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特開2023-119947ランフラットタイヤ、ランフラットタイヤ用ゴム組成物
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  • 特開-ランフラットタイヤ、ランフラットタイヤ用ゴム組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119947
(43)【公開日】2023-08-29
(54)【発明の名称】ランフラットタイヤ、ランフラットタイヤ用ゴム組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 21/00 20060101AFI20230822BHJP
   C08K 5/372 20060101ALI20230822BHJP
   C08K 5/44 20060101ALI20230822BHJP
   C08K 5/40 20060101ALI20230822BHJP
   C08K 3/06 20060101ALI20230822BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20230822BHJP
   B60C 15/06 20060101ALI20230822BHJP
   B60C 17/00 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
C08L21/00
C08K5/372
C08K5/44
C08K5/40
C08K3/06
B60C1/00 B
B60C1/00 Z
B60C15/06 B
B60C17/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022023099
(22)【出願日】2022-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 和幸
(74)【代理人】
【識別番号】100165951
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 憲悟
(72)【発明者】
【氏名】大石 茂樹
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA07
3D131AA11
3D131BA04
3D131BA05
3D131BA18
3D131BA20
3D131BB10
3D131BC02
3D131BC32
3D131BC39
3D131BC51
3D131JA03
4J002AC011
4J002AC032
4J002DA039
4J002DA047
4J002EV066
4J002EV169
4J002EV278
4J002FD147
4J002FD158
4J002FD159
4J002GN01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ランフラット耐久性に優れたランフラットタイヤを提供することを目的とする。
【解決手段】上記課題を解決するため、本発明のランフラットタイヤは、一対のビード部3からサイドウォール部2を経てトレッド部1に至る一枚以上のカーカスプライからなるカーカス4と、前記サイドウォール部2において前記カーカス4のタイヤ幅方向内側に配設された一対の断面三日月状のサイド補強ゴム9と、前記サイドウォール部2のビードコア6のタイヤ径方向外側に配設されたビードフィラー7と、を具える、ランフラットタイヤであって、前記サイド補強ゴム9及び前記ビードフィラー7のうちの少なくとも1つを構成する加硫ゴムは、ゴム成分と、両末端にメルカプト基を有するポリサルファイド化合物と、を含むゴム組成物を加硫してなることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のビード部からサイドウォール部を経てトレッド部に至る一枚以上のカーカスプライからなるカーカスと、前記サイドウォール部において前記カーカスのタイヤ幅方向内側に配設された一対の断面三日月状のサイド補強ゴムと、前記サイドウォール部のビードコアのタイヤ径方向外側に配設されたビードフィラーとを具える、ランフラットタイヤであって、
前記サイド補強ゴム及び前記ビードフィラーのうちの少なくとも1つを構成する加硫ゴムは、ゴム成分と、両末端にメルカプト基を有するポリサルファイド化合物と、を含むゴム組成物を加硫してなることを特徴とする、ランフラットタイヤ。
【請求項2】
前記ゴム組成物における、前記ポリサルファイド化合物の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して0.1~10質量部であることを特徴とする、請求項1に記載のランフラットタイヤ。
【請求項3】
前記ゴム組成物は、前記ゴム成分100質量部に対して1~5質量部の硫黄をさらに含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載のランフラットタイヤ。
【請求項4】
前記ゴム組成物は、前記ゴム成分100質量部に対して1.5~5質量部のスルフェンアミド系加硫促進剤をさらに含むことを特徴とする、請求項3に記載のランフラットタイヤ。
【請求項5】
前記ゴム組成物は、前記ゴム成分100質量部に対して1.0~5質量部のチウラム系加硫促進剤をさらに含むことを特徴とする、請求項3又は4に記載のランフラットタイヤ。
【請求項6】
前記ゴム組成物における、前記硫黄の含有量に対する前記ポリサルファイド化合物の含有量の割合(ポリサルファイド化合物の含有量/硫黄の含有量)が、質量比で0.3~2であることを特徴とする、請求項3~5のいずれか1項に記載のランフラットタイヤ。
【請求項7】
前記ゴム組成物は、前記ゴム成分100質量部に対して40質量部以上のカーボンブラックをさらに含むことを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載のランフラットタイヤ。
【請求項8】
前記ゴム組成物における、前記ゴム成分は、天然ゴム及びブタジエンゴムを含有することを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載のランフラットタイヤ。
【請求項9】
ランフラットタイヤのサイド補強ゴム及びビードフィラーのうちの少なくとも1つに用いられるランフラットタイヤ用ゴム組成物であって、
ゴム成分と、両末端にメルカプト基を有するポリサルファイド化合物と、を含むことを特徴とする、ランフラットタイヤ用ゴム組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランフラットタイヤ及びランフラットタイヤ用ゴム組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤ、特にランフラットタイヤにおいて、サイドウォール部の剛性向上のために、ゴム組成物単独又はゴム組成物と繊維等の複合体であるサイド補強層やビードフィラーが配設されている。
【0003】
このようなランフラットタイヤにおいては、ランフラット耐久性を向上させることを目的として、例えば、ゴム成分、補強性充填材、熱硬化性樹脂、チウラム系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤以外の加硫促進剤及び硫黄含有加硫剤を、それぞれ所定の分量で配合してなるゴム組成物を用いることで、所定の引っ張り強度を有するサイド補強ゴム層を得る技術が開示されている(例えば、特許文献1~3を参照。)。
【0004】
また、ランフラット走行に見合った高弾性率と低発熱性とを兼ね備えつつ、ゴム組成物の押出加工性を向上する観点から、高結晶性シンジオタクチックポリブタジエン含有ポリブタジエンを含むゴム成分と、チウラム系加硫促進剤及びスルフェンアミド系加硫促進剤を所定の量で配合してゴム組成物を製造する技術が開示されている(例えば、特許文献4を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2016/143755号
【特許文献2】国際公開第2016/143756号
【特許文献3】国際公開第2016/143757号
【特許文献4】特開2005-263916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1~3に開示された技術は、ある程度のランフラット耐久性が得られるものの、タイヤの長寿命化の観点から、より優れたランフラット耐久性を実現できるランフラットタイヤの開発が望まれていた。
【0007】
そのため、本発明の目的は、ランフラット耐久性に優れたランフラットタイヤ及びランフラットタイヤ用ゴム組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、一対のビード部からサイドウォール部を経てトレッド部に至る一枚以上のカーカスプライからなるカーカスと、前記サイドウォール部において前記カーカスのタイヤ幅方向内側に配設された一対の断面三日月状のサイド補強ゴムと、前記サイドウォール部のビードコアのタイヤ径方向外側に配設されたビードフィラーと、を具える、ランフラットタイヤについて、前記目的を達成するべく検討を行った。
その結果、サイド補強ゴムやビードフィラーについて、両末端にメルカプト基を有するポリサルファイド化合物を含有するゴム組成物を用いることによって、ゴムの発熱を抑制、高温時のゴムの軟化抑制、及び、温度依存性の制御が可能となるため、ランフラット耐久性を大幅に改善できることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明のランフラットタイヤは、一対のビード部からサイドウォール部を経てトレッド部に至る一枚以上のカーカスプライからなるカーカスと、前記サイドウォール部において前記カーカスのタイヤ幅方向内側に配設された一対の断面三日月状のサイド補強ゴムと、前記サイドウォール部のビードコアのタイヤ径方向外側に配設されたビードフィラーと、を具える、ランフラットタイヤであって、
前記サイド補強ゴム及び前記ビードフィラーのうちの少なくとも1つを構成する加硫ゴムは、ゴム成分と、両末端にメルカプト基を有するポリサルファイド化合物と、を含むゴム組成物を加硫してなることを特徴とする。
前記構成により、優れたランフラット耐久性を実現できる。
【0010】
また、本発明のランフラットタイヤでは、前記ゴム組成物における、前記ポリサルファイド化合物の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して0.1~10質量部であることが好ましい。他の性能の低下を招くことなく、より優れたランフラット耐久性を実現できるためである。
【0011】
さらにまた、本発明のランフラットタイヤでは、前記ゴム成分100質量部に対して1~5質量部の硫黄をさらに含むことが好ましい。他の物性を悪化させることなく、より優れたランフラット耐久性を実現できるためである。
【0012】
さらに、本発明のランフラットタイヤでは、前記ゴム組成物は、前記ゴム成分100質量部に対して1.5~5質量部のスルフェンアミド系加硫促進剤をさらに含むことが好ましい。より優れたランフラット耐久性を実現できるためである。
【0013】
また、本発明のランフラットタイヤでは、前記ゴム組成物は、前記ゴム成分100質量部に対して1.0~5質量部のチウラム系加硫促進剤をさらに含むことが好ましい。より優れたランフラット耐久性を実現できるためである。
【0014】
さらに、本発明のランフラットタイヤでは、前記ゴム組成物における、前記硫黄の含有量に対する前記ポリサルファイド化合物の含有量の割合(ポリサルファイド化合物の含有量/硫黄の含有量)が、質量比で0.3~2であることが好ましい。他の物性を悪化させることなく、より優れたランフラット耐久性を実現できるためである。
【0015】
また、本発明のランフラットタイヤでは、前記ゴム組成物は、前記ゴム成分100質量部に対して40質量部以上のカーボンブラックをさらに含むことが好ましい。より優れたランフラット耐久性を実現できるためである。
【0016】
さらにまた、本発明のランフラットタイヤでは、前記ゴム組成物における、前記ゴム成分は、天然ゴム及びブタジエンゴムを含有することが好ましい。より優れたランフラット耐久性を実現できるためである。
【0017】
本発明のランフラットタイヤ用ゴム組成物は、ランフラットタイヤのサイド補強ゴム及びビードフィラーのうちの少なくとも1つに用いられるランフラットタイヤ用ゴム組成物であって、
ゴム成分と、両末端にメルカプト基を有するポリサルファイド化合物と、を含むことを特徴とする。
上記構成により、ランフラットタイヤに適用した際の優れたランフラット耐久性を実現できるためである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ランフラット耐久性に優れたランフラットタイヤ及びランフラットタイヤ用ゴム組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明のランフラットタイヤの一実施形態について、タイヤ半部のタイヤ軸方向に沿った断面である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、必要に応じて図面を参照時ながら、本発明のランフラットタイヤの実施形態について説明する。
本発明のランフラットタイヤは、図1に示すように、トレッド部1、そのトレッド部1のそれぞれの側部からタイヤ半径方向内側に延びる一対のサイドウォール部2(片側のみ図示)、及び、各サイドウォール部2のタイヤ半径方向内側に連なる一対のビード部3(片側のみ図示)からなる。
【0021】
また、図1に示すランフラットタイヤでは、一対のビード部3に埋設したビードコア6と、一対のビード部3からサイドウォール部2を経てトレッド部1に至る一枚以上のカーカスプライからなるカーカス4と、ビードコア6のタイヤ径方向外側にされたビードフィラー7と、カーカス4のクラウン域のタイヤ半径方向外側に配設したベルト5と、ベルト5のタイヤ半径方向外側に配設されて、トレッド路面を形成するトレッドゴム11とを具えることができる。
なお、有機繊維コードをラジアル方向に延在させてなるラジアル構造とすることができるカーカス4は、図1に示すランフラットタイヤでは、ビード部3からサイドウォール部2を経てトレッド部1までトロイド状に延びる本体部分4aに連なって、ビードコア6の周りに折り返した折り返し部分4bにより、該本体部分4aをビード部3に係留してなるものである。
【0022】
またここで、前記カーカス4のタイヤ半径方向外側に位置するベルト5は、例えば、図1に示すように、有機繊維等からなるコードを、タイヤ周方向に対して傾斜する向きに延在させてなる内側ベルト層及びその内側ベルト層のコードと交差する向きにコードを延在させてなる外側ベルト層のそれぞれをタイヤ半径方向の外側に向けて順次に配置してなるベルト層50を設けるとともに、ベルト層50のタイヤ半径方向外側に、実質的にタイヤ周方向に延びるコードからなるベルト補強層51を配置して構成することができるが、ベルト層等の構成、配設域、及び層数等は、必要に応じて適宜変更することができる。
【0023】
さらに、図1のランフラットタイヤは、カーカス4の内面に沿って配置されて、空気不透過性に優れるゴム材料等からなるインナーライナー8と、前記サイドウォール部2において、前記カーカス4のタイヤ幅方向内側に配設された一対のサイド補強ゴム9(片側のみ図示)とを具える。
図1の示すところでは、前記サイド補強ゴム9は、タイヤ軸方向に沿う図示の断面で、タイヤ半径方向の内側及び外側のそれぞれに向けて厚みを漸減させるとともに、タイヤ軸方向の外側に向けて凸状に湾曲させてなる三日月状をなしている。
このようなサイド補強ゴム9の配設により、パンク等によってタイヤの内圧が低下した状態でも、サイド補強ゴム9が車体重量の支持に寄与することで、ある程度の距離を安全に走行することが可能になる。
【0024】
<サイド補強ゴム、ビードフィラー>
本発明のランフラットタイヤでは、前記サイド補強ゴム9及び前記ビードフィラー7のうちの少なくとも1つを構成する加硫ゴムは、ゴム成分と、両末端にメルカプト基を有するポリサルファイド化合物と、を含むゴム組成物を加硫してなる。
サイド補強ゴム9やビードフィラー7について、両末端にメルカプト基を有するポリサルファイド化合物を含んだゴム組成物を材料として用いることで、加硫後のゴムは、耐熱性が高く、耐疲労性を有する網目構造が形成される結果、発熱が抑制されるとともに、高温時のゴムの軟化の抑制及び、温度依存性の制御が可能となるため、従来の技術に比べてランフラット耐久性を改善できる。
【0025】
ここで、上述した耐熱性が高く、耐疲労性を有する網目構造が形成されているか否かの確認方法については、特に限定はされない。例えば、原子間力顕微鏡(AFM)の位相像から、加硫ゴム中の網目構造の形成を確認することができる。また、加硫前のゴム組成物の組成や、加硫温度等の製造条件によっても、網目構造の形成を推測できる。
【0026】
(ゴム成分)
前記サイド補強ゴム及び/又は前記ビードフィラーに用いられる加硫ゴムは、ゴム成分と、両末端にメルカプト基を有するポリサルファイド化合物と、を含むゴム組成物を加硫してなる。
前記ゴム組成物中に含まれるゴム成分については、特に限定はされず、要求される性能に応じて適宜選択することができる。
【0027】
例えば、低発熱性や強度に優れ、ランフラット耐久性をより高めることができる観点から、前記ゴム成分はジエン系ゴムを含有することが好ましい。
ここで、前記ジエン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ブタジエン-イソプレン共重合体ゴム(BIR)、スチレン-イソプレン共重合体ゴム(SIR)、スチレン-ブタジエン-イソプレン共重合体ゴム(SBIR)等が挙げられる。これらのジエン系ゴムは、一種単独で用いてもよいし、二種以上をブレンドして用いてもよい。
さらに、前記ジエン系ゴムは、天然ゴム及びブタジエンゴムのうちの少なくとも一方を含有することが好ましく、天然ゴム及びブタジエンゴムのいずれも含有することがより好ましい。
【0028】
なお、前記ゴム成分は、変性されていてもよいし、未変性でもよく、二種以上のゴム成分を用いる場合は、未変性のゴム成分と変性されたゴム成分を混合して用いてもよい。
また、前記ゴム成分は、ジエン系ゴムを含んでもよいし、非ジエン系ゴムを含んでもよいが、優れたランフラット耐久性を得る観点から、少なくともジエン系ゴムを含むことが好ましく、ジエン系ゴムからなることがより好ましい。
【0029】
さらに、前記サイド補強ゴム及び前記ビードフィラーのうちの少なくとも1つの耐久性をより向上できる観点から、前記ゴム成分中の天然ゴムの含有量が10~90質量%であり、前記ブタジエンゴム10~90質量%であることが好ましく、天然ゴムの含有量が20~80質量%であり、ブタジエンゴムが20~80質量%であることがより好ましい。
【0030】
前記ゴム成分は、加硫ゴムの低発熱性を向上する観点からは、変性基を含むゴム(変性ゴムと称することがある)を用いることが好ましく、変性基を含む合成ゴムを用いることがより好ましい。
前記サイド補強ゴムや前記ビードフィラーの補強性を向上する観点から、ゴム組成物は充填剤を含有しており、充填剤(特に、カーボンブラック)との相互作用を高めるために、前記ゴム成分は、変性基を含むゴムとして、変性基を含むジエン系ゴム(変性ジエン系ゴム)を含むことが好ましい。
後述するように、前記ゴム組成物には、充填剤としてカーボンブラックを含むことができるため、前記変性ジエン系ゴムは、カーボンブラックと相互作用する官能基を少なくとも一つ有する変性ジエン系ゴムであることが好ましい。
前記カーボンブラックと相互作用する官能基は、カーボンブラックと親和性を有する官能基が好ましく、具体的には、スズ含有官能基、酸素素含有官能基及び窒素含有官能基からなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
【0031】
前記変性ジエン系ゴムが、スズ含有官能基、ケイ素含有官能基及び窒素含有官能基からなる群から選択される少なくとも一種の官能基を少なくとも一つ有する変性ジエン系ゴムである場合、変性ジエン系ゴムは、スズ含有化合物、ケイ素含有化合物又は窒素含有化合物等の変性剤で変性され、スズ含有官能基、ケイ素含有官能基又は窒素含有官能基等を導入したものであることが好ましい。
ジエン系ゴムの重合活性部位を変性剤で変性するにあたって、使用する変性剤としては、窒素含有化合物、ケイ素含有化合物及びスズ含有化合物が好ましい。この場合、変性反応により、窒素含有官能基、ケイ素含有官能基又はスズ含有官能基を導入することができる。
このような変性用官能基は、ジエン系ゴムの重合開始末端、主鎖及び重合活性末端のいずれかに存在すればよい。
【0032】
前記変性剤として用いることができる窒素含有化合物は、置換若しくは非置換のアミノ基、アミド基、イミノ基、イミダゾール基、ニトリル基又はピリジル基を有することが好ましい。該変性剤として好適な窒素含有化合物としては、ジフェニルメタンジイソシアネート、クルードMDI、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等のイソシアネート化合物、4-(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4-(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4-ジメチルアミノベンジリデンアニリン、4-ジメチルアミノベンジリデンブチルアミン、ジメチルイミダゾリジノン、N-メチルピロリドンヘキサメチレンイミン等が挙げられる。
【0033】
また、前記変性剤として用いることができるケイ素含有化合物としては、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、N-(1-メチルプロピリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-(3-トリエトキシシリルプロピル)-4,5-ジヒドロイミダゾール、3-メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリルプロピルコハク酸無水物、3-(1-ヘキサメチレンイミノ)プロピル(トリエトキシ)シラン、(1-ヘキサメチレンイミノ)メチル(トリメトキシ)シラン、3-ジエチルアミノプロピル(トリエトキシ)シラン、3-ジメチルアミノプロピル(トリエトキシ)シラン、2-(トリメトキシシリルエチル)ピリジン、2-(トリエトキシシリルエチル)ピリジン、2-シアノエチルトリエトキシシラン、テトラエトキシシラン等が挙げられる。これらケイ素含有化合物は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、該ケイ素含有化合物の部分縮合物も用いることができる。
【0034】
さらに、前記変性剤として用いることができる化合物は、下記式(I):
ZX (I)
[式中、Rは、それぞれ独立して炭素数1~20のアルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、炭素数6~20のアリール基及び炭素数7~20のアラルキル基からなる群から選択され;Zは、スズ又はケイ素であり;Xは、それぞれ独立して塩素又は臭素であり;aは0~3で、bは1~4で、但し、a+b=4である]で表される変性剤も好ましい。なお、式(I)の変性剤で変性して得られる変性ジエン系ゴムは、少なくとも一種のスズ-炭素結合又はケイ素-炭素結合を有する。
式(I)のRとして、具体的には、メチル基、エチル基、n-ブチル基、ネオフィル基、シクロヘキシル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基等が挙げられる。また、式(I)の変性剤として、具体的には、SnCl、RSnCl、R SnCl、R SnCl、SiCl、RSiCl、R SiCl、R SiCl等が好ましく、SnCl及びSiClが特に好ましい。
【0035】
前記変性ジエン系ゴムとしては、以上の中でも、加硫ゴムを低発熱化し、耐久寿命を延ばす観点から、窒素含有官能基を有する変性ジエン系ゴムであることが好ましく、アミン変性ジエン系ゴムであることがより好ましい。
【0036】
前記アミン変性ジエン系ゴムは、変性用アミン系官能基として、第1級アミノ基又は第2級アミノ基が好ましく、脱離可能基で保護された第1級アミノ基又は脱離可能基で保護された第2級アミノ基を導入したものがより好ましく、これらアミノ基に加えてケイ素原子を含む官能基を導入したものがさらに好ましい。
脱離可能基で保護された第1級アミノ基(保護化第1級アミノ基ともいう。)の例としては、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノ基を挙げることができ、脱離可能基で保護された第2級アミノ基の例としてはN,N-(トリメチルシリル)アルキルアミノ基を挙げることができる。このN,N-(トリメチルシリル)アルキルアミノ基含有基としては、非環状残基、及び環状残基のいずれであってもよい。
上記のアミン変性ジエン系ゴムのうち、保護化第1級アミノ基で変性された第1級アミン変性ジエン系ゴムが更に好適である。
前記ケイ素原子を含む官能基としては、ケイ素原子にヒドロカルビルオキシ基及び/又はヒドロキシ基が結合してなるヒドロカルビルオキシシリル基及び/又はシラノール基を挙げることができる。
このような変性用官能基は、好ましくはジエン系ゴムの重合末端、より好ましくは同一重合活性末端に、脱離可能基で保護されたアミノ基と、ヒドロカルビルオキシ基及びヒドロキシ基が結合したケイ素原子を1以上(例えば、1又は2)とを有するものである。
【0037】
なお、前記加硫ゴムの低発熱性及び高温耐軟化性を向上する観点からは、前記ゴム組成物のゴム成分中の変性ゴムの含有量は、10~90質量%であることが好ましく、20~80質量%であることがより好ましい。
【0038】
(ポリサルファイド化合物)
また、前記ゴム組成物は、上述したゴム成分に加えて、両末端にメルカプト基を有するポリサルファイド化合物を含む。
前記ゴム組成物中に、両末端にメルカプト基を有するポリサルファイド化合物(以下、単に「ポリサルファイド化合物」と呼ぶことがある。)を含むことによって、前記加硫ゴム中に、耐熱性が高く、耐疲労性を有する特定の網目構造を形成できるため、前記サイド補強ゴム及び前記ビードフィラーのうちの少なくとも1つとして用いた際のランフラット耐久性を改善できる。
【0039】
ここで、前記ポリサルファイド化合物は、主鎖にジスルフィド結合を有し、両末端にメルカプト基を有するポリマーであり、例えば、以下の式(1)で表される化合物が挙げられる。
HS-(A-Sxm-ASH ・・・(1)
(式中、Aはオキシアルキレン基であり、xは1~5の整数であり、mは1~50の整数である。)
【0040】
上記式(1)中、Aで示されるオキシアルキレン基としては、例えば、-CH2OCH2-、-C24OC24-、-C24OCH2OC24-、-C36OC36-、-C48OC48-等が挙げられる。
また、上記式(1)中、xは1~3の整数であることが好ましく、mは6~50の整数であることが好ましい。
【0041】
また、前記ポリサルファイド化合物は、通常、常温で流動性を有し、その数平均分子量が、500~250000であることが好ましく、1000~10000であることがより好ましい。
【0042】
このようなポリサルファイド化合物としては、市販品を用いることもでき、例えば、以下に示すチオコールLP(登録商標)シリーズ(東レ・ファインケミカル株式社製)等を用いることができる。
【表1】
【0043】
一方、前記ポリサルファイド化合物としては、主鎖中に、-(R1O)-(ここでR1は炭素数2~4のアルキレン基であり、nは6~200の整数である。)で示されるポリエーテル単位と、-C24OCH2OC24-及び-CH2CH(OH)CH2-(ここでxは1~5の整数である。)で示されるポリサルファイド単位とを有し、かつ、末端に-C24OCH2OC24SH及び/又は-CH2CH(OH)CH2SHで示されるチオール基(メルカプト基含有基)を有するポリサルファイドポリエーテル化合物も好ましく挙げられる。
このようなポリサルファイドポリエーテル化合物としては、具体的には、例えば、チオコールLP-282(東レチオコール社製)等が挙げられる。
【0044】
また、前記ポリサルファイド化合物の含有量については、前記ゴム成分100質量部に対して0.1~10質量部であることが好ましい。前記ポリサルファイド化合物の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して0.1質量部以上であると、加硫ゴムを前記サイド補強ゴム及び前記ビードフィラーのうちの少なくとも1つとして用いた際のランフラット耐久性をより確実に高めることができ、前記ポリサルファイド化合物の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して10質量部以下の場合には、ゴム組成物の加工性や、加硫ゴムを前記サイド補強ゴム及び前記ビードフィラーのうちの少なくとも1つとして用いた際の耐亀裂進展性等、他の物性の悪化をより確実に抑えることができるためである。同様の観点から、前記ポリサルファイド化合物の含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して1~10質量部であることがより好ましく、2~6質量部であることがさらに好ましい。
【0045】
(その他の成分)
なお、前記ゴム組成物は、上述したゴム成分及びポリサルファイド化合物に加えて、要求される性能に応じて、通常ゴム工業界で用いられるその他の成分を適宜含むことができる。
前記その他の成分としては、硫黄、加硫促進剤、充填剤、加硫遅延剤、老化防止剤、軟化剤、加硫助剤、着色剤、難燃剤、滑剤、発泡剤、可塑剤、加工助剤、酸化防止剤、スコーチ防止剤、紫外線防止剤、帯電防止剤、着色防止剤、オイル等を含むことができる。これらは、それぞれ、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
前記ゴム組成物は、加硫剤として硫黄を含むことができる。ここで、硫黄については、例えば、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄等を挙げることができる。
また、前記硫黄の含有量は、特に限定されず、要求される性能に応じて適宜選択することができる。例えば、柔軟性等の他の性能を悪化させることなく、より優れたランフラット耐久性を実現できる観点から、前記硫黄の含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して1~5質量部であることが好ましい。
【0047】
また、前記ゴム組成物における、前記硫黄の含有量に対する前記ポリサルファイド化合物の含有量の割合(ポリサルファイド化合物の含有量/硫黄の含有量)が、質量比で0.3~2であることが好ましい。補強性等の他の性能を悪化させることなく、より優れたランフラット耐久性を実現できるためである。同様の観点から、前記硫黄の含有量に対する前記ポリサルファイド化合物の含有量の割合は、0.5~2であることがより好ましい。
【0048】
前記加硫促進剤については、タイヤの転がり抵抗性や、ランフラット耐久性をより向上させる観点から含むことが有効であると考えられる。
前記加硫促進剤の種類については、特に限定はされず、要求される性能に応じて適宜選択することができる。例えば、ランフラット耐久性をより向上させる観点からは、前記加硫促進剤として、スルフェンアミド系加硫促進剤を用いることが好ましい。
また、前記スルフェンアミド系加硫促進剤の含有量については、前記ゴム成分100質量部に対して1.5~5質量部であることが好ましい。転がり抵抗性等の他の性能悪化させることなく、より優れたランフラット耐久性を実現できるためである。
【0049】
前記スルフェンアミド系加硫促進剤としては、例えば、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-メチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-エチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-プロピル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-ペンチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-ヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-ヘプチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オクチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-2-エチルヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-デシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-ドデシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-ステアリル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジメチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジエチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジプロピル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジペンチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジヘプチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジオクチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジ-2-エチルヘキシルベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジデシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジドデシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジステアリル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド等が挙げられる。これらのスルフェンアミド系加硫促進剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
さらに、前記スルフェンアミド系加硫促進剤は、上述した中でも、加硫ゴムの高温での耐軟化性と機械的強度を両立し、耐久性をより向上する観点から、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド及びN-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミドのうちの少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0050】
また、前記加硫促進剤については、タイヤの転がり抵抗性及び耐久性をより向上させる観点から、前記チウラム系加硫促進剤を用いることも好ましい。
前記チウラム系加硫促進剤の含有量については、前記ゴム成分100質量部に対して0~5質量部であることが好ましい。機械的強度等の他の性能悪化させることなく、より優れたランフラット耐久性を実現できるためである。
【0051】
前記チウラム系加硫促進剤としては、例えば、テトラベンジルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等が挙げられる。
ただし、前記加硫促進剤の合計の含有量を、前記加硫剤の合計の含有量よりも少なくする成分組成とする場合、モノスルフィド結合とジスルフィド結合の割合を増やして、加硫ゴムの高温での耐軟化性を上げながら、機械的強度も向上させる観点から、チウラム系加硫促進剤が、テトラベンジルチウラムジスルフィド、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィドのうちの少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0052】
なお、前記加硫促進剤は、前記チウラム系加硫促進剤及び前記スルフェンアミド系加硫促進剤の他、グアジニン系、アルデヒド-アミン系、アルデヒド-アンモニア系、チアゾール系、チオ尿素系、ジチオカルバメート系、ザンテート系等の加硫促進剤をさらに含有することもできる。
ただし、前記加硫促進剤の合計の含有量を、加硫剤の合計の含有量よりも少なくする成分組成においては、モノスルフィド結合とジスルフィド結合の割合を増やして、加硫ゴムの高温での耐軟化性を上げながら、機械的強度も向上する観点から、前記加硫促進剤が、チウラム系加硫促進剤及びスルフェンアミド系加硫促進剤からなることが好ましい。
【0053】
前記ゴム組成物は、ランフラット耐久性の向上や転がり抵抗の改善等を目的として、充填剤をさらに含むことができる。
前記充填剤については、特に限定はされず、要求される性能に応じて適宜選択することができる。例えば、カーボンブラック、アルミナ、チタニア、シリカ等の金属酸化物、クレー、炭酸カルシウム等の補強性充填剤が挙げられる。
【0054】
また、前記ゴム組成物は、上述した補強性充填剤の中でも、カーボンブラック及びシリカのうちの少なくとも一種を含むことが好ましく、カーボンブラックを少なくとも含むことがより好ましい。加硫ゴムをサイド補強ゴム及びビードフィラーのうちの少なくとも1つとして用いた際のランフラット耐久性をさらに高めることができるためである。
【0055】
ここで、前記カーボンブラックの含有量については、前記サイド補強ゴム及び/又は前記ビードフィラーにおける、ランフラット耐久性をより改善する観点から、前記ゴム成分100質量部に対して40質量部以上であることが好ましい。また、前記サイド補強ゴム及び/又は前記ビードフィラーにおける、転がり抵抗性とランフラット耐久性とのバランスの観点からは、前記カーボンブラックの含有量は、40~100質量部であることが好ましく、40~80質量部であることがより好ましく、40~69質量部であることがさらに好ましい。
【0056】
また、前記シリカの種類については、特に限定されないが、湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、コロイダルシリカ等が挙げられる。シリカは、市販品でもよく、例えば、東ソー・シリカ株式会社のNIPSIL AQ(商品名)、ローディア社のZeosil 1115MP(商品名)、エボニックデグッサ社のVN-3(商品名)として、入手することができる。
また、前記充填剤としてシリカを用いる場合、シリカ-ゴム成分間の結合を強化して補強性を高めた上で、ゴム組成物中のシリカの分散性を向上させるために、前記ゴム組成物は、さらに、シランカップリング剤を含むこともできる。
【0057】
また、前記ゴム組成物中の充填剤の含有量(全合計量)は、転がり抵抗性をより改善し、耐久性をより向上する観点から、ゴム成分100質量部に対して、40~100質量部であることが好ましく、45~~80質量部であることがより好ましく、50~70質量部であることがさらに好ましい。
【0058】
前記ゴム組成物は、前記加硫遅延剤を含むこともできる。該加硫遅延剤を含むことで、ゴム組成物の調製時にゴム組成物の過加熱に起因するゴム焼けを抑制することができる。また、前記ゴム組成物のスコーチ安定性を良好にして、ゴム組成物の混練機からの押し出しを容易にすることができる。
なお、ゴム組成物は、ムーニー粘度(ML1+4,130℃)が、好ましくは40~100、より好ましくは50~90、更に好ましくは60~85である。ムーニー粘度が上記範囲であることで、製造加工性を損なわずに、耐破壊特性を始めとする加硫ゴム物性が十分に得られる。
前記加硫遅延剤としては、例えば、無水フタル酸、安息香酸、サリチル酸、N-ニトロソジフェニルアミン、N-(シクロヘキシルチオ)-フタルイミド(CTP)、スルホンアミド誘導体、ジフェニルウレア、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトール-ジホスファイト等が挙げられる。加硫遅延剤は市販製品を用いてもよく、例えば、モンサント社製、商品名「サントガードPVI」〔N-(シクロヘキシルチオ)-フタルイミド〕等が挙げられる。以上の中でも、加硫遅延剤は、N-(シクロヘキシルチオ)-フタルイミド(CTP)が好ましく用いられる。
前記加硫遅延剤を用いる場合、加硫反応を妨げずにゴム組成物のゴム焼けを抑制し、スコーチ安定性を良好にする観点から、ゴム組成物中の加硫遅延剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して0.1~1.0質量部であることが好ましい。
【0059】
前記軟化剤としては、プロセスオイル、熱可塑性樹脂等が挙げられる。
プロセスオイルは、例えば、鉱物由来のミネラルオイル、石油由来のアロマチックオイル、パラフィンオイル、ナフテンオイル、天然物由来のパームオイル等が挙げられる。
また、熱可塑性樹脂としては、高温時に軟化又は液体状となり、加硫ゴムを柔軟にする樹脂が挙げられ、具体的には、例えば、C5系(シクロペンタジエン系樹脂、ジシクロペンタジエン系樹脂を含む)、C9系、C5/C9混合系等の各種石油系樹脂、テルペン系樹脂、テルペン-芳香族化合物系樹脂、ロジン系樹脂、フェノール樹脂、アルキルフェノール樹脂等の粘着付与剤(硬化剤を含まない)等が挙げられる。
【0060】
前記老化防止剤としては、公知のものを用いることができ、特に制限されないが、フェノール系老化防止剤、イミダゾール系老化防止剤、アミン系老化防止剤などを挙げることができる。これら老化防止剤の配合量は、前記ゴム成分100質量部に対し、通常0.5~10質量部、好ましくは1~5質量部である。
【0061】
このように、前記ゴム組成物は、既述の成分を混練することにより得られる。混練方法は、当業者が通常実施する方法に従えばよい。混練に際してはロール、インターナルミキサー、バンバリーローター等の混練機を用いることができる。更に、シート状、帯状等に成形する際には、押出成形機、プレス機等の公知の成形機を用いればよい。
例えば、硫黄、加硫促進剤(必要に応じて、更に加硫遅延剤)及び酸化亜鉛以外の全成分を、100~200℃で混練した後、硫黄、加硫促進剤、及び酸化亜鉛(必要に応じて、更に加硫遅延剤)を添加して、混練ロール機等を用い、60~130℃で混練することができる。
【0062】
なお、本発明のランフラットタイヤについては、サイド補強ゴム及びビードフィラーのうちの少なくとも1つ以外の条件は、特に限定されず、常法に従って製造することができる。
例えば、各種薬品を含有させたゴム組成物が未加硫の段階で各部材に加工され、タイヤ成形機上で通常の方法により貼り付け成形され、生タイヤが成形される。この生タイヤを加硫機中で加熱加圧して、ランフラットタイヤが得られる。
また、該タイヤに充填する気体としては、通常の或いは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを用いることができる。
【0063】
<ランフラットタイヤ用ゴム組成物>
本発明のランフラットタイヤ用ゴム組成物は、ランフラットタイヤのサイド補強ゴム及びビードフィラーのうちの少なくとも1つに用いられるランフラットタイヤ用ゴム組成物であって、ゴム成分と、両末端にメルカプト基を有するポリサルファイド化合物と、を含むことを特徴とする。
ゴム組成物中に、両末端にメルカプト基を有するポリサルファイド化合物を含むことによって、加硫後のゴムは、耐熱性が高く、耐疲労性を有する網目構造が形成される結果、発熱が抑制されるとともに、高温時のゴムの軟化の抑制及び、温度依存性の制御が可能となるため、ランフラットタイヤのサイド補強ゴム及びビードフィラーのうちの少なくとも1つに適用した際、ランフラット耐久性を改善できる。
【0064】
なお、本発明のランフラットタイヤ用ゴム組成物の構成については、上述した本発明のランフラットタイヤのサイド補強ゴム及びビードフィラーのうちの少なくとも1つに用いられるゴム組成物の構成と同様である。
【実施例0065】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0066】
[実施例1~2、比較例1~3]
表2に示す配合組成で、各成分を混練し(混練時の温度:160℃)、その後、加硫(加硫時の温度:150℃)を行い、加硫ゴム組成物の各サンプルを得た。
【0067】
<評価>
【0068】
(1)貯蔵弾性率の変化及び発熱性の測定
各サンプルの直径8mm高さ6mmの円柱状の加硫ゴム組成物について、損失正接(tanδ)を、粘弾性測定装置(GABO社製)を用い、温度170℃、定荷重100N、動的荷重80Nで周波数10Hzの条件で3600秒間加振し、粘弾性を測定した。
E’については測定初期と3600秒後の値の差をΔE’とし、表2に示している。また、tanδに関しては3600秒時点での値を表2にしている。さらに、E’の変化率についても算出した。
なお、ΔE’の値は、小さい程ランフラット走行中の弾性率変化が小さく耐久性能が高い。また、tanδの値は、小さい程、ランフラットタイヤ走行中の発熱を抑制できていることを示す。
【0069】
【表2】
【0070】
*1 天然ゴム:RSS#1
*2 ブタジエンゴム:JSR株式会社製
*3 両末端にメルカプト基を有するポリサルファイドポリマー、「チオコール LP32」東レ・ファインケミカル株式会社製
*4 カーボンブラック(旭#65):旭カーボン社製「旭#65」
*5 加硫促進剤TOT:テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド、大内新興化学工業社製「ノクセラー TOT-N」
*6 加硫促進剤NS:N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、大内新興化学工業社製「ノクセラーNS-p」
【0071】
表2から、実施例1及び2の加硫ゴムのサンプルは、比較例の各サンプルに比べて貯蔵弾性率及び発熱性の変化が小さく、ランフラット耐久性に優れることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明によれば、ランフラット耐久性に優れたランフラットタイヤ及びランフラットタイヤ用ゴム組成物を提供することができる。
【符号の説明】
【0073】
1 トレッド部
2 サイドウォール部
3 ビード部
4 カーカス
5 ベルト
6 ビードコア
7 ビードフィラー
8 インナーライナー
9 サイド補強ゴム
11 トレッドゴム
50 ベルト層
51 ベルト補強層
図1