(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119941
(43)【公開日】2023-08-29
(54)【発明の名称】剥離用フィルム及び剥離性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20230822BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20230822BHJP
C08F 210/16 20060101ALI20230822BHJP
C08L 23/16 20060101ALI20230822BHJP
C08L 23/06 20060101ALI20230822BHJP
B29C 51/30 20060101ALI20230822BHJP
C09J 7/40 20180101ALI20230822BHJP
【FI】
B32B27/00 L
B32B27/32
C08F210/16
C08L23/16
C08L23/06
B29C51/30
C09J7/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022023087
(22)【出願日】2022-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】303060664
【氏名又は名称】日本ポリエチレン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岩持 広賢
(72)【発明者】
【氏名】坂本 慎治
【テーマコード(参考)】
4F100
4F202
4J002
4J004
4J100
【Fターム(参考)】
4F100AK04
4F100AK04B
4F100AK06
4F100AK06B
4F100AK62
4F100AK62B
4F100AK63
4F100AK63B
4F100AK64
4F100AK64B
4F100AR00A
4F100AT00B
4F100BA02
4F100BA07
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4F100DG10A
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4F100EJ17
4F100EJ42
4F100GB41
4F100JA06
4F100JA06B
4F100JA13
4F100JA13B
4F100JK06
4F202AA04
4F202AE10
4F202AG01
4F202AR06
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4F202CA17
4F202CB01
4F202CB26
4F202CN01
4J002BB03X
4J002BB15W
4J002GF00
4J004DA02
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4J100AA16R
4J100CA04
4J100CA05
4J100DA09
4J100DA13
4J100DA14
4J100DA19
4J100FA10
4J100FA18
4J100JA15
(57)【要約】 (修正有)
【課題】シリコーンを含まず、種々の粘着剤に対して良好な易剥離性を有する剥離用フィルム及び剥離性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】剥離層(A)及び基材層(B)の少なくとも2層を有する剥離用フィルム。剥離層(A):少なくとも下記(c-1)~(c-5)を有するエチレン・プロピレン共重合体を含有するポリエチレン樹脂組成物を含む。(c-1)エチレン由来構成単位を80~98mol%、プロピレン由来構成単位を2~20mol%含み、第3のα-オレフィンに由来構成単位を7mol%以下含んでいてもよい(c-2)MFRが1~100g/10分(c-3)密度が0.88~0.94g/cm
3(c-4)エチレン・プロピレン共重合体中のビニル、ビニリデンの合計量が0.20(個/total 1000C)以上(c-5)エチレン・プロピレン共重合体中のコモノマーによる分岐数(Y)と密度(X)が特定の式を満たす。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
剥離層(A)および基材層(B)の少なくとも2層を有し、
前記剥離層(A)は、前記基材層(B)上に直接、または基材層に積層された別の樹脂層の上に積層することにより形成され、前記剥離層(A)が、それぞれ下記の特性を満たすことを特徴とする剥離用フィルム。
剥離層(A):下記(c-1)~(c-6)の特性を有するエチレン・プロピレン共重合体(C)を含有するポリエチレン樹脂組成物(E)を含む
(c-1)エチレンに由来する構成単位を主成分として80~98mol%、プロピレンに由来する構成単位を必須の副成分として2~20mol%含み、エチレン及びプロピレン以外の第3のα-オレフィンに由来する構成単位を副成分として7mol%以下含んでいてもよい
(ただし、前記第3のα-オレフィンに由来する構成単位を含む場合は、エチレンに由来する構成単位とプロピレンに由来する構成単位と第3のα-オレフィンに由来する構成単位の合計が100mol%を超えない)
(c-2)MFR(190℃、21.18N荷重)が1~100g/10分
(c-3)密度が0.88~0.94g/cm3
(c-4)エチレン・プロピレン共重合体中のビニル、ビニリデンの合計量が0.20(個/total 1000C)以上
(ただし、ビニル、ビニリデンの個数は、NMRで測定した主鎖、側鎖の合計1000個の炭素数あたりの数である。)
(c-5)エチレン・プロピレン共重合体中のコモノマーによる分岐数(Y)と密度(X)が下記式(1)の関係を満たす。
式(1):(Y)≧ -566×(X)+540
(ただし、Yは、NMRで測定した主鎖、側鎖の合計1000個の炭素数あたりの数である。)
(c-6)エチレン・プロピレン共重合体を厚み1mmに熱プレスして得られるサンプルの表面に対するダイヤモンドプリズムを用いた全反射測定法によるフーリエ変換赤外分光分析で得られた赤外吸収スペクトルにおいて、波長1400cm-1から波長1290cm-1の範囲でベースラインを引いた時の波長1368cm-1の吸光度(D1368)に対して、波長1280cm-1から波長1240cm-1の範囲でベースラインを引いた時の波長1260cm-1の吸光度(D1260)、及び波長1110cm-1から波長1080cm-1の範囲でベースラインを引いた時の波長1089cm-1の吸光度(D1089)、波長1040cm-1から波長1000cm-1の範囲でベースラインを引いた時の波長1019cm-1の吸光度(D1019)、波長817cm-1から波長777cm-1の範囲でベースラインを引いた時の波長797cm-1の吸光度(D797)のそれぞれの比である、(D1260/D1368)、(D1089/D1368)、(D1019/D1368)、(D797/D1368)が全て0.10以下
【請求項2】
前記エチレン・プロピレン共重合体(C)が、さらに下記(c-5’)の関係を満たすことを特徴とする、請求項1に記載の剥離用フィルム。
(c-5’)エチレン・プロピレン共重合体中のコモノマーによる分岐数(Y)と密度(X)が下記式(2)の関係を満たす。
式(2):(Y)≧ -1360×(X)+1270
(ただし、Yは、NMRで測定した主鎖、側鎖の合計1000個の炭素数あたりの数である。)
【請求項3】
前記ポリエチレン樹脂組成物(E)が、さらに、下記(d-1)~(d-2)の特性を有する高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン(D)を含有することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の剥離用フィルム。
(d-1)MFR(190℃、21.18N荷重)が0.1~20g/10分
(d-2)密度が0.915~0.930g/cm3
【請求項4】
前記ポリエチレン樹脂組成物(E)が、前記エチレン・プロピレン共重合体(C)95~10重量%及び前記高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン(D)5~90重量%を含有することを特徴とする、請求項3に記載の剥離用フィルム。
【請求項5】
前記ポリエチレン樹脂組成物(E)が、さらに下記特性(e-1)~(e-2)を満たすことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の剥離用フィルム。
(e-1)MFRが1~100g/10分
(e-2)密度が0.88~0.94g/cm3
【請求項6】
前記ポリエチレン樹脂組成物(E)が、さらに下記特性(e-1’)~(e―2’)を満たすことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の剥離用フィルム。
(e-1’)MFRが5~60g/10分
(e-2’)密度が0.88~0.92g/cm3
【請求項7】
前記剥離層(A)が前記基材層(B)上に、押出コーティング法により形成されていることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の剥離用フィルム。
【請求項8】
下記(c-1)~(c-6)の特性を有するエチレン・プロピレン共重合体(C)を含有するポリエチレン樹脂組成物であることを特徴とする、剥離性樹脂組成物。
(c-1)エチレンに由来する構成単位を主成分として80~98mol%、プロピレンに由来する構成単位を必須の副成分として2~20mol%含み、エチレン及びプロピレン以外の第3のα-オレフィンに由来する構成単位を副成分として7mol%以下含んでいてもよい
(ただし、前記第3のα-オレフィンに由来する構成単位を含む場合は、エチレンに由来する構成単位とプロピレンに由来する構成単位と第3のα-オレフィンに由来する構成単位の合計が100mol%を超えない)
(c-2)MFR(190℃、21.18N荷重)が1~100g/10分
(c-3)密度が0.88~0.94g/cm3
(c-4)エチレン・プロピレン共重合体中のビニル、ビニリデンの合計量が0.20(個/total 1000C)以上
(ただし、ビニル、ビニリデンの個数は、NMRで測定した主鎖、側鎖の合計1000個の炭素数あたりの数である。)
(c-5)エチレン・プロピレン共重合体中のコモノマーによる分岐数(Y)と密度(X)が下記式(1)の関係を満たす。
式(1):(Y)≧ -566×(X)+540
(ただし、Yは、NMRで測定した主鎖、側鎖の合計1000個の炭素数あたりの数である。)
(c-6)エチレン・プロピレン共重合体を厚み1mmに熱プレスして得られるサンプルの表面に対するダイヤモンドプリズムを用いた全反射測定法によるフーリエ変換赤外分光分析で得られた赤外吸収スペクトルにおいて、波長1400cm-1から波長1290cm-1の範囲でベースラインを引いた時の波長1368cm-1の吸光度(D1368)に対して、波長1280cm-1から波長1240cm-1の範囲でベースラインを引いた時の波長1260cm-1の吸光度(D1260)、及び波長1110cm-1から波長1080cm-1の範囲でベースラインを引いた時の波長1089cm-1の吸光度(D1089)、波長1040cm-1から波長1000cm-1の範囲でベースラインを引いた時の波長1019cm-1の吸光度(D1019)、波長817cm-1から波長777cm-1の範囲でベースラインを引いた時の波長797cm-1の吸光度(D797)のそれぞれの比である、(D1260/D1368)、(D1089/D1368)、(D1019/D1368)、(D797/D1368)が全て0.10以下
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は剥離用フィルム及びその剥離層を形成するための剥離性樹脂組成物に関する。なお、本発明において、「剥離用フィルム」に使用される「フィルム」の語はシートをも含む概念として使用されている。
【背景技術】
【0002】
剥離用フィルムは、基材の少なくとも一方に剥離層を有するものであり、粘着面または接着面を保護するものとして広く使用されている。そして、剥離層を構成する剥離性樹脂組成物(以下、「離型剤」とも称する)としては、シリコーン系離型剤と非シリコーン系離型剤とに大別される。
【0003】
シリコーン系離型剤は、易剥離性に優れるが、電子機器や電気機器分野では微量発生するシロキサン系ガスによって腐食や接点トラブル等が発生することが問題となっている。
【0004】
非シリコーン系離型剤としては、フッ化物などのハロゲン化合物により表面エネルギーを低減した離型剤、長鎖アルキル基含有ポリマーであるポリビニルカルバメート(PVAとC18H37NCOとの反応物)から成る離型剤、ポリエチレンイミンとC18H37NCOとの反応物からなる離型剤、パーフルオロアルキルビニルを主成分とした共重合体からなる離型剤、ポリエチレン系樹脂組成物からなる離型剤などが提案されている。
【0005】
非シリコーン系離型剤は、シロキサン系ガスの発生の問題がないという利点がある。しかしながら、一般に、非シリコーン系離型剤は、シリコーン系離型剤に比べて大きな剥離力を要するという問題点がある。更に、非シリコーン系離型剤は、以下の様に、使用する材料系によっては固有の問題を含む。
【0006】
例えば、フッ化物などのハロゲン化合物により表面エネルギーを低減した離型剤は、廃棄物処理における環境負荷軽減のために脱ハロゲン化が求められる現時代の趨勢に合わない。また、パーフルオロアルキルビニルを主成分とした共重合体から成る離型剤は、優れた易剥離性を有するが、一般に有機溶剤に不溶でFRシンナーのような特殊で高価な溶媒にしか溶解しないため用途が大幅に制限されている。
【0007】
また、ポリエチレン系樹脂組成物からなる離型剤には、低密度ポリエチレン系樹脂を主成分とする離型剤(例えば、特許文献1参照)、高密度ポリエチレン系樹脂を主成分とする離型剤(例えば、特許文献2及び3参照)があり、低密度ポリエチレン系樹脂を主成分とする離型剤は、大きな剥離力が必要で、感圧接着層保護フィルムとして使用した場合、剥離時に接着層の一部が剥離層表面に移行したり、剥離後の接着層の表面の形状がパルス状となるスティックスリップと呼ばれる剥離を引き起こしたりする問題がある。高密度ポリエチレン系樹脂を主成分とする離型剤は、極性ポリマーを基材として使用した際に基材との密着性に劣ることや剥離力が大きいことが問題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表平11-508958号公報
【特許文献2】特開2000ー239624号公報
【特許文献3】特開2000-119411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、シリコーンを含まず、種々の粘着剤に対して良好な易剥離性を有する剥離用フィルム及び剥離性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記問題を解決すべく鋭意検討した結果、新たに以下に示す(c-1)~(c-6)の新領域の物性を有するエチレン・プロピレン共重合体を試作するとともに、かかる特定の特性を有するエチレン・プロピレン共重合体、すなわち、エチレンである主成分とプロピレンである副成分を所定量含み、密度およびMFRがある一定の範囲であり、共重合体中に含まれる二重結合の量が多く、分岐数が多いエチレン・プロピレン共重合体を含有し、好ましくは特定の高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレンを更に含有するポリエチレン樹脂組成物を用いて、基材層上に剥離層を形成した積層体は、粘着テープに対して優れた易剥離性を有することを見出し、本発明を完成させるに至った。
なお、この種のエチレン・プロピレン共重合体は、アルミニウム等と他の基材間の接着性樹脂として良好な接着性を示すことが近年本出願人により研究されている。しかし、今般意外にも、粘着面に対しては別の作用機構による易剥離性を有することを見出し、剥離用フィルム、及び剥離性樹脂組成物という新用途を本願発明により提供するものである。
【0011】
即ち、本発明の第1の発明によれば、剥離層(A)および基材層(B)の少なくとも2層を有し、
剥離層(A)は、前記基材層(B)上に直接、または基材層に積層された別の樹脂層の上に積層することにより形成され、剥離層(A)が、それぞれ下記の特性を満たすことを特徴とする剥離用フィルムが提供される。
剥離層(A):下記(c-1)~(c-6)の特性を有するエチレン・プロピレン共重合体(C)を含有するポリエチレン樹脂組成物(E)を含む
(c-1)エチレンに由来する構成単位を主成分として80~98mol%、プロピレンに由来する構成単位を必須の副成分として2~20mol%含み、エチレン及びプロピレン以外の第3のα-オレフィンに由来する構成単位を副成分として7mol%以下含んでいてもよい
(ただし、前記第3のα-オレフィンに由来する構成単位を含む場合は、エチレンに由来する構成単位とプロピレンに由来する構成単位と第3のα-オレフィンに由来する構成単位の合計が100mol%を超えない)
(c-2)MFR(190℃、21.18N荷重)が1~100g/10分
(c-3)密度が0.88~0.94g/cm3
(c-4)エチレン・プロピレン共重合体中のビニル、ビニリデンの合計量が0.20(個/total 1000C)以上
(ただし、ビニル、ビニリデンの個数は、NMRで測定した主鎖、側鎖の合計1000個の炭素数あたりの数である。)
(c-5)エチレン・プロピレン共重合体中のコモノマーによる分岐数(Y)と密度(X)が下記式(1)の関係を満たす。
式(1):(Y)≧ -566×(X)+540
(ただし、Yは、NMRで測定した主鎖、側鎖の合計1000個の炭素数あたりの数である。)
(c-6)エチレン・プロピレン共重合体を厚み1mmに熱プレスして得られるサンプルの表面に対するダイヤモンドプリズムを用いた全反射測定法によるフーリエ変換赤外分光分析で得られた赤外吸収スペクトルにおいて、波長1400cm-1から波長1290cm-1の範囲でベースラインを引いた時の波長1368cm-1の吸光度(D1368)に対して、波長1280cm-1から波長1240cm-1の範囲でベースラインを引いた時の波長1260cm-1の吸光度(D1260)及び、波長1110cm-1から波長1080cm-1の範囲でベースラインを引いた時の波長1089cm-1の吸光度(D1089)、波長1040cm-1から波長1000cm-1の範囲でベースラインを引いた時の波長1019cm-1の吸光度(D1019)、波長817cm-1から波長777cm-1の範囲でベースラインを引いた時の波長797cm-1の吸光度(D797)のそれぞれの比である、(D1260/D1368)、(D1089/D1368)、(D1019/D1368)、(D797/D1368)が全て0.10以下。
【0012】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、前記エチレン・プロピレン共重合体(C)が、さらに下記(c-5’)の関係を満たすことを特徴とする、剥離用フィルムが提供される。
(c-5’)エチレン・プロピレン共重合体中のコモノマーによる分岐数(Y)と密度(X)が下記式(2)の関係を満たす。
式(2):(Y)≧ -1360×(X)+1270
(ただし、Yは、NMRで測定した主鎖、側鎖の合計1000個の炭素数あたりの数である。)
【0013】
また、本発明の第3の発明によれば、第1、第2の発明において、前記ポリエチレン樹脂組成物(E)が、さらに下記(d-1)~(d-2)の特性を有する高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン(D)を含有することを特徴とする、剥離用フィルムが提供される。
(d-1)MFR(190℃、21.18N荷重)が0.1~20g/10分
(d-2)密度が0.915~0.930g/cm3
【0014】
また、本発明の第4の発明によれば、第1~第3のいずれかの発明において、ポリエチレン樹脂組成物(E)が、エチレン・プロピレン共重合体(C)95~10重量%及び高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン(D)5~90重量%を含有することを特徴とする、剥離用フィルムが提供される。
【0015】
また、本発明の第5の発明によれば、第1~第4のいずれかの発明において、前記ポリエチレン樹脂組成物(E)が、さらに下記特性(e-1)~(e-2)を満たすことを特徴とする、剥離用フィルムが提供される。
(e-1)MFRが1~100g/10分
(e-2)密度が0.88~0.94g/cm3
【0016】
また、本発明の第6の発明によれば、第1~第5のいずれかの発明において、前記ポリエチレン樹脂組成物(E)が、さらに下記特性(e-1’)~(e―2’)を満たすことを特徴とする、剥離用フィルムが提供される。
(e-1)MFRが5~60g/10分
(e-2)密度が0.88~0.92g/cm3
【0017】
また、本発明の第7の発明によれば、第1~第6のいずれかの発明において、前記剥離層(A)が前記基材層(B)上に、押出コーティング法により形成されていることを特徴とする、剥離用フィルムが提供される。
【0018】
また、本発明の第8の発明によれば、下記(c-1)~(c-6)の特性を有するエチレン・プロピレン共重合体(C)を含有するポリエチレン樹脂組成物であることを特徴とする、剥離性樹脂組成物が提供される。
(c-1)エチレンに由来する構成単位を主成分として80~98mol%、プロピレンに由来する構成単位を必須の副成分として2~20mol%含み、エチレン及びプロピレン以外の第3のα-オレフィンに由来する構成単位を副成分として7mol%以下含んでいてもよい
(ただし、前記第3のα-オレフィンに由来する構成単位を含む場合は、エチレンに由来する構成単位とプロピレンに由来する構成単位と第3のα-オレフィンに由来する構成単位の合計が100mol%を超えない)
(c-2)MFR(190℃、21.18N荷重)が1~100g/10分
(c-3)密度が0.88~0.94g/cm3
(c-4)エチレン・プロピレン共重合体中のビニル、ビニリデンの合計量が0.20(個/total 1000C)以上
(ただし、ビニル、ビニリデンの個数は、NMRで測定した主鎖、側鎖の合計1000個の炭素数あたりの数である。)
(c-5)エチレン・プロピレン共重合体中のコモノマーによる分岐数(Y)と密度(X)が下記式(1)の関係を満たす。
式(1):(Y)≧ -566×(X)+540
(ただし、Yは、NMRで測定した主鎖、側鎖の合計1000個の炭素数あたりの数である。)
(c-6)エチレン・プロピレン共重合体を厚み1mmに熱プレスして得られるサンプルの表面に対するダイヤモンドプリズムを用いた全反射測定法によるフーリエ変換赤外分光分析で得られた赤外吸収スペクトルにおいて、波長1400cm-1から波長1290cm-1の範囲でベースラインを引いた時の波長1368cm-1の吸光度(D1368)に対して、波長1280cm-1から波長1240cm-1の範囲でベースラインを引いた時の波長1260cm-1の吸光度(D1260)、及び波長1110cm-1から波長1080cm-1の範囲でベースラインを引いた時の波長1089cm-1の吸光度(D1089)、波長1040cm-1から波長1000cm-1の範囲でベースラインを引いた時の波長1019cm-1の吸光度(D1019)、波長817cm-1から波長777cm-1の範囲でベースラインを引いた時の波長797cm-1の吸光度(D797)のそれぞれの比である、(D1260/D1368)、(D1089/D1368)、(D1019/D1368)、(D797/D1368)が全て0.10以下
【発明の効果】
【0019】
本発明の剥離用フィルム及び剥離性樹脂組成物はシリコーンを含まずに粘着面に対する離型性能に優れ、離型剤としての本来の要求特性を十分満足するものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本発明の積層体の一例の断面を示す概略図である。
【
図2】
図2は、本発明の積層体の別の一例の断面を示す概略図である。
【
図3】
図3は、エチレン・プロピレン共重合体または他のエチレン・α‐オレフィン共重合体の密度と、テープ剥離強度の関係を示した図である。
【符号の説明】
【0021】
1 基材層(B)
2 剥離層(A)とは異なる別な樹脂層
3 剥離層(A)
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、特定のエチレン・プロピレン共重合体および好ましくは特定の高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレンを含むポリエチレン樹脂組成物を含有する剥離層と、少なくとも該剥離層と接する面が紙、またはポリプロピレン樹脂、またはポリエチレンテレフタレート樹脂、ナイロン樹脂を主成分として必須とするフィルムである基材層とを備えることを特徴とする積層体に係るものである。
以下、本発明において用いられる各成分および、それらを用いた積層体等について詳細に説明する。
【0023】
1.ポリエチレン樹脂組成物(E)
本発明のポリエチレン樹脂組成物(以下、単に樹脂組成物ともいう)は、エチレン・プロピレン共重合体(C)を含有することを特徴とし、更に高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン(D)を含むことが好ましく、エチレン・プロピレン共重合体(C)95~10重量%および高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン(D)5~90重量%を含有することが更に好ましい。
【0024】
(1)エチレン・プロピレン共重合体(C)
本発明において用いられるエチレン・プロピレン共重合体(C)は、下記(c-1)~(c-6)の特性を有する。
(c-1)エチレンに由来する構成単位を主成分として80~98mol%、プロピレンに由来する構成単位を必須の副成分として2~20mol%含み、エチレン及びプロピレン以外の第3のα-オレフィンに由来する構成単位を副成分として7mol%以下含んでいてもよい
(ただし、上記第3のα-オレフィンに由来する構成単位を含む場合は、エチレンに由来する構成単位とプロピレンに由来する構成単位と第3のα-オレフィンに由来する構成単位の合計が100mol%を超えない)
(c-2)MFR(190℃、21.18N荷重)が1~100g/10分
(c-3)密度が0.88~0.94g/cm3
(c-4)エチレン・プロピレン共重合体中のビニル、ビニリデンの合計量が0.20(個/total 1000C)以上
(ただし、ビニル、ビニリデンの個数は、NMRで測定した主鎖、側鎖の合計1000個の炭素数あたりの数である。)
(c-5)エチレン・プロピレン共重合体中のコモノマーによる分岐数(Y)と密度(X)が下記式(1)の関係を満たす。
式(1):(Y)≧ -566×(X)+540
(ただし、Yは、NMRで測定した主鎖、側鎖の合計1000個の炭素数あたりの数である。)
(c-6)エチレン・プロピレン共重合体を厚み1mmに熱プレスして得られるサンプルの表面に対するダイヤモンドプリズムを用いた全反射測定法によるフーリエ変換赤外分光分析で得られた赤外吸収スペクトルにおいて、波長1400cm-1から波長1290cm-1の範囲でベースラインを引いた時の波長1368cm-1の吸光度(D1368)に対して、波長1280cm-1から波長1240cm-1の範囲でベースラインを引いた時の波長1260cm-1の吸光度(D1260)及び波長1110cm-1から波長1080cm-1の範囲でベースラインを引いた時の波長1089cm-1の吸光度(D1089)、波長1040cm-1から波長1000cm-1の範囲でベースラインを引いた時の波長1019cm-1の吸光度(D1019)、波長817cm-1から波長777cm-1の範囲でベースラインを引いた時の波長797cm-1の吸光度(D797)との比(D1260/D1368)、(D1089/D1368)、(D1019/D1368)、(D797/D1368)が全て0.10以下。
【0025】
なお、エチレンとプロピレンを構成成分とする共重合体としては、いわゆるエチレンプロピレンゴム(EPM)と呼ばれる、プロピレン成分を20mol%より多く含み、密度も0.870g/cm3以下の溶液重合法により得られるゴム状重合体が、エラストマーの分野において用いられているが、本発明のエチレン・プロピレン共重合体(C)は、これらエチレンプロピレンゴムとは、密度範囲も、含まれるエチレンやプロピレンの量が異なり、物性等も全く異なる重合体である。
また、プロピレン重合体において、製造過程でエチレン成分を若干量含むプロピレンエチレン共重合体も知られているが、これらもそのプロピレン含有量等の点で本発明のエチレン・プロピレン共重合体(C)と大きく異なり、物性等もまったく異なる重合体である。
また、いわゆる通常の直鎖状の分子構造を有するエチレン・α-オレフィン共重合体(例えばLLDPE)は主にフィルム用途として開発されているために、通常、高強度の共重合体を得るためのC4やC6といったC4以上のα-オレフィンを主のコモノマー成分とするのが常であり、低強度となるC3コモノマーを主の副成分として用いたエチレンとプロピレンからなる共重合体であって、密度が0.88g/cm3以上の共重合体は、今まで殆ど注目されず、少なくとも本出願人からは市販等されていなかった。
今般、新たに、かかる密度領域の、C3コモノマーを主の副成分として用いてエチレン・プロピレン共重合体を試作すると共に、種々検討したところ、特に(c-1)~(c-6)といった新たな領域の物性を有するエチレン・プロピレン共重合体を用いたポリエチレン樹脂組成物を剥離層に含む積層体において、本発明の効果が得られることを見出した。
【0026】
(i)エチレン・プロピレン共重合体(C)の特性
(c-1)モノマー構成
本発明に用いられるエチレン・プロピレン共重合体(C)は、エチレンに由来する構成単位を主成分として80~98mol%、プロピレンに由来する構成単位を副成分として2~20mol%含むことを特徴とする、エチレン・プロピレン共重合体であり、具体例としては触媒重合法により重合してなる共重合体であって、実質的に直鎖状にランダムに重合してなる共重合体である。具体例としては、エチレンとプロピレンのランダム共重合体である。好ましくは、エチレンに由来する構成単位が82~97mol%、プロピレンに由来する構成単位が3~18mol%、更に好ましくはエチレンに由来する構成単位が85~95mol%、プロピレンに由来する構成単位が5~15mol%である。ここで、エチレン含有量等のモノマー量は、13C-NMRにより、後述する実施例に記載の条件で測定し、算出した値である。
【0027】
なお、その他のα-オレフィン、特に炭素数4~20のα-オレフィンに由来する構成単位及び他のモノマー成分を全く含まない構成が好ましいが、実質的に微量でかかる構成を含んでいてもよい。本明細書においては、エチレン及びプロピレン以外のα-オレフィンを第3のα-オレフィンという。本発明のエチレン・プロピレン共重合体(C)は、エチレン及びプロピレン以外の第3のα-オレフィンに由来する構成単位を副成分として例えば7mol%以下、好ましくは7mol%以下、更に好ましくは5mol%以下、一層好ましくは1mol%以下、最も好ましくは0.5mol%以下含んでいてもよい。ここで、本発明のエチレン・プロピレン共重合体(C)が第3のα-オレフィンに由来する構成単位を含む場合は、エチレンに由来する構成単位とプロピレンに由来する構成単位と第3のα-オレフィンに由来する構成単位の合計が100mol%を超えない。また、この場合、プロピレンに由来する構成単位の含有量は、第3のα-オレフィンに由来する構成単位の含有量より高いことが好ましい。また、本発明のエチレン・プロピレン共重合体(C)が第3のα-オレフィンに由来する構成単位を含む場合は、1種又は2種以上の第3のα-オレフィンを使用することができる。
また、エチレン・プロピレン共重合体(C)は、(c-1)~(c-6)を充足する範囲で、1種または2種以上の組み合わせでもよい。
【0028】
プロピレンを副成分として必須コモノマーとし、特に、後に記載するメタロセン触媒を用いた高圧イオン重合法を採用した場合、特異的にビニル、ビニリデンの合計数が多いエチレン・α-オレフィン共重合体を得ることが可能となる。1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンといったα-オレフィンをコモノマー主成分として重合した場合、この効果は得られにくい。
【0029】
(c-2)MFR
本発明に用いるエチレン・プロピレン共重合体(C)は、メルトフローレート(MFR:190℃、21.18N荷重)が1~100g/10分であり、好ましくは1~80g/10分であり、より好ましくは5g/10分を超え、60g/10分以下である。MFRが1g/10分未満であるとラミネート成形時の延展性が悪くなり、押出機内のモーター負荷が高くなるため好ましくない。一方、MFRが100g/10分を超えると成形時の溶融膜の状態が不安定になるので好ましくない。
ポリマーのMFRを調節するには、例えば、重合温度、コモノマー量などを適宜調節する方法がとられる。エチレン・プロピレン共重合体のMFRは、JIS-K6922-2:1997附属書(190℃、21.18N荷重)に準拠して測定する。
【0030】
(c-3)密度
本発明に用いるエチレン・プロピレン共重合体(C)は、密度が0.88~0.94g/cm3であり、好ましくは0.88~0.93g/cm3であり、より好ましくは0.88~0.92g/cm3である。密度が0.88g/cm3未満であると、ブロッキングが不良になるので好ましくない。一方、密度が0.94g/cm3を超えると、剥離特性が不良となるので好ましくない。
ポリマーの密度を調節するには、例えばコモノマー含有量、重合温度、触媒量などを適宜調節する方法がとられる。なお、エチレン・プロピレン共重合体の密度は、JIS-K6922-2:1997附属書(低密度ポリエチレンの場合)に準拠して測定する(測定温度23℃)。
【0031】
(c-4)ビニル、ビニリデンの合計数
エチレンとα-オレフィンの1種以上を共重合してなる共重合体においては、積極的なジエンモノマーの添加を行わない場合でも、製造過程のメカニズムの違いに起因して、種々の二重結合(ビニル、ビニリデン、シス-ビニレン、トランス-ビニレン、三置換オレフィン)を生じる場合があり、その量や種類も様々である。
従来、太陽電池封止材として良好な架橋特性を得るためには、エチレン・α-オレフィン共重合体に含まれる二重結合数が多いと架橋特性が良好であることは知られていたが、積層用樹脂組成物分野においては、二重結合の量や種類による違いについては検討されていなかった。
本発明では、エチレン・プロピレン共重合体に含まれる種々の二重結合のうち、特にビニルとビニリデンが剥離特性において重要であることを見出し、かつ、ビニルとビニリデンの合計数が、通常のエチレン・α-オレフィン共重合体よりも多いエチレン・プロピレン共重合体を製造し、積層用樹脂組成物用のエチレン・プロピレン共重合体として用いることによって、本発明の効果を達成することを見出し、完成したものである。
【0032】
本発明で用いるエチレン・プロピレン共重合体(C)は、NMRで測定した主鎖、側鎖の合計1000個の炭素数当たりのビニル、ビニリデンの二重結合の合計数が0.20(個/total 1000C)以上であり、好ましくは0.30~5.0(個/total 1000C)であり、より好ましくは0.35~4.5(個/total 1000C)であり、更に好ましくは0.50~4.0(個/total 1000C)である。
ビニル、ビニリデンの合計数が上記範囲であると、剥離特性に優れた樹脂組成物となり、0.20個未満であると、剥離特性が十分なものとならない。ビニル、ビニリデンの合計数は、適当なメタロセン触媒の選択、重合温度、コモノマー種、コモノマー量を適宜調節することにより、上記範囲に制御することができる。
なお、これら二重結合の数は、主鎖、側鎖の合計1000個の炭素数あたりの数であり、1H-NMRスペクトルの特性ピークの積算強度を用いて算出した値であり、後述の実施例に記載の条件で測定し、算出した値である。
【0033】
更に本発明においては、エチレン・プロピレン共重合体(C)中のビニルの個数は、0.1(個/total 1000C)以上の範囲を満たすことが好ましい。
また、本発明においては、エチレン・プロピレン共重合体(C)中のビニリデンの個数は、0.05(個/total 1000C)以上の範囲を満たすことが好ましい。
【0034】
(c-5)コモノマーによる分岐数(Y)と密度(X)との関係
本発明で用いるエチレン・プロピレン共重合体(C)は、コモノマーによる分岐数(Y)と密度(X)が、下記式(1)を満たすことが好ましい。
式(1):(Y)≧ -566×(X)+540
更に、コモノマーによる分岐数(Y)と密度(X)が、下記式(2)を満たすことがより好ましい。
式(2):(Y)≧ -1360×(X)+1270
密度と分岐数が上記式(1)または(2)の関係を満たすと、コモノマーによる分岐数が十分に確保され、剥離特性に優れた樹脂組成物となる。
ここで、コモノマーによる分岐数(Y)は、エチレン・プロピレン共重合体(C)をNMRで測定した主鎖、側鎖の合計1000個の炭素数あたりの数(個/total 1000C)である。
また、密度(X)は、エチレン・プロピレン共重合体(C)の密度であり、上記の通り測定される。
【0035】
なお、コモノマーによる分岐数(Y)は、ポリマー中に含まれる三級炭素の量を示し、NMRで測定した、主鎖、側鎖の合計1000個の炭素数あたりの数であり、例えばE. W. Hansen, R. Blom, and O. M. Bade, Polymer, 36巻 4295頁(1997年)を参考に13C-NMRスペクトルから算出することができる。
密度と分岐数の関係は、共重合するコモノマーの種類と比率、重合温度等の重合条件により調整することができる。
【0036】
(c-6)エチレン・プロピレン共重合(C)の熱プレスサンプル表面の赤外吸収スペクトル
本発明で用いられるエチレン・プロピレン共重合体(C)は、厚み1mmに熱プレスして得られるサンプルの表面に対するダイヤモンドプリズムを用いた全反射測定法によるフーリエ変換赤外分光分析で得られた赤外吸収スペクトルにおいて、波長1400cm-1から波長1290cm-1の範囲でベースラインを引いた時の波長1368cm-1の吸光度(D1368)に対して、波長1280cm-1から波長1240cm-1の範囲でベースラインを引いた時の波長1260cm-1の吸光度(D1260)及び波長1110cm-1から波長1080cm-1の範囲でベースラインを引いた時の波長1089cm-1の吸光度(D1089)、波長1040cm-1から波長1000cm-1の範囲でベースラインを引いた時の波長1019cm-1の吸光度(D1019)、波長817cm-1から波長777cm-1の範囲でベースラインを引いた時の波長797cm-1の吸光度(D797)とのそれぞれの比である、(D1260/D1368)、(D1089/D1368)、(D1019/D1368)、(D797/D1368)が全て0.10以下である。
【0037】
本出願において、「全反射測定法によるフーリエ変換赤外分光分析」を「ATR-FTIR」とも称し、「表面に対するATR-FTIR分析で得られた赤外吸収スペクトル」を「ATR-FTIRスペクトル」と称する場合もある。
【0038】
ここで、ATR-FRIRスペクトル取得のための、サンプルを得るための熱プレス条件は、JIS-K7151「プラスチック‐熱可塑性プラスチック 材料の圧縮成形試験片」に準拠している限り、特に限定されない。なお、本出願においてATR-FTIRスペクトル取得のための熱プレス条件は下記の通りとした。
サンプル厚み:1mm、金型厚み:1mm、金型サイズ:幅×長さ=70mm×197mm、加工温度:230℃、成形品取出し温度:23℃、予熱時間:4分、加圧時間:5分、平均冷却速度:60±30K・min-1、加圧圧力:5MPa。
【0039】
ATR-FTIRスペクトルにおいて、D1368はエチレン・プロピレン共重合体中に含まれるメチレン基の炭素―水素結合に由来する。一方で、D1260とD797はシリコーン中に含まれるケイ素-炭素結合に由来し、D1089とD1019はシリコーン中に含まれるケイ素-酸素結合に由来する。従って、エチレン・プロピレン共重合体の熱プレスサンプル表面のATR-FTIRスペクトルにおける(D1260/D1368)、(D1089/D1368)、(D1019/D1368)、(D797/D1368)はエチレン・プロピレン共重合体の熱プレスサンプルの表面におけるメチレン基とシリコーンの比率と同じである蓋然性が高いと言える。
【0040】
本発明で得られるエチレン・プロピレン共重合体は、(D1260/D1368)、(D1089/D1368)、(D1019/D1368)、(D797/D1368)は0.10以下である。そのため、エチレン・プロピレン重合体自体にはシリコーンが含有されていないという利点を有する。
【0041】
本発明の一実施形態において、エチレン・プロピレン共重合体の熱プレスサンプル表面のATR-FTIRスペクトルは、ATR測定装置を接続したFTIR装置によって測定することが出来る。ATR-FTIRスペクトルの測定方法は、後述する実施例にて詳説する。
【0042】
(ii)エチレン・プロピレン共重合体(C)の重合触媒および重合方法
本発明で使用されるエチレン・プロピレン共重合体(C)の製造に用いられる触媒としては、特に限定されないが、より好ましくはメタロセン触媒を用いる。
メタロセン触媒としては、特に限定されるわけではないが、シクロペンタジエニル骨格を有する基等が配位したジルコニウム化合物などのメタロセン化合物と助触媒とを触媒成分とする触媒が挙げられる。特に、シクロペンタジエニル骨格を有する基等が配位したジルコニウム化合物などのメタロセン化合物を使用するのが好ましい。
製造法としては、本発明に係る二重結合を調整したエチレン・プロピレン共重合体(C)を得るためには150~330℃の高温で重合を行うことが望ましいため、高圧イオン重合法を利用するのが好ましい(「ポリエチレン技術読本」第4章、松浦一雄・三上尚孝 編著、2001年)。
【0043】
(2)高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン(D)
本発明において用いられる高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン(D)(以下、単に低密度ポリエチレン(D)ともいう)は、下記(d-1)~(d-2)の特性を有する高圧ラジカル重合法により得られた低密度ポリエチレン(LDPE)であり、好ましくは長鎖分岐状低密度ポリエチレンである。
(d-1)MFR(190℃、21.18N荷重)が0.1~20g/10分
(d-2)密度が0.915~0.930g/cm3
【0044】
(i)高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン(D)の特性
(d-1)MFR
本発明に用いる低密度ポリエチレン(D)のメルトフローレート(MFR:190℃、21.18N荷重)は、0.1~20g/10分であり、好ましくは0.5~15g/10分であり、より好ましくは1~15g/10分である。MFRが0.1g/10分未満では延展性が不十分となり高速成形時に膜切れを生じる。一方、MFRが20g/10分を超えると溶融膜が不安定となる。
ここで、MFRは、JIS-K6922-2:1997附属書(190℃、21.18N荷重)に準拠して測定する値である。
【0045】
(d-2)密度
本発明に用いる低密度ポリエチレン(D)の密度は、0.915~0.930g/cm3であり、好ましくは0.916~0.926g/cm3であり、より好ましくは0.917~0.925g/cm3である。密度が0.915g/cm3未満ではベタツキが多くなる。一方、0.93g/cm3を超えると接着性が不良となる。
ここで、密度は、JIS-K6922-2:1997附属書(低密度ポリエチレンの場合)に準拠して測定する(測定温度23℃)。
【0046】
(ii)高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン(D)の重合方法
本発明で使用する低密度ポリエチレン(D)の製造は、一般に槽型反応器または管型反応器を用いて、ラジカル発生剤の存在下、重合圧力1000~3000kg/cm2、重合温度150~300℃の条件下でエチレンを重合することによって行われる。分子量調節剤として水素やメタン、エタンなどの炭化水素を用いることによってMFRを調節することができる。
【0047】
(3)エチレン・プロピレン共重合体(C)と低密度ポリエチレン(D)の組成割合
本発明で用いられるポリエチレン樹脂組成物(E)がエチレン・プロピレン共重合体(C)及び低密度ポリエチレン(D)を含有する場合において、エチレン・プロピレン共重合体(C)と高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン(D)との比率は、(C):(D)が、例えば10~95重量%:5~90重量%であり、好ましくは20~95重量%:5~80重量%であり、より好ましくは30~95重量%:5~70重量%である。更に好ましくは40~95重量%:5~60重量%である。エチレン・プロピレン共重合体(C)が多すぎると、溶融膜の安定性が低下するおそれがあり、また、高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン(D)が多いとテープ剥離強度が増加するおそれがある。
特に、エチレン・プロピレン共重合体(C)と高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン(D)との比率(C:D)が、50~95重量%:5~50重量%であると、よりテープ剥離強度が低くなるため、好ましい。
【0048】
(4)ポリエチレン樹脂組成物(E)の特性
(e-1)(e-1’)MFR
本発明において用いられるポリエチレン樹脂組成物(E)のメルトフローレート(MFR:190℃、21.18N荷重)は、好ましくは1~100g/10分であり、より好ましくは1~80g/10分であり、更に好ましくは5~60g/10分である。MFRが1g/10分未満であると成形時の延展性が悪くなり、押出機内のモーター負荷が高くなるため好ましくない。一方、MFRが100g/10分を超えると成形時の溶融膜の状態が不安定になるので好ましくない。
ここで、MFRは、JIS-K6922-2:1997附属書(190℃、21.18N荷重)に準拠して測定する値である。
【0049】
(e-2)(e-2’)密度
本発明において用いるポリエチレン樹脂組成物(E)の密度は、好ましくは0.88~0.94g/cm3であり、より好ましくは0.88~0.93g/cm3であり、更に好ましくは0.88~0.92g/cm3である。密度が0.88g/cm3未満であると、ブロッキングが不良になるので好ましくない。一方、密度が0.94g/cm3を超えると、剥離性が不良となるので好ましくない。
ここで、密度は、JIS-K6922-2:1997附属書(低密度ポリエチレンの場合)に準拠して測定する(測定温度23℃)。
【0050】
(5)その他の成分
本発明において用いられるポリエチレン樹脂組成物(E)またはそれを含有する剥離層(A)には、剥離剤特性を損なわない範囲であれば必要に応じて、ポリエチレン系樹脂に通常使用されるフェノール系、リン系等の酸化防止剤、金属石鹸等の安定剤、アンチブロッキング剤、滑剤、分散剤、有機系または無機系の着色剤等の顔料、不飽和脂肪酸エステル等の防曇剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、核剤などの添加剤を配合しても良い。例えば、酸化防止剤の好ましい配合範囲としては、重量割合で、5000ppm以下であり、より好ましくは3000ppm以下であり、更に好ましくは1000ppm以下が挙げられる。
また、ポリエチレン樹脂組成物層の特性を損ねない範囲で、LDPE、C4-LLDPE、HAO-LLDPE、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン-メタアクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン-アクリル酸エステル共重合体(EEA、EMA、EMMA等)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン系樹脂、エチレン-無水マレイン酸共重合体などの接着性樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン樹脂等、他の熱可塑性樹脂を配合しても構わない。
また、本発明のポリエチレン樹脂組成物(E)は架橋剤を含有しないことが好ましい。
【0051】
2.基材層(B)
本発明において用いられる基材層(B)は紙、またはポリプロピレン樹脂、またはポリエチレンテレフタラート樹脂、またはナイロン樹脂を主成分と必須とするフィルム、またはそれらを主成分とする延伸ヤーン基材を用いて作られるクロス基材が望ましい。単層フィルムまたは、紙、またはポリプロピレン樹脂、またはポリエチレンテレフタラート樹脂、またはナイロン樹脂と同種もしくは異種材料からなる積層フィルムが例示される。ポリエチレン樹脂、ポリエチレンテレフタラート樹脂、ナイロン樹脂を用いたフィルムは延伸フィルムであることが好ましい。基材層(B)が紙、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタラート樹脂、ナイロン樹脂以外の樹脂を含む場合、後述の他基材層の例として挙げた樹脂を使用することができる。
基材層には、印刷、蒸着、各種コーティング等が施されていてもよい。
【0052】
3.積層体
本発明の積層体は、上述したポリエチレン樹脂組成物(E)を含む剥離層(A)及び基材層(B)の少なくとも2層を有し、剥離層(A)は、基材層(B)上に直接、または基材層に積層された別な樹脂層の上に接着することにより形成されている積層体である。基材層(B)の少なくとも一方の面には、ポリエチレン樹脂組成物(E)を含有する剥離層(A)が直接、または基材層に積層された別な樹脂層の上に接着することにより形成されている。
積層体の構成についての制約はないが、例えば下記のような構成を含む積層体が例示される。
基材層(B)/樹脂組成物(E)を含む剥離層(A)、基材層(B)/他樹脂層/樹脂組成物(E)を含む剥離層(A)、樹脂組成物(E)を含む剥離層(A)/基材層(B)/樹脂組成物(E)を含む剥離層(A)、樹脂組成物(E)を含む剥離層(A)/他樹脂層/基材層(B)/樹脂組成物(E)を含む剥離層(A)、樹脂組成物(E)を含む剥離層(A)/他樹脂層/基材層(B)/他樹脂層/樹脂組成物(E)を含む剥離層(A)、基材層(B)/樹脂組成物(E)を含む剥離層(A)/基材層(B)、基材層(B)/他樹脂層/樹脂組成物(E)を含む剥離層(A)/基材層(B)、樹脂組成物(E)を含む樹脂層(E)を含む剥離層(A)/基材層(B)/樹脂組成物(E)を含む剥離層(A)/基材層(B)/樹脂組成物(E)を含む剥離層(A)/基材層(B)、樹脂組成物(E)を含む剥離層(A)/他樹脂層/基材層(B)/樹脂組成物(E)を含む剥離層(A)/基材層(B)/樹脂組成物(E)を含む剥離層(A)/基材層(B)、樹脂組成物(E)を含む剥離層(A)/他樹脂層/基材層(B)/他樹脂層/樹脂組成物(E)を含む剥離層(A)/基材層(B)/樹脂組成物(E)を含む剥離層(A)/基材層(B)、樹脂組成物(E)を含む剥離層(A)/他樹脂層/基材層(B)/他樹脂層/樹脂組成物(E)を含む剥離層(A)/他樹脂層/基材層(B)/樹脂組成物(E)を含む剥離層(A)/基材層(B)、樹脂組成物(E)を含む剥離層(A)/他樹脂層/基材層(B)/他樹脂層/樹脂組成物(E)を含む剥離層(A)/他樹脂層/基材層(B)/他樹脂層/樹脂組成物(E)を含む剥離層(A)/基材層(B)、樹脂組成物(E)を含む剥離層(A)/他樹脂層/基材層(B)/他樹脂層/樹脂組成物(E)を含む剥離層(A)/他樹脂層/基材層(B)/他樹脂層/樹脂組成物(E)を含む剥離層(A)/他樹脂層/基材層(B)、基材層(B)/樹脂組成物(E)を含む剥離層(A)/他基材層、他樹脂層/基材層(B)/樹脂組成物(E)を含む剥離層(A)、他基材層/基材層(B)/樹脂組成物(E)を含む剥離層(A)、基材層(B)/樹脂組成物(E)を含む剥離層(A)/他樹脂層
ここで、他基材層としては、基材層(B)とは異なる基材層であり、例としてポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体鹸化物、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート等のプラスチックフィルムまたはシート、上記フィルムまたはシートの延伸物、印刷物、金属等の蒸着物等の二次加工したフィルムまたはシート、アルミニウム、鉄、銅、これらを主成分とする合金等の金属箔または金属板、セロファン、紙、織布、不織布等が挙げられる。
また、他樹脂層としては、剥離層(A)とは異なる樹脂層であり、例としてLDPE、C4-LLDPE、HAO-LLDPE、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン-メタアクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン-アクリル酸エステル共重合体(EEA、EMA、EMMA等)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン系樹脂、エチレン-無水マレイン酸共重合体などの接着性樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン樹脂等、他の熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0053】
積層体の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、基材層に、ポリエチレン樹脂組成物を溶融押出しし、積層するいわゆる押出コーティング法が好ましい。また、上記押出しコーティングは単層、サンドイッチラミネート、共押出ラミネート、タンデムラミネート等の方法により一層以上積層されることが好ましい。ポリエチレン樹脂組成物(E)を含む剥離層(A)は、接着層として使用できるうえ、表層のシーラントとしても使用することができる。
【0054】
また、紙基材層との接着性を確保する方法としては特に限定されないが、例えば、基材の表面処理を行ってもよい。表面処理の方法としては、コロナ放電処理法、オゾン処理法、フレーム処理法、低温プラズマ処理法等の各種処理法が挙げられる。また溶融樹脂へオゾンを吹きかける方法も挙げられる。なお、紙基材以外の基材層を備える場合は、必要に応じて、アンカーコート処理することが好ましい。
【0055】
本発明の離型シートを適用する粘着面の種類は特に制限されない。本発明の離型剤が離型性を示す対象となる材料の表面は、以下の粘着剤から成る粘着面が挙げられる。例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ビニル系粘着剤等の、通常、知られる各種粘着剤であり、1液型、2液型、エマルジョン型の何れの粘着剤でもよい(例えば、「接着・粘着の事典」(山口章三郎監修、朝倉書店発行p118~169、1993年)参照)。
【0056】
本発明の積層体は、上記のポリエチレン樹脂組成物(E)を含む剥離層(A)により形成され、粘着テープとの剥離性に優れた積層体である。
【0057】
本発明の積層体は、粘着テープとの優れた易剥離性を示す。そのため、例えば半導体集積回路(IC)等に使用されるシリコンウエハ等を加工する際に使用する表面保護用粘着シートやダイシング用粘着シート等の粘着シート用離型フィルムとして使用することが出来る。
【実施例0058】
以下に実施例で本発明を具体的に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。なお、実施例および比較例に用いられる測定方法及び用いた樹脂は次の通りである。
【0059】
1.測定方法
(1)メルトフローレート(MFR):エチレン・プロピレン共重合体又は他のエチレン・α-オレフィン共重合体、高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン、ポリエチレン樹脂組成物のMFRは、JIS-K6922-2:1997附属書(190℃、21.18N荷重)に準拠して測定した。
(2)密度:エチレン・プロピレン共重合体又は他のエチレン・α-オレフィン共重合体、高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン、ポリエチレン樹脂組成物の密度は、JIS-K6922-2:1997附属書(23℃、低密度ポリエチレンの場合)に準拠して測定した。
【0060】
(3)モノマー量、分岐数、二重結合数:
<試料調製と測定条件>
試料200mgをo-ジクロロベンゼン/重水素化臭化ベンゼン=4/1(体積比)2.4mlおよび化学シフトの基準物質であるヘキサメチルジシロキサンと共に内径10mmφのNMR試料管に入れ溶解した。
NMR測定は10mmφのクライオプローブを装着したブルカー・バイオスピン(株)のAV400M型NMR装置を用いて行った。
13C-NMR測定条件は、試料の温度を120℃、パルス角を90°、パルス間隔を20秒、積算回数を128回とし、ブロードバンドデカップリング法で測定を実施した。
1H-NMRの測定条件は、試料の温度120℃、パルス角4.5°、パルス間隔2秒、積算回数512回として測定をした。
<算出法>
(i)モノマー量、コモノマーによる分岐数
13C-NMRスペクトルのシグナル強度を用い、以下の式からプロピレン、
ヘキセン、及びエチレン量を求めた。
C3(mol%)=I(P)×100/〔I(P)+I(H)+I(E)〕
C6(mol%)=I(H)×100/〔I(P)+I(H)+I(E)〕
C2(mol%)=I(E)×100/〔I(P)+I(H)+I(E)〕
ここで、I(P)、I(H)、I(H)はそれぞれ、以下の式で示される量である。
I(P)=0.5×(I37.69~37.20+I37.90~37.69+I37.97~37.90+I43.90~42.68)+I46.60~45.39
I(H)=0.5×(I34.56~34.22+I34.94~34.86+I43.60~42.68)+ 0.5×
(I34.86~34.70-I35.80~35.68)+I40.10~39.96+I40.80~40.70
I(E)={0.5×(I34.94~34.86 +I37.90~37.69I37.97~37.90 +I34.56~34.22+I37.69~37.20 )+ 0.5×(I34.86~34.70-I35.80~35.68)+I24.90~24.70+I24.70~24.52+I24.52~24.32 +I27.28~26.83 +I27.50~27.28+I31.50~28.50-I(H) } /2
Iは積分強度を、Iの下つき添字の数値は化学シフトの範囲を示す。例えばI37.69~37.20は37.69ppmと37.20ppmの間に検出した13Cシグナルの積分強度を示す。
化学シフトはヘキサメチルジシロキサンの13Cシグナルを1.98ppmに設定し、他の13Cによるシグナルの化学シフトはこれを基準とした。
また、主鎖、側鎖の合計1000個の炭素数あたりの分岐数は、以下の式より求めた。
メチル分岐個数(個/total 1000C)
=C3(mol%)×1000/{C3(mol%)×3+C6(mol%)×6+
C2(mol%)×2}
ブチル分岐個数(個/total 1000C)
=C6(mol%)×1000/{C3(mol%)×3+C6(mol%)×6+
C2(mol%)×2}
【0061】
(ii)二重結合数
主鎖、側鎖の合計1000個の炭素数あたりの不飽和結合量は1H-NMRスペクトルのシグナル強度を用い、以下の式から求めた。
ビニリデン個数(個/total 1000C)=Ivd×1000/Itotal
ビニル個数(個/total 1000C)=Ivi×1000/Itotal
三置換オレフィン個数(個/total 1000C)=Itri×1000/Itotal
ビニレン個数(個/total 1000C)=Ivnl×1000/Itotal
Iは積分強度を、Iの下つき添字の数値は化学シフトの範囲を示す。
ここで、Ivd、Ivi、Itri、Ivnl、Itotalはそれぞれ、以下の式で示され
る量である。
Ivd=(I4.88~4.44)/2
Ivni=(I5.52~5.30)/2
Ivi=(I5.05~4.88+I5.85~5.70)/3
Itri=I5.30~5.05
Itotal=(I0.00~5.85)/2
ただし、例えばI5.52~5.30は5.52ppmと5.30ppmの間に検出したプロトンシグナルの積分強度を示す。
化学シフトはヘキサメチルジシロキサンのプロトンシグナルを0.09ppmとして設定し、他のプロトンによるシグナルの化学シフトはこれを基準とした。
【0062】
(4)エチレン・プロピレン共重合(C)の熱プレスサンプル表面の赤外吸収スペクトル
(i)熱プレスサンプル作成条件
エチレン・プロピレン共重合体(C)のATR-FTIRスペクトルを得るための熱プレスサンプルは、JIS-K7151「プラスチック‐熱可塑性プラスチック 材料の圧縮成形試験片」に準拠し、下記の条件で得た。
サンプル厚み:1mm、金型厚み:1mm、金型サイズ:幅×長さ=70mm×197mm、加工温度:230℃、成形品取出し温度:23℃、予熱時間:4分、加圧時間:5分、平均冷却速度:60±30K・min-1、加圧圧力:5MPa。
(ii)ATR-FTIR測定
(i)にて得られたサンプルの表面に対して、以下の条件でATR-FTIR分析を行い、赤外吸収スペクトルを得た。
装置:FTIR[日本分光株式会社製、FT/IR-6100]に、1回反射型全反射(ATR)測定装置[日本分光株式会社製、ATR PRO450-S]を接続した装置。
ATRプリズム(高屈折率結晶種):ダイヤモンド
入射角:45°
測定領域:5000cm-1~650cm-1
検出器:TGS
反射回数:1回
分解能:4cm-1
積算回数:32回
その他:試料と接触させずに測定した赤外線吸収スペクトルをバックグラウンドとして、測定スペクトルに関与しない処理を実施した。
【0063】
以上のようにして得られたATR-FTIRスペクトルから、波長1400cm-1から波長1290cm-1の範囲でベースラインを引いた時の波長1368cm-1の吸光度(D1368)に対して、波長1280cm-1から波長1240cm-1の範囲でベースラインを引いた時の波長1260cm-1の吸光度(D1260)及び波長1110cm-1から波長1080cm-1の範囲でベースラインを引いた時の波長1089cm-1の吸光度(D1089)、波長1040cm-1から波長1000cm-1の範囲でベースラインを引いた時の波長1019cm-1の吸光度(D1019)、波長817cm-1から波長777cm-1の範囲でベースラインを引いた時の波長797cm-1の吸光度(D797)との比(D1260/D1368)、(D1089/D1368)、(D1019/D1368)、(D797/D1368)を求めた。
【0064】
(5)溶融膜安定性:
押出機90mmφ、Tダイス560mm幅、リップ幅0.8mm、エアーギャップ115mm、成形温度285℃、引取速度100m/minにて溶融膜の安定性を目視にて観察した。溶融膜が安定して、加工できる場合を「○」とし、溶融膜が不安定で、均一な厚みに加工できない場合を「×」とした。
【0065】
(6)テープ剥離力測定
90Φ押出機のラミネーターにて、繰出し機からクラフト基材50g/m2を繰出して基材とし、紙基材面にコロナ処理30W・min/m2かけた。この紙基材に日本ポリエチレン製ノバテックLC600Aを、オゾン処理1.5Nm3/h-16g/m3をかけた状態で引取速度100m/min、厚み15μmの条件にて押出ラミネートを実施した。更に、LC600A層側にポリエチレン樹脂組成物(E)を引取速度100m/min、厚み20μmの条件でラミネート加工を行い、クラフト層、LC600A層、ポリエチレン樹脂組成物(E)を含む剥離層(A)の積層体を得た。
この積層体を、幅50mm、長さ300mmのアクリル板にクラフト層側とで張り付け、JIS-Z0237-2009に準拠し、積水化学工業株式会社製「フィットライトテープ No.738」を積層体のポリエチレン樹脂組成物(C)層に貼り付けた後の180°ピールのテープ剥離力を測定した。
【0066】
2.樹脂材料
(1)エチレン・プロピレン共重合体(C)又は他のエチレン・α-オレフィン共重合体 下記の製造方法により得られた(PE-1)~(PE-6)を成分(C)のエチレン・プロピレン共重合体又は他のエチレン・α-オレフィン共重合体として用いた。その物性値を表1に示す。
【0067】
(PE-1)~(PE-6)の製造方法
(i)触媒の調製
特開平10-218921号公報に記載された方法で調製した錯体「rac-ジメチルシリレンビスインデニルハフニウムジメチル」0.05モルに、等モルの「N,Nジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート」を加え、トルエンで50リットルに希釈して触媒溶液を調製した。
【0068】
(ii)重合方法
内容積5.0リットルの撹拌式オートクレーブ型連続反応器を用い、反応器内の圧力を80MPaに保ち、エチレン、プロピレン、1-ヘキセンを適宜調整しながら、40kg/時の割合で原料ガスを連続的に供給した。また、上記「(i)触媒の調整」の項に記載の触媒溶液を連続的に供給し、重合温度は150~250℃の範囲内で適宜調整することでエチレン・α-オレフィン共重合体を得た。
得られたエチレン・プロピレン共重合体又は他のエチレン・α-オレフィン共重合体の物性値は表1に示す。
【0069】
(2)高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン
表1に示す物性値を有する高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン(PE-7)~(PE-8)を用いた。
【0070】
(実施例1)
エチレン・プロピレン共重合体(C)として(PE-1)を90重量%と、高圧法低密度ポリエチレン(D)として、MFRが4g/10分、密度が0.918g/cm3の高圧ラジカル重合法長鎖分岐状低密度ポリエチレン(PE-7)10重量%からなるポリエチレン樹脂組成物(E)を40mm単軸押出機で造粒しポリエチレン系組成物のペレットを得た。
上記で得られたペレットを用い、上述の(5)溶融膜安定性、(6)テープ剥離強度を評価するため、90Φ押出機のラミネーターにて、繰出し機からクラフト基材50g/m2を繰出して基材とし、紙基材面にコロナ処理30W・min/m2をかけた。この紙基材に日本ポリエチレン製ノバテックLC600Aを、オゾン処理1.5Nm3/h-16g/m3をかけた状態で引取速度100m/min、厚み15μmの条件にて押出ラミネートを実施した。更に、LC600A層側にポリエチレン樹脂組成物(E)を引取速度100m/min、厚み20μmの条件でラミネート加工を行い、クラフト層、LC600A層、ポリエチレン樹脂組成物(E)を含む剥離層(A)の積層体を得て、各評価を行った。積層体の評価結果を表1に示す。
【0071】
(実施例2)
実施例1において、エチレン・プロピレン共重合体(C)として(PE-1)の代わりに(PE-2)を使用した以外は、実施例1と同様にペレットを作製し、評価を行った。
評価結果を表1に示す。
【0072】
(実施例3)
実施例1において用いているエチレン・プロピレン共重合体である(PE-1)の代わりに、エチレンとプロピレン及び1-ヘキセンの共重合体であるエチレン・α-オレフィン共重合体(PE-3)を使用した以外は、実施例1と同様にペレットを作製し、評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0073】
(実施例4)
実施例1において用いているエチレン・プロピレン共重合体である(PE-1)の代わりに、エチレンとプロピレン及び1-ヘキセンの共重合体であるエチレン・α-オレフィン共重合体(PE-4)を使用した以外は、実施例1と同様にペレットを作製し、評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0074】
(比較例1)
実施例1において用いているエチレン・プロピレン共重合体である(PE-1)の代わりに、エチレンと1-ヘキセンの共重合体であるエチレン・α-オレフィン共重合体(PE-5)を使用した以外は、実施例1と同様にペレットを作製し、評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0075】
(比較例2)
実施例1において用いているエチレン・プロピレン共重合体である(PE-1)の代わりに、エチレンと1-ヘキセンの共重合体であるエチレン・α-オレフィン共重合体(PE-6)を使用した以外は、実施例1と同様にペレットを作製し、評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0076】
(比較例3)
実施例1において、エチレン・プロピレン共重合体(C)を用いずに、高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン(D)である(PE-8)のみで得られた組成物を使用した以外は、実施例1と同様にペレットを作製し、評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0077】
【0078】
表1により得られた実施例1~4及び比較例1~3のエチレン・プロピレン共重合体(C)または他のエチレン・α‐オレフィン共重合体の密度と、テープ剥離強度の関係を示すために、
図3としてグラフとして示す。
グラフ中、X軸(横軸)は検討に用いたエチレン・プロピレン共重合体または他のエチレン・α‐オレフィン共重合体の密度を示し、Y軸(縦軸)はテープ剥離強度を示す。Y軸の値は小さいほうが好ましい。
この表1及び
図3の結果から明らかなように、本発明の実施例による剥離層用ポリエチレン樹脂組成物及びそれにより得られた積層体は、溶融膜安定性に優れ、密度見合いで優れた低テープ剥離強度を有する。
一方、コモノマーによる分岐数及び、エチレン・α―オレフィン共重合体の密度で規定された特定の式から算出された値がコモノマーの分岐数よりも上回る場合(比較例1、2)では、密度見合いのテープ剥離強度は高くなり、良好ではない。
また、エチレン・プロピレン共重合体(C)を用いずに高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン(D)のみを用いた場合(比較例3)でも、テープ剥離強度は高く、良好ではなかった。