(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023120141
(43)【公開日】2023-08-29
(54)【発明の名称】洗浄エアゾール製品及び洗浄方法
(51)【国際特許分類】
C11D 17/04 20060101AFI20230822BHJP
C11D 1/722 20060101ALI20230822BHJP
C11D 1/72 20060101ALI20230822BHJP
C11D 3/43 20060101ALI20230822BHJP
B08B 3/02 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
C11D17/04
C11D1/722
C11D1/72
C11D3/43
B08B3/02 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178907
(22)【出願日】2022-11-08
(31)【優先権主張番号】P 2022023198
(32)【優先日】2022-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000100539
【氏名又は名称】アース製薬株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000141118
【氏名又は名称】株式会社丸一
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】森本 彩香
(72)【発明者】
【氏名】江頭 優俊
(72)【発明者】
【氏名】前原 邦一
(72)【発明者】
【氏名】中村 泰祐
【テーマコード(参考)】
3B201
4H003
【Fターム(参考)】
3B201AB52
3B201BB22
3B201BB32
3B201BB62
3B201BB94
4H003AC07
4H003AC08
4H003AC23
4H003BA20
4H003BA21
4H003DA07
4H003DA08
4H003DB01
4H003DB02
4H003DB04
4H003EB02
4H003EB04
4H003EB06
4H003EB09
4H003EB16
4H003ED02
4H003ED29
4H003FA17
4H003FA26
(57)【要約】
【課題】泡状の洗浄剤を被洗浄面に容易に広範囲に噴射でき、被洗浄面に付着した洗浄剤の視認性に優れた洗浄エアゾール製品及び洗浄方法を提供する。
【解決手段】噴口面積が1.7mm
2以上、且つ、噴口長が3mm以上のメカニカルブレークアップボタンを備え、下記式(1)で表される界面活性剤と、cLogKowが-0.5~4.0の溶剤と、噴射剤として液化石油ガス、を含み、20℃における内圧が0.3MPa以上である洗浄エアゾール製品。
R
1-(EO)m-(PO)n-H ・・・(1)
(式中、R
1は、直鎖又は分岐状の炭素数8以上16未満のアルキル基を示し、EOはエチレンオキサイド基を示し、POはプロピレンオキサイド基を示し、mは1~15であり、nは0~5である。)
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
噴口面積が1.7mm2以上、且つ、噴口長が3mm以上のメカニカルブレークアップボタンを備え、
下記式(1)で表される界面活性剤と、
cLogKowが-0.5~4.0の溶剤と、
噴射剤として液化石油ガス、を含み、
20℃における内圧が0.3MPa以上である洗浄エアゾール製品。
R1-(EO)m-(PO)n-H ・・・(1)
(式中、R1は、直鎖又は分岐状の炭素数8以上16未満のアルキル基を示し、EOはエチレンオキサイド基を示し、POはプロピレンオキサイド基を示し、mは1~15であり、nは0~5である。)
【請求項2】
噴口径が1.5mm以上、且つ、噴口長が3mm以上のメカニカルブレークアップボタンを備え、
下記式(1)で表される界面活性剤と、
cLogKowが-0.5~4.0の溶剤と、
噴射剤として液化石油ガス、を含み、
20℃における内圧が0.3MPa以上である洗浄エアゾール製品。
R1-(EO)m-(PO)n-H ・・・(1)
(式中、R1は、直鎖又は分岐状の炭素数8以上16未満のアルキル基を示し、EOはエチレンオキサイド基を示し、POはプロピレンオキサイド基を示し、mは1~15であり、nは0~5である。)
【請求項3】
噴口面積が1.7mm2以上、且つ、噴口長が3mm以上のメカニカルブレークアップボタンを備え、
下記式(1)で表される界面活性剤と、
cLogKowが-0.5~4.0の溶剤と、
噴射剤として液化石油ガス、を含み、
20℃における内圧が0.3MPa以上である洗浄エアゾール製品を用いて、被洗浄面に泡を付着させる、洗浄方法。
R1-(EO)m-(PO)n-H ・・・(1)
(式中、R1は、直鎖又は分岐状の炭素数8以上16未満のアルキル基を示し、EOはエチレンオキサイド基を示し、POはプロピレンオキサイド基を示し、mは1~15であり、nは0~5である。)
【請求項4】
噴口径が1.5mm以上、且つ、噴口長が3mm以上のメカニカルブレークアップボタンを備え、
下記式(1)で表される界面活性剤と、
cLogKowが-0.5~4.0の溶剤と、
噴射剤として液化石油ガス、を含み、
20℃における内圧が0.3MPa以上である洗浄エアゾール製品を用いて、被洗浄面に泡を付着させる、洗浄方法。
R1-(EO)m-(PO)n-H ・・・(1)
(式中、R1は、直鎖又は分岐状の炭素数8以上16未満のアルキル基を示し、EOはエチレンオキサイド基を示し、POはプロピレンオキサイド基を示し、mは1~15であり、nは0~5である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄エアゾール製品及び洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生活スタイルの多様化に伴い、家事の時間短縮や省力化が求められている。特にお風呂掃除(浴室の洗浄)の負担は大きいと言われており、時間短縮や省力化の要請が高い。
【0003】
浴槽、浴室の床面や壁面等には、例えば、脂肪酸金属塩、遊離脂肪酸、グリセライド、窒素化合物等の有機物、及び泥等の無機物が汚れとして付着するため、浴室の洗浄には、液体洗浄剤が用いられることが多い。通常、このような液体洗浄剤をスポンジ等に含浸させて被洗浄面を擦るか、又は、このような液体洗浄剤を被洗浄面に噴霧した後にスポンジ等で擦ることにより、洗浄することが行われている。しかしながら、被洗浄面を擦って洗浄することは、清掃をする者に大きな負担がかかる。
【0004】
そこで作業負担の軽減のために、ポンプスプレータイプの製品を用いて浴室の床面や壁面等に洗浄剤を噴霧することにより、スポンジ等による擦り洗いをすることなく浴室の洗浄を可能とする、いわゆる「擦らず落とす」タイプの洗浄剤も提案されている。このような技術としては、例えば、トリガー式スプレー容器から噴霧した液体洗浄剤により浴槽の内壁面等の被洗浄面を洗浄する方法において、トリガー式スプレー容器を水平方向に動かしながら洗浄剤を噴霧することによって、一吹きで50cm以上の範囲にわたる噴霧を可能とする洗浄方法が記載されている(例えば、下記特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、ポンプスプレータイプの製品は、被洗浄面全体にスプレーするには、清掃をする者(以下、用具を用いて清掃をする者を「使用者」という。)は、多くの噴射回数が必要であり、手が疲れるなど使用者の負担が大きいという問題がある。
【0007】
また、噴射回数を減らすため、エアゾールタイプの洗浄剤も検討されている。しかし、エアゾールタイプの洗浄剤は、洗浄が必要な面積が大きい場合には、ボタンを押す時間が長くなり、使用者の負担軽減の観点で未だ改善の余地がある。
【0008】
さらに、これら洗浄剤の多くは、噴射後、被洗浄面に付着した洗浄剤の視認性が悪いため、洗浄剤を付着させた場所が判別し辛く、重複して処理したり、洗浄剤が付着していない場所ができたりして、被洗浄面全体をむらなく効率的に洗浄することが困難であった。
【0009】
本発明は上述の課題を解決すべく、泡状の洗浄剤を被洗浄面に容易に広範囲に噴射でき、且つ、被洗浄面に付着した洗浄剤の視認性に優れた洗浄エアゾール製品及び洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本出願の発明者らは、鋭意研究を行った結果、以下に記載された本発明の洗浄方法により上述の課題を解決可能なことを見出した。
<1>
噴口面積が1.7mm2以上、且つ、噴口長が3mm以上のメカニカルブレークアップボタンを備え、
下記式(1)で表される界面活性剤と、
cLogKowが-0.5~4.0の溶剤と、
噴射剤として液化石油ガス、を含み、
20℃における内圧が0.3MPa以上である洗浄エアゾール製品。
R1-(EO)m-(PO)n-H ・・・(1)
(式中、R1は、直鎖又は分岐状の炭素数8以上16未満のアルキル基を示し、EOはエチレンオキサイド基を示し、POはプロピレンオキサイド基を示し、mは1~15であり、nは0~5である。)
<2>
噴口径が1.5mm以上、且つ、噴口長が3mm以上のメカニカルブレークアップボタンを備え、
下記式(1)で表される界面活性剤と、
cLogKowが-0.5~4.0の溶剤と、
噴射剤として液化石油ガス、を含み、
20℃における内圧が0.3MPa以上である洗浄エアゾール製品。
R1-(EO)m-(PO)n-H ・・・(1)
(式中、R1は、直鎖又は分岐状の炭素数8以上16未満のアルキル基を示し、EOはエチレンオキサイド基を示し、POはプロピレンオキサイド基を示し、mは1~15であり、nは0~5である。)
<3>
噴口面積が1.7mm2以上、且つ、噴口長が3mm以上のメカニカルブレークアップボタンを備え、
下記式(1)で表される界面活性剤と、
cLogKowが-0.5~4.0の溶剤と、
噴射剤として液化石油ガス、を含み、
20℃における内圧が0.3MPa以上である洗浄エアゾール製品を用いて、被洗浄面に泡を付着させる、洗浄方法。
R1-(EO)m-(PO)n-H ・・・(1)
(式中、R1は、直鎖又は分岐状の炭素数8以上16未満のアルキル基を示し、EOはエチレンオキサイド基を示し、POはプロピレンオキサイド基を示し、mは1~15であり、nは0~5である。)
<4>
噴口径が1.5mm以上、且つ、噴口長が3mm以上のメカニカルブレークアップボタンを備え、
下記式(1)で表される界面活性剤と、
cLogKowが-0.5~4.0の溶剤と、
噴射剤として液化石油ガス、を含み、
20℃における内圧が0.3MPa以上である洗浄エアゾール製品を用いて、被洗浄面に泡を付着させる、洗浄方法。
R1-(EO)m-(PO)n-H ・・・(1)
(式中、R1は、直鎖又は分岐状の炭素数8以上16未満のアルキル基を示し、EOはエチレンオキサイド基を示し、POはプロピレンオキサイド基を示し、mは1~15であり、nは0~5である。)
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、泡状の洗浄剤を被洗浄面に容易に広範囲に噴射でき、且つ、被洗浄面に付着した洗浄剤の視認性に優れた洗浄エアゾール製品及び洗浄方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態の洗浄エアゾール製品の構成を示す概略図である。
【
図2】本実施形態の洗浄エアゾール製品に用いられるメカニカルブレークアップボタンの噴射部材の一例を示す図であり、(A)は断面図、(B)は螺旋機構部を噴射方向裏側から観察した図である。
【
図3】噴射部材の断面構造の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。以下の実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をその実施形態のみに限定する趣旨ではない。
【0014】
《洗浄エアゾール製品》
本実施形態の洗浄エアゾール製品の一実施態様は、噴口面積が1.7mm2以上、且つ、噴口長が3mm以上のメカニカルブレークアップボタンを備え、下記式(1)で表される界面活性剤と、cLogKowが-0.5~4.0の溶剤と、噴射剤として液化石油ガス、を含み、20℃における内圧が0.3MPa以上である。
R1-(EO)m-(PO)n-H ・・・(1)
(式中、R1は、直鎖又は分岐状の炭素数8以上16未満のアルキル基を示し、EOはエチレンオキサイド基を示し、POはプロピレンオキサイド基を示し、mは1~15であり、nは0~5である。)
また、本実施形態の洗浄エアゾール製品の他の実施態様は、噴口径が1.5mm以上、且つ、噴口長が3mm以上のメカニカルブレークアップボタンを備え、下記式(1)で表される界面活性剤と、cLogKowが-0.5~4.0の溶剤と、噴射剤として液化石油ガス、を含み、20℃における内圧が0.3MPa以上である。
R1-(EO)m-(PO)n-H ・・・(1)
(式中、R1は、直鎖又は分岐状の炭素数8以上16未満のアルキル基を示し、EOはエチレンオキサイド基を示し、POはプロピレンオキサイド基を示し、mは1~15であり、nは0~5である。)
以上、これらの各実施態様を総じて、「本実施形態の洗浄エアゾール製品」と称することがある。
【0015】
本実施形態の洗浄エアゾール製品は、噴射部を備えたメカニカルブレークアップボタンと、界面活性剤、溶剤などを含む洗浄剤、及び、液化石油ガス(以下、「LPG」と称することがある。)等の噴射剤、を含むエアゾール組成物を収容した容器と、を備えて構成することができる。
【0016】
本実施形態の洗浄エアゾール製品によれば、(1)噴口面積が1.7mm2以上、及び、(2)噴口径が1.5mm以上、の少なくともいずれかを満たし、且つ、噴口長が3mm以上のメカニカルブレークアップボタンを備え、前記式(1)で表される界面活性剤と、cLogKowが-0.5~4.0の溶剤と、噴射剤として液化石油ガス、を含み、20℃における内圧が0.3MPa以上とすることで、エアゾールにより連続的に洗浄剤の噴射が可能であり、且つ、泡状の洗浄剤を広角に噴射できる。このため、ユニットバス等の壁面や浴槽壁などの被洗浄面に対し、噴射一回当たりの被洗浄面に付着する泡状の洗浄剤の面積が大きい。さらに、本実施形態の洗浄エアゾール製品によれば、良好な泡を形成でき、かつ、被洗浄面に対し泡状の洗浄剤を連続的に付着させることができるため、噴射後の洗浄剤の視認性に優れる。
このように、本実施形態の洗浄エアゾール製品によれば、泡状の洗浄剤を被洗浄面に容易に広範囲に噴射でき、被洗浄面に付着した洗浄剤の視認性に優れるため、洗浄剤の噴射回数及び噴射時間を減らし、被洗浄面全体をむらなく効率的に洗浄することができ、清掃時間の短縮、省力化を実現できる。
また、本実施形態の洗浄エアゾール製品によれば、被洗浄面に対する泡の付着時間が良好であるため洗浄剤の洗浄効果を十分に発揮でき、さらに、清掃効率に優れ、清掃時間の短縮、省力化を実現できる。
【0017】
〈洗浄エアゾール製品の構成〉
図1を用いて本実施形態の洗浄エアゾール製品の構成について説明する。
図1は、本実施形態の洗浄エアゾール製品の構成を示す概略図である。
【0018】
図1に示すように、洗浄エアゾール製品10は、メカニカルブレークアップボタン20と、内部にエアゾール組成物60を収容する容器40と、を備える。また、メカニカルブレークアップボタン20の洗浄液噴射側末端には、メカニカルブレークアップ機構を有する噴射部材30が備えられている。洗浄エアゾール製品10は、気化した噴射剤(LPG)の圧力によってエアゾール組成物60中の洗浄剤を泡状にして噴射可能なように構成されている。容器40に収容されるエアゾール組成物60については後述する。
【0019】
容器40は、例えば円筒状に形成される金属製の缶である。容器40には、洗浄剤と噴射剤としてのLPGとを含む液体のエアゾール組成物60が収容される。エアゾール組成物60は圧力のかかった状態で収容されているため、メカニカルブレークアップボタン20が操作されると、エアゾール組成物60が、噴射部材30から一気に放出され、減圧による噴射剤の急激な膨張によってエアゾール組成物が泡となって噴射する。また、特に限定はないが、
図1に示すように容器40の底面は紙面上方に凸となる半球状となっており、後述するバルブ50のチューブ末端が容器4の底面の側壁側(横側)に位置し、最後までエアゾール組成物60を噴霧可能なように構成することができる。なお、容器である缶及び後述するバルブ50には、エポキシフェノール樹脂コート、エポキシユリア樹脂コート、ポリアミドイミド樹脂コート、PETのラミネート、PBTのラミネート、PPのラミネート加工等のコーティングを施してもよい。
【0020】
洗浄エアゾール製品10のメカニカルブレークアップボタン20は、内部に通路(後述の内部通路C)が設けられたボタン機構を備え、メカニカルブレークアップボタン20が操作されていない不使用時においてこの内部通路Cと容器40内部とを閉止し、メカニカルブレークアップボタン20が操作されている使用時においてこの内部通路Cと容器40内部とを開放して両者を連通させるステムを含むバルブ50と、ステムの上端部と係合することによってバルブ50のステムの内部通路50Aと連通する内部通路Cが設けられている。すなわち、使用者がメカニカルブレークアップボタン20を操作することによって、ボタン機構がステムを移動させることでステムの内部通路50Aと容器40内部とが連通される。メカニカルブレークアップボタン20は、さらに、容器40の上端部と係合してボタン機構を包囲するように設けられたキャップ(図示を省略)と、メカニカルブレークアップボタン20の端部と係合しメカニカルブレークアップボタン20の内部通路Cと連通する噴口が設けられる噴射部材30とを備えている。
【0021】
バルブ50はステムを備えており、当該ステムは、例えば、中空の円筒状乃至円環状に設けられる。ステムは、不使用時においては内部通路Cと容器40内部とを閉止して設けられる。また、使用者によってメカニカルブレークアップボタン20のトリガーがひかれると、当該トリガーの移動に伴って移動し、閉塞されていたステム孔を開放し、メカニカルブレークアップボタン20の内部通路Cと容器40内部とを連通可能に構成されている。バルブ50は、図示を省略するが、洗浄エアゾール製品10が使用者に操作されることにより容器40内と外部との連通及び遮断を切り替えるための開閉部材と、開閉部材が取り付けられるハウジングと、ハウジングを耐圧容器の所定の位置に保持するためのマウント部材を備える。開閉部材は、メカニカルブレークアップボタン20のボタン機構と連動して摺動するステムを含む。上述のようにステムの摺動によりエアゾール組成物の連通(噴射状態)及び遮断(非噴射状態)が切り替えられる。バルブ50には、耐圧容器からエアゾール組成物を取り込むためのハウジング孔と、取り込まれたエアゾール組成物を噴射部材に送るためのステム孔とが形成されている。
特に限定されるものではないが、バルブ50は、例えば、直径φ1.2mm×3個といった大型のステム孔を備えることができる。また、ステム孔のサイズは特に限定されるものではないが、噴射量を増やす等の観点から、例えば、好ましくは0.28mm2~5mm2、さらに好ましくは1.5mm2~4.5mm2とすることができる。さらに、バルブ(ステム)は所望に応じて適宜変更が可能である。例えば、浴室の床や浴槽の底面等を処理する際、横倒しでの噴射を可能とするおもり付きバルブや、逆さまにしても使用可能な正倒立バルブなどを適宜選定することができる。
【0022】
メカニカルブレークアップボタン20は、ボタン機構に連動し使用者が把持することにより揺動可能に設けられたトリガーを備えている。上述のように、使用者がトリガーをひくことにより、ステムが移動しステムの内部通路50Aと容器40内部とが連通するように構成されている。このためトリガーがひかれると、メカニカルブレークアップボタン20内の内部通路Cを介して容器40のエアゾール組成物が外部に噴射可能に構成されている。ただし、メカニカルブレークアップボタン20は必ずしもトリガーを備えていなくてもよく、例えば、使用者が押下する噴射ボタンを備えた構成を備えてもよい。
【0023】
また、メカニカルブレークアップボタン20は、通常のボタン(ストレートタイプのボタン)と異なり、ボタンの噴口裏側に狭い通路(溝)が形成されている。このような溝によって、エアゾール組成物は噴射される際に機械的に旋回され、ストレートタイプよりも微細化されたミスト状に噴射される。具体的には、トリガーがひかれると、ステムが移動しステムの内部通路50Aと容器40内部とが連通する。内部通路50Aと容器40内部とが連通すると、容器40のエアゾール組成物は、メカニカルブレークアップボタン20内の内部通路Cを介して噴射部材30に到達する。図示を省略するが、内部通路Cは一定区間が噴射方向側から観察した断面視において円環状(ドーナッツ状)となるように流路が拡張されている。内部通路Cの円環状の区間は噴射部材30に向けて連続して形成されるとともに、噴射部材30との接続箇所に達することなく終端している。このため、容器40のエアゾール組成物は、メカニカルブレークアップボタン20内の内部通路Cに流通した後、円環状の流路に沿って
図1における内部通路Cの紙面上方にも回り込む。さらに円環状の流路に沿って回り込んだエアゾール組成物は、円環状の流路の終端において合流し、その後、噴射部材30に送られ、ボタンの噴口裏側に形成された溝によって機械的に旋回されミスト状に噴射される。
【0024】
メカニカルブレークアップボタン20の噴射方向側縁端には、仕切りのない真円形の噴口を一つ備えた噴射部材30が備えられている。噴射部材30について
図2及び
図3を用いて説明する。
図2は、本実施形態の洗浄エアゾール製品10に用いられるメカニカルブレークアップボタン20の噴射部材30の一例を示す図であり、(A)は断面図、(B)は螺旋機構部34を噴射方向裏側から観察した図である。
図3は、噴射部材30の断面構造の一例を示す斜視図である。
【0025】
図2(A)に示すように、噴射部材30には、矢印Dで示される噴射方向末端に噴口32が設けられており、矢印Dで示される噴射方向に沿って内部通路を通過したエアゾール組成物が噴口32から噴射される。噴射部材30は、内部通路内に螺旋機構部34を備えており、エアゾール組成物は螺旋機構部34を通過する際に機械的に旋回される。
【0026】
図2(B)に示すように、螺旋機構部34には中心部に円状の孔部36と、孔部36と連通し噴射方向に沿って設けられた複数の細溝38とを備えている。
図2(B)においては、4つの細溝38が孔部36を中心として放射状に設けられている。また、
図2(B)に示されるように、本実施形態においては、螺旋機構部34が螺旋機構部材34A~34Dの4つの部材で構成されており、並んで配置される2つの部材(螺旋機構部材)によって細溝38の側面が形成されている。例えば、本実施形態においては、
図2(B)及び
図3に示されるように、螺旋機構部材34A及び螺旋機構部材34Bに細溝38の一つが設けられている。但し、本実施形態において、螺旋機構部34における細溝38の形状及びその数は限定されるものではなく、適宜変更することができる。また、細溝38は、噴射方向に沿って螺旋状に形成された溝であってもよい。容器40より送り込まれた洗浄剤は、螺旋機構部34を通過する際に細溝38の働きによって、孔部36から送出される際に旋回された流れとされる。
【0027】
図2(B)において一点鎖線で示されるように、螺旋機構部34の孔部36の口径(直径)と、噴射部材30の噴口32の口径(直径)とは略同一に設計されている。但し、本実施形態において螺旋機構部34の孔部36の口径(直径)は特に限定されるものではないが、螺旋機構部34の孔部36の口径は、噴射部材30の噴口32の口径と略同一、又は、噴射部材30の噴口32の口径よりも小さい方がよい。噴口32は、図示を省略する仕切り部によって、噴射方向側から観察した際に噴口が複数の開口部に区分されるように仕切られていてもよい。仕切り部によって区分された噴口32の形状は特に限定されるものではなく、例えば、噴射部材30を噴射方向側から観察した際に、(ア)噴口32内が等分に区分、(イ)同心円状となるように区分、(ウ)複数の形状(円、矩形等)になるように区分、など様々なパターンを採用することができる。また、仕切り部は、噴口32の内側に噴射部材30と一体的に又は別部材を用いて形成されていてもよいし、噴射部材30の外側に、枠組みと共に外付けされていてもよい。仕切り部自体の形状は特に限定されず、所望の形状に噴口32の開口部を区分できるものであればよく、例えば、開口部を区分する糸状や板状の部材の組み合わせや、所望の形状の開口部が設けられた板状の部材などのいずれであってもよい。
【0028】
次に、本実施形態におけるメカニカルブレークアップボタンの噴口面積、噴口径、及び、噴口長について説明する。メカニカルブレークアップボタンの「噴口面積」とは、
図2(A)における噴射部材30の噴射方向側縁端に設けられた噴口32を噴射方向側から観察した際の開口部の面積を意味する。ここで、本実施形態において噴口は、1つの螺旋機構部34に対して一つとカウントされる。このため、1つの螺旋機構部34に対する噴口32が上述の仕切り部によって複数の開口部に区分されている場合には、複数の開口部の総面積が、本実施形態の「開口面積」となる。
また、
図2(A)に“φ”で示されるように、本実施形態におけるメカニカルブレークアップボタンの「噴口径」とは、噴射部材30の噴射方向側縁端に設けられた噴口32の口径(直径)を意味する。1つの螺旋機構部34に対する噴口32が上述の仕切り部によって複数の開口部に区分されている場合や、噴射方向側から観察した際の噴口32の形状(以下、単に「噴口32の形状」と称することがある。)が真円形ではない場合、噴口32の開口部の総面積を測定し、噴口32の形状を測定した総面積を有する真円形と見立て、当該真円形の直径を、本実施形態の「開口径」とみなすことができる。
なお、上述のように噴射口32を区分する仕切り部が噴射部材30の外側に別部材として設置されている場合には、別部材である仕切り部の噴射方向側末端における噴口の開口部の面積、及び、口径(直径)が、各々本実施形態における噴口面積及び噴口径となる。
【0029】
本実施形態において、メカニカルブレークアップボタンの(1)噴口面積は1.7mm2以上、及び、(2)噴口径は1.5mm以上、の少なくともいずれかを満たす。メカニカルブレークアップボタンの(1)噴口面積が1.7mm2以上、及び、(2)噴口径が1.5mm以上、の少なくともいずれかを満たすと、洗浄剤を、直進性を保ったまま広角に噴射できるため、広範囲且つ均一に洗浄剤を被洗浄面に付着させることができる。このため、後述の本実施形態におけるエアゾール組成物と組み合わせることで、被洗浄面に付着した洗浄剤の視認性、泡状洗浄剤の付着面積、及び、付着時間を向上させることができる。
【0030】
本実施形態におけるメカニカルブレークアップボタンの「噴口面積」の上限は特に限定はないが、大きすぎると噴射角が狭まり広範囲に噴射できなくなるため、29mm2以下が好ましく、20mm2以下がより好ましく、3.5mm2以下がさらに好ましく、噴口面積としては、1.7mm2~3.5mm2が特に好ましい。
【0031】
本実施形態におけるメカニカルブレークアップボタンの「噴口径」の上限は特に限定はないが、大きすぎると噴射角が狭まり広範囲に噴射できなくなるため、6mm以下が好ましく、5mm以下がより好ましく、2.1mm以下がさらに好ましく、当該「噴口径」としては、1.5mm~2.1mmが特に好ましい。
さらに、本実施形態におけるメカニカルブレークアップボタンの噴口面積と噴口径との組み合わせは、噴口面積が29mm2以下であって、噴口径が6mm以下であることが好ましく、噴口面積が20mm2以下であって、噴口径が5mm以下であることがより好ましく、噴口面積が3.5mm2以下であって、噴口径が2.1mm以下であることがさらに好ましく、噴口面積が1.7mm2~3.5mm2であって、噴口径が1.5mm~2.1mmであることが特に好ましい。
【0032】
本実施形態において、噴口32の形状は真円形を採用しているが、噴口32の形状は必ずしも真円形である必要はなく、略円形や矩形状であってもよい。このなかでも、本発明の効果を効果的に発揮させる観点から、噴口32の上下方向(
図2(A)における矢印Dと紙面上で直行する方向)の長さと左右方向(噴口32に対する
図2(B)における紙面左右方向)の長さとの差は小さい方が好ましく、さらには、噴口32の形状の中心から各々の方向における噴口32の外縁までの距離を基準とした場合、噴口32の形状の中心から噴口32の外縁に向かうまでの各々の距離の差が小さいことが好ましい。かかる観点から、噴口32の形状は、略円形(楕円形や直線を含んだ形状を含む)、正方形、ひし形等が好ましく、略真円形であることがさらに好ましい。
なお、本実施形態においては、メカニカルブレークアップボタン20は、1つの噴口を有する噴射部材30を用いた態様を示しているが本発明はこれらの態様に限定されるものではなく、複数の噴口32及び螺旋機構部34を有するメカニカルブレークアップボタン20を用いてもよい。なお、本実施形態における噴口面積及び噴口径は1つの噴口から求められる開口面積又は開口径を意味する。
【0033】
図2(A)に“L”で示されるように、本実施形態におけるメカニカルブレークアップボタンの「噴口長」とは、螺旋機構部34の噴射方向側面から噴射部材30の噴射方向側末端までの距離を意味する。メカニカルブレークアップボタンの「噴口長」は、例えば、噴射部材30末端の中心(すなわち、噴口32の中心)から螺旋機構部34の孔部36の中心までの距離とみなすことができる。なお、上述のように噴射口32を区分する仕切り部が噴射部材30の外側に別部材として設置されている場合には、別部材である仕切り部の噴射方向側縁端末端の中心から螺旋機構部34の孔部36の中心までの距離とみなすことができる。
本実施形態において、メカニカルブレークアップボタンの噴口長は、3mm以上である。メカニカルブレークアップボタンの噴口長が3mm以上であると、後述の本実施形態におけるエアゾール組成物と組み合わせることで、特に被洗浄面に付着した泡の付着時間を向上させることができる。
【0034】
本実施形態におけるメカニカルブレークアップボタンの「噴口長」の上限は特に限定はないが、噴口長が長すぎると螺旋機構部での洗浄剤の旋回が失われるため、当該洗浄剤の十分な旋回を確保する観点から、30mm以下が好ましい。同様の観点より、当該「噴口長」としては例えば、3mm~25mmが好ましく、3~15mmがより好ましく、4~10mmがさらに好ましく、5~7.5mmが特に好ましい。
【0035】
洗浄エアゾール製品10の噴射量は、特に限定はないが、噴射量が極端に少ないと被洗浄面面積に対する必要な噴射時間が長くなり、家事の時間短縮という目的に適さない。このような観点から、洗浄エアゾール製品10の噴射量は、例えば、2~25g/秒の範囲とすることが好ましく、5~20g/秒の範囲とすることがさらに好ましく、10~15g/秒の範囲とすることが特に好ましい。
【0036】
〈エアゾール組成物〉
つぎに、本実施形態におけるエアゾール組成物について説明する。本実施形態の洗浄エアゾール製品は、界面活性剤、溶剤などを含む洗浄剤、及び、液化石油ガス(LPG)等の噴射剤、を含むエアゾール組成物を含む。エアゾール組成物は容器に収容される。
【0037】
(洗浄剤)
洗浄剤には、少なくとも、界面活性剤及び溶剤が含まれ、その他の成分を必要に応じて含んでいてもよい。
【0038】
-界面活性剤-
本実施形態における界面活性剤は洗浄剤に洗浄力を付与する成分であり、式(1)で示される界面活性剤を含む。式(1)で示される界面活性剤は、非イオン性の界面活性剤である。
R1-(EO)m-(PO)n-H ・・・(1)
(式中、R1は、直鎖又は分岐状の炭素数8以上16未満のアルキル基を示し、EOはエチレンオキサイド基を示し、POはプロピレンオキサイド基を示し、mは1~15であり、nは0~5である。)
【0039】
式中、R1で示される直鎖又は分岐状のアルキル基の炭素数は、8以上16未満であり、8~15が好ましく、10~14がさらに好ましい。
【0040】
式中、EOはエチレンオキサイド基を示し、mはエチレンオキシド基の平均繰り返し数を表す数である。mが1~15の範囲内であると、洗浄効果を得やすい傾向がある。mとしては、7~14が好ましく、9~13がさらに好ましい。
式中、POはプロピレンオキサイド基を示し、nはエチレンオキシド基の平均繰り返し数を表す数である。nが0~5の範囲内であると、付着時の泡の視認性と濯いだ際の泡切れを両立できる傾向がある。nとしては、1~4が好ましく、2.5~3.5がさらに好ましい。
【0041】
本実施形態における式(1)で示される界面活性剤としては、泡立ちの具合や洗浄力の点で特に、R1:炭素数8~15の直鎖または分岐状のアルキル基,m=1~15,n=0~5の界面活性剤が好ましく、R1:炭素数10~14の直鎖または分岐状のアルキル基,m=7~14,n=1~4の界面活性剤がさらに好ましく、R1:炭素数10~14の直鎖または分岐状のアルキル基,m=9~13,n=2.5~3.5の界面活性剤が特に好ましい。これらに該当する界面活性剤としては、例えば、市販品のソフタノールEP12030、ソフタノール150、((株)日本触媒製)、ファインサーフ9010、ブラウノンEL-1509、セフティカットLI-3062,ファインサーフ7045(青木油脂工業(株)製)等が挙げられる。
【0042】
また、本実施形態における界面活性剤と本実施形態における溶剤との組み合わせは特に限定はないが、高い洗浄力と低刺激性との観点から、ソフタノールEP12030とジプロピレングリコールモノブチルエーテルとの組み合わせ、ソフタノールEP12030とジエチレングリコールモノブチルエーテルとの組み合わせが好ましい例として挙げられる。
【0043】
洗浄剤中、界面活性剤の含有量は、特に限定されるものではないが、洗浄力と泡立ちの観点から、洗浄剤の全量に対して、1~10質量%であることが好ましく、2~8質量%がさらに好ましく、3~5質量%が特に好ましい。本実施形態において、界面活性剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0044】
本実施形態における界面活性剤は、式(1)で示される界面活性剤以外の他の界面活性剤を併用してもよい。他の界面活性剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。
本実施形態における界面活性剤として式(1)で示される界面活性剤以外の他の界面活性剤を併用する場合、その含有量は、特に限定されるものではないが、式(1)で示される界面活性剤の効果を損なわず、洗浄剤としての機能を向上させる観点から、洗浄剤の全量に対して、0.1~5質量%であることが好ましく、0.5~3質量%がさらに好ましく、1~2質量%が特に好ましい。
【0045】
洗浄剤において、泡形成上の観点から、本実施形態における界面活性剤〔a〕の含有量は本実施形態における溶剤〔b〕よりも大きいことが好ましく、含有比〔質量比:a/b〕は、0.45~10が好ましく、0.8~5がさらに好ましく、1~2が特に好ましい。
【0046】
-溶剤-
本実施形態における溶剤は、cLogKowが-0.5~4.0である。本実施形態の溶剤は水と併用することができ、当該溶剤としては水を含む製品(例えば、本実施形態の溶剤を有効成分として含む含水溶剤)、及び、水を含まない製品のいずれをも使用できる。取り扱い性等の観点から、水を含む製品を好適に用いることができる。
【0047】
本実施形態において「cLogKow」とは、“clogP”とも称され、n-オクタノールと水とに対する有機化合物の親和性を示す係数である。詳しくは、n-オクタノール/水分配係数(n-octanol/water partition coefficient)であるKow(すなわちP)について、底10に対する対数cLogKow(すなわちclogP)の形態で表した値である。cLogKowが低くなると親水性が高くなる。一般的に、LogKowは、n-オクタノールと水とを用いて実測により求めることができ、さらには、cLogKowは、構造をフラグメント(原子/官能基)に分け、各原子団の値を合計し、必要に応じて構造補正係数を用い、推定値を算出する、原子/フラグメント寄与法(an atom/fragment contribution method)を用いて算出することができる。なお、本実施形態におけるcLogKowは、例えば、アメリカ合衆国環境保護庁(EPA)が開発した推算ソフトEPI Suite(TM)のKOWWIN v1.68によって、有機化合物の分子構造から計算化学的手法により計算された値を参照することができる。
【0048】
cLogKowが-0.5~4.0である溶剤を用いると、cLogKow(疎水性)の増加に伴う泡の割れ等を抑制し泡を保持しやすくなり、本実施形態における界面活性剤との相性や親水性及び疎水性のバランスがよく、泡を、広げる、へばりつけるといった性状のバランスに優れる。かかる観点から、本実施形態における溶媒のcLogKowとしては、-0.1~3.8が好ましく、0~2がさらに好ましく、0.3~1.2が特に好ましい。
【0049】
本実施形態における溶剤としては、1価のアルコールとグリコールエーテル及びその誘導体が好ましく、1価のアルコールとしては、例えば、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール(cLogKow:0.46)、デカノール(cLogKow:3.79)、エタノール(cLogKow:-0.14)が挙げられ、グリコールエーテル及びその誘導体としては、例えば、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル(cLogKow:1.13)、3-メトキシ-3-メチル-1-ブチルアセテート(cLogKow:1.46)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(cLogKow:0.29)が挙げられ、泡付着面積及び泡付着時間の観点で、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル(cLogKow:1.13)、3-メトキシ-3-メチル-1-ブチルアセテート(cLogKow:1.46)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(cLogKow:0.29)、エタノール(cLogKow:-0.14)が好ましく、この中でも、刺激臭が相対的に抑えられ、かつ、洗浄力が高く、細かい粒子が相対的に舞いにくい点で、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルが好ましい。
【0050】
洗浄剤中、溶剤の含有量は、特に限定されるものではないが、多過ぎると消泡作用が働くおそれがあることを考慮し、十分な泡量を確保する観点から洗浄剤の全量に対して、1~7.5質量%であることが好ましく、2~5質量%がさらに好ましく、3~4質量%が特に好ましい。本実施形態において、溶剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
溶剤としてcLogKowが-0.5~4.0の溶剤以外の他の溶剤を併用する場合、全溶剤の総量100質量部に対する、cLogKowが-0.5~4.0の溶剤以外の溶剤の含有量は、特に限定されるものではないが、本実施形態における界面活性剤との相性や親水性及び疎水性のバランスを損なわないよう、50質量部以下であることが好ましく、25質量部以下がさらに好ましく、10質量部以下が特に好ましい。
【0051】
-その他-
上述のように本実施形態における洗浄剤は、その他必要に応じて、水の他、液体洗浄剤に通常使用される成分、例えば、キレート剤、香料、防錆剤、pH調整剤、除菌剤、殺菌剤、粘度調整剤、防腐剤、抗カビ剤、色素、酸化防止剤、増粘剤、紫外線吸収剤、等を含んでいてもよい。
【0052】
水を用いる場合、その種類は特に制限されず、純水、蒸留水、イオン交換水、超純水、水道水等のいずれも用いることができる。本実施形態において水を用いる場合、水自体を本実施形態の濃度の調整などのために用いる他、上述のように水中に本実施形態における溶剤を有効成分として含む製品を用いる場合などが挙げられる。洗浄剤中、水の含有量は、特に限定されるものではなく、界面活性剤等洗浄剤成分との兼ね合いで適宜調整することができる。
【0053】
キレート剤は、例えば、金属イオン封鎖効果を目的として用いられる。キレート剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム(EDTA・4Na)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、3-ヒドロキシ-2,2'-イミノジコハク酸4ナトリウム等が挙げられる。キレート剤を用いる場合、洗浄剤中、キレート剤の含有量は、特に限定されるものではないが、洗浄力の観点から、洗浄剤の全量に対して、0.1~5質量%であることが好ましく、0.5~4質量%がさらに好ましく、1~3質量%が特に好ましい。
【0054】
香料を用いる場合、洗浄剤中、香料の含有量は、特に限定されるものではないが、界面活性剤や溶剤の特異な臭気を緩和する観点から、洗浄剤の全量に対して、0.1~1質量%であることが好ましく、0.2~0.5質量%がさらに好ましい。
【0055】
また、容器である缶の内面の錆を抑制する観点から、洗浄剤は防錆剤を含んでいてもよい。防錆剤としては、例えば、亜硝酸ナトリウム、アンモニア、トリエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、安息香酸ナトリウム、及びこれらの組み合わせの群から選ばれる少なくとも一つが挙げられる。防錆剤を用いる場合、防錆剤の配合量については、使用する缶の材質に合わせて適切に選択すればよく、例えば、防錆剤の含有量は、特に限定されるものではないが、十分な防錆効果を得る観点から、洗浄剤の全量に対して、0.01~3質量%であることが好ましく、0.05~1.5質量%がさらに好ましく、0.1~1質量%が特に好ましい。
【0056】
本実施形態における洗浄剤は、洗浄剤のpHを調整するためにpH調整剤を用いることができる。pH調整剤としては、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸及びその塩、リン酸及びその塩、アンモニア、トリエタノールアミン、水酸化ナトリウム及びこれらの組み合わせの群から選ばれる少なくとも一つが挙げられる。pH調整剤を用いる場合、pH調整剤の含有量は、特に限定されるものではないが、洗浄力や缶の安定性の観点からpHを適切に調整するため、洗浄剤の全量に対して、0.01~15質量%であることが好ましく、0.05~10質量%がさらに好ましく、0.1~5質量%が特に好ましい。
【0057】
本実施形態における洗浄剤は、除菌剤を含有してもよい。除菌剤としては、塩化ベンザルコニウム等の第4級アンモニウム塩、IPMP、ドデシルアミノエチルアミノエチルグリシン等の両性界面活性剤系の除菌剤などが挙げられ、複数の成分を組み合わせて用いてもよい。
除菌剤を用いる場合、洗浄剤中、除菌剤の含有量は、特に限定されるものではないが、被洗浄面で十分な除菌効果を得る観点から、洗浄剤の全量に対して、0.01~3質量%であることが好ましく、0.05~1.5質量%がさらに好ましく、0.1~1質量%が特に好ましい。
【0058】
(噴射剤)
本実施形態におけるエアゾール組成物は、洗浄剤と共に噴射剤を含む。本実施形態の洗浄エアゾール製品は、噴射剤として液化石油ガス(LPG)を含む。
【0059】
本実施形態の洗浄エアゾール製品において、20℃における内圧が0.3MPa以上である。ここで、「20℃における内圧が0.3MPa以上」とは洗浄エアゾール製品の容器内の気圧が20℃において0.3MPa以上であることを意味する。本実施形態の洗浄エアゾール製品の20℃における内圧が0.3MPa以上であると、噴出される泡の状態が良好となりその視認性に優れる。本実施形態の洗浄エアゾール製品の20℃における内圧の上限は、特に限定はないが、取り扱い性等の観点で0.6MPa以下が好ましい。本実施形態の洗浄エアゾール製品の20℃における内圧としては、特に限定されるものではないが、泡の状態と取り扱い性等の観点から、0.4~0.6MPaであることが好ましく、0.45~0.6MPaがさらに好ましい。以上から、LPGとしては、圧力が0.29~0.5MPaのものなどを用いることができる。
【0060】
容器内の20℃における内圧は、例えば、市販品の圧力測定装置を用いて測定することができる。当該装置としては、例えばフラッシュダイヤフラム型(共和電業製「PGM-E」)を用いることができる。
【0061】
エアゾール組成物中の噴射剤の含有量は、使用目的や洗浄剤との組み合わせに応じて適宜変更可能であり特に限定されるものではない。例えば、被洗浄面に対する洗浄剤の付着の観点から、洗浄剤〔x〕と噴射剤〔y〕との液ガス比〔容量比:x/y〕は、〔x/y〕=95/5~50/50であることが好ましく、90/10~70/30がより好ましく、90/10~80/20がさらに好ましい。
【0062】
《洗浄方法》
上述の本実施形態の洗浄エアゾール製品は種々の洗浄用途に使用可能であり、例えば、窓、網戸、壁、フローリング、車体等に用いることができるが、特に、浴室の洗浄用途に好適に用いることができる。ここで、「浴室」とは、浴室側壁、床面、天井面などの壁面を含む他、浴槽やその他被洗浄面を有する浴室内設備を含む。
本実施形態の洗浄方法は、噴口径が1.5mm以上、且つ、噴口長が3mm以上のメカニカルブレークアップボタンを備え、下記式(1)で表される界面活性剤と、cLogKowが-0.5~4.0の溶剤と、噴射剤として液化石油ガス、を含み、
20℃における内圧が0.3MPa以上である洗浄エアゾール製品を用いて、被洗浄面に泡を付着させる方法である。
R1-(EO)m-(PO)n-H ・・・(1)
(式中、R1は、直鎖又は分岐状の炭素数8以上16未満のアルキル基を示し、EOはエチレンオキサイド基を示し、POはプロピレンオキサイド基を示し、mは1~15であり、nは0~5である。)
【0063】
本実施形態の洗浄方法が適用される浴室の材質は、ユニットバス(例えば、繊維強化プラスチック(Fiber Reinforced Plastics;以下、「FRP」と称することがある)製)、タイル、大理石等など特に限定されるものではない。また、本実施形態の洗浄方法において、噴射時における被洗浄面との距離は特に限定はないが、近すぎると、洗浄剤が広角に広がる前に被洗浄面に達し、広範囲に噴射できるという本発明の効果が十分に得られず、また洗浄剤が跳ね返る等の問題も生じ、遠すぎると洗浄剤が届かないことから、20~200cmが好ましく、25~150cmがさらに好ましく、30~100cmが特に好ましい。また、浴室の構造を考慮すると、例えば、浴槽が設けられている側の壁面を洗浄する場合、ある程度離れた距離から洗浄剤を被洗浄面に噴射できると使用者の負担をより軽減することが見込まれる。かかる点において、本実施形態の洗浄エアゾール製品は、被洗浄面との距離がある程度離れている場合であっても、容易に広範囲に噴射して視認性に優れる泡を付着させることができる。かかる観点から、本実施形態の洗浄方法においては、噴射時における被洗浄面との距離を、好ましくは40~200cm、更に好ましくは40~140cm、特に好ましくは60~100cmとすることも可能である。なお、使用者の噴射位置は浴室内に限定されるものではなく、浴室の外から噴射してもよい。
【0064】
以上のように、本発明について実施形態を用いて説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない限り、さまざまな変形が可能である。例えば、当業者の通常の創作能力の範囲内で、ある実施形態における一部の構成要素を、他の実施形態に追加することができる。また、ある実施形態における一部の構成要素を、他の実施形態の対応する構成要素と置換することができる。
【実施例0065】
以下、本発明について実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0066】
[洗浄エアゾール製品の製造]
下記表1~3に示される組成を混合し、各洗浄剤(サンプル)を調製した。得られた洗浄剤450mLをメカニカルブレークアップボタン(ボタン:噴口面積1.77mm2、噴口径φ1.5mm、噴口長6mm、噴口数1(仕切りなし、真円形);バルブ:φ1.2mm×3個のステム孔)を備えた容器(缶型:AE480(容量577mL))に、LPG0.49MPaと共に密封し、実施例又は比較例における洗浄エアゾール製品を得た。なお、各サンプルの配合について表中の数値は、各原料中に含まれる有効成分(表中の「成分名」の欄に記載した成分)の“質量%”を意味し、表中の「原料名」の欄に「A.I」と、原料中の有効成分量を付記した原料については、有効成分量が表中の質量%に相当するよう、原料を配合し、洗浄剤を調製している。また、洗浄剤と噴射剤の容量比は90/10である。
【0067】
得られた洗浄エアゾール製品を用い、各サンプルについて下記の評価をおこなった。
【0068】
〔泡の視認性〕
FRP製のユニットバスの浴室壁面(被洗浄面)に対して76cmの距離からサンプルを0.5秒間噴射した。その後、被洗浄面を目視にて泡の性状を観察し、以下の基準に従って視認性を評価した。
-基準-
A:76cmの距離から、被洗浄面に到達して泡状に付着し、被洗浄面の泡を容易に視認できた。
B:76cmの距離から、被洗浄面に到達して液状に付着するなど、被洗浄面の泡を容易に視認できなかった。
C:76cmの距離から、被洗浄面に到達せず、泡が視認できなかった。
【0069】
〔泡の付着面積〕
FRP製のユニットバスの浴室壁面(被洗浄面)に対して76cmの距離からサンプルを0.5秒間噴射した。その後、付着範囲をおよそ円とし、メジャーを用いて付着範囲の最大幅を測定し、これを直径と見なして面積を算出し、下記基準に従って評価した。
-基準-
A:付着範囲の面積が1200cm2超であった。
B:付着範囲の面積が1000cm2超1200cm2以下であった。
C:付着範囲の面積が800cm2超1000cm2以下であった。
D:付着範囲の面積が800cm2以下であった。
【0070】
〔泡の付着時間〕
FRP製のユニットバスの浴室壁面(被洗浄面)に対して76cmの距離からサンプルを0.5秒間噴射した。その直後より、泡が垂れ落ち始めるまでの時間を測定し、下記基準に従って評価した。
-基準-
A:20秒超であった。
B:10秒超20秒以下であった。
C:5秒超10秒以下であった。
D:5秒以下であった。
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
表1からわかるように、本実施形態における界面活性剤を用いた実施例は、他の界面活性剤を用いた比較例に対して、特に、泡の付着面積が広く、視認性に優れていた。またサンプルNo.6及び7は、泡が一か所に集中していたが、実施例のサンプルNo.1~No.5及びNo.9~No.12は、泡が一か所に集中せず均一に広がっており、視認性に特に優れていた。
また表2及び3からわかるように、本実施形態における溶剤を用いた実施例は、溶剤を用いず水のみを用いたサンプル(サンプルNo.13)及び他の溶剤を用いた比較例に対して、特に、泡の付着面積が広く、また、泡の付着時間に優れていた。またサンプルNo.13~No.15は、泡が一か所に集中していたが、実施例の中でも、No.16~No.22は、泡が一か所に集中せず均一に広がっており、視認性に特に優れていた。
【0075】
[メカニカルブレークアップボタンの噴口径及び噴口長]
下記表4に示されるように、メカニカルブレークアップボタンの噴口面積、噴口径及び噴口長、並びに、噴射剤の圧力を変更した以外は、上述と同様にして上述の評価を行った。なお、洗浄剤としてはサンプルNo.1を用いた。
【0076】
【0077】
【0078】
表4及び5からわかるように、容器の内圧が0.3MPa以上である場合、比較例(No.34)に対して、特に、泡の視認性、及び、泡の付着時間に優れていることが確認された。
また、これらの表からわかるように、本実施形態に規定される噴口径及び噴口長を満たすメカニカルブレークアップボタンを用いた実施例は、本実施形態に規定される噴口径を満たさない比較例に対して、特に、泡の視認性に優れ、且つ、付着面積が広く、広角に泡状の洗浄剤を噴射可能なことが確認された。また実施例のサンプルNo.25、No.26及びNo.30~No.32、No.35~No.38は、泡が一か所に集中せず均一に広がっており、視認性に特に優れていた。
さらに、本実施形態に規定される噴口径及び噴口長を満たすメカニカルブレークアップボタンを用いた実施例は、本実施形態に規定される噴口長を満たさない比較例に対して、特に、泡の付着時間が良好であることが確認された。
【0079】
以上の、本実施形態の洗浄エアゾール製品によれば、被洗浄面に対し泡状の洗浄剤を広角且つ連続的に付着させることができる。このため、泡の付着面積が広く、洗浄剤の噴射回数及び噴射時間を減らすことができ、また、噴射後の洗浄剤の視認性に優れるため、被洗浄面全体をむらなく効率的に洗浄することができるため、清掃時間の短縮、省力化を実現できることが分かる。さらに、洗浄エアゾール製品によれば、被洗浄面に対する泡の付着時間が良好であるため洗浄剤の洗浄効果を十分に発揮でき、さらに、清掃効率に優れ、清掃時間の短縮、省力化を実現できることが分かる。