(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023120114
(43)【公開日】2023-08-29
(54)【発明の名称】空間保持容器に収容された芋の加工食品および空間保持容器に収容された芋の加工方法
(51)【国際特許分類】
A23L 19/00 20160101AFI20230822BHJP
【FI】
A23L19/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022023332
(22)【出願日】2022-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】522064719
【氏名又は名称】株式会社ほしいもの百貨
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】杉山 彰啓
【テーマコード(参考)】
4B016
【Fターム(参考)】
4B016LC06
4B016LE03
4B016LG06
4B016LP03
4B016LP05
4B016LP08
4B016LP10
4B016LP13
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、干し芋が加熱された後、常温になった状態においても、加熱前の干し芋よりも柔らかい状態が維持されかつ保存時等の破損を抑制する空間保持容器に収容された芋の加工食品を提供することにある。
【解決手段】上記課題を解決するために、生の芋を加熱し、加熱された加熱芋を製造する、加熱工程と、加熱芋を乾燥し、乾燥させた干し芋を製造する、乾燥工程と、干し芋を空間保持容器に収容し、密閉された状態とする、収容工程と、収容工程の後、加熱処理により糖を変化させる、糖変化工程と、を、備えることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生の芋を加熱し、加熱された加熱芋を製造する、加熱工程と、
前記加熱芋を乾燥し、乾燥させた干し芋を製造する、乾燥工程と、
前記干し芋を空間保持容器に収容し、密閉された状態とする、収容工程と、
前記収容工程の後、加熱処理により糖を変化させる、糖変化工程と、
を、備えることを特徴とする、空間保持容器に収容された芋の加工食品。
【請求項2】
前記収容工程で収容される干し芋は、前記収容工程の前に前記干し芋の表面に芋の糖物質を析出させる、糖析出工程を含み、前記糖物質が前記干し芋の表面積の10%以上を覆う状態であることを特徴とする、請求項1に記載の空間保持容器に収容された芋の加工食品。
【請求項3】
空間保持容器に収容された芋の加工食品の体積は、空間保持容器の容積の50%以上であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の空間保持容器に収容された芋の加工食品。
【請求項4】
生の芋、加熱芋及び又は干し芋をカットする、カット工程を含み、
カットされた芋は、スティック形状又はスライス形状であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の空間保持容器に収容された芋の加工食品。
【請求項5】
生の芋を加熱し、加熱された加熱芋を製造する、加熱工程と、
前記加熱芋を乾燥し、乾燥させた干し芋を製造する、乾燥工程と、
前記干し芋を空間保持容器に収容し、密閉された状態とする、収容工程と、
前記収容工程の後、加熱処理により糖を変化させる、糖変化工程と、
を、備えることを特徴とする、空間保持容器に収容された芋の加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空間保持容器に収容された芋の加工食品及び空間保持容器に収容された芋の加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、さつまいもを加熱し、乾燥させた食品である干し芋が知られている。
【0003】
干し芋は、加熱した芋を乾燥させることで製造されるが、乾燥させすぎたり、製造後の保存期間が長くなったりすると、水分が失われ、硬くなることが知られている。
非特許文献1には、硬くなった干し芋は、加熱することにより柔らかくすることができるとの記載がある。また、加熱後に冷めてしまうと再度、硬い状態となることも記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】[令和3年11月29日検索]、インターネット<URL:https://www.tealife.co.jp/user_data/tealifefan/column/imohozon>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
干し芋を加熱後、冷めてしまうと硬くなってしまうことから、干し芋を柔らかい状態で食したい場合、干し芋を食する際に加熱する必要があり、また、加熱する設備が必要となる。よって、加熱後、冷めて常温になった状態でも柔らかい状態が長期間維持された干し芋が望まれている。また、柔らかくなった干し芋は、輸送中や保存中に潰れて破損しまう虞があり、商品価値が低下する懸念もある。
【0006】
そこで、本発明の課題は、干し芋が加熱された後、常温になった状態においても、加熱前の干し芋よりも柔らかい状態が維持されかつ保存時等の芋の加工食品の破損を抑制する空間保持容器に収容された芋の加工食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記の課題について鋭意検討した結果、干し芋を空間保持容器に収容し、密閉された状態で加熱殺菌することにより、干し芋が加熱された後、常温になった状態においても加熱前の干し芋よりも柔らかい状態を維持できかつ保存時等の芋の加工食品の破損を抑制できることを見い出して、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の空間保持容器に収容された芋の加工食品および空間保持容器に収容された芋の加工方法である。
【0008】
上記課題を解決するための本発明の空間保持容器に収容された芋の加工食品は、生の芋を加熱し、加熱された加熱芋を製造する、加熱工程と、加熱芋を乾燥し、乾燥させた干し芋を製造する、乾燥工程と、干し芋を空間保持容器に収容し、密閉された状態とする、収容工程と、収容工程の後、加熱処理により糖を変化させる、糖変化工程と、を備えることを特徴とする。
本発明の芋の加工食品によれば、空間を確保した容器で、加熱されることから、干し芋を柔らかくできるうえ、糖成分が粘度のある蜜状成分として生成されることから、常温での輸送時において、外圧や振動を受けたとしても、芋の加工食品の移動がしにくくなり、型崩れを抑制できる。
【0009】
さらに、本発明の空間保持容器に収容された芋の加工食品の一実施態様としては、収容工程で収容される干し芋は、収容工程の前に干し芋の表面に芋の糖物質を析出させる、糖析出工程を含み、糖物質が干し芋の表面積の10%以上を覆う状態であることを特徴とする。
この空間保持容器に収容された芋の加工食品によれば、干し芋の表面に芋の糖物質を析出させ、糖物質が干し芋の表面積の10%以上を覆う状態とすることにより、干し芋の表面を覆う析出した糖成分が粘度のある蜜状の蜜状成分に変化し、干し芋の表面全体を蜜状成分が覆うようにすることができる。よって、芋の加工食品の全体を糖成分が覆う状態にすることができることから、輸送や保存時の振動による芋の加工食品の移動がしにくくなり、型崩れを抑制する効果がより一層向上する。
【0010】
さらに、本発明の空間保持容器に収容された芋の加工食品の一実施態様としては、空間保持容器に収容された芋の加工食品の体積は、空間保持容器の容積の50%以上95%以下であることを特徴とする。
この空間保持容器に収容された芋の加工食品によれば、一定の空間を確保した状態で密閉されていることから、糖変化工程において、空間保持容器の空間に干し芋の内部の水分が拡散し、干し芋の表面全体に適度に水分が提供されつつ熱が加えられる効果がある。
【0011】
さらに、本発明の空間保持容器に収容された芋の加工食品の一実施態様としては、生の芋、加熱芋及び又は干し芋をカットする、カット工程を含み、カットされた芋は、スティック形状又はスライス形状であることを特徴とする。
この空間保持容器に収容された芋の加工食品によれば、一定の形状に切断されていることにより、糖変化工程の際に熱が伝わりやすい効果がある。
【0012】
上記課題を解決するための本発明の空間保持容器に収容された芋の加工方法は、生の芋を加熱し、加熱された加熱芋を製造する、加熱工程と、加熱芋を乾燥し、乾燥させた干し芋を製造する、乾燥工程と、干し芋を空間保持容器に収容し、密閉された状態とする、収容工程と、収容工程の後、加熱処理により糖を変化させる、糖変化工程と、を、備えることを特徴とする。
本発明の空間保持容器に収容された芋の加工方法によれば、空間を確保した容器で、加熱されることから、干し芋を柔らかくできるうえ、蜜状の蜜状成分が生成されることから、常温での輸送時において、外圧や振動を受けたとしても、芋の加工食品の形が崩れにくい効果がある。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、干し芋を空間保持容器に収容し、密閉された状態で加熱殺菌することにより、干し芋が加熱された後、常温になった状態においても加熱前の干し芋よりも柔らかい状態を維持できかつ保存時等の芋の加工食品の破損を抑制できる空間保持容器に収容された芋の加工食品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1の実施態様における空間保持容器に収容された芋の加工工程の概略説明図である。
【
図2】(A)図は、本発明の第1の実施態様における空間保持容器に収容された芋の加工食品を示す概略図。(B)図は、スティック形状に切断加工された芋の加工食品を示す概略図。(C)図は、スライス形状に切断加工された芋の加工食品を示す概略図。
【
図3】(A)図は、本発明の第1の実施態様における空間保持容器に立てられた状態で収容されたスライス形状の芋の加工食品を示す概略図。(B)図は、本発明の第1の実施態様における空間保持容器に立てられた状態で収容されたスティック形状の芋の加工食品を示す概略図。
【
図4】本発明の第2の実施態様における空間保持容器に収容された芋の加工工程の概略説明図である。
【
図5】(A)図は、本発明の第2の実施態様における、加工方法のうち、収容工程を示す概略図。(B)図は、空間保持容器に収容された芋の加工食品を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る芋の加工食品及び芋の加工方法について説明する。
【0016】
〔第1の実施態様〕
(空間保持容器に収容された芋の加工食品)
図2を参照し、本発明の第1の実施態様の空間保持容器に収容された芋の加工食品1について説明する。本発明の空間保持容器に収容された芋の加工食品1は、空間保持容器2と芋の加工食品3とを備える。
【0017】
(空間保持容器)
空間保持容器2は、内部空間に芋の加工食品3が密閉状態で収容される容器である。なお、芋の加工食品3の製造過程において、空間保持容器2ごと加熱が行われる。よって、空間保持容器2ごと加熱を行う際に、空間保持容器2の内部空間を確保でき、かつ常温常圧の状態において内部空間を確保できる容器であれば適用可能である。
具体的には、袋状のレトルトパウチ、瓶や缶が例示できる。レトルトパウチの場合、内部空間を確保できた状態が好ましく、具体的には、気体が封入され密閉された状態が好ましい。また、熱が内部空間に収容された芋に伝わりやすい観点から、缶が特に好適に使用できる。
【0018】
(芋の加工食品)
本発明の芋の加工食品3は、原料となる生の芋を加熱し乾燥し、空間保持容器2に収容して密閉した状態で加熱加工を行うことで製造される。芋の加工食品3の製造過程の乾燥工程において、表面の水分が失われた硬くなった干し芋を加熱することで柔らかくし、空間保持容器2に密閉された状態で保存されていることから、常温の状態においても、加熱前の硬い状態よりも柔らかい状態が維持された状態とすることができる効果がある。また、本発明の芋の加工食品3は、空間保持容器2ごと加熱処理が行われる加工において、干し芋から粘りのある蜜状の蜜状成分が生成され、芋の加工食品の表面を覆う状態となる。蜜状の蜜状成分が芋の加工食品3の表面を覆う状態となっていることから、人が食した際に甘味を強く感じることができる効果がある。
【0019】
また、芋の加工食品3は、空間保持容器2に収容されていることから、輸送時や保存時に外圧を受けたとしても、柔らかくなった芋の加工食品3が潰れることを抑制でき、商品価値の低下を抑制できる効果もある。芋の加工食品3が、人の食しやすい大きさや形状に加工されている場合、空間保持容器2に収容されていることにより、潰れたり、形が崩れたりして、大きさや形状が変化(型崩れ)してしまうことを抑制できる点で、特に好ましい。
また、干し芋から粘度のある蜜状の蜜状成分が表面を覆う状態となっていることから、芋の加工食品3どうしが互いに絡みあった状態または芋の加工食品3が空間保持容器2の内壁に張り付くような状態となり、輸送時や保存時の振動などが与えられた場合であっても、収容された芋の加工食品3が粘度のある蜜状の蜜状成分により移動しにくく、型崩れしにくい効果がある。
【0020】
本発明の芋の加工食品3は、原料として、さつまいもが使用され、特に品種は限定されない。
また、芋の加工食品3の形状や大きさは、特に限定されることはなく、例えば、芋の形状をそのまま維持した丸干し形状の他、スティック形状、スライス形状やダイス形状(さいの目切り)でもよく、芋をカットし形状を整えた際に生じる切れ端であってもよい。
【0021】
丸干し形状の場合、食する人の好みの大きさに切ることができ、好みの歯ごたえ(食感)にして食することができる効果がある。
また、スティック形状、スライス形状又はダイス形状の場合、人の食しやすい大きさと歯ごたえとすることが好ましい。
【0022】
また、以下に限定されるものではないが、後述する干し芋を加熱して蜜状成分を生成する糖変化工程の際に、熱が伝わりやすくすることも考慮して、例えば、スティック形状の場合、
図2の(B)図に示すように、長さL1の下限値が40mm以上、より好ましくは50mm以上、さらにより好ましくは、60mm以上であり、上限値が80mm以下、より好ましくは100mm以下、さらにより好ましくは、120mm以下である。
また、厚みT1及び幅W1の下限値が、6mm以上、より好ましくは8mm以上、さらに好ましくは10mm以上であり、上限値が20mm以下、より好ましくは15mm以下、さらにより好ましくは12mm以下の方形であることが好ましい。
【0023】
また、スライス形状の場合、
図2の(C)図に示すように、例えば、スライス断面の長さL2及び幅W2が5mm以上、より好ましくは10mm以上、さらに好ましくは15mm以上、特に好ましくは25mm、特により好ましくは35、であり、上限値が200mm以下、より好ましくは150mm以下、さらにより好ましくは120mm以下である。
また、厚みT2が、3mm以上、より好ましくは6mm以上、さらに好ましくは8mm以上、特に好ましくは10mm以上であり、上限値が20mm以下、より好ましくは15mm以下、さらにより好ましくは12mm以下であることが好ましい。
【0024】
また、ダイス形状の場合、一辺の長さが3mm~50mmの範囲であれば適用できる。
なお、ダイス形状とは、全ての辺の長さが同じ(正六面体)場合でも、一辺の長さのそれぞれが異なる(直方体)場合のどちらの場合も含む。
ダイス形状の辺のうち、最短の辺の長さは、好ましくは5mm以上、より好ましくは7mm以上、さらにより好ましくは10mm以上、特に好ましくは20mm以上、特により好ましくは30mm以上である。
ダイス形状の辺のうち、最長の辺の長さは、好ましくは30mm以下、より好ましくは20mm以下、さらにより好ましくは10mm以下、特に好ましくは7mm以下、特により好ましくは5mm以下である。
【0025】
また、芋の加工食品3は、皮がついた状態であってもよい。芋の加工食品3に皮がついている状態の場合、蜜状の蜜状成分が皮の表面に生成されにくく、皮のない部分と比較して皮部分のべたつきが少ないことから、人が皮の部分をつまんで食しやすくなる効果がある。
なお、
図2(A)図では、スライス形状の芋の加工食品3が、寝かせられた姿勢で重なるように空間保持容器に収容された場合を例示したが、収容の姿勢は特に限定されず、
図3に示すように、芋の加工食品3が立てられた状態で空間保持容器に収容されてもよい。また、スティック状の芋の加工食品3の場合も同様であり、空間保持容器への収容姿勢は特に限定されない。
【0026】
[空間保持容器に収容された芋の加工食品の製造方法]
以下、
図1を参照し、空間保持容器に収容された芋の加工食品1の製造方法について説明する。
【0027】
まず、原料となる生の芋を洗浄し、加熱する準備を行う。この工程を準備工程とする。なお、生の芋は、加工しやすいように適切な大きさに切断されてもよい。
【0028】
準備工程の後、生の芋を加熱し、加熱された加熱芋を製造する。この工程を加熱工程とする。加熱工程で芋を加熱する方法については、特に限定されず、蒸す、茹でる、焼成するなどの加熱方法が適用可能である。
例えば、蒸す場合は、蒸煮装置、スチームオーブン等が挙げられる。また、茹でる場合は、水煮、容器内でのボイル処理等が挙げられる。焼成する場合は、オーブン加熱、石焼き、遠赤外線加熱等の方法が適用可能である。
加熱工程は、さつまいものアミラーゼの活性を促し、糖を生成させる観点から、60℃以上80℃以下で加熱することが好ましい。
【0029】
加熱工程の後、加熱芋を乾燥し、干し芋とする。この工程を乾燥工程とする。
加熱芋の乾燥方法としては、芋の表面の水分を取り除く方法であれば特に限定されず、例えば、天日乾燥、流体乾燥や真空凍結乾燥、が挙げられる。
乾燥は、芋の糖物質を濃縮できる観点と、水分が除去されて硬くなりすぎないようにする観点とから、乾燥後の水分量が、40%以下~10%以上の範囲となるように乾燥することが望ましい。乾燥後の水分量の上限値としては、35%以下が好ましく、より好ましくは30%以下、さらにより好ましくは25%以下である。また、乾燥後の水分量の下限値としては、好ましくは、13%以上、より好ましくは15%以上、さらにより好ましくは17%以上である。
【0030】
加熱工程の後、製造された干し芋を空間保持容器2に収容し、容器に密閉された状態とする。この工程を収容工程とする。
干し芋を空間保持容器2に収容する量(体積)は、後の工程において、空間保持容器2ごと干し芋を加熱する際、内部空間に干し芋から出る水分を充満させる観点と、干し芋の中心温度を目的の温度まで上げるための加工時間との観点から、空間保持容器2の容積の50%以上95%以下が好ましい。
干し芋を空間保持容器に収容する量(体積)の上限は、空間保持容器の容積の90%以下が好ましく、より好ましくは85%以下、さらにより好ましくは80%以下である。また、空間保持容器の容積の55%以上が好ましく、より好ましくは60%以上、さらにより好ましくは65%以上である。なお、空間には窒素や酸素が充填されてもよい。
【0031】
収容工程の後、干し芋が収容された空間保持容器2を容器ごと加熱処理し、干し芋の糖を変化させる。この工程を糖変化工程とする。糖変化工程は、ボイル殺菌、レトルト殺菌等、収容された芋に98度以上の熱を加える方法であればよい。
内部空間が保持された状態で加熱されることにより、干し芋を柔らかくでき、また、密閉された状態で保存できることから加熱後、常温になっても柔らかい状態を維持できる。また、干し芋の糖成分が加熱されることで、蜜状に変化する。
【0032】
糖変化工程の加熱方法の中でも、干し芋を柔らかくでき、干し芋に含まれる糖分から蜜状の蜜状成分を生成させる観点及び長期保存を可能とする観点から、干し芋の中心温度が121度以上、4分以上で加熱するレトルト殺菌であることが特に好ましい。
【0033】
蜜状の蜜状成分を生成させることができる理由としては、干し芋が空間保持容器2に収容されていることにより、レトルト殺菌時に空間保持容器2の空間に干し芋の内部の水分が拡散し、干し芋の表面全体に適度に水分が提供されつつ熱が加えられ、蒸し焼きのような状態になるためであると考えられる。この効果を得るためには、熱の伝わりやすさの観点から、空間保持容器2として缶を用いることが特に好ましい。
その後、糖変化工程の後、常温に冷却され、空間保持容器に収容された芋の加工食品1が完成する。
【0034】
〔第2の実施態様〕
図4を参照し、本発明の第2の実施態様について説明する。第2の実施態様では、第1の実施態様と同じ構造や工程については説明を省略し、同一の符号を付して説明する。
第2の実施態様では、乾燥工程の後に、糖析出工程を有する点が異なる。
糖析出工程を有することにより、
図5の(A)図に示すように、干し芋の表面に麦芽糖を主成分とする白色の糖成分が析出した干し芋13の状態となる。
【0035】
[空間保持容器に収容された芋の加工食品の製造方法]
第2の実施態様の空間保持容器に収容された芋の加工食品12の製造方法については、準備工程、加熱工程、乾燥工程までは同じであるため、説明は省略する。
【0036】
乾燥工程後、干し芋をさらに乾燥させ、干し芋の表面に白い粉状の糖成分を析出させる。この工程を糖析出工程とする。
析出した糖成分が干し芋の表面積の10%以上の範囲を覆うように析出工程を行うことが望ましい。析出した糖成分が干し芋の表面を覆う割合の上限値としては、95%以下が好ましく、より好ましくは90%以下、さらにより好ましくは85%以下である。また、析出した糖成分が干し芋の表面を覆う割合の下限値としては、好ましくは、15%以上、より好ましくは20%以上、さらにより好ましくは30%以上である。
この範囲であれば、析出した糖成分が干し芋の表面の多くを覆う状態となっていることにより、後の糖変化工程の際に、干し芋の表面を覆う析出した糖成分が粘度のある蜜状の蜜状成分に変化するため、芋の加工食品3の全体を蜜状成分が覆う状態にすることができる。よって、人がどの箇所を食しても甘味を強く感じさせることができるため、より好ましく、輸送や保存時の振動による芋の加工食品3の移動がしにくくなり、蜜状成分を有することによる型崩れを抑制する効果もより向上する。
【0037】
また、表面に糖成分が付着した状態、つまり表面が十分に乾燥していることから、収容工程において、人の手や空間保持容器2に収容する装置に干し芋が張り付くことを抑制でき、空間保持容器2に収容する作業性の観点においても好ましい。
【0038】
糖析出工程の後、糖変化工程が行われ、常温に冷却されて、空間保持容器に収容された芋の加工食品12が完成する。
【0039】
なお、第1の実施形態及び第2の実施形態の空間保持容器に収容された芋の加工食品1の製造方法では、準備工程において、芋をスティック形状またはスライス形状に切断し、人が食しやすい大きさに加工するカット工程を行った後に、後の工程を行ってもよい。また、収容工程よりも前の工程の間にカット工程を有していてもよい。
【0040】
準備工程から乾燥工程又は糖析出工程を行った場合の干し芋は、常温保存の場合、賞味期限が一か月~三か月であり、最長でも六か月であるの対し、本発明の空間保持容器に収容された芋の加工食品および空間保持容器に収容された芋の加工方法によれば、一年以上の保存が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の空間保持容器に収容された芋の加工食品および芋の加工方法は、芋類の加工に好適に利用され、特にさつまいもの加工に好適に利用されるものである。
【符号の説明】
【0042】
1 空間保持容器に収容された芋の加工食品、2 空間保持容器、3 芋の加工食品、12 空間保持容器に収容された芋の加工食品、13 糖成分が析出した干し芋