IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本車輌製造株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-案内軌条式車両およびガイド装置 図1
  • 特開-案内軌条式車両およびガイド装置 図2
  • 特開-案内軌条式車両およびガイド装置 図3
  • 特開-案内軌条式車両およびガイド装置 図4
  • 特開-案内軌条式車両およびガイド装置 図5
  • 特開-案内軌条式車両およびガイド装置 図6
  • 特開-案内軌条式車両およびガイド装置 図7
  • 特開-案内軌条式車両およびガイド装置 図8
  • 特開-案内軌条式車両およびガイド装置 図9
  • 特開-案内軌条式車両およびガイド装置 図10
  • 特開-案内軌条式車両およびガイド装置 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023120080
(43)【公開日】2023-08-29
(54)【発明の名称】案内軌条式車両およびガイド装置
(51)【国際特許分類】
   B61B 13/00 20060101AFI20230822BHJP
   B61F 5/38 20060101ALI20230822BHJP
   F15B 11/08 20060101ALI20230822BHJP
   F15B 21/14 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
B61B13/00 M
B61F5/38 A
B61F5/38 B
F15B11/08 Z
F15B21/14 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022023283
(22)【出願日】2022-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】小林 弘毅
(72)【発明者】
【氏名】関戸 修剛
【テーマコード(参考)】
3D101
3H089
【Fターム(参考)】
3D101BA08
3D101BC02
3D101BC08
3D101BC16
3D101BC18
3H089BB10
3H089CC01
3H089DB44
3H089DB48
3H089DC02
3H089EE16
3H089EE24
3H089JJ12
(57)【要約】
【課題】接地車輪の転動を安定させることができる案内軌条式車両を提供すること。
【解決手段】案内車輪40a,40bよりも左右方向外側に設けられ、路面100で転動する接地車輪50a,50bを備える。これにより、案内軌条101の底面101a側に向けた案内車輪40a,40bの変位を接地車輪50a,50bによって規制できるので、案内軌条101の底面101aに案内車輪40a,40bが接触することを抑制できる。そして、案内軌条101の底面101aに比べ、状態が安定している(凹凸が少ない)路面100で接地車輪50a,50bを転動させることにより、接地車輪50a,50bの転動を安定させることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、その車体を支持し、前記車体を走行させる複数の走行車輪と、路面に形成される案内軌条に沿って前記車体の走行を案内するガイド装置と、を備え、
前記ガイド装置は、前記案内軌条の側壁で転動する案内車輪と、その案内車輪よりも左右方向外側に設けられ、前記路面で転動する接地車輪と、を備えることを特徴とする案内軌条式車両。
【請求項2】
前記接地車輪は、前記走行車輪よりも左右方向内側に配置されることを特徴とする請求項1記載の案内軌条式車両。
【請求項3】
前記ガイド装置は、左右方向に延びる軸と、その軸回りに回動可能に支持されるイコライザと、を備え、
前記軸よりも前方側および後方側に設けられる一対の前記接地車輪が前記イコライザに支持されることを特徴とする請求項1又は2に記載の案内軌条式車両。
【請求項4】
前記ガイド装置は、前記案内車輪および前記接地車輪を保持する保持部材と、その保持部材および前記車体を連結する駆動手段として構成される複動形の油圧シリンダと、その油圧シリンダのロッド側室に作動油を供給する第1油路と、前記油圧シリンダのヘッド側室に前記作動油を供給する第2油路と、その第2油路および前記第1油路を連通する連通油路と、その連通油路の連通状態を開閉する開閉弁と、を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の案内軌条式車両。
【請求項5】
前記ガイド装置は、前記連通油路よりも前記油圧シリンダ側の前記第2油路に配設される蓄圧器を備えることを特徴とする請求項4記載の案内軌条式車両。
【請求項6】
前記ガイド装置は、前記案内車輪および前記接地車輪を保持する保持部材と、その保持部材を前記車体に連結する連結部材と、を備え、
前記連結部材は、前記車体の上下方向において、前記車体から離隔する方向、及び、前記車体に近接する方向に前記保持部材を変位させることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の案内軌条式車両。
【請求項7】
前記接地車輪は、前記車体の前後方向に複数配設されることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の案内軌条式車両。
【請求項8】
車体と、その車体を支持し、前記車体を走行させる複数の走行車輪と、を備える案内軌条式車両に用いられるものであり、路面に形成される案内軌条に沿って前記車体の走行を案内するガイド装置であって、
前記案内軌条の側壁で転動する案内車輪と、その案内車輪よりも左右方向外側に設けられ、前記路面で転動する接地車輪と、を備えることを特徴とするガイド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、案内軌条式車両およびガイド装置に関し、特に、接地車輪の転動を安定させることができる案内軌条式車両およびガイド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
溝やレールとして構成される案内軌条によって走行軌道が案内される案内軌条式車両が知られている。例えば、特許文献1には、路面に凹設される溝状の保護軌道の側面(案内軌条の側壁)や、路面に立設するレール状の保護軌道の側面に水平方向から保護輪(案内車輪)を当接させることで走行軌道が案内される案内軌条式車両が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006―306334号公報(例えば、段落0041、図1,2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上述した従来の技術では、車両の走行時の振動などによって案内車輪が案内軌条の底面に接触する恐れがある。この接触を抑制するためには、案内軌条の底面と案内車輪との隔たりを大きくすれば良いが、その分、案内車輪の脱輪を抑制するために案内軌条の側壁を高く形成しなければならない。よって、案内軌条の施工コストが増大するという課題がある。
【0005】
この課題に対して本願出願人は、案内車輪よりも下方に突出する接地車輪を案内軌条の底面で転動させることにより、案内車輪と案内軌条の底面との接触を接地車輪によって規制する構成に想到した(本願出願時において未公知)。この構成であれば、案内軌条の底面と案内車輪との隔たりを小さくできるので、その分、案内軌条の側壁を低く形成できる。しかしながら、案内軌条の底面には、例えば各種の機器が埋設されることによって凹凸が存在することがあり、接地車輪の転動を安定させることができないという問題点が生じた。
【0006】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、接地車輪の転動を安定させることができる案内軌条式車両およびガイド装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために本発明の案内軌条式車両は、車体と、その車体を支持し、前記車体を走行させる複数の走行車輪と、路面に形成される案内軌条に沿って前記車体の走行を案内するガイド装置と、を備え、前記ガイド装置は、前記案内軌条の側壁で転動する案内車輪と、その案内車輪よりも左右方向外側に設けられ、前記路面で転動する接地車輪と、を備える。
【0008】
本発明のガイド装置は、車体と、その車体を支持し、前記車体を走行させる複数の走行車輪と、を備える案内軌条式車両に用いられるものであり、路面に形成される案内軌条に沿って前記車体の走行を案内するガイド装置であって、前記案内軌条の側壁で転動する案内車輪と、その案内車輪よりも左右方向外側に設けられ、前記路面で転動する接地車輪と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の案内軌条式車両および請求項8記載のガイド装置によれば、案内車輪よりも左右方向外側に設けられ、路面で転動する接地車輪を備える。これにより、案内軌条の底面側に向けた案内車輪の変位を接地車輪によって規制できるので、案内軌条の底面に案内車輪が接触することを抑制できる。そして、案内軌条の底面に比べ、状態が安定している(凹凸が少ない)路面で接地車輪を転動させることにより、接地車輪の転動を安定させることができるという効果がある。
【0010】
請求項2記載の案内軌条式車両によれば、請求項1記載の案内軌条式車両の奏する効果に加え、次の効果を奏する。接地車輪は、走行車輪よりも左右方向内側に配置されるので、路面に対する接地車輪の接地位置を車体の左右方向中央側に近付けることができる。これにより、接地車輪を回転中心にした案内車輪の回転半径を小さくできるので、ガイド装置(車体)が傾き、接地車輪を回転中心にして案内車輪が浮き上がった場合に、その浮き上がりの量を小さくできる。よって、案内軌条の側壁から案内車輪が脱輪することを防止できるという効果がある。
【0011】
請求項3記載の案内軌条式車両によれば、請求項1又は2に記載の案内軌条式車両の奏する効果に加え、次の効果を奏する。ガイド装置は、左右方向に延びる軸と、その軸回りに回動可能に支持されるイコライザと、を備え、イコライザの回動軸よりも前方側および後方側に一対の接地車輪が設けられるので、それらの一対の接地車輪をイコライザの回動軸回りに揺動させることができる。これにより、路面に凹凸が存在する場合であっても、その凹凸に追従するようにして一対の接地車輪を転動させることができる。よって、路面に対する接地車輪の追従性を向上させることができると共に、各接地車輪に加わる負荷を均一化(分散)できるという効果がある。
【0012】
請求項4記載の案内軌条式車両によれば、請求項1から3のいずれかに記載の案内軌条式車両の奏する効果に加え、次の効果を奏する。ガイド装置は、案内車輪および接地車輪を保持する保持部材と、その保持部材および車体を連結する駆動手段として構成される複動形の油圧シリンダと、その油圧シリンダのロッド側室に作動油を供給する第1油路と、油圧シリンダのヘッド側室に作動油を供給する第2油路と、その第2油路および第1油路を連通する連通油路と、その連通油路の連通状態を開閉する開閉弁と、を備える。よって、開閉弁を閉じた状態でヘッド側室に作動油を供給することで油圧シリンダが伸長し、路面に接地車輪が接地する。
【0013】
この状態で開閉弁を開放すると、第1油路、第2油路および連通油路を介してロッド側室およびヘッド側室が連通されるが、ピストンロッドの断面積の分、ヘッド側室よりもロッド側室側の受圧面積が小さいため、ヘッド側室の内圧によってピストンロッドを伸長させる力を生じさせることができる。これにより、接地車輪を路面に押圧する方向の力を常に生じさせることができるので、路面に接地車輪を確実に追従させることができる。よって、案内軌条の側壁から案内車輪が脱輪することをより効果的に防止できるという効果がある。
【0014】
請求項5記載の案内軌条式車両によれば、請求項4記載の案内軌条式車両の奏する効果に加え、次の効果を奏する。ガイド装置は、連通油路よりも油圧シリンダ側の第2油路に配設される蓄圧器を備える。これにより、開閉弁を閉じた状態でヘッド側室に作動油を供給する(油圧シリンダを伸長させて接地車輪を路面に押圧させる)ことにより、第2油路を通過する作動油が蓄圧器に蓄積(蓄圧)される。この状態で、例えば路面の凹凸によって接地車輪を上方に突き上げる力が作用してピストンロッドが短縮した場合、ヘッド側室の作動油が蓄圧器に更に蓄積(蓄圧)される。
【0015】
一方、かかる突き上げ力が緩和されると、蓄圧器に蓄積された作動油がヘッド側室に供給されてピストンロッドが伸長し、路面に接地車輪が押圧される。よって、路面に凹凸が形成される場合であっても、路面に接地車輪を常に接地させた状態で転動させることができる。従って、案内軌条の側壁から案内車輪が脱輪することをより効果的に防止できるという効果がある。
【0016】
請求項6記載の案内軌条式車両によれば、請求項1から5のいずれかに記載の案内軌条式車両の奏する効果に加え、次の効果を奏する。案内車輪および接地車輪を保持する保持部材と、その保持部材を車体に連結する連結部材と、を備え、連結部材は、車体の上下方向において、車体から離隔する方向、及び、車体に近接する方向に保持部材を変位させるので、路面に凹凸が形成される場合であっても、その凹凸に追従させるようにして接地車輪を転動させることができる。よって、案内軌条の側壁から案内車輪が脱輪することを防止できるという効果がある。
【0017】
請求項7記載の案内軌条式車両によれば、請求項1から6のいずれかに記載の案内軌条式車両の奏する効果に加え、次の効果を奏する。接地車輪が車体の前後方向に複数配設されるので、路面に形成される凹部に一の接地車輪が嵌まり込もうとしても、他の接地車輪が路面に接地することで案内車輪の下方への変位を規制できる。よって、案内軌条の底面に案内車輪が接触することを抑制できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】(a)は、本発明の一実施の形態における車両の側面図であり、(b)は、図1(a)の矢印Ib方向視における車両の部分拡大正面図である。
図2】(a)は、図1(b)の矢印IIa方向視における車両の部分拡大側面図であり、(b)は、図2(a)のIIb-IIb線における車両の断面図である。
図3】(a)は、湾曲面からなる側壁に沿ってガイド装置が追従する状態を示す模式図であり、(b)は、変形例におけるガイド装置の部分拡大側面図である。
図4】車両の油圧回路を示した概略図である。
図5】油圧シリンダを伸長させる場合の油圧回路を示した概略図である。
図6】蓄圧器の内圧により接地車輪を路面に押圧させる場合の油圧回路を示した概略図である。
図7図6の状態から接地車輪を上方に突き上げる力が作用して油圧シリンダが短縮した場合の油圧回路を示した概略図である。
図8】油圧シリンダの内圧を開放させる場合の油圧回路を示した概略図である。
図9】内圧が開放された状態で油圧シリンダが短縮した場合の油圧回路を示した概略図である。
図10】油圧シリンダを短縮させる場合の油圧回路を示した概略図である。
図11】油圧シリンダを短縮させた状態を維持する場合の油圧回路を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。まず、図1及び図2を参照して、車両1の構成について説明する。図1(a)は、本発明の一実施の形態における車両1の側面図であり、図1(b)は、図1(a)の矢印Ib方向視における車両1の部分拡大正面図である。図2(a)は、図1(b)の矢印IIa方向視における車両1の部分拡大側面図であり、図2(b)は、図2(a)のIIb-IIb線における車両1の断面図である。なお、図1及び図2では、図面を簡素化するために、車両1を模式的に図示している。また、図2(a)では、路面100を2点鎖線で図示すると共に、連結部材20の一部を破断して図示している。また、図1及び図2の矢印U-D,L-R,F-Bは、車両1(ガイド装置10)の上下方向、左右方向、前後方向をそれぞれ示しており、後述する図3においても同様とする。
【0020】
図1及び図2に示すように、車両1は、路面100に設けられる案内軌条101に沿って走行し、乗客や貨物を輸送する案内軌条式車両である。車両1は、その車体2を支持すると共に車体2を走行させる複数の走行車輪3(図1参照)を備える。
【0021】
車両1は、走行車輪3を転動させる駆動装置(図示せず)を備え、走行車輪3の転動によって路面100を走行する。この車両1の走行を案内する案内軌条101は、底面101aと、その底面101aから立設する側壁101bとを備え、路面100に凹設される断面矩形の溝として形成される。案内軌条101に沿う車両1の走行は、前後方向に並ぶ一対のガイド装置10によって案内される。
【0022】
ガイド装置10は、車体2に連結される連結部材20と、その連結部材20の下部に接続される保持部材30と、その保持部材30に保持される案内車輪40a,40b及び接地車輪50a,50bと、を備える。案内車輪40a,40bは、上下方向に車軸を向ける車輪であり、接地車輪50a,50bは、左右方向に車軸を向ける車輪である。
【0023】
連結部材20は、車体2の下面に連結される角筒状の固定部21を備え、その固定部21の内周側に角筒状の摺動部22が挿入される。摺動部22の外周面と固定部21の内周面との間にはガイドレール23が設けられ、ガイドレール23は、摺動部22の正面および背面に各1基、摺動部22の左右両側の面に各2基の合計6基が配設される。これらの複数のガイドレール23は上下に延びており、固定部21(車体2)に対する摺動部22の相対変位がガイドレール23によって上下にガイドされる。
【0024】
固定部21及び摺動部22の内周側には、複動形の油圧シリンダ24(図2(a)参照)が設けられ、油圧シリンダ24の上端は車体2に固定され、下端は保持部材30に固定される。よって、この油圧シリンダ24の伸縮により、車体2に対する保持部材30の上下の相対変位が可能となり、かかる相対変位が連結部材20(固定部21及び摺動部22)によってガイドされる。
【0025】
保持部材30は、連結部材20(摺動部22)の下端部に接続される第1軸31を備え、この第1軸31に第1保持部32が支持される。第1保持部32は、第1軸31を挟んで車体2の前後方向に張り出して形成され、その張り出しの先端側に(車体2の前後方向で離隔して)一対の第2軸33が配設される(図2(b)参照)。この一対の第2軸33の各々に第2保持部34が回動可能に支持される。
【0026】
第2保持部34は、上面視においてH形に形成されるフレームであり、第2保持部34の4隅には、案内車輪40a,40bを軸支するための環状の軸受け41が固定される。案内車輪40a,40bは、第2保持部34よりも左右方向外側(案内軌条101の側壁101b側)に突出しており、車両1の走行(前進または後進)時には、この案内車輪40a,40bが案内軌条101の側壁101bに転動する。これにより、車両1は、走行車輪3を操舵することなく、案内軌条101の延設方向に沿った走行が可能となる。
【0027】
前後一対の第2保持部34には、それぞれ4個の案内車輪40a,40bが保持されており、車体2の前後方向に沿う複数(本実施形態では、4個)の案内車輪40a,40bを1列とすると、車体2の左右方向中央を挟んで2列が設けられる。これらの案内車輪40a,40bのうち、左右方向における一側(図2(b)の上側)に位置するものが案内車輪40aであり、他側(図2(b)の下側)に位置するものが案内車輪40bである。このように、複数の案内車輪40a,40bを案内軌条101の側壁101bで転動させることにより、案内軌条101に沿って車両1を安定的に走行させることができる。
【0028】
第2保持部34の上部からは、一対のブラケット34aが左右両側に突出している。ブラケット34aの先端側の下面にフォーク34b(図2(a)参照)が固定され、このフォーク34bには接地車輪50a,50bの車軸51が回転可能に支持される。この接地車輪50a,50bのうち、左右方向における一側(図2(b)の上側)に位置するものが接地車輪50aであり、他側(図2(b)の下側)に位置するものが接地車輪50bである。
【0029】
接地車輪50a,50bは、案内車輪40a,40bよりも上方、且つ左右方向外側に配置されており、車両1の走行時には、路面100で接地車輪50a,50bが転動する。この路面100に対する接地車輪50a,50bの接地により、案内軌条101の底面101a側に向けた案内車輪40a,40b(保持部材30)の変位を規制できるので、案内車輪40a,40bが案内軌条101の底面101aに接触することを抑制できる。そして、案内軌条101の底面101aに比べ、状態が安定している(凹凸が少ない)路面100で接地車輪50a,50bを転動させることにより、接地車輪50a,50bの転動を安定させることができる。
【0030】
また、接地車輪50a,50bは、前後方向に沿って複数(本実施の形態では、1基のガイド装置10につき2個)が並べて設けられるので、例えば、路面100に凹部が形成され、その凹部に前方側の接地車輪50a,50bが嵌まり込もうとしても、それよりも後方側に位置する接地車輪50a,50bを路面100に接地させることができる。これにより、保持部材30(案内車輪40a,40b)の下方への変位を規制できるので、路面100に形成される凹部に接地車輪50a,50bが嵌まり込むことや、案内軌条101の底面101aに案内車輪40a,40bが接触することを抑制できる。
【0031】
ここで、車両1の走行時の振動などによってガイド装置10(車体2)が左右に傾くことがある。このような傾きが生じた場合、例えば左右方向一側(図1(b)の左側)に位置する案内車輪40aは、左右方向他側(図1(b)の右側)に位置する接地車輪50bと路面100との接地位置Aを回転中心にして浮き上がる。この際に、例えば接地車輪50bと路面100との接地位置Aが案内車輪40aから離れている(接地位置Aが図1(b)に示す位置よりも右側に位置している)と、接地位置Aを中心にした案内車輪40aの回転半径が大きくなるため、ガイド装置10が傾いた時に案内車輪40aが大きく浮き上がり易くなる。つまり、接地車輪50bと路面100との接地位置Aが案内車輪40aから離れているほど、ガイド装置10が傾いた時に案内軌条101の側壁101bから案内車輪40aが脱輪し易くなる。
【0032】
これに対して本実施形態では、接地車輪50a,50bは、走行車輪3よりも左右方向内側に配置されるので、路面100に対する接地車輪50a,50bの接地位置を車体2の左右方向中央側(案内軌条101の近傍)に近付けることができる。即ち、図1(b)に示す接地車輪50bの接地位置Aを例にした場合には、その接地位置Aを案内車輪40a側に近付けることができるので、接地位置Aを回転中心にした案内車輪40aの回転半径を小さくできる。これにより、ガイド装置10が傾き、接地位置Aを回転中心にして案内車輪40aが浮き上がった場合に、その浮き上がりの量を小さくできる。よって、案内車輪40aが案内軌条101の側壁101bから脱輪することを防止できる。
【0033】
また、油圧シリンダ24の伸縮についての詳細な説明は後述するが、例えば油圧シリンダ24を伸長させることで接地車輪50a,50bを路面100に押さえ付けることができる。これにより、接地車輪50a,50bが路面100から浮き上がることを抑制できるので、路面100に接地車輪50a,50bを常に接地させた状態で転動させることができる。
【0034】
油圧シリンダ24の内圧を開放した場合には、摺動部22の摺動により、車体2に対する保持部材30の自由な相対変位(上下動)が可能となる。これにより、案内車輪40a,40b、接地車輪50a,50b(保持部材30)の自重により、路面100に接地車輪50a,50bを常に接地させた状態で転動させることができる。
【0035】
ここで、上記のように油圧シリンダ24を伸長させ、接地車輪50a,50bを路面100に押さえ付けて走行する場合、接地車輪50a,50bを路面100に確実に接地させられるものの、油圧による負荷が常に接地車輪50a,50bに作用するため、疲労の原因となる懸念がある。これに対し、油圧シリンダ24の内圧を開放して接地車輪50a,50bを常に接地させる場合、油圧による負荷は軽減されるものの、路面100の状況(例えば、路面100の傾斜)によっては接地車輪50a,50bが路面100から浮き、脱輪する懸念がある。
【0036】
そこで、直進が容易な箇所(例えば、路面100の直線部分など)では油圧シリンダ24の内圧を開放して接地車輪50a,50bを接地させる一方、直進が容易でない箇所(例えば、路面100の傾斜の変化が大きい部分など)では油圧シリンダ24を伸長させて接地車輪50a,50bを接地させることが好ましい。このような路面100の状況に応じて接地方法を使い分けることで、油圧回路や接地車輪50a,50b、更には油圧をかけるためのポンプ80(図4参照)や当該ポンプ80を駆動するモータ81(図4参照)の消耗を軽減させることができ、ひいてはメンテナンスの手間等をも軽減できる。
【0037】
このように、路面100に接地車輪50a,50bを常に接地させることにより、案内軌条101の底面101aから案内車輪40a,40bが浮き上がることを抑制できる。案内車輪40a,40bの浮き上がりを抑制することにより、案内軌条101の底面101aと案内車輪40a,40bとの隔たりを常に最小限に抑えることができると共に、案内軌条101の側壁101bから案内車輪40a,40bが脱輪することを防止できる。よって、その分、案内軌条101の側壁101bを低く形成できるので、案内軌条101の施工コストを低減できる。
【0038】
次いで、図3(a)を参照して、車両1がカーブを走行する(案内軌条101の側壁101bが湾曲している)場合について説明する。図3(a)は、湾曲する側壁101bに沿ってガイド装置10が追従する状態を示す模式図である。
【0039】
図3(a)に示すように、保持部材30の第1保持部32は、第1軸31によって連結部材20(図2(a)参照)の下端部に軸支されるので、案内軌条101に沿って車両1がカーブを走行する場合には、側壁101bに沿って案内車輪40a,40bが接触することで第1保持部32が第1軸31周りに回動する。これにより、接地車輪50a,50bが路面100で横滑りすることを抑制できるので、接地車輪50a,50bの摩耗による劣化を抑制できる。
【0040】
また、保持部材30の第2保持部34も第2軸33によって第1保持部32に軸支されるので、例えば保持部材30(第1保持部32及び第2保持部34)が第1軸31のみで軸支される場合に比べ、湾曲する側壁101bに案内車輪40a,40bが追従し易くなる。よって、案内軌条101に沿って車両1がカーブを走行する場合に、その走行を安定させることができる。
【0041】
次いで、図3(b)を参照して、ガイド装置10の変形例について説明するが、上述したガイド装置10と同一の部分には同一の符号を付してその説明を省略する。図3(b)は、変形例におけるガイド装置210の部分拡大側面図である。なお、図3(b)では、左右方向他側(図3(a)の下側)の接地車輪50bについて説明するが、同様の構成を左右方向一側(図3(a)の上側)の接地車輪50aに適用することは当然可能である。
【0042】
図3(b)に示すように、ガイド装置210のフォーク34bには、左右方向(図3(b)の紙面垂直方向)に延びる軸234bが設けられ、この軸234b回りにイコライザ234cが回動可能に支持される。イコライザ234cは、軸234bから前後の両側に延びるように設けられており、イコライザ234cの前部および後部(本実施形態では、軸234bを挟んだ両端側)には、接地車輪50bの車軸51がそれぞれ回転可能に支持されている。これにより、軸234b回りのイコライザ234cの回動によって前後一対の接地車輪50bを上下に(軸234b回りに)揺動させることができる。よって、路面100に凹凸が存在する場合であっても、その凹凸に追従するようにして一対の接地車輪50bを転動させることができる。よって、路面100に対する接地車輪50bの追従性を向上させることができると共に、各接地車輪50bに加わる負荷を均一化(分散)できる。
【0043】
次いで、図4を参照して、車両1(ガイド装置10)の油圧回路について説明する。図4は、車両1の油圧回路を示した概略図である。
【0044】
図4に示すように、油圧シリンダ24は、ロッド側室24a及びヘッド側室24bを区画するピストン24cと、そのピストン24cに接続されると共にロッド側室24aに配設されるピストンロッド24dと、を備えるシリンダであり、この油圧シリンダ24のピストンロッド24dが保持部材30に接続される。
【0045】
油圧シリンダ24に作動油を供給するための油圧回路は、作動油が貯留されるタンク60と、そのタンク60に接続される供給油路61及び返送油路62と、それら供給油路61及び返送油路62に接続される第1切換弁63と、その第1切換弁63に接続される第1油路64及び第2油路65と、それら第1油路64及び第2油路65のそれぞれに配設されるオペレートチェック弁66,76及び流量制御弁67,77と、それらオペレートチェック弁66,76及び流量制御弁67,77よりも油圧シリンダ24側に配設される内圧開放回路68と、その内圧開放回路68よりも油圧シリンダ24側で第1油路64及び第2油路65を連通する連通油路69と、その連通油路69よりも油圧シリンダ24側の第2油路65に配設される蓄圧器70と、を備える。また、供給油路61にはポンプ80が配設され、このポンプ80はモータ81の回転によって駆動する。なお、「油路」とは、車両1の油圧回路の各部を接続する配管である。
【0046】
第1切換弁63のタンク60側の一方のポートに供給油路61が接続され、他方のポートに返送油路62が接続される。また、第1切換弁63の油圧シリンダ24側の一方のポートに第1油路64が接続され、他方のポートに第2油路65が接続される。第1切換弁63は、それらの各油路の連通状態を切り替えるための第1位置63a、第2位置63b、及び第3位置63cを備える電磁弁である。
【0047】
第1位置63aは、供給油路61を第2油路65に連通させると共に返送油路62を第1油路64に連通させ、第2位置63bは、第1油路64及び第2油路65を返送油路62に連通させる。また、第3位置63cは、供給油路61を第1油路64に連通させると共に返送油路62を第2油路65に連通させる。
【0048】
第1油路64は、第1切換弁63と油圧シリンダ24のロッド側室24aとを接続する油路であり、第2油路65は、第1切換弁63と油圧シリンダ24のヘッド側室24bとを接続する油路である。
【0049】
第1油路64及び第2油路65に配設されるオペレートチェック弁66,76は、油圧シリンダ24側からタンク60側への作動油の返送を遮断する逆止弁66a,76aと、その逆止弁66a,76aに接続されるパイロット油路66b,76bと、から構成される。第1油路64のオペレートチェック弁66には、パイロット油路66bを介して第2油路65のパイロット圧が付与される一方、第2油路65のオペレートチェック弁76には、パイロット油路76bを介して第1油路64のパイロット圧が付与される。
【0050】
オペレートチェック弁66,76よりも油圧シリンダ24側には、流量制御弁67,77が配設される。流量制御弁67,77は、油圧シリンダ24側からタンク60側への作動油の返送を遮断する逆止弁67a,77aと、絞り弁67b,77bと、から構成される。
【0051】
内圧開放回路68は、流量制御弁67,77よりも油圧シリンダ24側で第1油路64及び第2油路65を接続する第3油路68aを備え、その第3油路68aには一対の逆止弁68b,68cが配設される。逆止弁68bは、第1油路64から第3油路68aへの作動油の流入を遮断する逆止弁であり、逆止弁68cは、第2油路65から第3油路68aへの作動油の流入を遮断する逆止弁である。
【0052】
第3油路68aよりも油圧シリンダ24側では、第1油路64及び第2油路65が第4油路68dによって接続され、第4油路68dには、一対の逆止弁68e,68fが配設される。逆止弁68eは、第4油路68dから第1油路64への作動油の流出を遮断する逆止弁であり、逆止弁68fは、第4油路68dから第2油路65への作動油の流出を遮断する逆止弁である。
【0053】
第3油路68a及び第4油路68dは、第5油路68g及び第6油路68hによって接続される。第5油路68g及び第6油路68hの一端(図4の下側の端部)は、逆止弁68bと逆止弁68cとの間で第3油路68aに接続され、第5油路68g及び第6油路68hの他端は、逆止弁68eと逆止弁68fとの間で第4油路68dに接続される。
【0054】
第5油路68gにはリリーフ弁68iが配設され、リリーフ弁68iは、所定の圧力を超えた場合に第4油路68dから第3油路68aに作動油をリリーフする。第6油路68hには第2切換弁68jが配設され、第2切換弁68jは、第6油路68hの内部の連通状態を開閉する電磁弁として構成される。
【0055】
また、第3油路68aは、第7油路68kによって返送油路62に接続されている。詳細は後述するが、この第7油路68kは、油圧シリンダ24を自由に伸縮させる際に、開状態の第2切換弁68jを介して油圧シリンダ24とタンク60との間で作動油を往来させるための油路である。
【0056】
連通油路69は、油圧シリンダ24のロッド側室24aとヘッド側室24bとを連通または遮断するための油路であり、その連通状態を開閉する開閉弁69aが配設される。
【0057】
蓄圧器70は、油圧シリンダ24のヘッド側室24bに供給される作動油の一部を蓄積するためのアキュムレータである。蓄圧器70は、気体が封入される容器70aと、その容器70a及び第2油路65の連通状態を開閉する開閉弁70bとから構成される。
【0058】
次いで、図5図11を参照して、油圧シリンダ24の伸縮動作について説明する。まず、図5を参照して、油圧シリンダ24を伸長させて接地車輪50a,50bを路面100に接地させる場合について説明する。図5は、油圧シリンダ24を伸長させる場合の油圧回路を示した概略図である。
【0059】
なお、図5では、矢印で示す部分は作動油が移動する主要な経路を、破線で示す部分は作動油の移動が遮断される主要な経路をそれぞれ示している。また、開閉弁69a及び開閉弁70bの開状態を白抜きで図示し、閉状態を黒塗りで図示しており、図6以降においても同様とする。
【0060】
図5に示すように、油圧シリンダ24を伸長させる場合には、第1切換弁63を第1位置63aに切換えた状態でポンプ80を駆動させる。これにより、第1切換弁63、オペレートチェック弁76、流量制御弁77(逆止弁77a)を介して(第2油路65を通って)作動油が油圧シリンダ24のヘッド側室24bに圧送される(経路A)。この時、第2切換弁68jを閉状態にすることにより、第2油路65、第4油路68d、及び第6油路68hを介したタンク60への作動油の返送が第2切換弁68jによって遮断される(経路B)。また、連通油路69の開閉弁69aも閉状態とすることにより、第2油路65から第1油路64への作動油の流入が開閉弁69aによって遮断される(経路C)。
【0061】
この場合に、蓄圧器70の開閉弁70bを開状態とすることにより、油圧シリンダ24のヘッド側室24bに供給される作動油の一部が蓄圧器70の容器70aにも供給され(経路D)、蓄圧器70に所定の圧力が蓄圧される。
【0062】
一方、ヘッド側室24bへの作動油の供給時に第2油路65の内圧が所定値に達すると、パイロット油路66bを介してパイロット圧が付与され(経路E)、第1油路64に配設される逆止弁66aが開状態となる。よって、油圧シリンダ24の伸長に伴ってロッド側室24aから押し出される作動油は、流量制御弁67(絞り弁67b)、オペレートチェック弁66(逆止弁66a)、第1切換弁63(第1位置63a)、及び、返送油路62を介してタンク60に返送される(経路F)。これにより、油圧シリンダ24の伸長が可能となり、接地車輪50a,50bが路面100に接地される。
【0063】
次いで、図6を参照して、接地車輪50a,50bを路面100に押圧させる場合について説明する。図6は、蓄圧器70の内圧により接地車輪50a,50bを路面100に押圧させる場合の油圧回路を示した概略図である。
【0064】
図6に示すように、図5の状態からポンプ80の駆動を停止させて第1切換弁63を第2位置63bに切換えた場合、第2油路65の逆止弁76aよりもタンク60側の第2油路65の圧力が低下する(作動油がタンク60に返送される)ことにより、パイロット油路66bを介したパイロット圧が低下し、第1油路64に配設される逆止弁66aが閉状態となる。よって、第1油路64及び第2油路65の双方において、油圧シリンダ24側からタンク60側への作動油の返送が逆止弁66a,76aによって遮断される(経路G)。
【0065】
この時、第2切換弁68jが閉状態であるので、第1油路64及び第2油路65から第2切換弁68jを介したタンク60への作動油の返送も遮断されている(経路H)。即ち、タンク60は、オペレートチェック弁66,76の逆止弁66a,76aや、閉状態にある第2切換弁68j等によってロッド側室24a及びヘッド側室24bから遮断される。
【0066】
かかる遮断状態において開閉弁69aを開状態とすることにより、ヘッド側室24bが第2油路65、連通油路69、及び第1油路64を介してロッド側室24aに連通され、蓄圧器70に蓄圧された圧力(容器70aから第2油路65への作動油の供給)によってロッド側室24a及びヘッド側室24bが加圧される(経路I)。この場合、ロッド側室24aにピストンロッド24dが配設されることにより、そのピストンロッド24dの断面積の分、ヘッド側室24b側よりもロッド側室24a側のピストン24cの受圧面積が小さくなる。
【0067】
よって、ヘッド側室24bの内圧によって油圧シリンダ24を伸長させる力が生じるため、かかる油圧シリンダ24の伸長によってロッド側室24a内の作動油の一部がヘッド側室24bに供給される(経路J)。これにより、接地車輪50a,50bを路面100に押圧する方向の力を常に生じさせることができるので、この状態で車両1を走行させることにより、路面100に接地車輪50a,50bを確実に追従させることができる。従って、案内軌条101から案内車輪40a,40bが脱輪することを防止できる。
【0068】
次いで、図7を参照して、接地車輪50a,50bを上方に突き上げる力が作用した場合について説明する。図7は、図6の状態から接地車輪50a,50bを上方に突き上げる力が作用して油圧シリンダ24が短縮した場合の油圧回路を示した概略図である。
【0069】
図7に示すように、接地車輪50a,50bを路面100に押圧した状態(図6参照)から、路面100の凹凸によって接地車輪50a,50bを上方に突き上げる力が作用して油圧シリンダ24が短縮した場合、ロッド側室24a及びヘッド側室24bがタンク60から遮断されているので(経路G,H)、油圧シリンダ24が短縮された分の作動油がヘッド側室24bからロッド側室24aに供給される(経路K)。この場合、ピストンロッド24dの体積の分、ロッド側室24aよりもヘッド側室24bの体積が大きいため、その体積の差の分、ヘッド側室24bからロッド側室24aに供給される作動油の一部が蓄圧器70の容器70aに蓄積(蓄圧)される(経路L)。
【0070】
かかる突き上げ力が緩和されると、蓄圧器70に蓄圧された圧力(容器70aから第2油路65への作動油の供給)によってロッド側室24a及びヘッド側室24bが加圧される。これにより、図6の場合と同様に、ピストン24cの受圧面積の差の分、ヘッド側室24bの内圧によって油圧シリンダ24を伸長させる力が生じるため、路面100に接地車輪を押圧させることができる。よって、路面100に凹凸が形成される場合であっても、蓄圧器70(容器70a)に蓄圧される圧力により、路面100に接地車輪50a,50bを確実に追従させることができる。従って、案内軌条101から案内車輪40a,40bが脱輪することを防止できる。
【0071】
次いで、図8及び図9を参照して、油圧シリンダ24の内圧を開放する場合について説明する。図8は、油圧シリンダ24の内圧を開放させる場合の油圧回路を示した概略図であり、図9は、内圧が開放された状態で油圧シリンダ24が短縮した場合の油圧回路を示した概略図である。
【0072】
図8に示すように、油圧シリンダ24の内圧を開放する場合、開閉弁70bを閉状態にすると共に、第2切換弁68jを開状態に切換えることにより、ロッド側室24a及びヘッド側室24bを、第1油路64及び第2油路65、第4油路68d、第6油路68h、第3油路68a、第7油路68k並びに返送油路62を介してタンク60に連通させる。
【0073】
これにより、ロッド側室24a及びヘッド側室24bと、タンク60との間での作動油の往来が可能となり、油圧シリンダ24の自由な伸縮が可能となる。即ち、例えば、油圧シリンダ24の内圧が開放された状態で路面100の凹凸によって油圧シリンダ24が伸長した場合、その伸長によってロッド側室24aから押し出される作動油は、第1油路64、第4油路68d、第6油路68h、第3油路68a並びに第2油路65を介してヘッド側室24bに供給される(経路M)。この場合、ピストンロッド24dの体積の分、ロッド側室24aよりもヘッド側室24bの体積が大きいが、その体積の差分の作動油はタンク60から返送油路62、第7油路68k、第3油路68a並びに第2油路65を介してヘッド側室24bに供給される(経路N)。
【0074】
一方、図9に示すように、油圧シリンダ24の内圧が開放された状態で(図8の状態から)油圧シリンダ24が短縮した場合、その短縮によってヘッド側室24bから押し出される作動油は、第2油路65、第4油路68d、第6油路68h、第3油路68a並びに第1油路64を介してロッド側室24aに供給される(経路O)。この場合、ロッド側室24aとヘッド側室24bとの体積の差分の作動油は、第7油路68k及び返送油路62を介してタンク60に返送される(経路P)。
【0075】
このように、ロッド側室24a及びヘッド側室24bをタンク60に連通することにより、ロッド側室24a及びヘッド側室24bの内圧を開放し、油圧シリンダ24を自由に伸縮させることができる。これにより、保持部材30(案内車輪40a,40b及び接地車輪50a,50b)の自重によって接地車輪50a,50bを路面100に追従させることができる。よって、例えば、車両1が徐行する場合や、路面100に形成される凹凸が少ない場合には、保持部材30の自重によって接地車輪50a,50bを路面100に追従させることが好ましい。これにより、常に接地車輪50a,50bを路面100に押圧させた状態で走行する場合に比べ、接地車輪50a,50bの摩耗による劣化を抑制できる。
【0076】
次いで、図10及び図11を参照して、油圧シリンダ24を短縮させる場合について説明する。図10は、油圧シリンダ24を短縮させる場合の油圧回路を示した概略図であり、図11は、油圧シリンダ24を短縮させた状態を維持する場合の油圧回路を示した概略図である。
【0077】
図10に示すように、油圧シリンダ24を短縮させる場合には、第1切換弁63を第3位置63cに切換えた状態でポンプ80を駆動する。これにより、第1切換弁63、オペレートチェック弁66、流量制御弁67(逆止弁67a)を介して(第1油路64を通って)作動油が油圧シリンダ24のロッド側室24aに圧送される(経路Q)。この時、第2切換弁68jを閉状態にすることにより、第1油路64、第4油路68d、及び第6油路68hを介したタンク60への作動油の返送が第2切換弁68jによって遮断される(経路R)また、連通油路69の開閉弁69aも閉状態とすることにより、第1油路64から第2油路65への作動油の流入が開閉弁69aによって遮断される(経路S)。これにより、第1油路64に圧送される作動油は、油圧シリンダ24のロッド側室24aに供給される。
【0078】
一方、ロッド側室24aへの作動油の供給時に第1油路64の内圧が所定値に達すると、パイロット油路76bを介してパイロット圧が付与され(経路T)、第2油路65に配設される逆止弁76aが開状態となる。よって、油圧シリンダ24の短縮に伴ってヘッド側室24bから押し出される作動油は、流量制御弁77(絞り弁77b)、オペレートチェック弁76(逆止弁76a)、第1切換弁63(第3位置63c)、及び、返送油路62を介してタンク60に返送される(経路U)。これにより、油圧シリンダ24の短縮が可能となり、案内車輪40a,40b及び接地車輪50a,50bを車体2(図1参照)側に格納することができる。
【0079】
図11に示すように、油圧シリンダ24を短縮させた状態(図10参照)からポンプ80の駆動を停止させて第1切換弁63を第2位置63bに切換えた場合、逆止弁66aよりもタンク60側の第1油路64の圧力が低下する(作動油がタンク60に返送される)ことにより、パイロット油路76bを介したパイロット圧が低下し、第2油路65の逆止弁76aが閉状態となる。よって、第1油路64及び第2油路65の双方において、油圧シリンダ24側からタンク60側への作動油の返送が逆止弁66a,76aによって遮断される(経路V)。
【0080】
この時、第2切換弁68jが閉状態であるので、第1油路64及び第2油路65から第2切換弁68jを介したタンク60への作動油の返送も遮断されている(経路W)。即ち、タンク60は、オペレートチェック弁66,76の逆止弁66a,76aや、閉状態にある第2切換弁68j等によってロッド側室24a及びヘッド側室24bから遮断される。これにより、油圧シリンダ24が短縮した状態を維持することができるので、例えば、案内車輪40a,40bや接地車輪50a,50bのメンテナンスを容易に行うことができる。
【0081】
以上、本実施の形態の車両1によれば、接地車輪50a,50bを路面100に押圧させて走行することと、保持部材30の自重によって接地車輪50a,50bを路面100に追従させて走行することとを選択可能に構成される。よって、かかる選択を案内軌条101の状態(カーブや凹凸の有無)に応じて行うことにより、案内軌条101に沿って車両1を安定して案内することと、接地車輪50a,50bの摩耗による劣化を抑制することとを両立させることができる。
【0082】
以上、上記実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変形改良が可能であることは容易に推察できるものである。
【0083】
上記実施の形態では、車両1が乗客や貨物を輸送する交通機関として構成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、車両1が、工場等の構内において大型の鋼材や製品等の重量物の荷物を搬送する大型の搬送車両や無人搬送車両として構成されても良い。即ち、かかる搬送車両や無人搬送車両にガイド装置10を適用する構成でも良い。
【0084】
上記実施の形態では、案内軌条101が路面100に凹設される凹溝として構成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、路面に延設されるレール状の案内軌条や、路面の左右方向における端部に側壁が設けられる案内軌条に対しても、上記実施の形態の車両1(ガイド装置10)の技術思想は採用可能である。いずれの案内軌条の形態においても、路面に接地させる接地車輪を設けることにより、案内軌条の底面(路面)に案内車輪が接触することを抑制できる。なお、レール状の案内軌条の場合には、そのレールの側面が請求項1の「側壁」に相当する。
【0085】
上記実施の形態では、1のガイド装置10において、案内車輪40a,40bが8個設けられ、接地車輪50a,50bが4個設けられる場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、案内車輪40a,40b及び接地車輪50a,50bの数は適宜設定できる。また、例えば、車体2の前後方向に沿って複数の案内車輪40a,40bや接地車輪50a,50bを1列に設ける構成でも良い。
【0086】
上記実施の形態では、接地車輪50a,50bの車軸51が保持部材30に揺動不能に固定される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、保持部材30に対して接地車輪50a,50bをサスペンション(緩衝装置)によって支持する構成でも良い。
【0087】
上記実施の形態では、車体2に対する保持部材30の相対変位の一例として、角筒状の固定部21及び摺動部22(テレスコピック機構)を備える連結部材20による上下動を例示したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、固定部21及び摺動部22は、角筒状ではなく円筒状や六角筒状などの他の形状でも良く、少なくとも固定部21に対して摺動部22が相対変位可能な構成であれば良い。また、保持部材30をスイングアームによって上下動させても良く、車体2に対して保持部材30をサスペンションで支持する(緩衝装置によって保持部材30を上下動させる)構成でも良い。即ち、車体2に対して保持部材30(案内車輪40a,40b及び接地車輪50a,50b)を上下に相対変位させることができる構成であれば、上記の形態に限定されるものではない。
【0088】
上記実施の形態では、駆動手段の一例として油圧シリンダ24を例示したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、電動のアクチュエータ、エアシリンダ、又は、ボールねじタイプのシリンダ等で連結部材20を伸縮させても良く、駆動源を省略する(保持部材30を単に上下に摺動自在に支持する)構成でも良い。
【0089】
上記実施の形態では、第1保持部32が第1軸31を介して連結部材20に接続され、一対の第2保持部34が第2軸33を介して第1保持部32にそれぞれ接続される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、案内車輪40a,40bの数や配置に合わせて第1軸31を省略することや、第2軸33を増加または減少させることは当然可能である。
【0090】
上記実施の形態では、第1保持部32に対して第2保持部34が第2軸33の軸周りに回動する場合を説明したが、例えば、第1保持部32に対する第2保持部34の回動の範囲を制限するストッパを設けても良い。この場合には、例えば、第2軸33の軸周りに沿って所定の長さで形成される貫通孔(溝)を第1保持部32(第2保持部34)に設けると共に、その貫通孔(溝)に嵌合する突起を第2保持部34(第1保持部32)に設ければ良い。これにより、案内車輪40a,40b及び接地車輪50a,50bを車体2側に格納する際に、第2保持部34が第1保持部32に対して過剰に回動することを抑制できる。
【0091】
上記実施の形態では、油圧シリンダ24が複動形の油圧シリンダとして構成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、油圧シリンダ24を単動形の油圧シリンダとして構成しても良い。この場合には、油圧シリンダ24のロッド側室24aのみに作動油を供給することで案内車輪40a,40b及び接地車輪50a,50bを車体2側に格納することができる。また、その状態からロッド側室24aの内圧を開放(ロッド側室24aをタンク60に接続)することにより、保持部材30の自重によって路面100に接地車輪50a,50bを追従させることができる。
【0092】
上記実施の形態では、イコライザ234cが軸234bから前後に延びるように設けられ、イコライザ234cの前部および後部のそれぞれに接地車輪50bが軸支される(軸234bと車軸51との高さが略一致している)場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、軸234bから前方下側および後方下側に延びるようにイコライザ234cを設け、そのイコライザ234cの前部および後部のそれぞれに接地車輪50bを軸支する(軸234bと車軸51との高さが異なっている)構成でも良い。即ち、軸234bよりも前方側および後方側に設けられる一対の接地車輪50bがイコライザ234cに回転可能に支持される構成であれば、イコライザ234cの形状や、接地車輪50bの車軸51の配置(前後方向や上下方向における接地車輪50bの位置)は適宜設定できる。
【符号の説明】
【0093】
1 車両(案内軌条式車両)
2 車体
3 走行車輪
10 ガイド装置
20 連結部材
24 油圧シリンダ
24a ロッド側室
24b ヘッド側室
30 保持部材
234b 軸
234c イコライザ
40a,40b 案内車輪
50a,50b 接地車輪
64 第1油路
65 第2油路
69 連通油路
69a 開閉弁
70 蓄圧器
101 案内軌条
101b 側壁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11