(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023120262
(43)【公開日】2023-08-29
(54)【発明の名称】ごみ処理施設の発火検知システム、及び発火検知方法
(51)【国際特許分類】
B09B 5/00 20060101AFI20230822BHJP
B09B 3/35 20220101ALI20230822BHJP
B09B 101/25 20220101ALN20230822BHJP
【FI】
B09B5/00 M
B09B3/35 ZAB
B09B101:25
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095822
(22)【出願日】2023-06-09
(62)【分割の表示】P 2019170366の分割
【原出願日】2019-09-19
(71)【出願人】
【識別番号】000133032
【氏名又は名称】株式会社タクマ
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【弁理士】
【氏名又は名称】沖中 仁
(72)【発明者】
【氏名】田中 大介
(72)【発明者】
【氏名】小西 淳隆
(57)【要約】
【課題】破砕ごみの搬送中に迅速且つ正確に発火を検知することができるごみ処理施設の発火検知システムを提供する。
【解決手段】ごみを破砕する破砕機20と、破砕機20から排出される破砕ごみを搬送する第一搬送コンベヤ31と、第一搬送コンベヤ31から落下される破砕ごみを搬送する第二搬送コンベヤ32とを備えて構成されるごみ処理施設1Aの発火検知システムであって、第一搬送コンベヤ31から第二搬送コンベヤ32へと落下される破砕ごみを撮像する赤外/可視複合カメラ60と、赤外/可視複合カメラ60によって撮像される画像に基づいて発火現象が生じたか否かを判定する発火現象判定手段とを備えるごみ処理施設1Aの発火検知システム。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ごみを破砕する破砕機と、前記破砕機から排出される破砕ごみを搬送する第一搬送コンベヤと、前記第一搬送コンベヤから落下される破砕ごみを搬送する第二搬送コンベヤとを備えたごみ処理施設の発火検知システムであって、
前記第一搬送コンベヤは、前記第二搬送コンベヤの上流側端部と平面視で所要の重なり領域を持って前記第二搬送コンベヤの上方に配される下流側水平部を有するコンベヤ本体と、前記コンベヤ本体を収容するケーシングとを備え、
前記ケーシングには、平面視で前記第二搬送コンベヤの前記上流側端部に対応するように開口部が設けられ、
前記第一搬送コンベヤにおける前記下流側水平部から前記第二搬送コンベヤの前記上流側端部上に落下されて広がった状態の破砕ごみを、前記開口部を通して撮像するように前記開口部の上方に配設される撮像手段と、
前記撮像手段によって撮像される画像に基づいて発火現象が生じたか否かを判定する発火現象判定手段と、
を備えるごみ処理施設の発火検知システム。
【請求項2】
前記第二搬送コンベヤを制御するコンベヤ制御手段を備え、
前記コンベヤ制御手段は、前記発火現象判定手段によって発火現象が生じたと判定された場合に、前記第二搬送コンベヤの搬送速度を減じる請求項1に記載のごみ処理施設の発火検知システム。
【請求項3】
前記第二搬送コンベヤを制御するコンベヤ制御手段を備え、
前記コンベヤ制御手段は、前記発火現象判定手段によって発火現象が生じたと判定された場合に、前記第二搬送コンベヤの搬送方向を逆方向に切り換える請求項1に記載のごみ処理施設の発火検知システム。
【請求項4】
前記撮像手段は、撮像対象の破砕ごみのアナログ画像データを撮像素子によってデジタル画像データに変換して出力するように構成され、
前記デジタル画像データに対し画像処理を施すことによって温度画像データを生成する画像処理手段を備え、
前記発火現象判定手段は、前記画像処理手段によって生成された前記温度画像データと、基準となる温度画像データとに基づいて温度上昇率を演算し、算出された温度上昇率が所定値以上を示す温度画像データの画素数が、前記画像処理手段によって生成された前記温度画像データの有効画素数に対して所定割合以上であるときに、発火現象が生じたと判定する請求項1~3の何れか一項に記載のごみ処理施設の発火検知システム。
【請求項5】
ごみを破砕する破砕機と、前記破砕機から排出される破砕ごみを搬送する第一搬送コンベヤと、前記第一搬送コンベヤから落下される破砕ごみを搬送する第二搬送コンベヤとを備えたごみ処理施設において、破砕ごみの発火を検知する発火検知方法であって、
前記第一搬送コンベヤは、前記第二搬送コンベヤの上流側端部と平面視で所要の重なり領域を持って前記第二搬送コンベヤの上方に配される下流側水平部を有するコンベヤ本体と、前記コンベヤ本体を収容するケーシングとを備え、
前記ケーシングには、平面視で前記第二搬送コンベヤの前記上流側端部に対応するように開口部が設けられ、
前記第一搬送コンベヤにおける前記下流側水平部から前記第二搬送コンベヤの前記上流側端部上に落下されて広がった状態の破砕ごみを、前記開口部を通して上方から撮像する撮像工程と、
前記撮像工程により得られる画像に基づいて発火現象が生じたか否かを判定する発火現象判定工程と、
を包含するごみ処理施設の発火検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ごみ処理施設での破砕ごみの発火を検知するごみ処理施設の発火検知システム、及び発火検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、都市ごみ等の廃棄物(以下、単に「ごみ」と称する。)を焼却、溶融、ガス化等により処理する際には、ごみを破砕機により所望の大きさに破砕し、有価物や不燃物、可燃物等に選別する処理が行われる。
【0003】
この際、ごみ内には、ガスボンベやスプレー缶、有機溶剤容器、ガソリン容器、灯油容器等の可燃物が残留する容器類や、切断されると発火するリチウム系電池等(以下、「危険物」と称する。)が多数混入している。これらの危険物は、ごみの収集段階で分別されて取り除かれているはずであるが、現実には、ごみ処理施設に搬入されてくるごみ内には、多数の危険物が混入している。
【0004】
そのため、ごみ処理施設では、搬入されてきたごみを破砕機へ投入する前に目視によって選別し、危険物を除去するようにしている。また、万一、過誤により危険物が投入された場合に備えて火災や爆発事故の発生を防止する対策を採っている。
【0005】
ごみ処理施設における防火対策としては、発火による温度上昇を検知するための例えば消耗式熱電対からなる熱感知器(温度感知器)を破砕機出口付近に設けたり、炎から放射される赤外線や紫外線を検知する炎感知器を、常時発生している破砕の火花を検知しない位置で破砕物の直撃を受けない、下流側の破砕物搬送コンベヤに設置したりすることが行われている。このような温度や炎の検出を基本とする火災検知器は、破砕機内部のような狭い空間部での火災であれば、迅速且つ正確に火災の発生を検知することができる。
【0006】
しかしながら、破砕機の下流側に配される搬送コンベヤの内部では、破砕されたごみ(破砕ごみ)が0.3~0.8m/秒程度の高速度で搬送されているため、火災発生箇所が火災検知器の設置位置を瞬時に通過することになり、温度感知式の火災検知器では火災の検知ができない。また、この種の搬送コンベヤでは、破砕ごみが山盛り状態で搬送されているため、発火した破砕ごみ(火種)が埋もれた状態となっていることが多く、このような状態下では、火災の検知が一層困難になる。
【0007】
さらに、搬送コンベヤの内部は、ごみの破砕により生じた粉塵が常時多量に存在する状態の雰囲気にあるため、炎感知式の火災検知器では炎の発生を検知するのが遅れたり、煙感知式の火災検知器では誤報を生じたりする等の問題がある。
【0008】
その上、従来の温度、炎、煙等の感知を基本とする火災検知器は、一般に検知感度が低くて、火災がある程度進行しないと火災を検知することができない上、破砕ごみが高速搬送されていること等と相俟って、火災発生時の初期消火が困難である。その結果、搬送コンベヤ内の損傷が甚大になり易い上、消火後の搬送コンベヤの復旧に時間がかかって、短期間内にごみ処理施設を再運転することができない等の問題がある。
【0009】
上記のような問題を解決するべく、破砕物搬送コンベヤのケーシング内に、内部雰囲気のCO濃度を検出するCO検知器を設けることが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に係る技術において用いられるCO検知器は、導管によりガスを吸引してセンサ部に導く構成であるために、ガスが導管を通過するのに時間を要することになる。また、正確なCO濃度を測るためには、吸引するガスに含まれるダストの除去や湿気の除去を予め行う必要があることから、前処理装置としてのフィルタや活性炭が必要となる。
【0012】
このため、特許文献1のものでは、導管による通過時間に加えて前処理装置を通過するための時間も必要となり、瞬時にCO濃度を計測することができず、発火したごみはコンベヤで次工程に搬送されてしまう危険性がある。また、ごみの臭気対策等の理由で機器の内部を負圧にしている場合は、CO検出器に設置したポンプの能力よりも誘引ファンの能力の方が高くなり、発生するガスを十分に吸引できない場合もある。従って、特許文献1のものは、多量にCOガスが発生した場合には有効であるが、その時点では既に火災が拡大している虞がある。
【0013】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、破砕ごみの搬送中に迅速且つ正確に発火を検知することができるごみ処理施設の発火検知システム、及び発火検知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するための本発明に係るごみ処理施設の発火検知システムの特徴構成は、
ごみを破砕する破砕機と、前記破砕機から排出される破砕ごみを搬送する第一搬送コンベヤと、前記第一搬送コンベヤから落下される破砕ごみを搬送する第二搬送コンベヤとを備えたごみ処理施設の発火検知システムであって、
前記第一搬送コンベヤから前記第二搬送コンベヤへと落下される破砕ごみを撮像する撮像手段と、
前記撮像手段によって撮像される画像に基づいて発火現象が生じたか否かを判定する発火現象判定手段と、
を備えることにある。
【0015】
本構成のごみ処理施設の発火検知システムにおいては、第一搬送コンベヤから第二搬送コンベヤへと落下されてばらけた状態となる破砕ごみが撮像手段によって撮像される。これにより、発火していない破砕ごみの中に発火した破砕ごみ(火種)が埋もれていたとしても、第一搬送コンベヤから第二搬送コンベヤへと破砕ごみが落下される際に火種が現れることになる。そして、火種が現れた状態の破砕ごみが撮像手段によって撮像され、この撮像された画像に基づいて発火現象が生じたか否かが発火現象判定手段によって判定されるので、破砕ごみの搬送中に迅速且つ正確に発火を検知することができる。
【0016】
本発明に係るごみ処理施設の発火検知システムにおいて、
前記撮像手段は、前記第一搬送コンベヤから前記第二搬送コンベヤへと落下されて前記第二搬送コンベヤ上で広がった状態の破砕ごみを撮像することが好ましい。
【0017】
本構成のごみ処理施設の発火検知システムによれば、第一搬送コンベヤから第二搬送コンベヤへと落下されて第二搬送コンベヤ上で広がった状態の破砕ごみが撮像手段によって撮像されるので、火種がより明確に現れた状態の破砕ごみの撮像画像に基づいて発火現象が生じたか否かが判定されることになり、破砕ごみの搬送中により迅速且つ正確に発火を検知することができる。
【0018】
本発明に係るごみ処理施設の発火検知システムにおいて、
前記第二搬送コンベヤを制御するコンベヤ制御手段を備え、
前記コンベヤ制御手段は、前記発火現象判定手段によって発火現象が生じたと判定された場合に、前記第二搬送コンベヤの搬送速度を減じることが好ましい。
【0019】
本構成のごみ処理施設の発火検知システムによれば、発火現象判定手段によって発火現象が生じたと判定された場合に、第二搬送コンベヤの搬送速度が減じられるので、火種が第二搬送コンベヤによって次工程に搬送されてしまうのを防ぐことができるとともに、火種が第二搬送コンベヤによって搬送されている途中において火種を例えば選別ロボットや人の手選別によって容易に取り除くことができる。
【0020】
本発明に係るごみ処理施設の発火検知システムにおいて、
前記第二搬送コンベヤを制御するコンベヤ制御手段を備え、
前記コンベヤ制御手段は、前記発火現象判定手段によって発火現象が生じたと判定された場合に、前記第二搬送コンベヤの搬送方向を逆方向に切り換えることが好ましい。
【0021】
本構成のごみ処理施設の発火検知システムによれば、発火現象判定手段によって発火現象が生じたと判定された場合に、第二搬送コンベヤの搬送方向が逆方向に切り換えられるので、火種が第二搬送コンベヤによって次工程に搬送されてしまうのを防ぐことができるのは勿論のこと、特別な選別手段等を設けることなく火種を第二搬送コンベヤの外部に排除することができる。
【0022】
本発明に係るごみ処理施設の発火検知システムにおいて、
前記撮像手段は、撮像対象の破砕ごみのアナログ画像データを撮像素子によってデジタル画像データに変換して出力するように構成され、
前記デジタル画像データに対し画像処理を施すことによって温度画像データを生成する画像処理手段を備え、
前記発火現象判定手段は、前記画像処理手段によって生成された前記温度画像データと、基準となる温度画像データとに基づいて温度上昇率を演算し、算出された温度上昇率が所定値以上を示す温度画像データの画素数が、前記画像処理手段によって生成された前記温度画像データの有効画素数に対して所定割合以上であるときに、発火現象が生じたと判定することが好ましい。
【0023】
本構成のごみ処理施設の発火検知システムによれば、撮像手段からのデジタル画像データに対し画像処理が施されることで生成された温度画像データと、基準となる温度画像データとに基づいて温度上昇率が演算され、算出された温度上昇率が所定値以上を示す画像データの画素数が、画像処理によって生成された温度画像データの有効画素数に対して所定割合以上であるときに発火現象が生じたと判定されるので、炎を伴わない例えば化学反応等による比較的緩やかな温度上昇をノイズとして排除して、炎を伴う発火現象を確実に検知することができる。
【0024】
次に、上記課題を解決するための本発明に係るごみ処理施設の発火検知方法の特徴構成は、
ごみを破砕する破砕機と、前記破砕機から排出される破砕ごみを搬送する第一搬送コンベヤと、前記第一搬送コンベヤから落下される破砕ごみを搬送する第二搬送コンベヤとを備えたごみ処理施設において、破砕ごみの発火を検知する発火検知方法であって、
前記第一搬送コンベヤから前記第二搬送コンベヤへと落下される破砕ごみを撮像する撮像工程と、
前記撮像工程により得られる画像に基づいて発火現象が生じたか否かを判定する発火現象判定工程と、
を包含することにある。
【0025】
本構成のごみ処理施設の発火検知方法においては、第一搬送コンベヤから第二搬送コンベヤへの落下の際にばらけた状態となる破砕ごみが撮像工程にて撮像される。これにより、発火していない破砕ごみの中に火種が埋もれていたとしても、第一搬送コンベヤから第二搬送コンベヤへと落下される際に火種が現れることになる。そして、火種が現れた状態の破砕ごみが撮像され、この撮像された画像に基づいて発火現象が生じたか否かが判定されるので、破砕ごみの搬送中に迅速且つ正確に発火を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、本発明の第一実施形態に係る発火検知システムが適用されるごみ処理施設の概略構成図である。
【
図2】
図2は、本発明の第一実施形態に係る発火検知システムが適用されるごみ処理施設の制御系を示し、(a)はハード構成を示すブロック図、(b)は機能ブロック図である。
【
図3】
図3は、本発明の第一実施形態に係るごみ処理施設の発火検知システムの制御処理の内容を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、本発明の第二実施形態に係る発火検知システムが適用されるごみ処理施設の概略構成図である。
【
図5】
図5は、本発明の第二実施形態に係るごみ処理施設の発火検知システムの制御処理の内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明について、
図1~
図5を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態では、不燃ごみや、粗大ごみを破砕機により所望の大きさに破砕し、有価物や不燃物、可燃物等に選別するごみ処理施設において適用される発火検知システム(発火検知方法)を例に挙げて説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施形態や図面に記載される構成に限定されることは意図しない。なお、「不燃ごみ」とは、例えば、ブラスチック製品や、ゴム製品、小型電気製品、金属屑、ガラス屑、陶器等が含まれる。また、「粗大ごみ」とは、家庭の日常生活から出されるごみであって、例えば、最大の辺又は径が30cmを超えるものや、棒状で1mを超えるもの、また、家庭の引っ越しや大掃除等で一時的に多量に出されるごみ等が含まれる。以下においては、「不燃ごみ」と「粗大ごみ」とを包括して単に「ごみ」と称して説明する。
【0028】
〔第一実施形態〕
<全体構成>
図1は、本発明の第一実施形態に係る発火検知システムが適用されるごみ処理施設の概略構成図である。
図1に示されるごみ処理施設1Aにおいては、ごみ処理流れの上流側から下流側に向けて、第一供給コンベヤ11、第二供給コンベヤ12、破砕機20、第一搬送コンベヤ31、第二搬送コンベヤ32、及び排出コンベヤ50がこの記載順に配設されている。また、ごみ処理施設1Aは、システム全体を制御するための制御装置70を備えている。なお、以下の説明において、特に断りの無い限り、「上流」とは、ごみ処理流れにおける上手側のことであり、「下流」とは、ごみ処理流れにおける下手側のことである。
【0029】
[第一供給コンベヤ]
第一供給コンベヤ11は、プラットホームに設置されたダンピングボックス2によってごみが投入されるごみ受入ホッパ3の内部に設置されている。第一供給コンベヤ11においては、上流側端部に配される駆動輪に動力伝達機構を介して駆動モータ13が連結されている。
【0030】
[第二供給コンベヤ]
第二供給コンベヤ12は、第一供給コンベヤ11と連続するように配設されるコンベヤ本体14と、コンベヤ本体14を収容するとともに破砕機20における後述する投入口23を覆うように塞ぐケーシング15とを備えて構成されている。コンベヤ本体14は、上流側水平部14a、中間傾斜部14b、及び下流側水平部14cを有している。上流側水平部14aは、第一供給コンベヤ11の下流側端部と平面視で所要の重なり領域を持って第一供給コンベヤ11の下方に配されている。下流側水平部14cは、上流側水平部14aよりも下流側に配され、且つ破砕機20における後述する投入口23にごみを投入できる高さ位置に配されている。中間傾斜部14bは、上流側水平部14aと下流側水平部14cとを連結するように、下流側に向って上向きに傾斜するような形状に形成されている。第二供給コンベヤ12においては、下流側水平部14cの端部に配される駆動輪に動力伝達機構を介して駆動モータ16が連結されている。なお、第一供給コンベヤ11と第二供給コンベヤ12とを、1台の供給コンベヤとする態様例もあり得る。
【0031】
<破砕機>
破砕機20は、ケーシング21の内部に二つの回転刃22が配設されて構成されている。ケーシング21の上部には、ごみが投入される投入口23が形成され、ケーシング21の下部には、二つの回転刃22の間を通過したごみが排出される排出口24が形成されている。なお、本実施形態では、破砕機20として、二つの回転刃22でごみを破砕する二軸破砕機を用いた例を示したが、これに限定されるものではなく、ハンマーでごみを破砕するハンマー方式の破砕機を用いてもよい。
【0032】
<第一搬送コンベヤ>
第一搬送コンベヤ31は、破砕機20の排出口24から排出される破砕ごみを受け止め、受け止めた破砕ごみを下流側へと搬送するコンベヤ本体35と、コンベヤ本体35を収容するケーシング36とを備えて構成されている。コンベヤ本体35は、上流側水平部35a、中間傾斜部35b、及び下流側水平部35cを有している。上流側水平部35aは、破砕機20の排出口24の下方に配されている。下流側水平部35cは、上流側水平部35aよりも下流側に配され、且つ第二搬送コンベヤ32の上流側端部と平面視で所要の重なり領域を持って第二搬送コンベヤ32の上方に配されている。中間傾斜部35bは、上流側水平部35aと下流側水平部35cとを連結するように、下流側に向って上向きに傾斜するような形状に形成されている。第一搬送コンベヤ31においては、下流側水平部35cの端部に配される駆動輪に動力伝達機構を介して駆動モータ37が連結されている。
【0033】
<第二搬送コンベヤ>
第二搬送コンベヤ32は、第一搬送コンベヤ31における下流側水平部35cから落下される破砕ごみを受け止め、受け止めた破砕ごみを水平搬送する。第二搬送コンベヤ32においては、下流側端部に配される駆動輪に動力伝達機構を介して駆動モータ40が連結され、駆動モータ40の正転と逆転との切り換えにより、第二搬送コンベヤ32における破砕ごみの搬送方向を切り換えることができるようになっている。
【0034】
[磁選機]
第二搬送コンベヤ32における上流側端部寄りの位置には、磁選機41が配設されている。磁選機41は、第二搬送コンベヤ32によって搬送される破砕ごみ中に混入している鉄片・鉄塊等の強磁性物を磁力により吸着して回収する。この磁選機41で回収された強磁性物を含む破砕ごみは、更に、図示されない風力選別機等を経ることにより、強磁性物とそれ以外の不燃ごみ等とに選別される。
【0035】
<選別機>
第二搬送コンベヤ32の搬送経路途中には、磁選機41の下流側に位置するように、選別機45が配設されている。また、選別機45の近傍には、危険物貯留槽46が設置されている。選別機45は、切断されると発火するリチウム系電池等の危険物を選び分けて取り除くものである。選別機45としては、例えば、炎から放射される赤外線や紫外線によって炎を感知する炎感知器や可視カメラ等を備え、人の手腕を模したアームで危険物等を掴んで取り除いて危険物貯留槽46へと投入するように構成されるAI(人工知能)搭載のアーム型選別ロボットや、危険物を所定の場所に仕分けするソータ機能を備えたソータコンベヤ等が挙げられる。なお、アーム型選別ロボットやソータコンベヤ等に代えて、人の手選別により危険物を選別する態様もある。
【0036】
[排出コンベヤ]
排出コンベヤ50は、第二搬送コンベヤ32の下流側端部から落下される破砕ごみを受け止め、受け止めた破砕ごみを水平搬送する。排出コンベヤ50においては、下流側端部に配される駆動輪に動力伝達機構を介して駆動モータ55が連結されている。
【0037】
<撮像手段>
第一搬送コンベヤ31と第二搬送コンベヤ32との間には、第一搬送コンベヤ31から第二搬送コンベヤ32へと落下される破砕ごみを撮像する撮像手段として、例えば赤外/可視複合カメラ60が配設されている。
【0038】
赤外/可視複合カメラ60は、赤外線カメラと可視光カメラとを併用できるように構成され、赤外線カメラ画像により温度検知が可能であるとともに、視認性に優れた可視光カメラ画像により位置特定が可能である。また、赤外/可視複合カメラ60は、撮像対象の破砕ごみのアナログ画像データを撮像素子(電荷結合素子)によってデジタル画像データに変換して出力するように構成されている。なお、可視光カメラ画像データは、録画収録により、火災発生時の検証用としての活用も可能である。
【0039】
赤外/可視複合カメラ60は、第一搬送コンベヤ31における下流側水平部35cから第二搬送コンベヤ32の上流側端部上に落下されて広がった状態の破砕ごみを撮像することができ、且つ落下する破砕ごみの直撃を受けないように、第二搬送コンベヤ32の上流側端部の上方に配設されている。すなわち、第一搬送コンベヤ31のケーシング36には、平面視で第二搬送コンベヤ32の上流側端部に対応するように開口部36aが設けられ、この開口部36aの上方に、該開口部36aを通して第二搬送コンベヤ32の上流側端部上で広がった状態の破砕ごみを撮像できるように、赤外/可視複合カメラ60が配設されている。
【0040】
<制御系の構成>
図2は、本発明の第一実施形態に係る発火検知システムが適用されるごみ処理施設の制御系を示し、(a)はハード構成を示すブロック図、(b)は機能ブロック図である。
図2(a)に示されるように、制御装置70は、CPU71、メモリ72、I/Oポート73、図示されない周辺機器等を備えて構成されている。制御装置70には、駆動モータ13,16,37,40,55や、選別機45、赤外/可視複合カメラ60等が信号伝達可能に接続されている。なお、メモリ72には、後述する発火現象判定工程において温度上昇率を演算する際に用いられる基準となる温度画像データ(例えば、20℃を示す温度画像データ)が記憶されている。
【0041】
図3は、本発明の第一実施形態に係るごみ処理施設の発火検知システムの制御処理の内容を示すフローチャートである。制御装置70におけるメモリ72には、
図3のフローチャートに示されるアルゴリズムに従って作成された所定プログラムや、後述する温度上昇率を演算するための基準となる温度画像データの他、各種データ等が記憶されている。そして、メモリ72に格納されている所定プログラムをCPU71が読み込んで実行し周辺機器等と協働することにより、
図2(b)の機能ブロック図に示される、画像処理手段75、発火現象判定手段76、コンベヤ制御手段77、及び選別機制御手段78のそれぞれの機能が発揮される。
【0042】
以上に述べたように構成されるごみ処理施設1Aのごみ処理動作について
図1及び
図2を用いて説明する。
【0043】
まず、コンベヤ制御手段77は、各コンベヤ11,12,31,32,50の搬送速度が例えば、0.3~0.8m/sの範囲となるように、各駆動モータ13,16,37,40,55を正転させる駆動制御信号を、各駆動モータ13,16,37,40,55に送信する。これにより、各コンベヤ11,12,31,32,50は、0.3~0.8m/sの搬送速度で通常運転にて稼働される。
【0044】
第一供給コンベヤ11は、ごみ受入ホッパ3内に投入されたごみを受け止め、受け止めたごみを、駆動モータ13の正転により、上流側端部から下流側端部に向けて搬送し、下流側端部から第二供給コンベヤ12の上流側水平部14a上へと落下させる。
【0045】
第二供給コンベヤ12は、上流側水平部14a上に載置されたごみを、駆動モータ16の正転により、上流側水平部14aから中間傾斜部14bを経て下流側水平部14cへと搬送し、下流側水平部14cから破砕機20の投入口23へと投入する。
【0046】
破砕機20は、投入口23を通してケーシング21の内部に投入されたごみを、回転する二つの回転刃22で引き裂くようにして破砕する。破砕されたごみ(破砕ごみ)は、排出口24を通して落下され、第一搬送コンベヤ31の上流側水平部35a上に載置される。
【0047】
第一搬送コンベヤ31は、上流側水平部35a上に載置された破砕ごみを、駆動モータ37の正転により、上流側水平部35aから中間傾斜部35bを経て下流側水平部35cへと搬送し、下流側水平部35cから第二搬送コンベヤ32の上流側端部上へと落下させる。
【0048】
第二搬送コンベヤ32は、上流側端部上に落下された破砕ごみを、駆動モータ40の正転により、下流側端部に向けて水平搬送し、下流側端部から排出コンベヤ50上へと落下させる。なお、第二搬送コンベヤ32によって搬送される破砕ごみ中の強磁性体は、磁選機41によって回収される。
【0049】
排出コンベヤ50は、第二搬送コンベヤ32の下流側端部から落下される破砕ごみを受け止め、受け止めた破砕ごみを、駆動モータ55の正転により、上流側端部から下流側端部に向けて搬送し、下流側端部から次工程の処理を行う図示されない設備へと搬送する。
【0050】
次に、上記のごみ処理施設1Aにおいて、破砕ごみの発火を検知する方法について説明する。ごみ処理施設1Aの発火検知方法は、主として制御装置70や赤外/可視複合カメラ60等により実施される。制御装置70の処理内容について、主に
図2(b)の機能ブロック図、及び
図3のフローチャートを用いて説明する。なお、
図3のフローチャートにおいて、図中記号「S」はステップを表す。
【0051】
<撮像工程>
まず、赤外/可視複合カメラ60は、第一搬送コンベヤ31から第二搬送コンベヤ32へと落下され、第二搬送コンベヤ32の上流側端部上で広がった状態で載置された破砕ごみを撮像する(S1)。
【0052】
赤外/可視複合カメラ60は、撮像した破砕ごみのアナログ画像データを撮像素子(電荷結合素子)によってデジタル画像データに変換する(S2)。破砕ごみのデジタル画像データは、画像処理手段75へと送られる。画像処理手段75は、破砕ごみのデジタル画像データに対し画像処理を施すことによって、温度画像データを生成する(S3)。
【0053】
<発火現象判定工程>
発火現象判定手段76は、画像処理手段75によって生成された温度画像データ(例えば、60℃を示す温度画像データ)と、基準となる温度画像データ(例えば、20℃を示す温度画像データ)とに基づいて温度上昇率を演算し[{(60-20)/20}×100=200%]、算出された温度上昇率が所定値(例えば200%)以上を示す画像データの画素数が、画像処理手段75によって生成された温度画像データの有効画素数に対して例えば4%以上であるときに、発火現象が生じたと判定する(S4)。
【0054】
ステップS4において、発火現象が生じたと判定された場合(S4においてYES)、コンベヤ制御手段77は、各駆動モータ13,16,37,40,55の正転回転速度を減じる減速信号を各駆動モータ13,16,37,40,55に送信する(S5)。これにより、各コンベヤ11,12,31,32,50の搬送速度が減じられる。こうして、第二搬送コンベヤ32の搬送速度が減じられるので、火種が第二搬送コンベヤ32から排出コンベヤ50を介して次工程に搬送されてしまうのを防ぐことができる。なお、減速・停止信号を各駆動モータ13,16,37,40,55に送信して、各コンベヤ11,12,31,32,50の搬送速度を減じた後、停止させる場合もある。
【0055】
また、選別機制御手段78は、発火現象が生じたと判定された場合(S4においてYES)、火種を選別し取り除く動作を実行させる指令信号を選別機45へと送信する(S6)。これにより、火種が選別されて取り除かれる。第二搬送コンベヤの搬送速度は、ステップS5において予め減じられているので、火種が第二搬送コンベヤ32によって搬送されている途中において火種を選別機45によって容易に取り除くことができる。なお、選別機45は、取り除いた火種を危険物貯留槽46へと投入する。ここで、危険物貯留槽46に冷却水を予め入れておく、又は危険物貯留槽46の内部に必要に応じて散水する図示されない散水装置を危険物貯留槽46に付設しておけば、危険物貯留槽46に貯留される火種を消火することができる。
【0056】
本実施形態においては、第一搬送コンベヤ31から第二搬送コンベヤ32へと落下されてばらけた状態となり、更に第二搬送コンベヤ32上で広がった状態の破砕ごみが赤外/可視複合カメラ60によって撮像される。これにより、発火していない破砕ごみの中に発火した破砕ごみ(火種)が埋もれていたとしても、火種がより明確に現れた状態の破砕ごみの撮像画像に基づいて発火現象が生じたか否かが判定されることになり、破砕物の搬送中により迅速且つ正確に発火を検知することができる。また、本実施形態においては、温度上昇率が例えば200%以上を示す温度画像データ、すなわち温度が急上昇したことを示す温度画像データの画素数が、画像処理手段75によって生成された温度画像データの有効画素に対して例えば4%以上を占めたときに発火現象が生じたと判定されるので、炎を伴わない例えば化学反応等による比較的緩やかな温度上昇をノイズとして排除して、炎を伴う発火現象を確実に検知することができる。
【0057】
〔第二実施形態〕
図4は、本発明の第二実施形態に係る発火検知システムが適用されるごみ処理施設の概略構成図である。また、
図5は、本発明の第二実施形態に係るごみ処理施設の発火検知システムの制御処理の内容を示すフローチャートである。第二実施形態において、第一実施形態と同一又は同様のものについては図に同一符号付すに留めてその詳細な説明を省略することとし、以下においては、第二実施形態に特有の部分を中心に説明することとする。
【0058】
図4に示されるように、第二実施形態に係るごみ処理施設1Bにおいては、駆動モータ40の逆転によって第二搬送コンベヤ32の搬送方向を通常運転時のそれの逆方向に切り換えたときに、第二搬送コンベヤ32の上流側端部から
図4中一点鎖線矢印に示されるように外部へと排出される破砕ごみを受け止めることができるように危険物貯留槽46が設置されている。
【0059】
そして、
図5中のステップS4において、発火現象が生じたと判定された場合(S4においてYES)、コンベヤ制御手段77(
図2(b)参照)は、各駆動モータ13,16,37,40,55の正転回転速度を減じて最終的に停止させる減速・停止信号を各駆動モータ13,16,37,40,55に送信する(S5)。これにより、各コンベヤ11,12,31,32,50の搬送速度が減じられた後に停止される。次いで、コンベヤ制御手段77は、第二搬送コンベヤ32の駆動モータ40を逆転させる逆転信号を駆動モータ40に送信する(S6)。これにより、火種が第二搬送コンベヤ32によって次工程に搬送されてしまうのを防ぐことができるのは勿論のこと、火種を含む破砕ごみを第二搬送コンベヤ32の上流側端部から排出し危険物貯留槽46へと投入して排除することができる。危険物貯留槽46には、冷却水が予め入れられている、又は危険物貯留槽46の内部に必要に応じて散水する図示されない散水装置が危険物貯留槽46に付設されているので、危険物貯留槽46に投入された火種は消火される。
【0060】
第二実施形態によれば、第一実施形態と同様の作用効果を得ることができるのは勿論のこと、第一実施形態では設けられている選別機45を省略することができるので、システム構成の簡素化を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明のごみ処理施設の発火検知システム、及び発火検知方法は、不燃ごみや、粗大ごみを破砕機により所望の大きさに破砕し、有価物や不燃物、可燃物等に選別するごみ処理施設において、例えば、切断されると発火するリチウム系電池等の危険物の発火を検知する用途において利用可能である。
【符号の説明】
【0062】
1A,1B ごみ処理施設
20 破砕機
31 第一搬送コンベヤ
32 第二搬送コンベヤ
60 赤外/可視複合カメラ(撮像手段)
75 画像処理手段
76 発火現象判定手段
77 コンベヤ制御手段