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特開2023-119901電子銃、X線管、及び電子銃の製造方法
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  • 特開-電子銃、X線管、及び電子銃の製造方法 図1
  • 特開-電子銃、X線管、及び電子銃の製造方法 図2
  • 特開-電子銃、X線管、及び電子銃の製造方法 図3
  • 特開-電子銃、X線管、及び電子銃の製造方法 図4
  • 特開-電子銃、X線管、及び電子銃の製造方法 図5A
  • 特開-電子銃、X線管、及び電子銃の製造方法 図5B
  • 特開-電子銃、X線管、及び電子銃の製造方法 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119901
(43)【公開日】2023-08-29
(54)【発明の名称】電子銃、X線管、及び電子銃の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 35/06 20060101AFI20230822BHJP
   H01J 9/02 20060101ALI20230822BHJP
   H01J 37/06 20060101ALI20230822BHJP
   H01J 1/15 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
H01J35/06 D
H01J9/02 J
H01J37/06 Z
H01J1/15
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022023023
(22)【出願日】2022-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】503382542
【氏名又は名称】キヤノン電子管デバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】米澤 哲也
【テーマコード(参考)】
5C101
【Fターム(参考)】
5C101DD08
5C101DD26
(57)【要約】
【課題】 フィラメントが収束電極に対して移動することを防止できる電子銃、X線管、及び電子銃の製造方法を提供する。
【解決手段】電子を放出するフィラメントと、延出方向に延出し前記フィラメントに接続されているフィラメント端子と、前記延出方向に貫通し前記フィラメント端子が位置する貫通孔を有している絶縁体と、前記フィラメントと前記フィラメント端子と前記絶縁体とを収容する収束電極と、を備え、前記フィラメント端子は前記貫通孔に接し、前記絶縁体に固定されている、電子銃。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子を放出するフィラメントと、
延出方向に延出し前記フィラメントに接続されているフィラメント端子と、
前記延出方向に貫通し前記フィラメント端子が位置する貫通孔を有している絶縁体と、
前記フィラメントと前記フィラメント端子と前記絶縁体とを収容する収束電極と、を備え、
前記フィラメント端子は前記貫通孔に接し、前記絶縁体に固定されている、
電子銃。
【請求項2】
陽極ターゲットと、
電子を放出するフィラメントと、延出方向に延出し前記フィラメントに接続されているフィラメント端子と、前記延出方向に貫通し前記フィラメント端子が位置する貫通孔を有している絶縁体と、前記フィラメントと前記フィラメント端子と前記絶縁体とを収容する収束電極と、を備えている陰極電子銃と、
前記陽極ターゲット及び前記陰極電子銃を収容する外囲器と、を備え、
前記フィラメント端子は前記貫通孔に接し、前記絶縁体に固定されている、
X線管。
【請求項3】
電子を放出するフィラメントと、延出方向に延出するフィラメント端子と、前記延出方向に貫通する貫通孔を有している絶縁体と、収束電極と、を用意し、
前記フィラメントと前記フィラメント端子を接続し、
前記絶縁体を前記収束電極に固定し、
締り嵌めにより前記フィラメント端子を前記絶縁体に固定する、
電子銃の製造方法。
【請求項4】
前記締り嵌めの方法は、前記絶縁体を加熱する焼き嵌めである、
請求項3に記載の電子銃の製造方法。
【請求項5】
前記締り嵌めの方法は、前記フィラメント端子を冷却する冷やし嵌めである、
請求項3に記載の電子銃の製造方法。
【請求項6】
前記締り嵌めの方法は、所定の大きさ以上の前記延出方向における荷重を前記フィラメント端子及び前記絶縁体に作用させる圧入である、
請求項3に記載の電子銃の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電子銃、X線管、及び電子銃の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
X線管は、内部が真空に保持された外囲器と、電子を放出する陰極電子銃と、放出された電子が衝突することでX線を放射する陽極ターゲットとを備えている。陰極電子銃は、フィラメントと、フィラメント端子と、絶縁体と、収束電極とを備えている。金属のスリーブを介してフィラメント端子及び絶縁体を連結することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭63―105427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本実施形態は、フィラメントが収束電極に対して移動することを防止できる電子銃、X線管、及び電子銃の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態に係る電子銃は、電子を放出するフィラメントと、延出方向に延出し前記フィラメントに接続されているフィラメント端子と、前記延出方向に貫通し前記フィラメント端子が位置する貫通孔を有している絶縁体と、前記フィラメントと前記フィラメント端子と前記絶縁体とを収容する収束電極と、を備え、前記フィラメント端子は前記貫通孔に接し、前記絶縁体に固定されている。
【0006】
一実施形態に係るX線管は、陽極ターゲットと、電子を放出するフィラメントと、延出方向に延出し前記フィラメントに接続されているフィラメント端子と、前記延出方向に貫通し前記フィラメント端子が位置する貫通孔を有している絶縁体と、前記フィラメントと前記フィラメント端子と前記絶縁体とを収容する収束電極と、を備えている陰極電子銃と、前記陽極ターゲット及び前記陰極電子銃を収容する外囲器と、を備え、前記フィラメント端子は前記貫通孔に接し、前記絶縁体に固定されている。
【0007】
一実施形態に係る電子銃の製造方法は、電子を放出するフィラメントと、延出方向に延出するフィラメント端子と、前記延出方向に貫通する貫通孔を有している絶縁体と、収束電極と、を用意し、前記フィラメントと前記フィラメント端子を接続し、前記絶縁体を前記収束電極に固定し、締り嵌めにより前記フィラメント端子を前記絶縁体に固定する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施形態に係るX線管の一例を示す断面図である。
図2図2は、図1のA矢視における陰極電子銃の正面図である。
図3図3は、図2の線B―Bに沿った陰極電子銃の断面図である。
図4図4は、図3のC矢視における陰極電子銃の背面図である。
図5A図5Aは、本実施形態に係る陰極電子銃の製造時の状態を示す断面図であり、フィラメント端子を絶縁体に固定する前の状態を示している。
図5B図5Bは、本実施形態に係る陰極電子銃のフィラメントの位置を調整した後の状態を示す断面図である。
図6図6は、本実施形態の変形例に係る陰極電子銃の一部を示す背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の趣旨を保っての適宣変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面や説明をより明確にするため、実際の様態に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宣省略することがある。
【0010】
始めに、本発明の実施形態の基本構想について説明する。
X線管は、陽極ターゲットと、陰極電子銃と、外囲器と、を備えている。陰極電子銃は、フィラメントと、フィラメント端子と、絶縁体と、収束電極とを備えている。従来の陰極電子銃では、フィラメント端子を金属のスリーブを介して絶縁体に固定している。フィラメント端子及びスリーブは、溶接によって固定されている。一方で、フィラメント端子及びスリーブの間には隙間がある。そのため、溶接部を支点にフィラメント端子が隙間分傾き、フィラメントの位置が収束電極に対して移動し、X線の焦点形状が変化してしまう恐れがある。さらに、フィラメントが収束電極に接触してしまう恐れがある。
【0011】
そこで、本発明の実施形態においては、かかる問題を改善するものであり、フィラメントが収束電極に対して移動することを防止できる電子銃、X線管、及び電子銃の製造方法を得ることができるものである。上記問題を改善するための手段及び手法について説明する。
【0012】
図1は、一実施形態に係るX線管の一例を示す断面図である。
図1に示すように、X線管1は、外囲器10と、陽極ターゲット21と、陰極電子銃31とを備えている。外囲器10は、ガラスで形成されている。外囲器10は、真空状態に維持された内部に、陽極ターゲット21及び陰極電子銃31を収容している。
【0013】
陽極ターゲット21は、陽極20の一部である。陽極20は、陽極ターゲット21と、回転機構23とを備えている。陽極ターゲット21は、円盤状に形成されている。陽極ターゲット21は、表面に電子(電子ビーム)が衝突することでX線を放射する。陽極ターゲット21は、回転機構23によって支持されている。陽極ターゲット21は、回転機構23の回転に従って回転する。陽極ターゲット21は、X線を放射するターゲット層と、ターゲット層を支持するターゲット本体とから構成されている。ターゲット層は、例えば、タングステンで形成されている。ターゲット本体は、例えば、モリブデン合金などの金属で形成されている。また、図示しないステータコイルが、外囲器10の外側に設置されている。このステータコイルは、図示しない電源から電流を供給されることにより磁場を発生させ、発生させた磁場により回転機構23を駆動させる。
【0014】
陰極電子銃31は、陰極30の一部である。陰極30は、陰極電子銃31と、支持部33とを備えている。陰極電子銃31は、外囲器10内で、陽極ターゲット21に対向している。陰極電子銃31は、高電圧が印加されることで電子を陽極ターゲット21に向けて放出する。また、陰極電子銃31は、単に電子銃とも称する。支持部33は、陰極電子銃31と図示しない電源とを接続する配線35が通過する空洞を有している。
【0015】
図2は、図1のA矢視における陰極電子銃31の正面図である。
図2に示すように、陰極電子銃31は、収束電極310と、電子を放出する電子放出源321とを備えている。本実施形態においては、陰極電子銃31は、1つの電子放出源321を備えている。なお、陰極電子銃31は、複数の電子放出源321を備えることが可能であり、例えば、2つの電子放出源321を備えていてもよい。
【0016】
収束電極310は、電子放出源321から放出される電子を制御する。例えば、収束電極310は、電流が供給されることで、電子放出源321から放出される電子を陽極ターゲット21上の焦点に収束させる。収束電極310の第1面311には溝部331が形成されている。電子放出源321は、溝部331に収容されている。電子放出源321は、陽極ターゲット21に向かって電子を放出する。陰極電子銃31が電子放出源321を複数備えている場合、収束電極310は、電子放出源321と同じ数だけ溝部331を有している。
【0017】
図3は、図2の線B―Bに沿った陰極電子銃31の断面図である。
図3に示すように、陰極電子銃31は、収束電極310、電子放出源321、及び絶縁体51,52を備えている。
収束電極310には、溝部331と、一対の第1収容孔11,12と、一対の第2収容孔13,14とが形成されている。第1収容孔11及び第1収容孔12は、離れて位置している。第1収容孔11は、溝部331から第2収容孔13まで貫通している。第1収容孔12は、溝部331から第2収容孔14まで貫通している。第2収容孔13は、第1収容孔11から第1面311の反対側に位置する第2面312まで貫通している。第2収容孔14は、第1収容孔11から収束電極310の第2面312まで貫通している。第2収容孔13における内径は、第1収容孔11における内径よりも大きい。第2収容孔14における内径は、第1収容孔12における内径よりも大きい。
【0018】
絶縁体51及び絶縁体52は、それぞれ、第2収容孔13及び第2収容孔14内にカシメやろう付け等の方法により固定されている。絶縁体51及び絶縁体52は、電気的絶縁性を有する材料で形成され、例えば、ステアタイトなどのセラミックによって形成されている。絶縁体51及び絶縁体52は、それぞれ、後述する延出方向Xに向かって貫通する貫通孔51A及び貫通孔52Aを有している。
【0019】
電子放出源321は、フィラメントFLと、一対のフィラメント端子41,42とを備えている。フィラメントFLは、コイル部C1とコイル部C1から延出する脚部LG1,LG2とを有している。フィラメントFLは、例えば、タングステン又はタングステンを主成分とする合金で形成されている。コイル部C1は、電流が供給されることで加熱され、電子を放出する。フィラメント端子41及びフィラメント端子42は、それぞれ、フィラメントFLと接続され、フィラメントFLとの接続部から延出方向Xに向かって延出し、棒状の形状を有している。フィラメント端子41及びフィラメント端子42は、図示しない電源につながる配線35と接続され、電源から供給される電流をフィラメントFLのコイル部C1に導通する。フィラメント端子41及びフィラメント端子42は、鉄、鉄を主成分とする合金、モリブデン、又はモリブデンを主成分とする合金で形成されている。
【0020】
フィラメント端子41は、貫通孔51Aに接し、絶縁体51に固定されている。フィラメント端子42は、貫通孔52Aに接し、絶縁体52に固定されている。フィラメント端子41及びフィラメント端子42は、それぞれ、絶縁体51及び絶縁体52により収束電極310と電気的に絶縁されている。つまり、電子放出源321は、収束電極310と電気的に絶縁されている。
【0021】
図4は、図3のC矢視における陰極電子銃31の背面図である。図4では、収束電極310、絶縁体51,52、及びフィラメント端子41,42を記載している。図4に示すように、フィラメント端子41の外周及びフィラメント端子42の外周は、円形状である。ただし、上記外周の形状は、円形状に限られず角を有する形状に形成することも可能であり、例えば、正八角形に形成してもよい。絶縁体51の貫通孔51Aにおける内周及び絶縁体52の貫通孔52Aにおける内周は、円形状である。ただし、上記内周の形状は、円形状に限られず角を有する形状に形成することも可能であり、例えば、正八角形に形成してもよい。フィラメント端子41は、絶縁体51の貫通孔51Aに締り嵌めによって固定されている。フィラメント端子42は、絶縁体52の貫通孔52Aに締り嵌めによって固定されている。例えば、絶縁体51の貫通孔51Aにおける内径が2mmであった場合に、フィラメント端子41と絶縁体51との締め代を0.005mmとして締り嵌めされている。
【0022】
次に、本実施形態に係る陰極電子銃31の製造方法について説明する。
図5Aは、本実施形態に係る陰極電子銃31の製造時の状態を示す断面図であり、フィラメント端子41,42を絶縁体51,52に固定する前の状態を示している。図5Bは、本実施形態に係る陰極電子銃31のフィラメントFLの位置を調整した後の状態を示す断面図である。図5A及び図5Bに示すように、陰極電子銃31の製造が開始されると、まず、フィラメントFLと、フィラメント端子41,42と、絶縁体51,52と、収束電極310と、ベース60と、ブロック70と、ヒータ80とを用意する。
【0023】
次に、図5Aに示すように、フィラメントFLと、フィラメント端子41,42とを接続する。具体的には、フィラメントFLの脚部LG1とフィラメント端子41とを接続し、フィラメントFLの脚部LG2とフィラメント端子42とを接続する。一方で、絶縁体51及び絶縁体52を収束電極310に固定する。具体的には、絶縁体51を収束電極310の第2収容孔13に固定し、絶縁体52を収束電極310の第2収容孔14に固定する。絶縁体51及び絶縁体52を収束電極310に固定する方法は、カシメやろう付けである。
【0024】
続いて、焼き嵌めによりフィラメント端子41及びフィラメント端子42を、それぞれ、絶縁体51及び絶縁体52に固定する。具体的には、まず、収束電極310の外側に配置されたヒータ80を用いて絶縁体51及び絶縁体52を加熱し、絶縁体51の内径D51及び絶縁体52の内径D52を熱膨張により拡大させる。加熱の温度は、例えば、500℃程度である。これにより、内径D51がフィラメント端子41の外径D41より大きくなり、内径D52がフィラメント端子42の外径D42よりも大きくなる。なお、組み立て前の常温下において、内径D51は外径D41よりも小さく、内径D52は外径D42よりも小さい。
【0025】
加熱により絶縁体51及び絶縁体52が所定の温度に達した後に、延出方向Xに向かってフィラメント端子41,42を動かすことで、フィラメント端子41を絶縁体51の貫通孔51Aに挿入し、フィラメント端子42を絶縁体52の貫通孔52Aに挿入する。この時、フィラメント端子41,42は、収束電極310の溝部331から挿入される。つまり、フィラメント端子41及びフィラメント端子42は、最初に溝部331を通過し、次に第1収容孔11,12を通過し、最後に絶縁体51,52の貫通孔51A,52Aを通過する。なお、図5Aでは、フィラメント端子41,42が移動する方向である延出方向Xと重力方向Gとを一致させて記載しているが、一致している場合に限定されず、例えば、延出方向Xと重力方向Gとが直交していてもよい。フィラメント端子41,42ではなく収束電極310を移動させて、フィラメント端子41,42を貫通孔51A,52Aに挿入してもよい。
【0026】
一方で、ベース60の水平面61にブロック70を設置する。具体的には、ブロック70を基準面71がベース60と反対側に位置するように水平面61に設置する。この時、重力方向Gに向かってブロック70、ベース60の順に位置している。ベース60にブロック70を設置し、かつ、フィラメント端子41,42を貫通孔51A,52Bに挿入した後、絶縁体51,52、フィラメントFL、及びフィラメント端子41,42が収容されている収束電極310をベース60に設置する。この時、ブロック70が収束電極310の溝部331に位置するように収束電極310をベース60に設置する。なお、収束電極310がベース60に設置されるまでの間、重力方向Gに向かって電子放出源321が収束電極310から落下することを防止するために、電子放出源321を支持する必要がある。電子放出源321を支持する方法としては、例えば、図示しないワイヤーをフィラメント端子41,42のフィラメントFLが接続されていない側の端部に固定して吊るす方法がある。
収束電極310をベース60に設置した後、ブロック70の基準面71にフィラメントFLのコイル部C1が接触するように、フィラメント端子41及びフィラメント端子42を移動させることで、フィラメントFLの位置調整を行う。フィラメントFLの位置が決まったら、絶縁体51,52を冷却する。これにより、フィラメント端子41,42は絶縁体51,52に固定される。なお、フィラメントFLの位置調整を行っている際、ヒータ80で絶縁体を加熱してもよいし、加熱していなくともよい。ヒータ80で加熱している場合、フィラメントFLの位置が決まったらヒータ80による加熱を止めて、絶縁体51,52を冷却する。
【0027】
なお、上記の製造方法では、焼き嵌めによってフィラメント端子41,42を絶縁体51,52に固定する例を説明したが、締り嵌めによってフィラメント端子41,42が絶縁体51,52に固定されていればよく、冷やし嵌めや圧入によってフィラメント端子41,42を絶縁体51,52に固定してもよい。以下に、冷やし嵌めによってフィラメント端子41,42を絶縁体51,52に固定する場合、及び圧入によってフィラメント端子41,42を絶縁体51,52に固定する場合における締り嵌めの方法を説明する。
【0028】
冷やし嵌めの場合、フィラメントFLと、フィラメント端子41,42とを接続し、絶縁体51及び絶縁体52を収束電極310に固定した後、フィラメント端子41,42を冷却する。フィラメント端子41,42の冷却は、例えば、液体窒素やドライアイスを用いて行うことができる。冷却によりフィラメント端子41,42が所定の温度に達した後に、フィラメント端子41を絶縁体51の貫通孔51Aに挿入し、フィラメント端子42を絶縁体52の貫通孔52Aに挿入する。
【0029】
圧入の場合、フィラメントFLと、フィラメント端子41,42とを接続し、絶縁体51及び絶縁体52を収束電極310に固定した後、所定の大きさ以上の延出方向Xにおける荷重をフィラメント端子41,42及び絶縁体51,52に作用させ、フィラメント端子41を絶縁体51の貫通孔51Aに挿入し、フィラメント端子42を絶縁体52の貫通孔52Aに挿入する。
また、焼き嵌めによる製造方法で説明した絶縁体51,52の加熱と、冷やし嵌めによる製造方法で説明したフィラメント端子41,42の冷却とを組み合わせて、締り嵌め行うことでフィラメント端子41,42を絶縁体51,52に固定してもよい。
【0030】
上記のように構成された本実施形態に係る電子銃、X線管、及び電子銃の製造方法によれば、電子銃は、フィラメントFLと、フィラメント端子41,42と、絶縁体51,52と、収束電極310と、を備えている。フィラメント端子41及びフィラメント端子42は、それぞれ、貫通孔51A及び貫通孔52Aに接し、絶縁体51及び絶縁体52に固定されている。
【0031】
X線管は、上記電子銃に加え、陽極ターゲット21及び外囲器10を備えている。
また、上記電子銃の製造方法は、締り嵌めによりフィラメント端子41及びフィラメント端子42を、それぞれ、絶縁体51及び絶縁体52に固定する方法を含んでいる。また、締り嵌めの方法は、焼き嵌め、冷やし嵌め、圧入等である。これにより、フィラメントFLが収束電極310に対して移動することを防止できる電子銃、X線管、及び電子銃の製造方法を得ることができる。
【0032】
(変形例)
上記実施形態の変形例について説明する。ただし、陰極電子銃は、変形例で説明する構成以外、上記実施形態と同様の構成である。
図6は、本実施形態の変形例に係る陰極電子銃31の一部を示す背面図である。図6では、フィラメント端子41、絶縁体51、及び収束電極310を記載している。以下、フィラメント端子41及び絶縁体51を例に説明するが、フィラメント端子42及び絶縁体52についても同様の構成を有している。
【0033】
図6に示すように、収束電極310は、第2収容孔13にフィラメント端子41及び絶縁体51を収容している。フィラメント端子41を囲む絶縁体51は、第1絶縁体51Bと第2絶縁体51Cとから構成されている。第1絶縁体51Bの外周の形状及び第2絶縁体51Cの外周の形状は、それぞれ、円環を分割した形状である。本変形例において、絶縁体51は、第1絶縁体51B及び第2絶縁体51Cの2つの絶縁体から構成されているが、3つ以上の絶縁体によって構成されていてもよい。絶縁体51は、カシメによって収束電極310に固定されている。
【0034】
フィラメント端子41は、第1絶縁体51B及び第2絶縁体51Cと接し、第1絶縁体51B及び第2絶縁体51Cに固定されている。フィラメント端子41は、収束電極310に第1絶縁体51B及び第2絶縁体51Cをカシメによって固定することで、第1絶縁体51B及び第2絶縁体51Cに固定される。具体的には、収束電極310の第2面312をたたくことで突出部313,314が形成され、突出部313により第1絶縁体51Bがフィラメント端子41に接触し、突出部314により第2絶縁体51Cがフィラメント端子41に接触し、フィラメント端子41は第1絶縁体51B及び第2絶縁体51Cに固定される。本変形例において、2箇所の突出部313,314が形成される場合を説明したが、1箇所でも3箇所以上でもよい。
【0035】
上記のように構成された本実施形態の変形例に係る電子銃及びX線管によれば、電子銃は、フィラメントFLと、フィラメント端子41,42と、絶縁体51,52と、収束電極310とを備えている。絶縁体51,52は、複数個の絶縁体から構成されている。絶縁体51,52を収束電極310に固定することで、フィラメント端子41,42は、それぞれ、絶縁体51,52に固定される。これにより、上記実施形態と同様の効果に加え、組み立てが容易な電子銃、及びX線管を得ることができる。
【0036】
本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上述した新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上記実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
上記実施形態では回転陽極型X線管を例に説明したが、本発明は、外囲器、陽極ターゲット、及び陰極電子銃を備えるX線管に適用可能であり、固定陽極型X線管を含むすべてのX線管において適用可能である。
【符号の説明】
【0037】
1…X線管、10…外囲器、11,12…第1収容孔、13,14…第2収容孔、20…陽極、21…陽極ターゲット、23…回転機構、30…陰極、31…陰極電子銃、33…支持部、41,42…フィラメント端子、51,52…絶縁体、51A,52A…貫通孔、51B…第1絶縁体、51C…第2絶縁体、80…ヒータ、310…収束電極、331…溝部、FL…フィラメント、X…延出方向
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6