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特開2023-120129情報処理方法、情報処理システムおよびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023120129
(43)【公開日】2023-08-29
(54)【発明の名称】情報処理方法、情報処理システムおよびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04S 7/00 20060101AFI20230822BHJP
   G10K 15/00 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
H04S7/00 300
G10K15/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083957
(22)【出願日】2022-05-23
(31)【優先権主張番号】63/311,054
(32)【優先日】2022-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トレビーニョ ホルヘ
【テーマコード(参考)】
5D162
【Fターム(参考)】
5D162AA13
5D162BA14
5D162CC22
5D162CC23
5D162DA02
5D162DA41
5D162EG02
(57)【要約】
【課題】多様な音場を再現する。
【解決手段】情報処理システムは、第1音場の特徴を表す第1音場パラメータと、第1音場とは音響特性が相違する第2音場の特徴を表す第2音場パラメータとを取得し、第1音場パラメータと第2音場パラメータとを利用して、第1音場および第2音場とは異なる音響特性を有する第3音場の特徴を表す第3音場パラメータを生成する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1音場の特徴を表す第1音場パラメータと、前記第1音場とは音響特性が相違する第2音場の特徴を表す第2音場パラメータとを取得し、
前記第1音場パラメータと前記第2音場パラメータとを利用して、前記第1音場および前記第2音場とは異なる音響特性を有する第3音場の特徴を表す第3音場パラメータを生成する
コンピュータシステムにより実現される情報処理方法。
【請求項2】
前記第3音場パラメータの生成においては、前記第1音場パラメータおよび前記第2音場パラメータの各々が利用者からの指示に応じた度合で反映された前記第3音場パラメータを生成する
請求項1の情報処理方法。
【請求項3】
前記第3音場パラメータの生成においては、前記利用者からの操作に応じて連続的に変化する指示値を適用した演算により、前記第1音場パラメータと前記第2音場パラメータとから前記第3音場パラメータを生成する
請求項2の情報処理方法。
【請求項4】
さらに、相異なるスピーカに供給される複数の音響信号の各々を、前記第3音場パラメータに応じて加重する
請求項1から請求項3の何れかの情報処理方法。
【請求項5】
前記第1音場パラメータおよび前記第2音場パラメータの各々は、相異なる球面調和関数に対応する複数の展開係数を含む
請求項1から請求項3の何れかの情報処理方法。
【請求項6】
前記第1音場パラメータおよび前記第2音場パラメータの各々は、1個の球面上における音響エネルギーの分布を表すパラメータである
請求項1から請求項3の何れかの情報処理方法。
【請求項7】
前記第3音場パラメータの生成においては、前記第1音場パラメータと前記第2音場パラメータとの加重和により前記第3音場パラメータを生成する
請求項1から請求項3の何れかの情報処理方法。
【請求項8】
前記第3音場パラメータの生成においては、前記第3音場において、前記第1音場の音響エネルギーのピークと前記第2音場の音響エネルギーのピークとの中間に音響エネルギーが位置するように、前記第3音場パラメータを生成する
請求項1から請求項3の何れかの情報処理方法。
【請求項9】
第1音場の特徴を表す第1音場パラメータと、前記第1音場とは音響特性が相違する第2音場の特徴を表す第2音場パラメータとを取得する取得部と、
前記第1音場パラメータと前記第2音場パラメータとを利用して、前記第1音場および前記第2音場とは異なる音響特性を有する第3音場の特徴を表す第3音場パラメータを生成する生成部と
を具備する情報処理システム。
【請求項10】
第1音場の特徴を表す第1音場パラメータと、前記第1音場とは音響特性が相違する第2音場の特徴を表す第2音場パラメータとを取得する取得部、および、
前記第1音場パラメータと前記第2音場パラメータとを利用して、前記第1音場および前記第2音場とは異なる音響特性を有する第3音場の特徴を表す第3音場パラメータを生成する生成部、
としてコンピュータシステムを機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、音場を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
受聴者が知覚する音場を制御するための各種の技術が従来から提案されている。例えば特許文献1には、複数のマイクにより収録された信号から音場情報パラメータ群を算出し、音場情報パラメータ群の原点を移動作用素により移動することで、新規な音場情報パラメータ群を生成する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-191980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば高次アンビソニックス技術等の音響再生技術の普及を背景として、多様な音場を再現することが高度に要求されている。以上の事情を考慮して、本開示のひとつの態様は、多様な音場を再現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するために、本開示のひとつの態様に係る情報処理方法は、第1音場の特徴を表す第1音場パラメータと、前記第1音場とは音響特性が相違する第2音場の特徴を表す第2音場パラメータとを取得し、前記第1音場パラメータと前記第2音場パラメータとを利用して、前記第1音場および前記第2音場とは異なる音響特性を有する第3音場の特徴を表す第3音場パラメータを生成する。
【0006】
本開示のひとつの態様に係る情報処理システムは、第1音場の特徴を表す第1音場パラメータと、前記第1音場とは音響特性が相違する第2音場の特徴を表す第2音場パラメータとを取得する取得部と、前記第1音場パラメータと前記第2音場パラメータとを利用して、前記第1音場および前記第2音場とは異なる音響特性を有する第3音場の特徴を表す第3音場パラメータを生成する生成部とを具備する。
【0007】
本開示のひとつの態様に係るプログラムは、第1音場の特徴を表す第1音場パラメータと、前記第1音場とは音響特性が相違する第2音場の特徴を表す第2音場パラメータとを取得する取得部、および、前記第1音場パラメータと前記第2音場パラメータとを利用して、前記第1音場および前記第2音場とは異なる音響特性を有する第3音場の特徴を表す第3音場パラメータを生成する生成部、としてコンピュータシステムを機能させる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態における情報システムの構成を例示するブロック図である。
図2】情報提供システムの構成を例示するブロック図である。
図3】球状マイクロホンアレイの説明図である。
図4】解析処理のフローチャートである。
図5】離散ウェーブレット変換の説明図である。
図6】球面調和関数の説明図である。
図7】情報処理システムの構成を例示するブロック図である。
図8】再生処理のフローチャートである。
図9】合成処理のフローチャートである。
図10】合成処理の説明図である。
図11】第2実施形態における合成処理の説明図である。
図12】第3実施形態における電子楽器の構成を例示するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
A:第1実施形態
図1は、第1実施形態における情報システム100の構成を例示するブロック図である。第1実施形態の情報システム100は、情報提供システム10と情報処理システム20とを具備する。情報処理システム20は、例えばインターネット等の通信網200を介して情報提供システム10と通信可能である。情報提供システム10は例えばサーバシステムで実現され、情報処理システム20は、例えばスマートフォン、タブレット端末またはパーソナルコンピュータ等の情報装置で実現される。
【0010】
情報提供システム10は、特定の音場の特徴を表す音場パラメータZ(Z1,Z2)を生成するコンピュータシステムである。音場の特徴とは、例えば、受聴点に対する到来音の音圧の分布である。具体的には、受聴点を中心とする球面上における音響エネルギーの分布が、音場パラメータZにより表現される。特定の音場の音場パラメータZは、当該音場を任意の空間において再現するためのパラメータとも表現される。
【0011】
第1実施形態の情報提供システム10は、第1音場の特徴を表す音場パラメータZ1と、第2音場の特徴を表す音場パラメータZ2とを生成する。第1音場と第2音場とは、音響特性が相違する音響空間に形成される音場である。例えば、第1音場と第2音場とは、相異なる音響ホールに対応する音場である。具体的には、第1音場と第2音場との間においては、音響空間の形状、サイズまたは吸音率等、音波の伝播に関する各種の条件が相違する。なお、第1音場または第2音場は、特定の音響特性に設計された音響ホールのほか、内壁面での反射が殆ど発生しない無響室でもよい。以下の説明において、第1音場と第2音場とを区別する必要がない場合には、両者を「観測音場」と総称する。音場パラメータZ1および音場パラメータZ2は、通信網200を介して情報処理システム20に提供される。なお、音場パラメータZ1は「第1音場パラメータ」の一例であり、音場パラメータZ2は「第2音場パラメータ」の一例である。
【0012】
情報処理システム20は、利用者Uが所在する音響空間Rに設置される。情報処理システム20は、音場パラメータZ1と音場パラメータZ2を利用して音場パラメータZ3を生成する。音場パラメータZ3は、第1音場および第2音場とは異なる音響特性を有する第3音場の特徴を表すパラメータである。具体的には、第3音場は、第1音場と第2音場との中間的な音響特性を有する音場である。すなわち、第3音場は、第1音場の音響特性と第2音場の音響特性との双方が反映された音場である。なお、第3音場は、第1音場の音響特性と第2音場の音響特性とが均等に反映された音場には限定されない。例えば、第2音場と比較して第1音場が優勢に反映された音場、または第1音場と比較して第2音場が優勢に反映された音場も「第3音場」には包含される。情報処理システム20は、音場パラメータZ3を利用して第3音場を音響空間Rに再現する。すなわち、情報処理システム20は、音響空間R内の利用者Uが第3音場を知覚するように音響再生を制御する。なお、音場パラメータZ3は「第3音場パラメータ」の一例である。
【0013】
[情報提供システム10]
図2は、情報提供システム10の構成を例示するブロック図である。情報提供システム10は、制御装置11と記憶装置12と通信装置13とを具備する。なお、情報提供システム10は、単体の装置として実現されるほか、相互に別体で構成された複数の装置でも実現される。
【0014】
制御装置11は、情報提供システム10の各要素を制御する単数または複数のプロセッサである。具体的には、例えばCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、SPU(Sound Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、またはASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の1種類以上のプロセッサにより、制御装置11が構成される。
【0015】
通信装置13は、通信網200を介して情報処理システム20と通信する。例えば、通信装置13は、音場パラメータZ1および音場パラメータZ2を情報処理システム20に送信する。なお、通信装置13と通信網200との間の通信は有線通信および無線通信の何れでもよい。
【0016】
記憶装置12は、制御装置11が実行するプログラムと、制御装置11が使用する各種のデータとを記憶する単数または複数のメモリである。例えば半導体記録媒体および磁気記録媒体等の公知の記録媒体、または複数種の記録媒体の組合せが、記憶装置12として利用される。なお、例えば、情報提供システム10に対して着脱される可搬型の記録媒体、または、制御装置11が通信網200を介してアクセス可能な記録媒体(例えばクラウドストレージ)が、記憶装置12として利用されてもよい。
【0017】
記憶装置12は、第1音場および第2音場の各々についてQ個の観測信号X(1)~X(Q)を記憶する。第1音場に対応するQ個の観測信号X(1)~X(Q)は、第1音場において相互に並列に収音された音波の波形を表す信号である。同様に、第2音場に対応するQ個の観測信号X(1)~X(Q)は、第2音場において相互に並列に収音された音波の波形を表す信号である。
【0018】
観測音場(第1音場/第2音場)におけるQ個の観測信号X(1)~X(Q)の生成には、図3の球状マイクロホンアレイ30が利用される。球状マイクロホンアレイ30は、半径rの球状の筐体31の表面にQ個のマイクロホン32が分散的に設置された収音装置である。任意の1個の観測信号X(q)は、Q個のマイクロホン32のうち第q番目(q=1~Q)のマイクロホン32が観測音場で収音した音響の波形を表す信号である。第1音場の観測信号X(q)は、球状マイクロホンアレイ30が第1音場に設置された状態で収録され、第2音場の観測信号X(q)は、球状マイクロホンアレイ30が第2音場に設置された状態で収録される。したがって、各観測信号X(q)には観測音場の音響特性が反映される。
【0019】
図4は、制御装置11が音場パラメータZを生成する処理(以下「解析処理」という)のフローチャートである。第1音場および第2音場の各々について解析処理が実行される。すなわち、第1音場に関する解析処理により音場パラメータZ1が生成され、第2音場に関する解析処理により音場パラメータZ2が生成される。
【0020】
制御装置11は、観測音場(第1音場/第2音場)で収録されたQ個の観測信号X(1)~X(Q)を記憶装置12から取得する(Sa1)。制御装置11は、各観測信号X(q)をK個の音響成分C(q,1)~C(q,K)に分解する(Sa2)。K個の音響成分C(q,1)~C(q,K)は、観測信号X(q)において相異なる周波数帯域に対応する成分である。
【0021】
第1実施形態の制御装置11は、離散ウェーブレット変換により観測信号X(q)から音響成分C(q,1)~C(q,K)を生成する。具体的には、各音響成分C(q,k)の生成には、図5に例示されるハール(Haar)ウェーブレットが利用される。図5の符号「H」は高域通過フィルタ(HPF:high-pass filter)を意味し、符号「L」は低域通過フィルタ(LPF:Low-pass filter)を意味する。また、符号「DS」は、サンプリング周波数を半分に低減するダウンサンプリングを意味する。
【0022】
図5に例示される通り、離散ウェーブレット変換により、1個の近似成分c(q,0)とK個の詳細成分c(q,1)~c(q,K)とが生成される。制御装置11は、以下の数式(1)の演算により、K個の音響成分C(q,1)~C(q,K)を生成する。
【数1】
数式(1)の記号λは所定の正数であり、例えば観測信号X(q)のSN(signal-to-noise)比に応じて設定される。音響成分C(q,k)は、球状マイクロホンアレイ30の第q番目のマイクロホン32に対する到来音のうち第k番目の成分の音圧に相当する。
【0023】
図4に例示される通り、制御装置11は、観測音場の音場パラメータZを生成する(Sa3)。音場パラメータZは、Q個の観測信号X(1)~X(Q)の各々における音響成分C(q,k)(C(1,k)~C(Q,k))に対応する展開係数Bnm(k)の集合である。展開係数Bnm(k)は、図6に例示される通り、次数(degree)nと位数(order)mとの組合せに対応する球面調和関数Ynmに対応する加重値(球面調和係数)である。具体的には、制御装置11は、以下の数式(2)の演算により展開係数Bnm(k)を算定する。
【数2】
数式(2)における関数Jnは、n次の球ベッセル関数を意味し、記号*は複素共役を意味する。記号dΩは面積分を意味する。記号rは、前述の通り、音波が収音される球面(すなわち筐体31)の半径である。
【0024】
以上の説明から理解される通り、第1実施形態の音場パラメータZは、相異なる球面調和関数Ynmに対応する複数の展開係数Bnm(k)を含む。具体的には、音場パラメータZは、次数nと位数mとの相異なる組合せに対応する複数の展開係数Bnm(k)を、K個の周波数帯域の各々について含む。以上の説明から理解される通り、制御装置11は、HOA(higher order Ambisonics)エンコーダとして機能する。情報提供システム10は、以上の手順で生成した第1音場の音場パラメータZ1と第2音場の音場パラメータZ2とを情報処理システム20に送信する。
【0025】
[情報処理システム20]
図7は、情報処理システム20の構成を例示するブロック図である。情報処理システム20は、制御装置21と記憶装置22と通信装置23と操作装置24と再生システム25とを具備する。なお、情報処理システム20は、単体の装置として実現されるほか、相互に別体で構成された複数の装置でも実現される。
【0026】
制御装置21は、情報処理システム20の各要素を制御する単数または複数のプロセッサである。具体的には、例えばCPU、GPU、SPU、DSP、FPGA、またはASIC等の1種類以上のプロセッサにより、制御装置21が構成される。
【0027】
通信装置23は、通信網200を介して情報提供システム10と通信する。例えば、通信装置23は、音場パラメータZ1および音場パラメータZ2を情報提供システム10から受信する。なお、通信装置23と通信網200との間の通信は有線通信および無線通信の何れでもよい。
【0028】
記憶装置22は、制御装置21が実行するプログラムと、制御装置21が使用する各種のデータとを記憶する単数または複数のメモリである。例えば半導体記録媒体および磁気記録媒体等の公知の記録媒体、または複数種の記録媒体の組合せが、記憶装置22として利用される。なお、例えば、情報提供システム10に対して着脱される可搬型の記録媒体、または、制御装置21が通信網200を介してアクセス可能な記録媒体(例えばクラウドストレージ)が、記憶装置22として利用されてもよい。
【0029】
第1実施形態の記憶装置22は、通信装置23が受信した音場パラメータZ1および音場パラメータZ2を記憶する。また、記憶装置22は、音響信号Aを記憶する。音響信号Aは、例えば演奏音または歌唱音等の音響の波形を表す複数のチャンネルの信号である。音響信号Aのデータ形式は任意である。
【0030】
操作装置24は、利用者Uによる操作を受付ける入力機器である。例えば、利用者Uが操作する操作子、または、利用者Uによる接触を検知するタッチパネルが、操作装置24として利用される。なお、情報処理システム20とは別体の操作装置24が、情報処理システム20に対して有線または無線により接続されてもよい。
【0031】
利用者Uは、操作装置24を操作することで情報処理システム20に指示値Wを指示することが可能である。指示値Wは、音場パラメータZ1および音場パラメータZ2の各々が音場パラメータZ3に反映される度合を表す変数である。指示値Wは、操作装置24に対する利用者Uからの操作に応じて連続的に変化する。例えば、操作装置24は、回転可能なツマミ等の回転操作子、または直線的に往復可能なスライダ等の往復操作子を含む。指示値Wは、回転操作子の角度または往復操作子の位置に応じて連続的に変化する。具体的には、指示値Wは0以上かつ1以下の範囲内において、利用者Uからの指示に応じて設定される。
【0032】
再生システム25は、相異なるチャンネルに対応する複数のスピーカ251で構成される音響システムである。例えば3個以上のスピーカ251で構成されるサラウンドシステム、または2個のスピーカ251で構成されるステレオシステムが、再生システム25として例示される。
【0033】
複数のスピーカ251は、音響空間内の相異なる位置に設置される。例えば、複数のスピーカ251は利用者Uの周囲に配置される。各スピーカ251は、音響信号Aが表す音響を放射する放音装置である。具体的には、各チャンネルの音響信号Aが当該チャンネルのスピーカ251に供給されることで音波が放射される。なお、各チャンネルの音響信号Aをデジタルからアナログに変換するD/A変換器、および音響信号Aを増幅する増幅器については図示が便宜的に省略されている。また、情報処理システム20とは別個の再生システム25が情報処理システム20に有線または無線により接続されてもよい。
【0034】
図8は、制御装置21が実行する処理(以下「再生処理」という)のフローチャートである。例えば操作装置24に対する利用者Uからの操作を契機として再生処理が開始される。再生処理が開始されると、制御装置21は、音場パラメータZ1と音場パラメータZ2とを記憶装置22から取得する(Sb1)。以上の通り、制御装置21は、音場パラメータZ1と音場パラメータZ2とを取得する要素(取得部)として機能する。なお、音場パラメータZ1および音場パラメータZ2の取得先は記憶装置22に限定されない。例えば、制御装置21は、情報提供システム10から送信された音場パラメータZ1および音場パラメータZ2を、通信網200を介して通信装置23により受信してもよい。
【0035】
制御装置21は、指示値Wの変更の指示を利用者Uから受付けたか否かを判定する(Sb2)。指示値Wの変更の指示を受付けた場合(Sb2:YES)、制御装置21は、指示値Wを利用者Uから指示された数値に更新する(Sb3)。
【0036】
制御装置21は、合成処理を実行する(Sb4)。合成処理は、音場パラメータZ1と音場パラメータZ2とを利用して音場パラメータZ3を生成する処理である。合成処理には、更新後の指示値Wが適用される。他方、指示値Wの変更が指示されていない場合(Sb2:NO)、指示値Wの更新(Sb3)と合成処理(Sb4)とは実行されない。以上の説明から理解される通り、制御装置21は、音場パラメータZ1と音場パラメータZ2とから音場パラメータZ3を生成する要素(生成部)として機能する。
【0037】
図9は、合成処理のフローチャートである。合成処理が開始されると、制御装置21は、音場パラメータZ1から第1音場の音響エネルギー分布D1を生成する(Sb41)。音響エネルギー分布D1は、半径rの球面上における音響エネルギー(音圧)の分布である。具体的には、制御装置21は、音場パラメータZ1に含まれる複数の展開係数Bnm(k)を加重値として適用した複数の球面調和関数Ynmの加重和を、音響エネルギー分布D1として算定する。
【0038】
同様に、制御装置21は、音場パラメータZ2から第2音場の音響エネルギー分布D2を生成する(Sb42)。具体的には、制御装置21は、音場パラメータZ2に含まれる複数の展開係数Bnm(k)を加重値として適用した複数の球面調和関数Ynmの加重和を、音響エネルギー分布D2として算定する。なお、音響エネルギー分布D1の生成(Sb41)と音響エネルギー分布D2の生成(Sb42)との先後は反転されてよい。
【0039】
図10は、合成処理の説明図である。図10には、第1音場の音響エネルギー分布D1と第2音場の音響エネルギー分布D2とが模式的に図示されている。音響エネルギー分布D1は音響エネルギーのピークP1を含み、音響エネルギー分布D2は音響エネルギーのピークP2を含む。
【0040】
制御装置21は、音響エネルギー分布D1における音響エネルギーのピークP1と、音響エネルギー分布D2における音響エネルギーのピークP2との中間に音響エネルギーのピークP3が位置するように、第3音場の音響エネルギー分布D3を生成する(Sb43)。
【0041】
具体的には、音響エネルギー分布D3のピークP3の位置は、音響エネルギー分布D1のピークP1の位置と音響エネルギー分布D2のピークP2の位置とを指示値Wに応じて内分した位置に設定される。具体的には、指示値Wが最小値0に近付くほど、音響エネルギー分布D3のピークP3は音響エネルギー分布D1のピークP1に近付き、指示値Wが最大値1に近付くほど、音響エネルギー分布D3のピークP3は音響エネルギー分布D2のピークP2に近付く。指示値Wが最小値0に設定されている場合、音響エネルギー分布D1が音響エネルギー分布D3として適用され、指示値Wが最大値1に設定されている場合、音響エネルギー分布D2が音響エネルギー分布D3として適用される。なお、音響エネルギー分布D1のピークP1と音響エネルギー分布D2のピークP2との比較には、例えばワッサースタイン(Wasserstein)距離が利用される。
【0042】
制御装置21は、以上の処理で生成した音響エネルギー分布D3に対応する音場パラメータZ3を生成する(Sb44)。音場パラメータZ3は、相異なる球面調和関数Ynmに対応する複数の展開係数Bnm(k)を含む。以上の説明から理解される通り、制御装置21は、音場パラメータZ1および音場パラメータZ2の各々が利用者Uからの指示に応じた度合で反映された音場パラメータZ3を生成する。合成処理の具体的な手順は以上の通りである。
【0043】
図8に例示される通り、制御装置21は、記憶装置22に記憶された複数の音響信号Aの各々を音場パラメータZ3に応じて加重する(Sb5)。すなわち、制御装置21は、音場パラメータZ3が表す第3音場が音響空間R内に形成されるように、各チャンネルの音響信号Aの音量および位相を制御する。すなわち、制御装置21はHOAデコーダとして機能する。音場パラメータZ3を適用した音場の制御には公知の技術が任意に採用される。
【0044】
制御装置21は、音場パラメータZ3に応じた制御後の各音響信号Aを、再生システム25において当該音響信号Aに対応するスピーカ251に供給する(Sb6)。音響信号Aに応じた音波が各スピーカ251から放射されることで、音響空間Rには第3音場が形成される。すなわち、利用者Uは、第1音場および第2音場とは異なる第3音場を知覚できる。
【0045】
制御装置21は、所定の終了条件が成立したか否かを判定する(Sb7)。終了条件は、例えば利用者Uから終了が指示されたこと、または音響信号Aの全部の再生が終了したことである。終了条件が成立しない場合(Sb7:NO)、制御装置21は処理をステップSb2に移行する。すなわち、利用者Uにより指示値Wの変更が指示されるたびに、指示値Wの更新(Sb3)と更新後の指示値Wを適用した合成処理(Sb4)とが実行される。終了条件が成立した場合(Sb7:YES)、制御装置21は再生処理を終了する。
【0046】
以上に説明した通り、第1実施形態においては、第1音場の音場パラメータZ1と第2音場の音場パラメータZ2とを利用して第3音場の音場パラメータZ3が生成される。したがって、第1音場と第2音場との間の多様な音場を再現できる。第1実施形態においては特に、音場パラメータZ3に対する音場パラメータZ1および音場パラメータZ2の影響の度合が利用者Uからの指示(指示値W)に応じて制御される。したがって、利用者Uの意図に応じた第3音場を再現できる。また、第1実施形態においては、音場パラメータZ3の生成に適用される指示値Wが利用者Uからの指示に応じて連続的に変化する。したがって、第1音場および第2音場の一方から他方に連続的に変化する過程にある任意の第3音場について音場パラメータZ3を生成できる。すなわち、第1音場と第2音場とをモーフィングすることが可能である。
【0047】
B:第2実施形態
第2実施形態を説明する。なお、以下に例示する各態様において機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明と同様の符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0048】
図11は、第2実施形態における合成処理の説明図である。図10を参照して前述した通り、第1実施形態の合成処理においては、第1音場における音響エネルギーのピークP1と第2音場における音響エネルギーのピークP2との中間に音響エネルギーのピークP3が位置するように、第3音場の音響エネルギー分布D3が生成される。第2実施形態の制御装置21は、合成処理において、音場パラメータZ1と音場パラメータZ2との加重和により第3音場の音場パラメータZ3を生成する。
【0049】
具体的には、制御装置21は、音響エネルギー分布D1と音響エネルギー分布D2との加重和により第3音場の音響エネルギー分布D3を生成する。図11に例示される通り、音響エネルギー分布D3は、音響エネルギー分布D1に対応するピークP31と音響エネルギー分布D2に対応するピークP32とを含む。ピークP31の位置は、音響エネルギー分布D1におけるピークP1と同じ位置であり、ピークP32の位置は、音響エネルギー分布D2におけるピークP2と同じ位置である。
【0050】
音響エネルギー分布D3におけるピークP31の数値は、音響エネルギー分布D1のピークP1の数値に対して指示値Wに応じた加重値(1-W)を乗算した数値に設定される。音響エネルギー分布D3におけるピークP32の数値は、音響エネルギー分布D2のピークP2の数値に対して指示値Wを乗算した数値に設定される。したがって、指示値Wが最小値0に近付くほど、ピークP31の数値は増加し、かつ、ピークP32の数値は減少する。他方、指示値Wが最大値1に近付くほど、ピークP31の数値は減少し、かつ、ピークP32の数値は増加する。指示値Wが最小値0に設定されている場合、音響エネルギー分布D1が音響エネルギー分布D3として適用され、指示値Wが最大値1に設定されている場合、音響エネルギー分布D2が音響エネルギー分布D3として適用される。
【0051】
合成処理以外の動作は第1実施形態と同様である。したがって、第2実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。また、第2実施形態においては、音場パラメータZ1と音場パラメータZ2との加重和(例えば平均)により第3音場の音場パラメータZ3が生成される。したがって、第1実施形態と比較して合成処理に必要な処理負荷を軽減できる。
【0052】
他方、第1実施形態においては、第1音場における音響エネルギー分布D1のピークP1と第2音場における音響エネルギー分布D2のピークP2との中間の位置にピークP3が位置するように、第3音場の音場パラメータZ3が生成される。したがって、第2実施形態と比較して、第1音場と第2音場との中間の音響特性を利用者Uが明確に知覚可能な第3音場の音場パラメータZ3を生成できるという利点がある。
【0053】
C:第3実施形態
図12は、第3実施形態における電子楽器40の構成を例示するブロック図である。電子楽器40は、利用者Uによる演奏操作に応じた音響を再生する情報処理システムである。図12に例示された電子楽器40は、第1実施形態の情報処理システム20と同様の要素(制御装置21,記憶装置22,通信装置23、操作装置24,再生システム25)に加えて鍵盤26と音源装置27とを具備する電子鍵盤楽器である。
【0054】
鍵盤26は、相異なる複数の音高に対応する複数の鍵で構成される。音源装置27は、利用者Uが操作する鍵に対応する音高の楽音を表す音響信号Aを生成する。なお、制御装置21がプログラムを実行することで音源装置27の機能が実現されてもよい。すなわち、利用者Uによる演奏操作に応じて音響信号Aを生成する要素(音源部)は、制御装置21により実現されるソフトウェア音源、および音響信号Aの生成に専用されるハードウェア音源(音源装置27)の何れにより実現されてもよい。
【0055】
第1実施形態においては、記憶装置22に記憶された音響信号Aに音場パラメータZ3を適用した(Sb5)。第3実施形態の制御装置21は、音源装置27が生成した音響信号Aに音場パラメータZ3を適用する。音響信号Aを取得する方法以外は第1実施形態と同様である。したがって、第3実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。以上の説明においては第1実施形態を基礎として第3実施形態を説明したが、第2実施形態が電子楽器40に適用されてもよい。
【0056】
第3実施形態においても第1実施形態と同様に、利用者Uによる指示に応じた指示値Wが第3音場の音場パラメータZ3の生成に適用される。したがって、利用者Uは、所望の音響特性を有する第3音場で電子楽器40を演奏できる。例えば、利用者Uは、自身が出演する演奏会が開催される予定の音響ホールと同等の音場において、電子楽器40の演奏を練習できる。また、例えば世界の著名な音響ホールと同等の音場において、電子楽器40を演奏できる。
【0057】
D:変形例
以上に例示した各態様に付加される具体的な変形の態様を以下に例示する。前述の実施形態および以下に例示する変形例から任意に選択された複数の態様を、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合してもよい。
【0058】
(1)前述の各形態においては、音場パラメータZ(Z1~Z3)が、相異なる球面調和関数Ynmに対応する複数の展開係数Bnm(k)を含む構成を例示したが、音場パラメータZの内容は以上の例示に限定されない。音場パラメータZが、1個の球面上における音響エネルギー分布D(D1~D3)を表す形態も想定される。例えば、音場パラメータZ1は、第1音場の音響エネルギー分布D1を表し、音場パラメータZ2は、第2音場の音響エネルギー分布D2を表す。同様に、第3音場の音響エネルギー分布D3を表す音場パラメータZ3が利用されてもよい。また、音場パラメータZ1と音場パラメータZ2と音場パラメータZ3とは、相異なる種類または形式のパラメータでもよい。例えば、音場パラメータZ1および音場パラメータZ2が複数の展開係数Bnm(k)で構成され、音場パラメータZ3が第3音場の音響エネルギー分布D3を表す形態も想定される。
【0059】
(2)第1実施形態においては、音響エネルギー分布D1のピークP1と音響エネルギー分布D2のピークP2との中間にピークP3を配置することで第3音場の音響エネルギー分布D3を生成したが、合成処理の具体的な手順は以上の例示に限定されない。例えば、指示値Wの相異なる数値に対応する複数の音場パラメータZが選択候補として記憶装置22に事前に記憶された形態も想定される。各選択候補の音場パラメータZは、複数の展開係数Bnm(k)で構成されてもよいし、音響エネルギー分布Dを表現するパラメータでもよい。選択候補毎にピークP3の位置が相違する。合成処理において、制御装置21は、記憶装置22に記憶された複数の選択候補のうち利用者Uから指示された指示値Wに対応する選択候補を、第3音場の音響エネルギー分布D3として選択する。第2実施形態においても同様に、指示値Wの相異なる数値に対応する複数の音場パラメータZが選択候補として記憶装置22に事前に記憶された形態が想定される。
【0060】
(3)前述の各形態においては、離散ウェーブレット変換により観測信号X(q)からK個の音響成分C(q,1)~C(q,K)を生成したが、K個の音響成分C(q,1)~C(q,K)を生成する方法は以上の例示に限定されない。例えば、観測信号X(q)に対する離散フーリエ変換により、相異なる周波数帯域に対応するK個の音響成分C(q,1)~C(q,K)を生成してもよい。ただし、離散ウェーブレット変換を利用する前述の形態によれば、離散フーリエ変換を利用する形態と比較して、周波数分解能と時間分解能とを両立できるという利点がある。なお、通過帯域が相違する複数の帯域通過フィルタで構成されるフィルタバンクを利用して、観測信号X(q)からK個の音響成分C(q,1)~C(q,K)を生成してもよい。以上の説明から理解される通り、音響成分C(q,1)~C(q,K)の生成は、周波数領域での演算に限定されず、時間領域での演算で実現されてもよい。
【0061】
(4)前述の各形態においては、利用者Uの周囲に配置される複数のスピーカ251を再生システム25が具備する形態を例示したが、再生システム25は、利用者Uの頭部に装着されるヘッドホンでもよい。なお、ヘッドホンは、利用者Uの耳に装着されるイヤホンを含む。
【0062】
再生システム25がヘッドホンである形態においては、音場パラメータZ3に頭部伝達関数(頭部インパルス応答)が合成され、合成後の音場パラメータZ3を利用して音響信号Aの音場が制御される。すなわち、第3音場を利用者Uが知覚するバイノーラル再生が実現される。なお、音場パラメータZ3が反映された音響信号Aに頭部伝達関数を畳込む形態も想定される。
【0063】
(5)前述の各形態においては、Q個の観測信号X(1)~X(Q)を利用して音場パラメータZを生成する解析処理を情報提供システム10の制御装置11が実行したが、情報処理システム20の制御装置21が解析処理を実行してもよい。
【0064】
(6)例えばスマートフォンまたはタブレット端末等の情報装置との間で通信するサーバ装置により、前述の各形態における情報処理システム20が実現されてもよい。情報処理システム20の制御装置21は、情報装置の利用者Uからの指示に応じた指示値Wを当該情報装置から通信装置23により受信する。制御装置21は、指示値Wを適用した前述の合成処理により第3音場の音場パラメータZ3を生成する。制御装置21は、音場パラメータZ3を通信装置23から情報装置に送信する。情報装置は、音場パラメータZ3を適用した音響信号Aの再生を実行する。なお、音場パラメータZ3を適用した音響信号Aが、情報処理システム20から情報装置に送信されてもよい。
【0065】
(7)前述の各形態に係る情報処理システム20の機能は、前述の通り、制御装置21を構成する単数または複数のプロセッサと、記憶装置22に記憶されたプログラムとの協働により実現される。以上に例示したプログラムは、コンピュータが読取可能な記録媒体に格納された形態で提供されてコンピュータにインストールされ得る。記録媒体は、例えば非一過性(non-transitory)の記録媒体であり、CD-ROM等の光学式記録媒体(光ディスク)が好例であるが、半導体記録媒体または磁気記録媒体等の公知の任意の形式の記録媒体も包含される。なお、非一過性の記録媒体とは、一過性の伝搬信号(transitory, propagating signal)を除く任意の記録媒体を含み、揮発性の記録媒体も除外されない。また、配信装置が通信網を介してプログラムを配信する構成では、当該配信装置においてプログラムを記憶する記録媒体が、前述の非一過性の記録媒体に相当する。
【0066】
E:付記
以上に例示した形態から、例えば以下の構成が把握される。
【0067】
本開示のひとつの態様(態様1)に係る情報処理方法は、第1音場の特徴を表す第1音場パラメータと、前記第1音場とは音響特性が相違する第2音場の特徴を表す第2音場パラメータとを取得し、前記第1音場パラメータと前記第2音場パラメータとを利用して、前記第1音場および前記第2音場とは異なる音響特性を有する第3音場の特徴を表す第3音場パラメータを生成する。以上の態様においては、第1音場の第1音場パラメータと第2音場の第2音場パラメータとを利用して第3音場の第3音場パラメータが生成される。したがって、第1音場と第2音場との間の多様な音場を再現できる。
【0068】
「音場パラメータ」は、音響空間内に形成される音場の音響的な特徴を表すパラメータである。具体的には、音場パラメータは、相異なる球面調和関数Ynmに対応する複数の展開係数Bnmの集合、または、1個の球面上における音響エネルギーの分布のパラメータ(ΣnΣm{BnmYnm})である。
【0069】
「第1音場パラメータ」は、例えば第1音場が形成される音響空間内における収音の結果を利用して算定される。「第2音場パラメータ」は、例えば第2音場が形成される音響空間内における収音の結果を利用して算定される。ただし、第1音場パラメータおよび第2音場パラメータは、音響空間内における実際の収音により取得されたパラメータに限定されず、例えば演算処理により算定されたパラメータでもよい。例えば、本開示の情報処理方法により生成された音場パラメータを、第1音場パラメータおよび第2音場パラメータの一方として利用することで、さらに別個の音場に対応する音場パラメータを生成してもよい。
【0070】
「第3音場」は、例えば第1音場および第2音場とは異なる特性を有する音場である。例えば、第1音場および第2音場の一方を他方に近付けていく過程にある音場が第3音場である。すなわち、第3音場は、第1音場と第2音場との中間的な特性を有する音場とも表現される。なお、「中間的」とは、第1音場と第2音場との双方の特性が反映されていることを意味し、第1音場と第2音場とが均等に反映された音場には限定されない。例えば、第1音場および第2音場の一方が他方に対して優勢に反映された音場も、「第3音場」には包含される。具体的には、第1音場パラメータと第2音場パラメータとの加重和により第3音場パラメータを生成する形態、または、第1音場における音響エネルギーのピークと第2音場における音響エネルギーのピークとの中間の位置に音響エネルギーのピークが存在するように第3音場パラメータを生成する形態が想定される。
【0071】
態様1の具体例(態様2)において、前記第3音場パラメータの生成においては、前記第1音場パラメータおよび前記第2音場パラメータの各々が利用者からの指示に応じた度合で反映された前記第3音場パラメータを生成する。以上の態様においては、第3音場パラメータに対する第1音場パラメータおよび第2音場パラメータの影響の度合が利用者からの指示に応じて制御される。したがって、利用者の意図に応じた第3音場を再現できる。
【0072】
態様2の具体例(態様3)において、前記第3音場パラメータの生成においては、前記利用者からの操作に応じて連続的に変化する指示値を適用した演算により、前記第1音場パラメータと前記第2音場パラメータとから前記第3音場パラメータを生成する。以上の態様においては、第3音場パラメータの生成に適用される指示値が利用者からの指示に応じて連続的に変化する。したがって、第1音場および第2音場の一方から他方に連続的に変化する過程にある任意の第3音場について、第3音場パラメータを生成できる。なお、指示値は、例えば回転可能なツマミ等の操作子、または直線的に移動可能なスライダ等の操作子に対する操作に応じて、連続的に変化する数値である。
【0073】
態様1から態様3の何れかの具体例(態様4)において、さらに、相異なるスピーカに供給される複数の音響信号の各々を、前記第3音場パラメータに応じて加重する。以上の態様においては、第3音場パラメータに応じて加重された複数の音響信号の各々が相異なるスピーカに供給される。したがって、複数のスピーカからの放射音を受聴した利用者は、第1音場および第2音場とは異なる第3音場を知覚できる。
【0074】
態様1から態様4の何れかの具体例(態様5)において、前記第1音場パラメータおよび前記第2音場パラメータの各々は、相異なる球面調和関数に対応する複数の展開係数を含む。また、態様1から態様4の何れかの具体例(態様6)において、前記第1音場パラメータおよび前記第2音場パラメータの各々は、1個の球面上における音響エネルギーの分布を表すパラメータである。なお、「音響エネルギーの分布」は、例えば、複数の展開係数Bnmを加重値として適用した複数の球面調和関数Ynmの加重和(ΣnΣm{BnmYnm})である。
【0075】
態様1から態様5の何れかの具体例(態様7)において、前記第3音場パラメータの生成においては、前記第1音場パラメータと前記第2音場パラメータとの加重和により前記第3音場パラメータを生成する。以上の態様においては、第1音場パラメータと第2音場パラメータとの加重和(例えば平均)により第3音場パラメータが生成される。したがって、第3音場パラメータの生成に必要な処理負荷を軽減できる。
【0076】
態様1から態様5の何れかの具体例(態様8)において、前記第3音場パラメータの生成においては、前記第3音場において、前記第1音場の音響エネルギーのピークと前記第2音場の音響エネルギーのピークとの中間に音響エネルギーが位置するように、前記第3音場パラメータを生成する。以上の態様においては、第1音場の音響エネルギーのピークと第2音場の音響エネルギーのピークとの中間の位置に第3音場の音響エネルギーのピークが位置するように、第3音場パラメータが生成される。したがって、第1音場と第2音場との中間の音響特性を受聴者が明確に知覚可能な第3音場の第3音場パラメータを生成できる。
【0077】
本開示のひとつの態様(態様9)に係る情報処理システムは、第1音場の特徴を表す第1音場パラメータと、前記第1音場とは音響特性が相違する第2音場の特徴を表す第2音場パラメータとを取得する取得部と、前記第1音場パラメータと前記第2音場パラメータとを利用して、前記第1音場および前記第2音場とは異なる音響特性を有する第3音場の特徴を表す第3音場パラメータを生成する生成部とを具備する。なお、情報処理システムは、汎用のコンピュータシステムのほか、電子楽器等の演奏用のコンピュータシステムも包含する。
【0078】
本開示のひとつの態様(態様10)に係るプログラムは、第1音場の特徴を表す第1音場パラメータと、前記第1音場とは音響特性が相違する第2音場の特徴を表す第2音場パラメータとを取得する取得部、および、前記第1音場パラメータと前記第2音場パラメータとを利用して、前記第1音場および前記第2音場とは異なる音響特性を有する第3音場の特徴を表す第3音場パラメータを生成する生成部、としてコンピュータシステムを機能させる。
【符号の説明】
【0079】
100…情報システム、200…通信網、10…情報提供システム、11,21…制御装置、12,22…記憶装置、13,23…通信装置、20…情報処理システム、24…操作装置、25…再生システム、251…スピーカ、26…鍵盤、27…音源装置、30…球状マイクロホンアレイ、31…筐体、32…マイクロホン、40…電子楽器。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12