(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119999
(43)【公開日】2023-08-29
(54)【発明の名称】樹脂組成物の製造方法及び樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20230822BHJP
C08L 23/00 20060101ALI20230822BHJP
C08L 1/02 20060101ALI20230822BHJP
C08L 23/26 20060101ALI20230822BHJP
C08K 5/24 20060101ALI20230822BHJP
C08J 3/20 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
C08L101/00
C08L23/00
C08L1/02
C08L23/26
C08K5/24
C08J3/20 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022023157
(22)【出願日】2022-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000109635
【氏名又は名称】星光PMC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100164828
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦 康宏
(72)【発明者】
【氏名】寺尾 雄也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 明弘
(72)【発明者】
【氏名】黒木 大輔
(72)【発明者】
【氏名】山田 修平
【テーマコード(参考)】
4F070
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA15
4F070AA75
4F070AB11
4F070AB23
4F070AC45
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4J002AB01W
4J002BB03Y
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4J002CK02Y
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4J002GL00
4J002GN00
4J002GN01
4J002GQ00
4J002GQ01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明は、セルロース繊維を含む樹脂組成物を用いた成形体の強度を飛躍的に向上させることのできる樹脂組成物の製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】セルロース繊維(A)、水性架橋剤(B)、水性架橋剤(B)と反応性を有する熱可塑性樹脂(C)、及び熱可塑性樹脂(D)を出発原料とした、以下の工程(I)、(II)を有することを特徴とする樹脂組成物の製造方法。
工程(I):水の存在下、セルロース繊維(A)と水性架橋剤(B)を(A):(B)=100:0.5~30の質量比なる割合で混合・乾燥した分散物を得る
工程(II):工程(I)で得られる分散物に、熱可塑性樹脂(C)を添加して混練することにより、水性架橋剤(B)と熱可塑性樹脂(C)とを反応させる
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース繊維(A)、水性架橋剤(B)、水性架橋剤(B)と反応性を有する熱可塑性樹脂(C)、及び熱可塑性樹脂(D)を出発原料とした、以下の工程(I)、(II)を有することを特徴とする樹脂組成物の製造方法。
工程(I):水の存在下、セルロース繊維(A)と水性架橋剤(B)を(A):(B)=100:0.5~30の質量比なる割合で混合・乾燥した分散物を得る
工程(II):工程(I)で得られる分散物に、熱可塑性樹脂(C)を添加して混練することにより、水性架橋剤(B)と熱可塑性樹脂(C)とを反応させる
【請求項2】
水性架橋剤(B)が、カルボジイミド基、オキサゾリン基、エポキシ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、イソシアネート基の群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有することを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
熱可塑性樹脂(C)が、無水酸基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、エポキシ基、アミノ基の群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有するポリオレフィンであることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
熱可塑性樹脂(D)が、ポリオレフィン樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
前記工程(I)または工程(II)において、更にジヒドラジド化合物(E)を添加することを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
前記工程(II)または工程(II)の後で、更に熱可塑性樹脂(D)を添加して混練し、熱可塑性樹脂(D)中でセルロース繊維(A)を微細セルロース繊維(A’)へ解繊することを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項7】
セルロース繊維(A)及び/又は微細セルロース繊維(A’)、
熱可塑性樹脂(D)、
並びに
水性架橋剤(B)と水性架橋剤(B)と反応性を有する熱可塑性樹脂(C)との反応物(F)
を含有する樹脂組成物であって、
水性架橋剤(B)と熱可塑性樹脂(C)との反応に関与する官能基が以下の(1)~(8)組み合わせの群から選ばれる少なくとも1種であり、
かつ、
セルロース繊維(A)及び/又は微細セルロース繊維(A’)の合計1質量部に対し、
熱可塑性樹脂(D):0.5~100質量部、
反応物(F):0.01~1.5質量部
含むことを特徴とする、樹脂組成物。
(1)カルボジイミド基と無水酸基
(2)カルボジイミド基とカルボキシ基
(3)オキサゾリン基と無水酸基
(4)エポキシ基と無水酸基
(5)ヒドロキシ基と無水酸基
(6)カルボキシ基と無水酸基
(7)アミノ基と無水酸基
(8)イソシアネート基とヒドロキシ基
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロース繊維複合樹脂成形体の強度を向上させることのできる樹脂組成物の製造方法、及び樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂成形体の強度を向上させる目的で、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、セルロース繊維など、繊維状添加物が利用されている。中でもセルロース繊維は、密度が小さい、弾性率が高い、線熱膨張係数が小さいなどの特徴を有する。また、セルロース繊維は「カーボンニュートラル」であり持続可能な資源であることから、環境負荷の低減に資する素材になると期待されている。しかしながら、セルロース繊維は親水性、樹脂は疎水性であり、セルロース繊維と樹脂との接着性が悪いためかセルロース繊維の強度が成形体に充分反映させられていない場合があった。
【0003】
セルロース繊維複合樹脂において、成形体の強度を向上する目的で、セルロース繊維を疎水化変性する、あるいは、相溶化剤を用いることにより、セルロース繊維と樹脂との相溶性や界面強度を向上させる方法が提案されている。
【0004】
例えば特許文献1に記載されているように、ミクロフィブリル化セルロース繊維とポリプロピレン等のポリオレフィンからなる複合材料において、マレイン酸変性ポリプロピレンを相溶化剤、又は界面補強剤として使用することが広く知られている。しかしながら、親水性の高いセルロース繊維との親和性は低く、実際に補強効果も満足いくものではなかった。
【0005】
また特許文献2では、セルロース繊維をはじめとした天然系植物繊維を含む、ポリ乳酸及びポリプロピレン複合樹脂において、カルボジイミド基と反応する基を有するプロピレン系樹脂とカルボジイミド基含有化合物を反応させてなる変性プロピレン系樹脂を使用することで、得られる複合樹脂の耐熱性および曲げ強度が優れることが記載されている。しかしながら、ポリ乳酸系樹脂組成物の耐熱性は改善されているものの、曲げ強度の向上は十分とは言えなかった。
【0006】
さらに特許文献3では、植物繊維、ポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂、及びカルボキシ基と反応性を有する化合物からなる成形材料用樹脂組成物を用いることで、フォギングが抑制された、軽量で強度を維持した成形体が得られると記載されている。しかしながら、カルボキシ基と反応性を有する化合物は、フォギングの要因である植物繊維に含まれる有機酸等の揮発を抑制する目的で使用されており、得られる成形体の強度を向上させるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/0146701号明細書
【特許文献2】特開2008-88358号公報
【特許文献3】国際公開第2020/230836号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これに対して本発明は、セルロース繊維を含む樹脂組成物を用いた成形体の強度を飛躍的に向上させることのできる樹脂組成物の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、水の存在下でセルロース繊維と特定の水性架橋剤を混合・乾燥した後、水性架橋剤と反応性を有する熱可塑性樹脂を混練し反応させることで、成形体とした際に高強度な樹脂組成物を得られることを見出した。
【0010】
すなわち、上記の課題を解決しようとする本発明の手段は、
<1>セルロース繊維(A)、水性架橋剤(B)、水性架橋剤(B)と反応性を有する熱可塑性樹脂(C)、及び熱可塑性樹脂(D)を出発原料とした、以下の工程(I)、(II)を有することを特徴とする樹脂組成物の製造方法
工程(I):水の存在下、セルロース繊維(A)と水性架橋剤(B)を(A):(B)=100:0.5~30の質量比なる割合で混合・乾燥した分散物を得る
工程(II):工程(I)で得られる分散物に、熱可塑性樹脂(C)を添加して混練することにより、水性架橋剤(B)と熱可塑性樹脂(C)とを反応させる、
<2>水性架橋剤(B)が、カルボジイミド基、オキサゾリン基、エポキシ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、イソシアネート基の群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有することを特徴とする前記<1>に記載の樹脂組成物の製造方法、
<3>熱可塑性樹脂(C)が、無水酸基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、エポキシ基、アミノ基の群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有するポリオレフィンであることを特徴とする前記<1>に記載の樹脂組成物の製造方法、
<4>熱可塑性樹脂(D)が、ポリオレフィン樹脂であることを特徴とする前記<1>に記載の樹脂組成物の製造方法、
<5>前記工程(I)または工程(II)において、更にジヒドラジド化合物(E)を添加することを特徴とする前記<1>に記載の樹脂組成物の製造方法、
<6>前記工程(II)または工程(II)の後で、更に熱可塑性樹脂(D)を添加して混練し、熱可塑性樹脂(D)中でセルロース繊維(A)を微細セルロース繊維(A’)へ解繊することを特徴とする前記<1>に記載の樹脂組成物の製造方法、
<7>セルロース繊維(A)及び/又は微細セルロース繊維(A’)、
熱可塑性樹脂(D)、
並びに
水性架橋剤(B)と水性架橋剤(B)と反応性を有する熱可塑性樹脂(C)との反応物(F)
を含有する樹脂組成物であって、
水性架橋剤(B)と熱可塑性樹脂(C)との反応に関与する官能基が以下の(1)~(8)組み合わせの群から選ばれる少なくとも1種であり、
かつ、
セルロース繊維(A)及び/又は微細セルロース繊維(A’)の合計1質量部に対し、
熱可塑性樹脂(D):0.5~100質量部、
反応物(F):0.01~1.5質量部
含むことを特徴とする、樹脂組成物、
(1)カルボジイミド基と無水酸基
(2)カルボジイミド基とカルボキシ基
(3)オキサゾリン基と無水酸基
(4)エポキシ基と無水酸基
(5)ヒドロキシ基と無水酸基
(6)カルボキシ基と無水酸基
(7)アミノ基と無水酸基
(8)イソシアネート基とヒドロキシ基
である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の樹脂組成物の製造方法によれば、得られる樹脂組成物の成形体の強度を飛躍的に向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、以下の記載は本発明の実施形態の一例であり、本記載に限定されるものではない。
【0013】
<樹脂組成物の原料>
本発明の樹脂組成物の製造方法は、セルロース繊維(A)、水性架橋剤(B)、水性架橋剤(B)と反応性を有する熱可塑性樹脂(C)、及び熱可塑性樹脂(D)を出発原料とする。
【0014】
セルロース繊維(A)は、植物(例えば、木材、竹、麻、コットン、ジュート、ケナフ、農地残廃物、布、パルプ(針葉樹未漂白クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未漂白クラフトパルプ(LUKP)、広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹未漂白サルファイトパルプ(NUSP)、針葉樹漂白サルファイトパルプ(NBSP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、再生パルプ、古紙等)、動物(例えばホヤ類)、藻類、微生物(例えば酢酸菌(アセトバクター))、微生物産生物等を起源とするものが知られており、本発明ではそのいずれも使用できる。好ましくは、植物又は微生物由来のセルロース繊維であり、より好ましくは、植物由来のセルロース繊維である。植物由来のセルロース繊維の中でも、パルプ(特に針葉樹未漂白クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP))が特に好ましい。
【0015】
また、セルロース繊維(A)はセルロースの官能基を置換修飾したような変性セルロースでもよい。例えば、セルロースの水酸基を無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水吉草酸、無水ヘキサン酸、無水デカン酸、無水安息香酸、無水ステアリン酸などの酸無水物や無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸、アルキル若しくはアルケニルコハク酸無水物、無水マレイン酸変性ポリオレフィン、無水マレイン酸変性ポリブタジエンなどの多塩基酸無水物等でエステル化した変性セルロース繊維でもよい。更に、(メタ)アクリレート系モノマー、(メタ)アクリルアミド系モノマー及びスチレン系モノマーよりなる群から選ばれる少なくとも一種のモノマー単位を含むアクリル樹脂および/またはスチレンアクリル樹脂を用いて、セルロース表面に吸着変性させた変性セルロース繊維を用いても良い。セルロース繊維(A)は1種を単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
【0016】
水性架橋剤(B)としては、カルボジイミド基、オキサゾリン基、エポキシ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、イソシアネート基、ヒドラジド基、シラノール基、及びアジリジニル基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を含む化合物が挙げられ、中でもカルボジイミド基、オキサゾリン基、エポキシ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、イソシアネート基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を含む化合物が好ましい。
【0017】
水性架橋剤(B)の形態は、水溶性もしくは水分散性であることが、水の存在下におけるセルロース繊維との混合性から好ましい。本発明でいう水溶性もしくは水分散性であるとは、固形分が5質量%となるように水に分散させ、室温で24時間経過後、沈殿物が無いもののうち、該分散液の波長600nmの可視光線透過率が50%T以上のものである。
【0018】
水性架橋剤(B)としては、分子中に2個以上の官能基を有していればよい。官能基を有する水性架橋剤は、公知の方法で合成してもよく、市販の官能基含有化合物を用いてもよい。市販のカルボジイミド基含有化合物としては、例えば、日清紡ケミカル社製カルボジライトV-02、SV-02、V-04等、市販のオキサゾリン基含有化合物としては、日本触媒社製エポクロスWS-700等、市販のエポキシ基含有化合物としては、ナガセケムテックス社製デナコールEX-861、EX-512等、市販のヒドロキシ基及びカルボキシ基含有化合物としては、互応化学工業社製プラスコートZ-687、Z-730等、ヒドロキシ基含有化合物としては、ポリビニルアルコールやセルロース誘導体、カルボキシ基含有重合物としてはポリアクリル酸等、市販のアミノ基含有重合物としては、HUNTSMAN社製JEFFAMINEED-2003等、市販のイソシアネート基含有重合物としては、旭化成製デュラネートWL70-100等が挙げられる。
【0019】
水性架橋剤(B)は、官能基を有するエチレン性不飽和単量体を公知の方法で重合することでも得ることができる。エチレン性不飽和単量体としては、例えば、2-ビニル-2-オキサゾリン、4-メチル-2-ビニル-2-オキサゾリン、5-メチル-2-ビニル-2-オキサゾリン、4,4-ジメチル-2-ビニル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン等のオキサゾリン基、(メタ)アクリル酸グリシジル等のエポキシ基、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、N-メチロールアクリルアミド、及びN-ヒドロキシエチルアクリルアミド等のヒドロキシ基、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸、及びフマル酸等のカルボキシ基、メタクリル酸2-アミノエチル、及び4-アミノスチレン等のアミノ基を有するものが挙げられ、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
水性架橋剤(B)と反応性を有する熱可塑性樹脂(C)は、水性架橋剤(B)と反応しうる官能基を有する熱可塑性樹脂を使用でき、無水酸基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、エポキシ基、アミノ基の群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有するポリオレフィンであることが好ましい。中でも汎用性の観点から、無水酸基を有するポリオレフィンが好ましく、例えば無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレンなどの無水マレイン酸変性ポリオレフィン等が挙げられる。官能基を有するポリオレフィンは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
官能基はポリオレフィンの主鎖中に含まれていてもよく、ポリオレフィンの主鎖に側鎖として結合していてもよい。ポリオレフィンの側鎖として官能基を結合させる方法として、ポリオレフィンに官能基を有するエチレン性不飽和単量体をグラフト反応させる方法が挙げられる。グラフト反応は公知の方法で行うことが可能であり、例えばポリオレフィンを軟化点以上の温度にすることで有機溶剤に溶解または均一分散し、官能基を有するエチレン性不飽和単量体と有機過酸化物を添加し反応させる溶液法、ポリオレフィンを軟化点以上にすることで溶融し、官能基を有するエチレン性不飽和単量体と有機過酸化物を添加混合し反応させる溶融法がある。
【0022】
主鎖となるポリオレフィンは、ポリエチレン、ポリプロピレン等のホモポリマーであっても、オレフィンの共重合体であってもよいが、少なくともエチレンおよび/またはプロピレンを含むα-オレフィンの共重合体が望ましい。α-オレフィンとしてはエチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ドデセン、1-ドデカデセン、4-メチル-1-ペンテン等が挙げられる。共重合体としてはランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0023】
前記グラフト反応に用いるエチレン性不飽和単量体としては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、及び2-メタクリロイロキシエチルコハク酸等の無水酸基、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、N-メチロールアクリルアミド、及びN-ヒドロキシエチルアクリルアミド等のヒドロキシ基、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸、及びフマル酸等のカルボキシ基、(メタ)アクリル酸グリシジル等のエポキシ基、メタクリル酸2-アミノエチル、及び4-アミノスチレン等のアミノ基を有するものが挙げられ、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
反応性を有する熱可塑性樹脂(C)が有する官能基の量としては、本発明の効果を得られる程度に水性架橋剤(B)と十分反応するに足る量であれば特に制限はないが、例えば、無水マレイン酸変性ポリオレフィンの場合、酸価として、1~150mgKOH/OHの範囲にあることが好ましく、5~100mgKOH/OHの範囲にあることがより好ましい。
【0025】
熱可塑性樹脂(D)は、成形体に通常用いられているものであれば特に限定されない。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合物などのポリオレフィン;ポリアセタール、6ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12などのポリアミド;ポリ乳酸、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル;ポリ塩化ビニルやポリ塩化ビニリデンなどの塩素樹脂;ポリフッ化ビニルやポリフッ化ビニリデンなどのフッ素樹脂;ポリスチレン;ABS樹脂;石油樹脂、クマロン樹脂;テルペン樹脂;ロジン樹脂;オレフィン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー等の熱可塑性エラストマー;アイオノマー樹脂、ポリアクリロニトリル、エチレン-酢酸ビニル樹脂、エチレン-ビニルアルコール樹脂、ポリプロピレンカーボネート、ポリカーボネートジオールなどのポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、メチルペンテン樹脂などが挙げられ、これらの1種又は2種以上を混合使用できる。融点、または軟化点が220℃以下の熱可塑性樹脂であると、セルロース繊維への熱による影響が少ないため好ましい。具体的にはポリオレフィンを用いた場合に好適であり、ポリプロピレンが最も好適である。
【0026】
本発明の樹脂組成物の製造方法においては、出発原料として、後述する工程(I)または工程(II)において、本願発明の目的である成形体としたときの強度をより優れたものにするために、さらにジヒドラジド化合物(E)を添加することが好ましい。ジヒドラジド化合物(E)とは、分子中に2個のヒドラジド基を有する化合物である。ジヒドラジド化合物(E)は、ヒドラジド基がセルロース表面の親水基と相互作用することで吸着し、ヒドラジド基の間に位置する疎水性基が、セルロースに疎水性を付与すると考えられる。この疎水性により、後述する熱可塑性樹脂との複合化工程において、セルロース繊維と熱可塑性樹脂の相溶性が向上し、成形体の力学特性をさらに向上させると考えられる。セルロース繊維(A)への疎水性付与の観点から、ジヒドラジド化合物(E)の炭素数は6~12であることが好ましい。特に、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド等が好適である。
【0027】
本発明の樹脂組成物の製造方法は、水の存在下、セルロース繊維(A)と水性架橋剤(B)を(A):(B)=100:0.5~30の質量比なる割合で混合・乾燥した分散物を得る工程(I)と、工程(I)で得られる分散物に、熱可塑性樹脂(C)を添加して混練することにより、水性架橋剤(B)と熱可塑性樹脂(C)とを反応させる工程(II)とを有する。
【0028】
工程(I)においては、セルロース繊維(A)と水性架橋剤(B)を均一に混合するため、水の存在下で混合する必要がある。水の割合は、通常、セルロース繊維(A)1質量部に対して0.5~100質量部であることが好ましく、より好ましくは1~80質量部である。セルロース繊維(A)と水性架橋剤(B)が均一に混合できれば、混合方法に特に制限はない。混合時、セルロース繊維(A)以外にフィラー等を混合していてもよい。
【0029】
工程(I)においては、水と共に必要に応じて有機溶媒存在下でセルロース繊維(A)と水性架橋剤(B)を混合してもよい。有機溶媒としてはセルロース繊維を膨潤させられる、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-プロパノール、t-ブタノール、アセトン、ダイアセトンアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、Nメチル-2-ピロリドンが挙げられる。これらは1種単独でもよく、必要に応じて2種以上を併用してもよい。有機溶媒の割合は、水と混和する範囲で、水100質量部に対して1~100質量部であることが好ましい。
【0030】
上記のセルロース繊維(A)と水性架橋剤(B)からなる分散物は、熱可塑性樹脂(C)と混練、反応させるため乾燥させる必要がある。乾燥方法は特に制限がなく、セルロース繊維(A)や水性架橋剤(B)の凝集や分解を伴わない温度で乾燥出来ればよい。好ましくは乾燥時にセルロース繊維(A)と水性架橋剤(B)からなる分散物の収縮を抑制するため内容物を攪拌しながら減圧雰囲気下、動的に乾燥する方法や、水分を除去できる設備やベント孔等を有した混練機を使用することが好ましい。
【0031】
工程(II)においては、上記工程(I)で得られる分散物と、熱可塑性樹脂(C)とを混練しながらセルロース繊維(A)を分散させつつ、水性架橋剤(B)と熱可塑性樹脂(C)とを反応させて、水性架橋剤(B)と熱可塑性樹脂(C)との反応物(F)とする。混練方法に特に制限はなく、従来公知の方法をとることができる。例えば、一軸混練機、二軸混練機、ニーダー、バンバリーミキサー、加圧型ニーダー、ロール混練機等がある。混練機はバッチ式、連続式いずれでもよい。
【0032】
混練時の温度は、水性架橋剤(B)と熱可塑性樹脂(C)の反応を促進させる温度で、かつセルロース繊維が熱により劣化しない温度が好ましい。具体的には100~250℃の範囲で混練することが好ましい。
【0033】
熱可塑性樹脂(D)の添加順序に特に制限はないが、セルロース繊維(A)と水性架橋剤(B)の均一な混合、及び水性架橋剤(B)と熱可塑性樹脂(C)の反応を阻害しないため、工程(II)または工程(II)の後で添加することが好ましい。
【0034】
工程(I)において、セルロース繊維(A)と水性架橋剤(B)は、(A):(B)=100:0.5~30の質量比なる割合である必要がある。セルロース繊維(A)100質量部に対して水性架橋剤(B)が0.5質量部より少ないと、セルロース繊維(A)に対する水性架橋剤(B)の量が不足し、熱可塑性樹脂(C)との反応性が低下しセルロース繊維(A)と熱可塑性樹脂(D)との相溶性が低下するため、結果として樹脂組成物を用いた成形体の強度が得られにくくなる。また、セルロース繊維(A)100質量部に対して水性架橋剤(B)が30質量部よりも多いと、余剰の(B)成分がセルロース繊維(A)を凝集させてしまうため、工程(I)以降におけるセルロース繊維(A)の分散性が悪化し、樹脂組成物を用いた成形体の強度が得られにくくなる。
【0035】
工程(II)において、水性架橋剤(B)と熱可塑性樹脂(C)の質量比は、(B):(C)=1:0.1~100であることが好ましい。水性架橋剤(B)と熱可塑性樹脂(C)の質量比が上記範囲外であると、未反応の余剰成分がセルロース繊維(A)の可塑剤として働いてしまうため、補強効果を悪化させる。
【0036】
工程(II)において、及び/又は工程(II)の後で、熱可塑性樹脂(D)を添加して混練する際、熱可塑性樹脂(D)中でセルロース繊維(A)の一部または全部を微細セルロース繊維(A’)へ解繊することが好ましい。本発明において微細セルロース繊維(A’)とは、繊維径が1000nm未満であるものをいう。補強効果や成形性の観点から、4~800nmであることが好ましく、4~400nmであることがより好ましく、4~200nmであることがさらに好ましい。なお本発明において、繊維径は以下の方法で確認する。
<繊維径の確認方法>
微細セルロース繊維(A’)を含む樹脂組成物(または成形体)試料を325meshステンレスメッシュで包み、キシレン還流下、140℃で5時間処理を行うことで樹脂を溶解し繊維分を抽出乾燥したものを、走査型電子顕微鏡(例えば、日本電子株式会社製、JSM-5610LV)で倍率1万倍にて観察し、任意の繊維について繊維径を測定した。
【0037】
<樹脂組成物>
本発明の樹脂組成物の好ましい形態においては、セルロース繊維(A)及び/又は微細セルロース繊維(A’)、熱可塑性樹脂(D)、並びに、水性架橋剤(B)と熱可塑性樹脂(C)との反応物(F)を含有する。
【0038】
本発明で得られる樹脂組成物は、水性架橋剤(B)と熱可塑性樹脂(C)との反応物(F)を含む。反応物(F)において、水性架橋剤(B)と熱可塑性樹脂(C)との反応に関与する官能基の組み合わせはカルボジイミド基と無水酸基、カルボジイミド基とカルボキシ基、オキサゾリン基と無水酸基、エポキシ基と無水酸基、ヒドロキシ基と無水酸基、カルボキシ基と無水酸基、アミノ基と無水酸基、及びイソシアネート基とヒドロキシ基の組み合わせの群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、2種以上であってもよい。特に好ましい組み合わせはカルボジイミド基と無水酸基、オキサゾリン基と無水酸基である。具体的な化合物の組み合わせとしては、カルボジイミド基含有化合物と無水マレイン酸変性ポリプロピレンの組み合わせ、オキサゾリン基含有化合物と無水マレイン酸変性ポリプロピレンの組み合わせが挙げられる。
【0039】
セルロース繊維(A)及び微細セルロース繊維(A’)の合計、熱可塑性樹脂(D)、及び反応物(F)の質量比は、(A)+(A’):(D):(F)=1:0.5~100:0.01~1.5である必要がある。セルロース繊維(A)及び微細セルロース繊維(A’)の合計1質量部に対し反応物(F)が0.01質量部以下であると、反応物(F)によるセルロース繊維(A)の分散性向上効果が十分得られず、また、セルロース繊維(A)と熱可塑性樹脂(D)の相溶性の向上効果も十分得られないため補強効果が低減する。セルロース繊維(A)1質量部に対し反応物(F)が1.5以上であると、余剰の(F)成分が成形体中で可塑剤として働いてしまうため、樹脂組成物を用いた成形体の強度が得られにくくなる
【0040】
本発明の樹脂組成物には、本発明の効果を妨げない範囲で、熱可塑性樹脂(D)以外の樹脂;無機、有機、金属などの繊維状、粉粒状、板状の充填剤;結晶化核剤;架橋剤;加水分解防止剤;酸化防止剤;紫外線吸収剤;界面活性剤;滑剤;ワックス類;着色剤;安定剤等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を混合使用できる。
【0041】
<成形体>
本発明の樹脂組成物は、従来公知の成形方法(例えば、射出成形、押出成形、圧縮成形、ブロー成形、真空成形、発泡成形、回転成形、ガスインジェクション成形などの方法)で、種々の成形品を成形することができる。特に、射出成形に好適である。また本発明の樹脂組成物を用いた成形体の用途としては特に限られることはないが、例えば、自動車、バイク、自転車、鉄道、ドローン、ロケット、航空機、船舶等の輸送機械用の内外装材や筐体等、風力発電機、水力発電機等のエネルギー機械、エアコン、冷蔵庫、掃除機、電子レンジ、AV機器、ディジタルカメラ、パソコン等の家電筐体、電子基板、携帯電話、スマートホン等の通信機器筐体、松葉づえ、車いす等の医療用器具、スニーカーやビジネスシューズ等の靴、タイヤ、球技スポーツ用のボール、スキーブーツ、スノーボード板、ゴルフクラブ、プロテクタ、釣り糸、疑似餌等のスポーツ用品、テントやハンモックなどのアウトドア用品、電線被覆材、水道管、ガス管等の土木建築資材、柱材、床材、化粧板、窓枠、断熱材等の建築材、本棚、机、椅子等の家具、産業用ロボット、家庭用ロボット、積層式3Dプリンタ用フィラメントやサポート剤、フィルムやテープなどの包装材、ペットボトル等の樹脂容器、メガネフレーム、ごみ箱、シャープペンシルケース等の生活雑貨等が挙げられる。
【実施例0042】
以下、本発明の実施例について説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0043】
[セルロース繊維(A)]
本実施例に使用の原料のセルロース繊維(A)は、一般に購入可能な針葉樹漂白クラフトパルプ(A-1;以下、単に「セルロース繊維(A-1)」と称する)、または一般に購入可能なコットンリンターパルプ(A-2)を用いた。
【0044】
[樹脂組成物の製造]
(実施例1)
<工程(I)>
攪拌機を備えた容器へセルロース繊維(A)としてセルロース繊維(A-1)20質量部と、水80質量部と水性架橋剤(B)としてカルボジイミド基含有化合物(B-1・日清紡ケミカル(株)製カルボジライトSV-02・固形分40質量%)1質量部を投入し、70℃で混合した後、減圧下で水を留去し、A-1とB-1からなる分散物を得た。
<工程(II)>
次に、その分散物20.4質量部と熱可塑性樹脂(C)として無水マレイン酸変性ポリプロピレン(C-1・東洋紡(株)製トーヨータック(登録商標)PMAH1000P)6質量部、熱可塑性樹脂(D)としてポリプロピレン樹脂((株)プライムポリマー製プライムポリプロ(登録商標)J108M、以下、単に「ポリプロピレン樹脂」と略することがある。)73.6質量部をラボプラストミル(東洋精機(株)製)へ投入し、混練温度180℃、100回転/分で10分間溶融混練しB-1とC-1を反応させるとともに、A-1を微細セルロースに解繊して樹脂組成物を得た。
【0045】
(実施例2~3)
水性架橋剤(B)の種類及び仕込み量を表1のように変えた以外は、実施例1に記載の方法に準じて樹脂組成物を得た。
【0046】
(比較例1)
水性架橋剤(B)を用いず、各出発原料の仕込み量を表1のように変えた以外は、実施例1に記載の方法に準じて樹脂組成物を得た。
【0047】
(比較例2)
水性架橋剤(B)と反応性を有する熱可塑性樹脂(C)を用いず、各出発原料の仕込み量を表1のように変えた以外は、実施例1に記載の方法に準じて樹脂組成物を得た。
【0048】
(実施例4)
<工程(I)>
攪拌機を備えた容器へセルロース繊維(A)としてセルロース繊維(A-1)20質量部と、水80質量部と水性架橋剤(B)としてカルボジイミド基含有化合物(B-1・日清紡ケミカル(株)製カルボジライトSV-02・固形分40質量%)2.5質量部を投入し、70℃で混合した後、減圧下で水を留去し、A-1とB-1からなる分散物を得た。
<工程(II)>
次に、その分散物21質量部と熱可塑性樹脂(C)として無水マレイン酸変性ポリプロピレン(C-1・東洋紡(株)製トーヨータック(登録商標)PMAH1000P)6質量部、熱可塑性樹脂(D)としてポリプロピレン樹脂69質量部、ジヒドラジド化合物(E)としてセバシン酸ジヒドラジド4質量部をラボプラストミル(東洋精機(株)製)へ投入し、混練温度180℃、100回転/分で10分間溶融混練しB-1とC-1を反応させるとともに、A-1を微細セルロースに解繊して樹脂組成物を得た。
【0049】
(実施例5、6)
セルロース繊維(A)の種類、及びジヒドラジド化合物(E)の添加タイミングを表1のように変えた以外は、実施例4に記載の方法に準じて樹脂組成物を得た。
【0050】
【0051】
【0052】
表1、及び表2中の略号の説明
B-1:日清紡ケミカル(株)製カルボジライトSV-02・固形分40質量%
B-2:(株)日本触媒製エポクロスWS-700・固形分25質量%
C-1:東洋紡(株)製トーヨータック(登録商標)PMAH1000P
PP:(株)プライムポリマー製「プライムポリプロ(登録商標)J108M」(mp:170~175℃)
SDH:セバシン酸ジヒドラジド
【0053】
<樹脂組成物の評価>
(射出成形、曲げ物性の測定)
得られた樹脂組成物を、手動射出成形機(井元製作所(株)製:型式18D1)を用いてJIS規格K7171に記載のバー型試験片を成形し、JISK7171に準拠して、オリエンテック(株)製万能試験機「テンシロン(登録商標)RTM-50」で曲げ強度を測定した。樹脂単独に対する曲げ強度の向上率を指数として比較した結果を表2に示した。
強度[指数]=(実施例、及び比較例の強度)/(樹脂単独の強度)×100
【0054】
<樹脂組成物中の微細セルロース繊維(A’)の存在確認>
実施例で得られた樹脂組成物を325meshステンレスメッシュで包み、キシレン還流下、140℃で5時間処理を行うことで樹脂を溶解除去し、微細セルロース繊維(A’)を樹脂組成物から抽出し、これを走査型電子顕微鏡(SEM)で倍率1万倍にて観察したところ、本発明で規定する繊維径を有する微細セルロース繊維(A’)の存在を確認した。また、他の実施例においても同様に微細セルロース繊維(A’)が含まれていることを確認した。
【0055】
実施例1~6と比較例1~2との対比から、本発明で規定する条件を全て満足することで、同条件のいずれかひとつでも満足しない比較例においては達成しない、得られる成形体の曲げ強度の指数において、所望するレベルを本発明は達成することが分かる。