(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119932
(43)【公開日】2023-08-29
(54)【発明の名称】浴用固体組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/02 20060101AFI20230822BHJP
A61K 8/92 20060101ALI20230822BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20230822BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
A61K8/02
A61K8/92
A61K8/86
A61Q19/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022023072
(22)【出願日】2022-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】倉持 薫
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB311
4C083AB312
4C083AC011
4C083AC022
4C083AC181
4C083AC182
4C083AC231
4C083AC292
4C083AC331
4C083AC352
4C083AC422
4C083AD042
4C083AD151
4C083AD152
4C083AD202
4C083BB11
4C083BB36
4C083CC25
4C083DD15
4C083DD21
4C083EE03
4C083EE06
4C083EE07
(57)【要約】
【課題】油剤を含有する浴用固体組成物であって、固形化が可能であり、浴水への溶解が速く、浴水の泡立ち及び油浮きが少なく、且つ、入浴後に良好な保湿感が得られる浴用固体組成物を提供する。
【解決手段】次の成分(A)及び(B):
(A)油剤
(B)ポリオキシエチレンアルキルエーテル(b1)を50質量%以上含む非イオン性界面活性剤
を含有する浴用固体組成物であって、前記成分(b1)のエチレンオキシドの平均付加モル数が15以上であり、前記浴用固体組成物中の前記成分(B)の含有量が20質量%未満であり、前記成分(B)に対する前記成分(A)の質量比(A)/(B)が0.20以上7.0以下であり、前記浴用固体組成物中の前記成分(A)及び成分(B)の合計含有量が15質量%以上である浴用固体組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)及び(B):
(A)油剤
(B)ポリオキシエチレンアルキルエーテル(b1)を50質量%以上含む非イオン性界面活性剤
を含有する浴用固体組成物であって、
前記成分(b1)のエチレンオキシドの平均付加モル数が15以上であり、
前記浴用固体組成物中の前記成分(B)の含有量が20質量%未満であり、
前記成分(B)に対する前記成分(A)の質量比(A)/(B)が0.20以上7.0以下であり、
前記浴用固体組成物中の前記成分(A)及び成分(B)の合計含有量が15質量%以上である、浴用固体組成物。
【請求項2】
前記成分(A)がシリコーン油、エステル油、及び炭化水素油からなる群から選ばれる1種以上である、請求項1に記載の浴用固体組成物。
【請求項3】
更に成分(C)として水溶性高分子を含有する、請求項1又は2に記載の浴用固体組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の浴用固体組成物を含有する入浴剤。
【請求項5】
更に有機酸及び炭酸塩を含有する、請求項4に記載の入浴剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴用固体組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
入浴剤に油剤を含有させることで、保湿効果や温まり効果がより向上することが知られている。
油剤を含有し、且つ固体である入浴剤又は浴用香粧品についても検討されている。例えば特許文献1には、少なくとも1種のカロテノイド類を含有する油性成分と、少なくとも1種のリン脂質を含む界面活性剤と、賦形剤とを含み、前記界面活性剤の量が油性成分に対して所定の範囲にある粉末組成物を含有する入浴剤組成物が、浴湯への均一分散が容易で浴湯外観を損なうことなく、スキンケア効果及び安定性に優れることが開示されている。
特許文献2には、HLB及びエチレンオキシ基の平均付加モル数が所定値以上である所定量の液体非イオン性界面活性剤、香料、及びポリオキシアルキレンを含有する香料造粒物が、べたつきの発生を抑制し、粒子強度を十分に高めることができ、それにより保存安定性、並びに、浴用剤等の配合成分として適用した際の成形性が良好になることが開示されている。
【0003】
有機酸及び炭酸塩を含有する、炭酸発泡性の固体入浴剤も知られている。例えば特許文献3には、有機酸、並びに、炭酸塩、非イオン性界面活性剤、数平均分子量が所定の範囲にあるポリエチレングリコール、及び増粘剤を含む造粒物を含有する浴用剤組成物が、浴水面において微細な泡を十分に発生させ、その泡を良好に保持できるとともに、高い保存安定性を得ることができる旨開示されている。
さらに特許文献4には、有機酸、炭酸塩、及び油性成分を含有する固体入浴剤として、脂肪酸エステル及び脂肪酸グリセリドから選ばれる1種以上の油剤、及び所定の非イオン界面活性剤を含有する油性成分、並びに水溶性高分子を特定の割合で含有する造粒物と、炭酸塩、有機酸を含有する発泡性浴用剤組成物が開示され、該造粒物が、炭酸ガスによる温浴効果を充分に高めるべく、油性成分が占める割合を高めつつも良好な造粒性を有することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-132628号公報
【特許文献2】特開2014-94915号公報
【特許文献3】特開2015-113320号公報
【特許文献4】特開2019-142792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献に記載の通り、油剤を含有する固体の入浴剤又は浴用香粧品においては、油剤を固形物に担持させて用いる。そして、これら固体の入浴剤又は浴用香粧品には、保湿効果等を付与するために油剤を多く配合することができ、その場合でも固形化が可能であること、並びに、油剤を担持させた固形物が浴水中に速やかに溶解し、油剤を浴水中に分散できることが求められる。さらに、浴水に投入した際に浴水面の泡切れが悪い場合、あるいは油浮きが生じる場合には、浴水の見た目が悪くなるほか、湯上り時に泡及び油の洗い流しを誘発するため、油剤による保湿効果等が低下する懸念があることから、浴水の泡立ち及び油浮きの抑制も望まれる。
【0006】
本発明は、油剤を含有する浴用固体組成物であって、固形化が可能であり、浴水への溶解が速く、浴水の泡立ち及び油浮きが少なく、且つ、入浴後に良好な保湿感が得られる浴用固体組成物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、油剤と、所定の非イオン性界面活性剤とを特定の割合で含有する浴用固体組成物とすることで上記課題を解決できることを見出した。
すなわち本発明は、下記に関する。
[1]次の成分(A)及び(B):
(A)油剤
(B)ポリオキシエチレンアルキルエーテル(b1)を50質量%以上含む非イオン性界面活性剤
を含有する浴用固体組成物であって、前記成分(b1)のエチレンオキシドの平均付加モル数が15以上であり、前記浴用固体組成物中の前記成分(B)の含有量が20質量%未満であり、前記成分(B)に対する前記成分(A)の質量比(A)/(B)が0.20以上7.0以下であり、前記浴用固体組成物中の前記成分(A)及び成分(B)の合計含有量が15質量%以上である浴用固体組成物。
[2]上記[1]に記載の浴用固体組成物を含有する入浴剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、油剤を含有しつつも固形化が可能であり、浴水への溶解が速く、浴水の泡立ち及び油浮きが少なく、且つ、入浴後に良好な保湿感が得られる浴用固体組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[浴用固体組成物]
本発明の浴用固体組成物は、次の成分(A)及び(B):
(A)油剤
(B)ポリオキシエチレンアルキルエーテル(b1)を50質量%以上含む非イオン性界面活性剤
を含有する浴用固体組成物であって、前記成分(b1)のエチレンオキシドの平均付加モル数が15以上であり、前記浴用固体組成物中の前記成分(B)の含有量が20質量%未満であり、前記成分(B)に対する前記成分(A)の質量比(A)/(B)が0.20以上7.0以下であり、前記浴用固体組成物中の前記成分(A)及び成分(B)の合計含有量が15質量%以上である。
【0010】
本発明において「固体」とは、25℃において固体であることを意味する。また本発明の「浴用固体組成物」は、入浴剤の少なくとも一部を構成する固体組成物を意味し、そのまま入浴剤として用いることができる固体組成物、及び、入浴剤の一部の構成成分として、入浴剤に含有させて用いる固体組成物の両方を包含する。すなわち本発明の浴用固体組成物は、入浴剤の中間物でもある。
【0011】
本発明の浴用固体組成物は上記構成とすることにより、油剤を含有しつつも固形化が可能であり、浴水への溶解が速く、浴水の泡立ち及び油浮きが少なく、且つ、入浴後に良好な保湿感(入浴後の肌感触(しっとり感))が得られる。
【0012】
<成分(A):油剤>
本発明の浴用固体組成物(以下、単に「組成物」ともいう)は、成分(A)として油剤を含有する。成分(A)は、成分(b1)等に担持させる観点、及び、入浴時の保湿感を向上させる観点から、好ましくは液体状油剤である。本発明において「液体状油剤」とは、1気圧下、25℃の環境下で流動性を有する油剤をいい、「固体状油剤」とは、該環境下で流動性を有さない油剤をいう。
【0013】
成分(A)としては、通常入浴剤等に用いられる油剤が挙げられ、例えば、シリコーン油、エステル油、エーテル油、炭化水素油、高級アルコール、及び高級脂肪酸からなる群から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0014】
(シリコーン油)
シリコーン油としては、ジメチルポリシロキサン(ジメチコン)、ジメチコノール(末端にヒドロキシ基を有するジメチルポリシロキサン)、メチルフェニルポリシロキサン、及び変性シリコーンからなる群から選ばれる1種以上が好ましい。
変性シリコーンとしては、アミノ変性シリコーン(アモジメチコン等の、アミノ基を有するジメチルポリシロキサン)、ポリエーテル変性シリコーン、アミノポリエーテル変性シリコーン(アミノ基及びポリエーテル構造を有するシリコーン)、グリセリル変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、脂肪酸変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、脂肪族アルコール変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、アルキル変性シリコーン等が挙げられる。
上記の中でも、組成物の固形化を容易にする観点、浴水への分散性の観点、及び入浴時の保湿感向上の観点から、シリコーン油としては、好ましくはジメチルポリシロキサン、ジメチコノール、メチルフェニルポリシロキサン、及び変性シリコーンからなる群から選ばれる1種以上、より好ましくはジメチルポリシロキサン、ジメチコノール、アミノ変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、及びアミノポリエーテル変性シリコーンからなる群から選ばれる1種以上、更に好ましくはジメチルポリシロキサンである。
【0015】
(エステル油)
エステル油は1気圧下、25℃の環境下で液体状であることが好ましい。エステル油としては、例えば、1価カルボン酸と1価アルコールとのエステル、1価カルボン酸と多価アルコールとのエステル、多価カルボン酸と1価アルコールとのエステルが挙げられる。
【0016】
1価カルボン酸と1価アルコールとのエステルとして、下記一般式(1)で表されるエステルが挙げられる。
R1-COO-R2 (1)
一般式(1)において、R1は、水酸基が置換していてもよく、炭素数1以上25以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基、又は炭素数6以上24以下の芳香族含有炭化水素基を示し、R2は、炭素数1以上30以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示す。
【0017】
R1がアルキル基又はアルケニル基の場合、炭素数は、好ましくは7以上であり、そして、好ましくは23以下、より好ましくは21以下、更に好ましくは19以下、より更に好ましくは17以下である。
R1が芳香族含有炭化水素基の場合、炭素数は、好ましくは6以上であり、そして、好ましくは22以下、より好ましくは20以下である。
R2の炭素数は、好ましくは2以上であり、そして、好ましくは28以下、より好ましくは24以下、更に好ましくは20以下である。
【0018】
一般式(1)で表されるエステルの具体例としては、イソオクタン酸セチル、イソオクタン酸ステアリル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、ラウリン酸ヘキシル、ラウリン酸イソステアリル、ミリスチン酸ブチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸デシル、ミリスチン酸イソトリデシル、ミリスチン酸イソセチル、ミリスチン酸イソステアリル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、パルミチン酸イソステアリル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、ステアリン酸2-エチルヘキシル、ステアリン酸2-ヘキシルデシル、イソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸2-ヘキシルデシル、オレイン酸エチル、オレイン酸イソデシル、オレイン酸オレイル、オレイン酸オクチルドデシル、リノール酸エチル、リノール酸イソプロピル、酢酸ラノリン、ヒマシ油脂肪酸メチル(リシノレイン酸メチル)、及び安息香酸アルキル(アルキルの炭素数12~15)等が挙げられる。なお、これらは1気圧下、25℃の環境下で液体状である。
【0019】
1価カルボン酸と1価アルコールとのエステルとして、下記一般式(2)で表されるエステルも挙げられる。
R3-COO-(AO)n-R4 (2)
一般式(2)において、R3は、水酸基が置換していてもよく、炭素数1以上25以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示し、R4は炭素数6以上24以下の芳香族含有炭化水素基を示す。AOは、炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基を示し、nは1以上50以下の平均付加モル数を表す。
R3は、好ましくは炭素数が7以上であり、そして、好ましくは23以下、より好ましくは21以下、更に好ましくは19以下のアルキル基である。
R4は、好ましくは炭素数が6以上であり、そして、好ましくは22以下、より好ましくは20以下、更に好ましくは18以下の芳香族含有炭化水素基、より更に好ましくはベンジル基である。
AO基は、好ましくはプロピレンオキシ基であり、nは、好ましくは1以上10以下、より好ましくは1以上5以下である。
一般式(2)で表されるエステルの具体例としては、ミリスチン酸とベンジルアルコールのプロピレンオキシド3モル付加体とのエステル、2-エチルヘキサン酸とベンジルアルコールのプロピレンオキシド3モル付加体とのエステル等が挙げられる。
【0020】
1価カルボン酸と多価アルコールとのエステルとしては、下記一般式(3)で表されるエステルが挙げられる。
R5-(OCOR6)p (3)
一般式(3)において、R5は多価アルコール残基を示し、好ましくは炭素数2以上10以下の炭化水素基であり、R6は炭素数1以上25以下の1価カルボン酸残基を示し、pは2以上10以下の整数を示す。
なお、R5はエーテル結合を有してもよいが、好ましくは炭素数2以上10以下の直鎖又は分岐鎖の炭化水素基である。また、pは前記多価アルコールが有するヒドロキシ基と同じ数である。
R6は、好ましくは炭素数が7以上であり、そして、好ましくは23以下、より好ましくは21以下、更に好ましくは19以下のアルキル基である。
【0021】
一般式(3)で表されるエステルとして、ジカプリン酸プロピレングリコール、ジオレイン酸プロピレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ2-エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、ジ(カプリル酸・カプリン酸)プロパンジオール、ジイソステアリン酸プロパンジオール、ジ2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリル、トリ2-エチルヘキシル酸グリセリル、トリ2-ヘプチルウンデカン酸グリセリル、トリ2-エチルヘキシル酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール等が挙げられる。なお、これらは1気圧下、25℃の環境下で液体状である。
エステル油は、合成エステル油、天然油脂のいずれでもよく、天然油脂としてはアボカド油、オリーブ油、ゴマ油、コメヌカ油、サフラワー油、ダイズ油、トウモロコシ油、ナタネ油、ヒマシ油、綿実油、ミンク油等のトリグリセリドが挙げられる。なお、これらは1気圧下、25℃の環境下で液体状である。
【0022】
多価カルボン酸と1価アルコールとのエステルとしては、下記一般式(4)で表されるエステルも挙げられる。
R7-(COOR8)q (4)
一般式(4)において、R7は炭素数2以上10以下の多価カルボン酸残基であり、R8は炭素数1以上25以下の1価アルコール残基を示し、qは2以上10以下の整数である。また、qは前記多価カルボン酸が有するカルボキシ基と同じ数である。
R8は、好ましくは3以上であり、そして、好ましくは23以下、より好ましくは21以下、更に好ましくは19以下である。
具体的には、リンゴ酸ジイソステアリル、コハク酸ジ2-エチルヘキシル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジ2-ヘプチルウンデシル、セバシン酸ジ2-エチルヘキシル、セバシン酸ジイソプロピル、トリメリット酸トリ2-エチルヘキシル等が挙げられる。なお、これらは1気圧下、25℃の環境下で液体状である。
【0023】
上記の中でも、組成物の固形化を容易にする観点、浴水への分散性の観点、及び入浴時の保湿感向上の観点から、エステル油は、好ましくは一般式(1)、一般式(3)及び一般式(4)で表されるエステルからなる群から選ばれる1種以上であり、より好ましくは、一般式(1)及び一般式(3)で表されるエステルからなる群から選ばれる1種以上であり、更に好ましくは、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、及びトリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリルからなる群から選ばれる1種以上である。
【0024】
(エーテル油)
エーテル油は1気圧下、25℃の環境下で液体状であることが好ましい。エーテル油としては、下記一般式(5)で表されるジアルキルエーテル化合物が挙げられる。
R9-O-R10 (5)
一般式(5)において、R9及びR10は、各々独立に、炭素数6以上22以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基、又は炭素数6以上24以下の芳香族炭化水素基を示す。
R9及びR10は、組成物の固形化を容易にする観点、浴水への分散性の観点、及び入浴時の保湿感向上の観点から、好ましくはアルキル基であり、その炭素数は、好ましくは8以上であり、そして、好ましくは18以下、より好ましくは16以下、更に好ましくは12以下である。
【0025】
(炭化水素油)
炭化水素油は1気圧下、25℃の環境下で液体状であることが好ましい。炭化水素油としては、スクワレン、スクワラン、流動パラフィン、流動イソパラフィン、イソヘキサデカン、イソエイコサン、水添ポリイソブテン、軽質流動イソパラフィン、重質流動イソパラフィン、α-オレフィンオリゴマー、及び、シクロパラフィンからなる群から選ばれる1種以上が挙げられる。なお、これらは1気圧下、25℃の環境下で液体状である。
【0026】
(高級アルコール)
高級アルコールは1気圧下、25℃の環境下で液体状であることが好ましい。高級アルコールとしては、炭素数12以上、好ましくは炭素数12以上22以下の脂肪族1価アルコールが好ましく、例えば、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、2-オクチルドデカノール、ベヘニルアルコール、及び、セトステアリルアルコールからなる群から選ばれる1種以上が挙げられる。なお、ラウリルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、2-オクチルドデカノールは1気圧下、25℃の環境下で液体状であり、セチルアルコール、ミリスチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、セトステアリルアルコールは固体状である。
【0027】
(高級脂肪酸)
高級脂肪酸は1気圧下、25℃の環境下で液体状であることが好ましい。高級脂肪酸としては、炭素数8以上、好ましくは炭素数12以上の脂肪酸が好ましく、例えば、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、ヤシ油脂肪酸、ラノリン脂肪酸、イソステアリル酸、及び、イソパルミチン酸からなる群から選ばれる1種以上が挙げられる。なお、オレイン酸、イソステアリル酸、イソパルミチン酸は1気圧下、25℃の環境下で液体状であり、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ヤシ油脂肪酸は1気圧下、25℃の環境下で固体状である。ラノリン脂肪酸は液体状油剤のものが好ましい。
【0028】
成分(A)は、上記のうち1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記の中でも、成分(A)としては、組成物の固形化を容易にする観点、浴水への分散性の観点、及び入浴後の保湿感向上の観点から、好ましくはシリコーン油、エステル油、及び炭化水素油からなる群から選ばれる1種以上であり、より好ましくは前記一般式(1)で表されるエステル、前記一般式(3)で表されるエステル、ジメチルポリシロキサン、及び流動パラフィンからなる群から選ばれる1種以上、更に好ましくはトリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ジメチルポリシロキサン、及び流動パラフィンからなる群から選ばれる1種以上であり、より更に好ましくはトリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリル、ミリスチン酸オクチルドデシル、及びパルミチン酸イソプロピルからなる群から選ばれる1種以上である。
【0029】
<成分(B):非イオン性界面活性剤>
本発明の浴用固体組成物は、成分(B)として、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(b1)を50質量%以上含む非イオン性界面活性剤を含有する。また、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(b1)のエチレンオキシドの平均付加モル数が15以上である。
本発明の浴用固体組成物は成分(B)を所定の割合で含有することにより、油剤を含有しつつも固形化が可能であり、浴水への溶解が速く、浴水の泡立ち及び油浮きが少なく、且つ、入浴後の保湿感にも優れるものとなる。
【0030】
(成分(b1):ポリオキシエチレンアルキルエーテル)
成分(B)である非イオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(b1)を50質量%以上含み、該成分(b1)のエチレンオキシドの平均付加モル数が15以上である。
本発明において、成分(b1)のエチレンオキシドの平均付加モル数(以下「EO平均付加モル数」ともいう)とは、成分(b1)としてポリオキシエチレンアルキルエーテルを2以上用いる場合には、該2以上の成分(b1)のEO平均付加モル数の加重平均値を意味する。
成分(b1)のエチレンオキシドの平均付加モル数は、組成物の固形化を容易にする観点、及び浴水への溶解速度向上の観点から、15以上、好ましくは18以上、より好ましくは20以上、更に好ましくは22以上であり、また、好ましくは150以下、より好ましくは120以下、更に好ましくは100以下、より更に好ましくは80以下、より更に好ましくは60以下、より更に好ましくは40以下である。
非イオン性界面活性剤の中でも、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(b1)を用いることで、得られる浴用固体組成物において成分(b1)は室温(25℃)にて板状の分子結晶を形成していると考えられており、その空隙に油剤を多く担持することができると考えられる。さらに、成分(b1)はエチレンオキシドの平均付加モル数が15以上であることで、浴水への溶解速度がより向上する。
【0031】
ポリオキシエチレンアルキルエーテルのエチレンオキシドの平均付加モル数は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法を用いて、特開2019-182828号公報に記載の方法により求めることができる。
【0032】
成分(b1)は、成分(A)である油剤を多く担持させ、組成物の固形化を容易にする観点から、25℃において固体であることが好ましい。具体的には、成分(b1)の融点又は凝固点は、好ましくは25℃以上、より好ましくは30℃以上、更に好ましくは32℃以上である。成分(b1)の融点又は凝固点の上限は制限されないが、通常、100℃以下であり、好ましくは80℃以下である。
【0033】
成分(b1)として用いられるポリオキシエチレンアルキルエーテルのアルキル炭素数は、組成物の固形化を容易にする観点から、好ましくは8以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは12以上、より更に好ましくは14以上、より更に好ましくは16以上であり、浴水への溶解速度向上の観点から、好ましくは36以下、より好ましくは32以下、更に好ましくは28以下、より更に好ましくは24以下、より更に好ましくは22以下である。
【0034】
成分(b1)の具体例としては、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンエチルへキシルエーテル、ポリオキシエチレンノニルエーテル、ポリオキシエチレンデシルエーテル、ポリオキシエチレンウンデシルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル、ポリオキシエチレンペンタデシルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンへプタデシルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル等が挙げられ、これらのうち1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記の中でも、組成物の固形化を容易にする観点、及び浴水への溶解速度向上の観点から、成分(b1)は、好ましくはポリオキシエチレンデシルエーテル、ポリオキシエチレンウンデシルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル、ポリオキシエチレンペンタデシルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンへプタデシルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、及びポリオキシエチレンベヘニルエーテルからなる群から選ばれる1種以上、より好ましくはポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、及びポリオキシエチレンベヘニルエーテルからなる群から選ばれる1種以上、更に好ましくはポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、及びポリオキシエチレンベヘニルエーテルからなる群から選ばれる1種以上である。
【0035】
成分(B)中の成分(b1)の含有量は、組成物の固形化を容易にする観点、及び浴水への溶解速度向上の観点から、50質量%以上であり、好ましくは55質量%以上、より更に好ましくは60質量%以上、より更に好ましくは70質量%以上、より更に好ましくは75質量%以上、より更に好ましくは80質量%以上、より更に好ましくは90質量%以上、より更に好ましくは95質量%以上であり、また、100質量%以下である。
【0036】
(成分(b2):成分(b1)以外の非イオン性界面活性剤)
本発明の浴用固体組成物は、更に成分(b2)として、成分(b1)以外の非イオン性界面活性剤を含有してもよい。
成分(b1)以外の非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、アルキルグルコシド、アルキルアルカノールアミド、アルキルグリセリルエーテル、高級脂肪酸ショ糖エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、アルキルサッカライド等が挙げられる。
成分(B)中の成分(b2)の含有量は、組成物の固形化を容易にする観点、及び浴水への溶解速度向上の観点から、50質量%以下であり、好ましくは45質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは35質量%以下、より更に好ましくは30質量%以下、より更に好ましくは20質量%以下、より更に好ましくは15質量%以下である。
【0037】
<含有量>
浴用固体組成物中の成分(A)の含有量は、入浴後の保湿感向上の観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは3質量%以上、より更に好ましくは5質量%以上、より更に好ましくは7質量%以上、より更に好ましくは9質量%以上であり、組成物の固形化を容易にする観点、浴水の泡立ち及び油浮きを抑える観点から、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。
【0038】
浴用固体組成物中の成分(B)の含有量は、浴水への溶解速度向上の観点から、20質量%未満である。浴水の油浮きを抑える観点からは、浴用固体組成物中の成分(B)の含有量は、好ましくは1.9質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは3質量%以上、より更に好ましくは5質量%以上であり、浴水への溶解速度を向上させる観点、及び、浴水の泡立ちを抑える観点からは、好ましくは19質量%以下である。
【0039】
浴用固体組成物中の成分(b1)の含有量は、組成物の固形化を容易にする観点、及び浴水への溶解速度向上の観点から、好ましくは0.95質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは1.5質量%以上、より更に好ましくは2.5質量%以上、より更に好ましくは5質量%以上であり、また、20質量%未満であって、好ましくは19質量%以下である。
【0040】
本発明の浴用固体組成物において、成分(B)に対する成分(A)の質量比(A)/(B)は、浴水への溶解速度向上の観点、及び浴水の泡立ちを抑える観点から、0.20以上であり、好ましくは0.30以上、より好ましくは0.40以上、更に好ましくは0.50以上である。また、組成物の固形化を可能にする観点、及び浴水の油浮きを抑える観点から、7.0以下であり、好ましくは6.0以下、より好ましくは5.7以下、更に好ましくは5.0以下、より更に好ましくは4.5以下、より更に好ましくは4.0以下である。
【0041】
浴用固体組成物中の成分(A)及び成分(B)の合計含有量は、入浴後の保湿感を得る観点から、15質量%以上であり、好ましくは20質量%以上、より好ましくは25質量%以上である。上限は特に制限されないが、組成物の固形化を容易にする観点、及び配合の自由度の観点から、好ましくは80質量%以下であり、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは60質量%以下、より更に好ましくは50質量%以下、よりさらに好ましくは35質量%以下である。
【0042】
<成分(C):水溶性高分子>
本発明の浴用固体組成物は、成分(A)を担持させる観点、浴水への溶解速度及び成形性を向上させる観点から、更に成分(C)として水溶性高分子を含有することが好ましい。
当該水溶性高分子としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ソーダ、ポリエチレンイミン、ポリビニルアルコール等の合成水溶性高分子;にかわ、ゼラチン、コラーゲンタンパク、カゼイン、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、ファーセレラン、タマリンドガム、ペクチン、アラビアガム、グアーガム、キサンタンガム、トラガントガム、ローカストビーンガム、デキストリン、デキストラン、寒天、澱粉等の天然水溶性高分子;カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、アルギン酸プロピレングリコールエステル、酸化澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉、カチオン澱粉等の半合成水溶性高分子;等が挙げられ、これらのうち1種又は2種以上を用いることができる。
これらの中でも、浴水への溶解速度及び成形性を向上させる観点から、成分(C)としてはポリエチレングリコール及びデキストリンからなる群から選ばれる1種以上が好ましく、ポリエチレングリコールがより好ましい。ポリエチレングリコールの分子量は、好ましくは4,000以上20,000以下であり、より好ましくは5,000以上15,000以下である。
【0043】
成分(C)を用いる場合、浴用固体組成物中の成分(C)の含有量は、浴水への溶解速度及び成形性を向上させる観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上である。また、入浴後の保湿感向上の観点から、当該含有量は85質量%以下であり、好ましくは80質量%以下、より好ましくは75質量%以下である。
【0044】
また、浴用固体組成物中の成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計含有量は、組成物の固形化を容易にする観点、浴水への溶解速度向上の観点、浴水の泡立ち及び油浮きを抑える観点、入浴後の保湿感及び成形性向上の観点から、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、より更に好ましくは80質量%以上、より更に好ましくは90質量%以上であり、100質量%以下である。
また、本発明の浴用固体組成物は成分(A)、(b1)、(C)のみを含有することが好ましいが、浴水への溶解速度向上の観点、浴水の泡立ち及び油浮きを抑える観点から、成分(B)以外の非イオン性界面活性剤である成分(b2)を含有してもよい。但し、浴用固体組成物が成分(b2)を含有する場合、その含有量は、浴用固体組成物中、好ましくは5質量%以下、より好ましくは2質量%以下である。
【0045】
<剤型、製造方法>
本発明の浴用固体組成物の剤型は特に制限されないが、浴水への溶解性の観点及び取り扱い性の観点から、好ましくは粒状である。
浴用固体組成物の製造方法は特に制限されず、例えば、成分(A)、成分(B)、及び必要に応じて用いるその他の成分を配合し、公知の装置を用いて加熱溶融、攪拌、混合した後に冷却、固化させることにより製造できる。剤型を粒状とする場合、粒として形成してもよく、固化させた後に粉砕等により粒状に加工してもよい。
本発明の浴用固体組成物の剤型が粒状である場合、その粒径は、取り扱い性向上の観点、及び、浴水への溶解速度向上の観点から、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは1mm以上であり、また、好ましくは3mm以下、より好ましくは2mm以下である。
本発明の浴用固体組成物は、成分(A)と成分(B)を、より融点が高い成分の融点以上の温度に加熱し、混合して得られる、固形組成物であることが好ましい。本発明の浴用固体組成物は、成分(B)が成分(A)を担持していると考えられる。前述したように、成分(B)(成分(b1))である非イオン性界面活性剤が室温(25℃)で分子結晶を形成し、その空隙に油剤を多く担持することができるためである。
なお、浴用固体組成物が成分(C)を含有する場合は、浴用固体組成物は、成分(A)と成分(B)、成分(C)を、成分(B)又は成分(C)のうちより融点が高い成分の融点以上の温度に加熱し、混合して得られるものが好ましい。
成分(A)が液体状油剤である場合は、成分(A)は液体状油剤として成分(B)に担持され、成分(A)が固体状油剤である場合は、成分(A)は固体状油剤として成分(B)に担持される。
【0046】
[入浴剤]
本発明の入浴剤は、前述した本発明の浴用固体組成物を含有する。
本発明の入浴剤は前記浴用固体組成物のみからなる入浴剤であってもよく、前記浴用固体組成物以外の成分、例えば、更に有機酸及び炭酸塩を含有する入浴剤であってもよい。入浴剤に有機酸及び炭酸塩を含有させることで、炭酸ガス発泡性を付与し、さらに、炭酸ガスと成分(A)との相乗効果により、入浴時の温まり効果を向上させることができる。
【0047】
入浴剤が前記浴用固体組成物のみからなる入浴剤である場合、該入浴剤の組成及びその好ましい態様は、浴用固体組成物と同様である。
【0048】
入浴剤が前記浴用固体組成物以外の成分を含有する場合、入浴剤中の浴用固体組成物の含有量は、浴用固体組成物の組成、及び浴用固体組成物以外の配合成分の種類等によっても異なるが、好ましくは5質量%以上95質量%以下、より好ましくは10質量%以上90質量%以下である。入浴剤が前記浴用固体組成物以外の成分を含有する場合、該入浴剤に含有される浴用固体組成物の剤型は粒状が好ましい。
【0049】
<有機酸>
有機酸としては、カルボン酸系化合物の他、有機スルホン酸系化合物、有機リン酸系化合物が挙げられるが、入浴剤の発泡性、浴水への溶解性及び成形性の観点からはカルボン酸系化合物が好ましい。当該カルボン酸系化合物は少なくとも1個のカルボキシ基を有する化合物であればよいが、発泡性を付与する観点からは2個以上のカルボキシ基を有する多価カルボン酸が好ましい。またカルボン酸系化合物は、脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸のいずれでもよい。
脂肪族カルボン酸としては、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、マレイン酸、グルタル酸、シュウ酸、フマル酸、コハク酸、アジピン酸等が挙げられ、芳香族カルボン酸としては、安息香酸、サリチル酸、ピロリドンカルボン酸等が挙げられる。
上記の中でも、入浴剤の発泡性、浴水への溶解性及び成形性の観点、並びに経済性の観点から、有機酸としては脂肪族カルボン酸が好ましく、フマル酸、コハク酸、及びアジピン酸からなる群から選ばれる1種以上がより好ましく、フマル酸及びコハク酸からなる群から選ばれる1種以上が更に好ましく、フマル酸を含むことがより更に好ましい。
【0050】
入浴剤が有機酸を含有する場合、入浴剤中の有機酸の含有量は、発泡性向上の観点から、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上であり、入浴剤の浴水への溶解速度向上の観点から、好ましくは50質量%以下である。
【0051】
<炭酸塩>
炭酸塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸ジアルカリ金属塩;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属重炭酸塩;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等のアルカリ土類金属炭酸塩;等が挙げられ、これらのうち1種又は2種以上を用いることができる。入浴剤の発泡性、浴水への溶解性及び成形性を向上させる観点から、炭酸塩としては炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム及び炭酸カルシウムからなる群から選ばれる1種以上が好ましく、炭酸ナトリウム及び炭酸水素ナトリウムからなる群から選ばれる1種以上がより好ましく、炭酸ナトリウム及び炭酸水素ナトリウムを含むことが更に好ましい。
【0052】
入浴剤が炭酸塩を含有する場合、入浴剤中の炭酸塩の含有量は、発泡性及び成形性向上の観点から、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上である。また、入浴剤の浴水への溶解速度向上の観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下である。
【0053】
入浴剤が有機酸及び炭酸塩を含有する場合、入浴剤中の炭酸塩に対する有機酸の含有量比は、発泡性向上の観点、及び入浴剤の浴水への溶解速度向上の観点から、質量比[有機酸/炭酸塩]として、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.8以上であり、また、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.5以下である。
【0054】
<その他の成分>
本発明の入浴剤には、その他の成分として、通常入浴剤に用いられる成分を適宜含有させることができる。かかる成分としては、例えば、アニオン性界面活性剤、成分(B)以外の非イオン性界面活性剤、又は両性界面活性剤;硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、水素化マグネシウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、塩化アンモニウム、硫酸鉄、リン酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム等の、炭酸塩以外の無機塩;ケイ酸カルシウム、ブドウ糖等の、成分(C)以外の賦形剤;崩壊助剤;生薬等の薬効成分;色素;香料;等が挙げられる。
また本発明の入浴剤に、前述した水溶性高分子である成分(C)を追加で配合することもできる。
入浴剤中の上記その他の成分の合計含有量は、組成物の固形化を容易にする観点、浴水の泡立ちを抑える観点、及び成形性向上の観点から、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは12質量%以下である。
【0055】
<剤型、製造方法>
本発明の入浴剤は、取り扱い性向上の観点から、好ましくは固体入浴剤である。
入浴剤が前記浴用固体組成物のみからなる入浴剤である場合、該入浴剤の剤型は、好ましくは浴用固体組成物と同様(粒状)である。
【0056】
また、本発明の入浴剤が前述した有機酸、炭酸塩、及び/又は、その他の成分を含有する場合には、浴用固体組成物と有機酸、炭酸塩、及び/又は、その他の成分を混合するのが好ましい。該有機酸及び、炭酸塩を含有する入浴剤の剤型(製品形態)としては、錠剤が好ましい。錠剤には、打錠剤やブリケット型剤及びタブレット剤型が含まれ、成形性の観点からは打錠剤であることがより好ましい。なお、本発明の入浴剤が前述した有機酸及び炭酸塩を含有する場合には、粒状に形成した前記浴用固体組成物を有機酸及び炭酸塩等の成分と混合するのが好ましい。
本発明の入浴剤が打錠剤又はブリケット型剤、タブレット剤型である場合、プレス打錠機やブリケットマシーンを用いて圧縮成形法等の常法に従って製造することができる。
【0057】
本発明の入浴剤は、油剤を含有しつつも固形化が可能であり、浴水への溶解が速く、且つ、入浴後に良好な保湿感が得られる。
【実施例0058】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は実施例の範囲に限定されない。
【0059】
実施例1~17、比較例1~12(浴用固体組成物(入浴剤)の製造及び評価)
表1~3に示す各成分を混合した後、加熱して溶融し、60℃に保温した溶融混合物を、直径2cm、高さ1cmのアルミカップに注ぎ、放冷して室温(25℃)で固化させ、浴用固体組成物からなる入浴剤を製造した。
また、以下に記載の方法にて入浴剤の外観(固形化の可否)、浴水への溶解時間、浴水の泡立ち、浴水の油浮き、及び、入浴後の肌感触について測定及び評価を行った。結果を表1~3に示す。
なお、表1~3に示す各成分の含有量(質量%)は、いずれもアクティブ量である。
【0060】
<外観(固形化の可否)>
前記方法により製造した入浴剤の外観及び表面状態を観察し、下記基準にて評価した。「B」評価以上であれば、入浴剤の固形化評価として合格とする。
AA:1相で固化し、油の滲み出しがなく、さらさらしている
A:1相で固化し、わずかに油の滲み出しがあるが、AA評価と同等レベルのさらさら感がある
B:1相で固化しているが油の滲み出しがあり、指に油がつくが、実用レベルである
C:1相で固化しているが油の滲み出しがあり、表面にべたつきがあり、実用レベルではない
D:2相に分離しておらず1相であるが、固化していない
E:液体相と固体相に分離している、あるいは、液体状態である
【0061】
<浴水への溶解時間>
前記方法により製造した入浴剤を粒径2mm以下の粒状に粉砕し、そのうち0.5gを、ビーカーに入れた40℃の浴水500mL中に投入し、デジタル撹拌機を用いて200rpmにて攪拌した。入浴剤を浴水中に投入してから溶けきるまでの時間を計測し、表に示した。溶解時間が5分以内であれば溶解速度が高いものとし、合格とする。
【0062】
<浴水の泡立ち>
前記「浴水への溶解時間」を評価した後の浴水を、再度500rpmで30秒間攪拌して浴水表面を泡立てた後3分間放置した。3分経過後の浴水表面(液面)の状態を目視観察し、下記基準にて評価した。「C」評価以上を合格とする。
A:液面に泡がない
B:浴水の入ったビーカーの縁にわずかに泡がある
C:液面の半分未満が泡で覆われている
D:液面の全体には満たないが半分以上が泡で覆われている
E:液面全体が泡で覆われている
【0063】
<浴水の油浮き>
前記「浴水の泡立ち」を評価した後の、入浴剤を完全に溶解させた浴水の表面(液面)の状態を目視観察し、下記基準にて評価した。「C」評価以上を合格とする。
AA:油浮きがない
A:直径1mm未満の油滴がわずかにある
B:直径1~5mmの油滴がある
C:直径5mm超の油滴があるが、液面を占める油の割合は50%未満である
D:液面の50%以上を油が占めている
【0064】
<入浴後の肌感触>
前記方法により製造した入浴剤10gを40℃、150Lの浴水に投入し、専門パネラーが10分間の入浴を行って、入浴後の肌感触(しっとり感)について下記基準にて評価した。「B」評価以上を合格とする。なお、評価が高いほど入浴後の保湿感が高い。
AA:Aよりもしっとりする
A:しっとりする
B:Aよりはしっとりしないが合格レベル
C:Aよりもしっとりせず、不合格レベル
D:しっとりしない(さら湯と同等である)
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
表中に記載の成分の詳細は下記である。
*1:トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリル、花王(株)製「ココナードMT」
*2:ミリスチン酸オクチルドデシル、花王(株)製「エキセパールO-DM」
*3:パルミチン酸イソプロピル、花王(株)製「エキセパールIPP」
*4:ジメチコン、信越化学工業(株)製「KF-96A 10CS」
*5:流動パラフィン、カネダ(株)製「ハイコールK-230」
*6:POE(23)ラウリルエーテル、花王(株)製「エマルゲン123P」、融点34℃
*7:POE(20)セチルエーテル、日本エマルジョン(株)製「EMALEX 120」、凝固点42℃
*8:POE(15)ステアリルエーテル、日本エマルジョン(株)製「EMALEX 615」、融点41℃
*9:POE(30)ステアリルエーテル、日本エマルジョン(株)製「EMALEX 630」、凝固点46℃
*10:POE(20)ベヘニルエーテル、日本エマルジョン(株)製「EMALEX BHA20」、融点52℃
*11:POE(6)ステアリルエーテル、花王(株)製「エマルゲン306P」、融点31℃
*12:テトラオレイン酸POE(40)ソルビット、花王(株)製「レオドール440V」、凝固点-20℃
*13:ポリエチレングリコール、花王(株)製「K-PEG6000LA」、分子量7300-9300
【0069】
表1、2より、本実施例の入浴剤は、外観、浴水への溶解速度、浴水の泡立ち及び油浮きの少なさ、並びに、入浴後の肌感触のいずれにおいても優れることがわかる。これに対し、表3に示す本比較例の入浴剤は、上記いずれかの評価項目において性能が劣る結果となった。
【0070】
実施例18~21、比較例13~15(炭酸発泡性入浴剤の製造及び評価)
表4に示す浴用固体組成物と、それ以外の各成分を表に記載の割合にて混合した後、プレス打錠機にて圧力10.0Nで圧縮成型することで、質量40gの錠剤(打錠剤)型の炭酸発泡性入浴剤を製造した。
また、以下に記載の方法にて錠剤の外観、浴水への溶解の速さ、及び、入浴後の肌感触について評価を行った。結果を表4に示す。
なお、表4に示す各成分の含有量(質量%)は、いずれもアクティブ量である。
【0071】
<錠剤の外観>
前記方法により製造した入浴剤(錠剤)の外観を観察し、下記基準にて評価した。「C」評価以上であれば合格とする。
A:油の滲み出しがなく、外観は良好である
B:油の滲み出しがほとんどなく、外観は良好である
C:油の滲み出しはあるが、外観は良好である
D:油の滲み出しがあり、外観不良である
【0072】
<浴水への溶解の速さ>
前記方法により製造した入浴剤1錠を40℃の浴水150L中に投入した。入浴剤が溶けきるまでの時間を計測し、下記基準にて評価した。「C」評価以上であれば合格とする。
A:入浴剤が10分以内にすべて溶解する。
B:入浴剤が15分以内にすべて溶解する。
C:入浴剤が20分以内にすべて溶解する。
D:入浴剤が20分以上溶解しない。
【0073】
<入浴後の肌感触>
前記方法により製造した入浴剤1錠を40℃、150Lの浴水に投入し、専門パネラーが10分間の入浴を行って、入浴後の肌感触(しっとり感)について下記基準にて評価した。「C」評価以上を合格とする。
A:Bよりもしっとりする
B:しっとりする
C:Bよりはしっとりしないが合格レベル
D:しっとりしない(さら湯と同等である)
【0074】
本発明によれば、油剤を含有しつつも固形化が可能であり、浴水への溶解が速く、浴水の泡立ち及び油浮きが少なく、且つ、入浴後に良好な保湿感が得られる浴用固体組成物を提供することができる。