記交差ラインに基づいて前記歯のエッジ部分を復元することは、前記境界線から前記交差ラインまでの形状データを作成すること、を有していてもよい。
【0023】
本発明の第10態様に係る方法において、前記第1データは、前記複数の板が交差する中心軸を有し、
前記第1データを、前記スキャンデータに重ねて配置するステップは、前記中心軸が前記歯の歯軸方向に沿うように前記第1データを配置すること、を有し、
前記第2データを、前記スキャンデータに重ねて配置するステップは、前記複数の板の配列方向と前記歯の歯軸方向とが交差するように前記第2データを配置すること、を有していてもよい。
【0024】
本発明の第11態様に係る方法において、前記第2データにおける前記複数の板は、等間隔で配列されていてもよい。
【0025】
本発明の第12態様に係る方法は、更に、
前記第2データにおける前記複数の板の配列される第1方向と異なる第2方向に沿って複数の板が配列された第3データを、前記スキャンデータに重ねて配置するステップ、
前記第3データの前記複数の板によって切断された前記スキャンデータの断面のそれぞれにおいて、前記削除した部分を間に挟んで、前記スキャンデータの外形ラインを示す第5断面曲線及び第6断面曲線を作成するステップ、
前記第3データの前記複数の板によって切断された前記スキャンデータの断面のそれぞれにおいて、前記削除した部分のスキャンデータを補う方向に、前記第5断面曲線及び前記第6断面曲線を延長するステップ、
を含み、
前記歯のエッジ部分を復元するステップは、前記延長した第1断面曲線、前記延長した第2断面曲線、延長した第3断面曲線、延長した第4断面曲線、延長した第5断面曲線及び延長した第6断面曲線に基づいて、前記歯のエッジ部分を復元すること、を有していてもよい。
【0026】
本発明の第13態様に係る方法において、前記第3データにおける前記複数の板は、等間隔で配列されていてもよい。
【0027】
本発明の第14態様に係る方法において、前記第1データにおける前記複数の板の数は、60枚以上3500枚以下であってもよい。
【0028】
本発明の第15態様に係る方法において、前記第1データにおける前記複数の板は、等間隔で配置されてもよい。
【0029】
本発明の第16態様に係る方法において、前記歯のエッジ部分は、支台歯、窩洞、維持溝又は歯列のエッジ部分のうち少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0030】
本発明の第17態様に係るプログラムは、コンピュータに第1~16態様のいずれか一つの態様の方法を実行させる。
【0031】
本発明の第18態様に係るコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、コンピュータに第1~16態様のいずれか一つの態様の方法を実行させるためのプログラムを記録する。
【0032】
本発明の第19態様に係る装置は、
スキャンによって変化した歯のエッジ部分の形態を復元する装置であって、
1つ又は複数のプロセッサ、
前記1つ又は複数のプロセッサによって実行可能な命令を記憶したメモリ、
を有し、
前記命令は、
歯のスキャンデータを取得するステップ、
前記スキャンデータにおいて、前記歯のエッジ部分のスキャンデータを削除するステップ、
複数の板が放射状に配置された第1データを、前記スキャンデータに重ねて配置するステップ、
前記第1データの前記複数の板によって切断された前記スキャンデータの断面のそれぞれにおいて、前記削除した部分を間に挟んで、前記スキャンデータの外形ラインを示す第1断面曲線及び第2断面曲線を作成するステップ、
前記第1データの前記複数の板によって切断された前記スキャンデータの断面のそれぞれにおいて、前記削除した部分のスキャンデータを補う方向に、前記第1断面曲線及び前記第2断面曲線を延長するステップ、
前記第1データの前記複数の板によって切断された前記スキャンデータの断面のそれぞれにおいて延長した第1断面曲線と延長した第2断面曲線とに基づいて、前記歯のエッジ部分を復元するステップ、
を含む。
【0033】
以下、本発明について、図面を参照しながら説明する。以下の全ての図において、同一又は相当部分には、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0034】
(実施の形態1)
[スキャンによって変化した歯のエッジ部分を復元する方法]
図1は、本発明の実施の形態1に係るスキャンによって変化した歯のエッジ部分を復元する方法のフローチャートである。図2は、延長した第1断面曲線と延長した第2断面曲線とに基づいて、歯のエッジ部分を復元する工程を説明するためのフローチャートである。なお、図1及び図2に示すステップは、コンピュータによって実行される。図3A図12は、図1及び図2に示す各工程を説明するための概略図である。なお、実施の形態1では、支台歯のエッジ部分を復元する例について説明する。
【0035】
図1に示すように、ステップST1では、歯のスキャンデータを取得する。例えば、ステップST1では、スキャン装置によって歯をスキャンし、歯のスキャンデータを取得する。例えば、スキャン装置は、患者の口腔内をスキャンする口腔内スキャナ、又は歯の模型をスキャンするデスクトップスキャナを用いることができる。なお、歯をスキャンするとは、実物の歯をスキャンすること、又は、歯の模型をスキャンすることを含む。
【0036】
例えば、歯のスキャンデータは、口腔内スキャナによって患者の口腔内を直接スキャンすることによって取得されてもよい。また、支台歯模型の場合、歯のスキャンデータは、ステージに支台歯模型を設置し、支台歯模型をデスクトップスキャナによって取得されてもよい。あるいは、歯のスキャンデータは、患者の口腔外から口腔内スキャナを用いて口腔内をスキャンすることによって取得されてもよい。
【0037】
また、歯のスキャンデータは、通信装置を用いて外部装置から受信することによって取得してもよい。
【0038】
ステップST1で得られるスキャンデータは、点の集合体であり、各点の位置情報である。スキャンデータは、点群データ、または隣り合う三点で構成される三角形を面としたときの面の裏表および面の法線ベクトル情報を加えたSTLデータ、または隣り合う点を結んだ三角形で構成されるワイヤーフレームデータ、またはワイヤーフレームの各三角形に面を張ったポリゴンデータ等の形式で出力されることが多い。歯科においては中でもSTLデータが最もよく用いられており、異なるメーカー間でも互換性の高い共通の書式データとして普及が進んでいる。
【0039】
図3Aは、実物の歯の一例を示す模式図である。図3Bは、復元前の支台歯のスキャンデータの一例を示す概略図である。図3Bは、図3Aに示す実物の歯100をスキャン装置によってスキャンして得たスキャンデータ10である。図3A及び図3Bに示すように、スキャンデータ10においては、エッジ部分11が実物の歯100のエッジ部分101と比べて丸くなっている。
【0040】
図1に戻って、ステップST2では、スキャンデータ10において歯のエッジ部分11を削除する。例えば、ステップST2では、ユーザから入力された情報に基づいて歯のエッジ部分11を削除する。具体的には、ユーザは入力インタフェースによって、エッジ部分11の領域を入力する。ユーザにより入力された情報に基づいて、スキャンデータ10からエッジ部分11を特定し、削除する。
【0041】
あるいは、ステップST2では、スキャンデータ10におけるエッジ部分11を自動で検出し、検出したエッジ部分11を削除してもよい。例えば、エッジ部分11は、スキャンデータ10の曲率又は曲率の変化に基づいて検出されてもよい。
【0042】
図4は、スキャンデータの歯のエッジ部分を削除する工程を示す概略図である。図4に示すように、ステップST2では、スキャンデータ10のエッジ部分11が削除されている。具体的には、スキャンデータ10において、エッジ部分11が削除され、削除した部分12と残っている部分13が形成される。図4に示す例では、エッジ部分11は環状に形成されているため、削除した部分12は環形状を有している。
【0043】
図1に戻って、ステップST3では、スキャンデータ10において、削除した部分12を囲う境界線を抽出する。例えば、ステップST3では、スキャンデータ10において、削除した部分12と残っている部分13との境界を検出することによって、境界線を抽出する。
【0044】
図5は、境界線を抽出する工程を示す概略図である。図5に示すように、ステップST3では、スキャンデータ10において、削除した部分12を囲う境界線BL1を抽出する。境界線BL1は、削除した部分12を画定するラインである。境界線BL1は、歯の外形、即ち、輪郭を表す部分において、削除した部分12と残っている部分13との境界を示す。
【0045】
支台歯のスキャンデータ10において、削除した部分12は環形状を有するため、境界線BL1は、第1境界線BL11と第2境界線BL12とを含む。第1境界線BL11と第2境界線BL12とは、削除した部分12を間に挟んで形成される。
【0046】
第1境界線BL11は、削除した部分12の内側の境界を画定するラインであり、第2境界線BL12は、削除した部分12の外側の境界を画定するラインである。言い換えると、第1境界線BL11は、削除した部分12に対して歯冠側に形成されるラインであり、第2境界線BL12は、削除した部分12に対して第1境界線BL11よりも歯根側に形成されるラインである。
【0047】
なお、境界線BLの抽出は、スキャンデータ10がSTLデータである場合、ポリサーフェスデータに変換して行ってもよい。ポリサーフェスデータに変換することによって、境界線BL1を抽出しやすくなる。
【0048】
図1に戻って、ステップST4では、複数の板が放射状に配置された第1データをスキャンデータ10に重ねて配置する。
【0049】
図6A及び図6Bは、複数の板が放射状に配置された第1データの一例を示す。図6Aは第1データの平面図を示し、図6Bは第1データの側面図を示す。図6A及び図6Bに示すように、第1データ20は、複数の板21を含む。複数の板21は、放射状に配置されている。複数の板21は、第1データ20の中心軸CX1で交差しており、等間隔で配置されている。複数の板21は、同じ形状及び同じ大きさを有している。複数の板21のそれぞれは、矩形状を有している。
【0050】
第1データ20は、スキャンデータ10を複数の板21のそれぞれで切断し、スキャンデータ10の断面データを取得するために用いられる。第1データ20を用いて取得したスキャンデータ10の断面データに基づいて、後述する第1断面曲線及び第2断面曲線を作成する。
【0051】
例えば、複数の板21の数は、60枚以上3500枚以下である。好ましくは、複数の板21の数は、90枚以上600枚以下である。これにより、歯のエッジ部分11をより実物に近づけて復元することができる。また、複数の板21の間隔は、1μm以上400μm以下である。
【0052】
図6Aに示すように、第1データ20は、平面視において円形を有する。図6Bに示すように、第1データ20は、側面視において矩形状を有する。なお、第1データ20の形状及び寸法は、スキャンデータ10全体に重ねて配置できるように設計される。
【0053】
図7A及び図7Bは、第1データをスキャンデータに重ねて配置する工程を示す概略図である。図7Aは第1データをスキャンデータに重ねて配置する工程を平面から見た図を示し、図7Bは第1データをスキャンデータに重ねて配置する工程を側面から見た図を示す。図7A及び図7Bに示すように、ステップST4では、スキャンデータ10全体を包含するように第1データ20をスキャンデータ10に重ねて配置する。例えば、ステップST4では、第1データ20の中心軸CX1をスキャンデータ10の歯の歯軸方向に沿って配置する。また、スキャンデータ10を平面視、即ち、歯の歯冠から歯根に向かう方向から見て、第1データ20の中心軸CX1をスキャンデータ10の歯の中央に配置する。
【0054】
図1に戻って、ステップST5では、第1データ20の複数の板21によって切断されたスキャンデータ10の断面のそれぞれにおいて、削除した部分12を間に挟んで、スキャンデータ10の外形ラインを示す第1断面曲線及び第2断面曲線を作成する。
【0055】
第1データ20は、スキャンデータ10に対して貫通して配置されている。このため、スキャンデータ10を第1データ20の複数の板21によって切断し、スキャンデータ10の断面データを取得することができる。
【0056】
図8は、第1断面曲線及び第2断面曲線を作成する工程を示す概略図である。図8に示すように、ステップST5では、スキャンデータ10において複数の板21によって切断された各断面における歯の外形ラインを抽出し、外形ラインに基づいて第1断面曲線DL1及び第2断面曲線DL2を作成する。これにより、スキャンデータ10の断面曲線データ30を取得する。断面曲線データ30は、各断面において作成された第1断面曲線DL1及び第2断面曲線DL2によって形成されている。
【0057】
歯の外形ラインとは、スキャンデータ10の歯の輪郭を示す線である。スキャンデータ10において、削除した部分12には外形ラインが存在しない。このため、削除した部分12は、断面曲線が作成されない。よって、スキャンデータ10の断面においては、削除した部分12を間に挟んで、第1断面曲線DL1と第2断面曲線DL2とが作成される。
【0058】
図8に示す例では、第1断面曲線DL1は削除した部分12に対して歯冠側に作成されるラインであり、第2断面曲線DL2は削除した部分12に対して歯根側に作成されるラインである。
【0059】
図1に戻って、ステップST6では、削除した部分12のスキャンデータ10を補う方向に、第1断面曲線DL1及び第2断面曲線DL2を延長する。
【0060】
図9は、第1断面曲線及び第2断面曲線を延長する工程を示す概略図である。図9に示すように、ステップST6では、スキャンデータ10の断面曲線データ30において、削除した部分12のスキャンデータ10を補う方向に、第1断面曲線DL1及び第2断面曲線DL2を延長する。
【0061】
例えば、第1断面曲線DL1は、削除した部分12に接続される第1断面曲線DL1の終端の曲率又は曲率の変化を維持して延長される。第2断面曲線DL2は、削除した部分12に接続される第2断面曲線DL2の終端の曲率又は曲率の変化を維持して延長される。例えば、第1断面曲線DL1の終端とは、削除した部分12側に位置する端部であって、第1断面曲線DL1と第1境界線BL11とが交差する点である。第2断面曲線DL2の終端とは、削除した部分12側に位置する端部であって、第2断面曲線DL2と第2境界線BL12とが交差する点である。
【0062】
例えば、第1断面曲線DL1は、第1断面曲線DL1の終端から0.5mm以上1.0mm以下で延長される。好ましくは、第1断面曲線DL1は、第1断面曲線DL1の終端から0.64mmで延長される。第2断面曲線DL2は、第2断面曲線DL2の終端から0.5mm以上1.0mm以下で延長される。好ましくは、第2断面曲線DL2は、第2断面曲線DL2の終端から0.64mmで延長される。
【0063】
図1に戻って、ステップST7では、延長した第1断面曲線DL1と延長した第2断面曲線DL2とに基づいて、歯のエッジ部分11を復元する。ステップST7については図2を用いて説明する。
【0064】
図2に示すように、ステップST11では、第1データ20の複数の板21によって切断されたスキャンデータ10の断面のそれぞれにおいて、延長した第1断面曲線DL1と延長した第2断面曲線DL2とが交差する交点を算出する。
【0065】
ステップST6において延長した第1断面曲線DL1と延長した第2断面曲線DL2とは、削除した部分12において互いに交差する。ステップST11では、各断面において、延長した第1断面曲線DL1と延長した第2断面曲線DL2との交点を算出する。
【0066】
ステップST12では、算出された交点を連結して交差ラインを作成する。ステップST12では、各断面において算出された交点を3次元的に連結して交差ラインを作成する。
【0067】
図10は、交差ラインを示す概略図である。図10に示すように、各断面において算出された交点を3次元的に連結することによって閉じた交差ラインCL1が作成される。
【0068】
図2に戻って、ステップST13では、交差ラインCL1に基づいて歯のエッジ部分11を復元する。具体的には、ステップST13は、境界線BL1から交差ラインCL1までの形状データを作成するステップST14を有する。
【0069】
ステップST14について図11を用いて説明する。図11は、境界線と交差ラインとに基づいて復元されたエッジ部分を示す概略図である。図11に示すように、ステップST14では、境界線BL1から交差ラインCL1までの形状データを作成する。具体的には、第1境界線BL11から交差ラインCL1までの形状データと、第2境界線BL12から交差ラインCL1までの形状データと、を作成する。これにより、削除した部分12にエッジ部分14を復元することができる。
【0070】
例えば、境界線BL1から交差ラインCL1までの形状データの作成においては、境界線BL1から交差ラインCL1までの形状を定義する輪郭曲線を通ってフィットする形状データを作成してもよい。または、境界線BL1から交差ラインCL1までの形状データの作成においては、各断面において、延長した第1断面曲線DL1及び延長した第2断面曲線DL2に沿って、境界線BL1から交差ラインCL1までの形状データを作成してもよい。あるいは、各断面において境界線BL1と交差ラインCL1との間の距離が最も短くなるように形状データを作成してもよい。なお、形状データの作成は、これらに限定されず、実物のエッジ部分101に近づけて形状データを作成可能な任意の方法で行われてもよい。
【0071】
図12は、復元後の支台歯のスキャンデータの一例を示す概略図である。図12に示すように、復元後のスキャンデータ10のエッジ部分14は、修復前のエッジ部分11に比べてシャープな形状になっており、実物により近い形態になっている。
【0072】
復元したエッジ部分14をスキャンデータ10の削除した部分12に結合させて、修復後のエッジ部分14を有するスキャンデータ10を取得することができる。
【0073】
なお、復元したエッジ部分14がポリサーフェスデータである場合、復元したエッジ部分14をメッシュデータに変換した後、スキャンデータ10の削除した部分12にマッチングさせ、結合してもよい。
【0074】
さらに、図13A図13Iを用いて、歯のエッジ部分の復元の様子について説明する。図13A図13Iは、歯のエッジ部分を復元する一連の工程を示す模式図である。図13A図13Iは、上述したスキャンによって変化した歯のエッジ部分を復元する方法によってエッジ部分が復元される一連の工程の2次元のイメージ図である。
【0075】
図13Aは、実物の歯のエッジ部分の一例を示す模式図である。図13Aに示す実物の歯100のエッジ部分101をスキャン装置によってスキャンすることによって、スキャンデータを取得する。
【0076】
図13Bは、図13Aに示す実物の歯のエッジ部分をスキャンしたスキャンデータであって、復元前の歯のスキャンデータを示す模式図である。図13Bに示すように、復元前の歯のスキャンデータ10において、エッジ部分11は図13Aに示す実物の歯100のエッジ部分101よりも丸くなっている。
【0077】
図13Cは、スキャンデータからエッジ部分を削除する工程を説明する模式図であり。図13Cに示すように、スキャンデータ10のエッジ部分11が削除される。スキャンデータ10において、エッジ部分11のスキャンデータを削除した部分12が設けられる。
【0078】
図13Dは、境界線を抽出する工程を説明する模式図である。図13Dに示すように、スキャンデータ10において、削除した部分12と残っている部分13との境界を検出することによって、境界線BL1が抽出される。具体的には、第1境界線BL11と第2境界線BL12とが、削除した部分12を間に挟んで抽出される。なお、境界線BL1は紙面方向に延びている。
【0079】
図13Eは、第1断面曲線及び第2断面曲線を作成する工程を説明する模式図である。図13Eでは、第1データ20をスキャンデータ10に配置することによって、第1データ20の複数の板21によって切断されたスキャンデータ10の断面のそれぞれにおいて、第1断面曲線DL1及び第2断面曲線DL2が作成される。具体的には、第1データ20の複数の板21によって切断されたスキャンデータ10の断面のそれぞれにおいて、削除した部分12を間に挟んで、スキャンデータ10の外形ラインを示す第1断面曲線DL1及び第2断面曲線DL2が作成される。スキャンデータ10の外形ラインは、各断面において残っている部分13の輪郭線である。
【0080】
図13Fは、第1断面曲線及び第2断面曲線を延長する工程を説明する模式図である。図13Fに示すように、削除した部分12において、削除した部分12のスキャンデータ10を補う方向に第1断面曲線DL1及び第2断面曲線DL2が延長される。
【0081】
例えば、第1データ20の複数の板21によって切断されたスキャンデータ10の断面のそれぞれにおいて、第1断面曲線DL1と第1境界線BL11とが交差する点における第1断面曲線DL1の曲率又は曲率の変化率を維持して、第1断面曲線DL1が延長される。また、第1データ20の複数の板21によって切断されたスキャンデータ10の断面のそれぞれにおいて、第2断面曲線DL2と第2境界線BL12とが交差する点における第2断面曲線DL2の曲率又は曲率の変化率を維持して、第2断面曲線DL2が延長される。
【0082】
図13Gは、第1断面曲線及び第2断面曲線の交点を算出する工程を説明する模式図である。図13Gに示すように、各断面において、延長した第1断面曲線DL1と延長した第2断面曲線DL2とが交差する交点P1が算出される。
【0083】
各断面において算出された交点P1が3次元的に連結されることによって、交差ラインCL1が作成される。交差ラインCL1は、復元後のエッジに相当する。
【0084】
図13Hは、歯のエッジ部分を復元する工程を説明する模式図である。図13Hに示すように、交差ラインCL1に基づいてエッジ部分11が復元される。具体的には、削除した部分12に、境界線BL1と交差ラインCL1とに基づいて復元されたエッジ部分14が形成される。復元されたエッジ部分14は、境界線BL1から交差ラインCL1までの形状データを作成することによって得られる。例えば、各断面において、延長した第1断面曲線DL1及び延長した第2断面曲線DL2に沿って、境界線BL1から交差ラインCL1までの形状データを作成することによって、削除した部分12に修復されたエッジ部分14を作成する。
【0085】
図13Iは、復元後の歯のエッジ部分の一例を示す模式図である。図13Iに示すように、スキャンデータ10において削除した部分12に、修復したエッジ部分14が配置され、スキャンデータ10に結合される。
【0086】
図14は、復元前と復元後の歯のエッジ部分を説明するための模式図である。図14において、符号11で示す一点鎖線は修復前のスキャンしたエッジ部分を示し、符号14で示す実線は復元後のエッジ部分14を示す。図14に示すように、修復前のエッジ部分11よりも実物の形態に近いシャープなエッジ部分14を有するスキャンデータ10が復元されている。
【0087】
[復元装置]
図15は、本発明の実施の形態1に係るスキャンによって変化した歯のエッジ部分を復元する装置の構成を示す概略ブロック図である。
【0088】
図15に示すように、復元装置50は、上述した方法を実施する装置であり、修復前のスキャンデータ10を取得し、エッジ部分11を復元した修復後のスキャンデータ10を出力する。復元装置50は、例えば、コンピュータである。
【0089】
例えば、修復前のスキャンデータ10は、スキャン装置によって取得され、復元装置50に送信される。修復後のスキャンデータ10は、補綴物を作製する作製装置等に送信される。なお、復元装置50は、修復後のスキャンデータ10に基づいて補綴物を作製するための設計データを作成してもよい。この場合、復元装置は、補綴物の設計データを出力する。
【0090】
復元装置50は、1つ又は複数のプロセッサ51、メモリ52、及び通信部53を備える。
【0091】
プロセッサ51は、例えば、中央処理ユニット(CPU)、マイクロプロセッサ、又はコンピュータ実行可能命令の実行が可能なその他の処理ユニットである。プロセッサ51は、メモリ52に記憶された命令を実行可能である。
【0092】
メモリ52は、復元装置50のデータを格納する。メモリ52は、例えば、コンピュータ記録媒体を含み、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリ又はその他のメモリ技術、CD-ROM、DVD又はその他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ又はその他の磁気記憶デバイス、あるいは所望の情報を格納するために用いることができ、復元装置50がアクセスすることができる任意の媒体を含む。
【0093】
メモリ52は、上述した方法を実行するためのプログラムを格納している。また、メモリ52は、補綴装置の設計データを作成するためのプログラムを格納していてもよい。
【0094】
通信部53は、外部装置と通信する。通信部53は、所定の通信規格に準拠して外部装置との通信を行う回路を含む。所定の通信規格は、例えば、LAN、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、USB、HDMI(登録商標)、CAN(controller area network)、SPI(Serial Peripheral Interface)を含む。
【0095】
通信部53は、例えば、ネットワークを介して、スキャン装置からスキャンデータを受信する。また、通信部53は、例えば、ネットワークを介して、作製装置等に補綴装置の修復後のスキャンデータ10を送信する。
【0096】
[効果]
本発明に係る実施の形態1のスキャンによって変化した歯のエッジ部分を復元する方法によれば、以下の効果を奏することができる。
【0097】
本発明に係る実施の形態1の方法は、スキャンによって変化した歯のエッジ部分の形態をコンピュータによって復元する方法であって、コンピュータによって実行されるステップST1~ST7を含む。ステップST1は、歯のスキャンデータ10を取得する。ステップST2は、スキャンデータ10において、歯のエッジ部分11のスキャンデータを削除する。ステップST3は、スキャンデー10タにおいて、削除した部分12を囲う境界線BL1を抽出する。ステップST4は、複数の板21が放射状に配置された第1データ20を、スキャンデータ10に重ねて配置する。ステップST5は、第1データ20の複数の板21によって切断されたスキャンデータ10の断面のそれぞれにおいて、削除した部分12を間に挟んで、スキャンデータ10の外形ラインを示す第1断面曲線DL1及び第2断面曲線DL2を作成する。ステップST6は、第1データ20の複数の板21によって切断されたスキャンデータ10の断面のそれぞれにおいて、削除した部分12のスキャンデータを補う方向に、第1断面曲線DL1及び第2断面曲線DL2を延長する。ステップST7は、第1データ20の複数の板21によって切断されたスキャンデータ10の断面のそれぞれにおいて延長した第1断面曲線DL1と延長した第2断面曲線DL2とに基づいて、歯のエッジ部分11を復元する。
【0098】
このような構成により、歯のスキャンデータ10の品質を向上させることができる。具体的には、スキャンによって丸く変化したエッジ部分を、実物に近い形態に復元することができる。また、実施の形態1の方法によれば、様々な歯のエッジ部分に対して適用することができる。例えば、窩洞又は維持溝のマージン形状、歯列データなどの複雑な形状を有するエッジ部分についても、実物に近い形態に復元することができる。
【0099】
また、実施の形態1の方法によれば、短時間でエッジ部分を復元することができる。例えば、支台歯のエッジ部分の復元であれば、10分以内にエッジ部分を復元することができる。
【0100】
歯のエッジ部分11を復元するステップST7は、交点を算出するステップST11、交差ラインを作成するステップST12、及びエッジ部分11を復元するステップST13を含む。ステップST11は、第1データ20の複数の板21によって切断されたスキャンデータ10の断面のそれぞれにおいて、延長した第1断面曲線DL1と延長した第2断面曲線DL2とが交差する交点P1を算出する。ステップST12は、算出された交点P1を連結して交差ラインCL1を作成する。ステップST13は、交差ラインに基づいて歯のエッジ部分11を復元する。このような構成により、エッジ部分11が実物により近い形態に復元でき、スキャンデータ10の品質をより向上させることができる。
【0101】
エッジ部分11を復元するステップST13は、境界線BL1から交差ラインCL1までの形状データを作成するステップST14を有する。このような構成により、エッジ部分11が実物により近い形態に復元でき、スキャンデータ10の品質をより向上させることができる。また、より短時間でエッジ部分11を復元することができる。
【0102】
第1断面曲線DL1及び第2断面曲線DL2を延長するステップST6は、第1断面曲線を延長するステップと、第2断面曲線DL2を延長するステップ、とを含む。第1断面曲線を延長するステップは、第1データ20の複数の板21によって切断されたスキャンデータ10の断面のそれぞれにおいて、第1断面曲線DL1の終端における第1断面曲線DL1の曲率又は曲率の変化率を維持して第1断面曲線DL1を延長する。第2断面曲線DL2を延長するステップは、第1データ20の複数の板21によって切断されたスキャンデータ10の断面のそれぞれにおいて、第2断面曲線DL2の終端における第2断面曲線DL2の曲率又は曲率の変化率を維持して第2断面曲線DL2を延長する。このような構成により、エッジ部分11が実物により近い形態に復元でき、スキャンデータ10の品質をより向上させることができる。
【0103】
記第1データ20は、複数の板21が交差する中心軸CX1を有する。第1データ20を、スキャンデータ10に重ねて配置するステップST4は、第1データ20の中心軸CX1を、歯の歯軸方向に沿って配置するステップ、を有する。このような構成により、スキャンデータ10の外形ラインを示す第1断面曲線DL1及び第2断面曲線DL2を精度高く作成することができる。これにより、エッジ部分11が実物により近い形態に復元でき、スキャンデータ10の品質をより向上させることができる。
【0104】
第1データ20の中心軸CX1を、歯の歯軸方向に沿って配置するステップは、歯の歯冠から歯根に向かう方向から見て、第1データ20の中心軸CX1を歯の中央に配置するステップ、を有する。このような構成により、第1断面曲線DL1及び第2断面曲線DL2をより精度高く作成することができる。これにより、エッジ部分11が実物により近い形態に復元でき、スキャンデータ10の品質をより向上させることができる。
【0105】
第1データ20における複数の板21の数は、60枚以上3500枚以下である。好ましくは、複数の板21の数は、90枚以上600枚以下である。このような構成により、第1断面曲線DL1及び第2断面曲線DL2をより精度高く作成することができる。これにより、歯のエッジ部分11をより実物に近づけて復元することができ、スキャンデータ10の品質をより向上させることができる。
【0106】
前記第1データにおける前記複数の板は、等間隔で配置される。このような構成により、第1断面曲線DL1及び第2断面曲線DL2をより精度高く作成することができる。これにより、歯のエッジ部分11をより実物に近づけて復元することができ、スキャンデータ10の品質をより向上させることができる。
【0107】
実施の形態1の復元装置50は、1つ又は複数のプロセッサ51、1つ又は複数のプロセッサ51によって実行可能な命令を記憶したメモリ52を備える。命令は、上述した方法のステップを含む。このような構成により、上述した方法の効果と同様の効果を奏する。
【0108】
なお、実施の形態1では、当該方法が境界線BL1を抽出するステップST3を含む例について説明したが、これに限定されない。例えば、当該方法は、境界線BL1を抽出するステップST3を含んでいなくてもよい。この場合、ステップST7では、延長した第1断面曲線DL1、延長した第2断面曲線DL2及び交差ラインCL1に基づいて、削除した部分の形状データを作成してもよい。
【0109】
実施の形態1では、第1データ20における複数の板21が矩形状を有する例について説明したが、これに限定されない。複数の板21の形状は、矩形状に限定されない。例えば、複数の板21の形状は、楕円形状、多角形状であってもよい。
【0110】
実施の形態1では、第1データ20における複数の板21が等間隔に配置される例について説明したが、これに限定されない。例えば、複数の板21同士の間隔は、異なっていてもよい。
【0111】
実施の形態1では、支台歯のスキャンデータを用いて歯のエッジ部分11を復元する例について説明したが、これに限定されない。例えば、歯のエッジ部分11は、支台歯窩洞、維持溝又は歯列のエッジ部分(マージン部分)であってもよい。また、歯のエッジ部分11とは、歯の模型のエッジ部分11であってもよい。
【0112】
図16Aは、復元前の窩洞形成歯のスキャンデータの一例を示す概略図である。図16Bは、復元前の窩洞形成歯のスキャンデータの一例を示す概略図である。図16A及び図16Bにおいて、復元前のエッジ部分を符号「11A」で示し、復元後のエッジ部分を符号「14A」で示す。なお、図16A及び図16Bに示す例では、当該方法によって窩洞形成歯のスキャンデータ10Aのエッジ部分11A、即ち、窩洞15のマージンを復元している。
【0113】
図16Aに示す復元前のエッジ部分11Aと、図16Bに示す復元後のエッジ部分14Aを比べると、修復後のエッジ部分14Aは、修復前のエッジ部分11Aよりもシャープな形状になっており、実物の窩洞15のマージンに近い形態に復元されている。
【0114】
図17Aは、復元前の維持溝を有する歯のスキャンデータの一例を示す概略図である。図17Bは、復元後の維持溝を有する歯のスキャンデータの一例を示す概略図。図17A及び図17Bにおいて、復元前のエッジ部分を符号「11B」で示し、復元後のエッジ部分を符号「14B」で示す。なお、図17A及び図17Bに示す例では、当該方法によって維持溝を有する歯のスキャンデータ10Bのエッジ部分11B、即ち、維持溝16のマージンを復元している。
【0115】
図17Aに示す復元前のエッジ部分11Bと、図17Bに示す復元後のエッジ部分14Bを比べると、修復後のエッジ部分14Bは、修復前のエッジ部分11Bよりもシャープな形状になっており、実物の維持溝16のマージンに近い形態に復元されている。
【0116】
図18Aは、復元前の歯列のスキャンデータの一例を示す概略図である。図18Bは、図18に示すZ1部分の拡大概略図である。図18Cは、復元後の歯列のスキャンデータの一例を示す概略図である。図18Dは、図18Cに示すZ2部分の拡大概略図である。図18A図18Dにおいて、復元前のエッジ部分を符号「11C」で示し、復元後のエッジ部分を符号「14C」で示す。なお、図18A図18Dに示す例では、当該方法によって歯列のスキャンデータ10Cのうち犬歯の支台歯のエッジ部分11C、即ち、犬歯の支台歯におけるマージンを復元している。また、当該方法を実施する際には、歯列から犬歯の支台歯を分離している。即ち、当該方法は、歯列のスキャンデータ10Cにおいて、犬歯の支台歯が配置されている部分に実施される。これにより、演算処理を減らすことができ、短時間でエッジ部分11Cを復元することができる。なお、図18A図18Dに示す例において、当該方法を実施する際には、歯列から犬歯の支台歯を分離する例について説明したが、これに限定されない。例えば、歯列から支台歯を分離せずに、当該方法を実施してもよい。また、犬歯の支台歯は一例であり、他の支台歯に対して当該方法を実施してもよい。
【0117】
図18A及び図18Bに示す復元前の犬歯の支台歯におけるエッジ部分11Cと、図18C及び図18Dに示す復元後の犬歯の支台歯におけるエッジ部分14Cを比べると、復元後のエッジ部分14Cは、復元前のエッジ部分11Cよりもシャープな形状になっており、実物の犬歯の支台歯のエッジ部分、即ち、マージンに近い形態に復元されている。
【0118】
図18Eは、図18Dに示すA-A線で切断した概略断面図である。図18Fは、図18Eに示すZ3部分の概略拡大図である。図18E及び図18Fは、復元前のエッジ部分11Cを点線で示し、復元後のエッジ部分14Cを実線で示している。図18E及び図18Fから見てわかるように、復元後のエッジ部分14Cは、復元前のエッジ部分11Cよりもシャープな形状になっており、実物の犬歯の支台歯のエッジ部分、即ち、マージンに近い形態に復元されている。
【0119】
このように、実施の形態1の方法によれば、複雑な形状を有するエッジ部分についても精度高く復元することができる。
【0120】
実施の形態1では、復元装置50の構成要素については、変更、追加、削除、統合、分割してもよい。例えば、復元装置50は、通信部53を備えていなくてもよい。復元装置50は、スキャン装置を備えていてもよい。あるいは、復元装置50は、補綴装置を設計するプログラムをメモリ52に格納していてもよい。
【0121】
実施の形態1では、方法及び装置の例を説明したがこれに限定されない。実施の形態1の方法を実行させるためのプログラム、又は当該方法を実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体によって実現されてもよい。例えば、コンピュータ読み取り可能な媒体は、実施の形態1の方法を、プロセッサによって実行可能なコンピュータ読み取り可能な命令として含んでいてもよい。コンピュータ読み取り可能な媒体は、様々なタイプの揮発性及び不揮発性記録媒体を含んでもよく、例えば、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、リード・オンリー・メモリ(ROM)、プログラマブル・リード・オンリー・メモリ(PROM)、電気的プログラマブル・リード・オンリー・メモリ(PROM)、電気的に消去可能なリード・オンリー・メモリ(EPROM)、フラッシュメモリ、いくつかの他の有形データ記憶デバイス、それらのいくつかの組み合わせを含んでもよい。
【0122】
実施の形態1に係る方法及び装置は、補綴装置を作製する方法、装置又はシステムに含まれてもよい。
【0123】
(実施の形態2)
本発明に係る実施の形態2の方法について説明する。
【0124】
実施の形態2では、主に実施の形態1と異なる点について説明する。実施の形態2においては、実施の形態1と同一又は同等の構成については同じ符号を付して説明する。また、実施の形態2では、実施の形態1と重複する記載は省略する。
【0125】
図19は、本発明の実施の形態2に係るスキャンによって変化した歯のエッジ部分を復元する方法のフローチャートである。図20は、延長した第1断面曲線、延長した第2断面曲線、延長した第3断面曲線及び延長した第4断面曲線に基づいて、歯のエッジ部分を復元する工程を説明するためのフローチャートである。
【0126】
実施の形態2では、第2データを用いて歯のエッジ部分11Aを復元する点で、実施の形態1と異なる。
【0127】
なお、実施の形態2では、図19に示すステップST21~ST26は、実施の形態1のステップST1~ST6と同様であり、図20に示すステップST31,ST34及びST35は、実施の形態1のステップST11,ST13及びST14と同様である。このため、これらのステップの詳細な説明は省略する。
【0128】
また、実施の形態2では窩洞形成歯のスキャンデータのエッジ部分、即ち窩洞のマージンを復元する例について説明する。
【0129】
図19に示すように、ステップST21では、窩洞形成歯のスキャンデータを取得する。
【0130】
図21は、復元前の窩洞形成歯のスキャンデータの一例を示す概略図である。図21は、窩洞形成歯の平面視、即ち、歯冠から歯根に向かう方向から見た図である。図21に示すように、復元前の窩洞形成歯のスキャンデータ10Aにおいては、エッジ部分11Aである窩洞15のマージンが丸くなっている。
【0131】
図19に戻って、ステップST22では、窩洞形成歯のエッジ部分11Aを削除する。
【0132】
ステップST23では、窩洞形成歯のスキャンデータ10Aにおいて削除した部分を囲う境界線BL1を抽出する。
【0133】
ステップST24では、第1データ20をスキャンデータ10Aに重ねて配置する。
【0134】
図22は、第1データをスキャンデータに重ねて配置する工程を示す概略図である。図22に示すように、第1データ20は、第1データ20の中心軸CX1が窩洞形成歯の歯軸方向と沿うようにスキャンデータ10Aに重ねて配置される。
【0135】
図19に戻って、ステップST25では、第1データ20の複数の板21によって切断されたスキャンデータ10Aの断面のそれぞれにおいて、削除した部分を間に挟んで、スキャンデータ10Aの外形ラインを示す第1断面曲線DL1及び第2断面曲線DL2を作成する。
【0136】
ステップST25では、削除した部分のスキャンデータを補う方向に、第1断面曲線DL1及び第2断面曲線DL2を延長する。
【0137】
ステップST26では、複数の板23が配列された第2データ22をスキャンデータ10Aに重ねて配置する。
【0138】
図23は、複数の板が配列された第2データの一例を示す斜視図である。図23に示すように、第2データ22は、複数の板23を含む。複数の板23は、一方向に配列されている。複数の板23は互いに平行に配置されている。複数の板23は、一方向に等間隔に配列されている。一方向とは、第2データ22の中心軸CX2の延びる方向である。
【0139】
複数の板23は、同じ形状及び同じ大きさを有している。複数の板23のそれぞれは、円板形状を有する。
【0140】
第2データ22は、スキャンデータ10Aを複数の板23のそれぞれで切断し、スキャンデータ10Aの断面データを取得するために用いられる。第2データ22を用いて取得したスキャンデータ10Aの断面データに基づいて、後述する第3断面曲線及び第4断面曲線を作成する。
【0141】
第2データ22は、スキャンデータ10Aに対して貫通して配置されている。このため、スキャンデータ10Aを第2データ22の複数の板23によって切断し、スキャンデータ10Aの断面データを取得することができる。
【0142】
図24は、第2データをスキャンデータに重ねて配置する工程を示す概略図である。図24に示すように、第2データ22は、複数の板23の配列方向と窩洞形成歯の歯軸方向とが交差するようにスキャンデータ10Aに重ねて配置される。実施の形態2では、第2データ22は、複数の板23の配列方向と窩洞形成歯の歯軸方向とが直交するようにスキャンデータ10Aに重ねて配置される。
【0143】
図19に戻って、ステップST27では、第2データ22の複数の板23によって切断されたスキャンデータ10Aの断面のそれぞれにおいて、削除した部分を間に挟んで、スキャンデータ10Aの外形ラインを示す第3断面曲線及び第4断面曲線を作成する。
【0144】
図25は、第3断面曲線及び延長した第4断面曲線を作成する工程を示す概略図である。なお、図25ではスキャンデータ10Aの断面曲線データ31の一方側を示し、他方側の図示を省略している。図25に示すように、第2データ22の複数の板23によって切断されたスキャンデータ10Aの断面のそれぞれにおいて、削除した部分12を間に挟んで、スキャンデータ10Aの外形ラインを示す第3断面曲線DL3及び第4断面曲線DL4が作成されている。スキャンデータ10Aの外形ラインとは、窩洞形成歯の輪郭線を意味する。
【0145】
図25に示す例では、第3断面曲線DL3は、削除した部分12Aより歯冠側に作成され、第4断面曲線DL4は削除した部分12Aより歯冠側に作成される。
【0146】
図19に戻って、ステップST29では、削除した部分12Aのスキャンデータ10Aを補う方向に、第3断面曲線DL3及び第4断面曲線DL4を延長する。第3断面曲線DL3及び第4断面曲線DL4を延長するやり方は、第1断面曲線DL1及び第2断面曲線DL2の延長するやり方と同じである。
【0147】
ステップST30では、延長した第1断面曲線DL1、延長した第2断面曲線DL2、延長した第3断面曲線DL3及び延長した第4断面曲線DL4に基づいて、窩洞形成歯のエッジ部分11Aを復元する。ステップST30については図20を用いて説明する。
【0148】
図20に示すように、ステップST31では、第1データ20の複数の板21によって切断されたスキャンデータ10Aの断面のそれぞれにおいて、延長した第1断面曲線DL1と延長した第2断面曲線DL2とが交差する第1交点を算出する。
【0149】
ステップST32では、第2データ22の複数の板23によって切断されたスキャンデータ10Aの断面のそれぞれにおいて、延長した第3断面曲線DL3と延長した第4断面曲線DL4とが交差する第2交点を算出する。
【0150】
ステップST29において延長した第3断面曲線DL3と延長した第4断面曲線DL4とは、削除した部分12Aにおいて互いに交差する。ステップST32では、各断面において、延長した第3断面曲線DL3と延長した第4断面曲線DL4との第2交点を算出する。
【0151】
ステップST33では、算出された第1交点及び第2交点に基づいて交差ラインCL1を作成する。具体的には、各断面において算出された第1交点及び第2交点を3次元的に連結して交差ラインCL1を作成する。例えば、第1交点及び第2交点において、最も近い距離にある点同士を連結させることによって、交差ラインCL1を作成する。
【0152】
ステップST34では、交差ラインCL1に基づいて窩洞形成歯のエッジ部分11Aを復元する。具体的には、ステップST34は、境界線BL1と交差ラインCL1とに基づいてエッジ部分11Aを作成するステップST35を有する。
【0153】
ステップST35では、境界線BL1から交差ラインCL1までの形状データを作成する。これにより、削除した部分12Aにエッジ部分14Aを復元することができる。
【0154】
[効果]
本発明に係る実施の形態2の方法によれば、以下の効果を奏することができる。
【0155】
本発明に係る実施の形態2の方法は、第1データ20と第2データ22とを用いて窩洞形成歯のスキャンデータ10Aのエッジ部分11Aを復元する。具体的には、実施の形態2の方法は、実施の形態1に加えて、ステップST27~ST29を含む。ステップST27は、複数の板23が配列された第2データ22を、スキャンデータ10Aに重ねて配置する。ステップST28は、第2データ22の複数の板23によって切断されたスキャンデータ10Aの断面のそれぞれにおいて、削除した部分12Aを間に挟んで、スキャンデータ10Aの外形ラインを示す第3断面曲線DL3及び第4断面曲線DL4を作成する。ステップST29は、第2データ22の複数の板23によって切断されたスキャンデータ10Aの断面のそれぞれにおいて、削除した部分12Aのスキャンデータを補う方向に、第3断面曲線DL3及び第4断面曲線DL4を延長する。また、実施の形態2の方法では、歯のエッジ部分を復元するステップST30は、延長した第1断面曲線DL1、延長した第2断面曲線DL2、延長した第3断面曲線DL3及び延長した第4断面曲線DL4に基づいて、窩洞形成歯のエッジ部分11Aを復元する。
【0156】
このような構成により、スキャンデータ10Aにおける歯のエッジ部分の品質をさらに向上させることができる。例えば、窩洞形成歯のスキャンデータ10Aにおいて窩洞15のマージンなどのエッジ部分11Aを実物により近づけて復元することができる。
【0157】
このように、実施の形態2の方法によれば、第1データ20と第2データ22とを用いて、窩洞形成歯のような複雑な形状を有する歯のエッジ部分11Aを実物により近づけて復元することができる。これにより、さらに高品質なスキャンデータ10Aを作成することができる。
【0158】
ステップST30は、第1交点を算出するステップST31、第2交点を算出するステップST32、交差ラインを作成するステップST33、およびエッジ部分を復元するステップST34を含む。ステップST31は、第1データ20の複数の板21によって切断されたスキャンデータ10Aの断面のそれぞれにおいて、延長した第1断面曲線DL1と延長した第2断面曲線DL2とが交差する第1交点を算出する。ステップST32は、第2データ22の複数の板23によって切断されたスキャンデータ10Aの断面のそれぞれにおいて、延長した第3断面曲線DL3と延長した第4断面曲線DL4とが交差する第2交点を算出する。ステップST33は、算出された第1交点及び第2交点に基づいて交差ラインCL1を作成する。ステップST34は、交差ラインCL1に基づいて歯のエッジ部分11Aを復元する。このような構成により、複雑な形状を有する歯のエッジ部分11Aを実物により近づけて復元することができる。
【0159】
第1データ20は、複数の板21が交差する中心軸CX1を有する。第1データ20をスキャンデータ10Aに重ねて配置するステップST24は、中心軸CX1が歯の歯軸方向に沿うように第1データ20を配置すること、を有する。第2データ22をスキャンデータ10Aに重ねて配置するステップST27は、複数の板23の配列方向と歯の歯軸方向とが交差するように第2データ22を配置すること、を有する。このような構成により、歯のエッジを示す交差ラインCL1をより実物のエッジラインに近づけて作成することができる。これにより、複雑な形状を有する歯のエッジ部分11Aを実物により近づけて復元することができる。
【0160】
なお、実施の形態2では、複数の板23の配列方向と歯の歯軸方向とが交差するように第2データ22をスキャンデータ10Aに重ねて配置する例について説明したが、これに限定されない。例えば、複数の板23の配列方向が歯の歯軸方向に沿うように第2データ22をスキャンデータ10Aに重ねて配置してもよい。あるいは、第2データ22は、ユーザによって入力された情報に基づいてスキャンデータ10Aに重ねて配置されてもよい。
【0161】
実施の形態2では、第2データ22がスキャンデータ10A全体に重ねて配置される例について説明したが、これに限定されない。例えば、第2データ22は、スキャンデータ10に部分的に重ねて配置されてもよい。
【0162】
実施の形態2では、第2データ22の複数の板23のそれぞれが円板形状を有する例について説明したが、これに限定されない。例えば、複数の板23のそれぞれは、板形状を有していればよく、厚み方向から見て、矩形状、多角形状又は楕円形状を有していてもよい。
【0163】
実施の形態2では、第2データ22の複数の板23が平行に配列される例について説明したが、これに限定されない。例えば、複数の板23は曲線状に並べて配列されていてもよい。
【0164】
実施の形態2では、第2データ22の複数の板23が等間隔に配列される例について説明したが、これに限定されない。例えば、複数の板23は異なる間隔で配列されていてもよい。
【0165】
(実施の形態3)
本発明に係る実施の形態3の方法について説明する。
【0166】
実施の形態3では、主に実施の形態2と異なる点について説明する。実施の形態3においては、実施の形態2と同一又は同等の構成については同じ符号を付して説明する。また、実施の形態3では、実施の形態2と重複する記載は省略する。
【0167】
図26A及び図26Bは、本発明の実施の形態3に係るスキャンによって変化した歯のエッジ部分を復元する方法のフローチャートである。図27は、延長した第1断面曲線、延長した第2断面曲線、延長した第3断面曲線、延長した第4断面曲線、延長した第5断面曲線及び延長した第6断面曲線に基づいて、歯のエッジ部分を復元する工程を説明するためのフローチャートである。
【0168】
実施の形態3では、第3データを用いて歯のエッジ部分11Aを復元する点で、実施の形態2と異なる。
【0169】
なお、実施の形態3では、図26Aに示すステップST41~ST49は、実施の形態2のステップST21~ST29と同様であり、図27に示すステップST61,ST62,ST65及びST66は、実施の形態2のステップST31,ST32,ST34及びST35と同様である。このため、これらのステップの詳細な説明は省略する。
【0170】
また、実施の形態3では、実施の形態2と同様に、窩洞形成歯のスキャンデータのエッジ部分、即ち窩洞のマージンを復元する例について説明する。
【0171】
図26Aに示すように、ステップST41~ST49を実施する。実施の形態3では、ステップST47において、第2データ22の複数の板23が配列される方向を「第1方向」と称する。
【0172】
図26Bに示すように、ステップST50では、第2方向に沿って複数の板が配列された第3データをスキャンデータ10Aに重ねて配置する。第2方向は、第1方向と異なる方向を意味する。例えば、第2方向は、第1方向と交差する方向である。実施の形態3では、第2方向は、第1方向と直交する。即ち、第2方向は、窩洞形成歯の歯軸方向に沿う方向である。
【0173】
図28は、第3データをスキャンデータに重ねて配置する工程を示す概略図である。図28に示すように、ステップST50では、第2データ22における複数の板23の配列される第1方向と異なる第2方向に沿って複数の板25が配列された第3データ24を、スキャンデータ10Aに重ねて配置する。
【0174】
第3データ24は、第2データ22と同様に、複数の板25を含む。複数の板25は、第2方向に配列されている。複数の板23は、第2方向に等間隔に配列されている。第2方向は、第3データの中心軸CX3の延びる方向である。
【0175】
第3データ24は、第3データ24の中心軸CX3が、平面視における窩洞形成歯の中央を通るように配置される。
【0176】
複数の板25は、同じ形状及び同じ大きさを有している。複数の板25のそれぞれは、円板形状を有する。
【0177】
実施の形態3では、第3データ24の複数の板25は、配列方向を除いて、第2データ22の複数の板23と同様である。
【0178】
第3データ24は、スキャンデータ10Aを複数の板25のそれぞれで切断し、スキャンデータ10Aの断面データを取得するために用いられる。第3データ24を用いて取得したスキャンデータ10Aの断面データに基づいて、後述する第5断面曲線及び第6断面曲線を作成する。
【0179】
第3データ24は、スキャンデータ10Aに対して貫通して配置されている。このため、スキャンデータ10Aを第3データ24の複数の板25によって切断し、スキャンデータ10Aの断面データを取得することができる。
【0180】
図26Bに戻って、ステップST51では、第3データ24の複数の板25によって切断されたスキャンデータ10Aの断面のそれぞれにおいて、削除した部分を間に挟んで、スキャンデータ10Aの外形ラインを示す第5断面曲線及び第6断面曲線を作成する。ステップST51は、第3断面曲線及び第4断面曲線を作成するステップST48と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0181】
ステップST52では、削除した部分のスキャンデータを補う方向に、第5断面曲線及び第6断面曲線を延長する。ステップST52は、第3断面曲線及び第4断面曲線を延長するステップST48と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0182】
ステップST53では、延長した第1断面曲線、延長した第2断面曲線、延長した第3断面曲線、延長した第4断面曲線、延長した第5断面曲線及び延長した第6断面曲線に基づいて、歯のエッジ部分を復元する。ステップST52については図27を用いて説明する。
【0183】
図27に示すように、ステップST61では、第1データ20の複数の板21によって切断されたスキャンデータ10Aの断面のそれぞれにおいて、延長した第1断面曲線と延長した第2断面曲線とが交差する第1交点を算出する。
【0184】
ステップST62では、第2データ22の複数の板23によって切断されたスキャンデータ10Aの断面のそれぞれにおいて、延長した第3断面曲線と延長した第4断面曲線とが交差する第2交点を算出する。
【0185】
ステップST63では、第3データ24の複数の板25によって切断されたスキャンデータ10Aの断面のそれぞれにおいて、延長した第5断面曲線と延長した第6断面曲線とが交差する第3交点を算出する。ステップST63は、ステップST62と同様のやり方で第3交点を算出する。
【0186】
ステップST64では、算出された第1交点、第2交点及び第3交点に基づいて交差ラインCL1を作成する。具体的には、各断面において算出された第1交点、第2交点及び第3交点を3次元的に連結して交差ラインCL1を作成する。
【0187】
ステップST65では、交差ラインCL1に基づいて窩洞形成歯のエッジ部分11Aを復元する。具体的には、ステップST65は、境界線BL1と交差ラインCL1とに基づいてエッジ部分11Aを作成するステップST66を有する。
【0188】
ステップST66では、境界線BL1から交差ラインCL1までの形状データを作成する。これにより、スキャンデータ10Aにおいて削除した部分12Aにエッジ部分を復元することができる。
【0189】
[効果]
本発明に係る実施の形態3の方法によれば、以下の効果を奏することができる。
【0190】
本発明に係る実施の形態3の方法は、第1データ20、第2データ22及び第3データ24を用いて窩洞形成歯のスキャンデータ10Aのエッジ部分11Aを復元する。具体的には、実施の形態3の方法は、実施の形態2に加えて、ステップST50~ST52を含む。ステップST50は、第2データ22における複数の板23の配列される第1方向と異なる第2方向に沿って複数の板25が配列された第3データ24を、スキャンデータ10Aに重ねて配置する。ステップST51は、第3データ24の複数の板25によって切断されたスキャンデータ10Aの断面のそれぞれにおいて、削除した部分12Aを間に挟んで、スキャンデータ10Aの外形ラインを示す第5断面曲線及び第6断面曲線を作成する。ステップST52は、第3データ24の複数の板25によって切断されたスキャンデータ10Aの断面のそれぞれにおいて、削除した部分12Aのスキャンデータを補う方向に、第5断面曲線及び第6断面曲線を延長する。また、実施の形態3の方法では、歯のエッジ部分を復元するステップST53は、延長した第1断面曲線、延長した第2断面曲線、延長した第3断面曲線、延長した第4断面曲線、延長した第5断面曲線及び延長した第6断面曲線に基づいて、窩洞形成歯のエッジ部分11Aを復元する。
【0191】
このような構成により、スキャンデータ10Aにおける歯のエッジ部分の品質をさらに向上させることができる。例えば、窩洞形成歯のスキャンデータ10Aにおいて窩洞15のマージンなどのエッジ部分11Aを実物により近づけて復元することができる。
【0192】
このように、実施の形態3では、第1データ20、第2データ22及び第3データ24を用いて窩洞形成歯のスキャンデータ10Aのエッジ部分11Aを復元することによって、さらに精度高くエッジ部分11Aを復元することができる。
【0193】
なお、実施の形態3では、第3データ24の複数の板25が第2データ22の複数の板23と同様である例について説明したが、これに限定されない。例えば、第3データ24の複数の板25は、第2データ22の複数の板23と異なっていてもよい。
【0194】
上述した実施の形態1~3の方法においては、適用される環境に応じて、ステップを変更、追加、減少、分割、及び統合してもよい。
【0195】
上述した実施の形態1~3の方法においては、ステップの順番を変更して行ってもよい。
【0196】
なお、本明細書において、「第1」、「第2」などの用語は、説明のためだけに用いられるものであり、相対的な重要性または技術的特徴の順位を明示または暗示するものとして理解されるべきではない。「第1」と「第2」と限定されている特徴は、1つまたはさらに多くの当該特徴を含むことを明示または暗示するものである。
【0197】
本発明をある程度の詳細さをもって各実施形態において説明したが、これらの実施形態の開示内容は構成の細部において変化してしかるべきものであり、各実施形態における要素の組合せや順序の変化は請求された本発明の範囲及び思想を逸脱することなく実現し得るものである。
【産業上の利用可能性】
【0198】
本発明に係るスキャンによって変化した歯のエッジ部分を復元する方法は、スキャンによって損なわれた歯のエッジ部分を復元することができる。このため、補綴装置を作製する装置又は方法等に有用である。
【符号の説明】
【0199】
10,10A,10B,10C スキャンデータ
11,11A,11B,11C 修復前のエッジ部分
12,12A 削除した部分
13 残っている部分
14,14A,14B,14C 修復後のエッジ部分
20 第1データ
21 板
22 第2データ
23 板
24 第3データ
25 板
30,31 断面曲線データ
50 復元装置
51 プロセッサ
52 メモリ
53 通信部
100 実物の歯
101 エッジ部分
BL1 境界線
BL11 第1境界線
BL12 第2境界線
CL1 交差ライン
CX1,CX2,CX3 中心軸
DL1 第1断面曲線
DL2 第2断面曲線
DL3 第3断面曲線
DL4 第4断面曲線
P1 交点
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図13C
図13D
図13E
図13F
図13G
図13H
図13I
図14
図15
図16A
図16B
図17A
図17B
図18A
図18B
図18C
図18D
図18E
図18F
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図26A
図26B
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図28