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特開2023-120040乾燥用保持具、測定用試料の製造方法、および測定方法
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  • 特開-乾燥用保持具、測定用試料の製造方法、および測定方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023120040
(43)【公開日】2023-08-29
(54)【発明の名称】乾燥用保持具、測定用試料の製造方法、および測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/3577 20140101AFI20230822BHJP
   G01N 21/01 20060101ALI20230822BHJP
   G01N 1/28 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
G01N21/3577
G01N21/01 B
G01N1/28 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022023213
(22)【出願日】2022-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川原 和美
【テーマコード(参考)】
2G052
2G059
【Fターム(参考)】
2G052AD34
2G052DA33
2G052FD18
2G052GA11
2G059AA01
2G059BB04
2G059DD01
2G059DD13
2G059EE01
2G059EE12
2G059HH01
2G059MM01
(57)【要約】
【課題】フーリエ変換赤外分光法による高精度な測定を可能にする乾燥用保持具、測定用試料の製造方法、および測定方法を提供する。
【解決手段】乾燥用保持具101は、筒状に突出する第1筒状部31を含む第1部材51と、ろ紙を第1筒状部31に載せた状態で、前記ろ紙の上から第1筒状部31の外側を取り囲むように嵌まり込むことによって、前記ろ紙を平坦に張った状態で固定することができる、環状の第2部材52とを備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状に突出する第1筒状部を含む第1部材と、
ろ紙を前記第1筒状部に載せた状態で、前記ろ紙の上から前記第1筒状部の外側を取り囲むように嵌まり込むことによって、前記ろ紙を平坦に張った状態で固定することができる、環状の第2部材とを備える、乾燥用保持具。
【請求項2】
前記第1筒状部は円筒状である、請求項1に記載の乾燥用保持具。
【請求項3】
前記第1部材は、外周面に環状の張出部を備え、前記張出部は、前記第2部材の下端と前記張出部の上面とで前記ろ紙を挟み込むことができるように配置されている、請求項1または2に記載の乾燥用保持具。
【請求項4】
乾燥用保持具にろ紙を固定する工程と、
対象物を含む液体を前記ろ紙に染み込ませる工程と、
前記乾燥用保持具に保持された状態で前記ろ紙を乾燥させる工程とを含み、
前記乾燥用保持具は、筒状に突出する第1筒状部を含む第1部材と、前記ろ紙を前記第1筒状部に載せた状態で、前記ろ紙の上から前記第1筒状部の外側を取り囲むように嵌まり込むことによって、前記ろ紙を平坦に張った状態で固定することができる、環状の第2部材とを備える、測定用試料の製造方法。
【請求項5】
乾燥用保持具にろ紙を固定する工程と、
対象物を含む液体を前記ろ紙に染み込ませる工程と、
前記乾燥用保持具に保持された状態で前記ろ紙を乾燥させる工程と、
前記乾燥させる工程より後で、前記乾燥用保持具に保持された状態で前記ろ紙に赤外光を照射することによって、フーリエ変換赤外分光法による分析を行なう工程とを含み、
前記乾燥用保持具は、筒状に突出する第1筒状部を含む第1部材と、前記ろ紙を前記第1筒状部に載せた状態で、前記ろ紙の上から前記第1筒状部の外側を取り囲むように嵌まり込むことによって、前記ろ紙を平坦に張った状態で固定することができる、環状の第2部材とを備える、測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥用保持具、測定用試料の製造方法、および測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
対象物の分析方法として、フーリエ変換赤外分光法(Fourier Transform Infrared Spectroscopy:FTIR)が知られている。これを行なうためのフーリエ変換赤外分光光度計の一例が、特開2021-135204号公報(特許文献1)に記載されている。フーリエ変換赤外分光光度計は、赤外光源を備える。赤外光源から出射した赤外光は、所定の光学系を経た後、試料に照射される。試料を透過した赤外光は、検出器によって検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-135204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
測定されるべき対象物が液体に含まれた状態で提供されている場合、この液体をろ紙に染み込ませ、このろ紙を試料として測定が行なわれる。対象物を含む液体をろ紙に染み込ませた後、フーリエ変換赤外分光光度計による測定が行なわれる前に、ろ紙を乾燥させる。しかし、乾燥させることによって、ろ紙にしわが生じる。しわが生じたろ紙の表面は凹凸が激しい。したがって、この表面に対しては、フーリエ変換赤外分光光度計による測定を行なおうとしても焦点が合わせにくい。焦点が十分に合わないまま測定を行なわざるを得ない場合もあり、その結果、測定データの精度が劣化する。
【0005】
そこで、本発明は、フーリエ変換赤外分光法による高精度な測定を可能にする乾燥用保持具、測定用試料の製造方法、および測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に基づく乾燥用保持具は、筒状に突出する第1筒状部を含む第1部材と、対象物を含む液体を染み込ませたろ紙を上記第1筒状部に載せた状態で、上記ろ紙の上から上記第1筒状部の外側を取り囲むように嵌まり込むことによって、上記ろ紙を平坦に張った状態で固定することができる、環状の第2部材とを備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、第1部材と第2部材とでろ紙を挟み込むことによってろ紙に張力をかけた状態で固定することができ、その状態で乾燥させることができるので、平坦な面を有する試料を作り出すことができる。これにより、フーリエ変換赤外分光法による高精度な測定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に基づく実施の形態1における乾燥用保持具の説明図である。
図2】本発明に基づく実施の形態1における乾燥用保持具に備わる第1部材の説明図である。
図3】本発明に基づく実施の形態1における乾燥用保持具に備わる第2部材の説明図である。
図4】本発明に基づく実施の形態1における乾燥用保持具の斜視図である。
図5】本発明に基づく実施の形態1における乾燥用保持具を使用する様子の第1の説明図である。
図6】本発明に基づく実施の形態1における乾燥用保持具を使用する様子の第2の説明図である。
図7】本発明に基づく実施の形態1における乾燥用保持具を用いて作成した試料と、用いずに作成した試料との各々で、フーリエ変換赤外分光法による測定を行なって得られたデータを示すグラフである。
図8】本発明に基づく実施の形態2における測定用試料の製造方法のフローチャートである。
図9】本発明に基づく実施の形態3における測定方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施の形態1)
(構成)
図1図6を参照して、本発明に基づく実施の形態1における乾燥用保持具について説明する。本実施の形態における乾燥用保持具101を図1に示す。
【0010】
乾燥用保持具101は、第1部材51と、第2部材52とを備える。第1部材51の平面図を図2に示す。第1部材51は開口部6を有する。第1部材51は、筒状に突出する第1筒状部31を含む。第1筒状部31は円筒状である。第1筒状部31は、上端に面31aを有する。図1に示すように、第1部材51は、第1筒状部31の他に、第1筒状部31とは逆の向きに突出する第2筒状部32を備える。第2筒状部32は、下端に面32aを有する。第1部材51は、外周面に外側に向かって張り出す環状の張出部4を備える。ここで示す例では、張出部4は、上面4aおよび下面4bを有する。第1部材51は、上下対称な形状となっている。第1部材51の開口部6は貫通孔であってもよい。
【0011】
第2部材52は、上端52aと下端52bとを有する。ここで示す例では、上端52aおよび下端52bは平坦な面となっているが、上端52aおよび下端52bは平坦な面とは限らない。第2部材52の平面図を図3に示す。第2部材52は、環状である。第2部材52は開口部7を有する。開口部7は貫通孔である。
【0012】
乾燥用保持具101の斜視図を図4に示す。乾燥用保持具101を使用する様子を図5および図6に示す。図5においては、第1筒状部51の上に濡れたろ紙1が置かれている。ろ紙1には、対象物を含む液体が染み込ませてある。対象物は、たとえば微小な固体である。図5において矢印91に示すように、第2部材52を上から被せる。こうすることによって、第1筒状部31は、ろ紙1を押し曲げつつ第2部材52の開口部7に入り込む。第2部材52を被せ終えることによって、図6に示す状態となる。図6は、乾燥用保持具101にろ紙1を固定した状態の断面図である。この状態では、ろ紙1は、少なくとも第1筒状部31の上面および開口部6の状態においては、外周側に向かって引っ張られて平坦な状態となっている。
【0013】
このように、第2部材52は、対象物を含む液体を染み込ませたろ紙1を第1筒状部51に載せた状態で、ろ紙1の上から第1筒状部51の外側を取り囲むように嵌まり込むことによって、ろ紙1を平坦に張った状態で固定することができる。
【0014】
乾燥用保持具101は、ろ紙1を乾燥させて試料として使用可能な状態にするための治具である。図6に示すように濡れたろ紙1を固定した後で、適当な方法で乾燥させる。ろ紙1を固定した状態の乾燥用保持具101を、そのまま放置して自然乾燥させてもよく、何らかの乾燥室の内部に一定時間以上置くこととしてもよい。ろ紙1を固定した状態の乾燥用保持具101に対して、たとえば熱風を送り込んでもよい。
【0015】
(作用・効果)
本実施の形態における乾燥用保持具101は、第1部材51と第2部材52とでろ紙1を挟み込むことによってろ紙1に張力をかけた状態で固定することができる。その結果、ろ紙1を平坦な状態として固定した状態で乾燥させることが可能となる。したがって、この乾燥用保持具101は、平坦な面を有する試料を作り出すことができ、フーリエ変換赤外分光法による高精度な測定が可能となる。
【0016】
本実施の形態で示したように、第1筒状部31は円筒状であることが好ましい。この構成を採用することにより、ろ紙1の上面においては、全周囲に向かって均等に引っ張ることができる。また、第1部材51を使用する際には、第1筒状部31が円筒状であることにより、向きを気にせずに使用することができるので、好都合である。本実施の形態では、第1筒状部31は円筒状であるものとしたが、これはあくまで一例であって、円以外の断面形状を有する筒状であってもよい。
【0017】
本実施の形態で示したように、第1部材51は、外周面に環状の張出部4を備え、張出部4は、第2部材52の下端52bと前記張出部4の上面4aとでろ紙1を挟み込むことができるように配置されていることが好ましい。この構成を採用することにより、ろ紙1を挟み込んで強固に固定することができる。本実施の形態では、第2部材52の下端52bが平坦な面である例を示していたが、第2部材52の下端52bが平坦な面でない場合であっても、同様のことはいえる。
【0018】
なお、ここでは、対象物を含む液体を染み込ませたろ紙1を予め用意して、これを第1筒状部51に載せた状態で、ろ紙1の上から第1筒状部51の外側を取り囲むように、第2部材52を嵌め込むものとして説明したが、これはあくまで一例である。作業の順序はこれに限らない。たとえば、対象物を含む液体をまだ染み込ませていない状態のろ紙1を用意して、これを第1筒状部51に載せた状態で、ろ紙1の上から第1筒状部51の外側を取り囲むように、第2部材52を嵌め込んでもよい。このようにして、ろ紙1が乾燥用保持具101に固定されて平坦になった状態としてから、対象物を含む液体をろ紙1に染み込ませることとしてもよい。このようにした場合であっても、ろ紙1を平坦な状態として固定した状態で乾燥させることが可能であり、平坦な面を有する試料を作り出すことができる。
【0019】
(実験)
発明者らは、対象物を含む液体を染み込ませたろ紙1を2通り用意し、一方は、本実施の形態における乾燥用保持具101を用いて乾燥させることによって試料を作成し、他方はこの保持具を用いずに従来の方法で乾燥させることによって試料を作成した。これら2通りの試料を用いて、それぞれフーリエ変換赤外分光法による測定を行なって、得られたデータを比較した。これら2通りの試料からそれぞれ得られた測定データを図7に示す。図7では、データA,Bについて吸光度のグラフを表示している。データAは、乾燥用保持具101を用いて得た試料によるものである。データBは、従来の方法で乾燥させることによって得た試料によるものである。データAでは吸光度としても十分な強度を得ることができ、ピークが確認しやすい。一方、データBでは吸光度の強度が低下しており、ピークが曖昧になりがちである。
【0020】
以上のように、本実施の形態における乾燥用保持具101を用いて乾燥させることによって、フーリエ変換赤外分光法による高精度な測定が可能になることが確認できた。
【0021】
(実施の形態2)
(測定用試料の製造方法)
図8を参照して、本発明に基づく実施の形態2における測定用試料の製造方法について説明する。本実施の形態における測定用試料の製造方法のフローチャートを図8に示す。本実施の形態における測定用試料の製造方法は、乾燥用保持具にろ紙を固定する工程S1と、対象物を含む液体を前記ろ紙に染み込ませる工程S2と、前記乾燥用保持具に保持された状態で前記ろ紙を乾燥させる工程S3とを含む。ここでいう「乾燥用保持具」は、筒状に突出する第1筒状部を含む第1部材と、ろ紙を前記第1筒状部に載せた状態で、前記ろ紙の上から前記第1筒状部の外側を取り囲むように嵌まり込むことによって、前記ろ紙を平坦に張った状態で固定することができる、環状の第2部材とを備える。すなわち、ここでいう「乾燥用保持具」は、たとえば実施の形態1で説明した乾燥用保持具101であってよい。
【0022】
(作用・効果)
本実施の形態における測定用試料の製造方法によれば、対象物を含む液体を染み込ませたろ紙を、張力をかけて平坦にした状態で乾燥させることが可能であるので、平坦な面を有する試料を得ることができる。したがって、フーリエ変換赤外分光法による高精度な測定が可能となる。
【0023】
(実施の形態3)
(測定方法)
図9を参照して、本発明に基づく実施の形態3における測定方法について説明する。本実施の形態における測定方法のフローチャートを図9に示す。本実施の形態における測定方法は、乾燥用保持具にろ紙を固定する工程S1と、対象物を含む液体を前記ろ紙に染み込ませる工程S2と、前記乾燥用保持具に保持された状態で前記ろ紙を乾燥させる工程S3と、前記乾燥させる工程より後で、前記乾燥用保持具に保持された状態で前記ろ紙に赤外光を照射することによって、フーリエ変換赤外分光法による分析を行なう工程S4とを含む。ここでいう「乾燥用保持具」は、筒状に突出する第1筒状部を含む第1部材と、ろ紙を前記第1筒状部に載せた状態で、前記ろ紙の上から前記第1筒状部の外側を取り囲むように嵌まり込むことによって、前記ろ紙を平坦に張った状態で固定することができる、環状の第2部材とを備える。すなわち、ここでいう「乾燥用保持具」は、たとえば実施の形態1で説明した乾燥用保持具101であってよい。
【0024】
(作用・効果)
本実施の形態における測定方法によれば、対象物を含む液体を染み込ませたろ紙を、平坦な状態で固定させて乾燥させた後にフーリエ変換赤外分光法による分析を行なうので、高精度な測定を可能にする。したがって、フーリエ変換赤外分光法による高精度な測定が可能となる。
【0025】
ここで述べたように、乾燥用保持具101にろ紙1を固定して乾燥させることによって試料を作り出すだけでなく、乾燥用保持具101にろ紙1を固定したままの状態で、ろ紙1に赤外光を照射することによって、フーリエ変換赤外分光法による分析を行なってもよい。このようにした方が、試料を他の保持具に移し替える手間を省くことができる。また、このようにした方が、試料をより確実に平坦な状態のまま維持することができるので、好ましい。
【0026】
なお、実施の形態1では、乾燥用保持具101が第2筒状部32を備える例を示して説明したが、乾燥用保持具は第2筒状部32を備えない構成であってもよい。実施の形態1では、第1筒状部31の形状と第2筒状部32の形状とが同じである例を示したが、両者は同じであってもよく、異なっていてもよい。図1図6に示した乾燥用保持具の寸法の比率は、あくまで一例であって、この通りとは限らない。乾燥用保持具は、たとえば張出部4を備えない構成であってもよい。
【0027】
なお、上記実施の形態のうち複数を適宜組み合わせて採用してもよい。
【0028】
なお、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0029】
1 ろ紙、4 張出部、4a (張出部の)上面、4b (張出部の)下面、6 (第1部材の)開口部、7 (第2部材の)開口部、31 第1筒状部、31a 面、32 第2筒状部、32a 面、51 第1部材、52 第2部材、52a 上端、52b 下端、101 乾燥用保持具。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9