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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023120049
(43)【公開日】2023-08-29
(54)【発明の名称】アンカー穴養生閉塞キャップ
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/18 20060101AFI20230822BHJP
【FI】
E04G21/18 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022023228
(22)【出願日】2022-02-17
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1) 公開日 令和3年12月7日 公開場所 ヤマウ株式会社 佐賀工場(〒842-0302 佐賀県佐賀市三瀬村藤原2974) (2) 公開日 令和3年12月8日 公開場所 インフラテック株式会社 瀬高工場(〒835-0001 福岡県みやま市瀬高町廣瀬705) (3) 公開日 令和3年12月8日 公開場所 ヤマウ株式会社 福岡工場(〒811-1102 福岡県福岡市早良区東入部5丁目) その他9件
(71)【出願人】
【識別番号】591116885
【氏名又は名称】ジャパンライフ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101971
【弁理士】
【氏名又は名称】大畑 敏朗
(72)【発明者】
【氏名】岡田 晃大
(72)【発明者】
【氏名】谷村 茂雄
【テーマコード(参考)】
2E174
【Fターム(参考)】
2E174AA03
2E174BA02
2E174CA38
2E174EA04
(57)【要約】
【課題】アンカー穴を簡単に閉塞して保護し、アンカーロッドの錆び止めを行うことができるアンカー穴養生閉塞キャップを提供する。
【解決手段】アンカー穴養生閉塞キャップ10は、コンクリート製品に埋め込まれたアンカーロッドの吊り上げ用のフランジ部1bが露出されるようにコンクリート製品に形成されたアンカー穴を閉塞して保護するアンカー穴養生閉塞キャップであって、フランジ部1bの外側に配置される連結部12およびアンカー穴を覆うアウターキャップ13を備える閉塞具本体11と、フランジ部1bに係合する係合突起26が内面に設けられた円筒部22を備え、連結部12とフランジ部1bとの間で締結されるゴム製のインナーキャップ21と、アウターキャップ13に設けられ、アウターキャップ13とコンクリート製品の表面との間をシールする止水リング16とを有する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート製品に埋め込まれたアンカーロッドの吊り上げ用の頭部が露出されるように前記コンクリート製品に形成されたアンカー穴を閉塞して保護するアンカー穴養生閉塞キャップであって、
前記頭部の外側に配置される連結部および前記アンカー穴を覆うアウターキャップを備える閉塞具本体と、
前記頭部に係合する係合突起が内面に設けられた円筒部を備え、前記連結部と前記頭部との間で締結されるゴム製のインナーキャップと、
前記アウターキャップに設けられ、前記アウターキャップと前記コンクリート製品の表面との間をシールする止水リングと、
を有することを特徴とするアンカー穴養生閉塞キャップ。
【請求項2】
前記連結部の外側に嵌合される嵌合部、および前記インナーキャップの端面に対向する押さえ片を備える押さえ部材を有する、
ことを特徴とする請求項1記載のアンカー穴養生閉塞キャップ。
【請求項3】
前記押さえ部材の前記嵌合部を前記連結部に嵌合させるときに、前記連結部に形成された切欠き部に進入する位置決めガイドを前記押さえ部材に設けた、
ことを特徴とする請求項2記載のアンカー穴養生閉塞キャップ。
【請求項4】
前記連結部の外面に形成された係合溝に係合するロック爪を前記押さえ部材に設けた、 ことを特徴する請求項2または3記載のアンカー穴養生閉塞キャップ。
【請求項5】
前記止水リングの内周面に突き当てられる位置決め突起を前記アウターキャップに一体に設けた、
ことを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載のアンカー穴養生閉塞キャップ。
【請求項6】
前記インナーキャップに前記頭部を挿入するときに、前記頭部と前記インナーキャップとの間の空気を外部に排出する空気抜き部を前記インナーキャップに設けた、
ことを特徴とする請求項1~5の何れか一項に記載のアンカー穴養生閉塞キャップ。
【請求項7】
前記空気抜き部は、前記インナーキャップの前記円筒部に形成されたスリットである、
ことを特徴とする請求項6記載のアンカー穴養生閉塞キャップ。
【請求項8】
前記アウターキャップに突き当てられる端壁部を前記インナーキャップに設け、前記アウターキャップに設けられた接合突起が挿入される接合孔を前記端壁部に設けた、
ことを特徴とする請求項1~7の何れか一項に記載のアンカー穴養生閉塞キャップ。
【請求項9】
前記アウターキャップの外周部に取り外し操作片を外方に突出させて設けた、
ことを特徴とする請求項1~8の何れか一項に記載のアンカー穴養生閉塞キャップ。
【請求項10】
前記取り外し操作片を前記アウターキャップの中心部を介して相互に対向させて2つ設けた、
ことを特徴とする請求項9記載のアンカー穴養生閉塞キャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート製品を吊り上げるためのアンカーロッドが埋め込まれたアンカー穴を閉塞して保護するアンカー穴養生閉塞キャップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
PC板(プレキャストコンクリート)などのコンクリート製品には、コンクリート製品を吊り上げるためのアンカーロッドが埋設されるものがある。アンカーロッドにワイヤを引っ掛けてコンクリート製品を吊り上げることにより、現場でのコンクリート製品の施工を容易に行うことができる。しかし、アンカーロッドの先端の頭部がコンクリート製品の表面から飛び出していると、アンカーロッドの頭部が他のコンクリート製品を毀損したり、施工現場での作業者の邪魔になったりする。そこで、コンクリート製品に、例えば半球状の穴(アンカー穴)を形成し、コンクリート製品に埋設されたアンカーロッドの頭部をアンカー穴に入り込ませている。
【0003】
ここで、アンカーロッドはコンクリート製品の吊り上げ施工時には必要になるが、現場に運搬するまではPC工場の屋外に設けられた製品ストックヤードにアンカーロッドはむき出しの状態であるためアンカー穴に雨水や埃が溜まったり、雨水が凍結したりする等により鋼製のアンカーロッドが錆びてしまいコンクリート製品にダメージを与える恐れがある。
【0004】
そこで、コンクリート製品の表面と同じ高さまでアンカー穴に板等を敷いたり、アンカー穴からコンクリート製品の外端まで延びる雨水流出用の溝を形成して雨水を排出したり、アンカー穴内にロープ等を垂らして溜まった雨水をサイフォン式に吸い上げて排出したりして、アンカーロッドを雨水、埃、凍結から保護することが行われている。
【0005】
なお、コンクリート製品をアンカーロッドで吊り上げる技術については、例えば特許文献1などに記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004-156376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のようなアンカー穴に板等を敷く等の手段ではアンカーロッドの防錆に対して何らの対策とはならない。このため、雨水や埃等が侵入し、さらに凍結などでアンカー穴の内部が凍ってしまいアンカーロッドを錆びさせることになる。このような課題は、擁壁などの底板面のみならず、垂直面や側面にアンカー穴が設けられる場合も同様である。さらに、上述したコンクリート製品の他に、梁、柱、ボックスカルバート等においても同様である。
【0008】
また、コンクリート製品は、強度が目標値に達するまで、あるいは出荷待ちのため屋外で保管、管理されている。この間、アンカー穴をそのままで放置しておくと、アンカー穴に溜まった雨水や有為の凍結等によりアンカーロッドが錆びてしまう。そこで、アンカー穴に防錆処理を施す必要があるが、保管、管理されている大量のコンクリート製品に対して防錆処理を行うことは長時間の作業になり人手も必要である。
【0009】
さらに、製造後のコンクリート製品を、通常は屋外の指定場所に設置しているが、必要が生じた時にアンカーロッドを使用して吊り上げて移動する場合がある。製造後のこのような移動を想定して脱型の完了したコンクリート製品のアンカー穴を閉塞するには、後日のアンカーロッドの使用の際にアンカー穴を簡単に空けることができるように工夫しながら行わなければならないので、非常に手間がかかってしまう。
【0010】
本発明は、上述の技術的背景からなされたものであって、アンカー穴の閉塞および保護を簡単に行うことができるアンカー穴養生閉塞キャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の本発明のアンカー穴養生閉塞キャップは、コンクリート製品に埋め込まれたアンカーロッドの吊り上げ用の頭部が露出されるように前記コンクリート製品に形成されたアンカー穴を閉塞して保護するアンカー穴養生閉塞キャップであって、前記頭部の外側に配置される連結部および前記アンカー穴を覆うアウターキャップを備える閉塞具本体と、前記頭部に係合する係合突起が内面に設けられた円筒部を備え、前記連結部と前記頭部との間で締結されるゴム製のインナーキャップと、前記アウターキャップに設けられ、前記アウターキャップと前記コンクリート製品の表面との間をシールする止水リングと、を有することを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の本発明のアンカー穴養生閉塞キャップは、請求項1記載の発明において、前記連結部の外側に嵌合される嵌合部、および前記インナーキャップの端面に対向する押さえ片を備える押さえ部材を有する、ことを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の本発明のアンカー穴養生閉塞キャップは、請求項2に記載の発明において、前記押さえ部材の前記嵌合部を前記連結部に嵌合させるときに、前記連結部に形成された切欠き部に進入する位置決めガイドを前記押さえ部材に設けた、ことを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の本発明のアンカー穴養生閉塞キャップは、請求項2または3に記載の発明において、前記連結部の外面に形成された係合溝に係合するロック爪を前記押さえ部材に設けた、ことを特徴する。
【0015】
請求項5に記載の本発明のアンカー穴養生閉塞キャップは、請求項1~4の何れか一項に記載の発明において、前記止水リングの内周面に突き当てられる位置決め突起を前記アウターキャップに一体に設けた、ことを特徴とする。
【0016】
請求項6に記載の本発明のアンカー穴養生閉塞キャップは、請求項1~5の何れか一項に記載の発明において、前記インナーキャップに前記頭部を挿入するときに、前記頭部と前記インナーキャップとの間の空気を外部に排出する空気抜き部を前記インナーキャップに設けた、ことを特徴とする。
【0017】
請求項7に記載の本発明のアンカー穴養生閉塞キャップは、請求項6記載の発明において、前記空気抜き部は、前記インナーキャップの前記円筒部に形成されたスリットである、ことを特徴とする。
【0018】
請求項8に記載の本発明のアンカー穴養生閉塞キャップは、請求項1~7の何れか一項に記載の発明において、前記アウターキャップに突き当てられる端壁部を前記インナーキャップに設け、前記アウターキャップに設けられた接合突起が挿入される接合孔を前記端壁部に設けた、ことを特徴とする。
【0019】
請求項9に記載の本発明のアンカー穴養生閉塞キャップは、請求項1~8の何れか一項に記載の発明において、前記アウターキャップの外周部に取り外し操作片を外方に突出させて設けた、ことを特徴とする。
【0020】
請求項10に記載の本発明のアンカー穴養生閉塞キャップは、請求項9記載の発明において、前記取り外し操作片を前記アウターキャップの中心部を介して相互に対向させて2つ設けた、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、インナーキャップをアンカーロッドの頭部に嵌合することにより、アンカー穴はアウターキャップにより閉塞される。このように、インナーキャップを押し込む操作により簡単にアンカー穴を閉じて保護することができる。インナーキャップの内面には係合突起が設けられて、係合突起が弾性変形することにより、閉塞具本体アンカーロッドに確実に締結される。これにより、アンカーロッドは閉塞具本体により確実に閉塞されることから、アンカーロッドが錆びることが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】コンクリート製品に埋め込まれたアンカーロッドを示す斜視図である。
図2】コンクリート製品に埋め込まれたアンカーロッドを示す断面図である。
図3】コンクリート製品に埋め込まれたアンカーロッドに吊り上げ用のカプラをセットした状態を示す断面図である。
図4】吊り上げられたコンクリート製品を示す斜視図である。
図5】一実施の形態であるアンカー穴養生閉塞キャップとコンクリート製品のアンカー穴を示す断面図である。
図6】アンカー穴養生閉塞キャップをアンカーロッドのフランジ部に装着した状態を示す断面図である。
図7】アンカー穴養生閉塞キャップの分解斜視図である。
図8】閉塞具本体の内面を示す平面図である。
図9】閉塞具本体の正面図である。
図10図9の右側面図である。
図11】閉塞具本体の正面側の断面図である。
図12】閉塞具本体の側面側の断面図である。
図13】インナーキャップの内面を示す平面図である。
図14】インナーキャップの上面を示す平面図である。
図15図14の正面側の断面図である。
図16図14の側面側の断面図である。
図17】インナーキャップをフランジ部に嵌合した状態を示す断面図である。
図18】押さえ部材を上側から見た斜視図である。
図19図18の平面図である。
図20】押さえ部材の正面側の断面図である。
図21】押さえ部材の側面側の断面図である。
図22】押さえ部材の底面図である。
図23】アンカー穴養生閉塞キャップの内面側を示す斜視図ある。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一例としての実施の形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
【0024】
図1はコンクリート製品に埋め込まれたアンカーロッドを示す斜視図、図2はコンクリート製品に埋め込まれたアンカーロッドを示す断面図、図3はコンクリート製品に埋め込まれたアンカーロッドに吊り上げ用のカプラをセットした状態を示す断面図、図4は吊り上げられたコンクリート製品を示す斜視図である。
【0025】
図1および図2に示すアンカーロッド1は、コンクリート製品Pの吊り上げに使用される鋼製のものであり、柱状のロッド本体1aの露出した一方端に形成されてカプラ2が引っ掛けられるフランジ部(頭部)1bと、ロッド本体1aの他方端に形成されて引き抜き方向の抵抗力を増すためのプレート部1cとからなる。そして、アンカーロッド1は、コンクリート製品Pに形成された半球形のアンカー穴PHに、フランジ部1bが当該アンカー穴PH内に突出した状態で埋め込まれ、前述のように、アンカーロッド1の吊り上げ用のフランジ部1bはアンカー穴PHに露出される。
【0026】
図3に示すように、アンカーロッド1のフランジ部1bにカプラ2を引っ掛ければ、図4に示すように、コンクリート製品PをワイヤWで吊り上げることができる。
【0027】
このように、コンクリート製品Pの施工が完了したならば、図5に示すアンカー穴養生閉塞キャップ10がアンカー穴PHを閉塞して雨水、埃、凍結から保護するためにフランジ部1bに締結される。図6は、アンカー穴養生閉塞キャップ10がアンカー穴PHを閉塞した状態を示し、図7はアンカー穴養生閉塞キャップ10の分解斜視図である。
【0028】
図5図7に示すように、アンカー穴養生閉塞キャップ10は閉塞具本体11を有している。閉塞具本体11は、フランジ部1bの外側に配置される連結部12と、アンカー穴PHを覆う略円板形状のアウターキャップ13とを備え、合成樹脂により一体に成形されている。閉塞具本体11およびそれを構成する部材の上下の位置関係については、図6に示す状態を基準として説明する。
【0029】
図8は閉塞具本体11の内面を示す平面図であり、図9は閉塞具本体11の正面図であり、図10図9の右側面図であり、図11は閉塞具本体11の正面側の断面図であり、図12は閉塞具本体の側面側の断面図である。
【0030】
閉塞具本体11のアウターキャップ13はアンカー穴PHの開口部の径よりも大径の円板形状である。一方、連結部12は、全体的に円筒形状であり、アウターキャップ13の内面から突出している。連結部12には相互に対向するように切欠き部14が形成され、相互に対向する2つの連結片15を有している。アウターキャップ13の内面には、止水リング16が装着される。止水リング16はアンカー穴PHの開口部よりも大径であり、アウターキャップ13とコンクリート製品Pの表面との間をシールする。
【0031】
止水リング16は、発泡性の粘着止水材、詳しくは、合成ゴムEPDMの混和物を発泡させた応力の小さい圧縮容易な環状のシール(止水)材により形成されており、アウターキャップ13に粘着される粘着材が止水リング16の装着面に設けられたものである。具体的には、本実施の形態の止水リング16には、ソフトプレン工業株式会社製のゴムスポンジであるルシーラ(商品名)が用いられている。但し、止水リング16としては、本実施の形態で用いられた製品に限定されるものではなく、シール性を有して圧縮容易な合成ゴムの発泡体からなり、装着面に粘着材が設けられたものであればよい。
【0032】
なお、止水リング16を位置決めするために、また、後述するように、閉塞具本体11をフランジ部1bから取り外すときのアウターキャップ13の曲げ強度向上を図るために、2つの位置決め突起17がアウターキャップ13の内面に設けられている。位置決め突起17は、止水リング16の内周面の半径に対応した径の円弧形状であり、図8に示すように、同一半径の円周の位置に配置されている。位置決め突起17は円弧形状の2つにより形成されているが、リング状の突起としてもよい。
【0033】
アンカー穴養生閉塞キャップ10はインナーキャップ21を有している。インナーキャップ21は、図5図7に示すように、アウターキャップ13の連結部12の内側に挿入される円筒部22と、円筒部22の一端に設けられた端壁部23とを有し、合成ゴム製である。本実施の形態において、ゴムとしては、硬度が50度のCR(クロロプレンゴム)が使用されている。なお、ゴムの硬度としては、45~60度の範囲のものを使用することが好ましい。
【0034】
図13はインナーキャップ21の内面つまり下側面を示す平面図であり、図14はインナーキャップ21の上面を示す平面図であり、図15図14の正面側の断面図であり、図16図14の側面側の断面図であり、図17はインナーキャップ21をフランジ部1bに嵌合した状態を示す断面図である。
【0035】
インナーキャップ21の端壁部23には、接合孔24が形成されており、図5および図6に示すように、インナーキャップ21が連結部12の内側に組み込まれたときに、接合孔24にはアウターキャップ13の内面に突出して設けられた接合突起18が挿入され、端壁部23の外面はアウターキャップ13の内面に設けられた突き当て面20に突き当てられる。図13および図15に示すように、インナーキャップ21の円筒部22には、開口端から端壁部23に向けて2つのスリット(空気抜き部)25が相互に対向した2カ所の位置に形成されている。スリット25は、インナーキャップ21の内部にフランジ部1bが挿入されるときに、インナーキャップ21の内部の空気を外部に排出する機能を有するとともに、インナーキャップ21の円筒部22が径方向外側に変形してフランジ部1bの挿入を容易にする機能を有している。
【0036】
但し、スリット25は円筒部22の1カ所のみに形成されていてもよい。また、スリット25が形成されていなくてもフランジ部1bがインナーキャップ21に挿入可能な程度に円筒部22が変形する場合には、スリット25に代えて、空気抜き部として例えば複数の空気抜き孔を円筒部22に形成して、インナーキャップ21内の空気を外部に排出する機能のみを持たせるようにしてもよい。
【0037】
円筒部22の内周面には、フランジ部1bに係合する係合突起26が設けられている。係合突起26は、円筒部22の中心軸に対して直角の方向に延びる複数本の筋状の突起により形成されている。インナーキャップ21は合成ゴム製であり、インナーキャップ21の内部にフランジ部1bが挿入されると、係合突起26と円筒部22は、閉塞具本体11の連結部12とフランジ部1bとの間で押し潰される。これにより、連結部12はインナーキャップ21を介してフランジ部1bに強く締結される。
【0038】
図5に示すように、連結部12の外側には押さえ部材31が嵌合される。押さえ部材31は、連結部12の外側に嵌合される円筒形状の嵌合部32と、インナーキャップ21の端面に対向する押さえ片33とを有している。
【0039】
図18は押さえ部材31を上側から見た斜視図であり、図19図18の平面図であり、図20は押さえ部材31の正面側の断面図であり、図21は押さえ部材31の側面側の断面図であり、図22は押さえ部材31の底面図である。
【0040】
嵌合部32の内周面には2つの位置決めガイド34が嵌合部32の中心軸に沿う方向に延びて設けられている。それぞれの位置決めガイド34は、嵌合部32の一方端の押さえ片33側の幅が大きく、他方端の側の幅が狭くなるように、幅方向両側が傾斜辺となっている。それぞれの位置決めガイド34は、押さえ部材31の嵌合部32を連結部12に嵌合させるときに切欠き部14に進入する。これにより、押さえ部材31の連結部12に対する回転方向が位置決めされる。
【0041】
押さえ部材31の他方端には、2つのロック爪35が径方向内方に突出して設けられている。それぞれのロック爪35は、押さえ部材31を回転させると、閉塞具本体11の連結片15の外面に形成された係合溝19に係合し、押さえ部材31の端面は、連結部12に形成された突き当て部36に突き当てられる。これにより、押さえ部材31は、閉塞具本体11に確実にロックされる。
【0042】
インナーキャップ21をアウターキャップ13に対して接着することも可能であり、インナーキャップ21を接着すれば、押さえ部材31を連結部12の外側に取り付けることは不要である。しかし、インナーキャップ21を接着することなく、インナーキャップ21が劣化したときに、押さえ部材31のロックを解除してアウターキャップ13から取り外すことにより、容易にインナーキャップ21を新品に交換することができる。
【0043】
図23は、アンカー穴養生閉塞キャップ10の内面側を示す斜視図ある。アンカー穴養生閉塞キャップ10は、図5に示された部材により組み立てられる。図23に示すように、アンカー穴養生閉塞キャップ10は、連結部12の内側にインナーキャップ21を挿入し、連結片15の外側に押さえ部材31を取り付けることによりインナーキャップ21は押さえ部材31により連結部12からの外れることが防止される。アウターキャップ13の内面に止水リング16を貼り付けることにより組み立てられる。
【0044】
このようにして組み立てられたアンカー穴養生閉塞キャップ10は、図6に示すように、アンカーロッド1のフランジ部1bにインナーキャップ21に嵌合させることにより、アンカーロッド1に装着されてアンカー穴PHは閉塞具本体11により覆われる。アウターキャップ13に装着された止水リング16はアウターキャップ13とコンクリート製品Pの表面との間で、押し潰されてアウターキャップ13とコンクリート製品Pの表面との間を確実にシールする。これにより、アンカー穴養生閉塞キャップ10で簡単にアンカー穴PHが閉塞されて保護され、アンカーロッド1の防錆処理を行うことができる。
【0045】
図5図7に示すように、アウターキャップ13の外周部には2つの取り外し操作片37が径方向外方に突出して設けられている。2つの取り外し操作片37は、アウターキャップ13の中心部を介して相互に対向して設けられている。閉塞具本体11がフランジ部1bに取り付けられると、コンクリート製品Pの表面との間で隙間38を形成するように、取り外し操作片37の先端部は薄肉部となっている。これにより、閉塞具本体11をフランジ部1bから取り外すときには、作業者は指を容易に取り外し操作片37とコンクリート製品Pの表面との間に挿入することができる。
【0046】
2つの取り外し操作片37は、アウターキャップ13の中心部を介して相互に対向しているので、一方の取り外し操作片37を指に引っ掛けて、そこを力点として取り外し操作片を引き上げると、他方の取り外し操作片37が支点となる。これにより、強い外力を加えることなく、容易にインナーキャップ21とフランジ部1bとが結合した状態を解除してアンカー穴養生閉塞キャップ10をコンクリート製品Pから取り外すことができる。
【0047】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本明細書で開示された実施の形態はすべての点で例示であって、開示された技術に限定されるものではない。すなわち、本発明の技術的な範囲は、前記の実施の形態における説明に基づいて制限的に解釈されるものでなく、あくまでも特許請求の範囲の記載に従って解釈されるべきであり、特許請求の範囲の記載技術と均等な技術および特許請求の範囲の要旨を逸脱しない限りにおけるすべての変更が含まれる。
【0048】
例えば、以上に説明した実施の形態におけるアンカー穴PHは半球形であるが半球形に限定されるものではなく、直方体形状等の他の形状であってもよい。また、アンカーロッド1はフランジ部1bを有し、フランジ部1bを頭部としてアンカー穴養生閉塞キャップ10を取り付けるようにしているが、フランジ部1bに限られず、アンカー穴PHに露出した端部がインナーキャップ21の係合突起26と係合可能な形状となっていれば、アンカー穴養生閉塞キャップを装着することができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明に係るアンカー穴養生閉塞キャップは、様々な形状のコンクリート製品に形成されたアンカー穴を閉塞して保護するために適用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 アンカーロッド
1a ロッド本体
1b フランジ部(頭部)
1c プレート部
2 カプラ
10 アンカー穴養生閉塞キャップ
11 閉塞具本体
12 連結部
13 アウターキャップ
14 切欠き部
15 連結片
16 止水リング
17 位置決め突起
18 接合突起
19 係合溝
21 インナーキャップ
22 円筒部
23 端壁部
24 接合孔
25 スリット(空気抜き部)
26 係合突起
31 押さえ部材
32 嵌合部
33 押さえ片
34 位置決めガイド
35 ロック爪
36 突き当て部
37 取り外し操作片
38 隙間
P コンクリート製品
PH アンカー穴
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23