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  • 特開-熱伝導部材及び冷却器具 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023120117
(43)【公開日】2023-08-29
(54)【発明の名称】熱伝導部材及び冷却器具
(51)【国際特許分類】
   F28F 1/12 20060101AFI20230822BHJP
   F25D 11/00 20060101ALN20230822BHJP
【FI】
F28F1/12 D
F25D11/00 102Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022023336
(22)【出願日】2022-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】719003101
【氏名又は名称】株式会社カンファクト
(72)【発明者】
【氏名】橋田 勝博
【テーマコード(参考)】
3L045
【Fターム(参考)】
3L045AA04
3L045BA04
3L045CA01
3L045PA04
(57)【要約】
【課題】容器内の飲料及び食品を急冷する。
【解決手段】 繊維状の熱熱伝導材料からなる筒状の熱伝導部材と、熱伝導部材周辺の気流を確保することにより、熱伝導部材を低温に保持する気流発生機構とからなる冷却器具により、飲料及び食品を冷却する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、繊維状或いは粒状の部材の集合体からなる、可撓性を有するシート状の部材を湾曲させて筒状とした熱伝導部材。
【請求項2】
繊維状の部材が、少なくともガーゼ状の金属からなることを特徴とする請求項1に記載の熱伝導部材。
【請求項3】
ガーゼ状の部材が、少なくとも銅を含む繊維からなることを特徴とする請求項2に記載の熱伝導部材。
【請求項4】
少なくとも、請求項2または3に記載の熱伝導部材の周囲の少なくとも一部を筒状の部材で被ってなる容器保持部と、前記容器保持部の長さ方向への気流発生機構を備えた冷却器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料などの液体の冷却を、速やかに行うことができるものである。
【背景技術】
【0002】
飲料の急速冷却は、飲料が充填された容器を、冷蔵庫や冷凍庫等の冷却機器内に設置されたアルミニウム等の熱伝導性が高い素材からなる冷却台に設置することによりなされる場合がある。この方法によると、アルミニウム等の高い熱伝導性により、冷却台と容器の熱交換が速やかに行われることにより、飲料を急冷することができる(特許文献1)。
【0003】
上記方法以外に、飲料を充填した容器を氷塊等に接触させた状態で回転させて冷却する方法もある。この方法によると、容器内の飲料が対流することにより、氷塊等と接触している部分近傍へは比較的温度が高い飲料が供給され続ける。従って、氷塊と飲料の温度差が大きくなるため、飲料から氷塊への熱伝達効率が高くなり、飲料を急冷することができる。(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-168553号公報
【特許文献2】特開2019-143839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の急冷方法では、冷却台の表面形状と容器の形状が異なることが一般的である(冷却台の表面形状は平面形状であり、飲料容器は筒形である場合が多い)ため、容器と冷却台の接触面を大きくすることが難しい。一方、物体間の熱交換効率は、それらが接触している部分が最も高くなる。従って、表面形状が平面状の冷却台に、筒形の飲料容器を乗せる従来の方法では、著しい急冷効果を得ることが難しい場合もある。
【0006】
特許文献2に記載の方法では、装置が比較的大がかりになることや、氷塊等が必要となる課題があり、一般家庭での使用が難しい場合もある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明の熱伝導部材は、少なくとも、繊維状或いは粒状の部材を含む部材からなる、可撓性を有するシート状の部材を湾曲させて筒状としたことを特徴とするものである。熱伝導部材が、繊維状或いは粒状の部材を含む部材からなることにより、大きな比表面積を有する。従って、これを冷蔵庫内等の低温雰囲気中に設置することにより、熱伝導部材が急冷される。
【0008】
更に、熱伝導部材の可撓性により、熱伝導部材が容器の形状に追従して接触面積を大きくすることで、飲料を急冷することができる。
【0009】
更に、本発明の冷却器具は、熱伝導部材の周囲の少なくとも一部を筒状の部材で被ってなる容器保持部と、前記容器保持部の長さ方向への気流発生機構を備えたことを特徴とするものである。冷却器具を低温雰囲気中に設置すると、気流発生機構により、繊維状或いは粒状の部材を含む部材からなる熱伝導部材へは低温の気体が供給され続ける。この結果、熱伝導部材は低温の状態に保持され、熱伝導部材と接触している容器内の飲料を急冷することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の熱伝導部材及び冷却器具は次の通り、飲料等を急冷することができる。まず、熱伝導部材は、繊維状或いは粒状の部材を含む部材からなるため、比表面積が大きい。従って、低温雰囲気中に設置されると、その雰囲気と速やかに熱交換して冷却される。更に、熱伝導部材は可撓性を有するため、飲料が充填された容器の形状に追従して接触面積を大きくすることができる。従って、飲料を急冷することができる。
【0011】
更に、気流発生機構により、熱伝導部材に低温雰囲気の気体を供給することにより、飲料から熱が伝達することによる熱伝導部材の温度上昇を抑制することができる。この結果、熱伝導部材は低温に保持され、これに接触している容器内の液体を急冷することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態1における熱伝導部材の斜視図
図2】実施の形態1における熱伝導部材の断面模式図
図3】実施の形態2における冷却器具の斜視図
図4】実施の形態2における冷却器具の断面模式図
図5】実施の形態2における冷却器具と飲料容器の断面模式図
図6】実施の形態2における冷却器具と飲料容器の使用時における断面模式図
【発明を実施するための形態】
【0013】
請求項1に記載の熱伝導部材は、少なくとも、繊維状或いは粒状の部材の集合体からなる、可撓性を有するシート状の部材を湾曲させて筒状としたものであり、湾曲面の内側に容器を密着可能としたことを特徴とするものである。
【0014】
一般に、冷却しようとする飲料が充填された容器が、低温の雰囲気(容器と固体が接触していない)中にある場合より、雰囲気と同等の温度の固体に接触している場合の方が、容器表面から外部への熱伝達が速やかになされるため、飲料を急冷することができる。
【0015】
熱伝導部材は可撓性を有するため、湾曲面の内側に容器を設置することにより、容器と密着し、接触面積を大きくすることができる。更に、熱伝導部材は繊維状或いは粒状の部材を含むため、比表面積が大きく、低温の雰囲気への熱伝達が速やかになされる。以上により、飲料容器から熱伝導部材へ伝達した熱は、速やかに低温雰囲気中に放出され、熱伝導部材は低温に保持される。従って、低温に保持された熱伝導部材と接触している容器内の飲料を急冷することができる。
【0016】
請求項2に記載の熱伝導部材は、繊維状の部材が、少なくともガーゼ状の金属からなることを特徴とするものである。
【0017】
金属は大きな熱伝導率を有しているため、飲料容器から伝達した熱は低温雰囲気との界面まで速やかに伝導する。これに加え、ガーゼは大きな比表面積を有しているため、飲料容器から熱伝導部材に伝達した熱は速やかに低温雰囲気中に放出される。従って、低温雰囲気中に設置されたガーゼ状の部材からなる熱伝導部材は低温に保持され、これに接触している容器内の飲料を急冷することができる。
【0018】
請求項3に記載の熱伝導部材は、ガーゼ状の部材が、少なくとも銅を含む繊維からなることを特徴とするものである。
【0019】
銅は金属の中でも特に熱伝導率が大きいため、容器から伝達した熱を速やかに低温雰囲気付近まで伝導させ、低温雰囲気中に放出することができる。更に、銅からなるガーゼ状の部材は優れた柔軟性を有するため、より優れた可撓性を有する熱伝導部材を得ることができる。以上により、飲料を、より速やかに冷却することができる。
【0020】
請求項4に記載の冷却器具は、熱伝導部材の周囲の少なくとも一部を筒状の部材で被ってなる容器保持部と、前記容器保持部の長さ方向への気流発生機構を備えた事を特徴とするものである。
【0021】
熱伝導部材により、特に速やかに飲料を冷却するためには、次に示す3つの条件が必要になる。1つ目の条件として、容器から熱伝導部材へ速やかに熱伝達がなされるために、熱伝導部材が容器の形状に沿って密着できるように変形するための可撓性を有することが必要になる。2つ目の条件として、熱伝導部材の高温部から低温部へ速やかに熱が伝導するために、高い熱伝導率を有することが必要になる。3つ目の条件として、熱伝導部材から伝達した熱により温度が上昇した低温雰囲気の気体が、熱伝導部材を構成する部材の空隙(ガーゼ状の部材の繊維間等)に滞留しないことが必要になる。
【0022】
熱伝導部材の特性により、1つ目の条件と、2つ目の条件を満たしている。更に、冷却器具に備わった気流発生機構により、3つ目の条件を満たすことができる。即ち、熱伝導部材から低温雰囲気中へ熱が放出されると、雰囲気の温度が上昇し、熱伝導部材との温度差が低減する。ここで、気流発生機構により温度が上昇した気体が、熱伝導部材を構成する部材の空隙から排出され、この中(ガーゼ状の部材の繊維間等)にある気体を低温に保持することができる。この結果、熱伝導部材から低温雰囲気へ高い効率で熱を放出することができ、特に優れた急冷特性を得ることができる。
【0023】
以下、実施の形態により本発明の詳細を説明するが、本発明を限定するものではない。
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1における熱伝導部材の斜視図である。図2は、実施の形態1における熱伝導部材の断面模式図である。図2の左図は、図1の破線部分での垂直方向の断面図であり、図2の右図は、断面の一部を拡大したものである。図2の右図に示す通り、熱伝導部材1の繊維状部材2は、銅からなる繊維状材料を集合させたものであり、ガーゼ状になっている。
【0024】
ここで、実施の形態1の熱伝導部材を用いることにより、飲料を急冷することができる機構を示す。一般に、ある部材を冷却する際は、その比表面積が大きいほど有利になる。この原理を利用した技術がヒートシンクと呼ばれる技術であり、集積回路等の電子機器の冷却等に広く用いられている。ヒートシンクは、冷却対象の部材に沿った(冷却対象の部材と密着可能な)形状の部材に、アルミニウム等の熱伝導率が大きい金属からなる微少な突起を多く配列し、比表面積を高められたものである場合が多い。このため、冷却対象の部材に、ヒートシンクを密着させることにより、冷却対象の部材からヒートシンクへは速やかに熱が伝達し、ヒートシンクはその大きな比表面積により、空気へ速やかに熱を放出する。これと同じように、飲料が充填された容器にヒートシンクを密着させて低温環境に設置することにより、急冷することは可能である。
【0025】
しかし、一般に飲料容器の形状は多く存在し、表面が曲面であることが多く、その形状に沿ったヒートシンクを準備することは難しい。更に、飲料を冷却するためにヒートシンクを貼り付ける等の手間をかけることは現実的ではない。
【0026】
そこで、実施の形態1の熱伝導部材を用いる事により、ヒートシンクでは困難な効果が得られる。即ち、熱伝導部材は筒形であり、可撓性を有するため、飲料容器に被せるようにして、容易に取り付ける事ができ、飲料容器の表面に多少の凹凸があっても、これらの密着性を確保することができる。
【0027】
従って、飲料容器から熱伝導部材を構成する繊維状の銅へ速やかに熱が伝達し、熱伝導部材から雰囲気へも速やかに熱が伝達し、結果として飲料を急冷することができる。
(実施の形態2)
【0028】
図3は実施の形態2における冷却器具の斜視図である。図4は実施の形態2における冷却器具の断面模式図である。図4に示されている通り、冷却器具3は、熱伝導部材1と気流発生機構4からなり、気流発生機構4はファン5と外殻6からなる。図5は実施の形態2における冷却器具と飲料容器の断面模式図である。図6は実施の形態2における冷却器具と飲料容器の使用時における断面模式図である。
【0029】
ここで、実施の形態2の冷却器具を用いることにより、飲料を急冷することができる機構を示す。実施の形態1と同様に、熱伝導部材を用いているため、冷却器具3を低温雰囲気中に設置することにより、飲料を急冷することができる。これに加え、実施の形態2の冷却器具3は、気流発生機構4、及び外容器7が備えられているため、急冷効果を更に高めることができる。
即ち、熱伝導部材1の雰囲気を低温に保持することが必要であるが、気流発生機構4により、低温の気体を取り込み、外容器7と飲料容器8の間の空間を通過して反対側へ放出することにより、熱伝導部材1の雰囲気は冷却器具の雰囲気に近い温度に保持することができる。
【0030】
更に、図6に示されている通り、飲料容器8の長さ方向が横方向となるように設置した場合、より優れた急冷効果を得ることができる。これは、飲料容器8内の熱伝達は、飲料の熱伝導によるものではなく、対流による熱伝達によることの寄与度が大きくなるためである。
この現象は、やかんなどの給湯器具により液体を加熱する際、下方向から加熱することにより熱膨張して密度が低下した液体が上方向へ移動し、上方向にある液体が下方向へ移動して対流が発生し、液体の加熱効率が高まることと同様の現象である。
【0031】
しかし、液体を加熱する際、やかん等を下方向から加熱することにより、対流が発生するが、冷却する際は、容器の下方向を冷却しても対流は生じにくいことが加熱と大きく異なる。
即ち、容器の下方向を冷却しても液体は膨張せず、むしろ収縮し、密度が大きい状態を保つため、対流は生じない。従って、冷却することにより飲料容器8内に対流を生じさせるためには、容器の上方向を冷却する必要がある。
【0032】
ここで、図6に示されている通り、飲料容器8の周囲を、熱伝導部材1により冷却することで、飲料容器8上部の飲料が冷却され、図6の右図に示されているように、容器内に対流が発生する。更に、図6では容器周囲が全体的に冷却されているため、より冷却効率を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
飲料を急冷することができるため、短時間で所望の温度とすることができる。更に、熱伝導部材に食品を内包することにより、急速冷凍も可能であり、食品の鮮度を保持した状態での冷凍も可能になる。
【符号の説明】
【0034】
1 熱伝導部材
2 繊維状部材
3 冷却器具
4 気流発生機構
5 ファン
6 外殻
7 外容器
8 飲料容器
図1
図2
図3
図4
図5
図6