(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023120050
(43)【公開日】2023-08-29
(54)【発明の名称】コイル部品、回路基板、電子機器およびコイル部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01F 27/29 20060101AFI20230822BHJP
H01F 41/04 20060101ALI20230822BHJP
H01F 27/06 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
H01F27/29 123
H01F27/29 F
H01F41/04 B
H01F27/29 P
H01F27/06 103
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022023229
(22)【出願日】2022-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 重幸
(72)【発明者】
【氏名】青木 秀憲
(72)【発明者】
【氏名】柏 智男
【テーマコード(参考)】
5E062
5E070
【Fターム(参考)】
5E062FF10
5E070BA03
5E070DB02
5E070EA01
5E070EA06
(57)【要約】
【課題】はんだが用いられた外部電極の厚みを抑制する。
【解決手段】一態様に係るコイル部品によれば、基体と、上記基体の内部および表面の少なくとも一方に設けられる導体と、上記基体の第1面上に設けられて第1方向へと延び、当該第1方向に直交する第2方向の幅が上記第1方向の複数個所で極大となり、当該第1方向で隣り合う2つの極大箇所に挟まれた箇所では当該第2方向の幅が極小となり、少なくとも表面がはんだからなり、上記導体と接続される外部電極と、を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と、
前記基体の内部および表面の少なくとも一方に設けられる導体と、
前記基体の第1面上に設けられて第1方向へと延び、当該第1方向に直交する第2方向の幅が前記第1方向の複数個所で極大となり、当該第1方向で隣り合う2つの極大箇所に挟まれた箇所では当該第2方向の幅が極小となり、少なくとも表面がはんだからなり、前記導体と接続される外部電極と、
を備えることを特徴とするコイル部品。
【請求項2】
前記外部電極は、前記幅が、前記第1方向の中央部分で、当該中央部分を挟んだ両側部分よりも狭いことを特徴とする請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記外部電極として、少なくとも一対の外部電極を備え、
前記一対の外部電極は、互いに前記第2方向に離間し、各々が前記第1方向へと延び、前記第1方向および前記第2方向に直交する第3方向の厚みが、前記極小となる箇所では、当該極小となる箇所に隣り合う前記極大となる箇所よりも薄いことを特徴とする請求項1または2に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記外部電極として、少なくとも一対の外部電極を備え、
前記一対の外部電極は、互いに前記第2方向に離間し、各々が前記第1方向へと延び、前記第2方向で互いの外側に位置する辺が前記第1方向に直線状に延びることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のコイル部品。
【請求項5】
前記基体は、前記第1面から当該基体の内部側へと窪んで前記第1方向へと延びる溝を有し、
前記外部電極は、前記極大となる箇所が前記溝における前記第1方向の一部を覆うことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のコイル部品。
【請求項6】
前記外部電極は、
前記第1方向へと延び、前記第2方向の幅が前記第1方向の複数個所で極大となり、当該第1方向で隣り合う2つの極大箇所に挟まれた箇所では当該第2方向の幅が極小となる下地層と、
前記下地層上に形成されるはんだ層と、
を備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のコイル部品。
【請求項7】
前記導体は、前記外部電極の前記極大となる箇所のはんだに接続されることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のコイル部品。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載のコイル部品と、
前記コイル部品が実装された基板と、
を備えることを特徴とする回路基板。
【請求項9】
請求項8に記載の回路基板を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項10】
請求項1から7のいずれか1項に記載のコイル部品を製造する製造方法であって、
前記第1面に、前記第1方向へと延び、前記第2方向の幅が前記第1方向の複数個所で極大となり、当該第1方向で隣り合う2つの極大箇所に挟まれた箇所では当該第2方向の幅が極小となる下地層を形成する工程と、
前記下地層上にはんだの溶融によりはんだ層を形成する工程と、
を有することを特徴とするコイル部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル部品、回路基板、電子機器およびコイル部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通信機器や車載電装機器などの電子機器は、高性能化が進み、これに合わせて電子部品は高い性能と共に小型化が求められている。また、携帯機器をはじめとする電子機器は、電力ロスの減少が求められ、このためコイル部品では、低抵抗なものが求められている。
【0003】
コイル部品においては、太い導線が用いられることで低抵抗化が図られる。太い導線と外部電極との接続形態としては、導線の端部が外部電極に少なくとも一部埋め込まれる形態が提案されている。
また、特許文献1には、導線と外部電極との接続形態として、平坦化された導線の端部が外部電極に重ねられて溶着される形態が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
導線の端部が外部電極に埋め込まれる場合、はんだで外部電極が形成されるとともに当該はんだで導線の端部が当該外部電極と接続される構造が考えられる。
しかしながら、はんだで外部電極が形成されると、はんだは溶融時に表面張力の大きさで厚みを持つため外部電極が厚くなってしまう。
【0006】
そこで、本発明は、はんだが用いられた外部電極の厚みを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係るコイル部品は、基体と、上記基体の内部および表面の少なくとも一方に設けられる導体と、上記基体の第1面上に設けられて第1方向へと延び、当該第1方向に直交する第2方向の幅が上記第1方向の複数個所で極大となり、当該第1方向で隣り合う2つの極大箇所に挟まれた箇所では当該第2方向の幅が極小となり、少なくとも表面がはんだからなり、上記導体と接続される外部電極と、を備える。
【0008】
また、本発明の一態様に係るコイル部品によれば、上記外部電極は、上記幅が、上記第1方向の中央部分で、当該中央部分を挟んだ両側部分よりも狭い。
また、本発明の一態様に係るコイル部品によれば、上記外部電極として、少なくとも一対の外部電極を備え、上記一対の外部電極は、互いに上記第2方向に離間し、各々が上記第1方向へと延びる上記第1方向および上記第2方向に直交する第3方向の厚みが、上記極小となる箇所では、当該極小となる箇所に隣り合う上記極大となる箇所よりも薄い。
【0009】
また、本発明の一態様に係るコイル部品によれば、上記外部電極として、少なくとも一対の外部電極を備え、上記一対の外部電極は、互いに上記第2方向に離間し、各々が上記第1方向へと延び、上記第2方向で互いの外側に位置する辺が上記第1方向に直線状に延びる。
また、本発明の一態様に係るコイル部品によれば、上記基体は、上記第1面から当該基体の内部側へと窪んで上記第1方向へと延びる溝を有し、上記外部電極は、上記極大となる箇所が上記溝における上記第1方向の一部を覆う。
【0010】
また、本発明の一態様に係るコイル部品によれば、上記外部電極は、上記第1方向へと延び、上記第2方向の幅が上記第1方向の複数個所で極大となり、当該第1方向で隣り合う2つの極大箇所に挟まれた箇所では当該第2方向の幅が極小となる下地層と、上記下地層上に形成されるはんだ層と、を備える。
また、本発明の一態様に係るコイル部品によれば、上記導体は、上記外部電極の上記極大となる箇所のはんだに接続される。
【0011】
また、本発明の一態様に係る回路基板は、いずれか上記コイル部品と、上記コイル部品が実装された基板と、を備える。
【0012】
また、本発明の一態様に係る電子機器は、上記回路基板を備える。
また、本発明の一態様に係るコイル部品の製造方法は、いずれかの上記コイル部品を製造する製造方法であって、上記第1面に、上記第1方向へと延び、上記第2方向の幅が上記第1方向の複数個所で極大となり、当該第1方向で隣り合う2つの極大箇所に挟まれた箇所では当該第2方向の幅が極小となる下地層を形成する工程と、上記下地層上にはんだ層を形成する工程と、を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、はんだが用いられた外部電極の厚みを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係るコイル部品を示す斜視図である。
【
図4】コイル部品の変形例を示す断面図および側面図である。
【
図7】外部電極の形成手順における準備段階を示す図である。
【
図8】外部電極の形成手順における第1層形成段階を示す図である。
【
図9】外部電極の形成手順における第2層形成段階を示す図である。
【
図11】第2実施形態のコイル部品における外部電極を示す図である。
【
図12】第3実施形態のコイル部品における外部電極を示す図である。
【
図13】第4実施形態のコイル部品における外部電極を示す図である。
【
図14】第5実施形態のコイル部品における外部電極を示す図である。
【
図15】第6実施形態のコイル部品における外部電極を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下の実施形態は本発明を限定するものではなく、実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の構成に必須のものとは限らない。実施形態の構成は、本発明が適用される装置の仕様や各種条件(使用条件、使用環境等)によって適宜修正または変更され得る。
【0016】
本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲によって画定され、以下の個別の実施形態によって限定されない。以下の説明に用いる図面は、各構成を分かり易くするため、実際の構造と縮尺および形状などを異ならせることがある。先に説明した図面に示された構成要素については、後の図面の説明で適宜に参照する場合がある。
【0017】
<コイル部品の構造>
図1は、本発明の一実施形態に係るコイル部品を示す斜視図であり、
図2は、コイル部品の断面図および側面図である。
図2には、
図1に示すA-A線に沿った断面および側面が示されている。
コイル部品1は、基板2aに実装されている。基板2aには、例えば2つのランド部3が設けられている。コイル部品1は、2つの外部電極12のそれぞれと基板2aの対応するランド部3とが実装用はんだで接合されることで基板2aに実装される。本発明の一実施形態による回路基板2は、コイル部品1と、このコイル部品1が実装された基板2aと、を備える。回路基板2は、様々な電子機器に備えられる。回路基板2を備えた電子機器としては、スマートフォン、タブレット、ゲームコンソール、自動車の電装品、サーバ、ボードコンピュータおよびこれら以外の様々な電子機器が想定される。
【0018】
コイル部品1は、インダクタ、トランス、フィルタ、リアクトルこれら以外の様々なコイル部品であってもよい。コイル部品1は、カップルドインダクタ、チョークコイルおよびこれら以外の様々な磁気結合型コイル部品であってもよい。コイル部品1は、例えば、DC/DCコンバータに用いられるインダクタであってもよい。コイル部品1の用途は、本明細書で明示されるものには限定されない。
【0019】
本明細書においては、文脈上別に解される場合を除き、方向の説明は、
図1の「L軸」方向、「W軸」方向および「H軸」方向を基準に用い、それぞれ、「長さ」方向、「幅」方向および「高さ」方向と称する。「高さ」方向については「厚さ」方向と呼ぶ場合もある。
【0020】
コイル部品1は、高さ方向の両端に第1の主面1a(上面1a)および第2の主面1b(底面1b)を有する。コイル部品1の上面1aおよび底面1bはいずれも、平坦な平面であってもよいし湾曲した湾曲面であってもよい。
本発明の一実施形態におけるコイル部品1は、基体11と外部電極12と外装部13と導体14とを有する。ここで基体11としては、ドラムコアと称される、基体11の表面に導体が巻き付けられる。また、コイル部品は、外装部13を設けないものであってもよい。
また、基体11が、導体14の全体を覆って内部に導体14が配置されるものであってもよい(図示省略)。
【0021】
基体11は、磁性材料又は非磁性材料から成る。基体11用の磁性材料としては、例えば、フェライトおよび軟磁性合金材を用いることができる。基体11用の非磁性材料としては、アルミナやガラスを用いることができる。基体11用の磁性材料は、各種の結晶質もしくは非晶質の合金磁性材料、または結晶質の材料と非晶質の材料とを組合せた材料であってもよい。
【0022】
基体11用の磁性材料として用いられ得る結晶質の合金磁性材料は、例えば、Fe(鉄)を主成分として50wt%以上、または85wt%以上含み、Si(シリコン)、Al(アルミニウム)、Cr(クロム)、Ni(ニッケル)、Ti(チタン)、およびZr(ジルコニウム)から成る群より選択される1以上の元素を含む結晶質の合金材料である。基体10用の磁性材料として用いられ得る非晶質の合金磁性材料は、例えば、Si(シリコン)、Al(アルミニウム)、Cr(クロム)、Ni(ニッケル)、Ti(チタン)、Zr(ジルコニウム)のいずれかに加えてB(ホウ素)又はC(炭素)のいずれか一方を含む非晶質の合金材料である。
【0023】
基体11用の磁性材料としては、Fe(鉄)および不可避不純物から成る純鉄を用いることができる。基体11用の磁性材料としては、Fe(鉄)および不可避不純物から成る純鉄と各種の結晶質もしくは非晶質の合金磁性材料とを組み合わせた材料を用いることもできる。基体11の材料は、本明細書で明示されるものに限られず、基体の材料として公知の任意の材料を用いることができる。
【0024】
基体11は、例えば、上述した磁性材料又は非磁性材料の粉末を潤滑剤と混合し、この混合材料を成形用の金型のキャビティに充填してプレス成形することにより圧粉体を作製し、この圧粉体を熱処理することにより作製される。また、基体11は、上述した磁性材料又は非磁性材料の粉末を樹脂、ガラス、又は絶縁性酸化物(例えば、Ni-Znフェライトやシリカ)と混合し、この混合材料を成形して熱処理することによっても作製できる。熱処理は、用いる原材料により200℃以下の温度で熱硬化させても、600℃以上あるいは1000℃以上の温度で焼結させてもよい。
【0025】
導体14は、導電性に優れた金属材料から成る。導体14用の金属材料としては、例えば、Cu(銅)、Al(アルミニウム)、Ni(ニッケル)、もしくはAg(銀)のうちの1以上の金属、又はこれらの金属のいずれかを含む合金が用いられ得る。導体14の表面には絶縁被膜が設けられていてもよい。導体14は、基体11の表面または内部に設けられる。導体14は、1つの基体11に対して1つ設けられてもよいし、あるいは導体14は、1つの基体11に対して複数設けられてもよい。
【0026】
本発明の一実施形態における基体11はドラムコアと称されるものであり、フランジ11cと巻芯11bを有する。巻芯11bは、導体14が周回するために適した任意の形状をとることができ、本実施形態では高さ方向Hに延びる。例えば、巻芯11bは、三角柱形状、五角柱形状、もしくは六角柱形状等の多角柱形状であってもよく、あるいは、巻芯11bは、円柱形状、楕円柱形状、もしくは截頭円錐形状であってもよい。
【0027】
フランジ11cは巻芯11bの両端に設けられている。本発明の一実施形態では、上面1a側と底面1b側とのそれぞれにフランジ11cが設けられている。フランジ11cは巻芯11bに対して垂直な方向に延伸している。
【0028】
本明細書において、「垂直」、「直交」、および「平行」という用語を使用するときには、数学的に厳密な意味で使用するものではない。例えば、フランジ11cが巻芯11bと垂直な方向に延伸するという場合、フランジ11cと巻芯11bとが為す角度は、90°であってもよいが概ね90°であればよい。
【0029】
概ね90°の角度の範囲には、70°~110°、75°~105°、80°~100°、又は85°~95°の範囲内の任意の角度が含まれうる。「平行」、「直交」、「直線」、「平面」およびこれら以外の本明細書に含まれる数学的に厳密に解釈し得る用語についても、同様に、本発明の趣旨、文脈、および技術常識を考慮して、厳密な数学の意味よりも幅を持った解釈を取り得る。
【0030】
本発明の一実施形態において、導体14は、基体11の巻芯11bの外周に導線が巻き付けられて形成される。導線としては、例えば直径が0.05mm以上、または0.1mm以上、更には0.2mm以上といった太いものが用いられ、コイル部品1の抵抗は低い。導体14の端部14aはフランジ11cを迂回して底面1b側まで届き、外部電極12内に端部14aの少なくとも一部が埋め込まれて導体14と外部電極12とが接合される。
【0031】
外部電極12は、コイル部品1の底面1bに設けられ、長さ方向Lに延びた形状を有する。本発明の一実施形態において、コイル部品1は2端子タイプであるため外部電極12は2つ設けられている。コイル部品1が4端子タイプである場合などでは、外部電極12がより多く設けられてもよい。外部電極12の構造については後で詳述する。
コイル部品1には外装部13が設けられてもよい。外装部13が設けられる場合、外装部13は、2つのフランジ11cの間に収まるように導体14を覆う。外装部13は、外装部13を設けることでコイル部品1の外形寸法に影響しないように設けられる。
【0032】
外装部13は、例えば、2つのフランジ11cの間に樹脂を充填することにより形成される。外装部13は、樹脂又はフィラーを含有する樹脂から構成される。外装部13の材料としては、巻線タイプのコイル部品において巻線を被覆するために用いられる任意の樹脂材料が用いられ得る。フィラーとしては、磁性材料又は非磁性材料が用いられ得る。外装部13は、樹脂、フィラーなどを含む複合材料をディスペンサーなどにより導体14の外側を覆うように塗布し、樹脂成分を硬化することで形成される。
【0033】
外装部13は、樹脂以外の材料から形成されてもよい。樹脂以外の外装部13の素材は、金属、セラミックス又はそれ以外の素材である。外装部13は、例えば、金属、セラミックス又はそれ以外の素材から成る箔、板、又はこれらの複合部材を2つのフランジ11cの間に設けることで形成される。
<変形例>
コイル部品1を構成する基体11などの形状は
図1、
図2に示された形状に限定されない。
図3は、コイル部品の変形例を示す斜視図であり、
図4は、
図3のコイル部品の断面図および側面図である。
図4には、
図3に示すB-B線に沿った断面および側面が示されている。
【0034】
図3、
図4に示す変形例のコイル部品1も、基体11と外部電極12と外装部13とを有し、内部に導体14を有する。変形例の場合、コイル部品1は直方体状の外形を有する。但し、コイル部品1の外面の一部が湾曲している場合や、コイル部品1の角部や稜線部が丸みを有している場合にも、かかる形状を「直方体形状」と称することがある。つまり、本明細書において「直方体」又は「直方体形状」という場合には、数学的に厳密な意味での「直方体」を意味するものではない。
【0035】
変形例における基体11は長さ方向Lに延びる巻芯11bを有し、フランジ11cは、長さ方向Lに延びた巻芯11bの両端に設けられている。また、変形例における外部電極12は、2つのフランジ11cそれぞれの底面1b側に設けられ、各外部電極12は幅方向Wに延びている。
【0036】
基体11および導体14は、積層によって一体で形成されてもよい。積層による形成では、上述した複合磁性材料からなる磁性シートが複数用意され、磁性シートの表面に、導体を形成するための平面状の導体パターンが例えば印刷などで作成される。導体パターンの形成には、めっきや、蒸着、ペーストの転写など印刷以外の手法が用いられてもよい。
【0037】
また、各導体パターンを接続する引き出し導体が形成される。引き出し導体は、例えば印刷、充填によって作られる。引き出し導体の印刷は導体パターンの印刷と同時に行われてもよく個別に行われてもよい。引き出し導体の形成にも、めっきや、蒸着、ペーストの転写など印刷以外の手法が用いられてもよい。導体パターンや引き出し導体は、底面1bにおける外部電極12の形成箇所に導体14の端部14aが位置するように形成される。
【0038】
その後、磁性シートと、導体パターンや引き出し導体が施された磁性シートとが重ねられ、圧着されて積層体が得られる。そして、得られた積層体が個片化され、熱処理が行われて、導体14を内蔵した基体11が得られる。積層体の熱処理では、600~850℃の熱処理で樹脂を熱分解で除去するとともに磁性材料を焼結させてもよい。
【0039】
<外部電極の構造>
図5は、
図1、
図2に示すコイル部品1における外部電極12の形状を模式的に示す図であり、
図6は、外部電極12の構造を示す拡大断面図である。
図5(A)にはコイル部品1の底面図が示され、
図5(B)には側面図が示されている。但し、
図5(B)の側面図では、基体11の底面1b付近のみが図示され、他の部分は図示が省略されている。
本発明の一実施形態において外部電極12は、コイル部品1の底面1bとなる基体11の表面に設けられた溝11a上に形成されている。溝11aは基体11の表面を長さ方向Lへと延び、外部電極12も底面1b上を長さ方向Lへと延びる。本実施形態では外部電極12が2つ設けられており、2つの外部電極12は互いに沿って同方向に延びる。また、2つの外部電極12は幅方向Wに互いに離間し、外部電極12の対となっている。
【0040】
外部電極12の平面形状は、幅方向Wのサイズが極小となった幅狭部分12aと、幅方向Wのサイズが極大となった幅広部分12bとを有する形状となっている。また、幅狭部分12aは、長さ方向Lに隣り合う2つの幅広部分12bに挟まれた箇所に位置する。一例として、幅狭部分12aは、長さ方向Lにおける外部電極12の中央部分に有り、幅広部分12bは、幅狭部分12aを長さ方向Lに挟んだ両側の2か所に有る。つまり、外部電極12の幅は、長さ方向Lの中央部分から長さ方向Lの両端に向かうにつれて大きくなっている。2か所の幅広部分12bにおける相互の距離は、外部電極12の長さ方向Lにおける全長に対して70%以上となっている。
【0041】
外部電極12の幅広部分12bは2か所に限定されない。外部電極12は、例えば幅広部分12bを3か所に有し、隣り合った幅広部分12bの間の2か所に幅狭部分12aを有してもよい。
本発明の一実施形態において、高さ方向Hにおける外部電極12の厚さは、幅広部分12bの付近で厚く、幅狭部分12aの付近で薄くなっている。つまり、外部電極12の厚さは、長さ方向Lの中央部分から長さ方向Lの両端に向かうにつれて厚くなっている。外部電極12の厚さが極大となる箇所同士の距離は、外部電極12の長さ方向Lにおける全長に対して60%以上となっている。
【0042】
外部電極12の厚さが極大となる箇所が、1つの外部電極12に対して2か所存在する場合には、基板2a上への実装時にそれら2か所の極大箇所がランド部3に接触してコイル部品1の姿勢を保つ。このため、基板2aへの実装時においては、コイル部品1における高さ方向Hまたは幅方向Wの位置精度が高くなり、コイル部品1が安定した姿勢で実装される。
図6に示すように、外部電極12は、基体11の表面に設けられた第1層12cと、第1層12cに設けられた第2層12dとを有する。外部電極12は、導電性に優れた金属材料から成る。
【0043】
<外部電極の形成>
ここで、外部電極12の形成手順について説明する。
図7~
図9は、外部電極12の形成手順を示す図である。
図7~
図9の各図には、
図5と同様に底面図(A)と側面図(B)が示されている。
外部電極12の形成の準備段階として、
図7に示すように、溝11aを有した基体11が用意される。そして、
図8に示すように、基体11の溝11aに沿った箇所に第1層12cが形成される。
【0044】
第1層12cの金属材料としては、例えばAg(銀)、Cu(銅)、Ti(チタン)、Cr(クロム)、Ni(ニッケル)、Sn(錫)のいずれか、またはいずれかの組み合わせ、またはいずれかの合金が用いられる。第1層12cは、例えば、ディップ(浸漬)による金属材料の塗布、スパッタリング法、あるいは蒸着法により形成され、例えばマスクにより、外部電極12の平面形状と同等の平面形状に形成される。
【0045】
第1層12cは、基体11の表面に0.5~10μmの厚みで形成される。第1層12cの厚さは、平面形状の外周部分を除いてほぼ均等であり、厚さの差は平均厚さの10%以内に収まる。第1層12cは、第2層12dと接触する面にAg(銀)、Cu(銅)またはNi(ニッケル)を含んでいることが望ましい。
【0046】
第1層12cに対し、
図9に示すように第2層12dが形成される。第2層12dの金属材料は、Sn(錫)を主成分とし、例えば、90wt%以上を含み、Sn(錫)以外の成分として、Ag(銀)、Cu(銅)、Bi(ビスマス)のいずれかを含んでいる。第2層12dの金属材料は250℃以下の温度で溶融するものであり、一般的には溶融はんだと称される。
【0047】
第2層12dは、溶融されて液状となった溶融はんだが第1層12cの表面に沿って濡れ広がることによって形成される。このとき、液状の溶融はんだの表面張力により、幅広部分12bの付近では他の部分よりも第2層12dが厚くなる。その結果として、幅狭部分12aの付近では第2層12dが薄くなり、外部電極12の全体としての厚さも抑制される。
また、複数の幅広部分12bそれぞれの付近で第2層12dが厚くなることにより、上述したように、コイル部品1における実装時の姿勢が安定する。
【0048】
ここで、コイル部品の比較例について説明する。
図10は、比較例のコイル部品1‘を示す図である。
図10(A)には底面図が示され、
図10(B)には側面図が示されている。
比較例のコイル部品1‘は、幅方向Wのサイズが長さ方向Lで均等な外部電極12’を有する。比較例における外部電極12’も溶融はんだで形成され、表面張力によって長さ方向Lの中央部分で厚さが最大となっている。
比較例では、表面張力による厚さの増大により、外部電極12’全体としての厚さも抑制が難しく、基板2aへの実装時におけるコイル部品1‘の高さを抑制することも難しい。また、比較例では、基板2aへの実装時におけるコイル部品1‘の姿勢は、
図10(B)に示すように不安定となり、コイル部品1‘が傾いた姿勢で実装される虞がある。
本発明の一実施形態における外部電極12では、幅狭部分12aを間に挟んだ幅広部分12bが複数形成されていることで、幅が均等な外部電極12’に比べて厚さが薄くなる。幅広部分12bの数が2つより多い場合でも、外部電極12は幅が均等な外部電極12’に比べて厚さが薄くなる。なお、外部電極12が十分に薄くなるために、幅狭部分12aと幅広部分12bとの幅の比率や具体的な形状などが適宜に選択される。
【0049】
図5~
図9を参照したコイル部品1の説明に戻る。 本発明の一実施形態における外部電極12は基体11の溝11a上に設けられるため、コイル部品1の底面1bからの突出が低く抑えられ、コイル部品1における実装時の高さも抑制される。
【0050】
第1層12cの溶融はんだが液状である間に、導体14の端部14aが溶融はんだ内に挿入される。これにより、導体14が外部電極12と接合される。導体14の端部14aは、例えば、外部電極12の幅広部分12bおよび厚みが極大の箇所の少なくとも一方に埋まっている。あるいは導体14の端部14aは、幅狭部分12aとなった中央部分を避けた箇所で外部電極12と接合される。この結果、外部電極12の厚さが抑制されつつ導体14と外部電極12とが確実に接合され、導体14と外部電極12との接続が安定する。従って、導体14として太い導線が用いられた場合であっても導体14と外部電極12との接合が容易かつ良好となる。はんだの厚みを薄くしても、幅広部分12bの箇所で接続することで接続部の強度を高めることができる。
【0051】
<他の実施形態>
以下、コイル部品の他の実施形態について説明する。以下の説明する他の実施形態は、外部電極の構造が異なっている点を除いて上記実施形態と同様であるため、以下では相違点に着目した説明を行い、重複説明を省略する。また、以下で参照する
図11~
図15の各図には、
図5と同様に底面図(A)と側面図(B)が示されている。
【0052】
図11は、第2実施形態のコイル部品100における外部電極102を示す図である。
第2実施形態のコイル部品100では、基体11の表面が平面状となっており、外部電極102が基体11の平面状の表面に形成される。第2実施形態における外部電極102の平面形状は、第1実施形態における外部電極12の平面形状と同様に、幅狭部分102aと幅広部分102bとを有する。このため、液状の溶融はんだの表面張力によって溶融はんだが幅狭部分102a側から幅広部分102b側へと引き寄せられる。
幅狭部分102aおよび幅広部分102bにおける幅の比率などの調整により、第2実施形態では外部電極102の厚さは長さ方向Lでほぼ均等になる。外部電極102の厚さが均等な第2実施形態でも、長さ方向Lの中央部分での厚さが抑制されるため、外部電極102の全体として厚さが抑制される。第2実施形態のコイル部品100は、基体11に溝11aが不要であるため製造が容易である。
【0053】
図12は、第3実施形態のコイル部品200における外部電極202を示す図である。
第3実施形態のコイル部品200では、第1実施形態と同様に基体11に溝11aが形成され、外部電極202は基体11の溝11aに沿って形成される。また、第3実施形態における外部電極202の平面形状は、第1実施形態における外部電極12の平面形状と同様に、幅狭部分202aと幅広部分202bとを有する形状である。このため、液状の溶融はんだの表面張力によって溶融はんだが幅狭部分202a側から幅広部分202b側へと引き寄せられ、高さ方向Hにおける外部電極202の厚さは、幅広部分202bの付近で厚く、幅狭部分202aの付近で薄くなっている。
【0054】
第3実施形態では、2つの外部電極202において互いの外側(即ち幅方向Wの外側)に位置する辺202cが直線状に延びている。つまり、2つの外部電極202は、互いの内側が、長さ方向Lの中央部分で幅方向Wの外側へと窪んでいる。外部電極202が互いの外側に直線状の辺202cを有することにより、基板2a上のランド部3に合わせた寸法設計が容易となる。
【0055】
2つの外部電極202が有する直線状の辺202cは互いに平行となっている。このため、基板2a上へコイル部品200が実装された場合には、ランド部3に対して外部電極202の辺202cの向きが揃えられて高い実装強度が得られる。即ち、外部電極202がランド部3と接触する部分が、長さ方向Lの全体に亘ってほぼ同等な接触状態となり、外部電極202とランド部3との接合にムラが無くなるため高い実装強度が得られる。
【0056】
図13は、第4実施形態のコイル部品300における外部電極302を示す図である。
第4実施形態のコイル部品300では、第2実施形態と同様に、基体11の表面が平面状となっており、外部電極302が基体11の平面状の表面に形成される。
第4実施形態における外部電極302の平面形状は、第3実施形態における外部電極202の平面形状と同様に、幅狭部分302aと幅広部分302bとを有する。このため、液状の溶融はんだの表面張力によって溶融はんだが幅狭部分302a側から幅広部分302b側へと引き寄せられる。
【0057】
幅狭部分302aおよび幅広部分302bにおける幅の比率など調整により、第4実施形態では外部電極302の厚さは長さ方向Lでほぼ均等になる。第4実施形態でも、長さ方向Lの中央部分での厚さが抑制されるため、外部電極302の全体として厚さが抑制される。第4実施形態のコイル部品300は、基体11に溝11aが不要であるため、第3実施形態に比べて製造が容易である。
【0058】
図14は、第5実施形態のコイル部品400における外部電極402を示す図である。
第5実施形態のコイル部品400では、第1実施形態と同様に基体11に溝11aが形成され、外部電極402は基体11の溝11aに沿って形成される。第5実施形態でも、外部電極402の平面形状は、幅狭部分402aと幅広部分402bとを有する形状である。但し、第5実施形態では、幅広部分402bの位置が外部電極402における長さ方向Lの両端となっている。このため、第5実施形態では、第1実施形態に較べて溶融はんだがより強く両端側に引き寄せられる。そして、第5実施形態では、外部電極402の厚さが極大となる箇所は、第1実施形態よりも両端側に位置することになり、幅狭部分402aでは厚さが第1実施形態よりも薄くなる。外部電極402の全体としての厚さも、第5実施形態では第1実施形態よりも抑制される。
【0059】
第5実施形態では、外部電極402の厚さが極大となる箇所同士の相互間距離が、第1実施形態よりも広い。このため、実装時におけるコイル部品400の姿勢がより安定することになる。
第5実施形態における2つの外部電極402は、第3実施形態と同様に、互いの外側(即ち幅方向Wの外側)に位置する辺402cが直線状に延びている。このため、第5実施形態のコイル部品400は実装強度が高い。
【0060】
図15は、第6実施形態のコイル部品500における外部電極502を示す図である。
第6実施形態のコイル部品500では、第2実施形態と同様に、基体11の表面が平面状となっており、外部電極502が基体11の平面状の表面に形成される。
第6実施形態における外部電極502の平面形状は、第5実施形態における外部電極402の平面形状と同様に、幅狭部分502aと幅広部分502bと直線状の辺502cとを有する。従って、第6実施形態のコイル部品500は、第5実施形態と同様に実装強度が高い。
第6実施形態では基体11に溝11aが無いが、第5実施形態と同様に溶融はんだが両端側に強く引き寄せられるため、外部電極502の厚さは、長さ方向Lの中央部分で極小となり、中央部分を挟んだ両側で極大となる。従って、第6実施形態のコイル部品500は、基体11に溝11aが無いために第5実施形態よりも製造が容易であり、かつ、第5実施形態と同様に実装時の姿勢が安定する。
【符号の説明】
【0061】
1、100、200、300、400、500 コイル部品
2 回路基板
2a 基板
3 ランド部
11 基体
11a 溝
12、102、202、302、402、502 外部電極
12a、102a、202a、302a、402a、502a 幅狭部分
12b、102b、202b、302b、402b、502b 幅広部分
202c、302c、402c、502c 直線状の辺
13 外装部
14 導体
14a 端部