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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023120002
(43)【公開日】2023-08-29
(54)【発明の名称】温水機器
(51)【国際特許分類】
   G06F 11/07 20060101AFI20230822BHJP
   G06F 8/65 20180101ALI20230822BHJP
   F24H 15/10 20220101ALI20230822BHJP
   F24H 15/296 20220101ALI20230822BHJP
   F24H 15/414 20220101ALI20230822BHJP
   F24H 1/00 20220101ALI20230822BHJP
【FI】
G06F11/07 157
G06F11/07 140Q
G06F8/65
F24H15/10
F24H15/296
F24H15/414
F24H1/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022023160
(22)【出願日】2022-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉▲高▼ 豊
【テーマコード(参考)】
3L122
5B042
5B376
【Fターム(参考)】
3L122AA03
3L122AA34
3L122AA63
3L122BA42
3L122EA02
3L122FA02
3L122GA09
5B042JJ15
5B042JJ21
5B042KK02
5B376CA22
(57)【要約】
【課題】ソフトウェア更新処理の際にもマイクロコンピュータが正常に動作しているか否かを適切に監視することが可能な温水機器を提供する。
【解決手段】監視用IC220A及びサブマイコン220Bの各々は、マイクロコンピュータ210との間の通信を伴って、マイクロコンピュータ210の異常を検出する。マイクロコンピュータ210のソフトウェア更新処理時において、更新制御部230は、機器制御部234及び異常判定部232bに関連するソフトウェアを更新処理の対象とする一方で、異常判定部232aに関連するソフトウェアを更新処理の対象外とする。異常判定部232aは、機器制御部234におけるソフトウェア更新処理時に、監視用IC220A又はサブマイコン220Bに対する異常監視のための定期的な通信を実行する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
温水機器であって、
第1のマイクロコンピュータと、
前記第1のマイクロコンピュータとの間の通信を伴って前記第1のマイクロコンピュータの異常を検知するための異常監視器とを備え、
前記第1のマイクロコンピュータは、
前記温水機器の搭載機器の動作を制御するための第1の制御部と、
前記異常監視器に対して、前記第1のマイクロコンピュータの異常監視のための通信を実行するための第2の制御部と、
前記第1のマイクロコンピュータにおけるソフトウェア更新処理を制御する第3の制御部とを有し、
前記第2の制御部は、
前記第1の制御部の前記ソフトウェア更新処理の際に、前記異常監視のための通信を前記異常監視器に対して実行する第1異常監視部と、
前記第1の制御部の動作時に前記異常監視のための通信を前記異常監視器に対して実行する第2異常監視部とを有する、温水機器。
【請求項2】
前記異常監視器は、監視用集積回路であり、
前記第1及び第2異常監視部の各々は、前記監視用集積回路に対して定期的にパルスを送信する様に前記異常監視のための通信を実行し、
前記監視用集積回路は、前記第1のマイクロコンピュータからの前記パルスの送信が途絶えると、前記第1のマイクロコンピュータを初期化処理する様に構成される、請求項1記載の温水機器。
【請求項3】
前記異常監視器は、前記第1のマイクロコンピュータとの間で定期的に通信を実行する第2のマイクロコンピュータであり、
前記第1及び第2異常監視部の各々は、前記第2のマイクロコンピュータに対して定期的に第1のデータ信号を送信するとともに、前記第2のマイクロコンピュータから第2のデータを受信する様に前記異常監視のための通信を実行し、
前記第2のマイクロコンピュータは、前記第1のマイクロコンピュータからの前記第1のデータ信号の送信が途絶えると、前記第1のマイクロコンピュータを初期化処理する様に構成される、請求項1記載の温水機器。
【請求項4】
前記第1異常監視部が前記第2のマイクロコンピュータに送信する前記第1のデータ信号のデータ量は、前記第2異常監視部が前記第1の制御部の動作中に前記第2のマイクロコンピュータに送信する前記第1のデータ信号のデータ量よりも少なく設定される、請求項3記載の温水機器。
【請求項5】
前記第1の制御部の前記ソフトウェア更新処理の際に、前記第1異常監視部による前記異常監視のための通信のタイミングは、前記ソフトウェア更新処理の進行と連動して設定される、請求項1~4のいずれか1項に記載の温水機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温水機器に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2020-133958号公報(特許文献1)には、複数の制御部間で通信を行うことによる異常判定機能を有する給湯装置が記載される。具体的には、一の制御部が他の制御部に対して所定の通信を行い、当該所定の通信に対する応答の有無によって当該他の制御部の異常を判定する異常判定部によって上記異常判定機能が実現される。更に、特許文献1には、当該他の制御部がファームウェアを更新している期間では、異常判定部を無効化することで、異常判定を適切に実行することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-133958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の温水機器では、ファームウェア等のソフトウェア更新処理時において、制御部(マイクロコンピュータ)が正常に動作しているか否かを監視することができなくなる点が問題である。
【0005】
本発明はこの様な問題点を解決するためになされたものであって、本発明の目的は、ソフトウェア更新処理の際にもマイクロコンピュータが正常に動作しているか否かを適切に監視することが可能な温水機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のある実施の形態に従うと、温水機器が提供される。温水機器は、第1のマイクロコンピュータと、第1のマイクロコンピュータとの間の通信を伴って第1のマイクロコンピュータの異常を検知するための異常監視器とを備える。第1のマイクロコンピュータは、温水機器の搭載機器の動作を制御するための第1の制御部と、異常監視器に対して、第1のマイクロコンピュータの異常監視のための通信を実行するための第2の制御部と、第1のマイクロコンピュータにおけるソフトウェア更新処理を制御する第3の制御部とを有する。第2の制御部は、第1の制御部のソフトウェア更新処理の際に、異常監視のための通信を異常監視器に対して実行する第1異常監視部と、第1の制御部の動作時に異常監視のための通信を前記異常監視器に対して実行する第2異常監視部とを有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、温水機器のマイクロコンピュータのソフトウェア更新処理時において、マイクロコンピュータが正常に動作しているか否かを適切に監視することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施の形態に係る温水機器の通信システムの構成例を示す概略図である。
図2】マイコンの異常監視構成を説明するブロック図である。
図3】マイコンの構成例を説明するブロック図である。
図4】ファームウェア更新時におけるマイコンの動作及び異常監視の比較例を説明するブロック図である。
図5】本実施の形態に係る温水機器でのファームウェア更新時におけるマイコンの動作及び異常監視を説明するブロック図である。
図6】ファームウェア更新処理時における異常監視の実行タイミングの一例を説明する概念図である。
図7】ファームウェア更新制御部による制御処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では図中の同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は原則的に繰返さないものとする。
【0010】
図1は、本実施の形態に係る温水機器の通信システムの構成例を示す概略図である。
【0011】
図1を参照して、本実施の形態に係る温水機器の通信システム5は、温水機器100と、インターフェイス機器20と、外部通信網40と、サーバ50とを備える。通信システム5は、サーバ50を介した、温水機器100の遠隔管理及び遠隔操作のために、温水機器100とサーバ50とを通信接続する。
【0012】
温水機器100は、例えば、給湯装置であり、給湯器110と、リモートコントローラ(以下、単に「リモコン」とも表記する)120,130と、通信アダプタ150とを含む。
【0013】
例えば、リモコン120は浴室に配設することができる。又、リモコン130は台所に配設することができる。このように、リモコン120,130を用いて、ユーザは、給湯器110の各機能について、種々の設定を行うことができる。
【0014】
通信アダプタ150は、インターフェイス機器20との間で所定の通信プロトコル(例えばIEEE802.11n等)で通信するための無線通信機能を有する。図1の例では、通信アダプタ150は、リモコン130に内蔵されるが、リモコン120,130の外部に配置されてもよい。
【0015】
給湯器110からの湯は、複数の給湯口111に接続された配管を経由して、給湯先へ送出される。例えば、給湯先には、図示しないカラン及び浴槽が含まれる。或いは、給湯先が、高温水を熱源とする暖房機(図示せず)を含むことにより、温水機器100は、暖房機能を有することができる。
【0016】
給湯器110の内部には、回路基板200が装着される。当該回路基板200には、給湯器110を駆動及び制御するためのマイクロコンピュータ(以下、「マイコン」と表記する)210が搭載される。マイコン210によって、図示しない燃焼器に対する燃料ガスの供給等を制御するための電磁弁(図示せず)、及び、当該燃料ガスと混合される空気を供給するための給気ファン(図示しない)等が制御される。
【0017】
給湯器110、及び、リモコン120,130は、通信線(例えば、2心通信線)101によって接続される。リモコン120,130は、表示部121,131、及び、入力部122,132を有する。ユーザは、表示部121,131による表示画面に従って入力部122,132を操作することにより、湯張りや給湯設定温度等を設定することができる。
【0018】
インターフェイス機器20は、リモコン120,130を含む一定範囲内に存在する機器を、外部通信網40を介してサーバ50に通信接続する機能を有する。例えば、インターフェイス機器20は、いわゆる、無線LAN(Local Area Network)ルータによって構成することができる。又、外部通信網40は、代表的には、インターネットである。以下では、外部通信網40を、単に、インターネット40とも称する。
【0019】
尚、インターフェイス機器20としては、無線LANルータに代えて有線LANルータを用いることも可能である。この場合には、通信アダプタ150は、有線LANルータとの間で所定の通信プロトコル(例えば、Ethernet規格のIEEE802.3等)で通信するように構成することができる。
【0020】
サーバ50は、インターネット40に接続されて、温水機器100に対する遠隔制御(遠隔操作及び遠隔監視)を管理するための機能を有する。通信アダプタ150は、無線通信によってインターフェイス機器20に通信接続されることで、インターネット40を介して、サーバ50と通信することができる。これにより、温水機器100は、通信アダプタ150を中継機器として、サーバ50と通信接続される。
【0021】
サーバ50に対しては、スマートフォン又はタブレット端末等の携帯端末装置30から通信接続することも可能である。携帯端末装置30がインターフェイス機器20と接続可能な範囲内に存在する場合には、無線通信によってインターフェイス機器20と接続されることにより、携帯端末装置30は、サーバ50と通信可能である。又、携帯端末装置30が宅外等にある場合には、当該携帯端末装置30は、ルータ60又は基地局70を介してインターネット40に接続することによって、サーバ50と通信することができる。
【0022】
このように、ユーザは、リモコン120,130の操作の他、携帯端末装置30を用いて、インターフェイス機器20と接続可能な範囲の内部及び外部の両方において、サーバ50とアクセスすることによって、温水機器100に対する遠隔制御(遠隔操作及び遠隔監視)を行うことも可能である。
【0023】
携帯端末装置30には、温水機器100のアプリケーションプログラムをインストールすることができる。例えば、当該アプリケーションプログラムは、サーバ50からダウンロードされた後、インストールされる。
【0024】
これに加えて、給湯器110(マイコン210)、及び、リモコン120,130の各々には、当該給湯器110の動作を制御するためのソフトウェア(以下、「ファームウェア(F/W)」とも称する)が格納される。ファームウェアは、工場出荷時の段階で、当該時点でのバージョンのものが書き込まれるとともに、本実施の形態では、サーバ50からの配信によって、異なるバージョンのファームウェアに書き換えることができる。
【0025】
次に、給湯器110におけるマイコン210の異常監視のための構成について、図2を用いて説明する。
【0026】
図2(a)に示される様に、回路基板200上に、マイコン210に加えて、ウォッチドッグIC(Integrated Circuit)に代表される監視用IC220Aを更に搭載して、マイコン210の異常監視を行うことが可能である。
【0027】
この場合、マイコン210は、定期的、例えば、一定時間毎、或いは、一定単位のプログラム処理の完了毎にパルスPLSを出力する様にプログラムされている。監視用IC220Aは、マイコン210から定期的に出力されるパルスPLSを受信し、前回のパルス受信から予め定められた時間が経過しても次のパルスが受信できないときには、パルスPLSが途切れたと判定して、マイコン210の異常を検知する。
【0028】
監視用IC220Aは、マイコン210の異常を検知すると、マイコン210を初期化処理するためのリセット信号を出力する。マイコン210は、監視用IC220Aからのリセット信号が入力されると、リセット処理(初期化処理)を実行する。これにより、マイコン210が異常状態のままで、給湯器110の制御が継続されることが防止される。
【0029】
図2(b)を参照して、回路基板200上に複数のマイコンが搭載される場合には、マイコン間の通信によって相互に異常監視を行うことも可能である。例えば、回路基板200上には、マイコン210に加えて、サブマイコン220Bが更に搭載される。
【0030】
この場合、サブマイコン220Bは、マイコン210とは異なる制御機能、例えば、表示用LED(Light Emitting Diode)の点灯制御機能等を有する様に構成される。マイコン210及びサブマイコン220Bの間では、マイコン210がサブマイコン220Bに対して送信データDT1を出力するとともに、サブマイコン220Bからマイコン210には送信データDT2が出力される、定期的な双方向の通信が行われる。例えば、送信データDT1は、LEDによる表示制御の指令を含み、送信データDT2は、LEDの現在の表示状態を示す情報を含む。
【0031】
この様な定期的な通信が途絶えることで、サブマイコン220Bは、マイコン210の異常を検知することができる。例えば、サブマイコン220Bは、前回マイコン210から送信データDT1を受信した後に、予め定められた時間が経過しても次の送信データDT1が受信されないときには、送信データDT1が途切れたと判定して、マイコン210の異常を検知する。
【0032】
図3には、マイコン210の構成例を説明するブロック図が示される。
【0033】
図3を参照して、マイコン210は、CPU(Central Processing Unit)211と、メモリ212と、インターフェイス(I/F)213と、バス214と、通信回路215,216とを含む。CPU211、メモリ212、インターフェイス(I/F)213及び、通信回路215,216は、バス214を介して相互にデータを授受可能に構成される。
【0034】
メモリ212は、図示しないRAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)を有する。ROMは、代表的には、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)によって構成され、通信アダプタ150のファームウェア、及び、制御に用いるデータ等を格納する。CPU211は、起動処理時において、ROMに格納されたファームウェアを読出してRAMに展開することで、当該ファームウェアにプログラムされた各種処理を順次実行することができる。
【0035】
インターフェイス(I/F)213は、給湯器110に配置されたセンサ(図示せず)の検出値であるアナログ電圧を受けて、上記プログラム処理に用いられるデジタルデータに変換する機能を有する。更に、インターフェイス213は、プログラム処理によって生成された、給湯器110の各構成機器(図示せず)への制御指令を示すデジタル信号を、当該構成機器に出力されるアナログ電圧信号に変換する機能を有する。
【0036】
通信回路215は、リモコン120,130のマイクロコンピュータ(図示せず)との間で双方向にデータを通信して、相互に情報を授受できるように構成される。同様に、通信回路216は、図2に示された監視用IC220A又はサブマイコン220Bとの間で通信できる様に構成される。
【0037】
次に、ファームウェア更新時におけるマイコン210の動作及び異常監視の比較例について、図4を用いて説明する。
【0038】
図4(a)及び図4(b)には、図2(a)及び図2(b)にそれぞれ示された異常監視構成でのファームウェア更新時におけるマイコン210の動作及び異常監視の比較例が示される。当該比較例では、特許文献1に記載の技術が適用される。
【0039】
図4(a)を参照して、マイコン210は、ファームウェア更新制御部230と、異常判定部232と、機器制御部234とを含む。ファームウェア更新制御部230と、異常判定部232と、機器制御部234の各々は、図3において、CPU211がそれぞれ異なるプログラムを実行することによって実現される、マイコン210の各機能を実行する機能ブロックとして示される。異常判定部232は、図2(a)で説明した、定期的にパルスPLSを出力する機能を有する。
【0040】
図1に示された通信システム5において、給湯器110と通信アダプタ150を介して通信接続されるサーバ50は、給湯器110のファームウェアのバージョン情報を管理しており、当該ファームウェアのバージョンアップ等に応じて、給湯器110に対して、ファームウェアの更新指示を送信する。更新指示には、更新後の新たなプログラム(以下、「更新プログラム」とも称する)、及び、更新プログラムへの書換のためのプログラム(以下、「書換プログラム」とも称する)のダウンロード先のURL(Uniform Resource Locator)、並びにファームウェアの更新開始日時を示す情報が含まれる。
【0041】
ファームウェア更新制御部230は、サーバ50からファームウェアの更新指示を受信すると、上記更新開始日時以降の適時に上記URLにアクセスすることによって、サーバ50から更新プログラム及び書換プログラムをダウンロードすることができる。
【0042】
更に、ファームウェア更新制御部230は、異常判定部232及び機器制御部234の両方を対象として、上記更新プログラムへのファームウェア更新処理を実行する。このため、ファームウェア更新時には、異常判定部232及び機器制御部234の機能は実行することができなくなる。従って、異常判定部232は、ファームウェア更新時には、定期的なパルス出力を実行できず、この結果、監視用IC220Aがマイコン210にリセット信号を出力してしまうと、ファームウェアの更新処理が実行できなくなってしまう。
【0043】
従って、図2(a)の構成に対して特許文献1を適用した図4(a)の比較例では、ファームウェア更新処理中には、ファームウェア更新制御部230から、監視用IC220Aに対して異常監視を無効化する指示信号が出力される。これにより、ファームウェアの更新が可能となる一方で、当該更新処理中には、マイコン210が正常に動作しているか否かを監視することができない。
【0044】
図4(b)においても、マイコン210の構成及び、ファームウェア更新時の動作は、図4(a)と同様である。図4(b)では、異常判定部232は、ファームウェア更新時には、サブマイコン220Bに対する定期的な送信データDT1の出力を実行できない。これに応じてサブマイコン220Bがマイコン210にリセット信号を出力してしまうと、ファームウェアの更新処理が実行できなくなってしまう。
【0045】
従って、図2(b)の構成に対して特許文献1を適用した図4(b)の比較例では、ファームウェア更新処理中には、ファームウェア更新制御部230から、サブマイコン220Bに対して異常監視を無効化する指示信号が出力される。これにより、ファームウェアの更新が可能となる一方で、当該更新処理中には、マイコン210が正常に動作しているか否かを監視することができない。
【0046】
図5には、本実施の形態に係る温水機器でのファームウェア更新時におけるマイコンの動作及び異常監視を説明するブロック図が示される。
【0047】
図5(a)には、図2(a)の構成に対する本実施の形態の適用例が示される。図5(a)に示される様に、本実施の形態では、図2(a)及び図4(a)での異常判定部232は、ファームウェア更新時に動作するための異常判定部232aと、通常時(例えば、機器制御部234の動作時)に動作するための異常判定部232bとに分けて設けられる。
【0048】
ファームウェア更新制御部230は、機器制御部234に関連するプログラムを更新プログラムへ書換えるファームウェア更新処理を実行する際に、異常判定部232bをファーウェア更新処理の対象とする一方で、異常判定部232aについては、関連するプログラムの更新を実行しないことで、ファームウェア更新処理の対象外とする。
【0049】
これにより、機器制御部234に関連するファームウェア更新と並行して、異常判定部232aが、監視用IC220Aに対して異常監視のための定期的なパルス出力を実行することができる。
【0050】
ファームウェア非更新時であって、機器制御部234が動作している通常時には、ファームウェア更新制御部230の機能は停止される。通常時には、機器制御部234の動作と並行して、異常判定部232bが、図2(a)に示した様に、パルスPLSを定期的に監視用IC220Aに送信する。これにより、監視用IC220Aにより、図2(a)で説明した異常監視が行われる。
【0051】
同様に、図5(b)には、図2(b)の構成に対する本実施の形態の適用例が示される。図5(b)においても、図2(b)及び図4(b)での異常判定部232は、図5(a)と同様の異常判定部232a及び異常判定部232bに分けて設けられる。
【0052】
ファームウェア更新制御部230は、図5(b)においても、機器制御部234に関連するファームウェア更新処理の際に、異常判定部232bをファームウェア更新処理の対象とする一方で、異常判定部232aについては、ファームウェア更新処理の対象外とする。
【0053】
これにより、異常判定部232aは、機器制御部234に関連するファームウェア更新と並行して、サブマイコン220Bに対して異常監視のための送信データDT1*を定期的に出力するとともに、サブマイコン220Bからの送信データDT2*を定期的に受信することができる。
【0054】
通常時には、ファームウェア更新制御部230の機能は停止されるとともに、異常判定部232bが、機器制御部234の動作と並行して、図2(b)に示した様に、送信データDT1を定期的にサブマイコン220Bに対して出力する。これにより、サブマイコン220Bにより、図2(b)で説明した異常監視が行われる。
【0055】
尚、図5(b)において、ファームウェア更新処理時において、異常判定部232aは、マイコン210からサブマイコン220Bへの送信データDT1*が、異常判定部232bによる通常時の送信データDT1(図2(b))と比較して、少ないデータ量で構成される様に動作することが好ましい。
【0056】
例えば、通常時の送信データDT1(異常判定部232b)には、サブマイコン220Bへの指令データが含まれる一方で、ファームウェア更新時には、相互通信に必要な情報のみとした簡素な内容で送信データDT1*(異常判定部232a)を構成することができる。
【0057】
同様に、サブマイコン220Bからマイコン210に送信されるデータについても、ファームウェア更新時の送信データDT2*は、通常時における送信データDT2(図2(b))よりも少ないデータ量で構成されることが好ましい。
【0058】
この様に、本実施の形態に係る温水機器では、マイクロコンピュータ210のメイン機能である機器制御部234に係るファームウェア更新時に、異常判定部232の一部(異常判定部232a)をファームウェア更新の対象から外して動作させることで、ファームウェア更新と並行して異常判定を実行することができる。
【0059】
或いは、ファームウェア更新中の異常判定部232aの動作タイミングについては、更新プログラムの書込処理の進行と連動させて、定期的に設けることも可能である。例えば、ファームウェア更新の際の異常判定部232aによる異常監視は、ファームウェア更新処理の一部ずつが終了する毎に実行されることでソフトウェア更新処理全体と並行に行われてもよい。
【0060】
図6には、ファームウェア更新処理時における異常監視の実行タイミングの一例を説明する概念図が示される。
【0061】
図6を参照して、ファームウェア更新制御部230は、更新プログラムをN個(N:2以上の整数)のブロックBLK1~BLKNに分割して、マイコン210のメモリ212に書込む様に更新処理を実行する。
【0062】
例えば、時刻tsからファームウェア更新処理が開始されると、更新ファームウェアのブロックBLK1のメモリ212への書込が完了した時刻t1において、異常判定部232aに対して、パルスPLS(図5(a))又はデータDT1*の送信が指示される。そして、異常判定部232aによる送信処理が終了すると、更新ファームウェアのブロックBLK2のメモリ212への書込が開始される。
【0063】
この結果、時刻teにおいて、最後のブロックBLKNの書込が終了するまでの間、ブロックBLK1~BLKN-1の書込が終了する時刻t1~tN-1の各々において、異常判定部232aの動作タイミングを設けることが可能である。
【0064】
図7には、ファームウェア更新制御部による制御処理を説明するフローチャートが示される。ファームウェア更新制御部230は、上述した、サーバ50からの更新プログラム及び書換プログラムのダウンロードを完了すると、図7に示された制御処理によって、ファームウェアの更新処理を実行する。
【0065】
ファームウェア更新制御部230は、ステップ(以下、単に「S」と表記する)110では、ブロックカウンタi(i:自然数)を1に初期化すると、S120により、更新プログラムの第i番目のブロックBLKiをメモリ212に書込処理を実行する。更に、ブロックBLKiの書込処理が終了すると、S130により、当該ブロックBLKiの書込検証処理が実行される。書込検証結果が非正常である場合には、S120によるブロックBLKiの書込処理が再実行されてもよい。
【0066】
ファームウェア更新制御部230は、ブロックBLKiの書込処理が正常に終了すると、S140により、異常判定部232aの動作タイミングを設けるとともに、S150では、ブロックカウンタiをインクリメントする。更に、S160では、インクリメント後のブロックカウンタiが、ブロック分割数Nに対する(N+1)以上であるか否かが判定される。i<(N+1)の間(S160のNO判定時)には、S120~S160の処理が繰り返し実行される。これにより、図6に示された様に、時刻t1~tN-1の各々において、異常判定部232aの動作タイミングが設けられる。そして、ブロックBLKNの書込処理が終了すると、ブロックカウンタi=(N+1)に設定される。
【0067】
ファームウェア更新制御部230は、i≧(N+1)になると(S160のYES判定時)、S170により、最終的な書込検証を実行する。そして、検証結果が正常であると(S180のYES判定時)、S190により、マイコン210を再起動させる。これにより、給湯器110を更新後のファームウェアが適用された状態とすることができる。
【0068】
一方で、検証結果が正常でないとき(S180のNO判定時)には、S195により異常メッセージが出力される。尚、ファームウェア更新処理において、メモリ212に複数個のプログラムの格納領域を予め準備することで、ファームウェア更新処理時に、更新前のプログラムを保持している場合には、S195において、更新前のファームウェアへの復帰処理を実行することができる。
【0069】
この様に、機器制御部234のファームウェア更新処理の際に、異常判定部232aによる異常監視のための定期的な通信タイミングは、一定時間毎、或いは、一定単位の処理完了毎に、任意に設けることが可能である。
【0070】
以上説明した様に、本実施の形態に係る温水機器によれば、ファームウェア更新処理に代表される、マイコン210のソフトウェア変更処理時においても、異常判定部232aを動作させることにより、当該マイコン210が正常に動作しているか否かを適切に監視することが可能である。
【0071】
図5(a),(b)において、マイコン210は「第1のマイクロコンピュータ」の一実施例に対応し、監視用IC220Aは「異常監視器」及び「監視用集積回路」の一実施例に対応する。又、サブマイコン220Bは「異常監視器」及び「第2のマイクロコンピュータ」の一実施例に対応する。更に、機器制御部234は「第1の制御部」、異常判定部232は「第2の制御部」、ファームウェア更新制御部230は「第3の制御部」の一実施例にそれぞれ対応する。また、第1異常監視部としての異常判定部232aと、第2異常監視部としての異常判定部232bとは全体として、第2の制御部の一実施例に対応する。
【0072】
上記では、複数の異常監視機能(異常判定部)が一つの制御部(例えばマイコン210)に含まれる構成が例示された。他の局面において、各制御部がそれぞれ異常監視部を有する構成も採用され得る。一例として、第1の制御部(たとえば機器制御部234)が第2異常監視部としての異常判定部232bを備え、第3の制御部(たとえばファームウェア更新制御部230)が第1異常監視部としての異常判定部232aを備えるように構成され得る。
【0073】
又、図1では、温水機器100として、給湯器110を含む給湯装置を例示したが、本実施の形態の適用において、温水機器100は、このような例示に限られない。例えば、浴槽湯水のろ過装置、浴槽補給水装置、燃料電池の排熱回収機能を備えた給湯装置、及び、ヒートポンプ式の給湯装置等を温水機器100とした場合でも、当該温水機器のマイコンのソフトウェア更新時におけるマイコンの異常監視に、本実施の形態を適用することが可能である。
【0074】
又、ファームウェア以外の任意のソフトウェアの更新についても、本実施の形態を適用することが可能である。更に、ソフトウェア更新について、本実施の形態では、サーバ50からのダウンロードによって自動的に実行される例を説明したが、サービスマン等が専用器具をマイコン210に接続する等の他の態様によってマイコン210のソフトウェアが更新される際にも、本実施の形態を適用することが可能である。
【0075】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0076】
5 通信システム、20 インターフェイス機器、30 携帯端末装置、40 外部通信網(インターネット)、50 サーバ、60 ルータ、70 基地局、100 温水機器、110 給湯器、111 給湯口、120,130 リモコン、121,131 表示部、122,132 入力部、150 通信アダプタ、200 回路基板、210 マイコン、212 メモリ、213 インターフェイス、214 バス、215,216 通信回路、220A 監視用IC、220B サブマイコン、230 ファームウェア更新制御部、232,232a,232b 異常判定部、234 機器制御部、BLK1~BLKN ブロック(更新プログラム)、DT1,DT2 送信データ、DT1*,DT2* 送信データ(ソフトウェア更新処理時)、PLS パルス。
図1
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図5
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図7