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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023120041
(43)【公開日】2023-08-29
(54)【発明の名称】高周波電源、レーザ装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20230822BHJP
   H03H 7/38 20060101ALI20230822BHJP
   H01S 3/097 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
H02M7/48 P
H03H7/38 A
H01S3/097 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022023215
(22)【出願日】2022-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】宮嵜 洸一
【テーマコード(参考)】
5F071
5H770
【Fターム(参考)】
5F071GG02
5F071GG03
5F071HH06
5F071JJ05
5H770AA05
5H770BA20
5H770CA06
5H770DA01
5H770DA11
5H770DA17
5H770DA41
5H770JA10X
5H770JA13Y
5H770JA13Z
5H770JA16Y
5H770KA01Y
5H770KA01Z
(57)【要約】
【課題】間欠動作する負荷の動作周波数を高めることが可能な電源装置を提供する。
【解決手段】高周波電源200Aは、フルブリッジ回路210、トランスT1、フィルタ220Aを備える。トランスT1の一次巻線W1は、フルブリッジ回路210と接続される。フィルタ220Aは、少なくともシリーズインダクタを含み、フルブリッジ回路210から負荷を見たインピーダンスZinが、スイッチング周波数Fswおよび3次高調波3Fswおよび5次高調波5Fswにおいて誘導性となるように、フルブリッジ回路210と負荷の間に配置される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルブリッジ回路と、
一次巻線が前記フルブリッジ回路と接続されるトランスと、
少なくともシリーズインダクタを含み、前記フルブリッジ回路から負荷を見たインピーダンスがスイッチング周波数および3次高調波および5次高調波において誘導性となるように、前記フルブリッジ回路と前記負荷の間に配置されるフィルタ回路と、
を備えることを特徴とする高周波電源。
【請求項2】
前記フィルタ回路は、前記トランスの二次巻線と前記負荷の間に設けられることを特徴とする請求項1に記載の高周波電源。
【請求項3】
前記フィルタ回路は、前記フルブリッジ回路と前記トランスの前記一次巻線の間に設けられることを特徴とする請求項1に記載の高周波電源。
【請求項4】
前記フィルタ回路は、LCフィルタであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の高周波電源。
【請求項5】
前記フィルタ回路は、T型フィルタであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の高周波電源。
【請求項6】
前記フィルタ回路は、π型フィルタであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の高周波電源。
【請求項7】
前記フィルタ回路は、前記シリーズインダクタのみを含むことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の高周波電源。
【請求項8】
前記負荷は、レーザ共振器を含むことを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の高周波電源。
【請求項9】
前記フルブリッジ回路は、SiCトランジスタで構成されることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の高周波電源。
【請求項10】
レーザ光源と、
前記レーザ光源に、交流電圧を供給する請求項1から9のいずれかに記載の高周波電源と、
を備えることを特徴とするレーザ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、高周波電源に関する。
【背景技術】
【0002】
産業用の加工ツールとして、レーザ加工装置が広く普及している。図1は、レーザ加工装置1rのブロック図である。レーザ加工装置1rは、COレーザなどのレーザ光源2と、レーザ光源2に交流電力を供給し、励振させるレーザ駆動装置4rを備える。レーザ駆動装置4rは、直流電源6および高周波電源8を備える。直流電源6は定電圧源であり、PID(Proportional-Integral-Differential)制御やPI制御などを用いたフィードバック制御によってその出力である直流電圧VDCを目標値に安定化させる。
【0003】
高周波電源8は、直流電圧VDCを受け、直流電力を所望の高周波電力に変換する。交流電力は、負荷であるレーザ光源2に供給される。
【0004】
図2は、高周波電源8およびレーザ光源2の等価回路図である。高周波電源8は、フルブリッジ回路(Hブリッジ回路)20と、トランスT1を含む。フルブリッジ回路20は、ハイサイドトランジスタMH1およびローサイドトランジスタML1を含むレグと、ハイサイドトランジスタMH2およびローサイドトランジスタML2を含むレグと、を備える。トランスT1の一次巻線は、フルブリッジ回路20と接続される。
【0005】
レーザ光源2は、レーザ共振器24と、インダクタL1,L2を備える。レーザ共振器24は、対向する放電電極対を含み、放電電極対が静電容量を形成する。トランスT1の二次巻線と、レーザ共振器24の間には、インダクタL1,L2が挿入される。インダクタL1,L2によって、負荷22の共振周波数が、高周波電源8のスイッチング周波数と一致するように調節される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開1997-129953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者は、図2の高周波電源8およびレーザ光源2について検討した結果、以下の課題を認識するに至った。
【0008】
図3は、図2のフルブリッジ回路20の等価回路図である。図3には、ハイサイドトランジスタMH1およびローサイドトランジスタML1を含む1つのレグが示される。ハイサイドトランジスタMH1のゲートにはハイ電圧が印加されており、オン状態であり、ローサイドトランジスタML1のゲートにはロー電圧が印加されており、オフ状態である。この状態では、フルブリッジ回路20の出力電圧Voutはハイ(Vcc)であり、ハイサイドトランジスタMH1のドレイン電流Idsが、負荷22に供給される。
【0009】
上述のように、負荷22の共振周波数は、高周波電源8のスイッチング周波数と一致するように設計される。ところが、トランスT1や配線は、寄生容量を含んでおり、この寄生容量の影響で、負荷22のインピーダンスが、容量性となる場合がある。負荷インピーダンスが容量性であるとき、ハイサイドトランジスタMH1に流れる変位電流(時間変動成分)di/dt、つまり交流成分が増大する。
【0010】
ハイサイドトランジスタMH1およびローサイドトランジスタML1は、ゲートソース間、ゲートドレイン間に寄生容量を有する。電流Idsの時間変動成分は、ローサイドトランジスタML1のゲートドレイン間容量Cgdを経由して、ローサイドトランジスタML1のゲート容量を充電する。その結果、ローサイドトランジスタML1のゲートソース間電圧Vgsが上昇し、しきい値電圧を超えるとローサイドトランジスタML1がターンオン(ゲート誤点弧という)する。その結果、ハイサイドトランジスタMH1とローサイドトランジスタML1が同時オンとなって貫通電流が流れる。特に、レーザ電源などの大容量、高周波スイッチングが要求されるアプリケーションでは、インバータのパワートランジスタに、高速動作が可能なSiCデバイスが採用されている。SiCデバイスをMHz帯でスイッチングさせると、ゲートドレイン間の寄生容量Cgdなどのパラメータ次第で、ゲート誤点弧が発生する可能性がある。
【0011】
図4は、図2のフルブリッジ回路20の動作波形図である。図4の上段は出力電圧Voutを示しており、下段は、ローサイドトランジスタML1のゲート電圧Vgsを示している。時刻t~tは、ロー出力期間であり、ハイサイドトランジスタMH1がオフ、ローサイドトランジスタML1がオンである。ロー出力期間において、ローサイドトランジスタML1のゲート電圧Vgsは、ハイ電圧となっている。
【0012】
時刻tに、ロー出力期間からハイ出力期間に遷移する。ハイ出力期間では、ハイサイドトランジスタMH1がオン、ローサイドトランジスタML1がオフである。時刻tに、ローサイドトランジスタML1のゲートには、ロー(0V)のゲート電圧Vgsが印加される。時刻tに、ゲート誤点弧が発生すると、ゲート電圧Vgsが振動する。もし、ゲート電圧Vgsが、トランジスタのゲート負側の許容電圧(耐圧)を超えると、トランジスタの信頼性に悪影響を及ぼしてしまう。とりわけ、SiCデバイスは、負側の耐圧が低いため、負電圧の印加を抑制する必要がある。
【0013】
本開示は係る状況においてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、トランジスタの誤点弧を抑制可能な高周波電源の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本開示のある態様の高周波電源は、フルブリッジ回路と、一次巻線がフルブリッジ回路と接続されるトランスと、少なくともシリーズインダクタを含み、フルブリッジ回路から負荷を見たインピーダンスがスイッチング周波数および3次高調波および5次高調波において誘導性となるように、フルブリッジ回路と負荷の間に配置されるフィルタ回路と、を備える。
【0015】
なお、以上の構成要素を任意に組み合わせたもの、構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0016】
本開示のある態様によれば、トランジスタの誤点弧を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】レーザ加工装置のブロック図である。
図2】高周波電源およびレーザ光源の等価回路図である。
図3図2のインバータの等価回路図である。
図4図2のインバータの動作波形図である。
図5】実施形態1に係るレーザ装置のブロック図である。
図6図6(a)~(d)は、フィルタの構成例を示す回路図である。
図7】フルブリッジ回路から負荷を見たインピーダンスZinを示すスミスチャートである。
図8】実施形態2に係るレーザ装置のブロック図である。
図9図9(a)~(d)は、フィルタの構成例を示す回路図である。
図10】レーザ装置を備えるレーザ加工装置を示す図ある。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本開示のいくつかの例示的な実施形態の概要を説明する。この概要は、後述する詳細な説明の前置きとして、実施形態の基本的な理解を目的として、1つまたは複数の実施形態のいくつかの概念を簡略化して説明するものであり、発明あるいは開示の広さを限定するものではない。この概要は、考えられるすべての実施形態の包括的な概要ではなく、すべての実施形態の重要な要素を特定することも、一部またはすべての態様の範囲を線引きすることも意図していない。便宜上、「一実施形態」は、本明細書に開示するひとつの実施形態(実施例や変形例)または複数の実施形態(実施例や変形例)を指すものとして用いる場合がある。
【0019】
一実施形態に係る高周波電源は、フルブリッジ回路と、一次巻線がフルブリッジ回路と接続されるトランスと、少なくともシリーズインダクタを含み、フルブリッジ回路から負荷を見たインピーダンスがスイッチング周波数および3次高調波および5次高調波において誘導性となるように、フルブリッジ回路と負荷の間に配置されるフィルタ回路と、を備える。
【0020】
この構成によると、フルブリッジ回路の負荷インピーダンスが、基本波および高調波の周波数において誘導性となることで、ハイサイドトランジスタのドレイン電流の時間微分成分が抑制される。これにより、ローサイドトランジスタのゲートドレイン間容量を介したゲート容量の充電を抑制し、ローサイドトランジスタのゲート誤点弧を防止できる。
【0021】
一実施形態において、フィルタ回路は、トランスの二次巻線と負荷の間に設けられてもよい。
【0022】
一実施形態において、フィルタ回路は、フルブリッジ回路とトランスの一次巻線の間に設けられてもよい。
【0023】
一実施形態において、フィルタ回路は、LCフィルタであってもよい。
【0024】
一実施形態において、フィルタ回路は、T型フィルタであってもよい。
【0025】
一実施形態において、フィルタ回路は、π型フィルタであってもよい。
【0026】
一実施形態において、フィルタ回路は、シリーズインダクタのみを含んでもよい。
【0027】
一実施形態において、負荷は、レーザ共振器を含んでもよい。
【0028】
一実施形態において、フルブリッジ回路は、SiCトランジスタで構成されてもよい。
【0029】
(実施形態)
以下、好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施形態は、開示および発明を限定するものではなく例示であって、実施形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも開示および発明の本質的なものであるとは限らない。
【0030】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0031】
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に接続された(設けられた)状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0032】
また本明細書において、電圧信号、電流信号などの電気信号、あるいは抵抗、キャパシタ、インダクタなどの回路素子に付された符号は、必要に応じてそれぞれの電圧値、電流値、あるいは回路定数(抵抗値、容量値、インダクタンス)を表すものとする。
【0033】
図5は、実施形態1に係るレーザ装置100Aのブロック図である。レーザ装置100Aは、レーザ光源110および高周波電源200Aを備える。レーザ光源110は、たとえばCOレーザであり、レーザ共振器112およびインダクタL1,L2を含む。インダクタL1,L2のインダクタンスは、高周波電源200Aのスイッチング周波数Fswにおいて、インダクタL1,L2およびレーザ共振器112を含むレーザ光源110のインピーダンスが実数となるように、言い換えると、レーザ光源110の共振周波数fが、高周波電源200Aのスイッチング周波数Fswと一致するように調整されている。
【0034】
高周波電源200Aには、図示しない電源回路から、直流電圧Vdcが供給される。高周波電源200Aの出力はレーザ光源110に接続されている。高周波電源200Aは、励振信号に応じて、レーザ光源110に交流の駆動電圧を間欠的に供給する。すなわち高周波電源200Aは、励振信号が励振を指示する期間(たとえばハイ)、アクティブとなり、レーザ光源110に交流の駆動電圧VDRVを供給する。高周波電源200Aは、励振信号が停止を指示する期間(たとえばロー)、非アクティブとなり、レーザ光源110への電力供給が停止する。高周波電源200Aのスイッチング周波数Fswは、1MHz以上である。また高周波電源200Aの出力電力は、1kW以上となる。
【0035】
高周波電源200Aは、フルブリッジ回路210、トランスT1およびフィルタ220Aを備える。
【0036】
フルブリッジ回路210は、ハイサイドトランジスタMH1,MH2、ローサイドトランジスタML1,ML2を含む。これらのトランジスタMH1,MH2,ML1,ML2は、高速スイッチングが可能なSiCを用いることができる。トランスT1は、一次巻線W1、二次巻線W2を含む。一次巻線W1は、フルブリッジ回路210と接続される。
【0037】
フィルタ220Aは、トランスT1の二次巻線W2とレーザ光源110の間に接続される。フィルタ220Aは、少なくともシリーズインダクタを含む。フィルタ220Aの回路形式および回路定数は、フルブリッジ回路210から負荷114側を見たインピーダンスZinが、スイッチング周波数Fswならびに3次高調波3Fswおよび5次高調波5Fswにおいて誘導性となるように設計される。
【0038】
図6(a)~(d)は、フィルタ220Aの構成例を示す回路図である。上述のように、フィルタ220は、シリーズインダクタL3を含む。図6(a)のフィルタ220Aは、LCフィルタであり、シリーズインダクタL3に加えて、シャントキャパシタC3を含む。図6(b)のフィルタ220Aは、π型フィルタであり、シリーズインダクタL3に加えて、2個のシャントキャパシタC3,C4を含む。図6(c)のフィルタ220Aは、T型フィルタであり、2個のシリーズインダクタL3,L4と、シャントキャパシタC3を含む。図6(d)のフィルタ220Aは、シリーズインダクタL3のみを含む。
【0039】
図6(a)~(d)では、フィルタ220Aは、図5のインダクタL1に対して直列に設けられているが、インダクタL2に対して直列に設けてもよい。あるいは図6(a)~(d)のフィルタ220Aを、インダクタL1、L2それぞれに対して直列に設けてもよい。
【0040】
以上がレーザ装置100Aの構成である。
【0041】
図7は、フルブリッジ回路210から負荷114側を見たインピーダンスZinを示すスミスチャートである。スイッチング周波数Fswの基本波、3次高調波3Fsw、5次高調波5Fswのすべてにおいて、インピーダンスZinの虚部は正であり、即ち誘導性となっている。
【0042】
高周波電源200Aの動作を説明する。フルブリッジ回路210から負荷114側を見たインピーダンスが誘導性となることにより、電流遅れモードでの動作となり、ソフトスイッチングが可能となり、ハイサイドトランジスタMH1のドレイン電流Idsの時間変動成分dIds/dtが小さくなる。これにより、ローサイドトランジスタML1のゲートドレイン間容量Cgdを介した、ローサイドトランジスタMLのゲート容量の充電が抑制され、ゲート電圧Vgsの上昇を抑制できる。これにより、ローサイドトランジスタML1のゲート誤点弧を抑制できる。
【0043】
ローサイドトランジスタML1のゲート誤点弧を抑制することにより、貫通電流を防止できる。さらに、ゲート誤点弧に起因するゲート電圧Vgsの振動を抑制でき、ひいてはゲートソース間電圧が耐圧を超えるのを防止でき、信頼性を改善できる。
【0044】
図8は、実施形態2に係るレーザ装置100Bのブロック図である。レーザ装置100Bは、レーザ光源110および高周波電源200Bを備える。
【0045】
フィルタ220Bは、フルブリッジ回路210とトランスT1の一次巻線W1の間に挿入される。その他は、図5と同様である。
【0046】
図9(a)~(d)は、フィルタ220Bの構成例を示す回路図である。図9(a)~(c)のフィルタ220Bはそれぞれ、LC型、π型、T型である。図6(a)~(c)のフィルタ220Aが、対接地で構成されていたのに対して、図9(a)~(c)のフィルタ220Bのシャントキャパシタは、フローティングで接続される。
【0047】
実施形態2に係る高周波電源200Bによっても、実施形態1と同様の効果が得られる。
【0048】
(用途)
続いてレーザ装置100の用途を説明する。図10は、レーザ装置100を備えるレーザ加工装置300を示す図ある。レーザ加工装置300は、対象物302にレーザパルス304を照射し、対象物302を加工する。対象物302の種類は特に限定されず、また加工の種類も、穴空け(ドリル)、切断などが例示されるが、その限りではない。
【0049】
レーザ加工装置300は、レーザ装置100、光学系310、制御装置320、ステージ330を備える。対象物302はステージ330上に載置され、必要に応じて固定される。ステージ330は、制御装置320からの位置制御信号Sに応じて、対象物302を位置決めし、対象物302とレーザパルス304の照射位置を相対的にスキャンする。ステージ330は、1軸、2軸(XY)あるいは3軸(XYZ)であり得る。
【0050】
レーザ装置100は、制御装置320からのトリガ信号(励振信号)Sに応じて発振し、レーザパルス306を発生する。光学系310は、レーザパルス306を対象物302に照射する。光学系310の構成は特に限定されず、ビームを対象物302に導くためのミラー群、ビーム整形のためのレンズやアパーチャなどを含みうる。
【0051】
制御装置320は、レーザ加工装置300を統括的に制御する。具体的には制御装置320は、レーザ装置100に対して間欠的にトリガ信号Sを出力する。また制御装置320は、加工処理を記述するデータ(レシピ)にしたがってステージ330を制御するための位置制御信号Sを生成する。
【0052】
以上、本発明について、いくつかの実施形態をもとに説明した。これらの実施形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0053】
(変形例1)
図5の高周波電源200Aにおいて、フィルタ220AとインダクタL1,L2を一体に構成してもよい。
【0054】
(変形例2)
高周波電源200の用途は、レーザ装置に限定されない。たとえば1MHz以上のスイッチング周波数Fswで動作するフルブリッジ回路は、イオン注入装置などにも利用することができる。
【0055】
(変形例3)
実施形態では、フルブリッジ回路210をSiCで構成したがその限りでなく、その他のパワートランジスタで構成してもよい。
【0056】
実施形態は、本発明の原理、応用の一側面を示しているにすぎず、実施形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0057】
100 レーザ装置
200 高周波電源
210 フルブリッジ回路
220 フィルタ
T1 トランス
W1 一次巻線
W2 二次巻線
MH ハイサイドトランジスタ
ML ローサイドトランジスタ
110 レーザ光源
112 レーザ共振器
114 負荷
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10