(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119923
(43)【公開日】2023-08-29
(54)【発明の名称】車両乗員検知装置、車両乗員検知方法、及び車両乗員検知プログラム
(51)【国際特許分類】
G01V 11/00 20060101AFI20230822BHJP
G01S 13/56 20060101ALI20230822BHJP
G08B 21/22 20060101ALI20230822BHJP
G08B 21/24 20060101ALI20230822BHJP
G01V 3/12 20060101ALI20230822BHJP
G08B 21/00 20060101ALI20230822BHJP
G08B 23/00 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
G01V11/00
G01S13/56
G08B21/22
G08B21/24
G01V3/12 A
G08B21/00 U
G08B23/00 530A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022023057
(22)【出願日】2022-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 謙太
【テーマコード(参考)】
2G105
5C086
5C087
5J070
【Fターム(参考)】
2G105AA01
2G105BB01
2G105BB11
2G105CC01
2G105DD02
2G105EE02
2G105HH01
2G105JJ02
5C086AA21
5C086AA22
5C086BA22
5C086CA06
5C086CA21
5C086CA23
5C086CA30
5C086DA01
5C086DA40
5C086FA02
5C086FA06
5C086FA11
5C087AA02
5C087AA03
5C087AA10
5C087AA11
5C087AA19
5C087AA32
5C087AA37
5C087AA44
5C087DD03
5C087DD14
5C087EE14
5C087EE18
5C087FF02
5C087FF04
5C087GG08
5C087GG66
5C087GG70
5C087GG84
5J070AB24
5J070AC02
5J070AC06
5J070AE09
5J070AF03
5J070AH23
5J070AK22
5J070BA01
(57)【要約】
【課題】より高精度な車内置き去り検知が可能な車両乗員検知装置を提供すること。
【解決手段】車両乗員検知装置10は、車両Uに搭載され、車両U内の物体を検知する電波センサ20のセンサ信号を取得する第1取得部11と、車両Uに搭載され、車両Uの振動を検知する振動センサ30のセンサ信号を取得する第2取得部12と、電波センサ20のセンサ信号に基づいて、現在時点の車両U内の物体の存在状態を解析し、その解析結果から車両U内における乗員の存在有無の判定を実施する乗員判定部14と、振動センサ30のセンサ信号に基づいて、現在時点の車両Uの振動状態を解析し、車両Uが振動していないときには乗員判定部14における前記判定の実施を許可し、車両Uが振動しているときには乗員判定部14における前記判定の実施を不許可とする検知タイミング制御部15と、車両Uの外部に乗員判定部14の判定結果を報知する報知部16と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、前記車両内の物体を検知する電波センサのセンサ信号を取得する第1取得部と、
前記車両に搭載され、前記車両の振動を検知する振動センサのセンサ信号を取得する第2取得部と、
前記電波センサのセンサ信号に基づいて、現在時点の前記車両内の物体の存在状態を解析し、その解析結果から前記車両内における乗員の存在有無の判定を実施する乗員判定部と、
前記振動センサのセンサ信号に基づいて、現在時点の前記車両の振動状態を解析し、前記車両が振動していないときには前記乗員判定部における前記判定の実施を許可し、前記車両が振動しているときには前記乗員判定部における前記判定の実施を不許可とする検知タイミング制御部と、
前記車両の外部に前記乗員判定部の判定結果を報知する報知部と、
を備える車両乗員検知装置。
【請求項2】
前記乗員判定部は、前記電波センサのセンサ信号の周波数解析を行い、前記車両内において第1の特定周波数帯域で動いている物体の存在有無によって、前記車両内における乗員の存在有無に係る前記判定を実施し、
前記検知タイミング制御部は、前記振動センサのセンサ信号の周波数解析を行い、前記車両が第2の特定周波数帯域において閾値以上の大きさで振動しているか否かによって、前記乗員判定部における前記判定の実施の許可/不許可を切り替える、
請求項1に記載の車両乗員検知装置。
【請求項3】
前記第1の特定周波数帯域及び前記第2の特定周波数帯域は、少なくとも人の呼吸周波数に相当する周波数帯域を含む、
請求項1または2に記載の車両乗員検知装置。
【請求項4】
前記車両に搭載され、ユーザーによる前記車両の放置/非放置に係る状態変化を検知する車両状態検知センサのセンサ信号を取得する第3取得部を更に備え、
前記検知タイミング制御部は、前記車両状態検知センサのセンサ信号に基づいて、前記車両が放置状態となっているときにのみ、前記乗員判定部における前記判定の実施を許可する、
請求項1~3の何れか一項に記載の車両乗員検知装置。
【請求項5】
前記乗員判定部は、前記車両が非放置状態から放置状態に切り替わったタイミングで、前記判定を実施する、
請求項4に記載の車両乗員検知装置。
【請求項6】
前記乗員判定部は、前記車両が放置状態となっている間、前記判定を定期的に実施する、
請求項4又は5に記載の車両乗員検知装置。
【請求項7】
前記報知部は、前記車両に搭載された警告音発生装置又は警告光発生装置を用いて、前記車両の周囲に前記乗員判定部における前記判定の結果を報知する、
請求項1~6の何れか一項に記載の車両乗員検知装置。
【請求項8】
前記報知部は、前記車両に搭載された無線通信装置を用いて、ユーザーに前記乗員判定部における前記判定の結果を報知する、
請求項1~7の何れか一項に記載の車両乗員検知装置。
【請求項9】
前記検知タイミング制御部は、前記振動センサのセンサ信号に基づいて、前記車両の振動が所定時間を超えて継続して検知される場合、一旦、前記乗員判定部に対して前記判定を実施させ、且つ、前記車両の振動状態に応じた前記乗員判定部における前記判定の信頼度を算出し、
前記報知部は、前記乗員判定部の前記判定の前記信頼度に応じた報知態様で、前記乗員判定部の前記判定の結果を報知する、
請求項1~8の何れか一項に記載の車両乗員検知装置。
【請求項10】
前記検知タイミング制御部は、前記電波センサの動作のオン/オフ制御、又は、前記電波センサからセンサ信号を取得する動作のオン/オフ制御により、前記乗員判定部における前記判定の実施の許可/不許可を切り替える、
請求項1~9の何れか一項に記載の車両乗員検知装置。
【請求項11】
車両に搭載され、前記車両内の物体を検知する電波センサのセンサ信号を取得する第1処理と、
前記車両に搭載され、前記車両の振動を検知する振動センサのセンサ信号を取得する第2処理と、
前記電波センサのセンサ信号に基づいて、現在時点の前記車両内の物体の存在状態を解析し、その解析結果から前記車両内における乗員の存在有無の判定を実施する第3処理と、
前記振動センサのセンサ信号に基づいて、現在時点の前記車両の振動状態を解析し、前記車両が振動していないときには前記第3処理における前記判定の実施を許可し、前記車両が振動しているときには前記第3処理における前記判定の実施を不許可とする第4処理と、
前記車両の外部に前記第3処理の判定結果を報知する第5処理と、
を有する車両乗員検知方法。
【請求項12】
コンピュータに、
車両に搭載され、前記車両内の物体を検知する電波センサのセンサ信号を取得する第1処理と、
前記車両に搭載され、前記車両の振動を検知する振動センサのセンサ信号を取得する第2処理と、
前記電波センサのセンサ信号に基づいて、現在時点の前記車両内の物体の存在状態を解析し、その解析結果から前記車両内における乗員の存在有無の判定を実施する第3処理と、
前記振動センサのセンサ信号に基づいて、現在時点の前記車両の振動状態を解析し、前記車両が振動していないときには前記第3処理における前記判定の実施を許可し、前記車両が振動しているときには前記第3処理における前記判定の実施を不許可とする第4処理と、
前記車両の外部に前記第3処理の判定結果を報知する第5処理と、
を実行させる車両乗員検知プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両乗員検知装置、車両乗員検知方法、及び車両乗員検知プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、保護者が車室内に子供を置いたまま車外に出ていき、そのまま車室内に子供が存在していることを忘れてしまう、車室内への子供の置き去り(長時間の放置)が発生し、その結果、熱中症などで重大な健康被害に至ることが発生している。
【0003】
そこで、車両内において子供が置き去りにされていることを検知し、警報を行う置き去り検知システムが車両に搭載され始めている。このようなシステムでは、保護者が車両を離れようとする動作をトリガーとして、車両内における子供等の生体の有無を検出し、車両内に生体が存在すると判定した場合に、ホーンやハザードなどの車外への警報、または保護者へのスマートフォンなどへの通知がなされる。
【0004】
例えば、特許文献1には、車両内に人が残された場合に警報を報知する乗員状態検知システムが記載されている。具体的には、乗員状態検知システムは、前方座席(運転席や助手席)から人が離れる離席状態が発生したか否かを検知し、離席状態の発生を検知したときに、車室内の検知対象エリア内の物体が人であると判定されれば警報を出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、この種の置き去り検知システムでは、車室内の人の存在を検知するための手段として、電波センサの利用が検討されている(例えば、特許文献1を参照)。電波センサは、例えば、車室内の天井に取り付けられ、車室内の検知対象エリアに電波(送信波)を送信し、検知対象エリア内の物体で反射された電波(反射波)を受信して、これにより、車室内に存在する物体を検知するセンサである。
【0007】
この種の置き去り検知システムでは、車両が停車している間(即ち、車両が放置されている間)、継続的に、車室内への子供の置き去り状態(以下、「車内置き去り」と略称する)を検知可能とする要請がある。この点、電波センサを利用した置き去り検知システムでは、重量センサや感圧センサを用いた乗員検知とは異なり、人の動きから、直接的に、人と人以外の物体(例えば、荷物)との区別を行うため、車両が放置されている間にも、車内置き去りを高精度且つ容易に検知可能である点で有用である。
【0008】
電波センサを用いた置き去り検知システムでは、通常、電波センサのセンサ信号に人の呼吸周波数成分(例えば、0.16Hz~1.00Hz程度)が含まれるか否かを判定することで、車室内の人の存在を検知する。この検知手法は、人(例えば、子供)の体は、 通常、呼吸周波数で揺動していることを利用したものであり、電波センサのセンサ信号から、かかる周波数成分の信号強度を抽出することで、車両内の物体を人か又は人以外の物体かを区別する。
【0009】
図1は、電波センサを用いた置き去り検知システムにおける、乗員の存在有無に係る検知処理について説明する図である。
図1Aは、車室内に人が存在しない場合に電波センサのセンサ信号から得られるヒートマップの一例を示す図である。
図1Bは、車室内に人が存在する場合に電波センサのセンサ信号から得られるヒートマップの一例を示す図である。
図1Cは、車室内に人が存在しない場合であって、車両が微振動しているとき(正確には、車両の微振動によって車両内の物体が振動しているとき)に電波センサのセンサ信号から得られるヒートマップの一例を示す図である。尚、
図1A~
図1Cのヒートマップは、いずれも、車両が停車中に取得された電波センサのセンサ信号に基づいて、生成されたものである。
【0010】
電波センサのセンサ信号からは、当該電波センサから検知された物体までの距離や、検知された物体の動きの周波数を特定することが可能である。電波センサのセンサ信号から呼吸周波数成分を抽出する方法の一例として、FFT(Fast Fourier Transform)を用いた手法があり、これを電波センサのセンサ信号に適用した場合、センサ信号は、例えば、
図1A~
図1Cのような、周波数(即ち、センサ信号の周波数成分)×距離(即ち、電波センサから検知された物体までの距離)×信号強度(ヒートマップの各領域の輝度)の「ヒートマップ」に変換することができる。
【0011】
乗員の存在有無に係る検知処理では、例えば、このヒートマップから、車両内の適宜な距離範囲(例えば、0.5m~1.00m程度)に観察される人の呼吸周波数成分(例えば、0.16Hz~1.00Hz程度)(
図1A~
図1CのR1領域)の信号強度を抽出し、有人/無人を判定する。尚、
図1Aと
図1Bを参照すると分かるように、車室内に人が存在する場合(
図1B)、車室内に人が存在しない場合(
図1A)と比較して、R1領域の信号強度が強く観察される。
【0012】
しかしながら、本願の発明者らは、かかる電波センサを利用した置き去り検知システムを研究開発している中で、車両は、停車中であっても、外的要因(例えば、車両周囲の風、車両外部の音響、車両に触れた人等からの外力、又は地震等)によって度々微振動しており、かかる車両の微振動に起因して車両内の物体が呼吸周波数(例えば、0.16Hz~1.00Hz程度)と近い揺れ方をすることが分かってきた。尚、車両の微振動に起因して揺れが発生しやすい車両内の物体としては、例えば、ペットボトル中の液体、車室内に吊り下げられた荷物、商品の入った買い物袋、荷物の入ったカゴ等が挙げられる。
【0013】
図1Cでは、このような車両内の物体の揺れにより、車室内に人が存在する場合(
図1B)と同様に、ヒートマップ中のR1領域に強い信号強度が観察された態様を示している。その結果、車両内が無人状態であっても、有人状態(即ち、車内置き去りが発生している)と誤検知してしまい、不必要に警報が出力されてしまうおそれがあった。
【0014】
本開示は、上記問題点に鑑みてなされたもので、より高精度な車内置き去り検知が可能な車両乗員検知装置、車両乗員検知方法、及び車両乗員検知プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前述した課題を解決する主たる本開示は、
車両に搭載され、前記車両内の物体を検知する電波センサのセンサ信号を取得する第1取得部と、
前記車両に搭載され、前記車両の振動を検知する振動センサのセンサ信号を取得する第2取得部と、
前記電波センサのセンサ信号に基づいて、現在時点の前記車両内の物体の存在状態を解析し、その解析結果から前記車両内における乗員の存在有無の判定を実施する乗員判定部と、
前記振動センサのセンサ信号に基づいて、現在時点の前記車両の振動状態を解析し、前記車両が振動していないときには前記乗員判定部における前記判定の実施を許可し、前記車両が振動しているときには前記乗員判定部における前記判定の実施を不許可とする検知タイミング制御部と、
前記車両の外部に前記乗員判定部の判定結果を報知する報知部と、
を備える車両乗員検知装置である。
【0016】
又、他の局面では、
車両に搭載され、前記車両内の物体を検知する電波センサのセンサ信号を取得する第1処理と、
前記車両に搭載され、前記車両の振動を検知する振動センサのセンサ信号を取得する第2処理と、
前記電波センサのセンサ信号に基づいて、現在時点の前記車両内の物体の存在状態を解析し、その解析結果から前記車両内における乗員の存在有無の判定を実施する第3処理と、
前記振動センサのセンサ信号に基づいて、現在時点の前記車両の振動状態を解析し、前記車両が振動していないときには前記第3処理における前記判定の実施を許可し、前記車両が振動しているときには前記第3処理における前記判定の実施を不許可とする第4処理と、
前記車両の外部に前記第3処理の判定結果を報知する第5処理と、
を有する車両乗員検知方法である。
【0017】
又、他の局面では、
コンピュータに、
車両に搭載され、前記車両内の物体を検知する電波センサのセンサ信号を取得する第1処理と、
前記車両に搭載され、前記車両の振動を検知する振動センサのセンサ信号を取得する第2処理と、
前記電波センサのセンサ信号に基づいて、現在時点の前記車両内の物体の存在状態を解析し、その解析結果から前記車両内における乗員の存在有無の判定を実施する第3処理と、
前記振動センサのセンサ信号に基づいて、現在時点の前記車両の振動状態を解析し、前記車両が振動していないときには前記第3処理における前記判定の実施を許可し、前記車両が振動しているときには前記第3処理における前記判定の実施を不許可とする第4処理と、
前記車両の外部に前記第3処理の判定結果を報知する第5処理と、
を実行させる車両乗員検知プログラムである。
【発明の効果】
【0018】
本開示に係る車両乗員検知装置によれば、より高精度な車内置き去り検知が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】電波センサを用いた置き去り検知システムにおける、乗員の存在有無に係る検知処理について説明する図
【
図2】本発明の一実施形態に係る置き去り検知システムの構成の一例を示す図
【
図3】本発明の一実施形態に係る車両乗員検知装置の構成の一例を示す図
【
図4】本発明の一実施形態に係る車両乗員検知装置の動作の一例を示すフローチャート
【
図5】本発明の変形例に係る車両乗員検知装置の動作の一例を示すフローチャート
【
図6】本発明の変形例に係る車両乗員検知装置の例外処理時の報知態様を示す図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施形態について詳細に説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0021】
以下、本発明に係る一実施形態に係る置き去り検知システム(以下、「置き去り検知システム1」と称する)について説明する。
【0022】
図2は、置き去り検知システム1の構成の一例を示す図である。
【0023】
置き去り検知システム1は、車両Uに設けられており、例えば、車両Uに保護者および子供が乗っている状態において、保護者が車両U内(具体的には、車室内)に子供を置いたまま車外に出ていき、そのまま車室内に子供が存在していることを忘れてしまい、車室内へ子供を置き去り状態にしてしまうことを防止するために使用される。尚、車両Uは、例えば複数の乗員が乗車可能な乗用車である。
【0024】
置き去り検知システム1は、車両乗員検知装置10、電波センサ20、振動センサ30、車両状態検知センサ40、警告音発生装置51、警告光発生装置52、及び、無線通信装置53を備えている。
【0025】
置き去り検知システム1は、車両乗員検知装置10が、電波センサ20、振動センサ30及び車両状態検知センサ40のセンサ信号をもとに、車両U内における子供の置き去り状態の発生の有無を判定し、その判定の結果、子供の置き去り状態が発生している場合、警告音発生装置51、警告光発生装置52、及び無線通信装置53を用いて、車両Uの外部に報知するように構成されている。
【0026】
電波センサ20は、車両Uの車室内の検知対象エリアに電波(送信波)を送信し、検知対象エリア内の物体で反射された電波(反射波)を受信することで、送信した電波が物体で反射されて戻ってくるまでの時間差等から、電波センサ20から物体までの距離と、電波センサ20と物体との間の相対速度を求めるセンサである。即ち、電波センサ20は、物体の存在位置、物体の形状、及び物体の動きに応じたセンサ信号を出力する。電波センサ20は、例えば、車両Uの車室内の天井に取り付けられ、車室内の後部座席に存在する物体を検知する。そして、電波センサ20は、自身が検知した物体に係るセンサ信号を、車両乗員検知装置10に対して送信する。
【0027】
電波センサ20のセンサ種別は、特に限定されないが、かかる電波センサ20としては、例えば、ドップラセンサを用いることができる。ドップラセンサは、所定周波数の電波を送信波として検出エリアに向けて送信して、検出エリア内の物体で反射された電波を受信波として受信し、送信波と受信波との周波数の差分に相当するドップラ周波数のセンサ信号を出力する。送信波を反射した物体が移動又は動いていれば、ドップラ効果によって受信波の周波数が物体の速度に応じてシフトする。従って、電波センサ20のセンサ信号に基づいて、物体の速度を求めることができる。例えば、物体が人であれば、物体の速度を求めることで、人の移動速度だけでなく、人の動きとして人の呼吸運動等の生体情報を得ることができる。尚、電波センサ20で用いる電波の周波数帯域は、例えば、ミリ波帯域又はギガ波帯域である。
【0028】
振動センサ30は、車両U内(例えば、車両Uの底板)に設置され、車両Uの振動を検知する。上記したように、車両Uは、停車中であっても、外的要因(例えば、車両周囲の風、車両外部の音響、車両に触れた人等からの外力、又は地震等)によって度々微振動している。振動センサ30は、例えば、かかる外的要因に起因する車両U自体(即ち、車両Uのボディ)の振動状態を検知し、これにより、車両Uの内部に配置された物体全般の振動状態を推定する。
【0029】
振動センサ30のセンサ種別は、車両Uの振動を直接的に検知し得るものであれば、特に限定されないが、かかる振動センサ30としては、例えば、3軸加速度センサを用いることができる。3軸の加速度センサは、振動センサ30に固定の互いに直交する3軸のそれぞれについて振動による加速度を検知し、3軸それぞれの加速度を表すセンサ信号を出力する。
【0030】
車両状態検知センサ40は、ユーザーによる車両Uの放置/非放置に係る状態を検知する。車両状態検知センサ40は、例えば、車両Uのドアロックの施錠/解錠を検知するドアロックセンサによって構成され、車両Uが外側から施錠されたことを検知することで、車両Uが放置状態(車両Uから運転者たるユーザーが離れる状態を意味する。以下同じ)となったことを検知する。車両状態検知センサ40は、例えば、ドアロックセンサに代えて、又は、ドアロックセンサと共にシートベルト着脱センサや、キーオン・キーオフセンサ等によって構成されてもよい。
【0031】
警告音発生装置51、警告光発生装置52、及び、無線通信装置53は、それぞれ、車両Uに設けられた報知手段である。ここで、警告音発生装置51は、例えば、音声により、車両Uの周囲に異常事態の発生を報知可能なスピーカである。又、警告光発生装置52は、例えば、点灯により、車両Uの周囲に異常事態の発生を報知可能なヘッドランプ及び/又はテールランプである。又、無線通信装置53は、例えば、無線通信により、車両Uの管理者であるユーザーの端末U1に対して、異常事態の発生を報知可能な通信機器である。
【0032】
車両乗員検知装置10は、電波センサ20、振動センサ30、及び車両状態検知センサ40それぞれのセンサ信号をもとに、車内置き去りの発生を検知する信号処理装置である。そして、車両乗員検知装置10は、車内置き去りが発生している場合、警告音発生装置51、警告光発生装置52、及び、無線通信装置53を用いて、車両Uの外部に報知する。車両乗員検知装置10は、例えば、車両Uのダッシュボード内に収納されている。
【0033】
車両乗員検知装置10は、置き去り検知システム1の各部(ここでは、電波センサ20、振動センサ30、車両状態検知センサ40、警告音発生装置51、警告光発生装置52、及び、無線通信装置53)と通信し、置き去り検知システム1を統括制御する。車両乗員検知装置10は、例えば、プロセッサとしてのCPU(Central Processing Unit)、制御プログラムを格納したROM(Read Only Memory)等の記憶媒体、RAM(Random Access Memory)等の作業用メモリ、および通信回路を有する。この場合、上記した各部の機能は、CPUが制御プログラムを実行することにより実現される。
【0034】
車両乗員検知装置10、電波センサ20、振動センサ30、車両状態検知センサ40、警告音発生装置51、警告光発生装置52、及び、無線通信装置53は、例えば、車載ネットワーク(例えば、CAN通信プロトコルに準拠した通信ネットワーク)を介して、相互に接続され、必要なデータや制御信号を相互に送受信可能となっている。
【0035】
尚、車両乗員検知装置10、電波センサ20、振動センサ30、車両状態検知センサ40、警告音発生装置51、警告光発生装置52、及び、無線通信装置53は、例えば、車両Uに搭載された車載バッテリーからの電力供給を受けて、車両Uが停車中(即ち、キーオフ中)においても、継続的に動作し得るように構成されている。
【0036】
[車両乗員検知装置10の詳細構成]
ここで、車両乗員検知装置10の詳細構成について、説明する。
【0037】
図3は、車両乗員検知装置10の構成の一例を示す図である。
【0038】
車両乗員検知装置10は、第1取得部11、第2取得部12、第3取得部13、乗員判定部14、検知タイミング制御部15、及び報知部16を有する。
【0039】
第1取得部11は、電波センサ20のセンサ信号を取得し、当該センサ信号を乗員判定部14に送出する。
【0040】
第2取得部12は、振動センサ30のセンサ信号を取得し、当該センサ信号を検知タイミング制御部15に送出する。
【0041】
第3取得部13は、車両状態検知センサ40のセンサ信号を取得し、当該センサ信号を検知タイミング制御部15に送出する。
【0042】
尚、第1取得部11、第2取得部12、及び第3取得部13は、各センサからセンサ信号のローデータ(例えば、アナログ信号)を取得してもよいし、各センサのセンサ信号に対して所定の信号処理(例えば、AD変換処理や信号増幅処理)が施されたデータを取得してもよい。
【0043】
乗員判定部14は、現在時点で得られた電波センサ20のセンサ信号に基づいて、現在時点の車両U内の物体の存在状態を解析し、その解析結果から車両U内における乗員の存在有無の判定を実施する。尚、乗員判定部14の判定処理のタイミングは、検知タイミング制御部15によって制御されており、車両乗員検知装置10では、乗員判定部14の乗員の存在有無に係る判定結果が、車両U内への子供の置き去り状態の発生の有無を示す。
【0044】
より具体的には、乗員判定部14は、
図1を参照して説明したように、FFT、DCT(Discret Cosine Trasform)、又はウェーブレット解析等の手法を用いて電波センサ20のセンサ信号の周波数解析を行い、車両U内において特定周波数範囲内で動いている物体の存在有無によって、車両U内における乗員の存在有無に係る判定を実施する。乗員判定部14は、例えば、電波センサ20のセンサ信号から得られるヒートマップを用いて、車両内の適宜な距離範囲(例えば、0.5m~1.00m程度)に観察される人の呼吸周波数成分(例えば、0.16Hz~1.00Hz程度)の信号強度(
図1のR1領域の信号強度)を抽出し、車両U内における乗員の存在有無に係る判定を実施する。乗員判定部14は、例えば、かかる信号強度の平均値が閾値以上である場合、車両U内が有人状態(車内置き去りが発生している)であると判定し、当該平均値が閾値未満である場合、車両U内が無人状態(車内置き去りが発生していない)であると判定する。そして、乗員判定部14は、自身の判定の結果(即ち、車両U内における乗員の存在有無)を、報知部16に送出する。
【0045】
尚、乗員判定部14にて着目する特定周波数範囲は、例えば、人の呼吸周波数帯域に相当する0.1Hz以上で且つ1.0Hz未満の周波数範囲を含む。又、乗員判定部14にて着目する特定距離範囲は、例えば、電波センサ20から車両Uの車室内の距離範囲に相当する0.5m以上で且つ1.0m未満の距離範囲を含む。
【0046】
報知部16は、乗員判定部14において車両U内に乗員が存在すると判定された場合(即ち、車内置き去りが発生している場合)、警告音発生装置51、警告光発生装置52及び無線通信装置53の少なくとも一つを用いて、車両Uの外部にその判定結果を報知する。
【0047】
報知部16は、例えば、警告音発生装置51を用いて音声を出力することで、車両Uの周囲に、車内置き去りが発生していることを報知する。又、報知部16は、例えば、警告光発生装置52を用いて警告光を出力することで、車両Uの周囲に、車内置き去りが発生していることを報知する。又、報知部16は、例えば、無線通信装置53を用いて、車両Uのユーザーの端末U1にテキストメッセージを送付することで、車両Uのユーザーに車内置き去りが発生していることを報知する。
【0048】
車両乗員検知装置10は、このように乗員判定部14の判定処理により、車内置き去りを検知する。但し、上記したように、車両Uは、停車中であっても、外的要因(例えば、車両Uの周囲の風、車両Uの外部の音響、車両Uに触れた人等からの外力、又は地震等)によって度々微振動しており、かかる車両Uの微振動に起因して車両U内の物体が呼吸周波数と近い揺れ方をする。かかる車両U内の物体(人以外の物体)の振動は、電波センサ20のセンサ信号からは、車両U内における乗員の呼吸運動と明確に識別するのが困難であり、乗員判定部14における誤判定を誘起する。
【0049】
そこで、車両乗員検知装置10は、乗員判定部14における判定処理を実行するタイミングを制御するべく、検知タイミング制御部15の機能を有する。
【0050】
検知タイミング制御部15は、振動センサ30のセンサ信号に基づいて、現在時点の車両Uの振動状態を解析し、車両Uが振動していないときには乗員判定部14における判定の実施を許可し、車両Uが振動しているときには乗員判定部14における判定の実施を不許可とする。
【0051】
より具体的には、検知タイミング制御部15は、振動センサ30のセンサ信号の周波数解析を行い、車両Uが、特定周波数範囲において閾値以上の大きさで振動しているか否かによって、乗員判定部14における判定の実施の許可/不許可を切り替える。尚、検知タイミング制御部15が振動センサ30のセンサ信号の周波数解析を行う手法は、例えば、FFT、DCT、又はウェーブレット解析等の任意の手法であってよい。
【0052】
尚、検知タイミング制御部15にて着目する特定周波数範囲は、例えば、上記した乗員判定部14にて着目する特定周波数範囲と略同一の周波数範囲であり、例えば、少なくとも人の呼吸周波数帯域に相当する0.1Hz以上で且つ1.0Hz未満の周波数範囲を含む。これによって、乗員判定部14において誤判定を誘起する振動が車両Uに発生しているタイミングにおいてのみ、選択的に、乗員判定部14における判定の実施の不許可とすることができる。
【0053】
但し、検知タイミング制御部15にて着目する特定周波数範囲は、乗員判定部14にて着目する特定周波数範囲と異なっていてもよい。例えば、乗員判定部14にて着目する特定周波数範囲を0.16Hz以上で且つ1.00Hzとし、検知タイミング制御部15にて着目する特定周波数範囲を0.10Hz以上で且つ5.00Hzとしてもよい。即ち、車両U内の荷物の振動の仕方は、当該荷物の固有振動周波数や、当該荷物に対する車両Uの振動の伝達の仕方に依拠するため、検知タイミング制御部15にて着目する特定周波数帯域は、乗員判定部14にて着目する特定周波数帯域よりもブロードな帯域に設定されてもよいし、又は、乗員判定部14にて着目する特定周波数帯域から高域側若しくは低域側にずれた周波数帯域に設定されてもよい。
【0054】
又、検知タイミング制御部15は、乗員判定部14における判定の実施の許可/不許可を制御する際、振動センサ30のセンサ信号に加えて、車両状態検知センサ40(例えば、車両Uのドアロックの施錠/解錠を検知するドアロックセンサ)のセンサ信号を参照し、車両Uが放置状態(車両Uから、運転者たるユーザーが離れた状態)となっているときにのみ、乗員判定部14における判定の実施を許可する。これは、車両U内にユーザーが存在するにも関わらず、車内置き去りが発生しているものと誤報知してしまう事態を抑制するためである。
【0055】
つまり、検知タイミング制御部15は、現在時点の車両Uの状態が、放置状態であり、且つ、特定周波数範囲で振動していない状態である場合に限って、乗員判定部14における判定の実施を許可する。尚、検知タイミング制御部15が、乗員判定部14における判定の実施を許可/不許可を切り替える手法は、任意であり、例えば、電波センサ20の動作のオン/オフ制御、又は、電波センサ20からセンサ信号を取得する動作のオン/オフ制御等の手法であってもよい。
【0056】
但し、乗員判定部14は、車両Uが非放置状態から放置状態に切り替わったタイミング(即ち、車両Uがユーザーに放置状態とされた直後のタイミング)のみならず、車両Uが放置状態とされている間、かかる判定処理を継続的に実施し(例えば、10分間隔で定期実施)、常時、車両U内における乗員の存在有無(即ち、車内置き去りの発生の有無)を監視するのが好ましい。
【0057】
これは、車内置き去りの発生は、種々の要因で、車両Uがユーザーに放置状態とされた直後のタイミングにおいては検知されない場合も存在するためである。例えば、車両Uが放置状態となった後に、子供が車両U内に乗り込む場合もある。
【0058】
[車両乗員検知装置10の動作フロー]
以下、本実施形態に係る車両乗員検知装置10の動作の一例について説明する。
【0059】
図4は、車両乗員検知装置10の動作の一例を示すフローチャートである。
図4に示すフローチャートは、例えば、車両乗員検知装置10がコンピュータプログラムに従って、順番に実行する処理である。
【0060】
まず、ステップS0において、車両乗員検知装置10(検知タイミング制御部15)は、所定タイミングまで起動を待ち受ける。ここで、置き去り検知システム1(即ち、車両乗員検知装置10)の起動タイミングとしては、第1に、車両Uが非放置状態から放置状態に切り替わったタイミングが挙げられ、第2に、車両Uが放置状態の間の定期的なタイミングが挙げられる。車両乗員検知装置10は、車両状態検知センサ40のセンサ信号に基づいて、かかるタイミングの到来を検知する。
【0061】
次に、ステップS1において、車両乗員検知装置10(検知タイミング制御部15)は、ステップS0で起動タイミングの到来に応じて、置き去り検知システム1を起動させる。
【0062】
次に、ステップS2において、車両乗員検知装置10(検知タイミング制御部15)は、第2取得部12を介して振動センサ30のセンサ信号を取得し、振動センサ30のセンサ信号に基づいて車両Uの振動の大きさを測定する。
【0063】
このステップS2において、車両乗員検知装置10は、例えば、振動センサ30のセンサ信号を周波数解析し、車両Uの特定の周波数範囲(例えば、人の呼吸周波数範囲である0.16Hz-1.00Hz)の信号強度を抽出する。そして、車両乗員検知装置10は、当該呼吸周波数成分の信号強度の平均値を、現時点での車両Uの振動の大きさとして定義する。
【0064】
次に、ステップS3において、車両乗員検知装置10(検知タイミング制御部15)は、車両Uの振動の大きさが第1閾値(但し、第1閾値は車両Uの振動の大きさがステップS5の処理で誤判定を誘起しない程度の大きさ)未満であるか否かを判定する。ここで、車両乗員検知装置10は、車両Uの振動の大きさが閾値未満である場合(ステップS3:YES)、ステップS4に処理を進め、車両Uの振動の大きさが閾値以上である場合(ステップS3:NO)、ステップS2に戻って、車両Uの振動状態の監視を繰り返し実行する。
【0065】
次に、ステップS4において、車両乗員検知装置10(乗員判定部14)は、第1取得部11を介して電波センサ20のセンサ信号を取得し、車両U内における物体検知を実施する。
【0066】
次に、ステップS5において、車両乗員検知装置10(乗員判定部14)は、ステップS4で得られた電波センサ20のセンサ信号をもとに、車内置き去りの発生の有無を判定する。そして、車両乗員検知装置10(乗員判定部14)は、車内置き去りが発生している場合(ステップS5:YES)、ステップS6に処理を進め、車内置き去りが発生していない場合(ステップS5:NO)、特に処理を実行することなく、ステップS0の起動待ち状態とする。
【0067】
このステップS5において、車両乗員検知装置10(乗員判定部14)は、例えば、電波センサ20のセンサ信号を周波数解析し、車両U内の適宜な距離範囲(例えば、0.5m~1.00m程度)に観察される人の呼吸周波数成分(例えば、0.16Hz~1.00Hz程度)(
図1A~
図1CのR1領域)の信号強度を抽出する。そして、車両乗員検知装置10は、当該R1領域の信号強度の平均値が、第2閾値(但し、第2閾値は人と人以外の物体とを識別するための信号強度)以上である場合、車内置き去りが発生していると判定し(ステップS5:YES)、当該平均値が第2閾値未満である場合(ステップS5:NO)、車内置き去りは不発生であると判定する。
【0068】
次に、ステップS6において、車両乗員検知装置10(報知部16)は、車内置き去りの発生を、無線通信装置53を用いてユーザーの端末U1に報知すると共に、警告音発生装置51及び警告光発生装置52を用いて車両Uの周囲に報知する。
【0069】
[効果]
以上のように、本実施形態に係る車両乗員検知装置10によれば、外的要因(例えば、車両周囲の風、車両外部の音響、車両に触れた人等からの外力、又は地震等)で車両Uに振動が発生しているときには、電波センサ20のセンサ信号を用いた乗員存在(即ち、車両U内への子供の置き去り)の判定処理の実施を行わない構成となっている。
【0070】
これにより、車内置き去りの発生を精度良く検知することが可能であり、車内置き去りの発生の誤検知に伴う警報出力によって徒にユーザーや車両周囲の歩行者を混乱させる事態を回避することが可能である。
【0071】
(変形例)
ところで、車両Uがユーザーに放置状態とされた直後のタイミング(例えば、車両状態検知センサ40のセンサ信号が車両放置に係る検知結果を出力し始めてから、数秒程度の間)においては、ユーザーによる車両Uのドアの開閉動作に伴って発生する車両Uの振動が残留しているおそれがある。その場合、上記実施形態に係る処理フローでは、振動センサ30において、車両Uの振動が閾値以上であるものと検知され、車両Uがユーザーに放置状態とされてから一定期間、乗員判定部14における判定処理が実施されず、車内の置き去り発生を即座に検知できないおそれがある。
【0072】
そこで、本変形例に係る車両乗員検知装置10においては、検知タイミング制御部15は、車両Uの振動が所定時間(例えば、5秒間)を超えて継続して検知される場合、例外処理として、一旦、乗員判定部14に対して乗員の存在有無に係る判定処理を実施させる。
【0073】
但し、その場合、車両Uの振動が存在する状態で、電波センサ20を用いて車両U内における乗員の存在有無の判定を試みることになるため、その判定結果は、通常よりも信頼度が低いものとなる。かかる観点から、検知タイミング制御部15は、上記の例外処理を実施する場合、車両Uの振動状態に応じた乗員判定部14における判定の信頼度を算出し、報知部16に対して、乗員判定部14の判定の信頼度に応じた報知態様で、乗員判定部14の判定の結果を報知させる。
【0074】
図5は、変形例に係る車両乗員検知装置10の置き去り検知に係る動作の一例を示すフローチャートである。尚、
図5のフローチャートは、ステップS15~S16の例外処理が追加されている点、及び、ステップS18~S19の報知処理の点で、
図4のフローチャートと相違している。
【0075】
図6は、変形例に係る車両乗員検知装置10の報知態様を示す図である。
【0076】
まず、ステップS0において、車両乗員検知装置10(検知タイミング制御部15)は、所定タイミングまで起動を待ち受け、当該起動タイミングの到来に応じて、ステップS11において、車両乗員検知装置10(検知タイミング制御部15)は、置き去り検知システム1を起動させる。
【0077】
次に、ステップS12において、車両乗員検知装置10(検知タイミング制御部15)は、第2取得部12を介して振動センサ30のセンサ信号を取得し、振動センサ30のセンサ信号に基づいて車両Uの振動の大きさを測定する。
【0078】
次に、ステップS13において、車両乗員検知装置10(検知タイミング制御部15)は、車両Uの振動の大きさが第1閾値(但し、第1閾値は車両Uの振動の大きさがステップS5の処理で誤判定を誘起しない程度の大きさ)未満であるか否かを判定する。ここで、車両乗員検知装置10は、車両Uの振動の大きさが閾値未満である場合(ステップS13:YES)、ステップS14に処理を進め、車両U内における物体検知を実施し、車両Uの振動の大きさが閾値以上である場合(ステップS13:NO)、ステップS12に戻って、車両Uの振動状態の監視を繰り返し実行する。
【0079】
但し、ステップS13で、NOの判定結果となった場合、車両乗員検知装置10は、車両Uの振動が継続している時間を更新し、当該振動継続時間が閾値時間(例えば、10秒)以上であるか否かを判定する。そして、車両乗員検知装置10は、車両Uの振動継続時間が閾値時間以上である場合、ステップS15~S16の例外処理にフローを進め、車両Uの振動継続時間が閾値時間未満である場合、ステップS12に戻る。
【0080】
ステップS15~S16の例外処理では、ステップS14と同様の電波センサ20のセンサ信号を用いた車両U内における物体検知を実施すると共に(ステップS15)、ステップS12で測定された車両Uの振動の大きさから置き去り判定処理(ステップS5の判定処理を意味する。以下同じ)の信頼度を算出する処理を行う(ステップS16)。尚、置き去り判定処理の信頼度は、例えば、予めデータテーブルとして、車両Uの振動の大きさと関連付けられて記憶されている(
図6を参照)。かかる信頼度は、典型的には、車両Uの振動が大きいほど信頼度が低く、車両Uの振動が小さいほど信頼度が高くなるように算出される。
【0081】
次に、ステップS17において、車両乗員検知装置10(乗員判定部14)は、ステップS5と同様に、電波センサ20のセンサ信号をもとに、車内置き去りの発生の有無を判定する。
【0082】
次に、ステップS18において、車両乗員検知装置10(乗員判定部14)は、置き去り判定処理の判定結果と、置き去り判定処理の信頼度とから報知要否と報知態様を決定する。
【0083】
このステップS18においては、車両乗員検知装置10(乗員判定部14)は、例えば、まず、電波センサ20のセンサ信号を周波数解析し、車両U内の適宜な距離範囲(例えば、0.5m~1.00m程度)に観察される人の呼吸周波数成分(例えば、0.16Hz~1.00Hz程度)(
図1A~
図1CのR1領域)の信号強度の平均値が、第2閾値(但し、第2閾値は人と人以外の物体とを識別するための信号強度)以上であるか否かで、報知要否を決定する。そして、車両乗員検知装置10(乗員判定部14)は、報知要の場合、
図6に示すように、置き去り判定処理の信頼度に基づいて、ユーザーへの報知態様及び車両Uの周囲への報知態様を決定する。尚、ステップS14の処理で得られた電波センサ20のセンサ信号は、例えば、信頼度100%として定義される。
【0084】
かかるユーザーへの報知態様及び車両Uの周囲への報知態様は、
図6に示すように、典型的には、置き去り判定処理の信頼度が大きいほど(即ち、車両Uの振動が小さいほど)、ユーザー及び/又は車両Uの周囲の人の注意を引く度合いが大きい態様で決定される。
図6では、報知態様の一例として、置き去り判定処理の信頼度が大きいほど、ユーザー端末への通知の回数を高頻度としたり、警告音を大音量とする等の態様としたデータテーブルを示している。
【0085】
次に、ステップS19において、車両乗員検知装置10(報知部16)は、ステップS18で決定された報知態様に基づいて、車内置き去りの発生をユーザーの端末U1及び車両Uの周囲に報知する。
【0086】
このように、本変形例に係る車両乗員検知装置10によれば、車内置き去りが発生しているときに、ユーザーによる車両Uのドアの開閉動作に伴って発生する車両Uの振動が残留している場合であっても、かかる車内置き去りの発生有無の可能性をユーザーに報知することが可能である。
【0087】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本開示に係る車両乗員検知装置によれば、より高精度な車内置き去り検知が可能である。
【符号の説明】
【0089】
1 置き去り検知システム
10 車両乗員検知装置
11 第1取得部
12 第2取得部
13 第3取得部
14 乗員判定部
15 タイミング制御部
16 報知部
20 電波センサ
30 振動センサ
40 車両状態検知センサ
51 警告音発生装置
52 警告光発生装置
53 無線通信装置
U 車両
U1 ユーザー端末