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特開2023-120027過流防止弁、及びそれを備えるタンクバルブ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023120027
(43)【公開日】2023-08-29
(54)【発明の名称】過流防止弁、及びそれを備えるタンクバルブ装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 17/30 20060101AFI20230822BHJP
   G05D 16/10 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
F16K17/30 A
G05D16/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022023194
(22)【出願日】2022-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135220
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 祥二
(72)【発明者】
【氏名】二宮 誠
(72)【発明者】
【氏名】岡本 将佳
(72)【発明者】
【氏名】早▲瀬▼ 友哉
(72)【発明者】
【氏名】向井 康二
【テーマコード(参考)】
3H060
5H316
【Fターム(参考)】
3H060AA02
3H060BB03
3H060CC40
3H060DA04
3H060DB13
3H060DC05
3H060DD02
3H060DD14
3H060GG08
3H060HH07
3H060HH20
5H316BB01
5H316DD15
5H316EE02
5H316EE10
5H316EE12
5H316JJ01
5H316KK01
5H316KK02
5H316KK08
(57)【要約】
【課題】 過流状態が収まった後、弁体が弁座から離れることができる過流防止弁を提供する。
【解決手段】 過流防止弁は、第1開口及び第2開口を有する弁室を含むハウジングと、弁室に収容される弁体であって、第1開口の周りにある弁座に対して、第1開口の流体圧と第2開口の流体圧との差圧に応じて着座及び離反する弁体と、弁座から離反するように弁体を付勢するばねとを備え、弁体は、第2開口に繋がる内通路と、該内通路に繋がり且つ弁室を介して第1開口に繋がる連通路と、内通路に繋がり且つ第1開口に臨む絞り流路とを、含み、絞り流路の流路面積は、連通路の流路面積より小さい。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1開口及び第2開口を有する弁室を含むハウジングと、
前記弁室に収容される弁体であって、前記第1開口の周りにある弁座に対して、前記第1開口の流体圧と前記第2開口の流体圧との差圧に応じて着座及び離反する弁体と、
前記弁座から離反するように前記弁体を付勢するばねとを備え、
前記弁体は、前記第2開口に繋がる内通路と、該内通路に繋がり且つ前記弁室を介して前記第1開口に繋がる連通路と、前記内通路に繋がり且つ前記第1開口に臨む絞り流路とを、含み、
前記絞り流路の流路面積は、前記連通路の流路面積より小さい、過流防止弁。
【請求項2】
前記弁体は、前記弁座に着座するシート部を含み、
前記弁座及び前記シート部のうち少なくとも一方は、他方に当接する当たり面を有し、
前記当たり面は、平坦になっている、請求項1に記載の過流防止弁。
【請求項3】
前記弁座及び前記シート部は、共に平坦な前記当たり面を有している、請求項2に記載の過流防止弁。
【請求項4】
前記ハウジングは、前記第1開口が開口する第1凹部を有する第1ハウジング本体と、前記第2開口が開口する第2凹部を有する第2ハウジング本体を含み、前記第1凹部と前記第2凹部を突き合わせるように前記第1ハウジング本体と前記第2ハウジング本体を配置することによって前記弁室を形成する、請求項1乃至3の何れか1つに記載の過流防止弁。
【請求項5】
前記弁体は、前記ハウジングとの間に環状のばね収容空間を形成し、
前記ばねは、前記弁体に外装され且つ前記ばね収容空間に収容されている請求項1乃至4の何れか1つに記載の過流防止弁。
【請求項6】
前記ハウジングは、前記弁室を有するハウジング本体と、前記弁室に収容されるガイド部材とを含み、
前記弁体は、前記ガイド部材に挿通され、且つ前記弁室において前記ガイド部材より前記第2開口側であって前記ハウジング本体との間に前記ばね収容空間を形成する請求項5に記載の過流防止弁。
【請求項7】
前記弁体は、前記ばね収容空間と前記内通路とを連通する気抜き通路を有している、請求項6に記載の過流防止弁。
【請求項8】
前記ハウジングは、前記第1開口に繋がり、且つ流体であるガスが流れるガス通路を有し、
前記ガス通路は、該ガス通路を流れるガスを大気に放出する圧抜弁に接続され、
前記弁体は、前記圧抜弁がガスを放出する際の前記ガス通路の圧力降下に対して、前記ばねによって開弁状態となっている、請求項1乃至6の何れか1つに記載の過流防止弁。
【請求項9】
ガスが貯留されるタンクを封止し且つ前記タンクから流れ出るガスの流れを制御するタンクバルブ装置であって、
請求項8に記載の過流防止弁と、
前記ガス通路を流れるガスを大気に放出する前記圧抜弁と、を備える、タンクバルブ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスの流れを制御する過流防止弁、及びそれを備えるタンクバルブ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
過流防止弁として、例えば特許文献1のようなものが知られている。特許文献1の過流防止弁は、入口路と出口路の差圧が大きくなると、過流防止部材が閉弁姿勢に切換わる。これにより、ガスの流出を停止することができる、即ち過流状態を防ぐことができる。また、過流防止弁では、閉弁姿勢に切換わった後に復帰用押し棒で過流防止部材を押すことによって、過流防止部材が開弁姿勢に戻される。そうすると、過流防止弁を復帰させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-278484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の過流防止弁では、過流防止部材が閉弁姿勢になった後、弁体の下流側の圧力が低圧、例えば大気圧に維持される。それ故、過流防止部材が閉弁姿勢にて維持される。そこで、過流防止部材を開弁姿勢に戻す際、復帰用押し棒によって過流防止部材を押す必要がある。しかし、過流防止弁において、過流状態が収まった後に自動的に過流防止部材が開弁姿勢に戻ること、即ち弁体が弁座から離れることが望まれている。
【0005】
そこで本発明の目的は、過流状態が収まった後、弁体が弁座から離れることができる過流防止弁を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の過流防止弁は、第1開口及び第2開口を有する弁室を含むハウジングと、前記弁室に収容される弁体であって、前記第1開口の周りにある弁座に対して、前記第1開口の流体圧と前記第2開口の流体圧との差圧に応じて着座及び離反する弁体と、前記弁座から離反するように前記弁体を付勢するばねとを備え、前記弁体は、前記第2開口に繋がる内通路と、該内通路に繋がり且つ前記弁室を介して前記第1開口に繋がる連通路と、前記内通路に繋がり且つ前記第1開口に臨む絞り流路とを、含み、前記絞り流路の流路面積は、前記連通路の流路面積より小さいものである。
【0007】
本発明に従えば、第1開口の流体圧が低下するような過流状態では差圧が大きくなるので、弁体が弁座に着座する。これにより、過流状態になることを防ぐことができる。他方、過流防止弁では、絞り流路が第1開口に臨み且つ連通路より流路面積が小さいので、閉弁時においても流量を絞った状態で流体を第1開口に導くことができる。それ故、過流状態になることを抑制しつつ、差圧を小さくしていくことができる。これにより、過流状態が収まった後、弁体を弁座から離すことができる。
【0008】
本発明のタンクバルブ装置は、ガスが貯留されるタンクを封止し且つ前記タンクから流れ出るガスの流れを制御するものであって、前述する過流防止弁と、前記ガス通路を流れるガスを大気に放出する前記圧抜弁と、を備えるものである。
【0009】
本発明に従えば、圧抜弁が作動することによってガス通路の圧力が降下するが、圧力降下によって過流防止弁が作動することを防ぐことができる。これにより、過流防止弁が不所望に作動することを抑制できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、過流状態が収まった後、弁体が弁座から離れることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明のタンクバルブ装置を示す正面図である。
図2図1のタンクバルブ装置に備わる過流防止弁を拡大して示す拡大断面図である。
図3図2の過流防止弁を分解して示す分解図である。
図4図2の過流防止弁の開状態におけるガスの流れを示す拡大断面図である。
図5図2の過流防止弁の閉状態におけるガスの流れを示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る実施形態のタンクバルブ装置1、及びそこに備わる過流防止弁11について前述する図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明で用いる方向の概念は、説明する上で便宜上使用するものであって、発明の構成の向き等をその方向に限定するものではない。また、以下に説明するタンクバルブ装置1及び過流防止弁11は、本発明の一実施形態に過ぎない。従って、本発明は以下の実施形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除、変更が可能である。
【0013】
<タンクバルブ装置>
図1に示すタンクバルブ装置1は、過流防止弁11と、圧抜弁12と、を備えている。タンクバルブ装置1は、ガスを貯留するタンク2に設けられている。タンクバルブ装置1は、タンク2の口部2aを封止している。本実施形態において、ガスは水素である。但し、ガスは水素に限定されない。タンクバルブ装置1は、オンタンク型のタンクバルブ装置である。タンクバルブ装置1は、タンク2からガスを送出させる。タンクバルブ装置1は、送出するガスの流れを制御する。
【0014】
<過流防止弁>
過流防止弁11は、バルブブロック13と、弁体14と、ばね15と、を備えている。過流防止弁11は、下流側の流体圧が低下して所定流量以上の流体が流れる過流状態において、流体の流れを制御する弁である。本実施形態において、過流防止弁11は、流体の一例であるガスがタンク2から所定流量以上送出される場合において、タンク2から送出されるガスの流量を制限する。
【0015】
<バルブブロック>
ハウジングの一例であるバルブブロック13は、主通路16と、圧抜通路17とを含んでいる。バルブブロック13は、タンク2の口部2aに挿入されている。より詳細に説明すると、バルブブロック13は、タンク2の口部2aに螺合されている。これにより、口部2aがバルブブロック13によって封止されている。
【0016】
ガス通路の一例である主通路16は、タンク2内外を繋いでいる。より詳細に説明すると、主通路16は、供給口(図示しない)及び送出口16aを有している。供給口は、バルブブロック13であってタンク2外に形成されている。供給口は、例えば配管を介して燃料電池及び内燃機械等のガス消費機に接続されている。送出口16aは、タンク2内に形成されている。送出口16aには、タンク2内のガスが流れ込む。圧抜通路17は、タンク2内のガス圧を抜くための通路である。圧抜通路17は、主通路16を介してタンク2内と繋がり、またタンク2外にも繋がっている。
【0017】
バルブブロック13は、ブロック本体18と、栓部19と、ガイド部材20、を更に含んでいる。
【0018】
<ブロック本体>
ブロック本体18は、バルブブロック13においてタンク2から突き出ている。ブロック本体18は、主通路16及び圧抜通路17を含んでいる。ブロック本体18には、圧抜弁12を含む複数の弁が設けられている。複数の弁は、圧抜弁12の他に電磁開閉弁及び手動弁が含まれる。電磁開閉弁及び手動弁は、主通路16に介在している。なお、複数の弁は、必ずしも電磁開閉弁及び手動弁を含む必要はなく、また電磁開閉弁及び手動弁以外の弁、例えば逆止弁及び安全弁等を含んでもよい。
【0019】
<栓部>
栓部19は、ブロック本体18に一体的に設けられている。栓部19は、口部2aにシールされた状態で挿入されている。本実施形態において、栓部19は、口部2aに螺合されている。栓部19は、円柱状に形成され且つ軸方向に延在している。本実施形態において、軸方向は、栓部19の軸線L1が延在する方向である。栓部19は、軸線L1を口部2aの軸線に一致させるようにして口部2aに挿通されている。
【0020】
栓部19は、図2に示すように主通路16及び弁室21を含んでいる。主通路16は、ブロック本体18から栓部19に延在している。より詳細に説明すると、主通路16は、栓部19において軸方向に延在している。主通路16は、栓部19の軸方向一方側の端面である軸方向一端に送出口16aを有しており、栓部19の軸方向一端においてタンク2に開口している。主通路16には、弁室21が介在している。主通路16は、弁室21によって第1通路部分16bと第2通路部分16cとに分かれている。第1通路部分16bは、主通路16において弁室21より供給口側の部分であり、第2通路部分16cは、主通路16において弁室21より送出口16a側の部分である。
【0021】
弁室21は、前述の通り第1通路部分16bと第2通路部分16cとの間に介在している。弁室21は、軸方向に延在し、且つ主通路16より大径に形成されている。弁室21は、第1開口21a及び第2開口21bを含んでいる。第1開口21a及び第2開口21bは、弁室21において軸方向両端(後述する天井及び底面)に夫々形成されている。第1開口21aは、第1通路部分16bに繋がり、第2開口21bは、第2通路部分16cに繋がっている。
【0022】
栓部19は、第1栓部本体22と、第2栓部本体23とを含んでいる。第1ハウジング本体の一例である第1栓部本体22は、軸方向他方側の部分である。第2ハウジング本体の一例である第2栓部本体23は、軸方向一方側の部分である。栓部19は、図3に示すように分割面D1,D2によって第1栓部本体22と第2栓部本体23とに分割できる。分割面D1,D2は、第1栓部本体22及び第2栓部本体23の各々の端面である。本実施形態において、分割面D1,D2は、軸線L1に直交する平面である。但し、分割面D1,D2は、段状であってもよく、その形状は問わない。以下では、第1栓部本体22及び第2栓部本体23の構成が更に詳細に説明される。
【0023】
第1栓部本体22は、ブロック本体18に一体的に設けられている。第1栓部本体22は、ブロック本体18から軸方向一方に延在し且つ円柱状に形成されている。第1栓部本体22は、第1凹部24及び第1通路部分16bを有している。第1凹部24は、第1栓部本体22の軸方向一端(即ち、分割面D1)に形成されている。第1凹部24は、第1栓部本体22の軸方向一端から軸方向他方に向かって凹んでいる。第1凹部24では、軸方向他方側の面(本実施形態において「天井」という)において第1開口21aが開口している。そして、第1凹部24は、第1開口21aと軸線が互いに一致している。第1凹部24の孔径は、第1開口21aの孔径より大きくなっている。それ故、第1凹部24の天井において第1開口21aの周りの部分が弁座26を成している。弁座26は、平坦な当たり面26aを有している。なお、弁座26は、軸方向一方に突き出た環状の突起片であってもよく、後述する弁体14が着座できる形状であればよい。
【0024】
第1通路部分16bは、第1開口21aを介して第1凹部24に繋がっている。第1通路部分16bは、第1開口21aから軸線L1に平行且つ軸方向他方に延在している。第1通路部分16bは、第1栓部本体22を突き抜けてブロック本体18まで延びている。
【0025】
第2栓部本体23は、軸方向に延在し且つ円柱状に形成されている。第2栓部本体23は、第2凹部25を有している。第2栓部本体23は、送出口16a及び第2通路部分16cを有している。第2凹部25は、第2栓部本体23の軸方向他端(即ち、分割面D2)に形成されている。第2凹部25は、第2栓部本体23の軸方向他端から軸方向一方に向かって凹んでいる。また、第2凹部25では、軸方向一方側の面(本実施形態において「底面」という)において第2開口21bが開口している。第2凹部25は、第2開口21bと軸線が互いに一致している。第2凹部25の開口側部分25aは、それより底側の部分に比べて大径に形成されている。
【0026】
送出口16aは、第2栓部本体23の軸方向一端に形成されている。第2通路部分16cは、第2開口21bを介して第2凹部25に繋がっている。第2通路部分16cは、第1開口21aから軸線L1に平行且つ軸方向一方に延在している。第2通路部分16cは、送出口16aに繋がっている(図1参照)。
【0027】
栓部19では、第1栓部本体22と第2栓部本体23とが以下のように配置されている。即ち、第1栓部本体22と第2栓部本体23は、図2に示すように第1凹部24と第2凹部25とを突き合わせるように配置されている。第1栓部本体22と第2栓部本体23とは、互いの軸線を軸線L1に一致させ、且つ第1栓部本体22の分割面D1と第2栓部本体23の分割面D2を互いに突き合わせるように配置されている。第1栓部本体22と第2栓部本体23とは、図示しないボルト等の締結部材によって締結される。これにより、第1栓部本体22と第2栓部本体23とによって栓部19が形成される。そして、第1凹部24と第2凹部25とによって栓部19に弁室21が形成される。
【0028】
<ガイド部材>
ガイド部材20は、弁室21に収容されている。ガイド部材20は、円筒状に形成されている。ガイド部材20は、外周面にフランジ20aを有している。フランジ20aは、ガイド部材20の軸方向中間部分において周方向全周にわたって形成されている。フランジ20aは、径方向外方に突出している。フランジ20aは、第2凹部25の開口側部分25aに嵌り込んでいる。フランジ20aは、2つの栓部本体22,23によって挟持される。これにより、ガイド部材20が弁室21内において固定されている。
【0029】
ガイド部材20は、第1軸線方向において弁室21より短尺になっている。それ故、ガイド部材20は、弁室21の軸方向両端(即ち、第1凹部24の天井及び第2凹部25の底面)に対して軸方向に隙間をあけて配置されている。これにより、ガイド部材20は、弁室21においてガイド部材20より軸方向他方側に弁空間21cを形成し、またガイド部材20より軸方向他方側に後で詳述するばね収容空間27を形成している。
【0030】
<弁体>
弁体14は、弁室21に収容されている。弁体14は、第1開口21aの周りにある弁座26に対して、第1開口21aのガス圧と第2開口21bのガス圧との差圧に応じて着座及び離反する。より詳細に説明すると、弁体14は、軸方向に移動可能に弁室21に収容されている。弁体14は、第1開口21aのガス圧及び第2開口21bのガス圧を互いに抗するように受けている。そして、弁体14は、2つのガス圧の差圧に応じた位置へと移動する。弁体14は、移動することによって第1開口21aを開閉する。以下では、弁体14の構成が更に詳細に説明される。
【0031】
弁体14は、ガイド部材20に挿通されている。弁体14は、ガイド部材20によって軸方向に摺動案内されている。弁体14は、円筒状に形成されている。弁体14は、シート部14aを有している。弁体14の上面部がシート部14aを成している。弁体14は、シート部14aを第1開口21aに対向させるように配置されている。弁体14は、軸方向他方に移動することによってシート部14aを弁座26に着座させる。これにより、第1開口21aが閉じられる。他方、弁体14は、軸方向一方に移動することによってシート部14aを弁座26から離反させる。これにより、第1開口21aが開かれる。
【0032】
シート部14aは、弁座26に当接する当たり面14bを有している。当たり面14bは、弁座26の当たり面26aと同様に平坦になっている。弁体14は、シート部14aの当たり面14bを弁座26の当たり面26aに当接させることによって第1開口21aを閉じる。
【0033】
弁体14は、内通路14cと、複数の連通路14dと、絞り流路14eと、を有している。内通路14cは、第2開口21bに繋がっている。より詳細に説明すると、内通路14cは、弁体14の内孔であって天井を有している。内通路14cは、軸線L1に沿って延在している。内通路14cの開口端が第2開口21bに臨んでいる。それ故、内通路14cは、第2開口21bと繋がっている。
【0034】
連通路14dは、内通路14cと繋がり、且つ弁室21を介して第1開口21aと連通している。より詳細に説明すると、連通路14dは、弁体14において複数、例えば4つ形成されている。複数の連通路14dは、弁体14の外周面であって天井側の部分に配置されている。複数の連通路14dは、弁体14の外周面において周方向に互いに等間隔を開けている。連通路14dの各々は、弁体14を径方向に貫通している。これにより、連通路14dは、内通路14cと弁体14の外方(即ち、弁空間21c)とに夫々繋がっている。連通路14dは、弁空間21cに繋がることによって弁室21を介して第1開口21aと連通している。
【0035】
絞り流路14eは、連通路14dと同じく内通路14cと繋がり、且つ第1開口21aに臨んでいる。絞り流路14eは、弁体14のシート部14aに形成されている。本実施形態において、絞り流路14eは、軸線L1に沿ってシート部14aを貫通している。それ故、絞り流路14eは、弁体14の上面(即ち、外面)及び天井(即ち、内面)に夫々開口を有している。弁体14の外面にある絞り流路14eの外側の開口は、第1開口21aに臨んでいる。他方、弁体14の内面にある絞り流路14eの内側の開口は、内通路14cに繋がっている。絞り流路14eの流路面積は、連通路14dの流路面積より小さくなっている。それ故、絞り流路14eは、連通路14dに比べてガスの流量を絞るようになっている。
【0036】
弁体14は、ばね受部14fと、気抜き通路14gと、を有している。弁体14は、バルブブロック13との間にばね収容空間27を形成している。ばね受部14fは、弁体14の軸方向一端部に周方向全周にわたって形成されている。ばね受部14fは、弁体14の軸方向一端部から径方向外方に突出している。ばね受部14fは、弁室21においてガイド部材20の軸方向一端に対して軸方向一方に間隔をあけて配置されている。弁体14は、ガイド部材20によって径方向においてブロック本体18との間に隙間をあけて配置されている。それ故、弁体14は、弁室21においてガイド部材20より第2開口21b側(即ち、軸方向一方側)であってブロック本体18との間に環状のばね収容空間27を形成している。
【0037】
気抜き通路14gは、ばね収容空間27と内通路14cとを連通している。より詳細に説明すると、気抜き通路14gは、弁体14の外周面において周方向に互いに間隔をあけて複数形成されている。気抜き通路14gは、弁体14の外周面においてばね収容空間27に対応させて配置されている。気抜き通路14gは、弁体14を径方向内外貫通している。これにより、気抜き通路14gは、ばね収容空間27と内通路14cとを連通している。
【0038】
<ばね>
ばね15は、弁体14を付勢している。ばね15は、弁体14を弁座26から離反させている。ばね15は、本実施形態において圧縮コイルばねである。ばね15は、弁体14に外装され、且つばね収容空間27に収容されている。より詳細に説明すると、ばね15は、圧縮された状態でガイド部材20とばね受部14fとの間に配置されている。それ故、ばね15は、弁座26から離反させるように弁体14を付勢している。即ち、ばね15は、第2開口21bのガス圧に抗して弁体14を付勢している。
【0039】
<圧抜弁>
圧抜弁12は、主通路16に接続されている。圧抜弁12は、圧抜通路17に介在している。圧抜弁12は、圧抜通路17を介して主通路16に接続されている。圧抜弁12は、主通路16を流れるガスを大気に放出する。圧抜弁12は、手動操作で作動する弁である。圧抜弁12は、手動操作することによって圧抜通路17を開く。これにより、主通路16に流れるガスが大気に放出される。ガスを大気に放出することによって主通路16のガス圧が下降する。圧抜弁12では、放出時の主通路16の圧力降下に対して、過流防止弁11の弁体14が開弁状態で維持されるように最大開度が調整されている。例えば、圧抜弁12の最大開度は、第1開口21aのガス圧と第2開口21bのガス圧との差圧が後述する所定圧以下となるように設定されている。なお、圧抜弁12の最大開度、過流防止弁11の弁体14が閉弁状態になるように調整されてもよい。この場合、圧抜弁12が急操作等されることによって過流防止弁11が意図せぬ過流状態になることを抑制できる。
【0040】
<過流防止弁の動作>
過流防止弁11では、タンク2から送出されるガスの流量が所定流量以下である状態において、第1開口21aのガス圧と第2開口21bのガス圧の差圧が所定圧以下となっている。ここで、所定圧とは、ばね15の付勢力に応じた圧力である。弁体14は、差圧が所定圧以下の状態において、ばね15によって弁座26から離反している。弁体14は、図4に示すようなシート部14aが弁座26から離反する開位置にて保持される。過流防止弁11では、タンク2内のガスが第2通路部分16cから第2開口21bを介して弁室21に導かれ、更に内通路14cに流れ込んでいる。弁体14が開位置に保持されている状態において、内通路14cに流れ込んだガスは、主に複数の連通路14dを通って弁空間21cへと流れ出ていく(図4の矢符A参照)。弁空間21cに導かれたガスは、第1開口21aを介して第1通路部分16bに送出される。第2開口21bに導かれるガスは、複数の連通路14dを通って第1開口21aに流れる。連通路14dの流路面積は絞り流路14eの流路面積より大きいので、連通路14dを通すことによって開弁時のガスの圧損を抑制することができる。
【0041】
他方、主通路16に繋がる配管(図示せず)が破損等することによって主通路16が大気と繋がると、過流防止弁11では、タンク2から送出されるガスの流量が所定流量を超えることがある。このような過流状態では、第1開口21aのガス圧が第2開口21bのガス圧に対して大きく低下しているので、第1開口21aのガス圧と第2開口21bのガス圧の差圧が所定圧を超える。そうすると、弁体14が第2開口21bのガス圧によって弁座26の方に押される。これにより、弁体14は、図5に示すように弁座26に着座する。そして、第1開口21aが弁体14によって閉じられる。これにより、タンク2から過剰な量のガスが送出されることを防ぐことができる。
【0042】
過流防止弁11では、第1開口21aが弁体14によって閉じられた閉弁時においても絞り流路14eが第1開口21aと繋がっている。それ故、第2開口21bを流れるガスは、絞り流路14eを介して第1開口21aに送出される(図5の矢符B参照)。これにより、過流状態を収めるべく閉弁時においても流量を絞った状態でガスを第1開口21aに導くことができるので、第2開口21bのガス圧を徐々に低下させることができる。そうすると、過流状態を抑制しつつ差圧を所定圧以下に下げていくことができる。そして、差圧が所定以下になると、ばね15によって弁体14が弁座26から離反するので、弁体14が再び開位置に戻る。これにより、第1開口21aが開かれる。このように、過流状態から差圧が所定圧以下まで下がった後(即ち過流状態が収まった後)において、弁体14を弁座26から離反させることができる。
【0043】
タンクバルブ装置1では、圧抜弁12によって主通路16を流れるガスを大気に放出する圧抜作業の際に過流防止弁11が以下のように動作する。圧抜弁12が操作されると、圧抜通路17を介して主通路16を流れるガスが大気に放出される。そうすると、主通路16のガス圧が降下する。即ち、第1開口21aのガス圧が降下する。圧抜弁12の最大開度は、第1開口21aのガス圧と第2開口21bのガス圧との差圧が所定圧以下となるように設定されている。それ故、弁体14は、主通路16の圧力降下に対してばね15によって開弁状態が維持される。これにより、主通路16を介してタンク2のガスを抜く際に過流防止弁11によって第1開口21aが閉じられることを抑制することができるので、タンク2のガスを素早く抜くことができる。
【0044】
本実施形態の過流防止弁11によれば、第1開口21aの流体圧、即ちガス圧が低下するような過流状態では差圧が大きくなるので、弁体14が弁座26に着座する。これにより、過流状態を防ぐことができる。他方、過流防止弁11では、絞り流路14eが第1開口21aに臨み且つ連通路14dより流路面積が小さいので、閉弁時においても流量を絞った状態でガスを第1開口21aに導くことができる。それ故、過流状態を抑制しつつ、差圧を小さくしていくことができる。これにより、過流状態が収まった後、弁体14を弁座26から離すことができる。
【0045】
また、本実施形態の過流防止弁11に従えば、当たり面14b,26aの少なくとも一方を平坦に形成することによって、第1開口21aに対して弁体14が軸ずれして配置されても弁座26に適切に当接させることができる。それ故、配置や加工等の精度が低くても、弁体14が弁座26に対して片当たりして着座することを抑制できる。
【0046】
また、本実施形態の過流防止弁11に従えば、弁座26及びシート部14aの両方の当たり面26a,14bが平坦に形成されているので、弁体14の軸ずれによる許容度を更に向上させることができる。
【0047】
また、本実施形態の過流防止弁11に従えば、第1凹部24及び第2凹部25を突き合わせるように第1栓部本体22及び第2栓部本体23を配置するだけで弁室21が形成できる。また、第1凹部24及び第2凹部25を突き合わせる際、弁体14と弁座26との軸ずれが生じやすいが、弁座26及び弁体14の少なくとも一方の当たり面14b,26aが平坦であるので、弁体14が弁座26に対して片当たりして着座することを抑制できる。それ故、バルブブロック13において弁室21を容易に構成することができる。
【0048】
また、本実施形態の過流防止弁11に従えば、弁体14の外側に形成されるばね収容空間27にばね15が配置されているので、ばね15が内通路14cを流れるガスに晒されることを抑制できる。これにより、ばね15がガスに晒されて損傷等することを抑制できる。
【0049】
また、本実施形態の過流防止弁11に従えば、ガイド部材20を用いることによってばね収容空間27を容易に形成することができる。
【0050】
また、本実施形態の過流防止弁11に従えば、気抜き通路14gを形成することによって、ばね15が伸縮する際のばね収容空間27におけるダンパ効果を抑制することができる。これにより、弁体14を円滑に動かすことができる。
【0051】
また、本実施形態の過流防止弁11に従えば、圧抜弁12が作動することによって主通路16の圧力が降下する際に過流防止弁11が作動することを防ぐことができる。これにより、過流防止弁11が不所望に作動することを抑制できる。
【0052】
また、本実施形態のタンクバルブ装置1に従えば、圧抜弁12が作動することによって主通路16の圧力が降下するが、圧力降下によって過流防止弁11が作動することを防ぐことができる。これにより、過流防止弁11が不所望に作動することを抑制できる。
【0053】
<その他の実施形態>
本実施形態の過流防止弁11では、流れる流体がガスであるが、必ずしもガスに限定されない。流れる流体は、油及び水等の液体であってもよい。また、過流防止弁11は、必ずしもタンクバルブ装置1に備わっている必要はなく、他のガス供給装置等の流体供給装置に備わっていてもよい。即ち、過流防止弁11が備わる対象は、タンクバルブ装置1に限定されない。
【0054】
また、本実施形態の過流防止弁11において、バルブブロック13は必ずしもガイド部材20を有している必要はない。例えば、バルブブロック13の栓部19において、径方向内方に突出する内向きフランジがガイド部材20に代えて形成される。そして、内向きフランジに弁体14が摺動可能に挿通される。これにより、ガイド部材20と同様の機能を達成することができる。
【0055】
また、本実施形態のタンクバルブ装置1は、ガスを送出する機能のみを有しているが、ガスを充填する機能を有していてもよい。例えば、タンクバルブ装置1は、主通路16を介してタンク2にガスを充填するように構成されてもよい。この場合、過流防止弁11において第1開口21aに充填されるガスが導かれるので、導かれるガスによって開位置にて弁体14が保持される。それ故、タンクバルブ装置1では、主通路16からタンク2にガスを充填することができる。更に、本実施形態のタンクバルブ装置1では、圧抜弁12が備わっているが、必ずしも備わっている必要はない。
【符号の説明】
【0056】
1 タンクバルブ装置
2 タンク
11 過流防止弁
12 圧抜弁
13 バルブブロック(ハウジング)
14 弁体
14a シート部
14b 当たり面
14c 内通路
14d 連通路
14e 絞り流路
14g 気抜き通路
15 ばね
16 主通路(ガス通路)
19 栓部(ハウジング本体)
20 ガイド部材
21 弁室
21a 第1開口
21b 第2開口
22 第1栓部本体(第1ハウジング本体)
23 第2栓部本体(第2ハウジング本体)
24 第1凹部
25 第2凹部
26 弁座
26a 当たり面
27 ばね収容空間
図1
図2
図3
図4
図5