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特開2023-120017クレーンのブーム自動化装置、クレーンのブーム制御方法およびプログラム
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  • 特開-クレーンのブーム自動化装置、クレーンのブーム制御方法およびプログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023120017
(43)【公開日】2023-08-29
(54)【発明の名称】クレーンのブーム自動化装置、クレーンのブーム制御方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   B66C 13/48 20060101AFI20230822BHJP
   B66C 13/22 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
B66C13/48 G
B66C13/22 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022023179
(22)【出願日】2022-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100131152
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100145229
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 雅則
(74)【代理人】
【識別番号】100201352
【弁理士】
【氏名又は名称】豊田 朝子
(72)【発明者】
【氏名】オソシニスキ マレク
【テーマコード(参考)】
3F204
【Fターム(参考)】
3F204AA04
3F204BA02
3F204CA01
3F204DB09
3F204DC08
(57)【要約】
【課題】簡易な演算で、ブームヘッドをクレーンの吊り上げ対象物の上へ移動させることができるクレーンのブーム自動化装置、クレーンのブーム制御方法およびプログラムを提供する。
【解決手段】ブーム自動化装置1は、撮像装置10R、10Lと、撮像装置10R、10Lが撮像した全方位画像で、クレーンが吊り上げる対象物を識別し、画像内位置を求める識別部25と、ブームヘッドの支持体に対する位置と、撮像装置10R、10Lのブームヘッドに対する位置とに基づいて、全方位画像内での水平面を示す水平ラインの位置と、全方位画像内での左右方向に垂直な鉛直面を示す鉛直ラインの位置とを求め、識別部25が求めた対象物の画像内位置が水平ラインの位置よりも上にある場合に、ブームを起こし、識別部25が求めた対象物の画像内位置が水平ラインの位置以下かつ鉛直ラインの位置よりも上にある場合に、ブームを旋回させる制御部26と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体に対して旋回可能な旋回体と、該旋回体に設けられ、該旋回体に対して起伏可能なブームとを備えるクレーンのブーム自動化装置であって、
前記ブームが備えるブームヘッドに設けられ、前記ブームヘッドの前後方向、左右方向および上下方向を含む全方位を視野とする、全方位画像を撮像する全方位カメラ部と、
前記全方位カメラ部が撮像した前記全方位画像で、前記クレーンが吊り上げる対象物を識別し、識別された前記対象物の画像内位置を求める識別部と、
前記ブームヘッドの前記支持体に対する位置と、前記全方位カメラ部の前記ブームヘッドに対する位置とに基づいて、前記全方位カメラ部が撮像した前記全方位画像内での水平面を示す水平ラインの位置と、前記全方位画像内での左右方向に垂直な鉛直面を示す鉛直ラインの位置とを求め、前記識別部が求めた前記対象物の前記画像内位置が前記水平ラインの位置よりも上にある場合に、前記ブームを起こし、前記識別部が求めた前記対象物の前記画像内位置が前記水平ラインの位置以下かつ前記鉛直ラインの位置よりも上にある場合に、前記ブームを旋回させる制御部と、
を備えるクレーンのブーム自動化装置。
【請求項2】
前記全方位カメラ部は、
前記ブームヘッドの右側面に設けられ、前記ブームヘッドの右を撮像する右側半天球カメラと、
前記ブームヘッドの左側面に設けられ、前記ブームヘッドの左を撮像する左側半天球カメラと、
を備え、
前記右側半天球カメラが撮像した右側画像部と前記左側半天球カメラが撮像した左側画像部とから前記全方位画像を生成する、
請求項1に記載のクレーンのブーム自動化装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記識別部が求めた前記対象物の前記画像内での位置が前記水平ラインの位置よりも下かつ前記鉛直ラインの位置よりも上にある場合かつ、前記右側半天球カメラが撮像した右側画像部に位置する場合に、前記ブームを右に旋回させ、前記識別部が求めた前記対象物の前記画像内での位置が前記水平ラインの位置よりも下かつ前記鉛直ラインの位置よりも上にある場合かつ、前記左側半天球カメラが撮像した左側画像部に位置する場合に、前記ブームを左に旋回させる、
請求項2に記載のクレーンのブーム自動化装置。
【請求項4】
前記ブームは、伸縮可能であり、
前記制御部は、前記ブームヘッドの前記支持体に対する位置と、前記全方位カメラ部の前記ブームヘッドに対する位置とに基づいて、前記全方位カメラ部が撮像した前記全方位画像内での前後方向に垂直な左右平面を示す左右ラインの位置を求め、前記識別部が求めた前記対象物の前記画像内位置が前記左右ラインの位置よりも前にある場合に、前記ブームを伸ばし、前記識別部が求めた前記対象物の前記画像内位置が前記左右ラインの位置よりも後ろにある場合に、前記ブームを縮める、
請求項1から3のいずれか1項に記載のクレーンのブーム自動化装置。
【請求項5】
支持体に対して旋回可能な旋回体と、該旋回体に設けられ、該旋回体に対して起伏可能なブームとを備えるクレーンのブーム制御方法であって、
前記ブームが備えるブームヘッドに設けられ、前記ブームヘッドの前後方向、左右方向および上下方向を含む全方位を視野とする、全方位画像を撮像する全方位カメラ部が撮像した前記全方位画像で、前記クレーンが吊り上げる対象物を識別し、識別された前記対象物の画像内位置を求めるステップと、
前記ブームヘッドの前記支持体に対する位置と、前記全方位カメラ部の前記ブームヘッドに対する位置とに基づいて、前記全方位カメラ部が撮像した前記全方位画像内での水平面を示す水平ラインの位置と、前記全方位画像内での左右方向に垂直な鉛直面を示す鉛直ラインの位置とを求め、前記対象物の画像内位置を求めるステップで求めた前記対象物の前記画像内位置が前記水平ラインの位置よりも上にある場合に、前記ブームを起こし、前記対象物の画像内位置を求めるステップで求めた前記対象物の前記画像内位置が前記水平ラインの位置以下かつ前記鉛直ラインの位置よりも上にある場合に、前記ブームを旋回させるステップと、
を備えるクレーンのブーム制御方法。
【請求項6】
支持体に対して旋回可能な旋回体と、該旋回体に設けられ、該旋回体に対して起伏可能なブームとを備えるクレーンの前記ブームを制御するためのプログラムであって、
コンピュータに、
前記ブームが備えるブームヘッドに設けられ、前記ブームヘッドの前後方向、左右方向および上下方向を含む全方位を視野とする、全方位画像を撮像する全方位カメラ部が撮像した前記全方位画像で、前記クレーンが吊り上げる対象物を識別し、識別された前記対象物の画像内位置を求めるステップと、
前記ブームヘッドの前記支持体に対する位置と、前記全方位カメラ部の前記ブームヘッドに対する位置とに基づいて、前記全方位カメラ部が撮像した前記全方位画像内での水平面を示す水平ラインの位置と、前記全方位画像内での左右方向に垂直な鉛直面を示す鉛直ラインの位置とを求め、前記対象物の画像内位置を求めるステップで求めた前記対象物の前記画像内位置が前記水平ラインの位置よりも上にある場合に、前記ブームを起こし、前記対象物の画像内位置を求めるステップで求めた前記対象物の前記画像内位置が前記水平ラインの位置以下かつ前記鉛直ラインの位置よりも上にある場合に、前記ブームを旋回させるステップと、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はクレーンのブーム自動化装置、クレーンのブーム制御方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
クレーンでは、荷振れを防止するため、ブームヘッドにカメラが設けられ、そのカメラが撮像する画像が、例えば、ブームの起伏、旋回等の操作に用いられることがある。
【0003】
このようなカメラが撮像する画像を用いて機械を制御することをビジュアルサーボというが、このビジュアルサーボは、様々な分野で開発が進められている。
【0004】
例えば、特許文献1には、内視鏡を備える手術用ロボットと、内視鏡に接続されたカメラと、カメラが撮像した画像を用いて手術用ロボットを制御するコントローラと、を備えるロボットシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2011/083374号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
クレーンでは、ブームヘッドを吊り上げ対象物の上に移動させて吊り上げ対象物を吊り上げるため、旋回体を旋回させたり、ブームを起伏、伸縮させたりすることが行われている。このようなブームヘッドを吊り上げ対象物の上に移動させるための操作を、クレーンそれ自体が自律的に行うため、特許文献1に記載のロボットシステムの技術をクレーンに適用することが考えられる。
【0007】
しかし、特許文献1に記載のロボットシステムでは、ビデオフレームそれぞれで特定の特徴を抽出して目標ポイントを決定し、その目標ポイントの軌跡ベクトルをマッピングする。このため、その演算が複雑である。その結果、特許文献1に記載のロボットシステムの技術を適用して、クレーンの吊り上げ対象物の上へブームヘッドを移動させることは容易でない。
【0008】
本発明は上記の課題を解決するためになされたもので、簡易な演算で、ブームヘッドをクレーンの吊り上げ対象物の上へ移動させることができるクレーンのブーム自動化装置、クレーンのブーム制御方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明の第一の観点に係るクレーンのブーム自動化装置は、
支持体に対して旋回可能な旋回体と、該旋回体に設けられ、該旋回体に対して起伏可能なブームとを備えるクレーンのブーム自動化装置であって、
前記ブームが備えるブームヘッドに設けられ、前記ブームヘッドの前後方向、左右方向および上下方向を含む全方位を視野とする、全方位画像を撮像する全方位カメラ部と、
前記全方位カメラ部が撮像した前記全方位画像で、前記クレーンが吊り上げる対象物を識別し、識別された前記対象物の画像内位置を求める識別部と、
前記ブームヘッドの前記支持体に対する位置と、前記全方位カメラ部の前記ブームヘッドに対する位置とに基づいて、前記全方位カメラ部が撮像した前記全方位画像内での水平面を示す水平ラインの位置と、前記全方位画像内での左右方向に垂直な鉛直面を示す鉛直ラインの位置とを求め、前記識別部が求めた前記対象物の前記画像内位置が前記水平ラインの位置よりも上にある場合に、前記ブームを起こし、前記識別部が求めた前記対象物の前記画像内位置が前記水平ラインの位置以下かつ前記鉛直ラインの位置よりも上にある場合に、前記ブームを旋回させる制御部と、
を備えることを特徴とする。
【0010】
前記全方位カメラ部は、
前記ブームヘッドの右側面に設けられ、前記ブームヘッドの右を撮像する右側半天球カメラと、
前記ブームヘッドの左側面に設けられ、前記ブームヘッドの左を撮像する左側半天球カメラと、
を備え、
前記右側半天球カメラが撮像した右側画像部と前記左側半天球カメラが撮像した左側画像部とから前記全方位画像を生成してもよい。
【0011】
また、前記制御部は、前記識別部が求めた前記対象物の前記画像内での位置が前記水平ラインの位置よりも下かつ前記鉛直ラインの位置よりも上にある場合かつ、前記右側半天球カメラが撮像した右側画像部に位置する場合に、前記ブームを右に旋回させ、前記識別部が求めた前記対象物の前記画像内での位置が前記水平ラインの位置よりも下かつ前記鉛直ラインの位置よりも上にある場合かつ、前記左側半天球カメラが撮像した左側画像部に位置する場合に、前記ブームを左に旋回させてもよい。
【0012】
前記ブームは、伸縮可能であり、
前記制御部は、前記ブームヘッドの前記支持体に対する位置と、前記全方位カメラ部の前記ブームヘッドに対する位置とに基づいて、前記全方位カメラ部が撮像した前記全方位画像内での前後方向に垂直な左右平面を示す左右ラインの位置を求め、前記識別部が求めた前記対象物の前記画像内位置が前記左右ラインの位置よりも前にある場合に、前記ブームを伸ばし、前記識別部が求めた前記対象物の前記画像内位置が前記左右ラインの位置よりも後ろにある場合に、前記ブームを縮めてもよい。
【0013】
本発明の第二の観点に係るクレーンのブーム制御方法は、
支持体に対して旋回可能な旋回体と、該旋回体に設けられ、該旋回体に対して起伏可能なブームとを備えるクレーンのブーム制御方法であって、
前記ブームが備えるブームヘッドに設けられ、前記ブームヘッドの前後方向、左右方向および上下方向を含む全方位を視野とする、全方位画像を撮像する全方位カメラ部が撮像した前記全方位画像で、前記クレーンが吊り上げる対象物を識別し、識別された前記対象物の画像内位置を求めるステップと、
前記ブームヘッドの前記支持体に対する位置と、前記全方位カメラ部の前記ブームヘッドに対する位置とに基づいて、前記全方位カメラ部が撮像した前記全方位画像内での水平面を示す水平ラインの位置と、前記全方位画像内での左右方向に垂直な鉛直面を示す鉛直ラインの位置とを求め、前記対象物の画像内位置を求めるステップで求めた前記対象物の前記画像内位置が前記水平ラインの位置よりも上にある場合に、前記ブームを起こし、前記対象物の画像内位置を求めるステップで求めた前記対象物の前記画像内位置が前記水平ラインの位置以下かつ前記鉛直ラインの位置よりも上にある場合に、前記ブームを旋回させるステップと、
を備えることを特徴とする。
【0014】
本発明の第三の観点に係るプログラムは、
支持体に対して旋回可能な旋回体と、該旋回体に設けられ、該旋回体に対して起伏可能なブームとを備えるクレーンの前記ブームを制御するためのプログラムであって、
コンピュータに、
前記ブームが備えるブームヘッドに設けられ、前記ブームヘッドの前後方向、左右方向および上下方向を含む全方位を視野とする、全方位画像を撮像する全方位カメラ部が撮像した前記全方位画像で、前記クレーンが吊り上げる対象物を識別し、識別された前記対象物の画像内位置を求めるステップと、
前記ブームヘッドの前記支持体に対する位置と、前記全方位カメラ部の前記ブームヘッドに対する位置とに基づいて、前記全方位カメラ部が撮像した前記全方位画像内での水平面を示す水平ラインの位置と、前記全方位画像内での左右方向に垂直な鉛直面を示す鉛直ラインの位置とを求め、前記対象物の画像内位置を求めるステップで求めた前記対象物の前記画像内位置が前記水平ラインの位置よりも上にある場合に、前記ブームを起こし、前記対象物の画像内位置を求めるステップで求めた前記対象物の前記画像内位置が前記水平ラインの位置以下かつ前記鉛直ラインの位置よりも上にある場合に、前記ブームを旋回させるステップと、
を実行させるためのプログラムであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の構成によれば、制御部は、ブームヘッドの支持体に対する位置と、全方位カメラ部のブームヘッドに対する位置とに基づいて、全方位カメラ部が撮像した全方位画像内での水平面を示す水平ラインの位置と、全方位画像内での左右方向に垂直な鉛直面を示す鉛直ラインの位置とを求め、識別部が求めた対象物の画像内位置が水平ラインの位置よりも上にある場合に、ブームを起こし、識別部が求めた対象物の画像内位置が水平ラインの位置以下かつ鉛直ラインの位置よりも上にある場合に、ブームを旋回させる。その結果、ブーム自動化装置は、簡易な演算で、ブームヘッドをクレーンの吊り上げ対象物の上へ移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態に係るブーム自動化装置が装備された積載形トラッククレーンの側面図である。
図2】ブーム自動化装置のハードウエア構成図である。
図3】ブーム自動化装置に備えられる撮像装置が設置されたブームヘッドの正面図である。
図4】ブーム自動化装置のブロック図である。
図5】(A)ブームヘッドの左側に設置された撮像装置が撮像した画像の一例を示す概念図である。(B)ブームヘッドの右側に設置された撮像装置が撮像した画像の一例を示す概念図である。
図6】ブーム自動化装置が行うブーム自動化処理のフローチャートである。
図7】(A)ブームヘッドの左側に設置された撮像装置が撮像した画像に、制御部の変形例が算出する左右ラインを表示した場合の一例を示す概念図である。(B)ブームヘッドの右側に設置された撮像装置が撮像した画像に、制御部の変形例が算出する左右ラインを表示した場合の一例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態に係るクレーンのブーム自動化装置、クレーンのブーム制御方法およびプログラムについて図面を参照して詳細に説明する。なお、図中、同一又は同等の部分には同一の符号を付す。
【0018】
実施の形態に係るクレーンのブーム自動化装置は、クレーンの操作を容易にするため、半天球カメラが撮像した画像内での吊り上げ対象物の位置に応じて、クレーンの各部を制御して、ブームヘッドを自動的に移動させる装置である。以下、このブーム自動化装置が、積載形トラッククレーン(カーゴクレーンともいう)に装備された場合を例に、その構成を説明する。まず、図1を参照して、ブーム自動化装置が装備される積載形トラッククレーンの構成について、説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施の形態に係るクレーンのブーム自動化装置1が装備された積載形トラッククレーン100の側面図である。
【0020】
図1に示すように、積載形トラッククレーン100は、走行機能を有する車両110と、車両110の上に設けられた旋回体120と、旋回体120に設けられたブーム130と、を備えている。
【0021】
車両110は、道路上を走行するトラックである。車両110は、運転手が搭乗するための運転室111と荷物を積載するための荷台112とを備える。そして、運転室111と荷台112の間には、荷台112に荷物を積載するため、クレーンの旋回体120が設けられている。
【0022】
旋回体120は、車両110に固定されたフレーム121に取り付けられている。そして、旋回体120は、旋回モータ122に駆動されることにより、フレーム121上で鉛直方向VDの周りに旋回することが可能である。一方、旋回体120は、上下方向へ柱状に延び、その上端にブーム130が設けられている。
【0023】
なお、フレーム121には、接地して車両110を安定させるアウトリガー160が設けられている。そして、フレーム121は、旋回体120を支持する。このため、フレーム121は、支持体とも呼ばれる。また、フレーム121は、特許請求の範囲でいう支持体に相当する部材である。
【0024】
ブーム130は、図示しないフートピンによって、その下端が旋回体120に取り付けられている。そして、ブーム130では、下端よりも上端側に離れた中間部分が、旋回体120に設けられた起伏シリンダ131により支持されている。その結果、ブーム130は、起伏シリンダ131の伸縮により、起伏可能である。
【0025】
また、ブーム130は、テレスコピック式に形成され、伸縮シリンダ132により伸縮可能である。その先端には、ブームヘッド133が設けられている。
【0026】
ブームヘッド133には、図示しないが、シーブが内蔵されている。そのシーブには、ワイヤロープ140が掛け回されている。その結果、ブームヘッド133から、ワイヤロープ140の一端部分が垂下している。その垂下したワイヤロープ140の一端部分には、フック150が機械的に接続されている。
【0027】
上述したように、ブーム130は、起伏可能であり、伸縮可能である。また、ブーム130は、旋回体120に設けられた結果、旋回可能である。その結果、ブームヘッド133は、ブーム130の起伏、伸縮および旋回体120の旋回により、所望の位置にフック150を移動させることが可能である。
【0028】
また、ワイヤロープ140の他端部分は、旋回体120に設けられたウインチドラム141に巻回されている。その結果、ワイヤロープ140は、ウインチドラム141の回転により、巻き上げ又は、巻き下げされる。フック150は、上述したように、ワイヤロープ140の一端部分に接続されているので、ワイヤロープ140の巻き上げまたは巻き下げによって、上昇または下降する。フック150は、上述したように、ブーム130の起伏、伸縮および旋回体120の旋回により、所望の位置に移動されるが、さらに、ウインチドラム141の回転により、所望の高さまで上昇または下降する。
【0029】
積載形トラッククレーン100では、オペレーターが、ブーム130、旋回体120およびウインチドラム141を操作して、フック150を所望の位置に移動させる。しかし、その操作は、熟練を要する。また、その操作は、あまり容易ではない。そこで、フック150を所望の位置に移動させる操作を容易にするため、積載形トラッククレーン100には、吊り上げ対象物の位置へ、すなわち吊荷の位置へフック150を自動的に移動させるブーム自動化装置1が装備されている。次に、図2図4を参照して、ブーム自動化装置1の構成について説明する。
【0030】
図2は、ブーム自動化装置1のハードウエア構成図である。図3は、ブーム自動化装置1に備えられる撮像装置10R、10Lが設置されたブームヘッド133の正面図である。図4は、ブーム自動化装置1のブロック図である。
【0031】
なお、図2および図4では、理解を容易にするため、ブーム自動化装置1の構成のほか、ブーム自動化装置1に接続された、積載形トラッククレーン100の一部の構成も示している。
【0032】
図2に示すように、ブーム自動化装置1は、撮像装置10R、10L、I/Oポート(Input/Output Port)20、CPU(Central Processing Unit)21、ROM(Read-Only Memory)22およびRAM(Random Access Memory)23を備える。
【0033】
撮像装置10R、10Lは、レンズが向けられた方向の周り360°とそのレンズが向けられた側の180°の半球状の視野が撮像できる半天球カメラである。そして、撮像装置10Rと10Lは、図3に示すように、ブームヘッド133の右側面と左側面のそれぞれに設置されている。さらに、撮像装置10R、10Lは、レンズを、水平方向Hまたは鉛直方向Vではなく、斜め下方向に向けている。図5(A)および(B)に撮像装置10R、10Lが撮像する画像IR、ILの概念図を示す。
【0034】
図5(A)は、ブームヘッド133の左側に設置された撮像装置10Lが撮像した画像ILの一例を示す概念図である。図5(B)は、ブームヘッド133の右側に設置された撮像装置10Rが撮像した画像IRの一例を示す概念図である。
【0035】
なお、図5(A)および(B)では、理解を容易にするため、水平面を撮像したと仮定した場合の、その水平面を、水平ラインHL、HRと表示している。また、左右方向に垂直な鉛直面を撮像したと仮定した場合の、その鉛直面を、鉛直ラインVL、VRと表示している。
【0036】
撮像装置10Rは、図5(A)に示すように、ブームヘッド133の右側と、ブームヘッド133の上面視中央から鉛直方向にあるポイントP0、すなわち、ブームヘッド133の真下にあるポイントP0とを撮像する。また、撮像装置10Lは、図5(B)に示すように、ブームヘッド133の左側と、ブームヘッド133の真下のポイントP0とを撮像する。このように、撮像装置10R、10Lは、それぞれが上述したレンズを斜め下方向に向けることにより、右側の視野、左側の視野のほか、真下のポイントP0を撮像可能としている。その結果、撮像装置10Lは、図3に示す吊荷L0がブームヘッド133の側方に位置する場合のほか、ブームヘッド133の真下に位置する場合でも、ブームヘッド133の厚みによらないで、吊荷L0を撮像可能にしている。
【0037】
なお、撮像装置10Rと10Lの両方は、あわせて、前後方向、左右方向および上下方向を含む全方位を視野とする全方位画像を撮像する。このため、撮像装置10Rと10Lの両方をあわせて、全方位カメラまたは全天球カメラともいう。また、撮像装置10Rと10Lの両方は、特許請求の範囲でいう全方位カメラ部に相当する装置である。
【0038】
図2に戻って、I/Oポート20は、各種装置を結合するために設けられたバスライン(Bus Line)24に接続されている。また、そのバスライン24には、コンピュータを構成するCPU21、ROM22およびRAM23が接続されている。ブーム自動化装置1では、CPU21がROM22に記憶された各種プログラムをRAM23に読み出して実行することにより、各種処理を行う。I/Oポート20には、各種処理のうちの画像処理を行うため、上記の撮像装置10R、10Lが電気的に接続されている。これにより、撮像装置10R、10Lが撮像した画像データは、CPU21等へ送信可能である。
【0039】
また、I/Oポート20には、CPU21が積載形トラッククレーン100の各部を制御するため、その積載形トラッククレーン100の各部にある部品が接続されている。詳細には、I/Oポート20には、旋回角度検出センサ123、ブーム角度検出センサ134および、ブーム長さ検出センサ135が接続されている。
【0040】
ここで、旋回角度検出センサ123とは、旋回モータ122により旋回体120が旋回した角度を検出するセンサのことである。また、ブーム角度検出センサ134とは、起伏シリンダ131の伸縮により、ブーム130が起伏した角度を検出するセンサのことである。さらに、ブーム長さ検出センサ135とは、伸縮シリンダ132の伸縮によりブーム130が伸縮したときの、ブーム130の長さを検出するセンサのことである。
【0041】
旋回角度検出センサ123、ブーム角度検出センサ134および、ブーム長さ検出センサ135は、I/Oポート20を介して、検出した旋回角度、ブーム130の起伏角度および、ブーム130の長さの各データをCPU21へ送信する。
【0042】
また、I/Oポート20には、積載形トラッククレーン100が備える、図示しないコントロールパネルにある表示装置125が電気的に接続されている。これにより、表示装置125にはI/Oポート20を介して各種データが入力され、それら各種データが表示される。例えば、表示装置125には、撮像装置10R、10Lが撮像した画像IR、ILまたは、CPU21が画像処理を施した画像IR、ILが表示される。
【0043】
さらに、I/Oポート20には、積載形トラッククレーン100の各部を操作するため、旋回モータ122、起伏シリンダ131および、伸縮シリンダ132のそれぞれが備える、図示しない電磁式の油圧制御弁が電気的に接続されている。上述したCPU21は、撮像装置10R、10Lが撮像した画像IR、ILと、旋回角度検出センサ123、ブーム角度検出センサ134および、ブーム長さ検出センサ135が検出したデータとに基づいて、積載形トラッククレーン100を制御するための各種データを演算する。旋回モータ122、起伏シリンダ131および、伸縮シリンダ132は、I/Oポート20を介して、CPU21が演算した各種データを受信する。旋回モータ122、起伏シリンダ131および、伸縮シリンダ132は、それら各種データに基づいて電磁式の油圧制御弁それぞれが開度を調整することにより、それら各種データに基づいた動作を行う。
【0044】
続いて、それら旋回モータ122、起伏シリンダ131および、伸縮シリンダ132を制御するためのブーム自動化装置1が行う処理について詳細に説明する。I/Oポート20には、図2に示すように、記憶装置30が接続されている。ブーム自動化装置1は、CPU21が記憶装置30に記憶されたブーム自動化プログラム31をRAM23に読み出して実行することにより、上記の旋回モータ122、起伏シリンダ131および、伸縮シリンダ132を制御するためのブーム自動化処理を行う。ブーム自動化装置1は、そのブーム自動化処理を行うため、図4に示すソフトウェアとして構成される各種ブロックを備える。詳細には、ブーム自動化装置1は、識別部25および制御部26を備える。
【0045】
識別部25は、撮像装置10R、10Lが撮像して得た画像IR、ILから吊荷部分L1図5(A)参照)を識別する。詳細には、撮像装置10R、10Lは、ブーム自動化装置1が起動している間、一定の時間毎に、例えば、1/30秒毎に、ブームヘッド133の周りを撮像する。そして、撮像装置10R、10Lは、撮像する毎に、撮像データを識別部25に送信する。識別部25は、それら撮像データを受信し、それら撮像データから得た画像IR、ILに対して特徴抽出を行う。
【0046】
一方、記憶装置30には、画像IR、IL内に含まれる吊荷部分L1を識別するための、識別辞書32が格納されている。識別部25は、特徴抽出を行った後、記憶装置30から識別辞書32を読み出し、読み出した識別辞書32と抽出された特徴データから画像IR、IL内に含まれる吊荷部分L1を識別する。そして、識別部25は、識別した吊荷部分L1から、代表点、例えば、吊荷部分L1の中心を特定し、特定された中心の画像内座標を吊荷部分L1の座標とする。これにより、識別部25は、撮像装置10R、10Lの撮像データから吊荷部分L1の画像内位置を得る。識別部25は、得た吊荷部分L1の画像内位置を制御部26に送信する。
【0047】
制御部26は、上記の吊荷部分L1の画像内位置に基づいて積載形トラッククレーン100の旋回体120とブーム130を操作する。詳細には、制御部26は、識別部25から吊荷部分L1の画像内位置を受信すると、旋回角度検出センサ123、ブーム角度検出センサ134および、ブーム長さ検出センサ135に、旋回体120の旋回角度、ブーム130の起伏角度および、ブーム130の長さの各データを送信させ、それらの各データを得る。
【0048】
なお、旋回体120の旋回角度、ブーム130の起伏角度および、ブーム130の長さは、特許請求の範囲でいうブームヘッドの支持体に対する位置に相当する物理量である。
【0049】
一方、記憶装置30には、撮像装置10R、10Lそれぞれのブームヘッド133に対する位置のデータ、例えば、ブームヘッド133の重心に対する位置とレンズの向きのデータを含む位置情報データ33が格納されている。制御部26は、記憶装置30から、その位置情報データ33を読み出し、(1)読み出した位置情報データ33、(2)旋回角度検出センサ123から得た旋回角度、(3)ブーム角度検出センサ134から得たブーム130の起伏角度、および、(4)ブーム長さ検出センサ135から得たブーム130の長さの各データに基づいて、撮像装置10R、10Lが撮像して得た画像IR、IL内の、図5(A)および(B)に示す水平ラインHL、HRの位置と、鉛直ラインVL、VRの位置とを求める。
【0050】
制御部26は、求めた水平ラインHL、HRの位置と鉛直ラインVL、VRの位置に対する、識別部25から得た吊荷部分L1の画像内位置に応じて、図4に示す旋回モータ122および、起伏シリンダ131を制御する。詳細には、制御部26は、識別部25から得た吊荷部分L1の画像内位置が、水平ラインHL、HRの位置よりも上にある場合に、吊荷L0がブームヘッド133よりも高い位置にあると判定して、起伏シリンダ131を制御して、ブーム130を起こす。これにより、制御部26は、ブーム130が起伏角度によって傾斜する方向を吊荷L0に向ける。
【0051】
また、制御部26は、識別部25から得た吊荷部分L1の画像内位置が、水平ラインHL、HRの位置以下、かつ鉛直ラインVL、VRの位置よりも上にある場合に、吊荷L0がブームヘッド133の真下にないと判定する。そして、制御部26は、吊荷部分L1の画像内位置が、右側の撮像装置10Rによって撮像された画像IRの画像内位置である場合、旋回モータ122を制御して、旋回体120を右へ旋回させて、ブーム130を右へ向ける。これに対して、制御部26は、吊荷部分L1の画像内位置が、左側の撮像装置10Lによって撮像された画像ILの画像内位置である場合、旋回モータ122を制御して、旋回体120を左へ旋回させ、ブーム130を左へ向ける。このような操作により、制御部26は、ブーム130を吊荷L0に向ける。
【0052】
このように、ブーム自動化装置1は、撮像装置10R、10Lが撮像した画像IR、ILでの吊荷部分L1の画像内位置が、水平ラインHL、HRまたは鉛直ラインVL、VRの位置に対して、どのような位置にあるかに応じて、起伏シリンダ131または旋回モータ122を制御して、ブーム130を吊荷L0に向ける。これにより、ブーム自動化装置1は、ブームヘッド133を吊荷L0とほぼ同じ高さにし、かつ、その吊荷L0にブーム130を向ける操作を自動化する。
【0053】
次に、図6を参照して、ブーム自動化装置1が行うブーム自動化処理について詳細に説明する。以下の説明では、ブーム自動化装置1は、積載形トラッククレーン100が備えるコントロールパネルにある起動ボタンが押されることにより、起動するものとする。また、吊荷L0を識別しやすくするため、吊荷L0には、マーカーと呼ばれる特定の波長の光、例えば、赤色光を発する小型照明装置が取り付けられるものとする。また、記憶装置30には、その小型照明装置を識別するための識別辞書32が格納されるものとする。
【0054】
図6は、ブーム自動化装置1が行うブーム自動化処理のフローチャートである。
【0055】
まず、積載形トラッククレーン100を操作するオペレーターは、準備作業として、アウトリガー160を張り出して、その先端を接地する。これにより、車両110を安定化させる。さらに、オペレーターは、上述した小型照明装置を吊荷L0に取り付け、その小型照明装置を点灯させる。その後、ブーム自動化処理で、ブーム130が動作して建築物等に干渉することを防ぐため、オペレーターは、積載形トラッククレーン100周辺に、建築物等、ブーム130が干渉するおそれがある物体がないことを確認する。その上で、オペレーターは、上述した起動ボタンを押す。その結果、ブーム自動化装置1が起動する。
【0056】
ブーム自動化装置1が起動すると、CPU21によって記憶装置30に記憶されたブーム自動化プログラム31が実行され、その結果、図6に示すブーム自動化処理のフローが開始される。
【0057】
そのブーム自動化処理では、始めに、ブーム自動化装置1が備える識別部25が、ブームヘッド133の右側、左側にある撮像装置10R、10Lから画像IR、ILデータを取得する(ステップS1)。詳細には、識別部25は、撮像装置10R、10Lが定期的に撮像をするところ、その直前の画像IR、ILデータを撮像装置10R、10Lから取得する。
【0058】
続いて、識別部25は、取得した画像IR、ILデータに対して特徴抽出を行い、吊荷部分L1を識別する処理を行う(ステップS2)。例えば、識別部25は、画像IR、ILの輝度分布から、高輝度部分を抽出する。記憶装置30には、吊荷L0に取り付けられた小型照明装置の画像部分(以下、マーカー部分という)を識別するための、例えば、マーカー部分の輝度、色、形状等のデータを含む識別辞書32が予め格納されている。識別部25は、その識別辞書32を読み出し、その識別辞書32を用いて、抽出した高輝度部分がマーカー部分に相当するか否かを判定する。そして、識別部25は、マーカー部分に相当する部分がある場合、吊荷部分L1が識別されたものとする。また、その部分の代表点の画像内座標を、例えば、中心点の画像内座標を、吊荷部分L1の画像内座標とする。識別部25は、識別処理の結果データを制御部26へ送る。
【0059】
制御部26は、識別部25から識別処理の結果データを受け取ると、吊荷部分L1が識別されたか否かを判定する(ステップS3)。詳細には、制御部26は、識別部25からの識別処理の結果データに吊荷部分L1の画像内座標がある場合、吊荷部分L1が識別されたと判定する。制御部26は、吊荷部分L1が識別されたと判定した場合(ステップS3のYes)、ステップS4へ進む。
【0060】
一方、制御部26は、識別部25からの識別処理の結果データに吊荷部分L1の画像内座標がない場合、吊荷部分L1が識別されなかったと判定する。制御部26は、吊荷部分L1が識別されなかったと判定した場合(ステップS3のNo)、積載形トラッククレーン100の周辺に吊荷L0がなく、その結果、撮像装置10R、10Lが吊荷L0を撮像できなかったものと扱う。制御部26は、吊荷L0がないものとして、ブーム自動化処理を終了させる。
【0061】
なお、ブーム自動化処理を終了させる前に、制御部26は、上述した表示装置125に、吊荷部分L1が識別されなかった旨の信号を送信して、表示装置125に吊荷L0が見つからなかった旨の表示をするとよい。
【0062】
制御部26は、吊荷部分L1が識別されたと判定して、ステップS4に進んだ場合、画像IR、ILで水平ラインHL、HR、鉛直ラインVL、VRの位置を算出する(ステップS4)。
【0063】
ここで、水平ラインHL、HRとは、撮像装置10R、10Lが水平面を撮像したと仮定した場合の、その水平面を表す、画像IR、IL内のラインのことである(図5(A)および(B)参照)。鉛直ラインVL、VRとは、撮像装置10R、10Lが左右方向に垂直な鉛直面を撮像したと仮定した場合の、その鉛直面を表す、画像IR、IL内のラインのことである(同図参照)。
【0064】
ステップS4について、詳細に説明すると、記憶装置30には、撮像装置10R、10Lそれぞれの、ブームヘッド133の重心に対する位置のデータとレンズの向きのデータとを含む位置情報データ33が格納されている。制御部26は、その位置情報データ33を読み出す。また、制御部26は、積載形トラッククレーン100が備える旋回角度検出センサ123、ブーム角度検出センサ134およびブーム長さ検出センサ135から、旋回体120の旋回角度、ブーム130の起伏角度および、ブーム130の長さの各センサデータを取得する。そして、制御部26は、読み出した位置情報データ33と取得した各センサデータから、画像IR、IL内の各座標それぞれの画素部分が、ブームヘッド133の重心を基準として、どの方向を撮像した部分であるのかを算出する。さらに、制御部26は、算出した各画素部分と方向の対応関係に基づいて、上記で定義する水平ラインHL、HRと鉛直ラインVL、VRの画像IR、IL内位置を算出する。
【0065】
次に、制御部26は、ステップS2で識別された吊荷部分L1が鉛直ラインVL、VR上に位置するか否かを判定する(ステップS5)。詳細には、制御部26は、吊荷部分L1の画像内座標が、鉛直ラインVL、VRが通る画像内座標に該当するか、または鉛直ラインVL、VRから微小な距離しか離れていない画像内座標に該当するか、を判定することにより、吊荷部分L1が鉛直ラインVL、VR上に位置するか否かを判定する。ここで、微小な距離とは、吊荷部分L1の画像内座標が、実質的に鉛直ラインVL、VRが通る画像内座標であると扱うことができる距離のことをいう。
【0066】
制御部26は、吊荷部分L1が鉛直ラインVL、VRに位置すると判定した場合(ステップS5のYes)、ブームヘッド133の真下にあるか、またはブーム130の延長線上にあり、その結果、ブーム130が既に吊荷L0に向けられていると判定する。換言すると、旋回体120の旋回とブーム130の起伏の操作を行う必要がないと判定する。これにより、制御部26は、ブーム自動化処理を終了させる。
【0067】
一方、制御部26は、吊荷部分L1が鉛直ラインVL、VRに位置しないと判定した場合(ステップS5のNo)、ステップS2で識別された吊荷部分L1が水平ラインHL、HRよりも上にあるか否かを判定する(ステップS6)。ここでいう上とは、図5(A)および(B)に示される「右上」、「左上」を画像IR、ILでの上方向とする場合の、上のことである。ステップS6では、制御部26は、吊荷部分L1の画像内座標が、水平ラインHL、HRが通る画像内座標よりも上にあるか否かによって判定する。
【0068】
制御部26は、吊荷部分L1が水平ラインHL、HRよりも上にあると判定した場合(ステップS6のYes)、吊荷L0がブームヘッド133よりも高い位置にあり、ブーム130を起こす必要があると判定する。これにより、制御部26は、起伏シリンダ131を伸長させる(ステップS7)。その起伏シリンダ131を伸長させる長さは、予め定められた一定長さだけである。その結果、制御部26は、ブーム130を少しの角度だけ起こす。
【0069】
制御部26は、ブーム130を少しの角度だけ起こすと、ブーム130の向きを再調整する必要があるか否かを確認するため、ステップS1に戻る。
【0070】
一方、制御部26は、吊荷部分L1が水平ラインHL、HRよりも上になく、すなわち、吊荷部分L1が水平ラインHL、HR以下であると判定した場合(ステップS6のNo)、吊荷L0がブームヘッド133以下の高さにあり、ブーム130を起こす必要がない状態にあると判定する。そして、制御部26は、ステップS5で、既に吊荷部分L1が鉛直ラインVL、VRに位置しないと判定されているので、吊荷L0がブーム130を延長した延長線からずれ、旋回体120を旋回させる必要があると判定する。これにより、制御部26は、旋回モータ122を回転させる(ステップS8)。
【0071】
その回転方向は、左側の撮像装置10Lが撮像した画像ILにある水平ラインHLと鉛直ラインVLの間に吊荷部分L1が位置する場合、旋回体120を左へ回転させる方向である。また、右側の撮像装置10Rが撮像した画像IRにある水平ラインHRと鉛直ラインVRの間に吊荷部分L1が位置する場合、旋回体120を右へ回転させる方向である。また、その回転量は、予め定められた一定の回転量だけである。その結果、制御部26は、旋回体120を一定の角度だけ旋回させる。
【0072】
制御部26は、旋回体120を一定の角度だけ旋回させると、旋回体120の旋回位置を再調整する必要があるか否かを確認するため、ステップS1に戻る。
【0073】
制御部26は、ステップS5で、吊荷部分L1が鉛直ラインVL、VRに位置すると判定されて(ステップS5のYes)、旋回体120の旋回、ブーム130の起伏の操作を行わなくてもよい状態になるまで、ステップS1からステップS8までを繰り返す。これにより、制御部26は、ブーム130を吊荷L0に向ける。
【0074】
なお、制御部26は、ブーム130の起伏したときの限界値を予め設定しておき、その限界値に達したときに、上記のブーム自動化処理を強制終了させるとよい。或いは、過負荷防止装置の出力に応じて、ブーム自動化処理を強制終了させるとよい。
【0075】
以上のように、ブーム自動化装置1は、半天球カメラである撮像装置10R、10Lが撮像した画像IR、IL内で、吊荷部分L1が水平ラインHL、HRと鉛直ラインVL、VRに対して、どのような相対位置にあるかに応じて、旋回体120の旋回とブーム130の起伏を制御する。ブーム自動化装置1では、吊荷部分L1の水平ラインHL、HRと鉛直ラインVL、VRに対する相対位置に基づいて、旋回体120とブーム130を制御するだけであるため、演算が簡易である。また、その簡易な演算で、ブームヘッド133を吊荷L0の上へ移動させることができる。
【0076】
また、ブーム自動化装置1は、ブームヘッド133に半天球カメラである撮像装置10R、10Lを取り付けるだけで、積載形トラッククレーン100に装備させることができる。その結果、装備に要するコストが低い。
【0077】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。例えば、上記の実施の形態では、撮像装置10R、10Lが半天球カメラであるが、本発明はこれに限定されない。本発明では、撮像装置10R、10Lは、ブームヘッド133の前後方向、左右方向および上下方向の全方位を視野とする、全方位画像を撮像する全方位カメラ部であればよい。従って、本発明では、撮像装置10R、10Lは、この条件を満たすカメラであればよい。例えば、撮像装置10R、10Lは、一つの全方位カメラであってもよい。また、3つ以上のカメラにより構成されるカメラシステムであってもよい。
【0078】
上記の実施の形態では、識別部25は、吊荷L0に取り付けられた、マーカーと呼ばれる小型照明装置を識別している。しかし、本発明はこれに限定されない。本発明では、識別部25は、全方位カメラ部が撮像した全方位画像で、積載形トラッククレーン100が吊り上げる対象物を識別するものであればよい。そして、識別された対象物の画像内位置を求めるものであればよい。例えば、識別部25は、吊荷L0が鋼材等の特定の物体である場合、その特定の物体を画像から直接識別してもよい。また、吊荷L0に特定のプレートが取り付けられたり、特定の色に着色されたりする場合に、識別部25は、その特定のプレート、特定の色に着色された部分を識別してもよい。
【0079】
上記実施の形態では、制御部26は、画像IR、IL内の吊荷部分L1の水平ラインHL、HRと鉛直ラインVL、VRに対する相対位置に基づいて、旋回体120の旋回とブーム130の起伏を制御する。しかし、本発明はこれに限定されない。本発明では、制御部26は、さらに、ブーム130の伸縮を制御してもよい。
【0080】
図7(A)は、ブームヘッド133の左側に設置された撮像装置10Lが撮像した画像ILに、制御部26の変形例が算出する左右ラインLRLを表示した場合の一例を示す概念図である。図7(B)は、ブームヘッド133の右側に設置された撮像装置10Rが撮像した画像IRに、制御部26の変形例が算出する左右ラインLRRを表示した場合の一例を示す概念図である。
【0081】
制御部26は、図7(A)および(B)に示す、画像IR、IL内での前後方向に垂直な左右平面を示す左右ラインLRR、LRLの画像内位置を求めてもよい。そして、制御部26は、それら左右ラインLRR、LRLよりも、実施の形態で説明した吊荷部分L1が前にある場合、ブーム130を伸長させるとよい。また、制御部26は、左右ラインLRR、LRLよりも、吊荷部分L1が後ろにある場合、ブーム130を縮小させるとよい。画像IR、ILでは、その画像内座標それぞれにある画素部分が、どの方向であるのかはわかるものの、その距離は、画像IR、ILだけでは不明である。このため、ブーム130を伸長させる長さと縮小させる長さは、予め定めておくとよい。そして、実施の形態で説明したフローと同様に、ブーム130の伸長または、ブーム130の縮小後、再度画像IR、ILを取得して、その画像IR、ILで吊荷部分L1の左右ラインLRR、LRLに対する位置を求めて、ブーム130の長さ調整が再度必要か否かを確認するとよい。
【0082】
また、吊荷L0がブーム130の真下近くにある結果、撮像装置10Rと10Lの両方に吊荷L0が撮像される場合、制御部26は、撮像された画像IR、IL内での吊荷部分L1のそれぞれの画像内座標と撮像装置10Rと10Lの間の距離を三角測量の方法に適用することにより、撮像装置10R、10Lから吊荷L0までの距離を求めてもよい。そして、制御部26は、求めた距離に基づいてブーム130を伸長する長さまたは、縮小する長さを決定してもよい。
【0083】
上記の実施の形態では、ブーム自動化装置1は、積載形トラッククレーン100に装備されているが、本発明はこれに限定されない。本発明は、積載形トラッククレーン100のほか、ホイールクレーン、クローラクレーン等、支持体に対して旋回可能な旋回体と、その旋回体に設けられ、その旋回体に対して起伏可能なブームとを備えるクレーン全般に適用可能である。
【符号の説明】
【0084】
1…ブーム自動化装置、10R、10L…撮像装置、20…I/Oポート、21…CPU、22…ROM、23…RAM、24…バスライン、25…識別部、26…制御部、30…記憶装置、31…ブーム自動化プログラム、32…識別辞書、33…位置情報データ、100…積載形トラッククレーン、110…車両、111…運転室、112…荷台、120…旋回体、121…フレーム、122…旋回モータ、123…旋回角度検出センサ、125…表示装置、130…ブーム、131…起伏シリンダ、132…伸縮シリンダ、133…ブームヘッド、134…ブーム角度検出センサ、135…ブーム長さ検出センサ、140…ワイヤロープ、141…ウインチドラム、150…フック、160…アウトリガー、H…水平方向、HL,HR…水平ライン、IR、IL…画像、L0…吊荷、L1…吊荷部分、LRL,LRR…左右ライン、P0…ポイント、V…鉛直方向、VL,VR…鉛直ライン、VD…鉛直方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7