(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023120362
(43)【公開日】2023-08-29
(54)【発明の名称】心臓病を治療するために上大静脈を選択的に閉塞するシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
A61M 25/10 20130101AFI20230822BHJP
A61B 5/0215 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
A61M25/10 540
A61M25/10 550
A61B5/0215
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023101626
(22)【出願日】2023-06-21
(62)【分割の表示】P 2020523005の分割
【原出願日】2018-10-23
(31)【優先権主張番号】62/576,529
(32)【優先日】2017-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/642,569
(32)【優先日】2018-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】504311419
【氏名又は名称】タフツ メディカル センター インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ナビン ケー. カプール
(72)【発明者】
【氏名】リチャード エイチ. カラス
(57)【要約】 (修正有)
【課題】駆出率の低減を伴う患者を含む、心不全に罹患している患者の心機能を改善し、肺高血圧症及び/又は心腎症候群を治療する方法及びシステムを提供する。
【解決手段】複数の心周期に及ぶ時間区間にわたって上大静脈を介した血流を少なくとも部分閉塞することによって、心不全及び/又は肺高血圧症のような状態を治療するシステム及び方法及び器具が提供される。閉塞器具を伴うカテーテルが、患者の上大静脈の少なくとも部分的な閉塞を提供する駆動機構を作動させるコントローラとともに提供され、これにより、心臓への血液充満圧を低減し、健康な心臓機能性及び改善された心臓性能に向かう患者のFrank-Starling曲線の好ましい変化を誘発する。閉塞器具は、圧力の過剰な蓄積を解放するために、閉塞器具を介した流体流動を可能にし得るリリーフ弁によって遮断されるルーメンを含むことができる。
【選択図】
図4A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、そのそれぞれの全内容が、参照することによって本明細書に組み込まれる、2017年10月24日に出願された、米国仮出願第62/576,529号及び2018年3月13日に出願された、米国仮出願第62/642,569号の優先権を主張する。本願はまた、そのそれぞれの全内容が、参照することによって本明細書に組み込まれる、現在は米国特許第9,393,384号である、2015年8月17日に出願された、米国特許出願第14/828,429号の継続である、2016年7月6日に出願された、米国特許出願第15/203,437号の一部継続である、2016年8月15日に出願された、第PCT/US2016/047055号の国内段階出願である、2018年2月17日に出願された、米国特許出願第15/753,300号に関する。
【0002】
本開示は、駆出率の低減を伴う患者を含む、心不全に罹患している患者の心機能を改善し、肺高血圧症及び/又は心腎症候群を治療する方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
心不全は、全世界の死亡原因の主要な部分を占めている。心不全は、長期入院を、特に疾患の後期段階に繰り返すことを余儀なくされることが多い。心臓移植を行なわない場合、このような患者の長期予後は悪く、薬学的アプローチは一時しのぎに過ぎない。したがって、この疾患の進行を遅らせるか、または逆転させる有効な治療法はほとんどない。
【0004】
心不全は、複数の開始イベントのいずれかに起因して起こり得る。心不全は、虚血性心疾患、高血圧症、弁膜症、感染症、遺伝性心筋症、肺高血圧症、または妊娠を含む代謝ストレスの状態の結果として起こり得る。心不全は、明確な原因がなく発症することもあり-特発性心筋症としても知られている。心不全という用語は、左心室不全、右心室不全、または両心室不全を含む。
【0005】
心臓は、高血圧または収縮組織の損傷に起因する作業負荷の増加に最初は首尾よく応答することができることが多いが、経時的なこのストレスは、代償性心筋細胞肥大及び心室壁のリモデリングを誘発する。詳細には、最初の心臓傷害後の次の数ヶ月にわたって、心臓の損傷部分は通常、心臓が血液を、筋肉量の減少または収縮性の低下を伴いながら送り出し続けようと奮闘すると、リモデリングを開始することになる。これにより今度は、心筋の過剰運動を招き、その結果、心筋が損傷領域において徐々に薄くなり、拡大し、更に過負荷になる。同時に、損傷心室の駆出率が低下して心拍出量が低下し、平均心室圧及び平均心室容積が心周期全体にわたってより大きくなり、心不全の兆候が認められる。驚くべきことではないが、一旦、患者の心臓がこの進行性の際限のない下方スパイラルに陥ると、患者の生活の質は深刻な影響を受け、罹患リスクが急上昇する。患者のこれまでの身体的状態、年齢、性別、及び生活様式を含む多くの因子によって異なるが、患者が心停止で死亡するか、または脳卒中、腎不全、肝不全、または肺高血圧症を含む多くの併存疾患のいずれかで死亡するまで、患者は、患者及び社会的医療システムにかなりの費用をかけて、1回または数回の入院を経験する可能性がある。
【0006】
現在、心不全の進行を抑えるために前負荷を軽減することを特に目的として器具を利用する解決策は存在しない。薬学的アプローチは、心不全の症状を軽減するための一時しのぎとして利用可能であるが、心不全の進行を阻止するか、または逆転させる薬学的手順は存在しない。更に、既存の薬学的アプローチは、本質的に全身性であり、リモデリングが心臓構造に及ぼす局所的な影響を解消しない。したがって、この疾患に伴う影響が次々に出る心臓リモデリングの進行を阻止することができ、より好ましくは、逆転させることができる心不全治療システム及び方法を提供することが望まれる。
【0007】
本出願人は、先行技術において、心不全を解消しようとする幾つかの試みがなされていることに注目している。本明細書において記載される本出願人による発明に先立って、この疾患を治療するために利用可能かつ効果的な市販の器具は存在しない。以下に、心不全の様々な症状を治療する公知のシステム及び方法の幾つかの公知の例について説明するが、どれも、重度の副作用を引き起こすことなく、左心室拡張末期容積(「LVEDV」)、左心室拡張末期圧(「LVEDP」)、右心室拡張末期容積(「RVEDV」)、または右心室拡張末期圧(「RVEDP」)を低減させようとしているようには見えないし、または低減させることができるようにも見えない。
【0008】
例えば、Solarによる米国特許第4,546,759号明細書には、留置されるように設計されて、遠位バルーンが、上大静脈を間欠的に閉塞し、近位バルーンが、下大静脈を間欠的に閉塞し、中間バルーンが右心室の収縮期の発生に同期して拡張することにより、右心室からの血液の駆出量を増加させるトリプルバルーンカテーテルが記載されている。この特許には、システムが正常な心調律と同期して膨張収縮し、右心室に加わる負荷を軽減して右心室の損傷または欠陥の治癒を可能にするように設計されていることが記載されている。この特許には、右心室に流出入する血流について提案される調節が、LVEDVまたはLVEDPのいずれかに影響を及ぼすことが記載されていない、または示唆されていないし、当該調節を利用して、急性心不全/慢性心不全の進行を阻止するか、または逆転させることができることが記載されてもいない、または示唆されてもいない。
【0009】
Gelfandによる米国特許出願公開第2006/0064059号明細書には、急性心筋梗塞後の心筋梗塞サイズ及び/又は心筋リモデリングを、心臓壁のストレスを低減させることにより減少させようとするシステム及び方法が記載されている。この特許に記載されているシステムは、下大静脈内に留置されるように構成される閉塞バルーンを有する近位部分と、三尖弁及び肺動脈弁を通って肺動脈内に留置されるように構成される遠位部分と、を有するカテーテルを含む。当該特許出願には、下大静脈を部分閉塞することにより、システムが心室に流入する血液の量を調節し、その結果、心室への負荷を低減し、より早期の治癒を可能にして、心筋梗塞の拡大を抑制することが記載されている。Gelfandによる米国特許出願に記載されているシステムは、カテーテルに取り付けられるセンサ群を含み、これらのセンサが、コントローラにより読み取られて、心臓に流入する血流の調節量、及び他の測定パラメータを所定の限界値内に調整する。この特許出願には、一旦、心臓が、患者の再入院中に通常観察される広範なリモデリングを既に示している場合に、システムを使用して鬱血性心不全を治療する、鬱血性心不全の進行を阻止するか、または逆転させることにより、鬱血性心不全の症状を解消することができることについて記載または示唆されていない。
【0010】
Cedenoによる米国特許出願公開第2010/0331876号明細書には、Gelfandによる米国特許出願に記載されている構造と同様に、鬱血性心不全を、下大静脈内を流れる静脈血の還流を調節することにより治療しようとするシステム及び方法が記載されている。Cedenoによる米国特許出願に記載されているシステムについては、下大静脈内に留置される一定容積のバルーンがIVC(下大静脈)に流入する血流を制限すると記載されている。閉塞の度合いが、血管が吸気中及び呼気中に膨張及び収縮するにつれて変化して、静脈血の還流を正常に行なう。この特許出願には更に、心不全の症状が、特許請求するシステムの使用の3か月以内に改善することが記載されている。Cedenoによる米国特許出願に記載されているシステム及び方法は有望であるように見えるが、このようなシステムの潜在的な欠点を本出願人が自らの研究中に多数見つけ出している。本出願人は、自らの研究中に、下大静脈を完全閉塞することが、左心室容積を低減させるだけでなく、左心室収縮期圧も大幅に低下させてしまって、全身血圧及び心拍出量を低下させるという知見を得ている。更に、下大静脈の完全閉塞は、腎臓、肝臓、及び腸間膜静脈内の静脈鬱血を助長する可能性があり、静脈鬱血は、鬱血性心不全患者の腎不全の主要な原因となっている。
【0011】
下大静脈の部分閉塞または完全閉塞を行なって、心臓への血液充満圧を変化させ、心機能を改善するアプローチには幾つかの大きな制約がある。第1に、IVCには、大腿静脈または内頸静脈を介して到達する必要がある。大腿静脈を介して接近する場合、患者は仰臥位を保つ必要があり、歩行不能になる。頸静脈または鎖骨下静脈を介して接近する場合、装置は上大静脈及び右心房を横切る必要があるので心臓を貫通する必要があり、これにより、潜在的なリスクが発生し易くなり、右心房損傷を伴ない、不整脈を誘発して、心臓ブロックに起因する上室性頻拍または徐脈になる。第2に、Cedenoらにより記述されたIVCアプローチは、幾つかの大きく変動する指標(特に、鬱血性心不全の治療施設における)に依存する:1)心不全患者において拡張することが多いIVC径;b)IVC間欠的閉塞(完全閉塞または部分閉塞)は、腎静脈圧を高めることにより傷害を引き起こし、これにより糸球体濾過率が低下して、腎機能障害を悪化させる;c)HF(心不全)で重大な障害を受けることが多い患者の呼吸能力に対する依存度。HFによるこれまでの呼吸パターンは、断続的な無呼吸期間により定義されるCheynes Stokes呼吸として知られており、IVCが潰れる可能性があり、バルーンが完全閉塞を引き起こして、全身血圧が低下し、腎静脈圧が高くなる;d)心構造または心機能の臨床的改善または有益な変化を確認するために心臓への負荷を持続的に取り除く必要がある場合、IVC閉塞は、持続的なIVC閉塞が血圧及び腎機能を低下させるので有効ではない。第3に、Cedenoにより定義されるアプローチでは、バルーンのカスタマイズを、大きく変化する可能性があるIVCのサイズに応じて行なう必要がある。第4に、多くの心不全患者は、深部静脈血栓症の傾向が大きくなるのでIVCフィルタを所持しており、これが、IVC療法の広範な適用を妨げることになる。
【0012】
肺高血圧症(PH)もまた、全世界の罹患及び死亡原因の主要な部分を占めている。上述したように、心不全は、肺高血圧症の一般的原因であるが、肺高血圧症はまた、原発性肺疾患によって引き起こされる可能性がある。今日では、薬理的治療が、肺動脈収縮期圧(PASP)を低減し、症状を改善し、最終的に、肺高血圧症患者の生存率を改善することができる。しかしながら、コスト及び副作用のような薬理的治療の欠点がある。
【0013】
静脈還流を調節して心不全を解消する公知のシステム及び方法の前述の欠点に鑑みて、疾患に伴う併存疾患を悪化させるリスクを低減させる急性心不全及び慢性心不全を治療するシステム及び方法を提供することが望まれる。
【0014】
更に、急性心不全及び慢性心不全を治療して、心臓リモデリングの進行を阻止するか、または逆転させ、かつ慢性的使用及び/又は歩行時使用に際して実用的であるシステム及び方法を提供することが望まれる。
【0015】
更には、心不全を治療し、かつこの疾患に罹患している患者が生活の質を改善して、入院の必要性、病院の滞在の長さ、及び社会的医療ネットワークに付随する負担を低減することができるシステム及び方法を提供することが望まれる。
【0016】
また、肺高血圧症及び心腎症候群の治療を可能にするシステム及び方法を提供することが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国特許第4,546,759号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2006/0064059号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0018】
心不全を治療する公知のシステム及び方法の欠点に鑑みて、急性心不全及び/又は慢性心不全を治療するシステム及び方法であって、この疾患に伴う影響が次々に生じることになる心臓リモデリングの進行を阻止することができ、より好ましくは逆転させることができるシステム及び方法を提供することが望まれる。
【0019】
更に、心不全に罹患している患者の心臓リモデリングの進行を阻止するか、または逆転させるシステム及び方法であって、歩行時使用及び/又は慢性的使用に際して実用的であるシステム及び方法を提供することが望まれる。
【0020】
更には、心不全を治療するシステム及び方法であって、腎臓及び肝臓の合併症をもたらす静脈鬱血のような疾患に伴う併存疾患を悪化させるリスクを低減するシステム及び方法を提供することが望まれる。
【0021】
また、心不全を治療するシステム及び方法であって、この疾患に罹患している患者が生活の質を向上させることにより、再入院、及びそれに伴う社会的医療ネットワークに掛かる負担の必要性を低減することができるシステム及び方法を提供することが望まれる。
【0022】
更に、肺高血圧症を治療し、この疾患に罹患している患者が生活の質を改善することができるシステム及び方法を提供することが望まれる。また、心臓発作、急性心不全、慢性心不全、駆出率が維持された心不全、右心不全、拘束性及び収縮性心筋症、及び心腎症候群(タイプ1-5)を治療するシステム及び方法を提供することが望まれる。
【0023】
これら及び他の利点は、本開示によって提供され、これにより、幾つかの心周期を含む時間区間にわたって、上大静脈(「SVC」)を介して心臓への静脈血還流を調節し、心室過負荷を低減し、腎静脈圧を増加させることなく心臓前負荷及び肺動脈圧を低減するシステム及び方法を提供する。本開示の原理によれば、SVCを介する静脈調節が使用され、LVEDP、LVEDV、RVEDP、及び/又はRVEDVを低減し、心室心筋リモデリングを阻止するか、または逆転させることができる。直観に反した方法で、本出願人は、予備動物実験において、SVCの間欠的部分閉塞が、脳血流の停滞または観察可能な有害な副作用につながらないという知見を得ている。より重要なこととして、本出願人による予備動物実験は、SVCの閉塞がRVEDP及びLVEDPの両方の大きな低減をもたらす一方、総心拍出量を改善し、左心室収縮期圧(「LVSP」)の大きな低減を伴わないことを明らかにしている。したがって、前述の公開済のCedeno特許出願に説明されるアプローチと異なり、本開示は、LVSPへの影響を無視できるが、改善された1回拍出量(心拍出量)、及び併存疾患の増加をもたらす静脈鬱血のリスクの低減を伴う、LVEDP、LVEDV、RVEDP、及び/又はRVEDVの有益な低減を提供する。本明細書に記載されるシステム及び方法は、心臓への血液充満圧及び心機能の急激な改善を提供し、急性非代償性心不全のリスクにある患者に利益をもたらす。
【0024】
SVC血流(IVC血流ではなく)をターゲットとすることには、幾つかの大きな利点がある。第1に、器具をSVC内に留置することにより、大腿静脈の使用を回避することができ、心臓を貫通することを回避することができる。これにより、急性疾患または慢性疾患を治療する、完全埋め込み型の、しかも携帯型のシステムを開発することができる。第2に、SVC閉塞は、必要とされる除負荷の大きさによって異なるが、間欠的閉塞または持続的閉塞とすることができる。IVC閉塞とは異なり、SVCを持続的に閉塞すると、全身血圧を維持し、心拍出量を改善することができる。これにより、右心室及び左心室の両心室への負荷を取り除いた状態を維持することができ、これにより、血行動態が急激に改善するとともに、長期的な有益な影響を心構造または心機能に与えることができる。第3に、IVC閉塞とは異なり、SVC閉塞は患者の呼吸によって異なることがない。第4に、平均右心房圧または閉塞バルーンにわたる圧力差で駆動されるSVC閉塞の内部レギュレータを展開することにより、SVC器具を各患者の症状に応じてプログラムし、患者個人に合わせることができる。第5に、器具をSVC内に留置することにより、当該器具を、既存のIVCフィルタを装着した患者の体内で使用することができる。
【0025】
本開示の別の態様によれば、複数の心周期にわたるSVCの部分的または全体的な間欠的閉塞は、心筋を治癒させて、心筋の壁応力が減少することにより、心不全の進行の兆候であるリモデリングの進行を阻止するか、または逆転させると予測される。理論に拘束されることを望むものではないが、本出願人は、SVCの間欠的閉塞により心臓が、数時間、数日、数週間、または数ヶ月の期間にわたって当該閉塞が実現される場合に、駆出率が低下した状態の心不全を示すStarling曲線から、心機能が正常であることを一層顕著に示すLVEDP及びLVEDPを有するスターリング曲線に移行することができると考える。したがって、本出願人の予備動物実験は、本発明のシステムを数時間、数日、数週間、または数ヶ月、例えば3~6ヶ月の期間にわたって使用すると、疾患に典型的な下方スパイラルの進行を阻止するだけでなく、心臓の機能が十分回復して、患者が本開示のシステム、薬学的処置、またはこれらの両方のいずれの使用も終わらせることができることを示唆している。
【0026】
本開示の別の態様によれば、SVC内またはSVC上に留置されるように構成される流動制限部材を有するカテーテルと、流動制限部材の作動を制御するコントローラと、を備えるシステムが提供される。コントローラをプログラムして、患者の血行動態の変動を表わす入力を受信し、流動制限部材の作動/作動解除を当該入力に応じて調節することが好ましい。患者の血行動態の変動は、患者の歩行運動により生じ得る。コントローラをカテーテルの埋め込み時にプログラムして、SVCの完全閉塞または部分閉塞を、所定数の心周期または所定の時間区間にわたって、患者の静止時の心拍数に基づいて保持することができ、この事前設定心周期数または時間区間は、コントローラにより患者の心拍数入力に応じて継続的に調整することができる。コントローラは更に、血行動態、例えば血流速度、血液量、心臓への血液充満圧を含む圧力などを表わす検出パラメータを示す信号を、センサ及び/又は電極から受信することができ、コントローラは、事前設定心周期数または時間区間を、検出パラメータ(群)に応じて継続的に調整することができる。
【0027】
1つの好適な実施形態では、カテーテルは、(例えば、患者の左鎖骨下静脈内を介して)血管内に植え込まれて、流動制限部材が、右心房のすぐ近位側のSVC内に留置されるように構成される。カテーテルの近位端に抗菌剤をコーティングするか、または含浸させて、カテーテルを経皮的に通過させる部位における低減された感染のリスクを伴うカテーテルの持続的使用を可能にすることができる。コントローラは、バッテリ給電されることが好ましく、コントローラの作動機構を流動制限部材に操作可能に連結することができる迅速接続継手を含むことが好ましい。好適な実施形態では、コントローラは、十分小さくして、コントローラを患者が肩の周りの装具に装着することができるようにする。患者をベッドまたは緊急治療施設に拘束する公知のシステムとは異なり、本開示のシステムは、患者が歩行して、ほとんどの日常運動を行うことができるので、本発明のシステムを使用して患者の生活の質を向上させ、患者による治療方法の遵守を高めることができる。1つの実施形態では、コントローラは、患者の体内の適切な部位に、例えば鎖骨下の皮下に埋め込まれるように構成される。このような実施形態では、埋め込み可能なコントローラは、外部コントローラ、例えばモバイルデバイスまたはシステム固有のデバイスと双方向に通信を行なうように構成される。外部コントローラは埋め込み可能なコントローラのバッテリを、例えば各コントローラ内のそれぞれの誘導コイルを介して充電するように構成することができ、検出パラメータを表わすデータを受信することができ、検出パラメータとして、心拍数、血流速度、血液量、心臓への血液充満圧を含む圧力を挙げることができる。1つ以上の外部電源は、埋め込み可能なコントローラと電気的に通信することができ、更に、電力をコントローラに供給して、埋め込み可能なコントローラのバッテリを充電するように構成することができる。1つ以上の外部電源は、1つ以上の外部電源の電力量が閾値電力量を下回るとアラートを発することができる。
【0028】
好適な実施形態では、流動制限部材は、カテーテルの遠位領域に取り付けられる、非弾性的または半弾性的バルーンもしくは複数のバルーンを備えて、コントローラが、バルーンを定期的に膨張及び萎ませることによってバルーンを作動させ、SVC及び/又は奇静脈を選択的に完全に、もしくは部分閉塞する。例えば、コントローラをプログラムして、流動制限部材を間欠的に作動させ、複数の心周期にわたり、第1の所定の時間区間にわたってSVCを少なくとも部分閉塞し、第2の所定の時間区間にわたって収縮することができる。第1の所定の時間区間は、第2の所定の時間区間を少なくとも5倍上回ることができる。例えば、第1の所定の時間区間は、4~6分とすることができる一方、第2の所定の時間区間は、1~30秒である。別の実施形態では、流動制限部材は、例えばコントローラに接続される駆動系によって、展開位置と収縮位置との間で迅速に移行することができる膜で被覆された傘、バスケット、または他の機械的配列を備えることができる。なおも更なる実施形態では、流動制限部材は、流動制限部材が収縮または開放位置にあるとき、SVC内に停滞流動区域を生成しないという条件で、バタフライ弁またはボール弁の形態をとることができる。また更なる実施形態では、流動制限部材は、SVCの外部に適用されるように構成されるカフを備え、膨張されるときにSVCを狭化または閉塞することによって動作する。
【0029】
本発明のシステムは、静脈または動脈の血管系内に留置されるカテーテルに配置されて、患者の心拍数または血圧を測定するセンサを含むことができる。センサは好ましくは、コントローラの入力として使用される出力信号を生成して、流動制限部材により生じる閉塞の度合い、またはタイミングを調整する。別の実施形態では、コントローラは、スポーツ愛好家、例えばFitbitなどの通常使用されるセンサのようなサードパーティ心拍数または血圧センサに、Bluetooth(ブルートゥース(登録商標))のような利用可能な無線規格を利用して、患者のスマートフォンを介して接続されるように構成することができる。この実施形態では、コントローラのコスト、サイズ、及び複雑さは、当該コントローラを市販のサードパーティコンポーネントと一体化することにより低減させることができる。
【0030】
本開示の別の態様によれば、患者の血流を制御する方法では、患者の大静脈に、静脈閉塞器具を挿入して誘導し、閉塞器具を、患者が外から装着する、または患者の体内に植え込まれるコントローラに連結し、静脈閉塞器具を、複数の心周期を含む時間区間にわたって間欠的に作動させることにより、数分、数時間、数日、数週間、または数ヶ月の期間にわたって、心筋のリモデリングの進行を阻止するか、または逆転させる。
【0031】
本開示の別の態様によれば、VADの効率及び機能性を改善し、VADの有害な副作用のリスクを低減するために補助人工心臓(VAD)と併用するシステムが提供される。本システムは、近位端と、遠位領域と、を有するカテーテルを含み、カテーテルは、留置(例えば患者の鎖骨下または頸静脈を介したような血管内留置)されるようにサイズ設定され、かつ形状設定されて、遠位領域が、患者の上大静脈(SVC)内に配置される。本システムはまた、流動制限部材、例えばカテーテルの遠位領域上に配置されるSVC閉塞バルーンであって、選択的に作動され、SVCを少なくとも部分閉塞する、流動制限部材と、カテーテルに操作可能に連結され、流動制限部材を間欠的に作動させ、単一または複数の心周期を含む時間区間にわたってSVCを少なくとも部分閉塞することにより、心臓前負荷及び肺動脈圧を低減し、心臓性能を改善する、コントローラと、を含む。例えば、コントローラは、時間区間中に心臓前負荷を十分に低減し、心臓への血液充満圧の低減、左心室弛緩の増加、左心室キャパシタンスの増加、左心室1回拍出量の増加、心筋弛緩の増加、左心室硬直の低減、または心臓緊張の低減のうちの少なくとも1つによって測定されるような心臓性能を改善することができる。
【0032】
本システムは更に、流動制限部材の近位のカテーテル上に配置される、第1の圧力センサであって、第1の圧力信号を出力する、第1の圧力センサと、カテーテル上に、かつ流動制限部材の遠位に配置される、第2の圧力センサであって、第2の圧力信号を出力する、第2の圧力センサと、を含むことができ、コントローラは、第1の圧力信号と第2の圧力信号との間の差異に対応する第1の信号を生成し、第1の信号は、流動制限部材の閉塞の度合いを示す。コントローラは、第1の信号を使用し、流動制限部材を作動させ、SVCを少なくとも部分閉塞するとき、及び流動制限部材の作動を中止するときを決定することができる。コントローラをまたプログラムして、第1の信号に基づいて、オペレータのための安全信号としてアラームをアクティブ化することができる。1つの実施形態では、コントローラは、患者内の適切な部位に、例えば鎖骨下の皮下に埋め込まれるように構成される。
【0033】
また、コントローラをプログラムして、流動制限部材を間欠的に作動させ、複数の心周期にわたり、第1の所定の時間区間にわたってSVCを少なくとも部分閉塞し、第2の所定の時間区間にわたって収縮することができる。第1の所定の時間区間は、第2の所定の時間区間を少なくとも10倍上回ることができる。例えば、第1の所定の時間区間は、4~6分とすることができる一方、第2の所定の時間区間は、1~10秒である。
【0034】
1つの好適な実施形態では、流動制限部材は、膨張可能円筒形バルーンであり、膨張可能円筒形バルーンは、開放位置及び閉鎖位置を有する、膨張可能円筒形バルーンに連結されるリリーフ弁を有する。リリーフ弁は、30~60mmHgの所定の圧力において開放され、流体がSVCを介して患者の右心房まで流れることを可能にすることができる。本システムは更に、流動制限部材の近位のカテーテル上に配置される、奇静脈閉塞バルーンを含むことができる。奇静脈閉塞バルーンは、選択的に作動され、患者の奇静脈を少なくとも部分閉塞することができ、奇静脈閉塞バルーン及びSVC閉塞バルーンは、独立して作動されることができる。また、本システムは、より緩慢な速度におけるVADの動作が、より高い速度におけるVADのみの血行動態応答と同等以上の血行動態応答を達成することを可能にする。
【0035】
また、本システムは、左心室補助人工心臓(LVAD)を含むことができ、LVADは、近位端と、遠位領域と、を有するカテーテルを含み、遠位領域は、流入端と、流出端と、を有し、カテーテルは、患者の大腿動脈を介して留置されるようにサイズ設定され、かつ形状設定されて、流入端が、患者の左心室内に配置され、流出端が、患者の大動脈内に配置される。LVADはまた、カテーテルの遠位領域上に配置される、ポンプ、例えばインペラポンプを含み、ポンプは、選択的に作動され、血液を左心室から流入端を介して送り出し、血液を流出端を介して大動脈の中に排出することができ、LVADコントローラが、LVADに操作可能に連結され、ポンプを作動させ、血液を左心室から大動脈に送り出すことにより、左心室の負荷を取り除き、冠動脈及び全身灌流を増加させる。本システムのカテーテルに操作可能に連結されるLVADコントローラは、LVADコントローラがポンプを作動させ、血液を左心室から大動脈に送り出すと同時に、流動制限部材のアクティブ化及び非アクティブ化を調節し、SVCを少なくとも部分閉塞することができる。
【0036】
別の構成として、または更に、本システムは更に、右心室補助人工心臓(RVAD)を含むことができ、RVADは、選択的に作動され、血液をSVCからRVADの流入端を介して送り出し、血液をRVADの流出端を介して肺動脈の中に排出し得る、ポンプ、例えばインペラポンプを含む。コントローラはまた、RVADに操作可能に連結され、ポンプを作動させ、血液をSVCから肺動脈に送り出すことにより、右心室の負荷を取り除くことができる。例えば、コントローラは、コントローラがポンプを作動させ、血液をSVCから肺動脈に送り出すと同時に、流動制限部材を作動させ、SVCを少なくとも部分閉塞することができる。
【0037】
別の好適な実施形態では、RVADは、近位端と、遠位領域と、を有するカテーテルを有し、遠位領域は、流入端と、流出端と、を有し、カテーテルは、患者の大腿動脈を介して留置されるようにサイズ設定され、かつ形状設定されて、流出端が、患者の肺動脈内に配置され、流入端が、患者のIVC内に配置される。RVADはまた、カテーテルの遠位領域上に配置される、ポンプ、例えばインペラポンプを含み、ポンプは、選択的に作動され、血液をIVCから流入端を介して送り出し、血液を流出端を介して肺動脈の中に排出することができ、RVADコントローラが、RVADに操作可能に連結され、ポンプを作動させ、血液をIVCから肺動脈に送り出すことにより、右心室の負荷を取り除く。本システムのカテーテルに操作可能に連結されるRVADコントローラは、RVADコントローラがポンプを作動させ、血液をIVCから肺動脈に送り出すと同時に、流動制限部材のアクティブ化及び非アクティブ化を調節し、SVCを少なくとも部分閉塞することができる。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
心不全の患者の心臓性能の改善を提供するシステムであって、前記システムは、
近位端と、遠位領域とを有するカテーテルであって、前記カテーテルは、前記遠位領域が前記患者の上大静脈(SVC)内に配置されるような血管内留置のために構成される、カテーテルと、
前記カテーテルの遠位領域上に配置される流動制限部材であって、前記流動制限部材は、選択的に作動され、前記SVCを少なくとも部分的に閉塞するように構成される、流動制限部材と、
コントローラであって、前記コントローラは、前記カテーテルに操作可能に連結され、前記流動制限部材を間欠的に作動させ、複数の心周期に及ぶ区間にわたって前記SVCを少なくとも部分的に閉塞するように構成される、コントローラと
を備え、
前記コントローラは、前記区間中に心臓前負荷を十分に低減し、心臓への血液充満圧の低減、左心室弛緩の増加、左心室キャパシタンスの増加、左心室1回拍出量の増加、心筋弛緩の増加、左心室硬直の低減、または心臓緊張の低減のうちの少なくとも1つによって測定されるような心臓性能を改善するように構成される、システム。
(項目2)
前記流動制限部材の近位の前記カテーテル上に配置される第1の圧力センサであって、前記第1の圧力センサは、第1の圧力信号を出力する、第1の圧力センサと、
前記カテーテル上に、かつ前記流動制限部材の遠位に配置される第2の圧力センサであって、前記第2の圧力センサは、第2の圧力信号を出力する、第2の圧力センサと
を更に備え、
前記コントローラは、前記第1の圧力信号と前記第2の圧力信号との間の差異に対応する第1の信号を生成するように構成され、前記第1の信号は、前記流動制限部材の閉塞の度合いを示す、項目1に記載のシステム。
(項目3)
前記流動制限部材の近位の前記カテーテル上に配置される奇静脈閉塞バルーンを更に備え、前記流動制限部材は、SVC閉塞バルーンである、項目1に記載のシステム。
(項目4)
前記奇静脈閉塞バルーンは、選択的に作動され、前記患者の奇静脈を少なくとも部分的に閉塞するように構成される、項目3に記載のシステム。
(項目5)
前記奇静脈閉塞バルーン及び前記SVC閉塞バルーンは、独立して作動される、項目4に記載のシステム。
(項目6)
前記第2の圧力センサは、前記奇静脈閉塞バルーンと前記SVC閉塞バルーンとの間に配置され、前記システムは更に、前記奇静脈閉塞バルーンの遠位の前記カテーテル上に配置される第3の圧力センサを備え、前記第3の圧力センサは、第3の圧力信号を出力するように構成され、前記コントローラは、前記第2の圧力信号と前記第3の圧力信号との間の差異に対応する第2の信号を生成するように構成され、前記第2の信号は、前記奇静脈の閉塞の度合いを示す、項目2に記載のシステム。
(項目7)
前記コントローラは、埋め込みのために構成される、項目1に記載のシステム。
(項目8)
前記コントローラは、前記流動制限部材を間欠的に作動させ、複数の心周期にわたり、第1の所定の時間区間にわたって前記SVCを少なくとも部分的に閉塞し、第2の所定の時間区間にわたって収縮するように構成される、項目1に記載のシステム。
(項目9)
前記第1の所定の時間区間は、前記第2の所定の時間区間を少なくとも5倍上回る、項目8に記載のシステム。
(項目10)
前記第1の所定の時間区間は、4~6分であり、前記第2の所定の時間区間は、1~30秒である、項目8に記載のシステム。
(項目11)
前記コントローラは、前記第1の信号を使用し、前記流動制限部材を作動させ、前記SVCを少なくとも部分的に閉塞するとき、及び前記流動制限部材の作動を中止するときを決定するように構成される、項目2に記載のシステム。
(項目12)
前記流動制限部材は、膨張可能円筒形バルーンを備え、前記膨張可能円筒形バルーンは、前記膨張可能円筒形バルーンに連結されるリリーフ弁を有し、前記リリーフ弁は、開放位置及び閉鎖位置を有する、項目1に記載のシステム。
(項目13)
前記リリーフ弁は、30~60mmHgの圧力において開放し、流体が前記SVCを介して前記患者の右心房まで流れることを可能にするように構成される、項目12に記載のシステム。
(項目14)
前記リリーフ弁は、ある閾値を超える圧力の印加に応じて、開放位置に急速に変形するように構成されるバイナリ弁である、項目12に記載のシステム。
(項目15)
前記リリーフ弁は、前記リリーフ弁に印加される圧力が増加するにつれて、開放位置に徐々に変形するように構成される漸進的弁である、項目12に記載のシステム。
(項目16)
前記コントローラは更に、前記流動制限部材を間欠的に作動させ、前記患者の右心房内に負圧シンクを生成し、腎静脈からの血流を加速させることにより、腎鬱血除去を強化し、前記患者の腎臓を横断する血流を助長するように構成される、項目1に記載のシステム。
(項目17)
患者の心不全を治療するシステムであって、前記システムは、
近位端と、遠位領域とを有するカテーテルであって、前記カテーテルは、前記遠位領域が前記患者の上大静脈(SVC)内に配置されるような血管内留置のために構成される、カテーテルと、
前記カテーテルの遠位領域上に配置される流動制限部材であって、前記流動制限部材は、選択的に作動され、前記SVCを少なくとも部分的に閉塞するように構成される、流動制限部材と、
コントローラであって、前記コントローラは、前記カテーテルに操作可能に連結され、前記流動制限部材を間欠的に作動させ、複数の心周期に及ぶ区間中に前記SVCを少なくとも部分的に閉塞するように構成される、コントローラと、
前記流動制限部材の近位の前記カテーテル上に配置される第1の圧力センサであって、前記第1の圧力センサは、信号を出力する、第1の圧力センサと
を備え、
前記コントローラは、前記信号を受信し、頸静脈圧(JVP)を示す出力信号を生成するように構成される、システム。
(項目18)
前記信号は、前記流動制限部材の作動に応答して変動する圧力波形に対応し、前記第1の信号は、前記SVCが閉塞されているかどうかを決定するために使用される、項目17に記載のシステム。
(項目19)
前記カテーテル上に配置され、前記流動制限部材の近位に配置される奇静脈閉塞バルーンを更に備え、前記流動制限部材は、SVC閉塞バルーンである、項目17に記載のシステム。
(項目20)
前記奇静脈閉塞バルーンは、選択的に作動され、前記患者の奇静脈を少なくとも部分的に閉塞するように構成され、前記奇静脈閉塞バルーン及び前記SVC閉塞バルーンは、独立して作動される、項目17に記載のシステム。
(項目21)
前記第1の信号は、前記流動制限部材を作動させ、前記SVCを少なくとも部分的に閉塞するとき、及び前記流動制限部材の作動を中止するときを決定するために使用される、項目17に記載のシステム。
(項目22)
前記流動制限部材は、膨張可能円筒形バルーンを備える、項目17に記載のシステム。(項目23)
前記膨張可能円筒形バルーンは、開放位置及び閉鎖位置を有する前記膨張可能円筒形バルーンに連結されるリリーフ弁を有する、項目22に記載のシステム。
(項目24)
前記リリーフ弁は、30~60mmHgの所定の圧力において開放し、流体が前記SVCを介して前記患者の右心房まで流れることを可能にするように構成される、項目23に記載のシステム。
(項目25)
前記リリーフ弁は、ある閾値を超える圧力の印加に応じて、開放位置に急速に変形するように構成されるバイナリ弁である、項目23に記載のシステム。
(項目26)
前記リリーフ弁は、前記リリーフ弁に印加される圧力が増加するにつれて、開放位置に徐々に変形するように構成される漸進的弁である、項目23に記載のシステム。
(項目27)
患者の心臓収縮性を健康な範囲のFrank-Starling曲線に向けて移動させることによって心臓機能を改善するシステムであって、前記システムは、
近位端と、遠位領域とを有するカテーテルであって、前記カテーテルは、前記遠位領域が前記患者の上大静脈(SVC)内に配置されるような血管内留置のために構成される、カテーテルと、
前記カテーテルの遠位領域上に配置される流動制限部材であって、前記流動制限部材は、選択的に作動され、前記SVCを少なくとも部分的に閉塞するように構成される、流動制限部材と、
コントローラであって、前記コントローラは、前記カテーテルに操作可能に連結され、前記流動制限部材を間欠的に作動させ、複数の心周期にわたって前記SVCを少なくとも部分的に閉塞し、前記患者の拡張期容積を低減し、心臓への血液充満圧の低減、左心室弛緩の増加、左心室キャパシタンスの増加、左心室1回拍出量の増加、心筋弛緩の増加、左心室硬直の低減、または心臓緊張の低減のうちの少なくとも1つによって測定されるような心臓性能を改善するように構成される、コントローラと
を備える、システム。
(項目28)
患者の心腎機能の改善を提供するシステムであって、前記システムは、
近位端と、遠位領域とを有するカテーテルであって、前記カテーテルは、前記遠位領域が前記患者の上大静脈(SVC)内に配置されるような血管内留置のために構成される、カテーテルと、
前記カテーテルの遠位領域上に配置される流動制限部材であって、前記流動制限部材は、選択的に作動され、前記SVCを少なくとも部分的に閉塞するように構成される、流動制限部材と、
コントローラであって、前記コントローラは、前記カテーテルに操作可能に連結され、前記流動制限部材を間欠的に作動させ、複数の心周期に及ぶ区間にわたって前記SVCを少なくとも部分的に閉塞するように構成される、コントローラと
を備え、
前記コントローラは、前記流動制限部材を間欠的に作動させ、前記患者の右心房内に負圧シンクを生成し、腎静脈からの流動を加速させることにより、腎鬱血除去を強化し、前記患者の腎臓を横断する血流を助長するように構成される、システム。
(項目29)
高血圧症を治療するシステムであって、前記システムは、
近位端と、遠位領域とを有するカテーテルであって、前記カテーテルは、前記遠位領域が前記患者の上大静脈(SVC)内に配置されるような血管内留置のために構成される、カテーテルと、
前記カテーテルの遠位領域上に配置される流動制限部材であって、前記流動制限部材は、選択的に作動され、前記SVCを少なくとも部分的に閉塞するように構成される、流動制限部材と、
コントローラであって、前記コントローラは、前記カテーテルに操作可能に連結され、前記流動制限部材を間欠的に作動させ、複数の心周期にわたって前記SVCを少なくとも部分的に閉塞することにより、腎静脈圧を増加させることなく心臓前負荷及び肺動脈圧を低減するように構成される、コントローラと
を備え、
前記コントローラは、前記流動制限部材に操作可能に連結され、低減された経皮感染のリスクを伴って前記システムの持続的使用を可能にする、システム。
(項目30)
前記流動制限部材の近位の前記カテーテル上に配置される第1の圧力センサであって、前記第1の圧力センサは、第1の圧力信号を出力する、第1の圧力センサと、
前記カテーテル上に、かつ前記流動制限部材の遠位に配置される第2の圧力センサであって、前記第2の圧力センサは、第2の圧力信号を出力する、第2の圧力センサと
を更に備え、
前記コントローラは、前記第1の圧力信号と前記第2の圧力信号との間の差異に対応する第1の信号を生成するように構成され、前記第1の信号は、前記流動制限部材の閉塞の度合いを示す、項目29に記載のシステム。
(項目31)
前記流動制限部材の近位の前記カテーテル上に配置される奇静脈閉塞バルーンを更に備え、前記流動制限部材は、SVC閉塞バルーンである、項目29に記載のシステム。
(項目32)
前記奇静脈閉塞バルーンは、選択的に作動され、前記患者の奇静脈を少なくとも部分的に閉塞するように構成される、項目31に記載のシステム。
(項目33)
前記奇静脈閉塞バルーン及び前記SVC閉塞バルーンは、独立して作動される、項目32に記載のシステム。
(項目34)
前記第2の圧力センサは、前記奇静脈閉塞バルーンと前記流動制限部材との間に配置され、前記システムは更に、前記奇静脈閉塞バルーンの遠位の前記カテーテル上に配置される第3の圧力センサを備え、前記第3の圧力センサは、第3の圧力信号を出力するように構成され、前記コントローラは、前記第2の圧力信号と前記第3の圧力信号との間の差異に対応する第2の信号を生成するように構成され、前記第2の信号は、前記奇静脈の閉塞の度合いを示す、項目30に記載のシステム。
(項目35)
前記コントローラは、埋め込みのために構成される、項目29に記載のシステム。
(項目36)
前記コントローラは、前記流動制限部材を間欠的に作動させ、複数の心周期にわたり、第1の所定の時間区間にわたって前記SVCを少なくとも部分的に閉塞し、第2の所定の時間区間にわたって収縮するように構成される、項目29に記載のシステム。
(項目37)
前記第1の所定の時間区間は、前記第2の所定の時間区間を少なくとも10倍上回る、項目36に記載のシステム。
(項目38)
前記第1の所定の時間区間は、4~6分であり、前記第2の所定の時間区間は、1~10秒である、項目36に記載のシステム。
(項目39)
前記コントローラは、前記第1の信号を使用し、前記流動制限部材を作動させ、前記SVCを少なくとも部分的に閉塞するとき、及び前記流動制限部材の作動を中止するときを決定するように構成される、項目30に記載のシステム。
(項目40)
前記流動制限部材は、膨張可能円筒形バルーンに連結されるリリーフ弁を有する前記膨張可能円筒形バルーンを備え、前記リリーフ弁は、開放位置及び閉鎖位置を有する、項目29に記載のシステム。
(項目41)
前記リリーフ弁は、30~60mmHgの圧力において開放し、流体が前記SVCを介して前記患者の右心房まで流れることを可能にするように構成される、項目40に記載のシステム。
(項目42)
前記リリーフ弁は、ある閾値を超える圧力の印加に応じて、開放位置に急速に変形するように構成されるバイナリ弁である、項目40に記載のシステム。
(項目43)
前記リリーフ弁は、前記リリーフ弁に印加される圧力が増加するにつれて、開放位置に徐々に変形するように構成される漸進的弁である、項目40に記載のシステム。
(項目44)
高血圧症を治療するシステムであって、前記システムは、
近位端と、遠位領域とを有するカテーテルであって、前記カテーテルは、前記遠位領域が前記患者の上大静脈(SVC)内に配置されるような血管内留置のために構成される、カテーテルと、
前記カテーテルの遠位領域上に配置される流動制限部材であって、前記流動制限部材は、選択的に作動され、前記SVCを少なくとも部分的に閉塞するように構成される、流動制限部材と、
コントローラであって、前記コントローラは、前記カテーテルに操作可能に連結され、前記流動制限部材を間欠的に作動させ、複数の心周期にわたって前記SVCを少なくとも部分的に閉塞することにより、腎静脈圧を増加させることなく前負荷及び肺動脈圧を低減するように構成される、コントローラと、
前記流動制限部材の近位の前記カテーテル上に配置される第1の圧力センサであって、前記第1の圧力センサは、信号を出力する、第1の圧力センサと
を備え、
前記コントローラは、前記信号を受信し、頸静脈圧(JVP)を示す出力信号を生成するように構成される、システム。
(項目45)
前記信号は、前記流動制限部材の作動に応答して変動する圧力波形に対応し、前記第1の信号は、前記SVCが閉塞されているかどうかを決定するために使用される、項目44に記載のシステム。
(項目46)
前記カテーテル上に配置され、前記流動制限部材の近位に配置される奇静脈閉塞バルーンを更に備え、前記流動制限部材は、SVC閉塞バルーンである、項目44に記載のシステム。
(項目47)
前記奇静脈閉塞バルーンは、選択的に作動され、前記患者の奇静脈を少なくとも部分的に閉塞するように構成され、前記奇静脈閉塞バルーン及び前記SVC閉塞バルーンは、独立して作動される、項目44に記載のシステム。
(項目48)
前記第1の信号は、前記流動制限部材を作動させ、前記SVCを少なくとも部分的に閉塞するとき、及び前記流動制限部材の作動を中止するときを決定するために使用される、項目44に記載のシステム。
(項目49)
前記流動制限部材は、膨張可能円筒形バルーンを備える、項目44に記載のシステム。(項目50)
前記膨張可能円筒形バルーンは、開放位置及び閉鎖位置を有する前記膨張可能円筒形バルーンに連結されるリリーフ弁を有する、項目49に記載のシステム。
(項目51)
前記リリーフ弁は、30~60mmHgの所定の圧力において開放し、流体が前記SVCを介して前記患者の右心房まで流れることを可能にするように構成される、項目50に記載のシステム。
(項目52)
前記リリーフ弁は、ある閾値を超える圧力の印加に応じて、開放位置に急速に変形するように構成されるバイナリ弁である、項目50に記載のシステム。
(項目53)
前記リリーフ弁は、前記リリーフ弁に印加される圧力が増加するにつれて、開放位置に徐々に変形するように構成される漸進的弁である、項目50に記載のシステム。
(項目54)
補助人工心臓(VAD)の効率及び機能性を改善するためにVADと併用するシステムであって、前記システムは、
近位端と、遠位領域とを有するカテーテルであって、前記カテーテルは、前記遠位領域が前記患者の上大静脈(SVC)内に配置されるような血管内留置のために構成される、カテーテルと、
前記カテーテルの遠位領域上に配置される流動制限部材であって、前記流動制限部材は、選択的に作動され、前記SVCを少なくとも部分的に閉塞するように構成される、流動制限部材と、
コントローラであって、前記コントローラは、前記カテーテルに操作可能に連結され、前記流動制限部材を間欠的に作動させ、複数の心周期に及ぶ区間にわたって前記SVCを少なくとも部分的に閉塞することにより、心臓前負荷及び肺動脈圧を低減し、心臓性能を改善するように構成される、コントローラと
を備える、システム。
(項目55)
前記流動制限部材は、SVC閉塞バルーンである、項目54に記載のシステム。
(項目56)
前記流動制限部材は、膨張可能円筒形バルーンであり、前記膨張可能円筒形バルーンは、開放位置及び閉鎖位置を有する前記膨張可能円筒形バルーンに連結されるリリーフ弁を備える、項目54に記載のシステム。
(項目57)
前記リリーフ弁は、30~60mmHgの所定の圧力において開放し、流体が前記SVCを介して前記患者の右心房まで流れることを可能にするように構成される、項目56に記載のシステム。
(項目58)
前記コントローラは、前記区間中に心臓前負荷を十分に低減し、心臓への血液充満圧の低減、左心室弛緩の増加、左心室キャパシタンスの増加、左心室1回拍出量の増加、心筋弛緩の増加、左心室硬直の低減、または心臓緊張の低減のうちの少なくとも1つによって測定されるような心臓性能を改善するように構成される、項目54に記載のシステム。
(項目59)
前記流動制限部材の近位の前記カテーテル上に配置される第1の圧力センサであって、前記第1の圧力センサは、第1の圧力信号を出力する、第1の圧力センサと、
前記カテーテル上に、かつ前記流動制限部材の遠位に配置される第2の圧力センサであって、前記第2の圧力センサは、第2の圧力信号を出力する、第2の圧力センサと
を更に備え、
前記コントローラは、前記第1の圧力信号と前記第2の圧力信号との間の差異に対応する第1の信号を生成するように構成され、前記第1の信号は、前記流動制限部材の閉塞の度合いを示す、項目54に記載のシステム。
(項目60)
前記コントローラは、第1の信号を使用し、前記流動制限部材を作動させ、前記SVCを少なくとも部分的に閉塞するとき、及び前記流動制限部材の作動を中止するときを決定するように構成される、項目59に記載のシステム。
(項目61)
前記コントローラは、埋め込みのために構成される、項目54に記載のシステム。
(項目62)
前記コントローラは、前記流動制限部材を間欠的に作動させ、複数の心周期にわたり、第1の所定の時間区間にわたって前記SVCを少なくとも部分的に閉塞し、第2の所定の時間区間にわたって収縮するように構成される、項目54に記載のシステム。
(項目63)
前記第1の所定の時間区間は、前記第2の所定の時間区間を少なくとも10倍上回る、項目62に記載のシステム。
(項目64)
前記第1の所定の時間区間は、4~6分であり、前記第2の所定の時間区間は、1~10秒である、項目62に記載のシステム。
(項目65)
前記流動制限部材の近位の前記カテーテル上に配置される、奇静脈閉塞バルーンを更に備え、前記流動制限部材は、SVC閉塞バルーンである、項目54に記載のシステム。
(項目66)
前記奇静脈閉塞バルーンは、選択的に作動され、前記患者の奇静脈を少なくとも部分的に閉塞するように構成される、項目65に記載のシステム。
(項目67)
前記奇静脈閉塞バルーン及び前記SVC閉塞バルーンは、独立して作動される、項目65に記載のシステム。
(項目68)
前記コントローラは、前記VADによる送り出しを制御するように構成される、項目54に記載のシステム。
(項目69)
前記システムは、より緩慢な速度における前記VADの動作が、より高い速度におけるVADのみの血行動態応答と同等以上の血行動態応答を達成することを可能にする、項目54に記載のシステム。
(項目70)
前記VADは、左心室補助人工心臓(LVAD)であり、前記システムは更に、前記LVADを備える、項目54に記載のシステム。
(項目71)
前記LVADは、血液を前記左心室から前記LVADの流入端を介して送り出し、血液を前記LVADの流出端を介して大動脈の中に排出するように構成されるポンプを備える、項目70に記載のシステム。
(項目72)
前記ポンプは、インペラポンプである、項目71に記載のシステム。
(項目73)
LVADコントローラを更に備え、前記LVADコントローラは、前記LVADに操作可能に連結され、前記ポンプを作動させ、血液を前記左心室から前記大動脈に送り出すことにより、前記左心室の負荷を取り除き、冠動脈及び全身灌流を増加させるように構成される、項目70に記載のシステム。
(項目74)
前記システムのカテーテルに操作可能に連結される前記コントローラは、前記LVADコントローラが前記ポンプを作動させ、血液を前記左心室から前記大動脈に送り出すと同時に、前記流動制限部材を作動させ、前記SVCを少なくとも部分的に閉塞する、項目73に記載のシステム。
(項目75)
前記VADは、右心室補助人工心臓(RVAD)であり、前記システムは更に、前記RVADを備える、項目54に記載のシステム。
(項目76)
前記RVADは、血液を前記SVCから前記RVADの流入端を介して送り出し、血液を前記RVADの流出端を介して肺動脈の中に排出するように構成されるポンプを備える、項目75に記載のシステム。
(項目77)
前記ポンプは、インペラポンプである、項目76に記載のシステム。
(項目78)
前記コントローラは更に、前記RVADに操作可能に連結され、前記ポンプを作動させ、血液を前記SVCから前記肺動脈に送り出すことにより、前記右心室の負荷を取り除くように構成される、項目76に記載のシステム。
(項目79)
前記コントローラは、前記コントローラが前記ポンプを作動させ、血液を前記SVCから前記肺動脈に送り出すと同時に、前記流動制限部材を作動させ、前記SVCを少なくとも部分的に閉塞する、項目78に記載のシステム。
(項目80)
前記RVADは、血液を下大静脈(IVC)から前記RVADの流入端を介して送り出し、血液を前記RVADの流出端を介して肺動脈の中に排出するように構成されるポンプを備える、項目75に記載のシステム。
(項目81)
前記ポンプは、インペラポンプである、項目80に記載のシステム。
(項目82)
RVADコントローラを更に備え、前記RVADコントローラは、前記RVADに操作可能に連結され、前記ポンプを作動させ、血液を前記IVCから前記肺動脈に送り出すことにより、前記右心室の負荷を取り除くように構成される、項目80に記載のシステム。
(項目83)
前記システムのカテーテルに操作可能に連結される前記コントローラは、前記RVADコントローラが前記ポンプを作動させ、血液を前記IVCから前記肺動脈に送り出すと同時に、前記流動制限部材を作動させ、前記SVCを少なくとも部分的に閉塞する、項目82に記載のシステム。
【図面の簡単な説明】
【0038】
本開示の特徴及び利点は、以下に提示される本開示の実施形態についての詳細な説明から添付の図面を参照することにより明らかになるであろう。
【0039】
【
図1A】
図1Aは、心臓の主幹動脈及び主静脈の正面部分破断図である。
【0040】
【
図1B】
図1Bは、大静脈に繋がる主静脈を含む大静脈を示している。
【0041】
【
図2A】
図2Aおよび2Bは、正常な心臓状態、及び疾患心臓の状態に対応するFrank-Starling曲線を示すグラフである。
【
図2B】
図2Aおよび2Bは、正常な心臓状態、及び疾患心臓の状態に対応するFrank-Starling曲線を示すグラフである。
【0042】
【
図3】
図3は、正常な心機能を有する患者、及び鬱血性心不全に罹患している患者の心周期全体の左心室圧と左心室容積の関係を示す例示的な圧力-容積ループ曲線のグラフである。
【0043】
【
図4A】
図4Aは、本開示の原理に従って構成されるシステムの概略図である。
【0044】
【
図4B】
図4Bは、本開示の原理に従って構成される埋め込み型システムの概略図である。
【0045】
【0046】
【
図5A】
図5Aは、
図4A及び
図4Bのカテーテルの概略図であり、流動制限部材は、アンカー部材が変化した状態の円筒形バルーンを含み、流動制限部材の拡開状態及び収縮状態をそれぞれ示している。
【
図5B】
図5Bは、
図4A及び
図4Bのカテーテルの概略図であり、流動制限部材は、アンカー部材が変化した状態の円筒形バルーンを含み、流動制限部材の拡開状態及び収縮状態をそれぞれ示している。
【0047】
【
図6】
図6は、
図4A及び
図4Bのカテーテルの概略図であり、流動制限部材は、機械的に作動し、かつ膜で覆われるバスケットを含む。
【0048】
【0049】
【
図8】
図8Aは、拡開状態及び収縮状態としてそれぞれ図示される球状バルーンを含む流動制限部材の概略図である。
図8Bは、拡開状態及び収縮状態としてそれぞれ図示される球状バルーンを含む流動制限部材の概略図である。
【0050】
【
図9】
図9Aは、拡開状態及び収縮状態としてそれぞれ図示されるばね式プラグを含む流動制限部材の概略図である。
図9Bは、拡開状態及び収縮状態としてそれぞれ図示されるばね式プラグを含む流動制限部材の概略図である。
【0051】
【
図10】
図10Aは、拡開状態及び収縮状態としてそれぞれ図示されるばね式プラグの別の実施形態を含む流動制限部材の概略図である。
図10Bは、拡開状態及び収縮状態としてそれぞれ図示されるばね式プラグの別の実施形態を含む流動制限部材の概略図である。
【0052】
【
図11】
図11は、下大静脈(IVC)の完全閉塞後のブタモデルの幾つかの連続する心拍数にわたる左心室(LV)圧及びLV容積を示すグラフ及び表を示している。
【0053】
【
図12】
図12は、上大静脈(SVC)の部分閉塞後のブタモデルの幾つかの連続する心拍数にわたるLV圧及びLV容積を示すグラフ及び表を示している。
【0054】
【
図13】
図13は、本開示の原理による心不全に罹患しているブタにおいて、上大静脈(SVC)の閉塞時及び解放時の左心室容積とともに圧力が変化する様子を示すグラフである。
【
図14】
図14は、本開示の原理による心不全に罹患しているブタにおいて、上大静脈(SVC)の閉塞時及び解放時の右心室容積とともに圧力が変化する様子を示すグラフである。
【0055】
【
図15】
図15~22は、心不全に罹患している被験ブタについての試験結果を示している。
【
図16】
図15~22は、心不全に罹患している被験ブタについての試験結果を示している。
【
図17】
図15~22は、心不全に罹患している被験ブタについての試験結果を示している。
【
図18】
図15~22は、心不全に罹患している被験ブタについての試験結果を示している。
【
図19】
図15~22は、心不全に罹患している被験ブタについての試験結果を示している。
【
図20】
図15~22は、心不全に罹患している被験ブタについての試験結果を示している。
【
図21】
図15~22は、心不全に罹患している被験ブタについての試験結果を示している。
【
図22】
図15~22は、心不全に罹患している被験ブタについての試験結果を示している。
【0056】
【
図23】
図23Aは、本開示の原理による、継続的SVC閉塞の1分間エピソードの萎み時間中の左心室拡張末期圧の臨床圧力変化を示している。
図23Bは、本開示の原理による、継続的SVC閉塞の1分間エピソードの萎み時間中の左心室収縮末期圧の臨床圧力変化を示している。
図23Cは、本開示の原理による、継続的SVC閉塞の1分間エピソードの萎み時間中の左心室容積の臨床圧力変化を示している。
図23Dは、本開示の原理による、継続的SVC閉塞の1分間エピソードの萎み時間中の心室1回心仕事の臨床圧力変化を示している。
【0057】
【
図24】
図24Aは、本開示の原理による、継続的SVC閉塞の5分間エピソードの萎み時間中の左心室拡張末期圧の臨床圧力変化を示している。
図24Bは、本開示の原理による、継続的SVC閉塞の5分間エピソードの萎み時間中の左心室収縮末期圧の臨床圧力変化を示している。
図24Cは、本開示の原理による、継続的SVC閉塞の5分間エピソードの萎み時間中の左心室容積の臨床圧力変化を示している。
図24Dは、本開示の原理による、継続的SVC閉塞の5分間エピソードの萎み時間中の心室1回心仕事の臨床圧力変化を示している。
【0058】
【
図25】
図25Aは、本開示の原理による、継続的SVC閉塞の10分間エピソードの萎み時間中の左心室拡張末期圧の臨床圧力変化を示している。
図25Bは、本開示の原理による、継続的SVC閉塞の10分間エピソードの萎み時間中の左心室収縮末期圧の臨床圧力変化を示している。
図25Cは、本開示の原理による、継続的SVC閉塞の10分間エピソードの萎み時間中の左心室容積の臨床圧力変化を示している。
図25Dは、本開示の原理による、継続的SVC閉塞の10分間エピソードの萎み時間中の心室1回心仕事の臨床圧力変化を示している。
【0059】
【
図26】
図26A~26Cは、本開示の原理による、継続的SVC閉塞の5分間エピソード中に観察された肺毛細血管楔入圧の臨床圧力変化を示している。
図26Bは、本開示の原理による、継続的SVC閉塞の5分間エピソード中に観察された肺動脈圧の臨床圧力変化を示している。
図26Cは、本開示の原理による、継続的SVC閉塞の5分間エピソード中に観察された右心房圧の臨床圧力変化を示している。
【0060】
【
図27-1】
図27Aは、本開示の原理による、継続的SVC閉塞の5分間中の収縮期圧の臨床圧力変化を示している。
図27Bは、本開示の原理による、継続的SVC閉塞の5分間中の拡張期圧の臨床圧力変化を示している。
図27Cは、本開示の原理による、継続的SVC閉塞の5分間中の平均動脈圧の臨床圧力変化を示している。
【
図27-2】
図27Dは、本開示の原理による、継続的SVC閉塞の5分間中の平均肺動脈圧の臨床圧力変化を示している。
図27Eは、本開示の原理による、継続的SVC閉塞の5分間中の平均肺毛細血管楔入圧の臨床圧力変化を示している。
【0061】
【
図28】
図28Aは、本開示の原理による、継続的SVC閉塞の10分間中の平均肺動脈圧の臨床圧力変化を示している。
図28Bは、本開示の原理による、継続的SVC閉塞の10分間中の平均動脈圧の臨床圧力変化を示している。
【0062】
【
図29】
図29は、本開示の原理によるSVCの閉塞前及び閉塞中の心拍出量を示している。
【0063】
【
図30】
図30は、本開示の原理によるSVCの閉塞の有無別の肺動脈収縮期圧を示している。
【0064】
【
図31】
図31は、本開示の原理によるSVC閉塞が一連の疾患を変化させることが予測される様子の予測的例である。
【0065】
【0066】
【
図33】
図33は、リリーフ弁を示す円筒形流動制限部材の断面図である。
【0067】
【
図34】
図34A~Bは、バイナリ及び漸進的リリーフ弁を有する円筒形流動制限部材の断面図である。
【0068】
【
図35】
図35は、閉鎖位置におけるリリーフ弁を有する円筒形流動制限部材の上面図である。
【0069】
【
図36】
図36A~Bは、開放位置におけるバイナリリリーフ弁及び漸進的リリーフ弁を有する円筒形流動制限部材の上面図である。
【0070】
【
図37】
図37A~Bは、ステントと係合される円筒形流動制限部材の斜視及び切欠図である。
【0071】
【
図38】
図38A~Bは、膨張及び萎み位置におけるバルーンオクルーダを有する円筒形流動制限部材の上面図である。
【0072】
【
図39】
図39A~Bは、膨張及び萎み位置における円筒形バルーンオクルーダを有する円筒形流動制限部材の上面図である。
【0073】
【
図40】
図40A~Bは、リリーフ弁に連結されるステントの斜視及び切欠図である。
【0074】
【
図41】
図41は、フィルタに連結される円筒形流動制限部材の切欠図である。
【0075】
【
図42A】
図42Aは、センサを伴うカテーテルに連結される円筒形流動制限部材の切欠斜視図であり、
図42Bは、例示的な位相曲線である。
【
図42B】
図42Aは、センサを伴うカテーテルに連結される円筒形流動制限部材の切欠斜視図であり、
図42Bは、例示的な位相曲線である。
【0076】
【
図43】
図43は、SVCに進入する導入器シース、SVC内の流動制限部材、及び心臓内に配置されるカテーテルの図である。
【0077】
【
図44】
図44は、SVCに配置される導入器シース、導入器シース内に組み込まれる流動制限部材、及び心臓内に配置されるカテーテルの図である。
【0078】
【
図45】
図45は、SVC内に配置される奇静脈閉塞バルーン及び第2の閉塞バルーンを有する閉塞システムの図である。
【0079】
【
図46】
図46は、SVCの周囲に巻着される閉塞カフの図である。
【0080】
【0081】
【
図48】
図48は、本開示の原理に従って構成される別の例示的システムである。
【0082】
【
図49】
図49は、経弁LVADと組み合わせたSVC閉塞システムを示している。
【0083】
【
図50】
図50は、経弁LVADと組み合わせて使用されるときのSVC閉塞の除負荷容量の強化を示すグラフである。
【0084】
【
図51】
図51は、経弁RVADと組み合わせたSVC閉塞システムを示している。
【0085】
【
図52】
図52は、別の経弁RVADと組み合わせたSVC閉塞システムを示している。
【0086】
【
図53】
図53は、LVADと組み合わせたSVC閉塞システムを示している。
【0087】
【
図54】
図54は、大動脈内バルーンポンプ(IABP)と組み合わせたSVC閉塞システムを示している。
【発明を実施するための形態】
【0088】
図1A及び
図1Bを参照しながら、本開示が留置及び操作を行なうために考案されたヒトの解剖学的構造が、本開示のシステム及び方法に関連して記述される。
【0089】
詳細には、
図1Aを参照するに、脱酸素血液は、心臓10に向けて大静脈11を介して還流し、大静脈11は、心臓の右心房14に連結される上大静脈12及び下大静脈13を含む。血液は、右心房14から三尖弁15を介して右心室16に移動し、血液は肺動脈17を介して肺に送り込まれる。酸素化された血液が肺から肺静脈を介して左心房18に還流する。次に、酸素化された血液は左心室19に流入し、左心室19から血液を、大動脈20を介して体の残りの部位に送り込む。
【0090】
図1Bに示されるように、上大静脈12は、大静脈11の上部に配置される一方、下大静脈13は、大静脈の底部に位置する。
図1Bはまた、奇静脈16及び大静脈に接続する主要静脈のうちの幾つかを示している。本明細書に記述されるように、下大静脈13の閉塞は、静脈鬱血のリスク、詳細には、患者の心血管状態及び全体的健康を改善せず、悪化させ得る、肝静脈及び/又は副腎静脈の潜在的遮断もしくは拡大のリスクをもたらし得る。
【0091】
本開示の1つの態様によれば、本出願人は、上大静脈(「SVC」)の選択的な間欠的閉塞が、下大静脈(「IVC」)の閉塞よりも少ない潜在的な有害リスクをもたらすと決定した。更に、本出願人による動物及びヒト試験は、SVCを部分または完全閉塞することによって右心室への静脈血の還流を制御することが、有益なこととして、左心室収縮期圧(LVSP)を有害に低減することなくRVEDP、RVEDV、LVEDP、及びLVEDVを低下させることを明らかにしている。
【0092】
本出願人は、SVCの選択的な間欠的閉塞が、IVC閉塞と比較して、「心腎」症候群の主な原因である腎臓の鬱血の悪化のリスクを低減するであろうと理解している。心腎症候群は、心不全患者の容積の過負荷及び神経ホルモン活性化により障害を受けた腎機能である。容積過負荷は、衰弱した心臓が同等の血液を送り出すことができない部位で起こり得、腎臓を介したより少ない血流につながる。腎臓を介する血流が少ないと、血液が、腎臓によってあまり濾過されず、水分が、排尿を介してあまり放出されず、過剰な体積を体内に保持させる。過剰な体積を伴うと、心臓は、ますますより非効率的に送り出し、患者は、最終的に、身体が徐々により鬱血した状態になるにつれて死亡へと向かう。
【0093】
本出願人は、IVC閉塞が、概して、閉塞されたIVCが腎静脈内の圧力を高めるため、腎臓を介した血流を低減することにより、流体を濾過して取り除く腎臓の能力を低減させると理解している。IVC閉塞は更に、血液を停滞させ、そうでなければ、脱酸素化された血液が心臓に還流しないように防止する。その結果、腎機能は、過剰に低減され、鬱血を悪化させ得る。しかしながら、SVC閉塞は、最終的に、腎臓への血流を増加させることにより、腎機能を改善する。詳細には、SVC閉塞を介して右心房の中への血流を低減することによって、左心室内の容積は、最終的に低減され、筋線維が正常な範囲内で延伸することを可能にし、収縮性を自然に高め、心臓がより多くの流体を腎臓に送り込むことを可能にする。次に、腎臓は、水分を抽出することができ、水分は、排尿を介して身体から除去されることができる。更に、SVC閉塞中、右心房圧及び容積の急激な低減によって引き起こされる、負圧シンクが右心房内に生成されることを理解されたい。その結果、腎静脈からの血流が、加速されることにより、腎鬱血除去を強化し、腎臓を横断する血流を助長し、尿量を増加させることができる。したがって、SVC閉塞は、心臓及び肺圧力を低減し、鬱血除去を助長することによって、心不全及び/又は心腎症候群患者に利益をもたらすことができる。
【0094】
また、SVCへの埋め込みは、上横隔動脈へのデバイス移植を可能にするが、上横隔動脈デバイスへのデバイス移植は、心臓を貫通して右心房を横切ることなく、IVCに使用することはできない。更に、SVCへのオクルーダの埋め込みは、IVCへの埋め込みに必要とされる鼠径部アクセスの必要性を回避し、IVCへの埋め込みは、移動性を制限して、携帯型器具を短期間または長期間の使用に関して非実用的にしている。また、IVC閉塞(時間または度合い)の微小な変化は、前負荷の軽減のより劇的な変化、したがって総心拍出量/全身血圧のより劇的な変化を引き起こす可能性があるのに対し、本開示のシステム及び方法は、予測の通り、静脈還流の減少(前負荷の軽減)を細かく調整することができる。
【0095】
本出願人は、ある期間(例えば数分、数時間、数日、数週間、または数カ月)にわたるSVCの間欠的閉塞(すなわち心肺除負荷)が、有益なこととして、患者の心臓が心筋のリモデリングを中断またはそれから回復することを可能にするであろうと理解している。本出願人による動物及びヒト試験は、本システムが、心筋が心不全を示す圧力-1回拍出量曲線から、健康な心臓のものにより密接に類似する圧力-1回拍出量曲線に向かって移行することを可能にすることを示している。
【0096】
一般に、本開示のシステム及び方法は、任意の疾患を治療し、心筋リモデリング、特に、患者が心不全に罹患しているそれらの病状を阻止するか、または逆転させることによって心機能を改善するために使用されることができる。このような病状は、限定ではないが、例えば収縮期心不全、拡張期(非収縮期)心不全、(ADHF)における非代償性心不全患者、慢性心不全、急性心不全及び肺高血圧症、心臓発作、駆出率が維持された心不全、右心不全、拘束性及び収縮性心筋症、及び心腎症候群(タイプ1-5)を含む。本開示のシステム及び方法はまた、急性右または左心室心筋梗塞、肺高血圧症、RV不全、開心術後ショック、または同所性心臓移植(OHTx)後拒絶反応の余波を軽減するための予防法として使用されることができるか、または別様に、心腎用途のために、及び/又は腎機能障害、肝機能障害、またはリンパ性鬱血を治療するために使用されることができる。また、本開示のシステム及び方法は、少なくとも急性増悪を含む、本明細書に記載される種々の病気によって引き起こされる入院を低減することができる。
【0097】
左心室圧または左心室容積と1回拍出量との間の関係は、Frank-Starling関係または「Starling曲線」と称されることが多く、
図2A~2Bに示されている。その関係は、心臓1回拍出量が前負荷、収縮性、及び後負荷に依存することを示している。前負荷は、心臓に還流する血液の体積を指し、収縮性は、心筋が収縮する固有の能力として定義され、後負荷は、血管抵抗及びインピーダンスによって決定される。拡張または収縮機能障害による心不全では、1回拍出量の低減は、左心室内の容積の増加及び圧力の増加につながり、肺水腫をもたらし得る。心室容積及び圧力の増加はまた、作業負荷の増加及び心筋酸素消費量の増加をもたらす。心臓のこのような過剰運動は、心臓が供給及び需要のミスマッチによりますます酸素を奪われる状態になるにつれて、心機能の悪化をもたらす。更に、容積及び圧力が心臓内に蓄積されるにつれて、収縮機能が、心筋の延伸によって悪化する。本病状は、「鬱血性心不全」と呼ばれる。
【0098】
図2を参照するに、一連のStarling曲線が示され、最も上の曲線(曲線1)が正常な心臓の機能を示している。曲線から分かるように、1回拍出量はLVEDPまたはLVEDVの増加とともに増加し、平坦になり始める、すなわち曲線の傾きは、非常に高い圧力または非常に大きな容積になって初めて減少する。中央の曲線(曲線2)が示す急性心筋梗塞(「AMI」)を発症したばかりの患者は、1回拍出量がLVEDVまたはLVEDPの各値で小さくなっている。しかしながら、心臓は梗塞の局所的な影響によって引き起こされる過負荷を丁度受け始めたところであるので、心室全体の心筋収縮性は依然として比較的良好であり、1回拍出量は、LVEDPが低い場合において、またはLVEDVが小さい場合において依然として比較的大きい。これとは異なり、過去に心臓の損傷を起こしている患者は、
図2Aの最も下の曲線(曲線3)に示すように、心筋リモデリングが経時的に進行すると、心機能が徐々に低下して作業負荷の増加、及び酸素摂取量の低下を補うようになる。上述したように、これにより、容積及び圧力が心周期の各段階において概してより大きくなることにより心室が拡張するにつれて、1回拍出量が徐々に減少してしまう。曲線1と曲線3を比較して分かるように、1回拍出量は、最終的に心臓が動かなくなるか、または患者が循環器系疾患で死亡するまで、LVEDPまたはLVEDVが上昇するとともに減少し続ける。
【0099】
図2Bは、Frank-Starling曲線、すなわち、曲線6の別の定式化を提供し、健康な心臓及び心不全のものの機能の間の差異を示している。ライン7は、ポイント8まで、正常な健康な心臓についてのFrank-Starling曲線を示している。
図2Aに関して説明するように、正常な心臓について、拡張末期容積が増加するにつれて、1回拍出量は、増加する。しかしながら、健康な心臓について、ポイント8を超えて、拡張末期容積の増加は、もはや1回拍出量の増加をもたらさず、拡張末期容積の継続的増加は、1回拍出量の更なる増加をもたらさない。本現象は、平坦な実線がポイント8を超えて実質的に水平に延びることで示される。
図2Bのポイント8を超えて延びる減少する破線9は、心不全の患者についてのFrank-Starling曲線を表している。破線9は、心不全患者について、拡張末期容積の更なる増加が略平坦な1回拍出量をもたらさず、代わりに、1回拍出量が減少することを示している。したがって、HF患者のEDVの増加は、SVの更なる低減をもたらし、心臓機能の下方スパイラルにつながり、最終的に、死亡につながる。
図2Bは、部分的に心腔の構造配列によって生じる、「拡張期心室相互作用」と称される現象を反映している。説明するように、例えば、J. Atherton et al.による「Diastolic ventricular interaction in chronic heart failure」(Lancet 1997; 349:1720-24)と題された記事では、心膜は、機能不全の心臓の心室が拡張し得る範囲を制約する。したがって、右心室拡張末期容積が増加するにつれて、これは、必然的に、左心室の拡張末期容積の低減を引き起こす。その記事で報告されるように、外部の下半身吸引によって引き起こされる右心室拡張期充満の低減は、左心室拡張期充満の増加を可能にする。
【0100】
本出願人は、前述の現象が、好都合なことに、心臓性能を改善するために本開示の文脈で利用され得ると理解している。詳細には、心不全及び肺高血圧症の存在下では、容積過負荷の増加による右心室鬱血は、心室中隔を左心室空洞に向かって押動することにより、LV1回拍出量及び心拍出量を低減し得る。SVCを経由する血流を閉塞することによって、右心室圧及び容積は、低減される。これにより今度は、LV空洞から離れるように心室中隔を変化させ、左心室1回拍出量の増加及び心拍出量の強化を可能にするであろう。これらの理由から、本開示の原理によるSVC閉塞は好ましくは、拡張期心室相互作用を改変し、心拍出量を強化することができる。詳細には、拡張期心不全に関して、本開示の原理によるSVC閉塞は、心臓への血液充満圧の低減、LV弛緩(タウ)の増加、LVキャパシタンスの増加、心筋弛緩の増加、LV硬直の低減、及び心臓緊張の低減を提供することができる。本開示のSVC閉塞の効果は、したがって、より低いEDVに向かう心不全の患者についての
図2BのFrank-Starling曲線6の破線9の変化として可視化されることができ、これにより、実際には、健康な患者について、心臓性能を上向きに、かつポイント8を超えて延びる曲線の平坦部分に向かってより近接するように移動させる。HFの患者に本発明の少なくとも部分的な間欠的SVC閉塞を誘発するシステム及び方法は、したがって、患者の心臓収縮性を健康な範囲の患者のFrank-Starling曲線に向かって移動させることによって心臓機能を改善する。
【0101】
図3は、
図2Bの曲線1に対応する、正常な心臓に関する圧力-容積ループを「正常(normal)」の記号を付けて例示的に示しており、鬱血性心不全に罹患している心臓に関する圧力-容積ループを「CHF」の記号を付けて例示的に示している(
図2Bの曲線3)。各ループについて、拡張末期の心室容積及び心室内圧力が、ループの最も右下隅(ポイントA)に対応しているのに対し、各ループの最も左上隅は、収縮期の始まりに対応している(ポイントB)。各圧力-容積ループの1回拍出量は、ループ内に囲まれた面積に対応している。したがって、最も有益な静脈調節療法は、ポイントAにおける容積及び圧力を減少させつつ、ポイントBにおける無視できる減少も引き起こさないことにより、1回拍出量を最大化するような静脈調節療法である。
【0102】
本開示の1つの態様によれば、本開示のシステム及び方法は、数時間、数日、数週間、または数ヶ月の治療経過にわたって患者の心臓のStarling曲線を
図2Bの線図上で左側に向かって変化させる、または移行させる(または、
図3の圧力-容積ループを左側に、かつ下方に向かって移動させる)ために考案されている。これは、SVC(上大静脈)を間欠的に完全閉塞または部分閉塞して、右心室に流入する血液の量、したがって圧力を減少させることにより行なわれ、次に血液を左心室から送り出す必要がある。本出願人による予備動物実験は、幾つかの心周期にわたって維持されるこのような間欠的閉塞が、心周期全体の心筋の作業負荷及び壁応力を減少させ、心筋酸素消費量を減少させ、収縮機能を改善することを示している。
【0103】
次に、
図4Aを参照しながら、本開示の好ましいシステム30について説明する。システム30は、流動制限部材32を間欠的に作動させるようにプログラムされるコントローラ33に接続される流動制限部材32を有するカテーテル31を含む。以下に説明するように、システム30は任意であるが、情報を、スマートフォン、ラップトップ、スマートウォッチ、またはタブレット、例えばカリフォルニア州クパティーノにあるApple社から販売されているAppleのiPhone(登録商標)5もしくはiPad(登録商標)のような従来のコンピューティングデバイス45と互いに双方向に転送するように構成することができ、コンピューティングデバイス45に、コントローラ33と通信する、及び/又はコントローラ33を制御するための特殊用途アプリケーションがインストールされている。
【0104】
好ましくは、カテーテル31は、SVC(上大静脈)内に留置されるように構成される遠位部分34を有する可撓性チューブを含む。遠位部分34は、使用時に、患者の上大静脈12(
図1B参照)内に留置されて右心房14に流入する血流を選択的に阻害する流動制限部材32を含む。この実施形態では、流動制限部材32は、例えば血管内留置を可能にする収縮状態と拡開展開状態との間で移行することができるバルーンを備える。流動制限部材32は好ましくは、流動制限部材32が、SVC内の流れを拡開状態で部分閉塞する、または完全閉塞するようにサイズ設定され、かつ形状設定される。カテーテル31は、駆動機構36(例えば、モータ、ポンプ)を収容するコントローラ33に近位端35で連結されて、流動制限部材32、機構36を駆動する信号を制御するようにプログラムされるプロセッサ37、心拍数または血圧のような患者の生理的パラメータを監視する任意のセンサ42を作動させる。
【0105】
コントローラ33は、膨張媒体48(例えば、ガスまたは流体)の供給源を含むことができ、駆動機構36は、プロセッサ37からのコマンドに応答して、膨張媒体を供給源と流動制限部材32との間で移送することができる。流動制限部材32が膨張媒体で膨張すると、流動制限部材32は、SVC内を流れる静脈血流を部分閉塞する、または完全閉塞し;膨張媒体が引き抜かれると、流動制限部材32が収縮して閉塞を解除することにより、血流がSVC内を再び流れることができる。流動制限部材32はバルーンとすることができ、当該バルーンは好ましくは、弾性的材料または半弾性的材料、例えばバルーンの膨張の度合いを調整してSVCの部分閉塞または完全閉塞を所望の度合いで行なうことができるナイロンを含む。また、カテーテル31は、カテーテル31の近位端がコントローラ33に連結されると流動制限部材32のみを膨張させて閉塞を行なうことができるという点で、部分的に外部に位置しているときにフェイルセーフ設計となっている。近位端35におけるこのような迅速締結解除継手40は、カテーテルをコントローラ33から迅速に締結解除することにより洗浄及び/又は緊急処置を可能にする。
【0106】
コントローラ33は、電源39(例えば、バッテリ)を更に含むことが好ましく、電源39は、プロセッサ37、駆動機構36、及びデータ転送回路センサ38を動作させるために必要な電力を供給する。コントローラ33は、コントローラ33を患者の着衣の下の装具に装着できるようなサイズ及び重量に設定されて、システムを患者が歩行しながら使用することができるか、またはコントローラ33を患者の体内に植え込むことができるようになっている。以下に本明細書において説明するように、プロセッサ37は、コントローラ33を動作させるコンピュータソフトウェアを格納するメモリ41を含む。コントローラ33は、患者の体内の適切な部位に、例えば鎖骨下の皮下に埋め込まれるように構成することができる。このような実施形態では、埋め込み可能なコントローラは、外部コントローラ、例えばコンピューティングデバイス45またはシステム特有のデバイスと双方向通信するように構成される。外部コントローラを使用して、埋め込み可能なコントローラのバッテリを、例えば各コントローラ内の、または各コントローラに連結されるそれぞれの誘導コイルを介して充電することができ、患者の歩行運動から得られる検出パラメータを表わすデータを受信することができ、検出パラメータとして、心拍数、血流速度、血液量、心臓への血液充満圧を含む圧力を挙げることができる。
【0107】
1つの実施形態では、データ転送回路38は、例えばカテーテル31に配置される外部センサからの入力を監視し、当該信号をプロセッサ37に供給する。プロセッサ37をプログラムして、入力をデータ転送回路38から受信し、流動制限部材32が拡開状態に維持されている時間区間を調整する、または流動制限部材32によって引き起こされる閉塞の度合いを調整する。したがって、例えばカテーテル31は、カテーテルの遠位領域34内に配置される任意のセンサ42を有することによりパラメータ、例えば心拍数、血流速度、血液量、心臓への血液充満圧及び中心静脈圧を含む圧力を測定することができる。センサ42の出力はコントローラ33のデータ転送回路38に中継され、データ転送回路38が、出力がプロセッサ37に供給される前に、入力信号を前処理する、例えばセンサ42の出力を間引いてデジタル化する。プロセッサ37に供給される信号は、流動制限部材の有効性の評価を、例えば閉塞時及び開存時の静脈圧の低下を表示することにより可能にし、当該信号を使用して、患者または臨床医が、どの度合いの閉塞が静脈血還流を患者の鬱血の重篤度に基づいて調節するために必要であるかを判断することができる。また、センサ43を流動制限部材32の近位側のカテーテル31に取り込んでパラメータ、例えば心拍数、血流速度、血液量、心臓への血液充満圧及び中心静脈圧を含む圧力を測定することができる。センサ43を使用して、部材32によって引き起こされる閉塞の度合いを、例えば流動制限部材の両端の圧力低下を監視することにより決定することができる。
【0108】
別の例として、カテーテル31は、患者の心拍数を検出する電極44を含むことができる。SVCの閉塞が患者の歩行運動に応じて維持されている時間区間を調整することが望ましいと予測され、この調整後の時間区間が通常、検出生理学的パラメータ(群)、例えば心拍数、血流速度、血液量、心臓への血液充満圧及び/又は中心静脈圧を含む圧力により患者の血行動態に反映されることになる。したがって、電極44は、信号をデータ転送回路38に供給し、データ転送回路38が今度は、プロセッサ37が実行するプログラムルーチンにより使用される当該信号を処理する。例えば、閉塞が、初期のシステムセットアップ中にプログラムされた時間にわたって維持されて、患者が静止していることを反映する場合、例えば流動制限部材が5秒間にわたって展開され、次に、再び拡開する前に2秒間にわたって解放される場合、閉塞時間区間を4秒間以上の時間に短くすることが望ましく、この閉塞時間区間は、心拍数、血流速度、血液量、所定の閾値を上回るか、または下回る心臓への血液充満圧及び/又は中心静脈圧を含む圧力の変化により検出される患者の肉体運動の度合いによって異なる。別の構成として、プロセッサ37をプログラムして、SVCの部分閉塞または完全閉塞をカテーテルの初期埋め込み時に決定された事前設定数の心周期にわたって維持するようにしてもよい。また、血行動態のようなデータ転送回路38に供給されるセンサ入力を使用して流動制限部材のデューティサイクルを、患者について検出される運動の度合いに応じて調整することができる。また、所定の閉塞時間区間に対する調整を行なった後に、プロセッサ37をプログラムして、SVCの部分閉塞または完全閉塞を、事前設定数の心周期にわたって維持することができる。
【0109】
データ転送回路38は、データの双方向転送を、例えば無線回路を取り入れてデータをコントローラ33から外部ユニットに転送することにより行なって表示する、見直す、または調整するように構成することもできる。例えば、データ転送回路はブルートゥース(登録商標)回路を含むことができ、ブルートゥース(登録商標)回路によりコントローラ33は、患者のコンピューティングデバイス45と通信することができる。このようにして、コントローラは、システムの機能に関する情報をコンピューティングデバイス45に直接送信することにより、不可欠な生理学的パラメータまたはシステムパラメータを適切に構成されるモバイルアプリケーションを使用して表示することができる。また、患者は、コンピューティングデバイス45の画面に表示されるデータを見直して、彼または彼女が、医療支援を受けて機能不全を解消する、またはシステムパラメータを調整する必要があるかどうかを判断することができる。更に、コンピューティングデバイス45に常駐するモバイルアプリケーションは、アラートを臨床医監視サービスに対して携帯電話ネットワークを介して自動的に開始するように構成することができる。
【0110】
任意であるが、データ転送回路38は、データをコンピューティングデバイス45上の他のモバイルアプリケーションから受信することと、それに従って、本発明のシステムのコスト及び複雑さを低減させることとを同期するように構成することができる。例えば、生理学的パラメータをリアルタイムで測定する市場モニターであるカリフォルニア州サンフランシスコにあるFitbit社、肉体運動及び心拍数を測定するCharge HRリストバンドモニターのような多くのサードパーティベンダーが存在する。本開示の1つの態様によれば、データ転送回路38をプログラムして入力をこのようなサードパーティモニターから、コンピューティングデバイス45に繋がる無線通信を介して受信することができ、当該プロセッサ37をプログラムして、駆動機構36の作動を当該入力に応じて制御することができる。この実施形態では、カテーテルは、任意のセンサ42、センサ43、または電極44を含む必要がないので、カテーテル31及び継手40の構成を大幅に簡単にすることができる。
【0111】
カテーテル31は、流動制限部材32をSVC内に固定するように構成されるアンカー部材46を含むことができる。アンカー部材46は、収縮可能であることにより収縮状態で送り込むことができ、送達器具、例えばシースから解放されると拡開可能である。アンカー部材46は、カテーテルに流動制限部材32の近位側または遠位側で連結することができる、及び/又は流動制限部材32に連結することができる。
図4Aに示されるシステムは、効果的なこととして、患者の心臓伸縮性を
図2Aに示される健康な範囲のFrank-Starling曲線に変化させることができる。
【0112】
次に、
図4Bを参照するに、コントローラ33は、患者の体内の適切な部位に植え込まれるものとして図示されている。
図4Bに示すように、外部電源47は、埋め込み可能なコントローラの電源39(例えば、バッテリ)を充電するように構成することができる。例えば、外部電源47は、電源39をそれぞれの誘導コイルを介して経皮充電することができる。外部電源47は、患者が着用する着衣または装具と一体に設けるようにしてもよい。詳細には、外部電源47は、外部電源47を受け入れるように構成されるポケット内に、または保持具内に収納するようにしてもよい。衣類または装具を患者が着用すると、ポケットまたは保持具は、外部電源47をバッテリ39に極めて近接して収納して効率的に経皮充電することができるように設計される。1つよりも多くの外部電源47を衣類と一体に設けて余分な電力を供給することができる。1つ以上の外部電源は、衣類または装具と恒久的に一体に設けることができる、もしくは衣服または装具と着脱可能に係合させて、各外部電源を個々に取り外して、個々に取り付けることができるようにする。例えば、
図4Bに示すように、2つの外部電源47は、ベスト64の特殊デザインポケットと一体に設けることができる。ベスト64は、ベスト64に装着されるワイヤ66を含むことにより、2つの外部電源の間の電気通信を可能にする。
【0113】
電源47はアラートを、利用可能な電源電圧が特定の電力量閾値に達するか、または特定の電力量閾値を下回るときに発することができる。例えば、電源47は、視覚インジケータ及び/又は聴覚インジケータを有することにより、警告を患者または介護者に向けて発することができる。視覚インジケータは、電源47の表面に埋め込まれるLED点灯システムまたはたディスプレイとすることができ、LED点灯システムまたはたディスプレイは、利用可能な電源電圧に関する情報を視覚的に表示する。聴覚インジケータは、電源47に埋め込まれるスピーカとすることができ、スピーカは、利用可能な電源電圧が所定の閾値に達するとアラートを鳴動させる。電源47の利用可能な電源電圧が所定の閾値に達したことを示す信号を更に、または別の構成として、外部デバイス、例えばコンピューティングデバイス45に、及び/又はコントローラ33に直接送信することができ、次にコントローラ33から外部デバイス、例えばコンピューティングデバイス45に送信することができ、コンピューティングデバイス45をプログラムして、視覚アラートまたは聴覚アラートを開始することができる。更に別の電源47は、電力を電源39に、1次電源が電力を使い切ったときに供給して、確実に電力を電源39に継続的に供給することができるようにする。電源47は、データをプロセッサ37から経皮的に送信して、経皮的に受信するメモリを備えるプロセッサを含むことができる。電源47のプロセッサを使用して、プロセッサ37を再プログラムすることができる、及び/又は動作パラメータに関する情報を格納することにより、外部デバイス、例えばコンピューティングデバイス45が後でダウンロードすることができる。
【0114】
各外部電源47は、
図4Cに示す壁電源コンセントまたは充電台65に電気接続される状態で収納されて、外部電源を充電することができる。充電台65は、壁電源コンセントに電気接続されるようにすることができ、1つ以上の外部電源47を同時に充電するように構成することができる。電源39を所定の電源に継続的に接続することができるためには、外部電源47をベストから定期的に取り外して充電して、少なくとも1つの外部電源47が電源39に、他の外部電源47が充電台65で充電されている間に電気接続されるようにする。また、本システムが市販の心拍数モニター及びスマートフォン及び/又はタブレットとインターフェースをとることを可能にすることによって、本システムは、コストの低減及び複雑さの低減の両方を提供する。
【0115】
次に、
図5A及び
図5Bを参照しながら、カテーテル31’の好ましい実施形態について説明するが、カテーテル31’は、アンカー部材が変更されていることを除き、
図4A及び
図4Bのカテーテル31と同様に構成される。流動制限部材32 ’が拡開完全閉塞状態である
図5Aに示すように、かつ流動制限部材32 ’が収縮状態である
図5Bに示すように、カテーテル31’は、半径方向に拡開するアンカーアーム49を含むことができる。アンカーアーム49は、例えば送達シースから剥き出しになると、半径方向に拡開して、上大静脈12の内壁に接触して流動制限部材32 ’を上大静脈12内に固定するように構成される。
【0116】
次に、
図6を参照しながら、閉塞部がワイヤバスケットを含むことができる別の実施形態が説明される。流動制限部材50は、ニッケル-チタンまたはステンレススチールのような生体適合性材料により形成することができ、軸線方向または螺旋状に延びる複数のワイヤ51を含み、これらのワイヤ51は、圧縮されると、付勢されて半径方向外側に拡開する。流動制限部材50は好ましくは、生体適合性被膜を含むことにより、生体適合性被膜が、SVCに流入する流れを拡開状態で部分閉塞するか、または完全閉塞するようになる。ワイヤ51は、遠位端52で操作用ワイヤ54の遠位端53に連結することができ、リング55に近位端56で取り付けることができる。リング55は、操作用ワイヤ54上を摺動するように配置されて、操作用ワイヤ54がシース57に対して近位方向に引っ張られると(
図5A及び
図5B参照)、ワイヤ51が半径方向外側に拡開する。
図5Bに示すように、所定の力が操作用ワイヤ54の近位端に駆動機構36から加わると、操作用ワイヤ54はカテーテルのシース57に対して近位方向に後退し;流動制限部材50を当該流動制限部材の拡開展開状態に移行させる。これとは異なり、駆動機構36が非作動状態になると、ワイヤ51から加わるバネ力により、操作用ワイヤ54を近位方向に引っ張るので、ワイヤ51を当該ワイヤの非圧縮変形状態に戻すことができ、操作用ワイヤ54に対してほぼ平坦に横たわるようになる。上述したように、流動制限部材50は、「フェイルセーフ」設計を取り入れているので、流動制限部材は、カテーテル31が駆動機構36から連結解除されると、
図5Aに示す倒壊収縮状態に再びなる。この実施形態では、駆動機構36はモータとすることができ、当該モータは、リニアモータ、ロータリーモータ、ソレノイドピストン、またはワイヤモータとすることができる。
【0117】
流動制限部材50は、カテーテル31がコントローラ33から接続解除されると流動制限部材を収縮位置に付勢し、カテーテルがコントローラ33に連結されて、プロセッサが駆動機構36に流動制限部材を拡開する信号を出力したときにのみ、流動制限部材50を拡開展開状態に移行させることができるように構成することができる。
【0118】
次に、
図7を参照するに、カテーテル31は好ましくは、少なくとも3つのルーメン60,61,62を含む。ルーメン60は、膨張ルーメンとして使用することができる、及び/又は流動制限部材32/50とコントローラ33の駆動機構36との間に延びる操作用ワイヤ54を送り込むために使用することができる。ルーメン61により、任意のセンサ42,43または電極が、データ転送回路38及び任意のルーメン62と連通することができることにより、薬物(例えば、薬剤)を心臓に送り込むことができる。
【0119】
動作状態では、流動制限部材32/50を備えるカテーテル31が患者の鎖骨下静脈内に挿入され、患者のSVCに、例えば右心房の入口の近位側の位置に誘導される(
図1A参照)。この技術分野で公知の手術法を用いて、流動制限部材32/50を患者の所望の静脈部位に挿入して固定することができる。器具の適切な位置決めは、例えば血管超音波を用いて確認することができる。別の構成として、流動制限部材32/50を、蛍光透視または超音波誘導のもとで頸静脈にまたはさらには末梢静脈にも挿入して、SVCに誘導することができる。
【0120】
一旦、カテーテル31及び流動制限部材32/50が所望の部位に位置決めされると、コントローラ33は所定のプロセスを開始し、このプロセスでは、閉塞部材が拡開及び収縮して、SVC内に流れ込む血流が、間欠的に閉塞され、再び流れるようになる。流動制限部材が血流を阻害する度合いは、流動制限部材が半径方向に、かつ更に閉塞の時間区間にわたって、例えば心臓が拍動する回数にわたって拡開する度合いを調整することにより調節することができる。例えば、幾つかの実施形態では、流動制限部材は、SVC内に流れ込む血流をいずれの部位でも、最小50%~最大100%の範囲で阻害することができる。血流インピーダンスは、この技術分野において公知の方法を用いて、例えば圧力の低下、圧力の変動の低下、を測定することにより確認するか、または超音波を用いて視覚的に確認することができる。
【0121】
本開示の1つの態様によれば、コントローラ33は、メモリ41に格納されるソフトウェアを含み、ソフトウェアは、流動制限部材32/50の連続的な拡開及び収縮のタイミング及び持続時間を制御する。上述のように、プロセッサ37により実行されるプログラムルーチンは入力として、患者の心周期を使用することができる。例えば、幾つかの実施形態では、ソフトウェアは、流動制限部材32/50を作動させて、SVCの部分閉塞または完全閉塞を複数の心周期、例えば被験者の4回以上の連続する心拍数にわたって維持するように構成することができる。コントローラ33は、入力として、患者の心電図(ECG)を表わす電極44の出力を、データ転送回路38を介して受け入れることができる、または別の構成として、コントローラ33は、このような入力を、患者のスマートフォン上で実行されるサードパーティ心拍数アプリケーションから無線で受信することができるので、プロセッサ37上で実行されるソフトウェアは、システム30から供給される閉塞の時間区間及び/又は度合いを患者の心拍数に応じて調整することができる。したがって、例えば患者が肉体運動している場合、流動制限部材により引き起こされる閉塞の期間または度合いを減少させて、酸素を摂取した血液を患者の上肢に、より迅速に補充することができる。それとは異なり、心拍数が、患者が運動していないことを表わしている場合、SVCの閉塞の度合いを高めて、心臓に加わる静止時の作業負荷を低減させることができる。別の構成として、または更に、システム30は、入力を、任意のセンサ42及び43、または患者の血圧を表わす血圧計カフのようなサードパーティアプリケーション及びデバイスにより測定される値を、データ転送回路38を介して受け入れて、コントローラ33が、SVC内を流れる流れを患者の血圧に応じて調節することができる。
【0122】
コントローラ33をプログラムして、流動制限部材に指示して、検出パラメータが所定範囲から外れると、及び/又は所定閾値を上回るか、または下回ると拡開させることができる。例えば、コントローラ33は、流動制限部材に指示して、右心房(「RA」)圧が任意のセンサ42及び/又は43により所定範囲に、例えば15~30mmHg、18~30mmHg、20~30mmHg、20~25mmHgに収まることが検出されると、または所定閾値、例えば15mmHg、18mmHg、20mmHg、22mmHg、25mmHg、30mmHgを上回ることが検出されると、拡開させることができる。別の例として、コントローラ33は、流動制限部材に指示して、平均肺動脈(「PA」)圧が任意のセンサ42及び/又は43により所定範囲に、例えば15~30mmHg、18~30mmHg、20~30mmHg、20~25mmHgに収まることが検出されると、または所定閾値、例えば15mmHg、18mmHg、20mmHg、22mmHg、25mmHg、30mmHgを上回ることが検出されると、拡開させることができる。所定範囲及び/又は所定閾値は、患者固有とすることができ、コントローラ33は、個々の患者についてプログラムすることができ、再プログラムすることができる。
【0123】
次に、
図8~
図10を参照しながら、SVCを閉塞するために使用されるのに適する静脈内の流動制限部材の別の形態について説明する。この技術分野の当業者には明らかなことであるが、
図4~
図6は、円筒形の流動制限部材を示しているが、他の形状を用いてもよい。また、
図8~
図10のアンカー部材を用いた場合について例示されていないが、アンカー部材を取り入れてもよい。
図8A、
図8B、
図9A、
図9B、及び
図10A、
図10Bの各対の図面には、対で提示される図面は、各流動制限部材が、流動制限部材が血流を大きく阻害することがない倒壊収縮状態(
図8A、
図9A、及び
図10A)と、流動制限部材が、SVC内を流れる血流を部分閉塞する、または完全閉塞する拡開展開状態(
図8B、
図9B、及び
図10B)と、を有することを示している。
【0124】
具体的には、
図8A及び
図8Bを参照すると、カテーテル70は、遠位端72に取り付けられるバルーン71を含む。バルーン71は、円形ボール形状を有するものとして示されている。
【0125】
次に、
図9A及び
図9Bを参照するに、カテーテル80は、生体適合性材料(例えば、ベリリウム)により形成され、かつ先細り円錐形状を有するばね式プラグ82を含む流動制限部材81を含む。ばね式プラグ82は、当該ばね式プラグの倒壊収縮状態で、カテーテル80の遠位端84に配置されるシース83内に捕捉される。更に詳細には、円錐形プラグ82の頂点は、シース83の近位端85に隣接して位置決めされる。カテーテル80を送り込んでいる間、ばね式プラグ82は、シース83内に当該ばね式プラグの低姿勢状態で捕捉されて、血流がSVC内に流入することができる。ばね式プラグ82を拡開するために、力を、操作用ワイヤ86を介して加えて、プラグ82をシース83から引き出す。前の実施形態の場合、近位方向の力を操作用ワイヤ86の近位端から取り除くと、プラグ81がシース83内に戻る方向に付勢されて、流動制限部材82が当該流動制限部材の倒壊収縮状態に、コントローラ33から接続解除される場合に保持される。
【0126】
図10A及び
図10Bを参照すると、カテーテル90は、ばね式プラグ92の形態を採る閉塞器具91の更に別の実施形態を示している。ばね式プラグ92は、
図9A及び
図9Bのプラグ82と同様であり、先細り円錐形状を有し、カテーテル90の遠位端94に配置されるシース93内に装着される。遠位方向の力が、駆動機構36からカテーテル90の近位端に加わると、ばね式プラグ92がシース94の遠位端から押し出され、拡開してSVCを閉塞する。遠位方向の力が取り除かれると、ばね式プラグ92は後退して当該ばね式プラグの倒壊収縮状態になってシース94内に収納されるようになるので、血液がSVC内を殆ど阻害されることなく流れることができる。
【0127】
本出願人は、動物実験が、本SVC閉塞システムの方法に従って構成及び動作されるシステムが、心不全を治療する既知のIVCシステムに優る大きな利益を提供するという知見を得ている。心筋梗塞の1週間後のブタモデルに対して実行された予備動物実験が、以下に記載されている。
【0128】
図11を参照するに、前述の公開済のCedeno特許出願に示唆されるように、下大静脈(IVC)の完全閉塞後のブタモデルの幾つかの連続する心拍数にわたるLV圧及びLV容積の変化が示されている。詳細には、IVCは、約30秒にわたって完全閉塞され、その間、左心室拡張末期圧(ヒステリシスループの右下隅に対応する)及び左心室収縮期圧(ヒステリシスループの左上隅に対応する)が、各連続する心拍数中に減少した。LV圧は、一旦、IVC閉塞が解除されると、閉塞前のレベルまで急速に増加した(すなわち圧力及び容積トレースの最初の半分と類似する)。Cedenoによって提案されるIVC閉塞療法は、収縮期圧を低減するため、療法は、収縮期中の駆出率の低減につながり、患者にとって潜在的に危険な結果を伴い得る。また、IVCの閉塞は、腎静脈及び肝静脈の鬱血をもたらし得、これにより、鬱血性心不全に伴うことが多い合併症をもたらし、改善させるのではなく、悪化させ得る。
【0129】
図12を参照するに、本開示の原理に従って記載されるように、上大静脈(SVC)の部分閉塞後のブタモデルの幾つかの連続する心拍数にわたるLV圧及びLV容積の変化が示されている。詳細には、SVCは、約30秒にわたって部分閉塞され、その間、左心室拡張末期圧(ヒステリシスループの右下隅に対応する)は、減少した一方、左心室収縮期圧(ヒステリシスループの左上隅に対応する)は、各連続する心拍数中に実質的に変化しないままであった。LV圧は、一旦、SVC閉塞が解除されると、閉塞前のレベルまで急速に増加した(すなわち圧力及び容積トレースの最初の半分と類似する)。好都合なことに、SVCを部分閉塞する本開示の方法は、収縮期中の駆出率に殆どまたは全く影響を及ぼさないように見えるが、拡張期中に心室内の壁応力を低減する。更に、以下により詳細に説明するように、SVCの閉塞は、患者によって十分に許容され、腎静脈または肝静脈の鬱血に寄与せず、肝不全及び腎不全を含む鬱血性心不全に伴うことが多い合併症を悪化させないであろう。
【0130】
図13~
図14は、本開示の原理に従って、圧力が、心不全を治療中のブタの上大静脈(SVC)の閉塞時及び上大静脈の解放時の左心室容積及び右心室容積のそれぞれの心室容積とともに変化する様子を示すグラフである。これらのグラフに示されるように、SVC閉塞により、左心室(LV)容積が大幅に減少し(240mLから220mLに)、LV拡張期圧が低下した(25mmHgから10mmHgに)。SVC閉塞は更に、LV収縮期圧の低下を伴なった(94mmHgから90mmHgに)。SVC閉塞は更に、右心室(RV)容量の減少(230mLから210mLに)、拡張期圧の低下(12mmHgから4mmHgに)、及びRV収縮期圧の低下(27mmHgから16mmHgに)を伴なった。好都合なことに、本明細書に記載されるシステム及び方法によるSVC閉塞により、全身血圧(LV収縮期圧)に悪影響を与えることなく、両心室の容積が減少して、拡張期(血液充満)圧が低下する。これらの知見は、SVC閉塞は、両心室の相互作用に大きな有益な影響を及ぼす可能性があるので、両方の心室への拡張期の血液充満圧を低下させることにより、心室コンプライアンスを改善することができ、したがって、心室への血液充満圧を改善することができ、その結果、1回拍出量及び心拍出量が増加し、これが、心不全の患者を治療する際の主たる目的である。
【0131】
図15は、被験ブタに対する本開示の原理による上大静脈(SVC)閉塞により心機能が改善することを示すグラフを含んでいる。これらのグラフはそれぞれ、下大静脈(IVC)部分閉塞(各グラフの左側)とSVC完全閉塞(各グラフの右側)を比較した結果を示している。これらのグラフは、測定後の左心室(LV)1回拍出量、心拍出量、LV収縮性、LV拡張期圧、LV収縮期圧、及び収縮末期容積を示している。
【0132】
図16は、3匹の被験ブタに対する本開示の原理によるSVC閉塞が、収縮期血圧に悪影響を及ぼすことがないことを示すグラフである。これらのグラフは、IVC完全閉塞(各検討結果の左側)の場合の大静脈完全閉塞(1分間)LV収縮末期圧(mmHg)とSVC完全閉塞(各検討結果の右柱状グラフ)の場合の大静脈完全閉塞(1分間)LV収縮末期圧(mmHg)を比較した結果を示している。IVC閉塞と比較して、SVC閉塞の場合のLV収縮末期圧の低下が小さい。
【0133】
図17は、3匹の被験ブタに対する本開示の原理によるSVC閉塞が、LV拡張期充満圧に悪影響を及ぼすことがないことを示すグラフである。グラフは、IVC完全閉塞(各検討結果の左側)の場合の大静脈完全閉塞(1分間)LV拡張末期圧(mmHg)とSVC完全閉塞(各検討結果の右側)の場合の大静脈完全閉塞(1分間)LV拡張末期圧(mmHg)を比較した結果を示している。IVC閉塞と比較して、SVC閉塞の場合のLV拡張末期圧の低下が小さい。
【0134】
図18は、3匹の被験ブタに対する本開示の原理によるSVC閉塞により、LV1回拍出量が改善することを示すグラフである。グラフは、IVC完全閉塞(各検討結果の左側)の場合の大静脈完全閉塞(1分間)LV1回拍出量(mL/拍数)とSVC完全閉塞(各検討結果の右側)の場合の大静脈完全閉塞(1分間)LV1回拍出量(mL/拍数)を比較した結果を示している。IVC閉塞時のLV1回拍出量が減少しているのと比較して、SVC閉塞の場合のLV1回拍出量が増加している。
【0135】
図19は、3匹の被験ブタに対する本開示の原理によるSVC閉塞により、LV収縮性が改善する様子を示すグラフである。グラフは、IVC完全閉塞(各検討結果の左側)の場合の大静脈完全閉塞(1分間)LV収縮性(mmHg/sec)とSVC完全閉塞(各検討結果の右側)の場合の大静脈完全閉塞(1分間)LV収縮性(mmHg/sec)を比較した結果を示している。IVC閉塞時のLV収縮性が低下しているのと比較して、SVC閉塞の場合のLV収縮性が高くなっている。
【0136】
図20は、IVC閉塞(左上)の場合のLV総容積及びLV圧、IVC閉塞(右上)の場合のRV総容積及びRV(右心室)圧、SVC閉塞(左下)の場合のLV総容積及びLV圧、及びSVC閉塞(右下)の場合のRV総容積及びRV圧を示す4つのグラフである。
図20は、IVC閉塞と比較して、SVC閉塞により、LV拡張期圧及びRV拡張期圧を、LV収縮期圧を大きく低下させることなく大幅に低下させることができることを示している。
【0137】
図21は、IVC閉塞(左側のグラフ)の場合の被験ブタについて測定された肺動脈圧及び腎静脈圧、及びSVC閉塞(右側のグラフ)の場合の被験ブタについて測定された肺動脈圧及び腎静脈圧を示す2つのグラフである。ライン100が、IVC閉塞の場合の測定後の肺動脈圧を示しているのに対し、ライン102は、IVC閉塞の場合の測定後の腎静脈圧を示している。ライン104が、SVC閉塞の場合の測定後の肺動脈圧を示しているのに対し、ライン106は、SVC閉塞の場合の測定後の腎静脈圧を示している。最大腎静脈圧が、IVC閉塞の場合に22mmHgとして測定されるのに対し、最大腎静脈圧は、SVC閉塞の場合に7mmHgとして測定される。
図21は、IVC閉塞と比較して、SVC閉塞により、腎静脈圧を高くすることなく肺動脈圧を低下させることができることを示している。
【0138】
図22は、本開示の原理によるSVC閉塞を受けさせるブタについて測定される左鎖骨下静脈圧及び腎静脈圧を示すグラフである。ライン108が、SVC閉塞の場合の測定後の左鎖骨下静脈圧を示しているのに対し、ライン110は、SVC閉塞の場合の測定後の腎静脈圧を示している。左鎖骨下静脈圧について測定される変化は、SVC閉塞時に5mmHg~12mmHgである。
図22は、近位左鎖骨下静脈圧が、SVC閉塞時にノミナルに高くなることを示している。
【0139】
種々の閉塞期間にわたってブタモデルに対して実行された更に別の動物実験の結果が、
図23A~26Cに示されている。次に、
図23A~23Dを参照しながら、ブタモデルでの継続的SVC閉塞の1分間エピソードの萎み時間中のそれぞれ左心室拡張末期圧、左心室収縮末期圧、左心室容積、及び心室1回心仕事の臨床圧力変化が示されている。詳細には、コントローラは、流動制限部材に1分間にわたってSVCを少なくとも部分閉塞させ、次いで、1秒間にわたって収縮させる、例えば萎ませるようにプログラムされた。
図23A~23Dに示されるように、1分間SVC閉塞は、萎み時間後に心室容積の定常状態低減をもたらすために十分ではない場合がある。
【0140】
次に、
図24A~24Dを参照しながら、ブタモデルでの継続的SVC閉塞の5分間エピソードの萎み時間中のそれぞれ左心室拡張末期圧、左心室収縮末期圧、左心室容積、及び心室1回心仕事の臨床圧力変化が示されている。詳細には、コントローラは、流動制限部材に5分間にわたってSVCを少なくとも部分閉塞させ、次いで、1秒間にわたって収縮させる、例えば萎ませるようにプログラムされた。
図24A~24Dに示されるように、心室容積は、5分間SVC閉塞の結果として、萎み時間後に明確な定常状態低減に到達した。
【0141】
次に、
図25A~25Dを参照しながら、ブタモデルでの継続的SVC閉塞の10分間エピソードの萎み時間中のそれぞれ左心室拡張末期圧、左心室収縮末期圧、左心室容積、及び心室1回心仕事の臨床圧力変化が示されている。詳細には、コントローラは、流動制限部材に10分間にわたってSVCを少なくとも部分閉塞させ、次いで、1秒間にわたって収縮させる、例えば萎ませるようにプログラムされた。
図25A~25Dの
図24A~24Dとの比較によって、5分間SVC閉塞に優る10分間SVC閉塞の利点は、本モデルでは大きくない。したがって、患者安全性を考慮して、5分間SVC閉塞が、
図26A~26Cを参照して以下に記載されるTufts IRB承認プロトコルのような初期臨床研究中に使用されたが、被験ヒトにおける10分間閉塞が、
図28A~Bに関して以下により詳細に記載されている。
【0142】
動物実験に促されて、本出願人は、予備ヒト試験を実行し、本SVC閉塞システムの方法に従って構成及び動作されるシステムが大きな利益を提供することを観察した。
図26A~26Cは、Tufts IRB承認プロトコルに登録された3人のヒト患者の継続的SVC閉塞の5分間エピソード中に観察された臨床圧力変化を示している。詳細には、3人の患者は、急性神経及び心臓監視及び30日神経評価を伴う5分間の継続的SVC閉塞を受けた(表1)。
【表1】
【0143】
図26A~26Cから、及び表1において観察され得るように、肺毛細血管楔入圧(PCWP)、肺動脈圧、及び右心房圧は、SVC閉塞の5分間エピソード中に大きく変化し、バルーンの解放後に残留効果を及ぼした。研究の結果として、全ての患者は、全ての血液充満圧、例えば毛細血管楔入圧(CWP)及び平均肺動脈(PA)圧の低下があったため、血行動態的に利益を享受した。より鬱血した患者は、平均動脈圧(MAP)の増加を経験したことが観察された。これらの血行動態変化の正味の効果は、心肺圧の低減及び腎臓を含む重要な器官を灌流する全身圧の増加である。
【0144】
前述の予備ブタ及びヒト結果に促されて、本出願人は、2人の新しい患者に加えて、
図26A~26Cに関して上述される試験の対象であった3人の患者に対して更に別の試験を実施した。それぞれ心不全を伴う5人のヒト患者は、上述されるSVC閉塞システムを受けさせられた。詳細には、5人の患者は、5分間の継続的SVC閉塞を受けた。5人の患者のベースラインパラメータが、以下の表2に示されている。第3の患者の2のニューヨーク心臓病学会(NYHA)機能分類が最低であった。第3の患者の結果は、SVC閉塞システムの適用が好ましくは、レベル3及びそれを上回る心不全のNYHA機能分類を伴う患者に使用され得ることを示唆している。
【表2】
【0145】
図27A~27Eは、閉塞中及びその後の5人の患者のそれぞれのベースライン測定値からの収縮期圧(SP)、拡張期圧(DP)、平均動脈圧(MAP)、平均肺動脈(MPA)圧、及び肺毛細血管楔入圧(PCWP)の変化を示している。
図27A~27Dでは、収縮期圧(SP)、拡張期圧(DP)、平均動脈圧(MAP)、及び平均肺動脈(MPA)圧の変化は、5分間の閉塞中に1分毎に示されている。
図27Eでは、肺毛細血管楔入圧(PCWP)の変化は、5分間の閉塞時及び閉塞後に示されている。
【0146】
収縮期圧の変化は、
図27Aに示されている。
図27Aに示されるように、第1、第2、及び第5の患者は、概して、閉塞中にSPの増加を経験した一方、第3及び第4の患者は、概して、収縮期圧の減少を経験した。拡張期圧の変化は、
図27Bに示されている。
図27Bに示されるように、SVC閉塞中の拡張期圧は、概して、患者1、2、及び5に関して増加し、概して、患者3及び4に関して減少した。
【0147】
平均心房圧の変化は、
図27Cに示されている。
図27Cに示されるように、平均動脈圧は、概して、患者1、2、及び5に関してSVC閉塞中に増加し、概して、患者3及び4に関して減少した。平均肺動脈圧の変化は、
図27Dに示されている。
図27Dに示されるように、平均肺動脈圧は、患者毎にSVC閉塞中に減少したが、4分目における第4の患者のデータポイントがないことに留意されたい。肺毛細血管楔入圧(PCWP)の変化は、
図27Eにおいて、5分において、及び解放後に示されている。
図27Eに示されるように、肺毛細血管楔入圧は、5分のSVC閉塞において全ての患者に関して減少し、閉塞中の患者毎の血液充満圧の低下を示している。
【0148】
図26A~26Cに関して説明する研究において観察されたように、
図27A~27Eに示された研究は、血液充満圧、例えば毛細血管楔入圧(CWP)及び平均肺動脈(PA)圧の低下が存在し、更に、
図26A~26Cに関して上述される研究のように、より鬱血した患者は、概して、平均動脈圧(MAP)の増加を経験したため、全ての5人の患者が血行動態的に利益を享受したことを示した。また、多くの場合、患者のうちの少なくとも一部は、オクルーダの解放後に残留効果を有していた。
【0149】
次に、
図28A~28Bを参照しながら、
図25A~25Dに関して上述される研究と同様に、本出願人はまた、被験ヒトに対する延長されたSVC閉塞の効果を研究した。詳細には、コントローラは、SVC流動制限部材に10分間にわたってSVCを少なくとも部分閉塞させるようにプログラムされた。10分間の閉塞に先立って、SVCは、5分の期間にわたって閉塞され、次いで、5分の期間にわたって静止することを可能にされた。閉塞前(すなわち5分間の静止後)のベースライン測定値からの平均肺動脈圧の変化及び平均心房動脈圧の変化が、閉塞から1~10分の各分において、及び解放後に測定された。
図28A~Bに示されるように、5分間の閉塞中に観察された効果は、「心肺除負荷」の効果のいかなる減少も伴わずに10分間の閉塞期間全体を通して持続した。
【0150】
図28Aは、平均肺動脈圧の変化を示している。
図28Aに示されるように、平均肺動脈圧は、閉塞全体を通して減少し、閉塞の最後の2分の間にその最低レベルにまで到達した。
図28Bは、閉塞中の平均動脈圧変化の変化を示している。
図28Bに示されるように、平均動脈圧は、概して、閉塞中に減少したが、これは、変動し、1分目においてベースライン測定値を上回って上昇し、次いで、4分目及び5分目において再び上回って上昇した。
【0151】
次に、
図29を参照しながら、本出願人はまた、更なる心筋リモデリング及び変性の阻止または逆転をもたらす連続する閉塞期間にわたって本開示のシステム及び方法の使用を伴うより広範な試験を実施した。詳細には、成体の雄ブタが、120分にわたって左前下行枝(LAD)を閉塞することによって心臓発作を受けさせられ、閉塞された動脈の再開放が続いた。次いで、SVC閉塞の繰り返しサイクルが、実施され、5分間にわたってSVCを閉塞し、30分にわたって閉塞器具を萎ませた。繰り返しサイクルは、18時間にわたって繰り返され、実施された。SVC閉塞の各サイクル後、心拍出量が測定された。
図29は、SVC閉塞の繰り返しサイクルの結果を示している。
【0152】
図29に示されるように、心拍出量は、LAD梗塞後であるが、SVC閉塞治療前にその最低点にあった。1時間の治療後、心拍出量は、ベースラインレベルまで戻った。心拍出量は、1時間の治療から18時間の治療まで徐々に増加し続け、18時間において最大心拍出量に到達した。これらの知見は、急性心臓損傷後、SVCを間欠的に閉塞し、その後、閉塞を中止すること(すなわち回復)によって機械的に低減されている心臓圧力及び容積(すなわち除負荷)が心筋を調節し、運動及び静止の期間を可能にし得ることを初めて示唆している。このように、繰り返しサイクルは、静止が続くインターバルトレーニング高強度ワークアウト(例えばスプリント)に似ている。繰り返しサイクルは、心臓を強化し、心拍出量及び機能を改善する。閉塞対静止の比率が10:1(5分オン、30秒オフ)であるが、他の比率も、有益な結果をもたらすであろうことを理解されたい。例えば、5~20分の閉塞対10~100秒の静止の比率範囲が、有益であり得る。更に、最大で1時間の95%までSVCを閉塞することが有益であり得ることを理解されたい。したがって、本明細書に記載されるSVC閉塞システムは、別の構成として、または更に、梗塞からの心臓への損傷を梗塞後に治療し、心筋除負荷を介して回復を強化するために使用されることができる。
【0153】
上述のように、本明細書に記載されるSVC閉塞システムは、別の構成として、または更に、SVCの閉塞が肺動脈の圧力の低減をもたらし得るため、肺高血圧症を治療するために使用されることができる。心不全は、肺高血圧症の一般的原因であるが、肺高血圧症は、原発性肺疾患によって引き起こされる可能性がある。SVC閉塞システムは、肺高血圧症の原因が心不全であるかどうかにかかわらず、肺高血圧症を治療するために使用され得ることを理解されたい。
【0154】
次に、
図30を参照しながら、本出願人は、心不全による肺高血圧症を伴う5人の患者におけるSVC閉塞システムの埋め込みが、肺動脈収縮期圧(PASP)の大きな低減をもたらすことを観察した。患者は、5分間のSVC閉塞を受けさせられ、心臓圧力及び容積を機械的に低減(すなわち負荷を除去)された。
図30に示されるように、SVC閉塞は、50mmHgを上回る高いPASPとして定義される、中程度の肺高血圧症のレベルを下回ってPASPを大きく低減した。したがって、本明細書に記載されるSVC閉塞システムは、肺高血圧症を治療するために埋め込まれることができる。
図26Bならびに
図27Dに関して上述したように、本出願人はまた、SVC閉塞システムの埋め込みが各患者の平均肺動脈圧の減少をもたらすことを観察した。
【0155】
前述の動物及びヒト試験で観察された利益は、連続するSVC閉塞が、限定ではないが、心臓発作、心筋炎、弁膜不全、容積過負荷、または鬱血性心不全による急性心不全、及び多くの他の急性または慢性心臓損傷を含む、任意の心臓損傷を治療するために使用され得ることを示唆している。1つの例では、本明細書に記載されるSVC閉塞システムは、心不全のシステムを急性的に、例えば急性処置設定で阻止するか、または逆転させることにより、
図2Aに示されるFrank-Starling曲線を健康な患者を表すライン7に向けて変化させるために使用されることができる。このように、患者は、増加した心臓性能の即時の改善を確認し、一連の治療全体を通して心筋機能の更なる継続的改善を確認するであろう。本システムの効果を延長させるために、SVC閉塞システムは、長期使用のために患者内に埋め込まれることができる。本明細書に記載されるSVC閉塞システムは、患者によって継続的に、かつベッドに限定されるのではなく、歩行設定において埋め込まれる、または装着されることができるため、患者は、急性処置と比較して、はるかに長い期間にわたって本システムの利益を受けることができる。
【0156】
図31は、本開示の原理によるSVC閉塞が一連の疾患にわたって変化することが予測される様子の予測的例である。例えば、主要な利益は、より良好な患者血行動態、より早い回復、及び患者の入院日数(LOS)の減少を含む。経時的に、SVC閉塞は、疾患の進行を大きく遅らせることができる。
【0157】
次に、
図32を参照しながら、別の流動制限部材が示されている。SVCの閉塞の1つの所望されない効果は、閉塞器具の上流の静脈血圧の増加である。高い頭部静脈圧は、種々の不要な効果につながり得ることが周知である。流動制限部材の上流の過剰な圧力蓄積のこのリスクを低減するために、リリーフ弁が、
図33に示されるように、流動制限部材に一体に設けられ、SVCから右心房への流体流動を可能にすることができる。リリーフ弁は、一方向性であり、右心房の方向における血流のみを可能にすることができる。リリーフ弁は好ましくは、30~60mmHgのSVC内の圧力において開放するように構成される。しかしながら、リリーフ弁は、SVC内の他の圧力において開放するように設計及び構成され得ることを理解されたい。
【0158】
図32に示される流動制限部材は、
図4A-4Bに示されるシステムと類似するシステムと併用されることができる。
図32に示されるように、流動制限部材は、円筒形流動制限部材112とすることができる。円筒形流動制限部材112は、流体をカテーテルから円筒形バルーン113に送り込むことによって膨張及び萎まされ得る円筒形バルーン113を含むことができる。流動制限部材112は、SVC内にフィットするようにサイズ設定及び構成することができ、SVCの内壁の輪郭に共形化することができる。流動制限部材112は、カテーテル上でSVCに送り込まれることができる。円筒形バルーン113は、萎み構成においてSVCに導入されることができる。SVCに到着することに応じて、円筒形バルーン113は、SVC内の血流を遮断または制限するように膨張されることができる。
【0159】
円筒形バルーン113は、円筒形バルーン113が膨張されるときに内部ルーメン114を画定することができる。リリーフ弁115が開放し、円筒形バルーン113が膨張されているとき、血液は、円筒形バルーン113を通過することができる。内部ルーメン114は、円筒形バルーン113の一方の端部から他方まで延びることができる。内部ルーメン114は、全体を通して一貫した円筒形形状を有し得るが、円筒形バルーン113及び内部ルーメン114の両方のサイズ及び形状は、変動し得ることを理解されたい。また、内部ルーメン114は、バルーンの中心と整合される必要はなく、非円形形状を採用することさえできる。
【0160】
次に、
図33を参照しながら、円筒形流動制限部材112の切欠図が示されている。
図33に示されるように、リリーフ弁115が、中心ルーメン114内の円筒形バルーン113の内壁に連結されることができる。リリーフ弁115は、中心ルーメン114を介した血流を遮断するように協働する単一の流動遮断部材または複数の流動遮断部材(例えば複数の可撓性弁尖)を含むことができる。リリーフ弁115は、円筒形流動制限部材112の中心に連結されることができる、または別の構成として、円筒形流動制限部材112の上流もしくは下流端部に近接して、またはそれに配置されることができる。例えば、リリーフ弁115は、患者の右心房から最も遠い円筒形流動制限部材112の上流端部に配置されることができる。この構成は、リリーフ弁115が中心ルーメン114の中心または下流領域内に配置される場合に起こり得る、中心ルーメン114内の血液の貯留または血液の淀んだ柱を回避することができる。
【0161】
閉鎖位置において
図33に示されるリリーフ弁115は、ある圧力において開放するように設計されることができる。例えば、リリーフ弁115は、30~40mmHgの圧力において開放するように設計されることができる。しかしながら、他の圧力もまた望ましくあり得ることを理解されたい。リリーフ弁115が開放するように設計される圧力を下回ると、リリーフ弁115は、中心ルーメン114を介する流体流動を遮断することができる。リリーフ弁115が開放するように設計される圧力を上回ると、リリーフ弁115は、内部ルーメン114を介した血液の通過を可能にすることにより、頭部静脈圧を低減することができる。
【0162】
リリーフ弁115は、限定ではないが、エラストマ、剛性または可撓性ポリマー、金属、及びそれらの任意の組み合わせを含む、任意の適切な生体適合性材料から構成することができる。リリーフ弁115の機能性は、弁の材料及び設計(すなわち弾性、剛性、厚さ)のみに依存し得る、及び/又は機械的、電気的、及び/又は磁気的特徴によって示されることができる。弁が流体が流れることを可能にする閾値は、弁設計によって事前決定されてもよい、及び/又は機械的に調整可能であり得る。
【0163】
次に、
図34A及び34Bを参照しながら、2つの異なるリリーフ弁設計が、円筒形流動制限部材112の内部ルーメン114内に示されている。
図34Aに示されるバイナリリリーフ弁116は、所与の力が印加されるときに略開放位置まで迅速に移行するまで略閉鎖位置を維持する。リリーフ弁116が閉鎖位置から開放位置に移行する力は好ましくは、30~60mmHgであるが、この圧力は、任意の圧力であり得ることを理解されたい。バイナリ(すなわちオン/オフ)機能性を達成するために、バイナリリリーフ弁は、所与の力に応答して移行するように設計される切り欠き区分を含むことができる。開放し、流体が通過することを可能にすることにより、圧力を解放することに応じて、材料の弾性または他の機械的特徴は、バイナリリリーフ弁116を閉鎖位置に反跳させることができる。このバイナリ機能性は、種々の他の設計を使用して、及び/又は他の材料を組み込むことによって達成され得ることを理解されたい。例えば、
図38A~Bのリリーフ弁132もまた、バイナリ機能性を達成することができる。
【0164】
図34Bに示されるような漸進的リリーフ弁117は、圧力の増加とともに徐々に開放するように設計される。この機能性は、例えば、弁尖が円筒形バルーン113の内壁から内部ルーメン114の中心に向かって移動するにつれて一定の厚さまたは漸進的により薄い断面を有する弁尖によって達成されることができる。しかしながら、圧力の増加に応答して流体流動の増加を漸進的に可能にする任意の弁設計が、漸進的リリーフ弁として使用され得ることを理解されたい。
【0165】
次に、
図35を参照しながら、円筒形流動制限部材112の上面図が示されている。閉鎖位置においてここで示されるリリーフ弁115は、圧力がある閾値を下回ったままである限り、円筒形バルーン113の内部ルーメンを介した血流を防止する。4つの可撓性弁尖またはフラップを有するリリーフ弁設計が示されるが、より少ない/より多い弁尖を伴う弁を含む、円筒形バルーン113の内部ルーメン114内に連結され得る任意のリリーフ弁設計が使用されることができる。
【0166】
次に、
図36A及び36Bを参照しながら、円筒形流動制限部材112の上面図が示されている。
図36Aは、
図34Aにも示される、その開放位置におけるバイナリリリーフ弁116を示している。
図36Bは、
図34Bにも示される、部分的開放位置における漸進的リリーフ弁117を示している。上述したように、バイナリリリーフ弁116は、その設定圧力に到達することに応じて、略開放位置に開放するように設計される。一方、漸進的リリーフ弁117は、圧力がある閾値を上回って増加するにつれて徐々に開放するように設計される。
【0167】
次に、
図37A及び37Bを参照しながら、円筒形バルーン113の周囲にステント118を設置することが望ましくあり得る。ステント118は、例えば、電気信号の受信機及び送信機の両方としての役割を果たすことができる。このような使用は、限定ではないが、ECGリード線としての役割を果たすこと、自律アクティビティに関する信号を放出すること、及び神経調節信号を受信することを含む。ステント118は、自己拡張することができ、導電性材料から作製されることができる。ステント118は、円筒形流動制限部材112に一体に設けられることができる、及び/又は円筒形流動制限部材112に可撤式に連結されることができる。
【0168】
次に、
図38A及び38Bを参照しながら、円筒形流動制限部材130が示されている。これらの図に示されるように、円筒形流動制限部材130は、バルーンオクルーダ131及びリリーフ弁132を含み、両方が、ステント118に一体に設けられる。リリーフ弁132及びバルーンオクルーダ131は、ステント118内で相互に隣接して位置する。
図38Aは、SVC内の血流を閉塞する、その膨張位置における円筒形流動制限部材130を示している。
図38Bは、SVCを介する血流を可能にする、その萎み位置における閉塞器具を示している。
図38Bに示されるように、バルーンオクルーダ131は、リリーフ弁132に連結されることができ、萎むと、リリーフ弁132に向かって収縮することができる。リリーフ弁132は、ステント118にヒンジ接続されることができ、ある圧力がSVC内で達成されると、血流を可能にするように開放することができる。リリーフ弁132は、リリーフ弁に関して上述される技法、設計、及び材料のうちのいずれかを使用して構成することができる。
【0169】
次に、
図39A及び39Bを参照しながら、円筒形流動制限部材133が示されている。これらの図に示されるように、円筒形流動制限部材133は、円筒形バルーンオクルーダ134及びリリーフ弁135を含み、両方が、ステント118に一体に設けられる。円筒形バルーンオクルーダ134は、ステント118の形状に共形化するように膨張されることができる。
図39Bに示されるように、円筒形バルーンオクルーダ134は、外面の一部に沿ってステント118に連結される外面を有することができる。リリーフ弁135は、円筒形バルーンオクルーダ134に連結されることができる。円筒形バルーンオクルーダ134は、膨張されると、内部ルーメン136を画定することができ、それを通して、血液が、リリーフ弁135が開放している場合に通過することができる。
【0170】
図39Aは、膨張構成における円筒形バルーンオクルーダ134を伴う円筒形流動制限部材133を示している。膨張されると、円筒形バルーンオクルーダ134は、SVC内の血流を制限する。円筒形バルーンオクルーダ134が膨張されると、リリーフ弁135は、SVC内のいかなる過剰圧力も緩和するように要求に応じて開放することができる。
図39Bは、萎み構成における円筒形流動制限部材133を示している。萎むと、円筒形流動制限部材133は、SVCを介した血流を可能にする。萎み構成では、円筒形バルーンオクルーダ134は、サイズが低減し、円筒形バルーンオクルーダ134が連結されるステント壁の部分に向かって移動する。同様に、リリーフ弁135は、円筒形流動制限部材133が萎み構成にあるとき、ステント118に向かって移動する。萎んだときに低減されたサイズを有する円筒形バルーンオクルーダ134は、膨張されたバルーンオクルーダ134の周囲で、ステント118を介して血液が流れることを可能にする。
【0171】
次に、
図40A及び40Bを参照しながら、円筒形流動制限部材137が示されている。円筒形流動制限部材137は、ステント118と、リリーフ弁138と、を含む。
図32~39に示される閉塞器具と異なり、円筒形流動制限部材137は、バルーンを含んでいない。代わりに、リリーフ弁138は、
図40Bに示されるように、ステント118に直接連結されることができる。ステント118は、拡張可能ステントとすることができ、SVCの内壁に係留されることができる。リリーフ弁138は、
図32~39に関して上述されるリリーフ弁のうちのいずれかと類似する形態をとり、それと類似する特徴を有することができる。円筒形流動制限部材137は、ある閾値圧力がSVC内で達成されるまでSVC内の血流を全体的に排除することができ、その点で、リリーフ弁138は、SVCから右心房への血流を可能にするように開放することができる。
【0172】
次に、
図41を参照しながら、
図32の円筒形流動制限部材112が、フィルタ126に連結されて示されている。フィルタ126は、円筒形流動制限部材112の下流に設置されることができる。リリーフ弁115が閉鎖されると、血液は、円筒形バルーン113の中心ルーメン114内に貯留し、停滞した血液柱をもたらし、血栓症につながる可能性がある。リリーフ弁115が開放されると、血栓は、右心房に解放される可能性があり、これにより、深刻な問題を引き起こし、さらには死亡を引き起こす可能性がある。フィルタ126は、カテーテルによって直接か、または該当する場合、円筒形バルーン113、リリーフ弁115、またはステント118のような円筒形流動制限部材112の構造特徴によってのいずれかで支持されることができ、血栓を捕捉する役割を果たすことができる。例えば、フィルタ126は、
図41に示されるように、円筒形流動制限部材112の下流端部において円筒形バルーン113に連結されることができる。フィルタ126は、本明細書に記載される流動制限部材のうちのいずれかに一体に設けられ得ることを理解されたい。
【0173】
SVCが完全閉塞されているかどうか、またはSVCが閉塞されている度合いを決定するために、患者の中に造影剤を注入するステップと、蛍光透視下で造影剤の移動を観察するステップと、を伴う伝統的方法が採用されることができる。別の構成として、圧力センサが、本明細書に説明するような閉塞バルーンに対して配置されることができ、圧力波形が、SVCが閉塞されているかどうかを決定するために分析されることができる。例えば、CardioMEMSTM HF System圧力センサが、Abbott(St.
Paul, Minnesota)から入手可能である。圧力センサは、例えば、埋め込みコントローラと無線で通信することができる。圧力波形はまた、患者の血液充満圧、拡張期状態、及び/又は他の心臓状態もしくは兆候を決定するために分析されることができる。例えば、波形は、容積過負荷による三尖弁逆流を示す顕著な「C-V」波を検出するために分析されることができる。別の例では、波形は、完全心ブロック、心室頻脈(VT)、または肺高血圧症を示唆する「A」波を検出することができる。本明細書に記載されるシステムは、波形を分析することによって診断監視ツールとして使用されることができ、本明細書に記載されるSVC閉塞技法を使用して、それに応じて応答することができる。
【0174】
図42Aは、圧力波形を生成し得る圧力センサ140を示している。圧力センサ140は、カテーテル31に組み込まれることができ、閉塞バルーンの近位の部位に配置され、頸静脈圧(JVP)を示す圧力測定値を提供することができる。圧力センサ156は任意であるが、閉塞バルーンの遠位のカテーテル31に組み込まれることができる。
図42Aに示されるシステムのユーザは、圧力センサ140からの波形読取値を監視し、波形が位相性から非位相性に変化するときを決定することができる。閉塞バルーンが萎まされると、圧力波形は、
図42Bの曲線141に示されるように、心拍数と同位相で変動するであろう。閉塞バルーンが膨張されると、圧力波形は、平坦になる。このように、SVCが閉塞されているかどうかが、造影剤を注入する必要性なく、かつ患者がカテーテル処置室に入る、またはX線を浴びることなく決定されることができる。また、圧力波形は、流動制限部材を作動させるとき、及び流動制限部材の作動を中止するときを決定するために使用されることができる。
【0175】
SVCの閉塞を決定するためにX線/蛍光透視を使用することに対する別の構成は、閉塞デバイスの対向する側上に2つの圧力センサを採用する。例えば、上述される
図4Aは、流動制限部材32を含むカテーテル31と、センサ42と、センサ43と、を有するシステムを示している。
図4Aに示されるように、センサ42は、流動制限部材32の遠位に配置され、センサ43は、流動制限部材32の近位に配置される。センサ42及び43は、圧力センサとすることができ、上述したように、例えば、流動制限部材32を横断する圧力差を監視することによって、流動制限部材32によって引き起こされる閉塞の程度を決定するために使用されることができる。圧力差値は、閉塞の量または度合いを示すことができる。また、圧力差は、流動制限部材を作動させるとき、及び流動制限部材の作動を中止するときを決定するために使用されることができる。
【0176】
図4Aは、センサの1つの配列を示すが、センサの他の配列も、関連する情報を取得するために使用され得ることを理解されたい。
図43に示されるように、別のセンサ配列は、導入器シース144のような送達デバイスを介して患者の血管系の中に導入され得る、カテーテル31を含む。カテーテル31は好ましくは、SVCの中に延び、右心房を介して心臓に進入し、右心室の中に延び、肺動脈弁を介して肺動脈に進入する。センサ145、146、及び147は、カテーテル31に沿って配置されることができて、センサ145は、流動制限部材32内に配置され、流動制限部材32内の圧力(すなわちバルーン圧力)を測定し、センサ146は、流動制限部材32の遠位の、かつSVC内のカテーテル31に沿って配置され、SVCまたは右心房圧を測定し、センサ147は、センサ146の遠位のカテーテル31に沿って配置されて、センサ147は、肺動脈内に配置され、肺動脈圧を測定する。流動制限部材32の上方または近位の圧力を測定するために、センサ148は、導入器シース144がSVCに進入する、シース144の遠位端上に直接設置される、または別様にそれに組み込まれることができる。センサ148によって測定される圧力は、JVPを示す。カテーテル31は、膨張ルーメン、作動ルーメンとして、及び/又はコントローラと流動制限部材32及び/又はセンサ145、146、及び147との間の電気通信のために使用される、複数のルーメンを含むことができる。導入器シース144はまた、センサ148とコントローラとの間の電気通信のためのルーメンを含むことができる。
【0177】
次に、
図44を参照しながら、導入器シース144を含むさらに別の実施形態が記載されている。
図44に示される実施形態は、流動制限部材32及びセンサ145及び146もまた導入器シース144に組み込まれることを除き、
図43のものと類似する。
図43に示される器具と同様に、センサ148は、流動制限部材32の上方または近位に配置されることができ、JVPを示す流動制限部材32の上方または近位の圧力を測定することができる。センサ145は、流動制限部材32内に配置され、流動制限部材32内の圧力(すなわちバルーン圧力)を測定する。センサ146は、流動制限部材32の遠位にあり、SVC内に配置される、導入器シース144の遠位端の近傍に配置され、SVCまたは右心房圧を測定する。また、
図43に示される器具と同様に、カテーテル31は、導入器シース144を介して導入され、右心房を介して、かつ肺動脈の中に延びることができる。センサ147は好ましくは、カテーテル31の遠位端に配置されて、これは、肺動脈内に配置され、肺動脈圧を測定する。導入器シース144は、膨張ルーメン、作動ルーメンとして、及び/又はコントローラと流動制限部材32及び/又はセンサ145、146、及び148との間の電気通信のために使用される、複数のルーメンを含むことができる。カテーテル31はまた、センサ147とコントローラとの間の電気通信のためのルーメンを含むことができる。
【0178】
図44の実施形態では、流動制限部材32は、カテーテル31の存在と無関係に選択的に膨張及び萎まされることができる。流動制限部材32及びセンサ145、146、及び148が導入器シース144上に配置される際、SVCを選択的に閉塞するための流動制限部材32の膨張及び萎みを伴う療法用治療が、カテーテル31の導入を伴わずに達成されることができる。更に、流動制限部材32を横断する圧力差が、カテーテル31が展開されているかどうかにかかわらず、センサ148及び146を使用して決定されることができる。
【0179】
次に、
図45を参照しながら、本開示の原理に従って構成されるSVC閉塞システムのさらに別の実施形態が記載されている。カテーテル31は好ましくは、2つの閉塞バルーン、すなわち、奇静脈閉塞バルーン142と、SVC閉塞バルーン143と、を含む。センサ129、139、及び149はまた、カテーテル31上に配置されることができて、センサ129は、奇静脈閉塞バルーン142の近位に配置され、奇静脈閉塞バルーン142の遠位の圧力を測定し、センサ139は、奇静脈閉塞バルーン142とSVC閉塞バルーン143との間に配置され、奇静脈閉塞バルーン142とSVC閉塞バルーン143との間の圧力を測定し、センサ149は、SVC閉塞バルーン143の遠位に配置され、SVC閉塞バルーンの遠位の圧力を測定する。また、センサ145は、SVC閉塞バルーン143内に配置され、SVC閉塞バルーン143内の圧力(すなわちSVC閉塞バルーン圧力)を測定し、センサ155は、奇静脈閉塞バルーン142内に配置され、奇静脈閉塞バルーン142内の圧力(すなわち奇静脈閉塞バルーン圧力)を測定する。更に、奇静脈閉塞バルーン142及びSVC閉塞バルーン143を横断する圧力差が、それぞれ、センサ129及び139と139及び149とを使用して決定されることができる。圧力差値は、閉塞の量または度合いを示すことができる。
【0180】
奇静脈16は、胸部の後部をSVCの中に排出する。SVCが遮断されているとき、奇静脈は、右心房への別の経路を提供することにより、閉塞されたSVC血流を右心房に戻るように自然に短絡することができる。詳細には、SVCが奇静脈の起点の下方で閉塞されている場合、SVCの閉塞部分の上方に蓄積された圧力は、あるパーセンテージの静脈血を奇静脈を介して胸部の中に逆行させることができる。奇静脈閉塞バルーン142は、奇静脈に隣接してSVC内に配置されることができて、奇静脈閉塞バルーン142の膨張は、血流がSVCから奇静脈に流入しないように制限または防止する。SVC閉塞バルーン143は、奇静脈閉塞バルーン142の遠位の奇静脈の下方に配置されることができて、SVC閉塞バルーン143の膨張は、SVCを閉塞するが、奇静脈の中への血流を可能にする。カテーテル31は、コントローラと奇静脈閉塞バルーン142及びSVC閉塞バルーン143との間の膨張ルーメン及び/又は作動ルーメンとして使用される、複数のルーメンを含むことができる。
【0181】
奇静脈閉塞バルーン142及びSVC閉塞バルーン143は、選択的かつ独立して膨張され、萎まされることができる。例えば、奇静脈閉塞バルーン142が萎まされることができる一方、SVC閉塞バルーン143が膨張されることができる、奇静脈閉塞バルーン142が膨張されることができる一方、SVC閉塞バルーン143が萎まされる、または両方のバルーンが同時に膨張される、もしくは萎まされることができる。奇静脈閉塞バルーン142及びSVC閉塞バルーン143はまた、望ましい右心房への逆流の量に応じて、完全または部分的に膨張されることができる。
【0182】
SVC閉塞バルーン143が膨張され、奇静脈閉塞バルーン142が萎まされているとき、SVCは、SVC閉塞バルーン143の上方で開放し、血液は、奇静脈を介して右心房に進行することを可能にされる。右心房への逆流を更に低減する(前負荷を更に低減する)ことが望ましい場合、奇静脈閉塞バルーン142は、膨張されることにより、奇静脈を閉塞し、これが自然な短絡として作用しないように防止することができる。
【0183】
本開示のシステム及び方法は、上記の例に記載されるように単独で、または心機能を補助するように構成される他の器具と組み合わせて使用されることができる。例えば、本開示の原理によるSVC閉塞は、完全心臓支援または一時的補助のために使用されるかにかかわらず、大動脈内バルーンポンプ(「IABP」)または経皮的もしくは外科手術左心室補助人工心臓(「LVAD」)、右心室補助人工心臓(「RVAD」)、または任意の他の心血管(すなわち心臓、静脈、動脈)ポンプのようなポンプと組み合わせて使用されることにより、それぞれ、心臓前負荷及び後負荷の同期または非同期(静脈及び動脈)除負荷を可能にすることができる。例えば、本開示の原理によるSVC閉塞は、
図49を参照して以下に更に詳細に説明するように、Abiomed(登録商標)(Danvers, Massachusetts)から入手可能なImpella(登録商標)心臓ポンプと組み合わせて使用されることができる。
図49及び51~54は、例示的RVAD、LVAD、及びIABPシステムと組み合わせられたSVC閉塞システムを示している。
【0184】
本開示のシステムはまた、両心室ペースメーカー及び神経調節器具のような他の器具に連結され得る。例えば、両心室ペースメーカーは、心機能を再同期するように設計され、SVC閉塞が好ましくは、RV及びLV相互作用を改変する場合、これにより、両心室ペーシングをより効率的にすることができる。同様に、SVC閉塞療法は、神経調節器具と併せて使用されることができて、本システムは、遠心性迷走神経を刺激する際に大きな組み合わせられた作用を有することにより、神経調節器具の有効性を強化する。更なる潜在的用途が、患者がLVADを装備された後に右心室不全を明らかにすることにあり得る。右心室への静脈還流の量を調整することによって、過負荷を低減することにより、右心室心筋を「調整」し、LVADによって駆出されている強化された静脈還流に耐えることが可能であり得る。
【0185】
流動制限部材32が、SVC内に配置され、SVC内で膨張され、萎まされるものとして上述されるが、本明細書に記載されるようなSVCの療法用閉塞は、別の構成として、SVCを選択的に拘束するためにSVCの外部の周囲に巻着されるカフを使用して達成されることができる。次に、
図46を参照しながら、カフ150が、SVCの周囲に巻着されて示されている。
図47A~Dに更に示されるように、カフ150は、ストラップ151と、閉塞部材152と、係止部材153と、を含むことができる。閉塞部材152は、ストラップ151に組み込まれることができて、閉塞部材152は、
図47Aに示されるストラップ151の外面及び
図47Bに示されるストラップ151の内面の両方から外向きに延びる。ストラップ151の内側または内面は、SVCに面する側であり、ストラップ151の外側または外面は、SVCから離れるように面する側である。
【0186】
ストラップ151は、形状が略長方形であり得る。係止部材153は、ストラップ151の1つの側をストラップ151の別の側に可撤式に取り付ける任意の周知のシステムとすることができる。例えば、ストラップ151は、カフ150をSVCに堅く固着させる磁気係止部材を有することができる。空気ライン154が、一方の端部上で閉塞部材152に接続し、他方の端部上でコントローラに接続することができる。閉塞部材は好ましくは、弾性性質を有して、これは、空気ライン154が空気または他の流体を閉塞部材152に送り込むと膨張する。閉塞部材152は、膨張されると、ストラップ151の内側から外向きに拡開することができる。
【0187】
再び
図46を参照するに、カフ150のストラップ151は、SVCの周囲に巻着され、係止部材153を使用してSVC上に堅く係止されることができる。カフ150をSVC上で定位置に係止することに応じて、閉塞部材152は、空気ライン154を介して流体を送り込むことによって選択的に膨張され、したがって、SVCに向かって拡張されることができる。ストラップ151は、実質的に非弾性であるため、閉塞部材152の膨張は、閉塞部材152の拡張及びSVCの圧縮をもたらすことにより、SVCを介した血流を制限するであろう。したがって、SVCの閉塞は、閉塞部材152が拡張し、SVCの中に侵入し、SVCを内向きに圧潰させるときに達成されることができる。したがって、閉塞部材152を選択的に萎ませ、膨張させることによって、本明細書に記載されるSVCの治療用閉塞が達成されることができる。
【0188】
コントローラ33が、流動制限部材32に第1の所定の時間区間にわたってSVCを少なくとも部分閉塞させ、次いで、第2の所定の時間区間、例えば少なくとも1秒、1分未満、または1~30秒にわたって収縮させる、例えば萎ませるようにプログラムされる。好ましくは、第1の所定の時間区間は、1分を上回る、2~8分、または4~6分である。例えば、第1の所定の時間区間は、5分±1分とすることができる。また、第1の所定の時間区間は好ましくは、第2の所定の時間区間を大きく上回って長い。例えば、第1の所定の時間区間は、第2の所定の時間区間よりも少なくとも5倍長い、少なくとも10倍長い、少なくとも20倍長い、または少なくとも30倍長くあり得る。本明細書に記載される幾つかのデータでは、例えば、閉塞時間区間は、5分である一方、収縮時間区間は、10秒である。幾つかの実施形態では、コントローラ33は、流動制限部材32に第1の所定の時間区間中にSVCを完全閉塞させるようにプログラムされる。コントローラ33は、一連の治療全体を通して多くのサイクルにわたって、流動制限部材32を第1の所定の時間区間にわたる閉塞状態から、第2の所定の時間区間にわたる収縮状態に移行させるようにプログラムされることができる。本明細書に更に記載されるように、コントローラ33は、自動的に(例えばセンサ(群)によって検出されるパラメータに応答して)及び/又はユーザ入力に応答して、流動制限部材32に第1の所定の時間区間のタイミングを(例えば第3の所定の時間区間に)調整させる、及び/又は第2の所定の時間区間のタイミングを(例えば第4の所定の時間区間に)調整させるようにプログラムされることができる。当業者によって理解されるであろうように、時間区間の更なる調整が、一連の治療全体を通して行われることができる。
【0189】
次に、
図48を参照しながら、本開示の別の例示的システム30’が記載されている。システム30’は、システム30と類似し、遠位部分34上に配置される流動制限部材32を有するカテーテル31を含む。システム30’は、カテーテル31が近位端35において外部コントローラシステム200に可撤式に連結される点においてシステム30と異なる。例えば、カテーテル31は、病院訪問中にコントローラ33から連結解除され、外部コントローラシステム200に連結されることができ、臨床医は、流動制限部材32の動作を直接監視及び調整することができる。カテーテル31は、流動制限部材32の遠位に、遠位部分34上に配置される任意の遠位浮遊バルーン201を含むことがきる。
図48に示されるように、遠位浮遊バルーン201は、患者の肺動脈内に配置されることができる。
【0190】
外部コントローラシステム200は、膨張源203及び外部コントローラ204に電気的に連結される、ディスプレイ202、例えばグラフィカルユーザインターフェースを含む。ディスプレイ202は、膨張源203及び外部コントローラ204と通信し、臨床医による見直しまたは調整のためのシステム30’の機能に関する情報、例えば重要な生理学的もしくはシステムパラメータ、または外部コントローラ204によって生成されるアラートを表示する。臨床医は、ディスプレイ202上に表示されるデータを見直し、グラフィカルユーザインターフェースを介して機能不全を解消する、またはシステムパラメータを調整することができる。
【0191】
膨張源203は、流動制限部材32を作動させる駆動機構、例えばモータ、ポンプを含む。膨張源203は更に、膨張媒体、例えばガスまたは流体の供給源を含み、駆動機構は、外部コントローラ204からのコマンドに応答して、流動制限部材コネクタ209を介して、膨張源203と流動制限部材32との間で膨張媒体を移送することができる。また、カテーテル31は、部分的に外部にあるとき、流動制限部材32が、カテーテル31の近位端が外部コントローラ204に連結されるときのみ閉塞を提供するように膨張されることができる点において、フェイルセーフ設計を提供する。近位端35におけるこのような迅速締結解除連結は、洗浄及び/又は緊急事態のためにカテーテルが外部コントローラ204から迅速に締結解除されることを可能にする。
【0192】
外部コントローラ204は、膨張源203の駆動機構への信号を制御するようにプログラムされるプロセッサと、その上に命令を格納するメモリと、を含む。外部コントローラ204はまた、電源、例えばプロセッサ、膨張源203、及びディスプレイ202を動作させるために必要とされる電力を提供するバッテリを含む。別の構成として、外部コントローラ204は、電気エネルギーの供給源、例えば電気コンセントにプラグ接続される電気コードを介して電力を受電することができる。
【0193】
カテーテル31は、膨張媒体、例えばガスまたは流体の供給源との流体連通のために近位端35において遠位浮遊バルーンコネクタ205に連結されることができ、膨張媒体は、外部コントローラ204からのコマンドに応答して、膨張媒体の供給源と遠位浮遊バルーン201との間で移送されることにより、患者の肺動脈内に遠位浮遊バルーン201を係留することができる。カテーテル31はまた、近位端35において、温度を測定及び監視するために心拍出量(CO)モニターと通信するためのサーミスタコネクタ206に連結され、肺動脈圧を測定及び監視するためにCOモニターと通信するための肺動脈圧コネクタ207に連結されることができる。
【0194】
外部コントローラ204は、右心房圧を測定及び監視するために、右心房圧コネクタ208を介して近位端35においてカテーテル31に連結されることができる。外部コントローラ204はまた、膨張源203と流動制限部材32との間で移送される膨張媒体の量、例えば流動制限部材32内の圧力を測定及び監視するために、流動制限部材コネクタ209を介して近位端35においてカテーテル31に連結されることができる。外部コントローラ204はまた、シースサイドポートから来る頸静脈圧を測定及び監視するために頸静脈圧コネクタ210に連結されることができる。
【0195】
外部コントローラ204のプロセッサは、例えばカテーテル31上に配置される外部センサからの入力を監視し、その信号をプロセッサに提供する、上述されるようなデータ転送回路を含むことができる。プロセッサは、データ転送回路から入力を受信し、流動制限部材32が拡開状態で維持される時間区間を調整する、または流動制限部材32によって引き起こされる閉塞の度合いを調整するようにプログラムされる。したがって、例えば、カテーテル31は、カテーテルの遠位部分34内に配置される1つ以上の任意のセンサを有し、パラメータ、例えば心拍数、血流速度、血液量、心臓への血液充満圧及び中心静脈圧を含む圧力を測定することができる。センサの出力は、外部コントローラ204のデータ転送回路に中継され、これは、プロセッサに供給される前に、入力信号を前処理し、例えばセンサの出力を間引いてデジタル化することができる。プロセッサに提供された信号は、例えば閉塞及び開存中の低減された静脈圧を示すことによって、流動制限部材32の有効性の評価を可能にし、患者の鬱血の重症度に基づいて、静脈血還流を調節するために要求される閉塞の量を決定するために臨床医によって使用されることができる。当業者によって理解されるであろうように、システム30’は、上述されるような流動制限部材及びセンサの任意の組み合わせを採用することができる。
【0196】
次に、
図49を参照しながら、経弁LVADと組み合わせたSVC閉塞システムが記載されている。例えば、カテーテル31の遠位部分34に流動制限部材32を有するSVC閉塞システム30は、上述したように、SVC内に配置され、SVCを少なくとも部分的に間欠的に閉塞することができ、LVADシステム211は、心臓の左側に配置され、完全な血行動態支援を提供することができる。1つの例では、LVADシステム211は、Abiomed(登録商標)(Danvers, Massachusetts)から入手可能なImpella CP(登録商標)心臓ポンプである。LVADシステム211は、例えばカテーテル216の遠位部分上に配置される、流入端212、流出端213、インペラポンプ214、及びアンカー215を含む。例えば、アンカー215は、ピッグテールアンカーとすることができる。動作中、流入端212は、左心室内に配置され、流出端213は、上行大動脈内に配置される。インペラポンプ214が作動される際、左心室内の血液は、流入端212を介して送り出され、流出端213を介して大動脈の中に排出されることにより、血流の自然な経路を模倣し、左心室の負荷を除去し、冠動脈及び全身灌流を増加させる。例えば、インペラポンプ214は、最大5.0L/分の順方向血流を左心室から大動脈に送り込むことができる。当業者によって理解されるであろうように、任意の適切なポンプが使用されることができる。
【0197】
また、LVADシステム211は、カテーテル216に操作可能に連結され、ポンプ214を作動させ、血液を左心室から大動脈に送り出すことにより、左心室の負荷を除去し、冠動脈及び全身灌流を増加させるように構成される、コントローラ217を含む。コントローラ217及びコントローラ33は、同一である、及び/又は同一の筐体ユニットに組み込まれることができ、単一のコントローラが、流動制限部材32及びポンプ214に操作可能に連結される。コントローラ33は、コントローラ217がポンプ214を作動させ、血液を左心室から大動脈に送り出すと同時に、流動制限部材32を作動させ、SVCを少なくとも部分閉塞することができる。
【0198】
図50は、左心室(「LV」)総容積、すなわち、(1)ベースラインモデル、(2)LVADモデル、及び(3)LVAD+SVC閉塞システムモデルのLV圧を実証する、動物モデルで取得された結果を提示している。モデル(3)をモデル(1)及び(2)と比較することから明白であるように、心臓前負荷(「CP」)及び左心室壁張力(「LVWT」)の低減が、経弁LVAD(Abiomed(登録商標)(Danvers, Massachusetts)から入手可能なImpella CP(登録商標)心臓ポンプ)と組み合わせて本明細書に記載されるようなSVC閉塞システムの使用からもたらされ、LVADによって引き起こされる前負荷低減における改善された機能性及び効率を示す。また、経弁LVADは、十分な全身性心血管支援を達成しながらより低い送り出し速度において動作され、したがって、LVADに関する有害事象の潜在性を低減することができる。
【0199】
次に、
図51を参照しながら、経弁RVADと組み合わせたSVC閉塞システムが記載されている。例えば、カテーテル31の遠位部分34に流動制限部材32を有するSVC閉塞システム30は、上述したように、SVC内に配置され、SVCを少なくとも部分的に間欠的に閉塞することができ、RVADシステム218は、カテーテル31上の流動制限部材32の遠位に配置され、完全な血行動態支援を提供することができる。1つの例では、RVADシステム218は、Abiomed(登録商標)(Danvers, Massachusetts)から入手可能なImpella RP(登録商標)心臓ポンプである。RVADシステム218は、例えばカテーテル223の遠位部分上に配置される、流入端219、流出端220、インペラポンプ221、及びアンカー222を含む。例えば、アンカー222は、ピッグテールアンカーであり得る。動作中、流出端220は、肺動脈内に配置され、流入端219は、流動制限部材32の遠位のSVC内に配置される。インペラポンプ221が作動される際、SVC内の血液は、流入端219を介して送り出され、流出端220を介して肺動脈の中に排出されることにより、血流の自然な経路を模倣し、右心室の負荷を除去する。例えば、インペラポンプ221は、最大5.0L/分の順方向血流をSVCから肺動脈に送り込むことができる。当業者によって理解されるであろうように、任意の適切なポンプが使用されることができる。
【0200】
また、コントローラ33は、RVADシステム218に操作可能に連結され、ポンプ221を作動させ、血液をSVCから肺動脈に送り出すことにより、右心室の負荷を除去するように構成ることができる。したがって、コントローラ33は、同時に、流動制限部材32を作動させ、SVCを少なくとも部分閉塞し、ポンプ221を作動させ、血液をSVCから肺動脈に送り出すことができる。
【0201】
次に、
図52を参照しながら、別の経弁RVADと組み合わせたSVC閉塞システムが記載されている。例えば、カテーテル31の遠位部分34に流動制限部材32を有するSVC閉塞システム30は、上述したように、SVC内に配置され、SVCを少なくとも部分的に間欠的に閉塞することができ、RVADシステム218は、心臓の右側に配置され、完全な血行動態支援を提供することができる。1つの例では、RVADシステム218は、Abiomed(登録商標)(Danvers, Massachusetts)から入手可能なImpella CP(登録商標)心臓ポンプである。RVADシステム218は、例えばカテーテル223の遠位部分上に配置される、流入端219、流出端220、インペラポンプ221、及びアンカー222を含む。例えば、アンカー222は、ピッグテールアンカーとすることができる。動作中、流入端219は、下大静脈(IVC)内に配置され、流出端220は、肺動脈内に配置される。インペラポンプ221が作動される際、IVC内の血液は、流入端219を介して送り出され、流出端220を介して肺動脈の中に排出されることにより、血流の自然な経路を模倣し、右心室の負荷を除去する。例えば、インペラポンプ221は、最大5.0L/分の順方向血流をIVCから肺動脈に送り込むことができる。当業者によって理解されるであろうように、任意の適切なポンプが使用されることができる。
【0202】
また、RVADシステム218は、カテーテル223に操作可能に連結され、ポンプ221を作動させ、血液をIVCから肺動脈に送り出すことにより、右心室の負荷を除去するように構成される、コントローラ224を含む。コントローラ224及びコントローラ33は、同一である、及び/又は同一の筐体ユニットに組み込まれることができ、単一のコントローラが、流動制限部材32及びポンプ221に操作可能に連結される。コントローラ33は、コントローラ224がポンプ221を作動させ、血液をIVCから肺動脈に送り出すと同時に、流動制限部材32を作動させ、SVCを少なくとも部分閉塞することができる。
【0203】
次に、
図53を参照しながら、経心尖LVADと組み合わせたSVC閉塞システムが記載されている。例えば、カテーテル31の遠位部分34に流動制限部材32を有するSVC閉塞システム30は、上述したように、SVC内に配置され、SVCを少なくとも部分的に間欠的に閉塞することができ、LVADシステム225は、心臓の左側に経心尖的に配置され、完全な血行動態支援を提供することができる。1つの例では、LVADシステム225は、HeartWare, Inc.(Miami Lakes, Florida)から入手可能なHeartWare
TM HVAD
TM Systemである。LVADシステム225は、例えば左心室の頂点の近傍に埋め込まれる、流入端226、流出端227、及びポンプ228を含む。動作中、流入端226は、左心室内に配置され、流出端227は、上行大動脈内に配置される。ポンプ228が作動される際、左心室内の血液は、流入端226を介して送り出され、流出端227を介して大動脈の中に排出されることにより、血流の自然な経路を模倣し、左心室の負荷を除去し、冠動脈及び全身灌流を増加させる。当業者によって理解されるであろうように、任意の適切なポンプが使用されることができる。
【0204】
また、LVADシステム225は、ポンプ228に操作可能に連結され、ポンプ228を作動させ、血液を左心室から大動脈に送り出すように構成される、コントローラ229を含む。コントローラ229及びコントローラ33は、同一である、及び/又は同一の筐体ユニットに組み込まれることができ、単一のコントローラが、流動制限部材32及びポンプ228に操作可能に連結される。コントローラ33は、コントローラ229がポンプ228を作動させ、血液を左心室から大動脈に送り出すと同時に、流動制限部材32を作動させ、SVCを少なくとも部分閉塞することができる。
【0205】
次に、
図54を参照しながら、大動脈内バルーンポンプ(IABP)と組み合わせたSVC閉塞システムが記載されている。例えば、カテーテル31の遠位部分34に流動制限部材32を有するSVC閉塞システム30は、上述したように、SVC内に配置され、SVCを少なくとも部分的に間欠的に閉塞することができ、IABP230は、下行大動脈に配置されることができる。IABPは、流動制限部材231と、流動制限部材231に連結されるカテーテル232と、を含むことができる。流動制限部材231は、例えば静脈内留置を可能にする収縮状態と拡張展開状態との間で移行することができるバルーンを備える。流動制限部材231は好ましくは、これが拡開状態において大動脈内の血流を部分または完全閉塞するようにサイズ設定され、かつ形状設定される。カテーテル232は、近位端においてコントローラ33に連結されることができる。コントローラ33は、流動制限部材32及び流動制限部材231を独立して作動させる駆動機構36を収容する。
図54に示されるように、流動制限部材231及び流動制限部材32は、同一のコントローラに連結されることができ、単一のコントローラが、流動制限部材32、流動制限部材231、及びポンプ221に操作可能に連結される。しかしながら、流動制限部材32及び流動制限部材231は、異なるコントローラ及び/又は異なるポンプに連結され得ることを理解されたい。動作中、流動制限部材231は、下行大動脈内に配置され、間欠的に膨張し、萎むであろう。膨張は、拡張期と一致するようにタイミングをとられ、萎みは、収縮期と一致するようにタイミングをとられることができる。流動制限部材231が萎むにつれて、吸引効果が大動脈内に生成され、収縮期中に左心室から大動脈への血液の移送を促進する。
【0206】
SVC閉塞システムのVAD、RVAD、またはLVADとの組み合わせは、VADの要求される流速を低減し、患者において同一の血行動態応答を達成することができる。これにより、ポンプの要求される速度を低下させることにより、より高い流速を生成するために要求されるポンプのより高い速度に伴う潜在的な合併症を低減するであろう。更に、ポンプの埋め込みに続くSVCの間欠的閉塞は、LVADが動作速度まで引き上げられている間に右心室の負荷を除去することに役立つことができる。
【0207】
これまでの説明は、添付の特許請求の範囲により規定される本発明の範囲を例示するものであり、本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。他の実施形態は、以下の特許請求の範囲に含まれる。
【外国語明細書】