(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023120160
(43)【公開日】2023-08-29
(54)【発明の名称】過圧保護付きガス圧スプリング、該ガス圧スプリングを製造する方法
(51)【国際特許分類】
F16F 9/32 20060101AFI20230822BHJP
F16F 9/00 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
F16F9/32 U
F16F9/00 A
F16F9/32 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023020189
(22)【出願日】2023-02-13
(31)【優先権主張番号】10 2022 103 750.9
(32)【優先日】2022-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】514062655
【氏名又は名称】スタビラス ゲ―エムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウルリッヒ プロブスト
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー ライザー
(72)【発明者】
【氏名】フェリックス ベイブ
(72)【発明者】
【氏名】ニコ ウンケルバッハ
【テーマコード(参考)】
3J069
【Fターム(参考)】
3J069AA06
3J069AA09
3J069CC10
3J069DD21
(57)【要約】 (修正有)
【課題】信頼性が高く安全な過圧保護を備えて低コストで製造可能なガス圧スプリングと、その低コスト製造プロセスとを作成すること。
【解決手段】圧力チューブと、ガス圧スプリングの動作状態において、圧力チューブによって流体密封方式で閉じ込められた流体圧力を有する流体とを備えるガス圧スプリングに関する。圧力チューブの壁には局所テーパがある。テーパは、流体圧力が限界圧力を超えると、開いて圧力チューブから流体の一部を制御されたやり方で放出するように適合された壁の予め定められた破断点を形成する。壁の壁厚は、テーパ内に線状の最低点がある。壁厚は、圧力チューブの縦軸を中心としたすべての円周方向に、テーパの最低点からエッジまで単調に増加する。本発明はまた、ガス圧スプリングを製造する方法に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス圧スプリング(100)であって、
a.圧力チューブ(110)と、
b.前記圧力チューブ(110)内で前記圧力チューブ(110)と同軸上に配置されたガイド・チューブ(140)と、
を備え、
c.前記圧力チューブ(110)は、前記圧力チューブ(110)の縦軸(LA)に沿って前記ガイド・チューブ(140)上に突出部(160)を形成し、
d.前記ガス圧スプリング(100)は、前記縦軸(LA)に沿って前記圧力チューブ(110)内で変位可能な分離ピストン(150)を備え、
e.前記分離ピストン(150)は、前記ガス圧スプリング(100)の動作状態において、前記ガイド・チューブ(140)内の作動チャンバ(141)と、前記ガイド・チューブ(140)と前記圧力チューブ(110)との間で前記縦軸(LA)に対して放射状の環状チャンバ(111)と、前記突出部(160)内の支持チャンバ(161)とを流体密封に分離し、
f.前記環状チャンバ(111)は、前記動作状態において前記作動チャンバ(141)を拡大する方向に補償圧力で前記分離ピストン(150)を押す補償媒体が充填されており、
g.前記支持チャンバ(161)は、前記動作状態において前記作動チャンバ(141)を小さくする方向に支持圧力で前記分離ピストン(150)を押す支持流体が充填されており、
h.前記作動チャンバ(141)は、前記動作状態において作動圧力を有する作動流体が充填されている、ガス圧スプリング(100)であって、
i.前記圧力チューブ(110)の壁(120)は、前記支持チャンバ(161)に隣接した局所テーパ(130)があり、
j.前記テーパ(130)は、前記支持圧力が限界圧力を超えると、開いて前記圧力チューブ(110)から前記補償媒体、前記作動流体、および前記支持流体の一部を制御されたやり方で放出するように適合された前記壁(120)の予め定められた破断点を形成し、
k.前記テーパ(130)内の前記壁(120)の壁厚は、線状の最低点(131)を有し、
l.前記壁厚は、前記圧力チューブ(110)の縦軸(LA)を中心とするすべての円周方向に、前記テーパ(130)の前記最低点(131)からエッジ(132)まで単調に増加し、
m.前記予め定められた破断点が開いているときに、前記分離ピストン(150)は、前記作動チャンバ(141)および前記環状チャンバ(111)が前記予め定められた破断点に流体伝導方式で接続される安全保障位置に変位可能であることを特徴とする、ガス圧スプリング(100)。
【請求項2】
a.前記壁(120)の前記壁厚の前記線状の最低点は、点状であり、
b.前記壁厚は、前記壁(120)に沿ってすべての方向に、前記テーパ(130)の前記最低点(131)からエッジ(132)まで単調に増加することを特徴とする、請求項1に記載のガス圧スプリング(100)。
【請求項3】
前記テーパ(130)は、前記流体から見て外方に向いている前記壁(120)の外側(121)に凹部を形成することを特徴とする、請求項1に記載のガス圧スプリング(100)。
【請求項4】
前記テーパ(130)は、前記縦軸(LA)を囲む前記壁(120)のジャケット領域(122)にあることを特徴とする、請求項1に記載のガス圧スプリング(100)。
【請求項5】
前記テーパ(130)は、前記壁(120)にレンズ状の凹部を形成することを特徴とする、請求項1に記載のガス圧スプリング(100)。
【請求項6】
前記凹部の曲率半径は、20mm~200mmであることを特徴とする、請求項5に記載のガス圧スプリング(100)。
【請求項7】
前記テーパ(130)の前記エッジ(132)は、楕円形であることを特徴とする、請求項1に記載のガス圧スプリング(100)。
【請求項8】
a.前記楕円形のエッジ(132)の長半軸は、4mm~40mmである、および/または、
b.前記楕円形のエッジ(132)の小さな半軸は、1mm~10mmであることを特徴とする、請求項7に記載のガス圧スプリング(100)。
【請求項9】
a.前記最低点(131)における前記壁(120)の最小壁厚は、前記テーパ(130)の前記エッジ(132)におけるエッジ壁厚の20~80%である、および/または
b.前記最低点(131)における前記壁(120)の最小壁厚は、0.4mm~1.6mmであることを特徴とする、請求項1に記載のガス圧スプリング(100)。
【請求項10】
前記壁(120)の前記テーパ(130)は、前記ガス圧スプリング(100)の前記動作状態において、前記分離ピストン(150)が前記縦軸(LA)に沿って変位可能であるストローク経路(HW)の外側にあることを特徴とする、請求項1に記載のガス圧スプリング(100)。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載のガス圧スプリング(100)を製造する方法であって、
a.前記ガス圧スプリング(100)の前記圧力チューブ(110)を提供するステップと、
b.前記圧力チューブ(110)の前記壁(120)の前記テーパ(130)を作成するステップと、
を含む、方法。
【請求項12】
前記壁(120)の前記テーパ(130)の前記作成は、前記壁(120)からの材料除去によって行われることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記壁(120)の前記テーパ(130)の前記作成は、前記壁(120)の外側(121)からの材料除去によって行われることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記材料除去は、機械加工および/またはアブレーションによって実行されることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記圧力チューブ(110)を提供することと、前記テーパ(130)を作成することとは、前記テーパ(130)付きの前記圧力チューブ(110)の成形および/または付加製造プロセスによって共通のプロセス・ステップで行われることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力チューブと、圧力チューブによって流体密封に閉じ込められた流体圧力を有する流体とを備え、圧力チューブの壁が局所テーパを有し、テーパは、流体圧力が限界圧力を超えると、開いて圧力チューブから流体の一部を制御されたやり方で放出するように適合された壁の予め定められた破断点を形成する、ガス圧スプリングに関する。
【0002】
本発明はまた、本発明によるガス圧スプリングを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ガス圧スプリングには、加圧流体が充填されている。ガス圧スプリングが、例えば、火災発生時に、非常に熱くなる場合、流体の圧力が急激に上昇する可能性がある。
【0004】
関連する輸送規制に準拠するために、ガス圧スプリングは、さまざまなメカニズムを有して火災発生時に安全な圧力解放を確実にしている。
【0005】
これまでは、例えば、ガス圧スプリングの動作中に流体がガス圧スプリングのピストンを過ぎて流れることができる、ガス圧スプリングのジャケット壁の内側にある減衰溝が、予め定められた破断線として設計されている。火災発生時には、この破断線でジャケット壁が断裂して開き、その結果、流体がガス圧スプリングから流れ出すことができる。
【0006】
しかし、予め定められた破断線として機能する減衰溝には、次の欠点がある。減衰溝は、ガス圧スプリングの長さの大部分にわたって延在している。減衰溝の位置、形状、および寸法は、その減衰機能によって決められるため、過圧保護の要件に常に最適に適合されているとは限らない。さらに、溝のエンボス加工プロセス(プレス加工かロール加工かに関係なく)は、この領域のジャケット壁の加工硬化をもたらし、溝の開放挙動に影響を与える。
【0007】
過圧バルブなどの他のタイプの過圧保護は、製造コストが高い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、信頼性が高く安全な過圧保護を備えて低コストで製造可能なガス圧スプリングと、その低コスト製造プロセスとを作成することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記技術的問題を解決する請求項1に記載のガス圧スプリングを提供する。同様に、上記問題は、請求項9に記載のガス圧スプリングを製造する方法によって解決される。有利な実施形態は、従属請求項の主題である。
【0010】
本発明は、圧力チューブと、ガス圧スプリングの動作状態において圧力チューブによって流体密封に、特に気密に閉じ込められた流体とを備えるガス圧スプリングに関する。圧力チューブは、例えば、実質的に中空の円筒形である。圧力チューブは、例えば、スチール、アルミニウム、プラスチック、および/または複合材料でできている。
【0011】
作動ピストンは、圧力チューブの縦軸に沿ってスライドできるように、圧力チューブ内で誘導することができる。ピストン・ロッドを作業ピストンに取り付けることができる。これは、ガイドおよびシール・パッケージなどによって、圧力チューブの一端において縦軸に沿って圧力チューブから誘導されて出される。
【0012】
流体は、好ましくは窒素などの気体である。ガス圧スプリングの動作状態では、ガス圧スプリングの動作温度範囲における流体圧力は、例えば50バール~500バール、特に100バール~300バールの範囲である。動作温度範囲は、例えば-50℃~+200℃、特に-30℃~+100℃に及ぶ。
【0013】
圧力チューブの壁には局所的なテーパがある。テーパは、流体圧力が限界圧力を超えると、開いて圧力チューブから流体の一部が制御されたやり方で放出されるように適合された壁の予め定められた破断点を形成する。流体圧力が限界圧力を超えると、テーパによって形成された予め定められた破断点において圧力チューブが破裂して開き、流体の一部が圧力チューブから漏出して、流体圧力をガス圧スプリングの周囲圧力に下げることができる。したがって、予め定められた破断点は過圧保護として機能する。
【0014】
予め定められた破断点が閉じているガス圧スプリングの動作状態と区別するため、予め定められた破断点が開いている過圧保護が解除された後のガス圧スプリングの状態を、以下では保護状態と呼ぶ。
【0015】
限界圧力は、好ましくは動作状態および動作温度範囲で予想される最大流体圧力を上回り、例えば50%上回り、予め定められた破断点がない圧力チューブの破裂圧力を下回る。これにより、ガス圧スプリングの動作中の過圧保護の不所望のトリガを防ぎ、火災発生時の圧力チューブの制御されていない破裂を防ぐ。
【0016】
壁の壁厚は、テーパ内に線状、特に点状の最低点を有する。壁厚は、圧力パイプの縦軸を中心としたすべての円周方向に、具体的には、壁に沿ってすべての方向に、テーパの最低点からエッジまで単調に増加する。「エッジ」とは、壁厚が、最低点から開始してテーパのない壁の壁厚の値に達する境界線である。
【0017】
この形態のテーパにより、過圧保護がトリガされたときに最低点の周りの壁に小さな開口のみが形成される。テーパのエッジに向かって壁厚が単調に増加するため、予め定められた破断点としての細長い溝とは対照的に、壁は大きな領域にわたって断裂して開くことがない。この小さな開口により、流体は制御された、比較的ゆっくりとしたやり方で圧力パイプから漏出することができる。
【0018】
点形状は、本発明の意味では、線形状の特殊な場合、すなわち、長さ0の線形状として理解される。点状の最低点は、前述の効果が特に顕著であるという利点がある。線状の最低点は、例えば、壁のジャケット領域で壁の外側を平坦化することで、特に簡単に製造できるという利点がある。
【0019】
「線状」、「点状」、および「単調に増加する」という用語は、本発明の意味では、数学的に正確に理解されるべきではない。ガス圧スプリングの製造で慣習的な許容範囲を下回る(例えば0.1mmを下回る)、またはガス圧スプリングの圧力チューブの表面粗さの範囲内の正確な線形状もしくは点形状、または正確に単調な増加からの逸脱は、本発明の意味では、役割を果たさない。
【発明を実施するための形態】
【0020】
テーパは、好ましくは流体から見て外方に向いている壁の外側に凹部を形成する。流体に向いている壁の内側よりも外側に凹部の形でテーパを作成する方が簡単である。さらに、外側の凹部では、内側の凹部とは対照的に、圧力チューブ内のピストンの動きや圧力チューブへのピストンの封止が損なわれる危険性がない。これは、圧力チューブのテーパを、ピストンのストローク経路の外側だけでなく、信頼性が高く安全な過圧保護に適した任意の位置に位置決めできることを意味する。
【0021】
テーパは、好ましくは圧力チューブの縦軸を囲む壁のジャケット領域にある。通常、圧力チューブの一端面にはガイドおよびシール・パッケージがあり、これを通してピストン・ロッドが圧力チューブから誘導されて出される。もう一方の端面には、通常、ガス圧スプリングを他の構成要素に接続するための接続要素がある。したがって、テーパを端面のうちの1つに追加で取り付けるのは複雑である。さらに、ジャケット領域を通って出てくる流体のはね返りは、圧力チューブの縦軸に対して横方向に作用する。これにより、流体が端面のうちの1つから出現することによって縦軸に沿ってはね返りを引き起こす場合よりも、はね返りがガス圧スプリングを動かし始める可能性が低くなる。
【0022】
テーパは、好ましくは壁にレンズ状の凹部を形成する。円筒レンズ形状の場合、レンズ状の凹部は、壁厚の線状の最低点をもたらし、壁厚は凹部のエッジに向かってレンズの湾曲部に沿って単調に増加する。球面レンズ形状の場合、レンズ状の凹部は、凹部の中心で壁厚の点状の最低点をもたらし、壁厚は壁に沿ってすべての方向で凹部のエッジに向かって単調に増加する。レンズ状の凹部は、ガス圧スプリングの製造において一般的に使用されている機械加工方法を使用して、例えば、フライス加工によって、特に壁の湾曲したジャケット領域に簡単に作成することができる。
【0023】
テーパの曲率半径は、好ましくは20mm~200mm、より好ましくは50mm~150mm、最も好ましくは100mmである。曲率半径が小さいほど、テーパの面積が小さくなり、テーパの最低点からエッジまでの壁厚の勾配が大きくなる。小さな面積は、制御された、比較的ゆっくりとした流体の排出に有利である。しかしながら、大きな勾配はテーパの周りの壁の制御されていない断裂を好む。言及した値は、例えば、2mmの壁厚および29mmの外径を有するスチール製の圧力パイプについての試験において、安全で信頼性の高い過圧保護に適した妥協であることが証明されている。
【0024】
テーパのエッジは、好ましくは楕円形、特に円形である。楕円形のエッジは、ガス圧スプリングの製造において一般的に使用されている機械加工方法を用いて、例えば、フライス加工によって、特に壁の湾曲したジャケット領域に簡単に作成することができる。
【0025】
楕円形のエッジの大きな半軸は、好ましくは4mm~40mmあり、特に好ましくは15mm~20mmあり、最も好ましくは17mmである。楕円形のエッジの小さな半軸は、好ましくは1mm~10mmあり、特に好ましくは5mm~7mmあり、最も好ましくは6mmある。上記の値は、例えば、2mmの壁厚および29mmの外径を有するスチール製の圧力パイプについての試験において、安全で信頼性の高い過圧保護に適していることが示されている。
【0026】
最低点における壁の最小壁厚は、好ましくはテーパのエッジにおけるエッジ壁厚の20%~80%、好ましくは25%~60%、特に好ましくは30%~40%である。最低点における壁の最小壁厚は、好ましくは0.4mm~1.6mm、好ましくは0.5mm~1.2mm、特に好ましくは0.6mm~0.8mmである。言及した値は、例えば、0.2mmのエッジ壁厚を有するスチール製の圧力パイプについての試験において、安全で信頼性の高い過圧保護に適していることが証明されている。
【0027】
ガス圧スプリングは、好ましくは圧力チューブ内で圧力チューブと同軸上に配置されたガイド・チューブを備えている。圧力チューブは、圧力チューブの縦軸に沿ってガイド・チューブ上に突出部を形成する。ガス圧スプリングは、好ましくは縦軸に沿って圧力チューブ内で変位可能な分離ピストンを備えている。分離ピストンは、ガス圧スプリングの動作状態において、ガイド・チューブ内の作動チャンバと、ガイド・チューブと圧力チューブとの間で縦軸に対して放射状の環状チャンバと、突出部内の支持チャンバとを、互いから流体密封方式で分離する。環状チャンバは、動作状態において作動チャンバを拡大する方向に補償圧力で分離ピストンを押す補償媒体が充填されている。動作状態では、支持チャンバは、作動チャンバを小さくする方向に支持圧力で分離ピストンを押す支持流体、特に、支持ガスが充填されている。動作状態では、作動チャンバは、作動圧力を有する作動流体、特に、作動ガスが充填されている。
【0028】
前段落に記載のガス圧スプリングの設計では、ガス圧スプリングが加熱され、その結果、作動チャンバが大きくなると、補償媒体が分離ピストンを変位させる。これにより、加熱による作動圧力の上昇が減少し、その結果、ガス圧スプリングのスプリング力の温度依存が低減する。このような温度補償型ガス圧スプリングの原理は、例えば、公開文献EP1795777A2、DE102020123636A1、およびDE102021124843A1から知られている。
【0029】
ガイド・チューブは、例えば、DE102021124843A1で説明されている作業シリンダのように設計されている。分離ピストンは、例えば、DE102021124843A1で説明されている補償ピストンのように設計されている。
【0030】
ガス圧スプリングを温度補償型ガス圧スプリングとして設計すると、火災発生時に作動流体の作動圧力、補償媒体の補償圧力、および支持流体の支持圧力が安全かつ確実に解放されなければならないという追加の問題が発生する。
【0031】
この追加の問題は、好ましくは補償圧力、作動圧力、または支持圧力が限界圧力を超えると、開いて圧力チューブから補償媒体、作動流体、および支持流体の一部を制御されたやり方で放出するように設計されているテーパによって形成された壁の予め定められた破断点によって解決される。
【0032】
壁のテーパは、好ましくは支持チャンバに隣接している。予め定められた破断点が開いているときに、分離ピストンを、作動チャンバおよび環状チャンバが予め定められた破断点に流体伝導方式で接続される安全保障位置に移動させることができる。この配置には、火災発生時には、最初に支持流体が予め定められた破断点を通って圧力パイプから流れ出ることができるという利点がある。支持圧力が低下するため、次に、補償媒体および作動流体が分離ピストンを予め定められた破断点を過ぎて支持チャンバの中に移動させることができる。これにより、作動流体および補償媒体も、予め定められた破断点を通って圧力チューブから出ることができる。
【0033】
壁のテーパは、好ましくはガス圧スプリングの動作状態で分離ピストンが縦軸に沿って変位可能であるストローク経路の外側にある。これにより、予め定められた破断点が開いたときに、補償媒体が予め定められた破断点と接触する位置に分離ピストンがないことが確実にされる。この場合、最初に補償媒体の一部が高圧で圧力チューブから漏出し、その後、支持圧力が分離ピストンを変位させて支持流体が漏出できるようにする。補償媒体は、支持流体とは対照的に、通常は液体であるため、最初に液体補償媒体が高圧で漏出し、次に気体支持流体が低圧で漏出する場合、逆の場合よりも物的損傷または負傷のリスクが高くなる。
【0034】
本発明は、本発明によるガス圧スプリングを製造する方法に関する。この方法は、ガス圧スプリングの圧力チューブを提供することであって、圧力チューブの壁は、好ましくは均一な壁厚を有する、提供することと、好ましくは壁の外側および/または内側からの材料除去によって、圧力チューブの壁のテーパを作成することとを含む。前述した利点のために、材料除去は、好ましくは壁の外側から行われる。
【0035】
材料は、好ましくは機械加工、好ましくは穴あけ、フライス加工、研削、旋削、および/もしくは成形、ならびに/またはアブレーション、好ましくはレーザー・アブレーションによって除去される。
【0036】
フライス加工、成形、およびレーザー・アブレーションには、壁がそれらによってわずかにしか加熱されないという特定の利点がある。これにより、壁の材料特性の熱関連の変化(火災発生時に予め定められた破断点の制御されていない挙動につながる可能性のある)が回避される。
【0037】
材料を除去することで、圧力パイプの壁に凹部の明白な輪郭、例えば、丸みを帯びたエッジおよび/または丸みを帯びた底部を有する輪郭を作成して、圧力パイプの塗装を容易にすることができる。輪郭は、例えば、材料除去に使用した切削工具の形状によって、例えば、ドリルやフライス・ヘッドの形状によって画定することができる。
【0038】
圧力チューブの提供およびテーパの作成は、好ましくは一般的なプロセス・ステップで、例えば、テーパ付きの圧力チューブの成形および/または付加製造プロセスによって実行される。成形および/または付加製造プロセスは、特に、例えばアルミニウムからの圧力チューブのダイ・キャスティング、例えばプラスチックからの圧力チューブの射出成形、および/または圧力チューブの3Dプリンティングを含む。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】本発明によるガス圧スプリングの圧力チューブの縦方向の概略断面図である。
【
図3】動作状態にある本発明によるガス圧力スプリングの縦方向の概略断面図である。
【
図4】過圧保護の解除時の
図2のガス圧スプリングの縦方向の概略断面図である。
【
図5】過圧保護の解除時の後の
図2のガス圧スプリングの縦方向の概略断面図である。
【0040】
本発明のさらなる利点、目的、および特性について、本発明の例示的な実施形態が示されている以下の説明および添付図を参照して説明する。
【0041】
図1
図1は、本発明によるガス圧スプリング100の圧力チューブ110の縦方向の概略断面図を、圧力チューブ110の縦軸LAに沿って示している。圧力チューブ110はスチール製で、例えば、形状は実質的に中空の円筒形である。圧力チューブ110は、例えば、25mmの内径、29mmの外径、および2mmの壁厚を有する。
【0042】
ガス圧スプリング100の1つの動作状態において、圧力チューブ110は、流体圧力を有する流体(図示せず)を流体密封に閉じ込めている。
【0043】
図示する圧力チューブ110の壁120には局所テーパ130がある。テーパ130は、流体圧力が限界圧力を超えると、開いて圧力チューブ110から流体の一部を制御されたやり方で放出するように適合された壁120の予め定められた破断点を形成する。
【0044】
壁120の壁厚は、テーパ130内に点状の最低点131がある。壁厚は、壁120に沿ってすべての方向に、テーパ130の最低点131からエッジ132まで単調に増加する。
【0045】
図示するテーパ130は、流体から見て外方に向いている壁120の外側121の凹部を形成し、縦軸LAを囲む壁120のジャケット領域122にある。
【0046】
図示するテーパ130は、壁120にレンズ状の凹部を形成する。この場合、凹部の曲率半径は、例えば100mmである。
【0047】
例えば、最低点131における壁120の最小壁厚は0.7mmである。
【0048】
【0049】
図2において、図示するテーパ(130)のエッジ(132)は楕円形であることが見て取ることができ、楕円形のエッジ(132)の長半軸は、例えば17mmある。
【0050】
図3
図3は、本発明によるガス圧スプリング100の縦方向の概略断面図を、動作状態にある圧力チューブ110の縦軸LAに沿って示している。圧力チューブ110は、
図1および
図2に示す圧力チューブ110と同様に設計することができる。
【0051】
図3に示すガス圧スプリング100は、圧力チューブ110内で圧力チューブ110と同軸上に配置されたガイド・チューブ140を備えている。圧力チューブ110は、圧力チューブ110の縦軸LAに沿ってガイド・チューブ140上に突出部160を形成する。
【0052】
図に示すガス圧スプリング100は、縦軸LAに沿って圧力チューブ110内で変位可能な分離ピストン150を備えている。分離ピストン150は、ガス圧スプリング100の動作状態において、ガイド・チューブ140内の作動チャンバ141と、ガイド・チューブ140と圧力チューブ110との間で縦軸LAに対して放射状の環状チャンバ111と、突出部160内の支持チャンバ161とを、互いから流体密封方式で分離する。
【0053】
ガイド・チューブ140は、例えば、DE102021124843A1で説明されている作業シリンダ1のように設計されており、分離ピストン150は、例えば、DE102021124843A1で説明されている補償ピストン10のように設計されている。
【0054】
図示する環状チャンバ111は、動作状態において作動チャンバ141を拡大する方向に補償圧力で分離ピストン150を押す補償流体(図示せず)が充填されている。動作状態では、支持チャンバ161は、作動チャンバ141を小さくする方向に支持圧力で分離ピストン150を押す支持流体(図示せず)が充填されている。動作状態では、作動チャンバ141は、作動圧力を有する作動流体(図示せず)が充填されている。
【0055】
テーパ130によって形成された壁120の予め定められた破断点は、支持圧力が限界圧力を超えると、圧力チューブ110から補償媒体、作動流体、および支持流体の一部を制御されたやり方で放出するために開くように設計されている。
【0056】
図示する壁120のテーパ130は、支持チャンバ161に隣接しており、ガス圧スプリング100の動作状態で分離ピストン150が縦軸LAに沿って変位可能なストローク経路HWの外側にある。
【0057】
図示するテーパ130は、流体から見て外方に向いている壁120の外側121の凹部を形成し、縦軸LAを囲む壁120のジャケット領域122にある。
【0058】
作動ピストン170は、ガイド・チューブ140の縦軸LAに沿ってスライド可能にガイドされる。ピストン・ロッド171は、作動ピストン170に取り付けられており、圧力チューブ110の一端にあるガイドおよびシール・パッケージ172によって縦軸LAに沿って圧力チューブ110から誘導されて出される。作動ピストン170、ピストン・ロッド171、ならびにガイドおよびシール・パッケージ172は、既知のガス圧スプリングにあるように設計することができる。
【0059】
図4
図4は、過圧保護の解除時の圧力チューブ110の縦軸LAに沿った
図2のガス圧スプリング100の縦方向の概略断面図を示している。解除時には、支持圧力が限界圧力を超えるため、テーパ130によって形成された予め定められた破断点が開く。
【0060】
これにより、支持流体が、開いた予め定められた破断点を通って圧力チューブ110から流れ出ることができる(白抜き矢印)。その後、支持圧力が低下するため、分離ピストン150が補償媒体および作動媒体によってそのストローク経路HWを超えて支持チャンバ161の中へ変位する(黒抜き矢印)。
【0061】
図5
図5は、過圧保護の解除時の後の圧力チューブ110の縦軸LAに沿った
図2のガス圧スプリング100の縦方向の概略断面図を示している。
【0062】
図5では、分離ピストン150は、補償媒体および作動媒体によって、作動チャンバ141および環状チャンバ111が予め定められた破断点に流体伝導方式で接続されている安全位置に押されている。したがって、作動流体および補償媒体は、予め定められた破断点まで支持チャンバを通って流れ、開いた予め定められた破断点を通って圧力チューブ110から出ていくことができる(白抜き矢印)。
【符号の説明】
【0063】
100 ガス圧スプリング
110 圧力チューブ
111 環状チャンバ
120 壁
121 外側
122 ジャケット領域
130 テーパ
131 最低点
132 エッジ
140 ガイド・チューブ
141 作動チャンバ
150 分離ピストン
160 突出部
161 支持チャンバ
170 作動ピストン
171 ピストン・ロッド
172 ガイドおよびシール・パッケージ
HW ストローク経路
LA 縦軸
【外国語明細書】