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特開2023-12019マルチOSシステムの異常管理システム、マルチOSシステムの異常管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023012019
(43)【公開日】2023-01-25
(54)【発明の名称】マルチOSシステムの異常管理システム、マルチOSシステムの異常管理方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 11/07 20060101AFI20230118BHJP
【FI】
G06F11/07 151
G06F11/07 140J
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021115408
(22)【出願日】2021-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】斎賀 右悟
【テーマコード(参考)】
5B042
【Fターム(参考)】
5B042GA11
5B042GA13
5B042GA23
5B042JJ03
5B042KK13
(57)【要約】      (修正有)
【課題】いずれかのOS(Operating System)側で異常管理を統一的に行ことで処理の簡略化・性能向上・異常出力の信頼性向上を図るマルチOSシステムの異常管理システム及び異常管理方法を提供する。
【解決手段】マルチコア対応「SoC(System ON a Chip)」10は、コア13A~13D毎に別々のOS11、12A、12Bを搭載したマルチOSシステムを構成し、OS11、12A、12B間通信によるデータ交換が行われる共有メモリ空間14を備える。このシステムでは、OS11側でのみ「SoC」10上の各デバイスに対して診断処理を行って異常状況を監視する。デバイスの異常を検知すれば、異常情報を前記共有メモリ空間14に記述して異常コードを数字表示器に出力させる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチコアプロセッサに対応した「SoC(System ON a Chip)」を備え、
前記プロセッサのコア毎に別々のOS(Operating System)を搭載したマルチOSシステムの異常管理システムであって、
前記OS間通信によるデータ交換が行われる共有メモリ空間を備え、
一方の前記OS側でのみ前記「SoC」上の各デバイスに対して診断処理を行って異常状況を監視し、
前記デバイスの異常を検知すれば、異常情報を前記共有メモリ空間に記述して異常を出力する
ことを特徴とするマルチOSシステムの異常管理システム。
【請求項2】
他方の前記OSは、自身のタスクに関する異常情報を前記共有メモリ空間に記述することで一方の前記OSに通知する
ことを特徴とする請求項1記載のマルチOSシステムの異常管理システム。
【請求項3】
一方の前記OSは、前記異常情報に応じて他方の前記OS側に制御情報を、
前記共有メモリ空間を用いて通知することを特徴とする請求項1または2記載のマルチOSシステムの異常管理システム。
【請求項4】
一方の前記OSは、前記共有メモリ空間を定期的に確認し、前記異常情報が記述されていれば、数字表示器に異常コードを出力して表示する
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか記載のマルチOSシステムの異常管理システム。
【請求項5】
マルチコアプロセッサに対応した「SoC(System ON a Chip)」を備え、前記プロセッサのコア毎に別々のOS(Operating System)を搭載し、
前記OS間通信によるデータ交換が行われる共有メモリ空間を備えたマルチOSシステムの異常管理方法であって、
一方の前記OS側でのみ前記「SoC」上の各デバイスに対して診断処理を行って異常状況を監視するステップと、
前記デバイスの異常を検知すれば、異常情報を前記共有メモリ空間に記述して異常を出力するステップと、
を有することを特徴とすることを特徴とするマルチOSシステムの異常管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチコアプロセッサ(マルチコアCPU)に対応した「SoC(System ON a Chip)」を用いて、それぞれのコアに別々のOS(Operating System)を搭載するマルチOSシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
産業機器・家電製品などの組込みシステムには、マルチコアCPUを搭載し、マルチコア対応「SoC」を採用するケースが少なくない。マルチコアCPUは、特許文献1,2に示すように、CPU内に複数のコアを搭載し、搭載された各コアにより命令列を同時に独立に実行することができる。
【0003】
そのため、マルチコアCPU対応「SoC」では、コア毎に複数のOSを搭載したマルチOSのシステム構成が可能となる。マルチOSシステム構成の場合、一般的に各OSの異常管理および異常診断は、それぞれのOS側にて行われ、割り込みや定周期などのタイミングで常時に診断が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-118493
【特許文献2】特開2010-140146
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述のようにマルチOSシステム構成は、各OSで異常診断の診断処理が行われるため、異常の管理や異常出力のタイミングが複雑となり、システムの性能を損なうおそれがあった。
【0006】
特に異常診断の診断処理は、常に動作しているため、通信などを行うOS処理ではコアの負荷が大きくなり、伝送遅延が発生し、システムの正当性が保てない場合がある。また、コアの負荷が大きくなるため、CPUの消費電力増大や温度上昇なども懸念される。
【0007】
さらにマルチOSシステム構成は、各OSにて異常を検出したタイミングで数字表示器などへの異常コード表示や異常処理を行う。そのため、いずれかのOSに異常が発生した場合、各OSにて異常発生したタイミングで数字表示器などへの異常コード出力が行われ、マルチOSシステムとして異常表示の整合性が取れていない場合があった。これではどのような異常が生じたのか分かり難く、異常出力の信頼性を損なうおそれがある。
【0008】
本発明は、このような従来の問題を解決するためになされ、いずれかのOS側で異常管理を統一的に行ことで処理の簡略化・性能向上・異常出力の信頼性向上を図ることを解決課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明の一態様は、マルチコアプロセッサに対応した「SoC(System ON a Chip)」を備え、
前記プロセッサのコア毎に別々のOS(Operating System)を搭載したマルチOSシステムの異常管理システムであって、
前記OS間通信によるデータ交換が行われる共有メモリ空間を備え、
一方の前記OS側でのみ前記「SoC」上の各デバイスに対して診断処理を行って異常状況を監視し、
前記デバイスの異常を検知すれば、異常情報を前記共有メモリ空間に記述して異常を出力することを特徴としている。
【0010】
(2)本発明の他の態様は、マルチコアプロセッサに対応した「SoC(System ON a Chip)」を備え、前記プロセッサのコア毎に別々のOS(Operating System)を搭載し、
前記OS間通信によるデータ交換が行われる共有メモリ空間を備えたマルチOSシステムの異常管理方法であって、
一方の前記OS側でのみ前記「SoC」上の各デバイスに対して診断処理を行って異常状況を監視するステップと、
前記デバイスの異常を検知すれば、異常情報を前記共有メモリ空間に記述して異常を出力するステップと、を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、いずれかのOS側で異常管理が統一的に行われるため、処理の簡略化・性能向上・異常出力の信頼性向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係るマルチコア対応「SoC」の構成図。
図2】同 異常管理システムのタスク管理構成図。
図3】同 異常監視プロセスのフローチャート。
図4】同 数字表示プロセスのフローチャート。
図5】同 通信タスク異常時プロセスのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係るマルチOSシステムの異常管理システムを説明する。この異常管理システムは、主にマルチコア対応「SoC」を用いた組み込み機器における異常管理・異常表示方式に関する。
【0014】
ここではCPUの各コアに別々のOSを搭載するマルチOSシステムを採用し、一方のOSは自身の異常管理と他方のOSの異常管理を実行する。すなわち、前述のようにマルチOSシステムによる異常管理は、一般的に各OSにより実行されている。
【0015】
これにより各OSで異常表示の出力方法や出力タイミングなどが異なる場合が生じ、処理が複雑となるおそれがある。そこで、前記異常管理システムでは、一方のOS側で異常管理を統一的に実行する。
【0016】
≪構成例≫
図1中の10は、前記異常管理システムが対象とするマルチコア対応「SoC」を示している。この「SoC」10は、4コア13A~13Dを搭載したマルチCPUと、各コア13A~13D間のデータ交換用の共有メモリ空間(DDRメモリ)14とを備えている。
【0017】
具体的にはコア13A,13Bは、SMP(Symmetric Multi Processing)により1つの情報処理用OS「LinuX(登録商標)等」11を実装(搭載)する。また、コア13C,13Dのそれぞれにリアルタイム処理用OS「μC3(登録商標)」12A,12Bを実装する。
【0018】
また、共有メモリ空間14は、前記各OS11,12A,12B間通信によるデータ交換に用いられる。すなわち、前記各OS11,12A,12Bは共有メモリ空間14にてシステムを構成するためのデータを交換する。
【0019】
このとき共有メモリ空間14は、前記OS11,12A,12B間の制御情報の通知に用いられる制御データ領域14aと、異常情報(異常データ)が記述される異常管理データ領域14bとを備えている(図2参照)。
【0020】
なお、前記「SoC」10上には、共有メモリ空間14のほかに各種メモリ(DM16,PM17,FLASH(登録商標)18,CFAST19)などが構成されている。
【0021】
≪タスク管理≫
図2に基づき前記異常管理システムのタスク管理構成を説明する。前記各OS11,12A,12Bの個々の機能を満足させるため、複数のタスクが実装されている。
【0022】
具体的には前記OS11には、数字表示プロセスP1・異常監視プロセスP2・その他のプロセスP3-1~P3-nが実装されている。一方、前記OS12A,12Bは、通信タスクT1-1,T1-2・その他のタスクT3-1~T3-n・T4-1~T4-nが実装されている。
【0023】
(1)異常監視プロセスP2
前記OS12A,12Bは、通信タスクT1-1,T1-2を主なタスクとし、従来設けられていた異常監視タスクT2-1,T2-2は実装されていない。
【0024】
すなわち、従来、前記OS12A,12B側で実施していた異常診断の機能は、前記OS11側に診断アルゴリズムが移植されている。これにより前記OS11に異常監視プロセスP2が実装され、「SoC」10の各デバイスに対して異常診断が実施され、その異常状況の監視が行われる。
【0025】
そのため、前記OS12A,12B側では、各デバイスの異常診断は一切行われず、主に自身の通信タスクT1-1,T1-2を行う。このとき前記OS11は、異常診断により異常の発生を検知すれば、異常情報(異常データ)を異常管理データ領域14bに記述する。
【0026】
この異常情報は、発生順に異常管理データ領域14bに記述され、異常コード・異常の発生日時などを含めることができる。この異常コードは、事前に診断対象の異常内容毎に数値化された情報とする。
【0027】
なお、前記OS12A,12Bは、通信タスクT1-1,T1-2にて通信処理の異常を検知すれば、共有メモリ空間14上の異常管理データ領域14bに異常情報を記述して前記OS11側に通知する。
【0028】
(2)数字表示プロセスP1
数字表示プロセスP1は、異常監視プロセスP2と同様に前記OS11だけに実装され、前記OS12A,12Bには実装されていない。したがって、数字表示プロセスP1は、前記OS11側でのみ行われ、前記OS12A,12B側では行われない。
【0029】
具体的には前記OS11は、事前に定められた一定の周期で定期的に異常管理データ領域14bを確認し、異常情報の有無を検知する。確認の結果、異常管理データ領域14bに異常情報が記述されていれば、異常情報の記述順(異常の発生順)に異常コードを数字表示器20に表示する。このとき異常コードと併せて異常の発生日時を表示することもできる。
【0030】
なお、前記OS11のその他のプロセスP3-1~P3-nの一例として、
異常コードの表示後に共有メモリ空間14を用いて前記OS12A,12B側にデバイス等の制御情報を通知することができる。この制御情報は、前記OS12A,12B側のデバイス制御等に必要な情報も含まれる。例えばOS12A,12B側に制御情報(AO,DO)を通知し、下位に繋がっている現場機器や制御端末に対して制御命令を出力する。
【0031】
≪動作処理ステップ≫
図3図5に基づき前記異常管理システム10の動作処理ステップを説明する。ここでは前記異常管理システム10は図2に示すタスク管理構成を有し、図3および図4の動作処理ステップは前記OS11により実行される一方、図5の動作処理ステップは前記OS12A,12Bにより実行される。
【0032】
(1)図3に基づき異常監視プロセスP2による診断処理を説明する。まず、電源投入により(S01)、前記組込み機器のハードウェアが起動し(S02)、前記OS11が起動して各種の初期化処理が行われる(S03)。
【0033】
つぎに前記OS11の異常監視プロセスP2が動作を開始し、各デバイスの異常状況が監視される(S04)。このとき前記OS11は、前記診断アルゴリズムにしたがって各デバイスを診断し(S05)、各デバイスの異常の有無を確認する(S06)。
【0034】
確認の結果、異常が有れば異常管理データ領域14bに異常情報を記述し、異常管理データ領域14bの記述情報を更新する(S07)。一方、異常が無ければS04に戻って異常状況の監視を継続する。
【0035】
(2)図4に基づき数字表示プロセスP1の動作処理ステップを説明する。ここではS01~S03と同様に電源投入により(S11)、前記組込み機器のハードウェアが起動し(S12)、前記OS11が起動して各種の初期化処理が行われる(S13)。
【0036】
その後、前記OS11の数字表示プロセスP1が動作を開始し(S14)、異常管理データ領域14bに異常データが記述されているか否かが確認される(S15)。確認の結果、異常管理データ領域14bに異常情報の記述があれば、異常コードを発生順に数字表示器20に表示させる(S16)。一方、異常情報の記述が無ければ、S14に戻って定期的に異常管理データ領域14bを確認する。
【0037】
(3)最後に図5に基づき通信タスクT1-1,T1-2の動作処理ステップを説明する。ここではS01,S02,S11,S12と同様に電源投入により(S22)、前記組込み機器のハードウェアが起動する(S22)。
【0038】
その後、前記OS12A,12Bが起動し(S23)、通信タスクT1-1,T1-2が動作して(S24)、それぞれ通信処理が行われる。このとき通信処理の異常の有無が確認される(S25)。
【0039】
確認の結果、通信処理の異常が検出されれば、異常管理データ領域14bに異常情報を記述して保存する(S26)。ここで保存された異常情報はS15のチェック時に前記OS11に確認され、これにより前記OS12A,12Bの通信処理の異常が前記OS11に通知される。
【0040】
一方、異常が検出されなければ、通信タスクT1-1,T1-2の通信処理が継続される(S24)。このような前記異常管理システムの動作処理ステップによれば、以下に示す効果(A)~(E)が得られる。
【0041】
(A)すなわち、「SoC」10の各デバイスの異常診断は、前記OS12A,12B側では行われず、前記OS11側の異常監視プロセスP2により行われる。その結果、マルチコア対応のマルチOS構成システムとして動作させる場合、一方の前記OS11のみでシステム全体の各デバイスの異常管理ができる。
【0042】
(B)前記異常管理システムによれば、前記OS11のみで各デバイスの異常管理が可能なため、処理の簡略化・性能向上を図ることができる。特に通信タスクT1-1,T1-1を実行する前記OS12A,12B側において、各デバイスの異常診断処理をする必要がないため、コア13C,13Dの負荷を軽減でき、通信機能への影響を抑制することが可能となる。
【0043】
この点で伝送遅延の発生を減少させることができる。なお、コア13C,13Dの負荷が軽減されるため、その電力消費量が削減でき、またCPU温度の上昇を抑えることも可能となる。
【0044】
(C)異常コードの出力は、前記OS12A,12B側では行われず、前記OS11側の数字表示プロセスにより行われる。この点で異常コード出力をシステム全体で統一的に実行可能となる。また、前記OS11側の数字表示プロセスP1により前記OD12A,12B側の異常コードを出力するため、システム全体として異常表示の整合性を図ることが可能となる。
【0045】
(D)S07,S26で共有メモリ空間14の異常管理データ領域14bに異常データが記述されるため、前記各OS11,12A,12Bのそれぞれで各デバイスの異常および通信異常を共有することが可能となる。
【0046】
(E)異常監視プロセスP2で検出した異常により前記OS12A,12B側の制御が必要な場合、前記OS11は共有メモリ空間14を用いて前記OS12A,12B側にデバイス等の制御情報を通知でき、この点で簡単な解決が図れる。
【0047】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載された範囲内で変形して実施することができる。例えば前記異常管理システム10のマルチコアCPUは、クアッドコアに限らず、デュアルコア・ヘキサコア・オクタコアなどでもよいものとする。
【符号の説明】
【0048】
10…マルチコア対応「SoC」
11,12A,12B…OS
13A~13C…コア
14…共有メモリ空間
14a…制御データ領域
14b…異常管理データ領域
16…DM
17…PM
18…FLASH
19…CFAST
P1…数字表示プロセス
P2…異常監視プロセス
P3-1~P3-n…その他のプロセス
T1-1,T1-2…通信タスク
T3-1~T3-n,T4-1~T4-n…その他のタスク
図1
図2
図3
図4
図5