(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119927
(43)【公開日】2023-08-29
(54)【発明の名称】歯車装置
(51)【国際特許分類】
F16C 33/58 20060101AFI20230822BHJP
F16H 57/023 20120101ALI20230822BHJP
F16C 19/24 20060101ALI20230822BHJP
F16C 35/067 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
F16C33/58
F16H57/023
F16C19/24
F16C35/067
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022023063
(22)【出願日】2022-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003115
【氏名又は名称】東洋電機製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100161148
【弁理士】
【氏名又は名称】福尾 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100213333
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿山 昌代
(72)【発明者】
【氏名】白土 大悟
【テーマコード(参考)】
3J063
3J117
3J701
【Fターム(参考)】
3J063AA40
3J063AB02
3J063AC01
3J063BB48
3J063CB17
3J063CD02
3J063CD42
3J117AA01
3J117CA04
3J117DA01
3J117DA02
3J117DB01
3J701AA02
3J701AA13
3J701AA42
3J701AA52
3J701AA62
3J701BA56
3J701DA11
3J701FA44
3J701FA46
3J701GA11
(57)【要約】
【課題】性能を維持しつつコストを抑えた歯車装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る歯車装置100は、小歯車40が取り付けられた小歯車軸60に嵌合する軸受構造体10を備える歯車装置100であって、軸受構造体10は、内輪13と、外輪111および軸受蓋112が一体化された一体化構造体11と、一体化構造体11および内輪13の間に、周方向において、所定の間隔を空けて均等に配置されているコロ12と、を備え、外輪111は、周方向における内周面から内輪13側へ突出し、軸方向における一端に設けられた第1鍔部111aを有し、軸受蓋112は、第1鍔部111aとコロ12を介して対面し、軸方向における外輪111の他端に接して設けられた第2鍔部112aを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
小歯車が取り付けられた小歯車軸に嵌合する軸受構造体を備える歯車装置であって、
前記軸受構造体は、
内輪と、
外輪および軸受蓋が一体化された一体化構造体と、
前記一体化構造体および内輪の間に、周方向において、所定の間隔を空けて均等に配置されているコロと、
を備え、
前記外輪は、周方向における内周面から前記内輪側へ突出し、軸方向における一端に設けられた第1鍔部を有し、
前記軸受蓋は、前記第1鍔部と前記コロを介して対面し、軸方向における前記外輪の他端に接して設けられた第2鍔部を有する、歯車装置。
【請求項2】
前記一体化構造体は、前記第1鍔部における前記コロとの相対面、および前記第2鍔部における前記コロとの相対面が、研磨されている、請求項1に記載の歯車装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯車装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、周方向における内周面から内輪側へ突出し、軸方向における一端に設けられた鍔部を有する外輪と、該鍔部とコロを介して対面し、軸方向における外輪の他端に接して設けられた鍔輪と、を備える円筒コロ軸受により、歯車軸を回転自在に支持する歯車装置が知られている。例えば、特許文献1には、両鍔付円筒コロ軸受および片鍔付円筒コロ軸受を備え、片鍔付円筒コロ軸受の鍔部におけるコロとの相対面を研磨することで、スラスト荷重による両鍔付円筒ころ軸受の内輪の軸方向への抜け出しを防止した歯車装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の歯車装置では、円筒コロ軸受の鍔輪および外輪、並びに、該外輪を歯車箱に固定する軸受蓋が、それぞれ別体で設けられていた。このため、部品点数および組み立て工数が多くなり、コストが増大してしまうという問題があった。
【0005】
かかる事情に鑑みてなされた本開示の目的は、性能を維持しつつコストを抑えた歯車装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る歯車装置は、小歯車が取り付けられた小歯車軸に嵌合する軸受構造体を備える歯車装置であって、前記軸受構造体は、内輪と、外輪および軸受蓋が一体化された一体化構造体と、前記一体化構造体および内輪の間に、周方向において、所定の間隔を空けて均等に配置されているコロと、を備え、前記外輪は、周方向における内周面から前記内輪側へ突出し、軸方向における一端に設けられた第1鍔部を有し、前記軸受蓋は、前記第1鍔部と前記コロを介して対面し、軸方向における前記外輪の他端に接して設けられた第2鍔部を有する。
【0007】
さらに、本発明に係る歯車装置において、前記一体化構造体は、前記第1鍔部における前記コロとの相対面、前記第2鍔部における前記コロとの相対面が、研磨されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
性能を維持しつつコストを抑えた歯車装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る歯車装置の構成の一例を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る歯車装置における軸受構造体の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
【0011】
<歯車装置100の構成>
図1および
図2を参照して、本発明の一実施形態に係る歯車装置100の構成の一例について説明する。
【0012】
歯車装置100は、軸受構造体10と、円筒コロ軸受20と、軸受蓋30と、小歯車40と、大歯車50と、小歯車軸60と、車軸70と、歯車箱80と、を備える。なお、
図1および
図2において、小歯車軸60の軸方向をz方向、小歯車40の径方向をr方向、小歯車40の周方向をθ方向、と表記している。
【0013】
軸受構造体10は、一体化構造体11と、複数のコロ12と、内輪13と、を備える。軸受構造体10は、小歯車40が取り付けられた小歯車軸60に嵌合し、小歯車40の一端側に配置される。小歯車40が回転することで、軸受構造体10には、+z方向又は-z方向にスラスト荷重が作用する。
【0014】
一体化構造体11は、外輪111と、軸受蓋112と、が一体化された構造体である(
図2参照)。外輪111は、周方向(θ方向)における内周面S1から内輪13側へ突出し、軸方向(z方向)における一端Xに設けられた鍔部(第1鍔部)111aを有する。軸受蓋112は、鍔部111aとコロ12を介して対面し、軸方向(z方向)における外輪111の他端Yに接して設けられた鍔部(第2鍔部)112aを有する。鍔部111aおよび鍔部112aは、一体化構造体11に作用するスラスト荷重を規制するために設けられる。
【0015】
一体化構造体11の鍔部111aにおける複数のコロ12との相対面、および、一体化構造体11の鍔部112aにおける複数のコロ12との相対面は、公知の研磨方法により、研磨されている。鍔部111aにおける複数のコロ12との相対面、および、鍔部112aにおける複数のコロ12との相対面が研磨されることで、スラスト荷重により軸受構造体10に発生するコロの焼付きなどを抑制し、内輪13の軸方向(z方向)への抜け出しを防止することができる。
【0016】
また、軸受構造体10が、外輪111と、軸受蓋112と、が一体化された一体化構造体11を備えることで、従来の技術と比較して、研磨工程および製造工程を改善することが可能である。従来の円筒コロ軸受に対する研磨工程および製造工程では、外輪の鍔部における複数のコロとの相対面を研磨する研磨工程の他、鍔輪の製造工程と、鍔輪単体に対する研磨工程とを、それぞれ別の工程で行わなければならず、研磨工程および製造工程が煩雑になるという問題があった。また、サイズの小さい鍔輪単体への研磨工程は、非常に手間がかかるという問題もあった。一方で、本実施形態に係る軸受構造体10に対する研磨工程および製造工程では、外輪111と軸受蓋112とを一体化する前に、外輪111の鍔部111aにおける複数のコロ12との相対面を研磨する研磨工程は従来の研磨工程と同様であるが、軸受蓋112の製造工程における鍔部112aの切削工程と、該鍔部112aにおける複数のコロ12との相対面の研磨工程とを、1度の工程で連続加工することができる。すなわち、本実施形態に係る軸受構造体10に対する研磨工程および製造工程は、従来の技術と比較して、簡略化されている。
【0017】
複数のコロ12は、一体化構造体11と内輪13との間に、周方向(θ方向)において、所定の間隔を空けて均等に配置されている。また、複数のコロ12は、例えば、内輪13に取り付けられており、保持器などにより、転動自在に保持されている。複数のコロ12は、その形状が特に限定されるものではなく、例えば、玉状であってよい。
【0018】
内輪13は、例えば、両鍔付内輪である。内輪13は、rz平面における断面形状が、例えば、U字形状である。内輪13は、周方向(θ方向)における内周面S2から一体化構造体11側へ突出し、軸方向(z方向)における両端に設けられた鍔部13a,13bを有する。鍔部13a,13bは、一体化構造体11に作用するスラスト荷重を規制するために設けられる。
【0019】
軸受構造体10において、鍔部111aと複数のコロ12との隙間、鍔部112aと複数のコロ12との隙間、鍔部13a,13bと複数のコロ12との隙間は、適宜調整されている。
【0020】
軸受構造体10が、外輪111と、軸受蓋112と、が一体化された一体化構造体11を備えることで、従来の技術と比較して、組み立て工数を少なくし、且つ、分解の手間を省くことが可能である。従来の円筒コロ軸受における組み立て工程では、軸受蓋に外輪をプレス機などで圧入する工程、鍔輪をプレス機などで圧入する工程を、2度の工程で行わなければならなかった。このため、組み立て工数が多く、且つ、分解の手間がかかるという問題があった。また、鍔輪をプレス機などで圧入する際には、鍔輪の研磨された面を、外輪の鍔部と対面させる必要があるため、鍔輪の表と裏とを誤らないように、組み立て方向に留意しなければならないという問題もあった。一方で、本実施形態に係る軸受構造体10における組み立て工程では鍔輪を必要としないため、外輪を軸受蓋に嵌め込むという1度の組み立て工程のみで、従来における円筒コロ軸受の鍔輪および外輪、並びに、軸受蓋に相当する部品を、組み立てることができる。このため、組み立て工数を少なくし、且つ、分解の手間を省くことができる。また、特に、組み立て方向に留意せずとも、研磨された鍔部111aにおけるコロ12との相対面と、研磨された鍔部112aにおけるコロ12との相対面と、が対面した状態となっているため、組み立て方向を誤る可能性を低減できる。すなわち、本実施形態に係る組み立て工程は、従来の技術と比較して、工数の低減、およびメンテナンス性の向上を図ることができる。
【0021】
円筒コロ軸受20は、公知の片鍔付円筒コロ軸受である。円筒コロ軸受20は、外輪21と、複数のコロ22と、内輪23と、を備える。円筒コロ軸受20は、小歯車40が取り付けられた小歯車軸60に嵌合し、小歯車40の他端側に配置される。小歯車40が回転することで、円筒コロ軸受20には、+z方向又は-z方向にスラスト荷重が作用する。
【0022】
外輪21は、例えば、両鍔付外輪である。外輪21は、rz平面における断面形状が、例えば、U字形状である。外輪21は、周方向(θ方向)における内周面から内輪23側へ突出し、軸方向(z方向)における両端に設けられた鍔部21a,21bを有する。鍔部21a,21bは、円筒コロ軸受20に作用するスラスト荷重を規制するために設けられる。
【0023】
複数のコロ22は、外輪21と内輪23との間に、周方向(θ方向)において、所定の間隔を空けて均等に配置されている。また、複数のコロ22は、例えば、内輪23に取り付けられており、保持器などにより、転動自在に保持されている。複数のコロ22は、その形状が特に限定されるものではなく、例えば、玉状であってよい。
【0024】
内輪23は、例えば、片鍔付内輪である。内輪23は、rz平面における断面形状が、例えば、L字形状である。内輪23は、周方向(θ方向)における内周面から外輪21側へ突出し、軸方向(z方向)における一端に設けられた鍔部23aを有する。鍔部23aは、円筒コロ軸受20に作用するスラスト荷重を規制するために設けられる。
【0025】
円筒コロ軸受20において、鍔部21a,21bと複数のコロ22との隙間、および鍔部23a,23bと複数のコロ22との隙間は、適宜調整されている。
【0026】
軸受蓋30は、円筒コロ軸受20の外輪21に外嵌して、外輪21を保持し、円筒コロ軸受20を歯車箱80に固定する。軸受蓋30は、例えば、アルミニウム、鉄などで形成される。
【0027】
小歯車40は、大歯車50と噛合するように構成される。小歯車40は、小歯車軸60の軸心O1を中心として、小歯車軸60と共に回転する。小歯車40は、小歯車軸60と一体として形成され、回転自在となるように、歯車箱80に収容されている。
【0028】
大歯車50は、小歯車40と噛合するように構成される。大歯車50は、小歯車40との噛合により小歯車軸60の回転が伝達され、車軸70の軸心O2を中心として、車軸70と共に回転する。大歯車50は、車軸70に固定されて、回転自在となるように、歯車箱80に収容されている。大歯車50は、小歯車40の径より大きい径で構成される。また、大歯車50は、その一部が、歯車箱80の下部に存在する潤滑油に浸漬されている。大歯車50が回転すると、潤滑油がかき上げられて、小歯車40と大歯車50との噛み合い面などの潤滑が行われる。
【0029】
小歯車軸60および車軸70は、互いに間隔を空けて平行に設けられる。小歯車軸60および車軸70は、小歯車40および大歯車50を収容する歯車箱80を貫通して設けられる。小歯車軸60は、外部電動機等に接続されており、外部電動機等の駆動により、回転するように構成される。
【0030】
歯車箱80は、小歯車40、大歯車50などを収容する。歯車箱80には、軸受構造体10、軸受蓋30などが嵌め込まれており、これらが固定されている。歯車箱80は、内部に潤滑油を貯溜し、潤滑油面の高さは、大歯車50の一部が潤滑油に浸漬するように、例えば、油面計などによって管理されている。
【0031】
本実施形態に係る歯車装置100は、従来における円筒コロ軸受の鍔輪および外輪、並びに、該外輪を歯車箱に固定する軸受蓋に相当する部品が一体化された一体化構造体11を備える。これにより、部品点数および組み立て工数を減らし、分解の手間を省略することができる。したがって、性能を維持しつつ、部品コスト、製造コスト、およびメンテナンスコストを低減させた歯車装置100を実現できる。
【0032】
また、本実施形態に係る歯車装置100は、鍔部111aにおける複数のコロ12との相対面、鍔部112aにおける複数のコロ12との相対面が、研磨されている。これにより、スラスト荷重による軸受構造体10の内輪13の軸方向への抜け出しを防止することができる。したがって、性能を維持しつつコストを抑えた歯車装置100を実現できる。
【0033】
上述の実施形態は代表的な例として説明したが、本発明の趣旨および範囲内で、多くの変更および置換が可能であることは当業者に明らかである。例えば、本実施形態では、小歯車側の電動機側軸受を一体化構造としたが、反電動機側(車輪側)としてもよく、また、大歯車側の電動機側軸受または反電動機側(車輪側)としてもよい。したがって、本発明は、上述の実施形態によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形および変更が可能である。
【0034】
例えば、本実施形態では、円筒コロ軸受20が、片鍔付内輪および両鍔付外輪を備える構成を一例に挙げて説明したが、円筒コロ軸受20は、両鍔付内輪および両鍔付外輪を備える構成であってもよい。
【0035】
また本実施形態に係る歯車装置は、歯車として、例えば、はすば歯車、平歯車、やまば歯車などを採用することが可能である。
【0036】
また本実施形態に係る歯車装置は、鉄道車両、自動車その他の車両に適用可能である。
【符号の説明】
【0037】
10 軸受構造体
11 一体化構造体
12 コロ
13 内輪
13a,13b 鍔部
20 円筒コロ軸受
21 外輪
21a,21b 鍔部
22 コロ
23 内輪
23a 鍔部
30 軸受蓋
40 小歯車
50 大歯車
60 小歯車軸
70 車軸
80 歯車箱
100 歯車装置
111 外輪
112 軸受蓋
111a 鍔部(第1鍔部)
112a 鍔部(第2鍔部)