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特開2023-120393タキサンのナノ粒子を用いる皮膚悪性腫瘍処置のための局所療法
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  • 特開-タキサンのナノ粒子を用いる皮膚悪性腫瘍処置のための局所療法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023120393
(43)【公開日】2023-08-29
(54)【発明の名称】タキサンのナノ粒子を用いる皮膚悪性腫瘍処置のための局所療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/337 20060101AFI20230822BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230822BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230822BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20230822BHJP
   A61K 47/06 20060101ALI20230822BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20230822BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20230822BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
A61K31/337
A61P17/00
A61P35/00
A61K9/16
A61K47/06
A61K47/34
A61K9/06
A61P35/04
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023103829
(22)【出願日】2023-06-26
(62)【分割の表示】P 2019550634の分割
【原出願日】2018-03-15
(31)【優先権主張番号】62/471,561
(32)【優先日】2017-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】518089610
【氏名又は名称】ディーエフビー ソリア リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ディゼレガ ギア
(57)【要約】      (修正有)
【課題】皮膚悪性腫瘍の処置方法を提供する。
【解決手段】処置を必要とする対象における皮膚悪性腫瘍の処置法であって、複数のタキサンナノ粒子を含む組成物を該対象の患部に局所投与する段階を含む、方法である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処置を必要とする対象における皮膚悪性腫瘍の処置法であって、複数のタキサンナノ粒子を含む組成物を該対象の患部に局所投与する段階を含む、方法。
【請求項2】
タキサンナノ粒子が前記組成物内で懸濁されている、請求項1記載の方法。
【請求項3】
タキサンナノ粒子が0.1ミクロン~1.5ミクロンの平均粒径(個数基準)を有する、請求項1~2のいずれか一項記載の方法。
【請求項4】
タキサンナノ粒子がパクリタキセルナノ粒子、ドセタキセルナノ粒子、またはカバジタキセルナノ粒子である、請求項1~3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
タキサンナノ粒子がパクリタキセルナノ粒子である、請求項4記載の方法。
【請求項6】
パクリタキセルナノ粒子が少なくとも18m2/gの比表面積(SSA)を有する、請求項5記載の方法。
【請求項7】
パクリタキセルナノ粒子が18m2/g~40m2/gの比表面積(SSA)を有する、請求項6記載の方法。
【請求項8】
タキサンナノ粒子の濃度が皮膚悪性腫瘍の治療的改善を提供するのに有効な濃度である、請求項1~7のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
パクリタキセルナノ粒子の濃度が約0.15~約2重量%、または0.1~5重量%である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記組成物が無水である、請求項1~9のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
前記組成物が疎水性組成物である、請求項1~10のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
疎水性組成物が疎水性担体を含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
疎水性担体が不揮発性である、請求項12記載の方法。
【請求項14】
疎水性担体が非極性である、請求項12~13のいずれか一項記載の方法。
【請求項15】
疎水性担体が炭化水素を含む、請求項12~14のいずれか一項記載の方法。
【請求項16】
炭化水素がワセリン、鉱油、もしくはパラフィンワックス、またはそれらの混合物である、請求項15記載の方法。
【請求項17】
鉱油が重鉱油である、請求項16記載の方法。
【請求項18】
疎水性担体が前記組成物の50重量%を上回る、請求項12~17のいずれか一項記載の方法。
【請求項19】
疎水性組成物が1つまたは複数の揮発性シリコーン油を含む、請求項12~18のいずれか一項記載の方法。
【請求項20】
1つまたは複数の揮発性シリコーン油の濃度が前記組成物の5~24重量%である、請求項19記載の方法。
【請求項21】
揮発性シリコーン油がシクロメチコンである、請求項20記載の方法。
【請求項22】
シクロメチコンがシクロペンタシロキサンである、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記組成物が半固体組成物である、請求項1~22のいずれか一項記載の方法。
【請求項24】
半固体組成物が軟膏である、請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記組成物が揮発性C1~C4脂肪族アルコールを含まない、請求項1~24のいずれか一項記載の方法。
【請求項26】
前記組成物がさらなる浸透増強剤を含まない、請求項1~25のいずれか一項記載の方法。
【請求項27】
前記組成物がさらなる揮発性溶媒を含まない、請求項1~26のいずれか一項記載の方法。
【請求項28】
前記組成物が界面活性剤を含まない、請求項1~27のいずれか一項記載の方法。
【請求項29】
前記組成物がタンパク質もアルブミンも含まない、請求項1~28のいずれか一項記載の方法。
【請求項30】
皮膚悪性腫瘍が皮膚癌である、請求項1~29のいずれか一項記載の方法。
【請求項31】
皮膚癌が黒色腫、基底細胞癌、扁平上皮癌、またはカポジ肉腫である、請求項30記載の方法。
【請求項32】
皮膚悪性腫瘍が皮膚転移である、請求項1~29のいずれか一項記載の方法。
【請求項33】
皮膚転移が、肺癌、乳癌、結腸癌、口腔癌、卵巣癌、腎臓癌、食道癌、胃癌、肝臓癌、および/またはカポジ肉腫に由来する、請求項32記載の方法。
【請求項34】
さらなる皮膚指向療法を含まない、請求項1~33のいずれか一項記載の方法。
【請求項35】
対象の皮膚悪性腫瘍中へのタキサンナノ粒子の浸透を増強する方法であって、連続疎水性担体、1つまたは複数の揮発性シリコーン油、および複数のタキサンナノ粒子を含む疎水性組成物を患部に局所適用する段階を含む、方法。
【請求項36】
タキサンナノ粒子が疎水性組成物内で懸濁されている、請求項35記載の方法。
【請求項37】
タキサンナノ粒子が0.1ミクロン~1.5ミクロンの平均粒径(個数基準)を有する、請求項35~36のいずれか一項記載の方法。
【請求項38】
タキサンナノ粒子がパクリタキセルナノ粒子、ドセタキセルナノ粒子、またはカバジタキセルナノ粒子である、請求項35~37のいずれか一項記載の方法。
【請求項39】
タキサンナノ粒子がパクリタキセルナノ粒子である、請求項38記載の方法。
【請求項40】
パクリタキセルナノ粒子が少なくとも18m2/gの比表面積(SSA)を有する、請求項39記載の方法。
【請求項41】
パクリタキセルナノ粒子が18m2/g~40m2/gの比表面積(SSA)を有する、請求項40記載の方法。
【請求項42】
パクリタキセルナノ粒子の濃度が約0.15~約2重量%、または0.1~5重量%である、請求項39~42のいずれか一項記載の方法。
【請求項43】
前記組成物が無水である、請求項35~42のいずれか一項記載の方法。
【請求項44】
疎水性担体が不揮発性である、請求項35~43のいずれか一項記載の方法。
【請求項45】
疎水性担体が非極性である、請求項35~44のいずれか一項記載の方法。
【請求項46】
疎水性担体が炭化水素を含む、請求項35~45のいずれか一項記載の方法。
【請求項47】
炭化水素がワセリン、鉱油、もしくはパラフィンワックス、またはそれらの混合物である、請求項46記載の方法。
【請求項48】
鉱油が重鉱油である、請求項47記載の方法。
【請求項49】
疎水性担体が前記組成物の50重量%を上回る、請求項35~48のいずれか一項記載の方法。
【請求項50】
1つまたは複数の揮発性シリコーン油の濃度が前記組成物の5~24重量%である、請求項35~49のいずれか一項記載の方法。
【請求項51】
揮発性シリコーン油がシクロメチコンである、請求項50記載の方法。
【請求項52】
シクロメチコンがシクロペンタシロキサンである、請求項51記載の方法。
【請求項53】
前記組成物が半固体組成物である、請求項35~52のいずれか一項記載の方法。
【請求項54】
半固体組成物が軟膏である、請求項53記載の方法。
【請求項55】
前記組成物の粘度が、T-Eスピンドルを備えヘリパスをオンにしたヘリパススタンド上のブルックフィールドRV粘度計により、10RPM、室温で45秒間測定して、25,000cps~500,000cpsである、請求項53~54のいずれか一項記載の方法。
【請求項56】
前記組成物が揮発性C1~C4脂肪族アルコールを含まない、請求項35~55のいずれか一項記載の方法。
【請求項57】
前記組成物がさらなる浸透増強剤を含まない、請求項35~56のいずれか一項記載の方法。
【請求項58】
前記組成物がさらなる揮発性溶媒を含まない、請求項35~57のいずれか一項記載の方法。
【請求項59】
前記組成物が界面活性剤を含まない、請求項35~58のいずれか一項記載の方法。
【請求項60】
前記組成物がタンパク質もアルブミンも含まない、請求項35~59のいずれか一項記載の方法。
【請求項61】
皮膚悪性腫瘍が皮膚癌である、請求項35~60のいずれか一項記載の方法。
【請求項62】
皮膚癌が黒色腫、基底細胞癌、扁平上皮癌、またはカポジ肉腫である、請求項61記載の方法。
【請求項63】
皮膚悪性腫瘍が皮膚転移である、請求項35~60のいずれか一項記載の方法。
【請求項64】
皮膚転移が、肺癌、乳癌、結腸癌、口腔癌、卵巣癌、腎臓癌、食道癌、胃癌、肝臓癌、および/またはカポジ肉腫に由来する、請求項63記載の方法。
【請求項65】
疎水性組成物から皮膚悪性腫瘍中へのタキサンナノ粒子の浸透が、複数のタキサンナノ粒子を含みかつ1つまたは複数の揮発性シリコーン油を含まない疎水性組成物の局所適用から皮膚悪性腫瘍中へのタキサンナノ粒子の浸透よりも高い、請求項35~64のいずれか一項記載の方法。
【請求項66】
対象の皮膚悪性腫瘍中へのタキサンナノ粒子の浸透を増強する方法であって、複数のタキサンナノ粒子を含む疎水性組成物を患部に局所適用する段階を含み、ここで、疎水性組成物から皮膚悪性腫瘍中へのタキサンナノ粒子の浸透が、複数のタキサンナノ粒子を含む水性組成物の局所適用から皮膚悪性腫瘍中へのタキサンナノ粒子の浸透よりも高い、方法。
【請求項67】
タキサンナノ粒子が0.1ミクロン~1.5ミクロンの平均粒径(個数基準)を有する、請求項66記載の方法。
【請求項68】
タキサンナノ粒子がパクリタキセルナノ粒子、ドセタキセルナノ粒子、またはカバジタキセルナノ粒子である、請求項66~67のいずれか一項記載の方法。
【請求項69】
疎水性組成物が疎水性担体をさらに含む、請求項66~68のいずれか一項記載の方法。
【請求項70】
皮膚悪性腫瘍が皮膚癌または皮膚転移である、請求項66~69のいずれか一項記載の方法。
【請求項71】
疎水性組成物が、その中で懸濁された複数のタキサンナノ粒子を有する連続疎水性相を含む、請求項66~70のいずれか一項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年3月15日提出の米国特許仮出願第62/471,561号の恩典を主張する。参照出願の内容は参照により本出願に組み入れられる。
【0002】
発明の分野
本発明は、一般には、皮膚癌および皮膚転移を含む皮膚悪性腫瘍の局所治療処置の分野に関する。特に、本発明は、皮膚悪性腫瘍処置のためのタキサンナノ粒子を含む局所組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
皮膚悪性腫瘍には、皮膚癌および皮膚転移が含まれる。皮膚癌は皮膚の組織に形成される。皮膚癌にはいくつかの型があり、黒色腫(悪性黒色腫)、基底細胞癌、扁平上皮癌、皮膚の神経内分泌癌、メルケル細胞腫瘍、隆起性皮膚線維肉腫(dermatofibrosarcoma protruberans)、およびカポジ肉腫が含まれる。皮膚癌の主な型には、黒色腫、基底細胞癌、および扁平上皮癌が含まれる。黒色腫は、メラノサイト(色素を作る皮膚細胞)に形成される皮膚癌である。基底細胞癌は表皮の下部に形成され、扁平上皮癌は扁平上皮細胞に形成される。皮膚の神経内分泌癌は神経内分泌細胞に形成される。皮膚癌の大半は基底細胞癌および扁平上皮癌であり、一般に身体の他の部分に伝播する(転移する)ことはない。黒色腫は体の他の部分に伝播する傾向がある。カポジ肉腫は、高齢者またはエイズ患者などの異常な免疫系を有する者を苦しめる比較的まれな型の皮膚悪性腫瘍である。カポジ肉腫は、皮膚に結節を形成する柔らかい紫がかったプラークと丘疹によって特徴づけられる皮膚の病変(腫瘍)である。
【0004】
皮膚転移とは、内部の癌または黒色腫などの皮膚癌に起因する皮膚の癌細胞の増殖を指す。皮膚転移は、癌細胞が原発癌腫瘍から離脱し、典型的には血液循環またはリンパ系を通じて皮膚に移動するときに起こる。皮膚転移は以下の癌の徴候として報告されている:乳房、肺、鼻腔、喉頭、口腔、結腸直腸、胃、卵巣、精巣、膀胱、前立腺、子宮頸部、膣、甲状腺、子宮内膜、腎臓、食道、膵臓、肝臓、黒色腫およびカポジ肉腫(エイズ関連カポジ肉腫を含む)。皮膚転移はますます蔓延しており、転移性癌患者の約10%で起こる(Lookingbill et al., Cutaneous metastases in patients with metastatic carcinoma: A retrospective study of 4020 patients, J Am Acad Dermatol 29:228-236, 1993(非特許文献1))。皮膚転移を有する女性は、頻度の高い順に以下の原発悪性腫瘍の分布を有する:乳房、卵巣、口腔、肺、および大腸。男性では、分布は以下のとおりである:肺、大腸、口腔、腎臓、乳房、食道、膵臓、胃、および肝臓。(Alcaraz et al., Cutaneous Metastases from Internal Malignancies: A Clinicopathologic and Immunohistochemical Review, Am J Dermatopathol 34:347-393, 2012(非特許文献2))。癌処置の進歩に伴い、患者は長生きし、したがって、皮膚転移を発症する可能性が高い。
【0005】
一般に、皮膚転移病変は、硬く、円形または楕円形で移動性の、痛みを伴わない結節であり、無傷の上皮で覆われている。結節は潰瘍および二次感染を生じることもある。皮膚転移の他の徴候は、プラーク、丘疹、または赤い斑点の存在でありうる。皮膚転移は疼痛、感染、出血および/または変形を引き起こし、患者の生活の質に悪影響を及ぼし得る。
【0006】
乳癌患者における皮膚転移の発生率は最近23.9%と報告された(Lookingbill et al.)。乳癌からの皮膚転移は、皮膚科医によって観察される最も一般的な転移である(De Giorgi et. al., Cutaneous manifestations of breast carcinoma, Dermatol Therapy, 23:581-589, 2010(非特許文献3))。これらの皮膚転移は、胸壁および腹部に最もよく起こるが、四肢および頭頸部領域にも起こり得る。結節は、これらの皮膚転移の最も一般的な形態である。そのサイズは1~3cmの範囲であり、真皮または皮下組織における堅い孤立性または複数の病変である。
【0007】
全身療法および皮膚指向療法(skin-directed therapy)を含む、皮膚癌および皮膚転移に対する様々な処置が利用可能である。しかし、全身療法は、皮膚転移の処置に関して限られた有効性を有する(Spratt et al., Efficacy of Skin-Directed Therapy for Cutaneous Metastases from Advanced Cancer: A Meta-Analysis, J Clin Oncol, 32:3144-3155, 2014(非特許文献4))。
【0008】
皮膚指向療法には、電気化学療法(ECT)、光線力学的療法(PDT)、放射線療法(RT)、病変内局注療法(ILT)、および局所療法が含まれる。ECT、PDT、RT、およびILTはすべて、医師または技術者による投与を必要とするが、局所療法は患者によって投与することができる。したがって、局所療法は、他の治療法よりも低コストであり得、また、治療を自宅で患者によって投与することができるため、より大きな患者のコンプライアンスを得ることもできる。しかし、皮膚転移の処置のためのイミキモドまたはミルテホシンの組成物を含む局所療法は、奏功率が低く、他の皮膚指向療法と組み合わせた場合にのみ改善された奏功率を示した(Spratt et al.)。4,313例の皮膚転移の47の前向き試験のメタ分析において、前述の治療法(放射線療法を含む)に対する客観的奏功率は60.2%であった(Spratt et al.)。ECTは最高の奏功率(完全奏功率47.5%)を示したが、ECTは全身麻酔を必要とする入院手順であり、しばしば顕著な疼痛および皮膚毒性(炎症、色素沈着過剰、および潰瘍)を引き起こす(Cabula et al., Electrochemotherapy in the Treatment of Cutaneous Metastases from Breast Cancer: A Multicenter Cohort Analysis, Ann Surg Oncol (2015) 22:S442-S450(非特許文献5))。病変内局注療法および局所療法などの侵襲性の低い選択肢は、ECTと比較して有効性の低下を示す。よくあることだが、皮膚転移の効果的な減少が達成できない場合、医療従事者は緩和的創傷ケア療法に頼らなければならない(Fernandez-Anton Martinez, et al., Metastasis Cutaneas de origen visceral, Actas Dermosifiliogr. 2013;104(10):841---853(非特許文献6))。したがって、他の皮膚指向療法と治療を組み合わせる必要なしに皮膚転移の処置に有効である局所治療組成物の入手可能性は有益であろう。したがって、進行原発癌の症状および処置から既に著しい病的状態に苦しんでいる患者における、皮膚転移に対する効果的で侵襲性の低い代替療法が必要とされている。
【0009】
皮膚の生存表皮および真皮中への治療薬の送達は、表皮の最も外側の層である角質層のバリア特性のために難題であり得る。水難溶性の薬物の皮膚中への送達は、さらに困難であり得る。皮膚浸透増強剤は、薬物の皮膚中への浸透を高めるために局所薬物製剤に用いられており、いくらかの成功を収めている。しかし、溶媒および界面活性剤などのいくつかの浸透増強剤は、皮膚に対して刺激性であり得る。揮発性シリコーン油は、薬物の皮膚中への浸透を高めるために局所製剤に用いられているが、高濃度、すなわち、25%以上の揮発性シリコーン油、および/またはアルコールなどの他の皮膚刺激性の可能性がある化合物、例えば、C1~C4脂肪族アルコール、界面活性剤、他の浸透増強剤、および他の揮発性溶媒との揮発性シリコーン油の組み合わせが、浸透増強効果を生み出すために必要とされてきた。加えて、いくつかの浸透増強剤は、薬物の経皮的浸透、および全身吸収を引き起こし、これは皮膚(例えば、表皮および/または真皮)の状態だけを処置する場合には望ましくない。薬物が界面活性剤および他の物質で化学的に修飾されている、他の局所送達システムが用いられているが、これらの材料も皮膚に刺激性であり得る。
【0010】
パクリタキセルおよびドセタキセルを含むタキサンは、長年にわたり癌の処置に使用されてきた。これらの化合物は、典型的には、水難溶性であると特徴付けられる。当初、静脈内(IV)注入用に開発された癌処置製剤、TAXOL(登録商標)(BMS)は、ポリエトキシル化ヒマシ油(CREMOPHOR(登録商標)EL)と脱水エタノールとの50:50 v/v混合物に溶解したパクリタキセルである。しかし、この製剤の全身使用は、著しい臨床毒性を引き起こす(Rowinsky et al. 1993)。パクリタキセルのCREMOPHOR ELを含まない製剤の開発に多大な努力が注がれてきた(Ma and Mumper, 2013)。そのような製剤の1つは、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第8,221,779号に開示され、これは組成物の腹腔内および静脈内(IV)注射による癌の処置のために有用な、パクリタキセルを含む抗有糸分裂薬微粒子の注射用水性組成物を開示している。
【0011】
皮膚癌の局所処置には、現在、5-フルオロウラシル(5-FU)、イミキモド、およびインゲノールメブテートの局所製剤が含まれる。しかし、これらの製剤の使用は、適用部位での灼熱感、発赤、乾燥、疼痛、腫脹、そう痒、圧痛、および潰瘍などの局所皮膚刺激を引き起こし得る。
【0012】
現在、米国では皮膚癌または皮膚転移の処置のためのFDA承認局所タキサン製剤はない。他の有効成分を含む組成物を用いた皮膚転移の以前の局所療法は、部分的には組成物が患部組織へと皮膚中に浸透することができないため、無効であった可能性がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Lookingbill et al., Cutaneous metastases in patients with metastatic carcinoma: A retrospective study of 4020 patients, J Am Acad Dermatol 29:228-236, 1993
【非特許文献2】Alcaraz et al., Cutaneous Metastases from Internal Malignancies: A Clinicopathologic and Immunohistochemical Review, Am J Dermatopathol 34:347-393, 2012
【非特許文献3】De Giorgi et. al., Cutaneous manifestations of breast carcinoma, Dermatol Therapy, 23:581-589, 2010
【非特許文献4】Spratt et al., Efficacy of Skin-Directed Therapy for Cutaneous Metastases from Advanced Cancer: A Meta-Analysis, J Clin Oncol, 32:3144-3155, 2014
【非特許文献5】Cabula et al., Electrochemotherapy in the Treatment of Cutaneous Metastases from Breast Cancer: A Multicenter Cohort Analysis, Ann Surg Oncol (2015) 22:S442-S450
【非特許文献6】Fernandez-Anton Martinez, et al., Metastasis Cutaneas de origen visceral, Actas Dermosifiliogr. 2013;104(10):841---853
【発明の概要】
【0014】
本発明は、皮膚癌および皮膚転移を含む皮膚悪性腫瘍の処置に関する、当技術分野における前述の制限および欠陥に対する解決策を提供する。開示するのは、皮膚癌および皮膚転移を含む皮膚悪性腫瘍にタキサンナノ粒子を送達するための、皮膚浸透が増強された局所組成物を用いて、局所皮膚刺激が低い、または無視できる有効な処置を提供する局所療法である。一定の場合に、本発明の処置法は、前述のものなどの他の公知の皮膚指向療法とそれらを組み合わせる必要なしに用いることができる。
【0015】
本発明の1つの局面において、処置を必要とする対象における皮膚悪性腫瘍の処置法であって、複数のタキサンナノ粒子を含む組成物を該対象の患部に局所投与(局所適用)する段階を含む、方法が、開示される。皮膚悪性腫瘍の「患部」は、皮膚悪性腫瘍病変が皮膚の最も外側の表面または皮膚の表面(上皮/真皮の被覆)の真下に目に見えて存在する、皮膚の少なくとも一部を含み得、かつ視覚的に検出不可能な前臨床病変を含む可能性が高い、皮膚悪性腫瘍の近くの皮膚の領域を含み得る。いくつかの態様において、タキサンナノ粒子は組成物内で懸濁されている。他の態様において、タキサンナノ粒子は、0.1ミクロン~1.5ミクロンの平均粒径(個数基準)を有する。様々な態様において、タキサンナノ粒子は、パクリタキセルナノ粒子、ドセタキセルナノ粒子、もしくはカバジタキセルナノ粒子、またはそのようなナノ粒子の任意の組み合わせである。いくつかの態様において、タキサンナノ粒子はパクリタキセルナノ粒子である。いくつかの態様において、パクリタキセルナノ粒子は、少なくとも18m2/g、または18m2/g~40m2/gの比表面積(SSA)を有する。組成物中のタキサンナノ粒子の濃度は、皮膚癌または皮膚転移であり得る皮膚悪性腫瘍の治療的改善を提供するのに有効な濃度である。いくつかの態様において、タキサンナノ粒子またはパクリタキセルナノ粒子の有効濃度は、約0.15~約2重量%、または0.1~5重量%である。いくつかの態様において、組成物は無水である。いくつかの態様において、組成物は疎水性組成物であり、疎水性担体を含むことができる。さらに他の態様において、疎水性担体は不揮発性および/または非極性である。様々な態様において、疎水性担体は、ワセリン、鉱油、もしくはパラフィンワックス、またはそれらの混合物であり得る炭化水素を含む。いくつかの態様において、鉱油は重鉱油である。いくつかの態様において、疎水性担体は組成物の50重量%を上回る。疎水性組成物は、さらに1つまたは複数の揮発性シリコーン油を含み得る。いくつかの態様において、揮発性シリコーン油は、組成物の5~24重量%の濃度で、かつシクロメチコンであり得る。いくつかの態様において、シクロメチコンはシクロペンタシロキサンである。様々な態様において、組成物は半固体組成物であり、かつ軟膏であり得る。様々な態様において、組成物は揮発性C1~C4脂肪族アルコールもしくはC1~C5脂肪族アルコールを含まず、かつ/またはさらなる浸透増強剤を含まず、かつ/またはさらなる揮発性溶媒を含まず、かつ/または界面活性剤を含まず、かつ/またはタンパク質もアルブミンも含まない。いくつかの態様において、皮膚悪性腫瘍は皮膚癌である。いくつかの態様において、皮膚癌は黒色腫、基底細胞癌、扁平上皮癌、および/またはカポジ肉腫である。いくつかの態様において、皮膚悪性腫瘍は皮膚転移である。いくつかの態様において、皮膚転移は、肺癌、乳癌、結腸癌、口腔癌、卵巣癌、腎臓癌、食道癌、胃癌、および/もしくは肝臓癌;ならびに/またはカポジ肉腫(エイズ関連カポジ肉腫を含む)に由来する。さらに他の態様において、治療法はさらなる皮膚指向療法を含まない。
【0016】
本発明のもう1つの局面において、対象の皮膚悪性腫瘍中へのタキサンナノ粒子の浸透を増強する方法であって、連続疎水性担体、1つまたは複数の揮発性シリコーン油、および複数のタキサンナノ粒子を含む疎水性組成物を患部に局所適用する段階を含む、方法を開示する。いくつかの態様において、タキサンナノ粒子は組成物内で懸濁されている。他の態様において、タキサンナノ粒子は、0.1ミクロン~1.5ミクロンの平均粒径(個数基準)を有する。様々な態様において、タキサンナノ粒子は、パクリタキセルナノ粒子、ドセタキセルナノ粒子、もしくはカバジタキセルナノ粒子、またはそのようなナノ粒子の任意の組み合わせである。いくつかの態様において、タキサンナノ粒子はパクリタキセルナノ粒子である。いくつかの態様において、パクリタキセルナノ粒子は、少なくとも18m2/g、または18m2/g~40m2/gの比表面積(SSA)を有する。いくつかの態様において、タキサンナノ粒子またはパクリタキセルナノ粒子の濃度は、約0.15~約2重量%、または0.1~5重量%である。いくつかの態様において、組成物は無水である。いくつかの態様において、組成物は疎水性組成物であり、疎水性担体を含むことができる。さらに他の態様において、疎水性担体は不揮発性および/または非極性である。様々な態様において、疎水性担体は、ワセリン、鉱油、もしくはパラフィンワックス、またはそれらの混合物であり得る炭化水素を含む。いくつかの態様において、鉱油は重鉱油である。いくつかの態様において、疎水性担体は組成物の50重量%を上回る。疎水性組成物は、さらに1つまたは複数の揮発性シリコーン油を含み得る。いくつかの態様において、揮発性シリコーン油は、組成物の5~24重量%の濃度で、かつシクロメチコンであり得る。いくつかの態様において、シクロメチコンはシクロペンタシロキサンである。様々な態様において、組成物は半固体組成物であり、かつ軟膏であり得、かつT-Eスピンドルを備えヘリパスをオンにしたヘリパススタンド上のブルックフィールドRV粘度計により、10RPM、室温で45秒間測定した、25,000cps~500,000cpsの粘度を有し得る。様々な態様において、組成物は揮発性C1~C4脂肪族アルコールもしくはC1~C5脂肪族アルコールを含まず、かつ/またはさらなる浸透増強剤を含まず、かつ/またはさらなる揮発性溶媒を含まず、かつ/または界面活性剤を含まず、かつ/またはタンパク質もアルブミンも含まない。いくつかの態様において、皮膚悪性腫瘍は皮膚癌である。いくつかの態様において、皮膚癌は黒色腫、基底細胞癌、扁平上皮癌、および/またはカポジ肉腫である。いくつかの態様において、皮膚悪性腫瘍は皮膚転移である。いくつかの態様において、皮膚転移は、肺癌、乳癌、結腸癌、口腔癌、卵巣癌、腎臓癌、食道癌、胃癌、および/もしくは肝臓癌;ならびに/またはカポジ肉腫(エイズ関連カポジ肉腫を含む)に由来する。いくつかの態様において、疎水性組成物から皮膚悪性腫瘍中へのタキサンナノ粒子の浸透は、複数のタキサンナノ粒子を含みかつ1つまたは複数の揮発性シリコーン油を含まない疎水性組成物の局所適用から皮膚悪性腫瘍中へのタキサンナノ粒子の浸透よりも高い。
【0017】
本発明のもう1つの態様において、対象の皮膚悪性腫瘍中へのタキサンナノ粒子の浸透を増強する方法であって、複数のタキサンナノ粒子を含む疎水性組成物を患部に局所適用する段階を含み、ここで、疎水性組成物から皮膚悪性腫瘍中へのタキサンナノ粒子の浸透が、複数のタキサンナノ粒子を含む水性組成物の局所適用から皮膚悪性腫瘍中へのタキサンナノ粒子の浸透よりも高い、方法が開示される。いくつかの態様において、タキサンナノ粒子は、0.1ミクロン~1.5ミクロンの平均粒径(個数基準)を有する。いくつかの態様において、タキサンナノ粒子は、パクリタキセルナノ粒子、ドセタキセルナノ粒子、もしくはカバジタキセルナノ粒子、またはそのようなナノ粒子の任意の組み合わせである。いくつかの態様において、疎水性組成物は疎水性担体をさらに含む。
【0018】
参照により本明細書に組み入れられる国際公開公報第2017/049083号(PCT出願/US2016/052133)に開示されているとおり、25重量%未満の濃度の揮発性シリコーン油を無水疎水性担体との組み合わせで有する、本発明の疎水性組成物は、疎水性担体だけからのタキサンナノ粒子の皮膚浸透に比べて、タキサンナノ粒子の高い皮膚浸透(すなわち、皮膚の表皮および真皮部分中への浸透)を示すことが判明した。驚くことに、少量の揮発性シリコーン油(25重量%未満)を除いて、疎水性組成物に他の皮膚浸透増強剤を加えても、組成物の皮膚浸透にほとんど、またはまったく効果がないことも見出された。したがって、本発明の組成物は、これらのさらなる皮膚浸透増強剤(例えば、界面活性剤、揮発性溶媒、アルコール、C1~C4脂肪族アルコールまたはC1~C5脂肪族アルコール)なしでもよく(含まなくてもよく)、これは本発明の組成物を皮膚に適用する際に、皮膚刺激を低減するのに役立ち得る。さらに驚くことに、浸透の増強は、低濃度のシクロメチコン、すなわち25重量%未満で達成された。加えて、タキサンナノ粒子は、投与後の最初にこれらの組成物により経皮送達されず、これは、皮膚(表皮および真皮)を処置する際に経皮送達(全身吸収)は望ましくないため、有利な特徴である。さらに、本発明の組成物からのタキサンナノ粒子の皮膚浸透(すなわち、皮膚の真皮または表皮部分中への浸透)は、水性組成物は皮膚浸透増強剤を含んでいたにもかかわらず、水性組成物からのタキサンナノ粒子の皮膚浸透よりもはるかに優れていた。加えて、本発明の疎水性組成物中で、タキサンナノ粒子は安定であり、経時的に結晶が成長しないことが判明した。
【0019】
タキサン、例えば、パクリタキセルのナノ粒子、および疎水性担体と組み合わせての揮発性シリコーン油を含む、疎水性組成物は、前述のこれらの組成物の皮膚の表皮および真皮部分中への増強された浸透特性ゆえに、皮膚癌および皮膚転移を含む皮膚悪性腫瘍の局所処置に特に適している。疎水性担体は、その中で懸濁されたナノ粒子を有する組成物の連続相であり得る。
【0020】
本発明の文脈において、以下の態様1~71も同様に開示する:
態様1は、処置を必要とする対象における皮膚悪性腫瘍の処置法であって、複数のタキサンナノ粒子を含む組成物を該対象の患部に局所投与する段階を含む、方法である。
態様2は、タキサンナノ粒子が前記組成物内で懸濁されている、態様1の方法である。
態様3は、タキサンナノ粒子が0.1ミクロン~1.5ミクロンの平均粒径(個数基準)を有する、態様1~2のいずれか一つの方法である。
態様4は、タキサンナノ粒子がパクリタキセルナノ粒子、ドセタキセルナノ粒子、またはカバジタキセルナノ粒子である、態様1~3のいずれか一つの方法である。
態様5は、タキサンナノ粒子がパクリタキセルナノ粒子である、態様4の方法である。
態様6は、パクリタキセルナノ粒子が少なくとも18m2/gの比表面積(SSA)を有する、態様5の方法である。
態様7は、パクリタキセルナノ粒子が18m2/g~40m2/gの比表面積(SSA)を有する、態様6の方法である。
態様8は、タキサンナノ粒子の濃度が皮膚悪性腫瘍の治療的改善を提供するのに有効な濃度である、態様1~7のいずれか一つの方法である。
態様9は、パクリタキセルナノ粒子の濃度が約0.15~約2重量%、または0.1~5重量%である、態様8の方法である。
態様10は、前記組成物が無水である、態様1~9のいずれか一つの方法である。
態様11は、前記組成物が疎水性組成物である、態様1~10のいずれか一つの方法である。
態様12は、疎水性組成物が疎水性担体を含む、態様11の方法である。
態様13は、疎水性担体が不揮発性である、態様12の方法である。
態様14は、疎水性担体が非極性である、態様12~13のいずれか一つの方法である。
態様15は、疎水性担体が炭化水素を含む、態様12~14のいずれか一つの方法である。
態様16は、炭化水素がワセリン、鉱油、もしくはパラフィンワックス、またはそれらの混合物である、態様15の方法である。
態様17は、鉱油が重鉱油である、態様16の方法である。
態様18は、疎水性担体が前記組成物の50重量%を上回る、態様12~17のいずれか一つの方法である。
態様19は、疎水性組成物が1つまたは複数の揮発性シリコーン油を含む、態様12~18のいずれか一つの方法である。
態様20は、1つまたは複数の揮発性シリコーン油の濃度が前記組成物の5~24重量%である、態様19の方法である。
態様21は、揮発性シリコーン油がシクロメチコンである、態様20の方法である。
態様22は、シクロメチコンがシクロペンタシロキサンである、態様21の方法である。
態様23は、前記組成物が半固体組成物である、態様1~22のいずれか一つの方法である。
態様24は、半固体組成物が軟膏である、態様23の方法である。
態様25は、前記組成物が揮発性C1~C4脂肪族アルコールを含まない、態様1~24のいずれか一つの方法である。
態様26は、前記組成物がさらなる浸透増強剤を含まない、態様1~25のいずれか一つの方法である。
態様27は、前記組成物がさらなる揮発性溶媒を含まない、態様1~26のいずれか一つの方法である。
態様28は、前記組成物が界面活性剤を含まない、態様1~27のいずれか一つの方法である。
態様29は、前記組成物がタンパク質もアルブミンも含まない、態様1~28のいずれか一つの方法である。
態様30は、皮膚悪性腫瘍が皮膚癌である、態様1~29のいずれか一つの方法である。
態様31は、皮膚癌が黒色腫、基底細胞癌、扁平上皮癌、またはカポジ肉腫である、態様30の方法である。
態様32は、皮膚悪性腫瘍が皮膚転移である、態様1~29のいずれか一つの方法である。
態様33は、皮膚転移が、肺癌、乳癌、結腸癌、口腔癌、卵巣癌、腎臓癌、食道癌、胃癌、肝臓癌、および/またはカポジ肉腫に由来する、態様32の方法である。
態様34は、さらなる皮膚指向療法を含まない、態様1~33のいずれか一つの方法である。
態様35は、対象の皮膚悪性腫瘍中へのタキサンナノ粒子の浸透を増強する方法であって、連続疎水性担体、1つまたは複数の揮発性シリコーン油、および複数のタキサンナノ粒子を含む疎水性組成物を患部に局所適用する段階を含む、方法である。
態様36は、タキサンナノ粒子が疎水性組成物内で懸濁されている、態様35の方法である。
態様37は、タキサンナノ粒子が0.1ミクロン~1.5ミクロンの平均粒径(個数基準)を有する、態様35~36のいずれか一つの方法である。
態様38は、タキサンナノ粒子がパクリタキセルナノ粒子、ドセタキセルナノ粒子、またはカバジタキセルナノ粒子である、態様35~37のいずれか一つの方法である。
態様39は、タキサンナノ粒子がパクリタキセルナノ粒子である、態様38の方法である。
態様40は、パクリタキセルナノ粒子が少なくとも18m2/gの比表面積(SSA)を有する、態様39の方法である。
態様41は、パクリタキセルナノ粒子が18m2/g~40m2/gの比表面積(SSA)を有する、態様40の方法である。
態様42は、パクリタキセルナノ粒子の濃度が約0.15~約2重量%、または0.1~5重量%である、態様39~42のいずれか一つの方法である。
態様43は、前記組成物が無水である、態様35~42のいずれか一つの方法である。
態様44は、疎水性担体が不揮発性である、態様35~43のいずれか一つの方法である。
態様45は、疎水性担体が非極性である、態様35~44のいずれか一つの方法である。
態様46は、疎水性担体が炭化水素を含む、態様35~45のいずれか一つの方法である。
態様47は、炭化水素がワセリン、鉱油、もしくはパラフィンワックス、またはそれらの混合物である、態様46の方法である。
態様48は、鉱油が重鉱油である、態様47の方法である。
態様49は、疎水性担体が前記組成物の50重量%を上回る、態様35~48のいずれか一つの方法である。
態様50は、1つまたは複数の揮発性シリコーン油の濃度が前記組成物の5~24重量%である、態様35~49のいずれか一つの方法である。
態様51は、揮発性シリコーン油がシクロメチコンである、態様50の方法である。
態様52は、シクロメチコンがシクロペンタシロキサンである、態様51の方法である。
態様53は、前記組成物が半固体組成物である、態様35~52のいずれか一つの方法である。
態様54は、半固体組成物が軟膏である、態様53の方法である。
態様55は、前記組成物の粘度が、T-Eスピンドルを備えヘリパスをオンにしたヘリパススタンド上のブルックフィールドRV粘度計により、10RPM、室温で45秒間測定して、25,000cps~500,000cpsである、態様53~54のいずれか一つの方法である。
態様56は、前記組成物が揮発性C1~C4脂肪族アルコールを含まない、態様35~55のいずれか一つの方法である。
態様57は、前記組成物がさらなる浸透増強剤を含まない、態様35~56のいずれか一つの方法である。
態様58は、前記組成物がさらなる揮発性溶媒を含まない、態様35~57のいずれか一つの方法である。
態様59は、前記組成物が界面活性剤を含まない、態様35~58のいずれか一つの方法である。
態様60は、前記組成物がタンパク質もアルブミンも含まない、態様35~59のいずれか一つの方法である。
態様61は、皮膚悪性腫瘍が皮膚癌である、態様35~60のいずれか一つの方法である。
態様62は、皮膚癌が黒色腫、基底細胞癌、扁平上皮癌、またはカポジ肉腫である、態様61の方法である。
態様63は、皮膚悪性腫瘍が皮膚転移である、態様35~60のいずれか一つの方法である。
態様64は、皮膚転移が、肺癌、乳癌、結腸癌、口腔癌、卵巣癌、腎臓癌、食道癌、胃癌、肝臓癌、および/またはカポジ肉腫に由来する、態様63の方法である。
態様65は、疎水性組成物から皮膚悪性腫瘍中へのタキサンナノ粒子の浸透が、複数のタキサンナノ粒子を含みかつ1つまたは複数の揮発性シリコーン油を含まない疎水性組成物の局所適用から皮膚悪性腫瘍中へのタキサンナノ粒子の浸透よりも高い、態様35~64のいずれか一つの方法である。
態様66は、対象の皮膚悪性腫瘍中へのタキサンナノ粒子の浸透を増強する方法であって、複数のタキサンナノ粒子を含む疎水性組成物を患部に局所適用する段階を含み、ここで、疎水性組成物から皮膚悪性腫瘍中へのタキサンナノ粒子の浸透が、複数のタキサンナノ粒子を含む水性組成物の局所適用から皮膚悪性腫瘍中へのタキサンナノ粒子の浸透よりも高い、方法である。
態様67は、タキサンナノ粒子が0.1ミクロン~1.5ミクロンの平均粒径(個数基準)を有する、態様66の方法である。
態様68は、タキサンナノ粒子がパクリタキセルナノ粒子、ドセタキセルナノ粒子、またはカバジタキセルナノ粒子である、態様66~67のいずれか一つの方法である。
態様69は、疎水性組成物が疎水性担体をさらに含む、態様66~68のいずれか一つの方法である。
態様70は、皮膚悪性腫瘍が皮膚癌または皮膚転移である、態様66~69のいずれか一つの方法である。
態様71は、疎水性組成物が、その中で懸濁された複数のタキサンナノ粒子を有する連続疎水性相を含む、態様66~70のいずれか一つの方法である。
【0021】
タキサン粒子に関して本明細書において用いられる、「ナノ粒子」および「ナノ微粒子」なる用語は、0.01ミクロン~1.5ミクロン(10nm~1500nm)または好ましくは0.1ミクロン~1.5ミクロン(100nm~1500nm)である、タキサン粒子の平均粒径(「数」と示す、数加重特異的分布に基づく)を意味する。
【0022】
本明細書において用いられる「水溶性」なる用語は、室温で10mg/mLよりも大きい水中での溶解性を有する化合物を記載する。
【0023】
本明細書において用いられる「水難溶性」なる用語は、室温で10mg/mL以下の水中での溶解性を有する化合物を記載する。
【0024】
本明細書において用いられる「疎水性」なる用語は、室温で10mg/mL以下の水中での溶解性を有する化合物、組成物、または担体を記載する。
【0025】
本明細書において用いられる「揮発性」なる用語は、室温で10Pa以上の蒸気圧を有する化合物、組成物、または担体を記載する。
【0026】
本明細書において用いられる「不揮発性」なる用語は、室温で10Pa未満の蒸気圧を有する化合物、組成物、または担体を記載する。
【0027】
本発明の組成物または担体に関して本明細書において用いられる「無水」なる用語は、組成物または担体中に3重量%未満、好ましくは2重量%未満、より好ましくは1重量%未満、または最も好ましくは0重量%の水が存在することを意味する。これは存在している少量の水(例えば、組成物または担体の任意の成分中に本質的に含まれる水、大気から濃縮された水など)に相当しうる。
【0028】
本明細書において用いられる「皮膚」なる用語は、表皮および/または真皮を意味する。
【0029】
本明細書において用いられる「皮膚悪性腫瘍」なる用語は、皮膚癌および皮膚転移を含む。
【0030】
皮膚悪性腫瘍の「患部」は、皮膚悪性腫瘍病変(腫瘍)が皮膚の最も外側の表面または皮膚の表面(上皮/真皮の被覆)の真下に目に見えて存在する、皮膚の少なくとも一部を含み得、かつ視覚的に検出不可能な前臨床病変を含む可能性が高い、皮膚悪性腫瘍の近くの皮膚の領域を含み得る。
【0031】
本明細書において用いられる「皮膚転移」、「皮膚転移性病変」、または「皮膚転移病変」、「皮膚転移性疾患」なる用語は、身体の別の場所における癌腫瘍の一次成長に起因する二次増殖(腫瘍/病変)としての皮膚における悪性腫瘍の徴候を意味する。原発腫瘍からの伝播は、リンパまたは血液循環系を介して、または他の手段によるものであり得る。
【0032】
本明細書において用いられる「皮膚指向療法」なる用語は、電気化学療法(ECT)、光線力学的療法(PDT)、放射線療法(RT)、病変内局注療法(ILT)、または局所療法を意味する。
【0033】
本明細書において用いられる「対象」または「患者」なる用語は脊椎動物を意味する。いくつかの態様において、脊椎動物は哺乳動物であり得る。いくつかの態様において、哺乳動物は、ヒトを含む霊長類であり得る。
【0034】
本明細書において用いられる「室温」(RT)なる用語は、20~25℃を意味する。
【0035】
本明細書において用いられる「浸透増強剤」または「皮膚浸透増強剤」なる用語は、皮膚(表皮および真皮)中への薬物吸収を促進する化合物または材料または物質を意味する。
【0036】
本明細書において用いられる「界面活性剤」または「表面活性剤」なる用語は、水の表面張力を低下させる、または2つの非混和性物質間の界面張力を低減させる能力を示す、化合物または材料または物質を意味する。
【0037】
特に記載がないかぎり、本明細書において表すパーセント値は重量%であり、全組成物の重量に対するものである。
【0038】
「約」または「およそ」なる用語は、当業者によって理解されるとおり、近いと定義される。1つの非限定的態様において、この用語は10%以内、好ましくは5%以内、より好ましくは1%以内、および最も好ましくは0.5%以内であると定義される。
【0039】
本出願のために、1つまたは複数の小数位を有する数値は、標準の丸め指針を用いて、すなわち、丸める数が5、6、7、8、または9であれば切り上げ;かつ丸める数が0、1、2、3、または4であれば切り捨てて、最も近い整数に丸めることができる。例えば、3.7は4に丸めることができる。
【0040】
「含む」(ならびに「含み)」および「含んで」などの、含むの任意の形態)、「有する」(ならびに「有し」および「有して」などの、有するの任意の形態)、「含有する」(ならびに「含有し」および「含有して」などの、含有するの任意の形態)、または「包含する」(ならびに「包含し」および「包含して」などの、包含するの任意の形態)なる用語は、包括的または制限なしで、さらなる、挙げられていない要素または方法段階を除外しない。
【0041】
「ある」または「1つの」なる用語の使用は、「含む」、「有する」、「含有する」、または「包含する」なる用語(またはこれらの用語の任意の変形)と共に用いられる場合、「1つ」を意味し得るが、「1つまたは複数」、「少なくとも1つ」、および「1つまたは1つを上回る」の意味とも一致する。
【0042】
組成物およびそれらの使用法は、本明細書の全体を通して開示される任意の成分または段階を「含む」、それら「から本質的になる」、またはそれら「からなる」ことができる。「から本質的になる」なる語句に関して、本発明の組成物の基本的かつ新規特性は、皮膚悪性腫瘍を局所的に処置するそれらの能力である。本発明の疎水性組成物に関して、基本的かつ新規特性には、皮膚悪性腫瘍に対する能力、ならびにナノ粒子を皮膚の表皮および真皮層中により効果的に浸透させ、経皮的には限られた浸透から浸透しない能力が含まれる。これは、C1~C4脂肪族アルコールまたはC1~C5脂肪族アルコール、界面活性剤、およびさらなる皮膚浸透増強剤ならびに揮発性シリコーン油(例えば、シクロメチコンもしくはシクロペンタシロキサン、またはその組み合わせ)以外のさらなる揮発性溶媒を使用せずに達成することができる。
【0043】
「経皮的浸透」なる語句を修飾する場合の「限られた」、「低い」、または「最小限の」とは、組成物をヒト死体皮膚に適用した場合に、インビトロでのフランツ拡散セルシステムにより判定して、0.01μg/cm2未満の薬物ナノ粒子がヒト死体皮膚を通して浸透することを意味する。
【0044】
本明細書において論じる任意の態様は、本発明の任意の方法または組成物に関して実行し得ることが企図され、逆もまた同様である。さらに、本発明の組成物は、本発明の方法を達成するために用いることができる。
【0045】
本発明の他の目的、特徴、および利点は、以下の詳細な説明を読めば明らかになるであろう。しかし、詳細な説明および具体例は、本発明の具体的態様を示しているが、当業者であれば、この詳細な説明から本発明の精神および範囲内の様々な変更および改変が明らかになると思われるため、これらは例示のために提供するにすぎないことが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1図1は、製剤F1~F7について、インビトロで表皮中に送達されたパクリタキセルの濃度(μg/cm2)をグラフで示す。
図2図2は、製剤F6*(反復分析)およびF8~F13について、インビトロで表皮中に送達されたパクリタキセルの濃度(μg/cm2)をグラフで示す。
図3図3は、製剤F1~F7について、インビトロで真皮中に送達されたパクリタキセルの濃度(μg/cm2)をグラフで示す。
図4図4は、製剤F6*(反復分析)およびF8~F13について、インビトロで真皮中に送達されたパクリタキセルの濃度(μg/cm2)をグラフで示す。
図5図5は、基準線(第1日)のステージ4乳癌を有する女性の胸部の皮膚転移病変の写真である。
図6図6は、局所処置後第8日のステージ4乳癌を有する女性の胸部の皮膚転移病変の写真である。
図7図7は、局所処置後第15日のステージ4乳癌を有する女性の胸部の皮膚転移病変の写真である。
図8図8は、局所処置後第29日のステージ4乳癌を有する女性の胸部の皮膚転移病変の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
発明の詳細な説明
いくつかの態様において、本発明は、タキサンを含む組成物を局所的に患部に局所適用すること(局所療法)による、患者の皮膚癌および皮膚転移を含む皮膚悪性腫瘍の処置法に関する。いくつかの態様において、タキサンはパクリタキセルである。他の態様において、タキサンはドセタキセルまたはカバジタキセルである。さらなる態様において、タキサンの組み合わせを用いることができる(例えば、パクリタキセルおよびドセタキセル、またはパクリタキセルおよびカバジタキセル、またはドセタキセルおよびカバジタキセル、またはパクリタキセル、ドセタキセル、およびカバジタキセル)。いくつかの態様において、組成物は担体を含む。いくつかの態様において、担体は無水および/または疎水性である。他の局面において、担体は水性である。いくつかの態様において、タキサンは、タキサンの複数のナノ粒子である。他の態様において、タキサンを可溶化されている。本発明の方法において使用するのに適した組成物は、国際公開公報第2017/049083号(出願番号PCT/US2016/052133)に開示され、参照により本明細書に組み入れられる。好ましい態様において、組成物は、連続疎水性担体、1つまたは複数の揮発性シリコーン油、および複数のタキサンナノ粒子を含む疎水性組成物であり、ここでタキサンナノ粒子は組成物中で懸濁されており、かつタキサンナノ粒子の平均粒径(個数基準)は0.1ミクロン~1.5ミクロンである。いくつかの態様において、1つまたは複数の揮発性シリコーン油の濃度は5~24重量%である。いくつかの態様において、組成物は揮発性C1~C4脂肪族アルコールまたはC1~C5脂肪族アルコールを含まない。いくつかの態様において、タキサンナノ粒子の濃度は、皮膚悪性腫瘍の治療的改善を提供するのに有効な濃度である。いくつかの態様において、タキサンナノ粒子の濃度は、約0.1~約2重量%、または約0.15~約2重量%、または0.1~5重量%の濃度である。いくつかの態様において、この方法は、電気化学療法(ECT)、光線力学的療法(PDT)、放射線療法(RT)、または病変内局注療法(ILT)などのさらなる皮膚指向療法を含まない。
【0048】
いくつかの態様において、皮膚転移は以下の癌の1つまたは複数に由来する:乳房、肺、鼻腔、喉頭、口腔、結腸直腸、胃、卵巣、精巣、膀胱、前立腺、子宮頸部、膣、甲状腺、子宮内膜、腎臓、食道、膵臓、肝臓、黒色腫、およびカポジ肉腫(エイズ関連カポジ肉腫を含む)。いくつかの態様において、皮膚癌は黒色腫、基底細胞癌、および/または扁平上皮癌である。
【0049】
I. 組成物
本発明の1つの局面において、本発明の組成物は疎水性であり、かつ連続疎水性担体、1つまたは複数の揮発性シリコーン油(シクロメチコンなどの)、および複数のタキサンナノ粒子を含む。組成物は、疎水性担体および揮発性シリコーン油の混合物中の、複数のタキサンナノ粒子の懸濁液であり得る。タキサンナノ粒子は、組成物中に完全に分散してもよく、または部分的に分散し、部分的に溶解してもよい。様々な態様において、タキサンナノ粒子は組成物中に完全に溶解することはない。疎水性組成物は無水であり得る。疎水性組成物は、組成物中の疎水性成分の合計量が組成物中の非疎水性成分の合計量よりも多い組成物である。疎水性担体は疎水性組成物の連続相であり得る。したがって、本発明の組成物は、少なくとも2つの相、すなわち連続疎水性担体相および懸濁したタキサンナノ粒子相を含み得る。揮発性シリコーン油は連続相中で可溶化および/または分散されていてもよい。
【0050】
驚くことに、低濃度、すなわち25重量%未満の揮発性シリコーン油を、連続、無水疎水性担体との組み合わせで含む、本発明の疎水性組成物は、疎水性担体だけからのタキサンナノ粒子の皮膚浸透に比べて、タキサンナノ粒子の高い皮膚浸透(すなわち、皮膚の表皮および/または真皮部分中への浸透)を示した。事実、またさらに驚くことに、他の皮膚浸透増強剤を加えても、これらの組成物の皮膚浸透にほとんど、またはまったく効果がなかった。しかし、特に、タキサンナノ粒子は皮膚を通して浸透(すなわち、経皮浸透)しないか、または無視できる量、すなわち0.01μg/cm2未満が皮膚を通して経皮的に浸透した。さらに、無水疎水性組成物からのタキサンナノ粒子の皮膚浸透(すなわち、表皮または真皮浸透)は、水性組成物が皮膚浸透増強剤を含んでいたとしても、水性組成物からのタキサンナノ粒子の皮膚浸透よりはるかにすぐれていた。加えて、またこれも驚くことに、25%未満の揮発性シリコーン油を、疎水性担体との組み合わせで含む、本発明の疎水性組成物は、皮膚浸透の増強を提供し、それにより局所適用した場合に低い皮膚刺激性を有し得る最も費用効率が高く、単純化した組成物を可能にするために、アルコール、さらなる揮発性溶媒、さらなる浸透増強剤、または界面活性剤を含む必要はない。しかし、望まれる場合には、本発明の組成物中にそのような構成要素が含まれてもよい。いくつかの態様において、疎水性組成物は、さらなる浸透増強剤なしである/含まない。いくつかの態様において、疎水性組成物は、ラウロカプラムなしである/含まない。いくつかの態様において、疎水性組成物は、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(DGME)なしである/含まない。いくつかの態様において、疎水性組成物は、ミリスチン酸イソプロピルなしである/含まない。他の態様において、疎水性組成物は、アルファトコフェロールなしである/含まない。他の態様において、疎水性組成物は、さらなる揮発性溶媒または化合物なしである/含まない。いくつかの態様において、疎水性組成物は、いかなるアルコールまたはC1~C4脂肪族アルコールもなしである/含まない。いくつかの態様において、疎水性組成物は、アルコールまたはC1~C5脂肪族アルコールなしである/含まない。他の態様において、疎水性組成物は、界面活性剤なしである/含まない。他の態様において、疎水性組成物は、ポリマー/コポリマー(または生物分解性ポリマー/コポリマー)なしである/含まない。他の態様において、疎水性組成物は、ポロキサマー、スチレン-イソブチレン-スチレン(SIBS)、ポリ酸無水物コポリマー、ポリカプロラクトン、ポリエチレングリコール、ポリ(ビス(P-カルボキシフェノキシ)プロパン-セバシン酸、および/またはポリ(D,L乳酸-グリコール酸コポリマー(PLGA)なしである/含まない。様々な態様において、揮発性シリコーン油はシクロメチコンである。他の態様において、シクロメチコンはシクロペンタシロキサンである。いくつかの態様において、疎水性組成物は半固体組成物である。他の態様において、疎水性組成物は軟膏である。いくつかの態様において、疎水性組成物は噴霧剤ではなく、噴霧可能ではない。
【0051】
いくつかの態様において、疎水性組成物は、軟膏を含む半固体組成物であり、かつSC4-14スピンドルおよび6Rチャンバーを備えた少量試料アダプターを用い、Brookfield RV粘度計により、5rpm、平衡化時間2分、室温で測定して、12,500cps~247,500cps、または25,000cps~150,000cpsの粘度を有する。疎水性、半固体組成物の粘度測定を実施するための代替法は、T-Eスピンドルを備えヘリパスをオンにしたヘリパススタンド上のBrookfield RV粘度計を、10RPM、室温で45秒間用いることである。いくつかの態様において、疎水性組成物は、軟膏を含む半固体組成物であり、かつT-Eスピンドルを備えヘリパスをオンにしたヘリパススタンド上のBrookfield RV粘度計を、10RPM、室温で45秒間用いて、25,000cps~500,000cps、または25,000cps~400,000cps、または25,000cps~350,000cps、または25,000cps~300,000cps、または50,000cps~500,000cps、または50,000cps~400,000cps、または50,000cps~350,000cps、または50,000cps~300,000cps、または75,000cps~500,000cps、または75,000cps~400,000cps、または75,000cps~350,000cps、または75,000cps~300,000cps、または100,000cps~500,000cps、または100,000cps~400,000cps、または100,000cps~350,000cps、または100,000cps~300,000cpsの粘度を有する。
【0052】
もう1つの局面において、本発明は、担体中のタキサンナノ粒子の結晶成長を阻害する組成物に関する。いくつかの態様において、担体中のタキサンナノ粒子の結晶成長の阻害は、疎水性担体中のナノ粒子の包含によって達成される。いくつかの態様において、疎水性担体は炭化水素を含む。いくつかの態様において、疎水性担体はワセリン、鉱油、および/またはパラフィンを含む。いくつかの態様において、鉱油は重鉱油である。他の態様において、疎水性担体は1つまたは複数の揮発性シリコーン油をさらに含む。さらに他の態様において、揮発性シリコーン油はシクロメチコンである。他の態様において、シクロメチコンはシクロペンタシロキサンである。他の態様において、水性担体中のタキサンナノ粒子の結晶成長の阻害は、ポロキサマー407、四級アンモニウム化合物、もしくは架橋アクリル酸ポリマー、またはそれらの混合物を含む水性担体中のナノ粒子の包含によって達成される。
【0053】
本発明の組成物は、薬学的および局所送達に適した様々な形で製剤化することができる。非限定例には、半固体組成物、ローション、液体懸濁液、乳剤、クリーム、ゲル、軟膏、ペースト、エアロゾル噴霧剤、エアロゾルフォーム、非エアロゾル噴霧剤、非エアロゾルフォーム、フィルム、およびシートが含まれる。半固体組成物には、軟膏、ペースト、およびクリームが含まれる。本発明の目的のために、半固体組成物は噴霧可能ではない。組成物はガーゼ、包帯、または他の皮膚ドレッシング材料に含浸させることができる。いくつかの態様において、組成物は半固体組成物である。いくつかの態様において、組成物は軟膏である。他の態様において、組成物ゲルである。さらに他の態様において、組成物は液体懸濁液である。いくつかの態様において、組成物は噴霧剤ではなく、かつ噴霧可能ではない。
【0054】
本発明の組成物は、局所製品に適した任意の包装形状で包装することができる。非限定例には、瓶、ポンプ付きの瓶、トトル(tottle)、チューブ(アルミニウム、プラスティックまたはラミネート加工)、ジャー、非エアロゾルポンプ噴霧器、エアロゾル容器、ポーチ、およびパケットが含まれる。包装は単一用量または多用量投与用に形成することができる。
【0055】
様々な態様において、本発明の組成物は疎水性である。他の態様において、疎水性組成物は無水である。様々な態様において、疎水性担体は非極性および/または不揮発性である。さらに他の態様において、組成物は水性である。他の態様において、本発明の組成物は無菌である。他の態様において、疎水性組成物は非滅菌である。他の態様において、疎水性組成物は低い生物汚染度を有する。様々な態様において、本発明の疎水性組成物は追加の皮膚浸透増強剤を含まない。他の態様において、本発明の疎水性組成物は追加の揮発性溶媒を含まない。さらに他の態様において、本発明の疎水性組成物は界面活性剤を含まない。他の態様において、本発明の疎水性組成物はアルコール、C1~C4脂肪族アルコール、またはC1~C5脂肪族アルコールを含まない。
【0056】
A. タキサンナノ粒子
タキサンは、室温で水に10mg/mL以下の溶解性を有する、水難溶性薬物である。タキサンは化学療法剤として広く用いられている。本明細書において用いられる「タキサン」なる用語は、パクリタキセル(I)、ドセタキセル(II)、カバジタキセル(III)、および/または任意の他のタキサン誘導体を含む。
【0057】
タキサンナノ粒子は、パクリタキセルナノ粒子、ドセタキセルナノ粒子、もしくはカバジタキセルナノ粒子、または他のタキサン誘導体のナノ粒子であり得る。パクリタキセルおよびドセタキセル有効活性成分(API)はPhyton Biotech LLC, Vancouver, Canadaから市販されている。ドセタキセルAPIおよびナノ粒子は、無水、無溶媒として計算して、90%以上、または95%以上、または97.5%以上のドセタキセルを含む。パクリタキセルAPIおよびナノ粒子は、無水、無溶媒として計算して、90%以上、または95%以上、または97%以上のパクリタキセルを含む。パクリタキセルAPIおよびナノ粒子は、半合成化学的プロセスから、または植物細胞培養もしくは抽出などの天然源から調製することができる。パクリタキセルは時に商標タキソールでも呼ばれるが、タキソールは静脈内注入前に適切な非経口液で希釈するための、ポリオキシエチル化ヒマシ油およびエタノール中のパクリタキセルの溶液の商標であるため、これは誤称である。パクリタキセルは水難溶性薬物である。パクリタキセルの水中の溶解度は、実施例1に記載の溶解度法により実験的に判定して0.05ppm未満である。タキサンナノ粒子は結晶形もしくは非晶形または両方の組み合わせであり得る。
【0058】
本発明の様々な態様において、タキサンもしくはパクリタキセルナノ粒子はコーティングなし(ニート)の個々の粒子であり;タキサンもしくはパクリタキセルナノ粒子はいかなる物質にも結合しておらず;タキサンもしくはパクリタキセルナノ粒子の表面上に吸収もしくは吸着された物質はなく;タキサンもしくはパクリタキセルナノ粒子はいかなる物質中にもカプセル化されておらず;タキサンもしくはパクリタキセルナノ粒子はいかなる物質でもコーティングされておらず;タキサンもしくはパクリタキセルナノ粒子はタキサンもしくはパクリタキセルのマイクロエマルジョン、ナノエマルジョン、ミクロスフェア、もしくはリポソームではなく;タキサンもしくはパクリタキセルナノ粒子はモノマー、ポリマー(または生体適合性ポリマー)、タンパク質、界面活性剤、もしくはアルブミンに結合、その中にカプセル化、もしくはそれらでコーティングされておらず;かつ/またはモノマー、ポリマー(または生体適合性ポリマー)、タンパク質、界面活性剤、もしくはアルブミンはタキサンもしくはパクリタキセルナノ粒子の表面上に吸収もしくは吸着されていない。いくつかの態様において、組成物はポリマーまたは生体適合性ポリマーなしである/含まない。いくつかの態様において、組成物はタンパク質なしである/含まない。本発明のいくつかの局面において、組成物はアルブミンなしである/含まない。本発明のいくつかの態様において、組成物はヒアルロン酸なしである/含まない。本発明のいくつかの局面において、組成物はヒアルロン酸およびタキサンの結合体なしである/含まない。本発明のいくつかの局面において、組成物はヒアルロン酸およびパクリタキセルの結合体なしである/含まない。本発明のいくつかの局面において、組成物はポロキサマー、スチレン-イソブチレン-スチレン(SIBS)、ポリ酸無水物コポリマー、ポリカプロラクトン、ポリエチレングリコール、ポリ(ビス(P-カルボキシフェノキシ)プロパン-セバシン酸、および/またはポリ(D,L乳酸-グリコール酸コポリマー(PLGA)なしである/含まない。
【0059】
パクリタキセルナノ粒子、ドセタキセルナノ粒子、またはカバジタキセルナノ粒子を含むタキサンナノ粒子は、0.01ミクロン~1.5ミクロン、または0.01ミクロン~1.2ミクロン、または0.01ミクロン~1ミクロン、または0.01ミクロン~1ミクロン未満、または0.01ミクロン~0.9ミクロン、または0.01ミクロン~0.8ミクロン、または0.01ミクロン~0.7ミクロン、または0.1ミクロン~1.5ミクロン、または0.1ミクロン~1.2ミクロン、または0.1ミクロン~1ミクロン、または0.1ミクロン~1ミクロン未満、または0.1ミクロン~0.9ミクロン、または0.1ミクロン~0.8ミクロン、または0.1~0.7ミクロン、または0.2ミクロン~1.5ミクロン、または0.2ミクロン~1.2ミクロン、または0.2ミクロン~1ミクロン、または0.2ミクロン~1ミクロン未満、または0.2ミクロン~0.9ミクロン、または0.2ミクロン~0.8ミクロン、または0.2ミクロン~0.7ミクロン、または0.3ミクロン~1.5ミクロン、または0.3ミクロン~1.2ミクロン、または0.3ミクロン~1ミクロン、または0.3ミクロン~1ミクロン未満、または0.3ミクロン~0.9ミクロン、または0.3ミクロン~0.8ミクロン、または0.3ミクロン~0.7ミクロン、または0.4ミクロン~1.5ミクロン、または0.4ミクロン~1.2ミクロン、または0.4ミクロン~1ミクロン、または0.4ミクロン~1ミクロン未満、または0.4ミクロン~0.9ミクロン、または0.4ミクロン~0.8ミクロン、または0.4ミクロン~0.7ミクロン、または0.5ミクロン~1.5ミクロン、または0.5ミクロン~1.2ミクロン、または0.5ミクロン~1ミクロン、または0.5ミクロン~1ミクロン未満、または0.5ミクロン~0.9ミクロン、または0.5ミクロン~0.8ミクロン、または0.5ミクロン~0.7ミクロン、または0.6ミクロン~1.5ミクロン、または0.6ミクロン~1.2ミクロン、または0.6ミクロン~1ミクロン、または0.6ミクロン~1ミクロン未満、または0.6ミクロン~0.9ミクロン、または0.6ミクロン~0.8ミクロン、または0.6ミクロン~0.7ミクロンの平均粒径(個数基準)を有し得る。
【0060】
組成物に組み込まれた場合のタキサンの粒径は、粒径分析装置によって判定し、測定値は個数分布に基づく平均直径として表す。適切な粒径分析装置は、フォトゾーン(photozone)または単一粒子光学検知(SPOS)とも呼ばれる、光遮蔽の分析技術を用いるものである。適切な光遮蔽粒径分析装置は、Particle Sizing Systems, Port Richey, Floridaから入手可能なACCUSIZERである。
【0061】
様々な態様において、組成物に組み込まれたタキサンナノ粒子の平均粒径は、組成物を室温で少なくとも1ヶ月間、または少なくとも3ヶ月間、または少なくとも6ヶ月間または少なくとも12ヶ月間保存した場合に、初期平均粒径の20%よりも大きく成長することはない。タキサンナノ粒子の粒径に関して本明細書において用いられる「初期平均粒径」なる用語は、組成物の製造完了(製造日)後45日以内に粒径分析装置によって測定した場合の、組成物に組み込まれたタキサンの平均粒径であり、初期平均粒径は0.1ミクロン~1.5ミクロン(個数基準)または0.01ミクロン~1.5ミクロン(個数基準)である。
【0062】
タキサンのナノ粒子は、当技術分野において公知の様々な粒径減少法および機器を用いて製造することができる。そのような方法には、湿式および乾式製粉、微粒化、粉砕、微粉砕、および超臨界二酸化炭素粒径減少法が含まれるが、それらに限定されない。様々な態様において、タキサンまたはパクリタキセルナノ粒子は、そのすべてが参照により本明細書に組み入れられる米国特許US 5874029、US 5833891、US 6113795、US 7744923、US 8778181、米国公開公報2014/0296140、米国公開公報2016/0354336、米国公開公報2016/0374953、および国際特許出願公開公報WO2016/197091(出願番号PCT/US16/35993)に開示される、超臨界二酸化炭素粒径減少法(「圧縮貧溶媒による析出法」または「PCA」としても公知)によって作製する。
【0063】
超臨界二酸化炭素粒径減少法において、超臨界二酸化炭素(貧溶媒)および溶媒、例えば、アセトンまたはエタノールを用いて、十分に特徴付けられた粒径分布内でコーティングなしのタキサンナノ粒子を生成する。二酸化炭素およびアセトンを処理中に除去し(最大0.5%の残存溶媒が残りうる)、概して約200nm~約800nmの範囲のサイズのタキサンナノ粒子粉末を得る。安定性試験は、粉末が制御された室温(25℃/60%相対湿度)で最大59ヶ月まで、および促進条件下(40℃/75%相対湿度)で最大6ヶ月まで保存した場合に、バイアル剤形で安定であることを示す。
【0064】
様々な超臨界二酸化炭素粒径減少法によって産生したタキサンナノ粒子は、物理的嵌入または粉砕、例えば、湿式もしくは乾式製粉、微粒化、粉砕、微細化、顕微溶液化、または微粉砕を用いる通常の粒径減少法によって産生したタキサンナノ粒子に比べて、特有の物理的特徴を有し得る。その全文が参照により本明細書に組み入れられる米国公開公報2016/0354336および国際特許出願公開公報WO2016/197091に開示されるとおり、そのような特有の特徴には、米国公開公報2016/0354336および国際特許出願公開公報WO2016/197091に記載され、以下に記載する、超臨界二酸化炭素粒径減少法によって産生されるタキサン(パクリタキセルおよびドセタキセル)ナノ粒子の0.05g/cm3~0.15g/cm3の間の容積密度(タッピングなし)および少なくとも18m2/gの比表面積(SSA)が含まれる。この容積密度の範囲は通常の手段によって産生したタキサン粒子の容積密度よりも一般に低く、SSAは通常の手段によって産生したタキサン粒子のSSAよりも一般に高い。これらの特有の特徴は、通常の手段によって産生したタキサン類に比べて、水/メタノール媒質中の溶解率の有意な増大をもたらす。本明細書において用いられる「比表面積(SSA)」は、以下の方法によるブルナウアー-エメット-テラー(「BET」)吸着等温式により測定した、タキサン質量単位あたりのタキサンナノ粒子の全表面積である:分析物の200~300mgの間の既知の質量を30mLの試料チューブに加える。次いで、充填したチューブをPorous Materials Inc. SORPTOMETER(登録商標)、モデルBET-202Aに固定する。次いで、自動試験をBETWIN(登録商標)ソフトウェアパッケージを用いて実施し、続いて各試料の表面積を計算する。容積密度測定は、タキサンナノ粒子をメスシリンダーにタッピングせずに室温で加え、質量および容積を測定し、容積密度を計算することによって実施することができる。
【0065】
米国公開公報2016/0354336および国際特許出願公開公報WO2016/197091に開示されるとおり、5mmのボールサイズを用いるDeco-PBM-V-0.41ボールミル中、室温、600RPMで60分間、パクリタキセルを製粉することにより産生したパクリタキセルナノ粒子について、試験により15.0m2/gのSSAおよび0.31g/cm3の容積密度が示された。同様に米国公開公報2016/0354336および国際特許出願公開公報WO2016/197091に開示される、パクリタキセルナノ粒子の1つのロットは、以下の方法を用いて超臨界二酸化炭素法により産生した場合、37.7m2/gのSSAおよび0.085g/cm3の容積密度を有した:パクリタキセルの65mg/mlの溶液をアセトン中で調製した。BETE MicroWhirl(登録商標)噴霧ノズル(BETE Fog Nozzle, Inc.)および超音波プローブ(Qsonica、モデル番号Q700)を結晶化チャンバー内に約8mm離して設置した。約100nmの孔を有するステンレススチール製メッシュフィルターを結晶化チャンバーに取り付けて、析出したパクリタキセルナノ粒子を回収した。超臨界二酸化炭素を製造機器の結晶化チャンバー内に加え、約38℃、流速24kg/時間でおよそ1200psiとした。超音波プローブを20kHzの周波数で全出力電力の60%に調節した。パクリタキセルを含むアセトン溶液をノズルから流速4.5mL/分で約36時間ポンプにより噴霧した。前述の超臨界二酸化炭素法によって産生したパクリタキセルナノ粒子のさらなるロットは:22.27m2/g、23.90m2/g、26.19m2/g、30.02m2/g、31.16m2/g、31.70m2/g、32.59m2/g、33.82m2/g、35.90m2/g、38.22m2/g、および38.52m2/gのSSA値を有した。
【0066】
米国公開公報2016/0354336および国際特許出願公開公報WO2016/197091に開示されるとおり、5mmのボールサイズを用いるDeco-PBM-V-0.41ボールミル中、室温、600RPMで60分間、ドセタキセルを製粉することにより産生したドセタキセルナノ粒子について、試験により15.2m2/gのSSAおよび0.44g/cm3の容積密度が示された。同様に米国公開公報2016/0354336および国際特許出願公開公報WO2016/197091に開示される、ドセタキセルナノ粒子は、以下の方法を用いて超臨界二酸化炭素法により産生した場合、44.2m2/gのSSAおよび0.079g/cm3の容積密度を有した:ドセタキセルの79.32mg/mlの溶液をエタノール中で調製した。ノズルおよび超音波プローブを加圧可能チャンバー内に約9mm離して設置した。約100nmの孔を有するステンレススチール製メッシュフィルターを加圧可能チャンバーに取り付けて、析出したドセタキセルナノ粒子を回収した。超臨界二酸化炭素を製造機器の加圧可能チャンバー内に加え、約38℃、流速68slpmでおよそ1200psiとした。超音波プローブを20kHzの周波数で全出力電力の60%に調節した。ドセタキセルを含むエタノール溶液をノズルから流速2mL/分で約95分間ポンプにより噴霧した。次いで、混合物をポンプによりステンレススチール製メッシュフィルターを通過させる間に、析出したドセタキセル凝集体および粒子を超臨界二酸化炭素から回収した。ドセタキセルのナノ粒子を含むフィルターを開け、得られた生成物をフィルターから回収した。
【0067】
米国公開公報2016/0354336および国際特許出願公開公報WO2016/197091に開示されるとおり、溶解試験により、米国公開公報2016/0354336および国際特許出願公開公報WO2016/197091に記載の超臨界二酸化炭素法によって作製したパクリタキセルおよびドセタキセルナノ粒子では、5mmのボールサイズを用いるDeco-PBM-V-0.41ボールミルを用いて、室温、600RPMで60分間、パクリタキセルおよびドセタキセルを製粉することにより作製したパクリタキセルおよびドセタキセルナノ粒子に比べて、メタノール/水媒質中の溶解率増大が示された。溶解率を判定するために用いた手段は以下のとおりである。パクリタキセルについて、約50mgの材料を約1.5gの1mmガラスビーズ上に、バイアル中で材料およびビーズを約1時間回転させることにより被覆した。ビーズをステンレススチール製メッシュ容器に移し、37℃、pH7の体積比50/50のメタノール/水媒質を含む溶解浴、および75rpmで作動中のUSP装置II(パドル)に入れた。10、20、30、60、および90分の時点で、5mLの一定量を取り出し、0.22μmフィルターを通してろ過し、UV/VIS分光光度計により227nmで分析した。試料の吸光値を、溶解媒質中で調製した標準溶液の値と比較して、溶解した材料の量を求めた。ドセタキセルについて、約50mgの材料を、37℃、pH7の体積比15/85のメタノール/水媒質を含む溶解浴、および75rpmで作動中のUSP装置II(パドル)に直接入れた。5、15、30、60、120および225分の時点で、5mLの一定量を取り出し、0.22μmフィルターを通してろ過し、UV/VIS分光光度計により232nmで分析した。試料の吸光値を、溶解媒質中で調製した標準溶液の値と比較して、溶解した材料の量を求めた。パクリタキセルについて、超臨界二酸化炭素法により作製したナノ粒子の30分間に溶解した溶解率は47%であったのに対し、製粉により作製したナノ粒子の30分間に溶解した溶解率は32%であった。ドセタキセルについて、超臨界二酸化炭素法により作製したナノ粒子の30分間に溶解した溶解率は27%であったのに対し、製粉により作製したナノ粒子の30分間に溶解した溶解率は9%であった。
【0068】
いくつかの態様において、パクリタキセルナノ粒子は、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、少なくとも23、少なくとも24、少なくとも25、少なくとも26、少なくとも27、少なくとも28、少なくとも29、少なくとも30、少なくとも31、少なくとも32、少なくとも33、少なくとも34、または少なくとも35m2/gのSSAを有する。他の態様において、パクリタキセルナノ粒子は、18m2/g~50m2/g、または20m2/g~50m2/g、または22m2/g~50m2/g、または25m2/g~50m2/g、または30m2/g~50m2/g、または18m2/g~45m2/g、または20m2/g~45m2/g、または22m2/g~45m2/g、または25m2/g~45m2/g、または30m2/g~45m2/g、または18m2/g~40m2/g、または20m2/g~40m2/g、または22m2/g~40m2/g、または25m2/g~40m2/g、または30m2/g~40m2/gのSSAを有する。
【0069】
いくつかの態様において、パクリタキセルナノ粒子は、0.05g/cm3~0.15g/cm3、または0.05g/cm3~0.20g/cm3の容積密度(タッピングなし)を有する。
【0070】
いくつかの態様において、パクリタキセルナノ粒子は、75RPM、37℃、およびpH7で作動中のUSP IIパドル装置中、体積比50%メタノール/50%水の溶液中、30分以下で溶解して少なくとも40重量%の溶解率を有する。
【0071】
いくつかの態様において、ドセタキセルナノ粒子は、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、少なくとも23、少なくとも24、少なくとも25、少なくとも26、少なくとも27、少なくとも28、少なくとも29、少なくとも30、少なくとも31、少なくとも32、少なくとも33、少なくとも34、少なくとも35、少なくとも36、少なくとも37、少なくとも38、少なくとも39、少なくとも40、少なくとも41、または少なくとも42m2/gのSSAを有する。他の態様において、ドセタキセルナノ粒子は、18m2/g~60m2/g、または22m2/g~60m2/g、または25m2/g~60m2/g、または30m2/g~60m2/g、または40m2/g~60m2/g、または18m2/g~50m2/g、または22m2/g~50m2/g、または25m2/g~50m2/g、または30m2/g~50m2/g、または40m2/g~50m2/gのSSAを有する。
【0072】
いくつかの態様において、ドセタキセルナノ粒子は、0.05g/cm3~0.15g/cm3の容積密度(タッピングなし)を有する。
【0073】
いくつかの態様において、ドセタキセルナノ粒子は、75RPM、37℃、およびpH7で作動中のUSP IIパドル装置中、体積比15%メタノール/85%水の溶液中、30分以下で溶解して少なくとも20重量%の溶解率を有する。
【0074】
パクリタキセルナノ粒子結晶は水または生理食塩溶液の懸濁液中で経時的に成長して大きい針状結晶を形成する傾向を有することが判明した。結晶成長試験を行い、結果を以下の実施例2の表2に示す。ナノ粒子結晶は疎水性材料中では成長しないことが判明した。同様に、かつ驚くことに、ナノ粒子結晶は塩化ベンザルコニウム、CARBOPOL ULTREZ 10、またはポロキサマー407の水性溶液中で成長しなかった。
【0075】
B. 疎水性担体
本発明の疎水性担体は、植物、動物、パラフィン系、および/または合成由来原料からの物質を含むことができる。疎水性物質は一般に、水に対する親和性を欠き、水をはじく物質として公知である。疎水性担体は組成物の連続相である。様々な態様において、疎水性担体は非極性および/または不揮発性である。非限定例には、脂肪、バター、グリース、ワックス、溶媒、および油;鉱油;植物油;ワセリン;水不溶性有機エステルおよびトリグリセリド;ならびにフッ化化合物が含まれる。疎水性担体はシリコーン材料も含み得る。シリコーン材料は、ポリジアルキルシロキサン系の化合物と定義され、ポリマー、エラストマー(架橋シリコーン)、および接着剤(分枝シリコーン)が含まれる。シリコーン材料の非限定例には、ジメチコン(ポリジメチルシロキサン)、ジメチコンコポリオール、シクロメチコン、シメチコン、ST-エラストマー10(DOW CORNING)などのシリコーンエラストマー、シリコーン油、シリコーンポリマー、揮発性シリコーン油、およびシリコーンワックスが含まれる。いくつかの態様において、疎水性担体はシリコーン材料を含まない。
【0076】
植物由来材料には、ラッカセイ(ピーナッツ)油、バルサムペルー油、カルナウバロウ、カンデリラロウ、ヒマシ油、硬化ヒマシ油、カカオ脂、ヤシ油、トウモロコシ油、綿実油、ホホバ油、マカダミア種子油、オリーブ油、オレンジ油、オレンジワックス、パーム核油、ナタネ油、ベニバナ油、ゴマ種子油、シアバター、ダイズ油、ヒマワリ種子油、ティーツリー油、植物油、および硬化植物油が含まれるが、それらに限定されない。
【0077】
動物由来材料の非限定例には、蜜蝋(黄蝋および白蝋)、タラ肝油、エミュー油、ラード、ミンク油、サメ肝油、スクアラン、スクアレン、および獣脂が含まれる。パラフィン系材料の非限定例には、イソパラフィン、微結晶ワックス、重鉱油、軽鉱油、オゾケライト、ワセリン、白色ワセリン、およびパラフィンワックスが含まれる。
【0078】
有機エステルおよびトリグリセリドの非限定例には、安息香酸C12-15アルキル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、中鎖トリグリセリド、モノおよびジグリセリド、トリラウリン、ならびにトリヒドロキシステアリンが含まれる。
【0079】
フッ化化合物の非限定例は、Solvay Specialty Polymersから市販されているFOMBLIN(登録商標)HC04などの、パーフルオロポリエーテル(PFPE)である。
【0080】
本発明の疎水性担体は、薬剤等級の疎水性物質を含み得る。本発明の様々な態様において、疎水性担体はワセリン、鉱油、もしくはパラフィン、またはそれらの混合物を含む。いくつかの態様において、鉱油は重鉱油である。
【0081】
いくつかの態様において、組成物中の疎水性担体の濃度は、全組成物重量の10重量%よりも高い。他の態様において、組成物中の疎水性担体の濃度は、全組成物重量の15重量%よりも高い、または20重量%よりも高い、または25重量%よりも高い、または30重量%よりも高い、または35重量%よりも高い、または40重量%よりも高い、または45重量%よりも高い、または50重量%よりも高い、または55重量%よりも高い、または60重量%よりも高い、または65重量%よりも高い、または70重量%よりも高い、または75重量%よりも高い、または80重量%よりも高い、または82重量%よりも高い、または85重量%よりも高い、または87重量%よりも高い、または90重量%よりも高い。他の態様において、組成物中の疎水性担体の濃度は、全組成物重量の10重量%よりも高い~95重量%である。他の態様において、組成物中の疎水性担体の濃度は、全組成物重量の11重量%~95重量%、または12重量%~95重量%、または13重量%~95重量%、または14重量%~95重量%、または15重量%~95重量%、または16重量%~95重量%、または17重量%~95重量%、または18重量%~95重量%、または19重量%~95重量%、または20重量%~95重量%である。
【0082】
(i)ワセリン
ワセリンは、石油から得られる半固体飽和炭化水素の精製混合物で、濃い琥珀色~淡黄色までばらつく。白色ワセリンは完全またはほぼ脱色され、クリーム色~純白までばらつく。ワセリンは異なる融点、粘度、および稠度特性で入手可能である。ワセリンは抗酸化剤などの安定化剤を含んでもよい。ワセリンの薬剤等級にはワセリンUSPおよび白色ワセリンUSPが含まれる。
【0083】
様々なワセリンが商標:ULTIMA、SUPER、SNOW、REGENT、LILY、CREAM、ROYAL、BLOND、およびAMBERとしてPenreco Corporationから市販されている。様々な等級のワセリンも商標:ALBA、SUPER WHITE PROTOPET、SUPER WHITE FONOLINE、WHITE PROTOPET 1S、WHITE PROTOPET 2L、WHITE PROTOPET 3C、WHITE FONOLINE、PERFECTA、YELLOW PROTOPET 2A、YELLOW FONOLINE、PROTOLINE、SONOJELL #4、SONOJELL #9、MINERAL JELLY #10、MINERAL JELLY #14、MINERAL JELLY #17、およびCARNATION TROUGH GREASEとしてSonneborn Corporationから市販されている。ワセリンはSpectrum Chemical Mfg. Corp.からも入手可能である。
【0084】
(ii)鉱油
鉱油は、石油から得られる液体炭化水素の混合物である。鉱油は、軽鉱油、重鉱油、および超重鉱油などの、様々な粘性等級で入手可能である。軽鉱油は、40℃で33.5センチストーク以下の動粘度を有する。重鉱油は、40℃で34.5センチストーク以上の動粘度を有する。鉱油は適切な安定化剤を含んでもよい。鉱油の薬剤等級には、重鉱油である鉱油USP、および軽鉱油である軽鉱油NFが含まれる。鉱油はDRAKEOLなる商標でPenreco Corporationから、ならびにBENOL、BLANDOL、BRITOL、CARNATION、ERVOL、GLORIA、KAYDOL、KLEAROL、PROTOL、およびRUDOLなる商標でSonneborn Corporationから市販されている。鉱油はSpectrum Chemical Mfg. Corp.からも市販されている。
【0085】
(iii)パラフィンワックス
パラフィンワックスは、石油から得られる固体炭化水素の精製混合物である。一酸化炭素および水素からフィッシャー・トロプシュ法によって合成的に誘導してもよく、これらはパラフィン炭化水素の混合物へと触媒的に変換される。パラフィンワックスは抗酸化剤を含んでもよい。パラフィンワックスの薬剤等級には、パラフィンNFおよび合成パラフィンNFが含まれる。パラフィンワックスはSpectrum Chemical Mfg. Corp、Koster Keunen, Inc.およびFrank B. Ross, Inc.から市販されている。
【0086】
C. 揮発性シリコーン油
揮発性シリコーン油は、揮発性シリコーンオイルとしても公知で、環式または直鎖であり得る揮発性液体ポリシロキサンである。これらは室温で液体である。揮発性シリコーン油は疎水性材料である。直鎖揮発性シリコーン油には、ポリジメチルシロキサン、ヘキサメチルジシロキサンおよびオクタメチルトリシロキサンが含まれ、それぞれDOW CORNING Q7-9180 Silicone Fluid 0.65 cStおよびDOW CORNING Q7-9180 Silicone Fluid 1.0 cStなる商標でDow Corningから市販されている。環式揮発性シリコーン油は一般にはシクロメチコンとして公知である。
【0087】
(i)シクロメチコン
シクロメチコンは、式(IV)の反復単位、またはそれらの混合物を含む、完全にメチル化された環式シロキサンである:
(IV) [-(CH3)2SiO-]n
式中、nは3、4、5、6、または7である。シクロメチコンは澄明、無色の揮発性液体シリコーン油である。シクロメチコンは皮膚軟化特性を有し、皮膚上での脂っこい感触を減じることにより油性製品の触感を改善するのに役立つ。薬剤等級のシクロメチコンには、シクロメチコンNFが含まれる。シクロメチコンNFは式(IV)またはそれらの混合物で表され、式中nは4(シクロテトラシロキサン)、5(シクロペンタシロキサン)、または6(シクロヘキサシロキサン)である。シクロペンタシロキサンは、デカメチルシルコペンタシロキサン、シクロメチコンD5、またはシクロメチコン5としても公知で、nが5である(ペンタマー)式(IV)で表されるシクロメチコンであるが、少量(一般には1%未満)の1つまたは複数の他の環式鎖長シクロメチコンを含み得る。シクロペンタシロキサンはシクロメチコンNFとして薬剤等級で入手可能である。シクロメチコンはDOW CORNING ST-Cyclomethicone 5-NF、DOW CORNING ST-Cyclomethicone 56-NF、およびXIAMETER PMX-0245なる商標でDow Corningから市販されている。Spectrum Chemical Mfg. Corp.からも市販されている。シクロペンタシロキサンは25℃で約20~約27Paの蒸気圧を有する。
【0088】
1つの態様において、組成物中のシクロメチコンの濃度は25重量%未満である。もう1つの態様において、組成物中のシクロメチコンは5~24重量%の濃度である。もう1つの態様において、シクロメチコンの濃度は5~20重量%である。もう1つの態様において、シクロメチコンは5~18重量%の濃度である。もう1つの態様において、シクロメチコンの濃度は13重量%である。様々な態様において、シクロメチコンの濃度は全組成物重量の5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5、12、12.5、13、13.5、14、14.5、15、15.5、16、16.5、17、17.5、18、18.5、19、19.5、20、20.5、21、21.5、22、22.5、23、23.5、もしくは24重量%またはその中で誘導可能な任意のパーセンテージであり得る。1つの態様において、シクロメチコンはシクロペンタシロキサンである。
【0089】
D. 水性組成物
本発明の水性組成物は、タキサンナノ粒子および水性担体を含む。水性製剤は水性担体中のタキサンナノ粒子の分散系(懸濁系)である。タキサンナノ粒子は水性担体中に完全に分散、部分的に分散、および部分的に溶解し得るが、完全に溶解することはない。水性組成物は、水が主要な成分である組成物である。水性担体には、単相水溶液、ならびに水中油および油中水乳濁液などの多層水性乳濁液が含まれる。
【0090】
パクリタキセルナノ粒子などの、タキサンナノ粒子結晶は、水中および水性担体中で急速に成長することが観察された。多くの場合、成長は室温でわずか3日、いくつかの場合には24時間で観察された。結晶の多くは針状の形状で、長さが5μmよりも大きかった。実施例2において試験を実施し、結果を表2に示す。驚くことに、タキサンナノ粒子結晶の成長は、処理中にポロキサマー407、四級アンモニウム化合物、または架橋アクリル酸ポリマーを水性担体に加えることにより阻害された。ポロキサマー188を加えても、ナノ粒子結晶の成長を阻害しなかった。
【0091】
タキサンナノ粒子結晶を含む水性担体中の四級アンモニウム化合物、もしくは架橋アクリル酸ポリマー、またはそれらの混合物の存在は経時的なナノ粒子結晶の成長を防止することも観察された。実施例8において試験を実施して、結果を表11に示し、ポロキサマー407、四級アンモニウム化合物、もしくは架橋アクリル酸ポリマー、またはそれらの混合物を含む水性組成物中の水難溶性タキサンナノ粒子(パクリタキセル)の平均粒径は、水性組成物を室温で6ヶ月間保存した場合に、初期平均粒径の20%よりも大きく成長することはないことを明らかにした。いくつかの態様において、水性担体;複数のタキサンナノ粒子;および四級アンモニウム化合物、もしくは架橋アクリル酸ポリマー、またはそれらの混合物を含む水性組成物であって、タキサンナノ粒子の平均粒径が0.1ミクロン~1.5ミクロン(個数基準)または0.01ミクロン~1.5ミクロン(個数基準)であり、かつタキサンナノ粒子の平均粒径は、組成物を室温で少なくとも6ヶ月間保存した場合に、初期平均粒径の20%よりも大きく成長することはない組成物を開示する。他の態様において、組成物はポロキサマー407をさらに含む。
【0092】
本発明の1つの局面において、タキサンナノ粒子、水性担体、およびポロキサマー407、四級アンモニウム化合物、もしくは架橋アクリル酸ポリマー、またはそれらの混合物を含む組成物を開示する。驚くことに、ポロキサマー407、四級アンモニウム化合物、または架橋アクリル酸ポリマーを加えると、水性担体中のタキサンナノ粒子の結晶成長を阻害することが判明した。本発明の水性組成物は、局所、注射用、(IV)注入、または経口液体剤形に適している。1つの態様において、結晶成長を阻害するための添加剤はポロキサマー407である。様々な態様において、四級アンモニウム化合物は結晶成長を阻害するための添加剤であり、塩化ベンザルコニウムまたは塩化ベンゼトニウムである。他の態様において、四級アンモニウム化合物は塩化ベンザルコニウムである。他の態様において、架橋アクリル酸ポリマーは結晶成長を阻害するための添加剤であり、カルボマーである。
【0093】
本発明の1つの局面において、組成物は、(IV)注入を含む注射送達に適した水性担体中にポロキサマー407およびタキサンナノ粒子を含む。様々な態様において、タキサンナノ粒子はドセタキセルナノ粒子、パクリタキセルナノ粒子、またはカバジタキセルナノ粒子である。
【0094】
本発明のもう1つの局面において、組成物は、(IV)注入を含む注射送達に適した水性担体中に四級アンモニウム化合物およびタキサンナノ粒子を含む。様々な態様において、タキサンナノ粒子はドセタキセルナノ粒子、パクリタキセルナノ粒子、またはカバジタキセルナノ粒子である。他の態様において、四級アンモニウム化合物は塩化ベンザルコニウムまたは塩化ベンゼトニウムである。
【0095】
本発明の1つの局面において、水性担体中の結晶性タキサンナノ粒子の分散系の成長を阻害する方法であって、処理中にポロキサマー407、四級アンモニウム化合物、もしくは架橋アクリル酸ポリマー、またはそれらの混合物を水性担体に加える段階を含み、タキサンナノ粒子の平均粒径が0.1ミクロン~1.5ミクロン(個数基準)または0.01ミクロン~1.5ミクロン(個数基準)である、方法を開示する。いくつかの態様において、四級アンモニウム化合物は塩化ベンザルコニウムまたは塩化ベンゼトニウムである。いくつかの態様において、架橋アクリル酸ポリマーはカルボマーである。いくつかの態様において、タキサンナノ粒子はパクリタキセルナノ粒子、ドセタキセルナノ粒子、またはカバジタキセルナノ粒子である。さらに他の態様において、タキサンナノ粒子はパクリタキセルナノ粒子である。
【0096】
(i)ポロキサマー407
ポロキサマー407は、一般式(V)のエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドの固体、親水性、非イオン性、合成ブロックコポリマーである
(V) HO(C2H4O)a(C3H6O)b(C2H4O)aH
式中、aは101であり、かつbは56である。ポロキサマー407は9840~14600の平均分子量を有する。「ポロキサマー」なる用語は、コポリマーの一般名である。ポロキサマーは、様々な物理的形状および様々な平均分子量を有するいくつかの型で入手可能である。それぞれ具体的なポロキサマーの型は、一般名「ポロキサマー」と、それに続く3桁の数字で特定され、その最初の2桁は100をかけるとコポリマーのポリオキシプロピレン部分のおおよその平均分子量に対応し;3桁目は10をかけるとポリオキシエチレン部分の重量パーセンテージに対応する。ポロキサマーは薬剤、化粧品、および工業等級で入手可能である。薬剤等級のポロキサマーは、USP/NFおよび欧州薬局方(PhEur)などの、認められた薬剤一覧に挙げられている。USP/NFおよびPhEurに従い、適切な抗酸化剤を加えてもよい。ポロキサマー407はPLURONIC(登録商標)F127なる商標でBASFから市販されている。ポロキサマー188を水性担体に加えても、タキサンナノ粒子の結晶成長を阻害しなかった。ポロキサマー407の適切な濃度は少なくとも2重量%、または0.1~25重量%、または0.1~20重量%、または0.1~15重量%、または0.1~10重量%、または1~25重量%、または1~20重量%、または1~15重量%、または1~10重量%、または2~25重量%、または2~20重量%、または2~15重量%、または2~10重量%である。
【0097】
(ii)四級アンモニウム化合物
四級アンモニウム化合物(塩を含む)は式(VI)の正に荷電した四置換窒素誘導体である:
ここでR1、R2、R3、およびR4は同じでも、異なっていてもよいが、水素ではあり得ない。X-は塩素イオンなどの典型的アニオンを表す。適切な四級アンモニウム化合物には塩化ベンザルコニウムまたは塩化ベンゼトニウムが含まれる。塩化ベンザルコニウムは100%粉末または50%水溶液で市販されている。四級アンモニウム化合物の他の例は、参照により本明細書に組み入れられるInternational Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook, 12th edition, 2008に開示されている。四級アンモニウム化合物の適切な濃度は少なくとも0.05重量%、または少なくとも0.1重量%、または少なくとも1重量%、または少なくとも2重量%、または0.05~5重量%、または0.1~5重量%、または1~5重量%、または2~5重量%である。
【0098】
(iii)架橋アクリル酸ポリマー
架橋アクリル酸ポリマーは、ポリアルケニルポリエーテルと架橋したアクリル酸の高分子量ホモおよびコポリマーである。適切な架橋アクリル酸ポリマーにはカルボマー(INCI名)、アクリレートコポリマー(INCI名)、アクリレート/C10-30アルキルアクリレートクロスポリマー(INCI名)、アクリレートクロスポリマー-4(INCI名)、およびポリアクリレート-1クロスポリマー(INCI名)が含まれる。前述のポリマーはすべてCARBOPOL(登録商標)なる商標でLubrizol Corporationから市販されている。Lubrizol Corporationから入手可能なカルボマーの例には、CARBOPOL 934、CARBOPOL 934P、CARBOPOL 940、CARBOPOL 980、CARBOPOL 941、CARBOPOL 981、CARBOPOL 2984、CARBOPOL 5984、CARBOPOL SILK 100、CARBOPOL ETD 2050、ULTREZ 10、およびULTREZ 30が含まれる。Lubrizol Corporationから入手可能なアクリレートコポリマーの例には、CARBOPOL AQUA SF-1、およびCARBOPOL AQUA SF-1 OSが含まれる。Lubrizol Corporationから入手可能なアクリレート/C10-30アルキルアクリレートクロスポリマーには、CARBOPOL ULTREZ 20、CARBOPOL ULTREZ 21、CARBOPOL ETD 2020、CARBOPOL 1342、CARBOPOL1382、およびCARBOPOL SC-200が含まれる。アクリレートクロスポリマー-4の例はCARBOPOL AQUA SF-2である。ポリアクリレート-1クロスポリマーの例はCARBOPOL AQUA CCである。架橋アクリル酸ポリマーの適切な濃度は少なくとも0.1重量%、または0.5重量%、または0.1~5重量%、または0.5~5重量%である。
【0099】
E. 追加の成分および補助剤
本発明の組成物は、薬学的組成物中での使用に適した機能的成分をさらに含むことができる。非限定例には、吸収剤、酸性化剤、抗菌剤、抗酸化剤、結合剤、殺生物剤、緩衝化剤、充填剤、結晶成長阻害剤、キレート化剤、着色料、脱臭剤、乳濁液安定化剤、フィルム形成剤、香料、湿潤剤、溶菌剤、酵素薬剤、不透明化剤、酸化剤、pH調節剤、可塑剤、保存剤、還元剤、軟化皮膚調整剤、湿潤化皮膚調整剤、保湿剤、界面活性剤、乳化剤、清浄剤、発泡剤、ヒドロトープ(hydrotope)、溶媒、懸濁化剤、粘性制御剤(レオロジー調節剤)、粘性増加剤(増粘剤)、および噴射剤が含まれる。本明細書に記載の機能的成分の例の一覧表およびモノグラフは、参照により本明細書に組み入れられるThe International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook (INCI), 12th Edition, 2008に開示されている。
【0100】
本発明の組成物は、局所使用に適したさらなる薬学的活性成分、美容的活性成分、および獣医学的作用物質をさらに含むことができる。
【0101】
本発明の疎水性組成物は追加の浸透増強剤をさらに含み得るが、疎水性担体および1つまたは複数の揮発性シリコーン油を含む疎水性組成物中のタキサンナノ粒子の皮膚浸透(すなわち、皮膚の表皮および真皮部分の中への)を増大させるために、追加の浸透増強剤を含む必要はないことが判明した。事実、皮膚浸透増強剤を加えても疎水性組成物の皮膚浸透にほとんど、またはまったく効果がなかった。
【0102】
「浸透増強剤」なる用語は、皮膚を通しての薬物吸収を促進する化合物または材料または物質を記載するために用いられている。これらの化合物または材料または物質は、皮膚の透過性に対する直接の効果を有し得、または浸透物質の熱力学的活性を高めることにより経皮吸収を増大させ、それにより拡散種の有効な逃散傾向および濃度勾配を高め得る。これらの増強剤の主な効果は、角質層の水和度を高めるか、またはそのリポタンパク質マトリックスを破壊するかのいずれかであり、いずれの場合も正味の結果は薬物(浸透物質)拡散に対する抵抗性の低下である(Remington, The Science and Practice of Pharmacy, 22nd ed.)。
【0103】
皮膚浸透増強剤の非限定例には、オレイルアルコール、ミリスチン酸イソプロピル、ARLASOLVE DMIなる商標で入手可能なジメチルイソソルビド(DMI)、およびTRANSCUTOL Pなる商標で入手可能なジエチレングリコールモノエチルエーテル(DGME)が含まれる。皮膚浸透増強剤の他の例は、参照により本明細書に組み入れられる''Skin Penetration Enhancers Cited in the Technical Literature'', Osborne, David W., and Henke, Jill J., Pharmaceutical Technology, November 1997において見出すことができる。そのような例には:脂肪アルコール、例えば、脂肪族アルコール、デカノール、ラウリルアルコール(ドデカノール)、リノレニルアルコール、ネロリドール、1-ノナノール、n-オクタノール、オレイルアルコール、脂肪酸エステル、酢酸ブチル、乳酸セチル、N,N-ジメチルアミノ酢酸デシル、N,N-ジメチルアミノイソプロピオン酸デシル、オレイン酸ジエチレングリコール、セバシン酸ジエチル、コハク酸ジエチル、セバシン酸ジイソプロピル、N,N-ジメチルアミノ酢酸ドデシル、(N,N-ジメチルアミノ)酪酸ドデシル、N,N-ジメチルアミノイソプロピオン酸ドデシル、2-(ジメチルアミノ)プロピオン酸ドデシル、EO-5-オレイルエステル、酢酸エチル、アセト酢酸エチル、プロピオン酸エチル、グリセリンモノエーテル、グリセリンモノラウレート、グリセリンモノオレエート、グリセリンモノリノレート、イソステアリン酸イソプロピル、リノレン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル/脂肪酸モノグリセリド組み合わせ、ミリスチン酸イソプロピル/エタノール/L-乳酸(87:10:3)組み合わせ、パルミチン酸イソプロピル、酢酸メチル、カプリン酸メチル、ラウリン酸メチル、プロピオン酸メチル、吉草酸メチル、1-モノカプロイルグリセリン、モノグリセリド(中鎖長)、ニコチンエステル(ベンジル)、酢酸オクチル、N,N-ジメチルアミノ酢酸オクチル、オレイン酸オレイル、n-ペンチルN-アセチルプロリネート、プロピレングリコールモノラウレート、ソルビタンジラウレート、ソルビタンジオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリラウレート、ソルビタントリオレエート、スクロースヤシ脂肪エステル混合物、スクロースモノラウレート、スクロースモノオレエート、およびN,N-ジメチルアミノ酢酸テトラデシル;脂肪酸、例えば、アルカン酸、カプリン酸、二酸、エチルオクタデカン酸、ヘキサン酸、乳酸、ラウリン酸、イノエラジン酸、リノール酸、リノレン酸、ネオデカン酸、オレイン酸、パルミチン酸、ペラルゴン酸、プロピオン酸、およびバクセン酸;脂肪アルコールエーテル、例えば、α-モノグリセリルエーテル、EO-2-オレイルエーテル、EO-5-オレイルエーテル、EO-10-オレイルエーテル、およびポリグリセリンとアルコールとのエーテル誘導体(1-O-ドデシル-3-O-メチル-2-O-(2',3'-ジヒドロキシプロピル)グリセリン);生物製剤、例えば、L-α-アミノ酸、レシチン、リン脂質、サポニン/リン脂質、デオキシコール酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム、およびタウログリココール酸ナトリウム;酵素、例えば、酸性ホスファターゼ、カロナーゼ(Calonase)、オルゲラーゼ(Orgelase)、パパイン、ホスホリパーゼA-2、ホスホリパーゼC、およびトリアシルグリセロールヒドロラーゼ;アミンおよびアミド、例えば、アセトアミド誘導体、非環式アミド、N-アダマンチルn-アルカンアミド、クロフィブリン酸アミド、N,N-ジドデシルアセトアミド、ジ-2-エチルヘキシルアミン、ジエチルメチルベンズアミド、N,N-ジエチル-m-トルアミド、N,N-ジメチル-m-トルアルニド(toluarnide)、エトミーンS12[ビス-(2-ヒドロキシエチル)オレイルアミン]、ヘキサメチレンラウラミド、ラウリル-アミン(ドデシルアミン)、オクチルアミド、オレイルアミン、不飽和環式尿素、および尿素;錯化剤、例えば、β-およびγ-シクロデキストリン錯体、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、リポソーム、ナフタレンジアミドジイミド、ならびにナフタレンジエステルジイミド;大環状化合物、例えば、大環状ラクトン、ケトン、および無水物(最適には環-16)、ならびに不飽和環式尿素;伝統的界面活性剤、例えば、ブリッジ30、ブリッジ35、ブリッジ36T、ブリッジ52、ブリッジ56、ブリッジ58、ブリッジ72、ブリッジ76、ブリッジ78、ブリッジ92、ブリッジ96、ブリッジ98、臭化セチルトリメチルアンモニウム、エンピコール(Empicol)ML26/F、HCO-60界面活性剤、ヒドロキシポリエトキシドデカン、イオン性界面活性剤(ROONa、ROSO3Na、RNH3Cl、R=8-16)、ラウロイルザルコシン、非イオン性表面活性剤、ノノキシノール、オクトキシノール、フェニルスルホネートCA、プルロニックF68、プルロニックF127、プルロニックL62、ポリオレエート(非イオン性界面活性剤)、レウォパルHV 10、ラウリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム(ドデシル硫酸ナトリウム)、オレイン酸ナトリウム、ソルビタンジラウレート、ソルビタンジオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリラウレート、ソルビタントリオレエート、スパン20、スパン40、スパン85、シンペロニック(Synperonic)NP、トリトンX100、トゥイーン20、トゥイーン40、トゥイーン60、トゥイーン80、およびトゥイーン85;N-メチルピロリドンおよび関連化合物、例えば、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン、l-ブチル-3-ドデシル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリキノン(imidazolikinone)、1,5ジメチル-2-ピロリドン、4,4-ジメチル-2-ウンデシル-2-オキサゾリン、1-エチル-2-ピロリドン、1-ヘキシル-4-メチルオキシカルボニル-2-ピロリドン、1-ヘキシル-2-ピロリドン、1-(2-ヒドロキシエチル)ピロリジノン、3-ヒドロキシ-N-メチル-2-ピロリジノン、1-イソプロピル-2-ウンデシル-2-イミダゾリン、l-ラウリル-4-メチルオキシカルボニル-2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、ポリ(N-ビニルピロリドン)、ピログルタミン酸エステル、および2-ピロリドン(2-ピロリジノン);イオン化合物、例えば、アスコルベート、両性カチオンおよびアニオン、チオグリコール酸カルシウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、3,5-ジヨードサリチル酸ナトリウム、ヨウ化ラウロイルコリン、5-メトキシサリチル酸ナトリウム、モノアルキルリン酸、2-PAMクロリド、4-PAMクロリド(塩化N-メチルピコリニウムの誘導体)、カルボン酸ナトリウム、およびヒアルロン酸ナトリウム;ジメチルスルホキシドおよび関連化合物、例えば、環式スルホキシド、デシルメチルスルホキシド、ジメチルスルホキシド(DMSO)、および2-ヒドロキシウンデシルメチルスルホキシド;溶媒および関連化合物、例えば、アセトン、n-アルカン(7~16の間の鎖長)、シクロヘキシル-1,1-ジメチルエタノール、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、エタノール、エタノール/d-リモネン組み合わせ、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、エトキシジグリコール(TRANSCUTOL)、グリセリン、グリコール、ラウリルクロリド、リモネン、N-メチルホルムアミド、2-フェニルエタノール、3-フェニル-1-プロパノール、3-フェニル-2-プロペン-1-オール、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタンモノエステル、ポリプロピレングリコール、一級アルコール(トリデカノール)、プロピレングリコール、スクアレン、トリアセチン、トリクロロエタノール、トリフルオロエタノール、トリメチレングリコール、およびキシレン;アゾンおよび関連化合物、例えば、N-アシル-ヘキサヒドロ-2-オキソ-1H-アゼピン、N-アルキル-ジヒドロ-1,4-オキサゼピン-5,7-ジオン、N-アルキルモルホリン-2,3-ジオン、N-アルキルモルホリン-3,5-ジオン、アザシクロアルカン誘導体(-ケトン、-チオン)、アザシクロアルケノン誘導体、1-[2-(デシルチオ)エチル]アザシクロペンタン-2-オン(HPE-101)、N-(2,2-ジヒドロキシエチル)ドデシルアミン、1-ドデカノイルヘキサヒドロ-1-H-アゼピン、1-ドデシルアザシクロヘプタン-2-オン(アゾンまたはラウロカプラム)、N-ドデシルジエタノールアミン、N-ドデシル-ヘキサヒドロ-2-チオ-1H-アゼピン、N-ドデシル-N-(2-メトキシエチル)アセトアミド、N-ドデシル-N-(2-メトキシエチル)イソブチルアミド、N-ドデシル-ピペリジン-2-チオン、N-ドデシル-2-ピペリジノン、N-ドデシルピロリジン-3,5-ジオン、N-ドデシルピロリジン-2-チオン、N-ドデシル-2-ピロリドン、1-ファメシルアザシクロヘプタン-2-オン、1-ファメシルアザシクロペンタン-2-オン、1-ゲラニルアザシクロヘプタン-2-オン、l-ゲラニルアザシクロペンタン-2-オン、ヘキサヒドロ-2-オキソ-アゼピン-1-酢酸エステル、N-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドン、1-ラウリルアザシクロヘプタン、2-(1-ノニル)-1,3-ジオキソラン、1-N-オクチルアザシクロペンタン-2-オン、N-(1-オキソドデシル)-ヘキサヒドロ-1H-アゼピン、N-(1-オキソドデシル)モルホリン、1-オキソヒドロカルビル-置換アザシクロヘキサン、N-(l-オキソテトラデシル)-ヘキサヒドロ-2-オキソ-1H-アゼピン、およびN-(1-チオドデシル)モルホリン;およびその他、例えば、脂肪族チオール、N,N-ジアルキル-置換アミノ酢酸アルキル、アニス油、抗コリン剤前処理、アスカリドール、二相性基誘導体、ビサボロール、カルダモン油、1-カルボン、アカザ(70%アスカリドール)、アカザ油、1,8シネオール(ユーカリプトール)、タラ肝油(脂肪酸抽出物)、4-デシルオキサゾリジン-2-オン、ジシクロヘキシルメチルアミンオキシド、ジエチルヘキサデシルホスホネート、ジエチルヘキサデシルホスホルアミデート、N,N-ジメチルドデシルアミン-N-オキシド、4,4-ジメチル-2-ウンデシル-2-オキサゾリン、N-ドデカノイル-L-アミノ酸メチルエステル、1,3-ジオキサシクロアルカン(SEPA)、ジチオスレイトール、ユーカリプトール(シネオール)、ユーカリ油、オイゲノール、ハーブエキス、ラクタムN-酢酸エステル、N-ヒドロキシエタールアセトアミド、N-ヒドロキシエチルアセトアミド、2-ヒドロキシ-3-オレオイルオキシ-1-ピログルタミルオキシプロパン、メントール、メントン、モルホリン誘導体、N-オキシド、ネロリドール、オクチル-β-D-(チオ)グルコピラノシド、オキサゾリジノン、ピペラジン誘導体、極性脂質、ポリジメチルシロキサン、ポリ[2-(メチルスルフィニル)エチルアクリレート]、ポリロタキサン、ポリビニルベンジルジメチルアルキルアンモニウムクロリド、ポリ(N-ビニル-N-メチルアセトアミド)、ピログルタミン酸ナトリウム、テルペンおよびアザシクロ環化合物、ビタミンE(α-トコフェロール)、ビタミンE TPGS、ならびにイランイラン油が含まれる。上に示していない浸透増強剤のさらなる例は、''Handbook of Pharmaceutical Excipients'', Fifth editionにおいて見出すことができ、グリコフロール、ラノリン、軽鉱油、ミリスチン酸、ポリオキシエチレンアルキエーテル(alky ethers)、およびチモールが含まれる。浸透増強剤の他の例には、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチレングリコール、モノエチルエーテル、クエン酸、コハク酸、ボリジオイル、テトラヒドロピペリン(THP)、メタノール、エタノール、プロパノール、オクタノール、ベンジルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、およびモノラウリン酸ポリエチレングリコールが含まれる。
【0104】
本発明の疎水性組成物はアルコールをさらに含み得るが、組成物はアルコール、C1~C4脂肪族アルコール、またはC1~C5脂肪族アルコールを含む必要はない。本発明のいくつかの局面において、組成物はC1~C4脂肪族アルコールまたはC1~C5脂肪族アルコールなしである/含まない。
【0105】
本発明の疎水性組成物は追加の揮発性溶媒をさらに含み得るが、疎水性組成物は追加の揮発性溶媒を含む必要はない。揮発性溶媒は「一時的(fugitive)」溶媒としても公知である。揮発性溶媒の非限定例には、C1~C4脂肪族アルコールなどの揮発性アルコール;およびアセトンなどの揮発性C1~C4脂肪族ケトンが含まれる。本発明のいくつかの局面において、組成物は揮発性C1~C4脂肪族ケトンなしである/含まない。本発明のいくつかの局面において、組成物は揮発性C1~C4脂肪族アルコールなしである/含まない。
【0106】
本発明の疎水性組成物は界面活性剤をさらに含み得るが、疎水性組成物は界面活性剤を含む必要はない。「界面活性剤」または「表面活性剤」なる用語は、水の表面張力を低下させる、または2つの非混和性物質間の界面張力を低減させる能力を示す、化合物または材料または物質を意味し、アニオン性、カチオン性、非イオン性、両性、および/またはリン脂質界面活性剤が含まれる。界面活性剤の非限定例は、参照により本明細書に組み入れられるMcCutcheon's Emulsifiers & Detergents, 2001 North American Editionおよび参照により本明細書に組み入れられるInternational Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook (INCI), 12th Edition, 2008において見出すことができる。そのような例には、下記が含まれるが、それらに限定されない:ブロックポリマー、例えば、ポロキサマー124;エトキシル化アルコール、例えば、セテス-2、セテアレス-20、ラウレス-3;エトキシル化脂肪エステルおよび油、例えば、PEG-40硬化ヒマシ油、PEG-36ヒマシ油、PEG-150ジステアレート;グリセロールエステル、例えば、ポリグリセリル-3ジイソステアレート、グリセリルステアレート;グリコールエステル、PEG-12ジオレエート、LEXEMUL P;リン酸エステル、例えば、リン酸セチル;ポリマー界面活性剤、例えば、PVM/MAコポリマー、アクリレート/C10-30アルキルアクリレートクロスポリマー;四級界面活性剤、例えば、セトリモニウムクロリド;シリコーン系界面活性剤、例えば、PEG/PPG-20/6ジメチコン;ソルビタン誘導体、例えば、ソルビタンステアレート、ポリソルベート80;スクロースおよびグルコースエステルおよび誘導体、例えば、PEG-20メチルグルコースセスキステアレート;およびアルコールの硫酸塩、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム。より一般的には、界面活性剤は、アニオン性、カチオン性、非イオン性、または両性などの、それらのイオン型によって分類することができる。これらは、ブロックポリマー、エトキシル化アルコール、エトキシル化脂肪エステルおよび油、グリセロールエステル、グリコールエステル、リン酸エステル、ポリマー界面活性剤、四級界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、ソルビタン誘導体、スクロースおよびグルコースエステルおよび誘導体、ならびにアルコールの硫酸塩などの、それらの化学構造によって分類することもできる。
【0107】
F. 製造
本発明の組成物は、局所、注射用、および経口液体製品を含む薬学的製品を製造するための、当技術分野において公知の方法および機器によって製造してもよい。そのような方法には、機械的混合機、溶解機、分散機、ホモジナイザー、および製粉機の使用が含まれるが、それらに限定されない。非限定例には、LIGHTNINプロペラミキサー、COWLES溶解機、IKA ULTRA TURRAX分散機、SILVERSONホモジナイザー、LEE逆回転サイドスクラッピング(side-scrapping)混合機、インラインおよびインタンク回転固定子ホモジナイザー、2-ロール製粉機、軟膏ミル、および回転固定子ミルが含まれる。回転サイドスクラッピング混合機およびインタンクホモジナイザーを有する「オールインワン」真空混合システムを用いてもよい。そのような混合機には、OLSA混合機、FRYMA-KORUMA混合機、およびLEE TRI-MIX TURBO-SHEARケトルが含まれるが、それらに限定されない。本発明の組成物は、研究用混合機器を用いての研究用小規模バッチから本格的生産バッチまでで製造することができる。
【0108】
II. 増強された局所送達法
本発明の1つの局面において、タキサンナノ粒子の、皮膚癌および/または皮膚転移を含む皮膚悪性腫瘍中への浸透を増強する方法であって、皮膚悪性腫瘍の患部に本明細書において開示する局所組成物を適用する段階を含む、方法を開示する。好ましい態様において、方法は、皮膚悪性腫瘍の患部に、疎水性担体、1つまたは複数の揮発性シリコーン油、および複数のタキサンナノ粒子を含む疎水性組成物を適用する段階を含む。いくつかの態様において、タキサンナノ粒子はパクリタキセルナノ粒子、ドセタキセルナノ粒子、またはカバジタキセルナノ粒子である。いくつかの態様において、パクリタキセルナノ粒子、ドセタキセルナノ粒子、またはカバジタキセルナノ粒子を含むタキサンナノ粒子は、0.01ミクロン~1.5ミクロン、または0.01ミクロン~1.2ミクロン、または0.01ミクロン~1ミクロン、または0.01ミクロン~1ミクロン未満、または0.01ミクロン~0.9ミクロン、または0.01ミクロン~0.8ミクロン、または0.01ミクロン~0.7ミクロン、または0.1ミクロン~1.5ミクロン、または0.1ミクロン~1.2ミクロン、または0.1ミクロン~1ミクロン、または0.1ミクロン~1ミクロン未満、または0.1ミクロン~0.9ミクロン、または0.1ミクロン~0.8ミクロン、または0.1~0.7ミクロン、または0.2ミクロン~1.5ミクロン、または0.2ミクロン~1.2ミクロン、または0.2ミクロン~1ミクロン、または0.2ミクロン~1ミクロン未満、または0.2ミクロン~0.9ミクロン、または0.2ミクロン~0.8ミクロン、または0.2ミクロン~0.7ミクロン、または0.3ミクロン~1.5ミクロン、または0.3ミクロン~1.2ミクロン、または0.3ミクロン~1ミクロン、または0.3ミクロン~1ミクロン未満、または0.3ミクロン~0.9ミクロン、または0.3ミクロン~0.8ミクロン、または0.3ミクロン~0.7ミクロン、または0.4ミクロン~1.5ミクロン、または0.4ミクロン~1.2ミクロン、または0.4ミクロン~1ミクロン、または0.4ミクロン~1ミクロン未満、または0.4ミクロン~0.9ミクロン、または0.4ミクロン~0.8ミクロン、または0.4ミクロン~0.7ミクロン、または0.5ミクロン~1.5ミクロン、または0.5ミクロン~1.2ミクロン、または0.5ミクロン~1ミクロン、または0.5ミクロン~1ミクロン未満、または0.5ミクロン~0.9ミクロン、または0.5ミクロン~0.8ミクロン、または0.5ミクロン~0.7ミクロン、または0.6ミクロン~1.5ミクロン、または0.6ミクロン~1.2ミクロン、または0.6ミクロン~1ミクロン、または0.6ミクロン~1ミクロン未満、または0.6ミクロン~0.9ミクロン、または0.6ミクロン~0.8ミクロン、または0.6ミクロン~0.7ミクロンの平均粒径(個数基準)を有する。他の態様において、タキサンナノ粒子はパクリタキセルナノ粒子である。いくつかの態様において、パクリタキセルナノ粒子は、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、少なくとも23、少なくとも24、少なくとも25、少なくとも26、少なくとも27、少なくとも28、少なくとも29、少なくとも30、少なくとも31、少なくとも32、少なくとも33、少なくとも34、または少なくとも35m2/gのSSAを有する。他の態様において、パクリタキセルナノ粒子は、18m2/g~50m2/g、または20m2/g~50m2/g、または22m2/g~50m2/g、または25m2/g~50m2/g、または30m2/g~50m2/g、または18m2/g~45m2/g、または20m2/g~45m2/g、または22m2/g~45m2/g、または25m2/g~45m2/g、または30m2/g~45m2/g、または18m2/g~40m2/g、または20m2/g~40m2/g、または22m2/g~40m2/g、または25m2/g~40m2/g、または30m2/g~40m2/gのSSAを有する。いくつかの態様において、パクリタキセルナノ粒子は、0.05g/cm3~0.15g/cm3、または0.05g/cm3~0.20g/cm3の容積密度(タッピングなし)を有する。様々な態様において、疎水性担体は非極性および/または不揮発性である。いくつかの態様において、疎水性担体は炭化水素を含む。他の態様において、疎水性担体はワセリン、鉱油、およびパラフィンを含む。いくつかの態様において、鉱油は重鉱油である。いくつかの態様において、組成物製剤中の揮発性シリコーン油の濃度は、揮発性シリコーン油なしの製剤に比べて、タキサンナノ粒子の皮膚浸透を増強するのに有効な量である。皮膚悪性腫瘍中への浸透を測定する適切な方法は、ヒト死体皮膚を用いてのインビトロでのフランツ拡散セル(FDC)システムの使用によるものであり得る。適切なインビトロフランツ拡散セルシステムは、以下の実施例9に記載する。いくつかの態様において、1つまたは複数の揮発性シリコーン油は、5~24重量%の濃度である。他の態様において、1つまたは複数の揮発性シリコーン油の濃度は5~20重量%である。他の態様において、1つまたは複数の揮発性シリコーン油は、5~18重量%の濃度である。さらに他の態様において、1つまたは複数の揮発性シリコーン油の濃度は13重量%である。様々な態様において、1つまたは複数の揮発性シリコーン油の濃度は、全組成物重量の5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5、12、12.5、13、13.5、14、14.5、15、15.5、16、16.5、17、17.5、18、18.5、19、19.5、20、20.5、21、21.5、22、22.5、23、23.5、もしくは24重量%またはその中で誘導可能な任意のパーセンテージであり得る。様々な態様において、1つまたは複数の揮発性シリコーン油はシクロメチコンである。他の態様において、シクロメチコンはシクロペンタシロキサンである。いくつかの態様において、疎水性組成物はさらなる浸透増強剤を含まない。他の態様において、疎水性組成物はさらなる揮発性溶媒を含まない。さらに他の態様において、疎水性組成物は界面活性剤を含まない。他の態様において、疎水性組成物はアルコール、またはC1~C4脂肪族アルコール、またはC1~C5脂肪族アルコールなしである/含まない。様々な態様において、タキサンは、パクリタキセル、ドセタキセル、またはカバジタキセルであり得る。いくつかの態様において、皮膚悪性腫瘍は皮膚癌および/または皮膚転移である。いくつかの態様において、疎水性組成物は無水である。他の態様において、疎水性組成物は無菌である。他の態様において、疎水性組成物は非滅菌である。他の態様において、疎水性組成物は低い生物汚染度を有する。いくつかの態様において、疎水性組成物は半固体組成物である。さらに他の態様において、疎水性組成物は軟膏である。いくつかの態様において、疎水性組成物は、軟膏を含む半固体組成物であり、かつブルックフィールドRV粘度計により、SC4-14スピンドルおよび6Rチャンバーを備えた少量試料アダプターを用い、5rpm、平衡化時間2分、室温で測定して、12,500cps~247,500cps、または25,000cps~150,000cpsの粘度を有する。疎水性、半固体組成物の粘度測定を実施するための代替法は、T-Eスピンドルを備えヘリパスをオンにしたヘリパススタンド上のブルックフィールドRV粘度計を、10RPM、室温で45秒間用いることである。いくつかの態様において、疎水性組成物は、軟膏を含む半固体組成物であり、かつT-Eスピンドルを備えヘリパスをオンにしたヘリパススタンド上のブルックフィールドRV粘度計を、10RPM、室温で45秒間用いて、25,000cps~500,000cps、または25,000cps~400,000cps、または25,000cps~350,000cps、または25,000cps~300,000cps、または50,000cps~500,000cps、または50,000cps~400,000cps、または50,000cps~350,000cps、または50,000cps~300,000cps、または75,000cps~500,000cps、または75,000cps~400,000cps、または75,000cps~350,000cps、または75,000cps~300,000cps、または100,000cps~500,000cps、または100,000cps~400,000cps、または100,000cps~350,000cps、または100,000cps~300,000cpsの粘度を有する。いくつかの態様において、疎水性組成物は噴霧剤ではなく、噴霧可能ではない。
【0109】
本発明のもう1つの局面において、タキサンナノ粒子の皮膚悪性腫瘍中への浸透を増強する方法であって、皮膚悪性腫瘍の表面に複数のタキサンナノ粒子を含む疎水性組成物を局所適用する段階を含み、ここで、疎水性組成物からのタキサンナノ粒子の浸透が、水性組成物中のタキサンナノ粒子の懸濁液からのタキサンナノ粒子の浸透よりも高い、方法が開示される。皮膚悪性腫瘍中のタキサンナノ粒子の浸透を判定する適切な方法は、ヒト死体皮膚を用いてのインビトロでのフランツ拡散セル(FDC)システムによるものである。適切なインビトロフランツ拡散セルシステムは、以下の実施例9に記載する。いくつかの態様において、タキサンナノ粒子は0.1ミクロン~1.5ミクロンの平均粒径(個数基準)を有する。他の態様において、タキサンナノ粒子はパクリタキセルナノ粒子、ドセタキセルナノ粒子、またはカバジタキセルナノ粒子である。他の態様において、疎水性組成物は疎水性担体をさらに含む。他の態様において、皮膚悪性腫瘍は皮膚癌または皮膚転移である。
【0110】
III. 製剤中の結晶成長を阻害する方法
本発明の1つの局面において、結晶性タキサンナノ粒子の成長を阻害する方法であって、タキサンナノ粒子を疎水性担体と接触させる段階を含む、方法が、開示される。いくつかの態様において、タキサンナノ粒子はパクリタキセルナノ粒子、ドセタキセルナノ粒子、またはカバジタキセルナノ粒子である。いくつかの態様において、タキサンナノ粒子はパクリタキセルナノ粒子である。他の態様において、組成物は無水である。他の態様において、組成物担体は炭化水素を含む。他の態様において、炭化水素はワセリン、鉱油、もしくはパラフィンワックス、またはそれらの混合物である。いくつかの態様において、鉱油は重鉱油である。いくつかの態様において、組成物は1つまたは複数の揮発性シリコーン油をさらに含む。他の態様において、揮発性シリコーン油はシクロメチコンである。他の態様において、シクロメチコンはシクロペンタシロキサンである。
【0111】
本発明のもう1つの局面において、水性担体中の結晶性タキサンナノ粒子の分散系の成長を阻害する方法であって、製造時にポロキサマー407、四級アンモニウム化合物、または架橋アクリル酸ポリマーを水性担体に加える段階を含む、方法が、開示される。いくつかの態様において、添加剤はポロキサマー407である。様々な態様において、四級アンモニウム化合物は添加剤であり、塩化ベンザルコニウムまたは塩化ベンゼトニウムである。いくつかの態様において、四級アンモニウム化合物は塩化ベンザルコニウムである。いくつかの態様において、架橋アクリル酸ポリマーは添加剤であり、カルボマーである。いくつかの態様において、タキサンナノ粒子はパクリタキセルナノ粒子、ドセタキセルナノ粒子、またはカバジタキセルナノ粒子である。
【0112】
IV. 皮膚悪性腫瘍の局所処置
本発明の方法は、タキサンを含む本明細書において開示する組成物を患部に局所適用すること(局所療法)による、患者の皮膚癌および皮膚転移を含む皮膚悪性腫瘍の処置法を含む。皮膚悪性腫瘍の「患部」は、皮膚悪性腫瘍病変(腫瘍)が皮膚の最も外側の表面または皮膚の表面(上皮/真皮の被覆)の真下に目に見えて存在する、皮膚の少なくとも一部を含み得、かつ視覚的に検出不可能な前臨床病変を含む可能性が高い、皮膚悪性腫瘍の近くの皮膚の領域を含み得る。いくつかの態様において、タキサンはパクリタキセルである。他の態様において、タキサンはドセタキセルまたはカバジタキセルである。いくつかの局面において、組成物は疎水性であり、かつ疎水性担体を含み得る。他の局面において、組成物は水性組成物であり、かつ水性担体を含み得る。いくつかの態様において、担体は無水である。いくつかの態様において、タキサンは複数のタキサンナノ粒子である。いくつかの態様において、複数のタキサンナノ粒子は組成物内で懸濁されている。他の局面において、タキサンは組成物中に可溶化されている。
【0113】
皮膚悪性腫瘍の局所処置のための好ましい方法は、患部に連続疎水性担体、1つまたは複数の揮発性シリコーン油、および複数のタキサンナノ粒子を含む疎水性組成物を局所投与する段階を含み、ここでタキサンナノ粒子は組成物内で懸濁されており、ここでタキサンナノ粒子の平均粒径(個数基準)は0.1ミクロン~1.5ミクロンまたは0.01ミクロン~1.5ミクロンであり、かつここでタキサンナノ粒子の濃度は、皮膚悪性腫瘍の状態における治療的改善を提供するのに有効な量である。いくつかの態様において、タキサンナノ粒子はパクリタキセルナノ粒子、ドセタキセルナノ粒子、またはカバジタキセルナノ粒子である。いくつかの態様において、パクリタキセルナノ粒子、ドセタキセルナノ粒子、またはカバジタキセルナノ粒子を含むタキサンナノ粒子は、0.01ミクロン~1.5ミクロン、または0.01ミクロン~1.2ミクロン、または0.01ミクロン~1ミクロン、または0.01ミクロン~1ミクロン未満、または0.01ミクロン~0.9ミクロン、または0.01ミクロン~0.8ミクロン、または0.01ミクロン~0.7ミクロン、または0.1ミクロン~1.5ミクロン、または0.1ミクロン~1.2ミクロン、または0.1ミクロン~1ミクロン、または0.1ミクロン~1ミクロン未満、または0.1ミクロン~0.9ミクロン、または0.1ミクロン~0.8ミクロン、または0.1~0.7ミクロン、または0.2ミクロン~1.5ミクロン、または0.2ミクロン~1.2ミクロン、または0.2ミクロン~1ミクロン、または0.2ミクロン~1ミクロン未満、または0.2ミクロン~0.9ミクロン、または0.2ミクロン~0.8ミクロン、または0.2ミクロン~0.7ミクロン、または0.3ミクロン~1.5ミクロン、または0.3ミクロン~1.2ミクロン、または0.3ミクロン~1ミクロン、または0.3ミクロン~1ミクロン未満、または0.3ミクロン~0.9ミクロン、または0.3ミクロン~0.8ミクロン、または0.3ミクロン~0.7ミクロン、または0.4ミクロン~1.5ミクロン、または0.4ミクロン~1.2ミクロン、または0.4ミクロン~1ミクロン、または0.4ミクロン~1ミクロン未満、または0.4ミクロン~0.9ミクロン、または0.4ミクロン~0.8ミクロン、または0.4ミクロン~0.7ミクロン、または0.5ミクロン~1.5ミクロン、または0.5ミクロン~1.2ミクロン、または0.5ミクロン~1ミクロン、または0.5ミクロン~1ミクロン未満、または0.5ミクロン~0.9ミクロン、または0.5ミクロン~0.8ミクロン、または0.5ミクロン~0.7ミクロン、または0.6ミクロン~1.5ミクロン、または0.6ミクロン~1.2ミクロン、または0.6ミクロン~1ミクロン、または0.6ミクロン~1ミクロン未満、または0.6ミクロン~0.9ミクロン、または0.6ミクロン~0.8ミクロン、または0.6ミクロン~0.7ミクロンの平均粒径(個数基準)を有する。他の態様において、タキサンナノ粒子はパクリタキセルナノ粒子である。いくつかの態様において、パクリタキセルナノ粒子は、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、少なくとも23、少なくとも24、少なくとも25、少なくとも26、少なくとも27、少なくとも28、少なくとも29、少なくとも30、少なくとも31、少なくとも32、少なくとも33、少なくとも34、または少なくとも35m2/gのSSAを有する。他の態様において、パクリタキセルナノ粒子は、18m2/g~50m2/g、または20m2/g~50m2/g、または22m2/g~50m2/g、または25m2/g~50m2/g、または30m2/g~50m2/g、または18m2/g~45m2/g、または20m2/g~45m2/g、または22m2/g~45m2/g、または25m2/g~45m2/g、または30m2/g~45m2/g、または18m2/g~40m2/g、または20m2/g~40m2/g、または22m2/g~40m2/g、または25m2/g~40m2/g、または30m2/g~40m2/gのSSAを有する。いくつかの態様において、パクリタキセルナノ粒子は、0.05g/cm3~0.15g/cm3、または0.05g/cm3~0.20g/cm3の容積密度(タッピングなし)を有する。様々な態様において、疎水性担体は非極性および/または不揮発性である。いくつかの態様において、疎水性担体は炭化水素を含む。他の態様において、疎水性担体はワセリン、鉱油、およびパラフィンを含む。いくつかの態様において、鉱油は重鉱油である。いくつかの態様において、揮発性シリコーン油は5~24重量%の濃度である。他の態様において、揮発性シリコーン油は5~20重量%の濃度である。他の態様において、揮発性シリコーン油は5~18重量%の濃度である。他の態様において、揮発性シリコーン油の濃度は13重量%である。いくつかの態様において、揮発性シリコーン油はシクロメチコンである。他の態様において、シクロメチコンはシクロペンタシロキサンである。様々な態様において、疎水性組成物はさらなる浸透増強剤なしである/含まない。いくつかの態様において、疎水性組成物は、ラウロカプラム、および/またはジエチレングリコールモノエチルエーテル(DGME)、および/またはミリスチン酸イソプロピル、および/またはアルファトコフェロールなしである/含まない。他の態様において、疎水性組成物は、さらなる揮発性溶媒なしである/含まない。他の態様において、疎水性組成物は、界面活性剤なしである/含まない。他の態様において、疎水性組成物は、アルコール、C1~C4脂肪族アルコール、またはC1~C5脂肪族アルコールなしである/含まない。いくつかの態様において、疎水性組成物は1つまたは複数の揮発性シリコーン油を含むが、さらなるシリコーン材料を含まない。いくつかの態様において、疎水性組成物はヒアルロン酸なしである/含まず;かつ/またはヒアルロン酸およびタキサンの結合体なしである/含まず;かつ/またはヒアルロン酸およびパクリタキセルの結合体なしである/含まず;かつ/またはポリマーもしくは生物分解性ポリマーなしである/含まず;かつ/またはポロキサマー、スチレン-イソブチレン-スチレン(SIBS)、ポリ酸無水物コポリマー、ポリカプロラクトン、ポリエチレングリコール、ポリ(ビス(P-カルボキシフェノキシ)プロパン-セバシン酸、および/もしくはポリ(D,L乳酸-グリコール酸コポリマー)(PLGA)なしである/含まない。
【0114】
タキサンナノ粒子の濃度は、皮膚悪性腫瘍の状態における治療的改善を提供するのに有効な量である。この改善は、処置後の患部の目視観察および測定により示すことができ、以下の成果の少なくとも1つを含む:(a)皮膚悪性腫瘍病変(腫瘍)のサイズの低減;(b)皮膚悪性腫瘍病変(腫瘍)の数の減少;(c)皮膚悪性腫瘍病変(腫瘍)の除去;および(d)皮膚悪性腫瘍病変(腫瘍)の部位の疼痛の低減。タキサンナノ粒子の濃度は0.05~10重量%であり得、またはタキサンナノ粒子の濃度は0.05~5重量%であり得、またはタキサンナノ粒子の濃度は0.1~5重量%であり得、またはタキサンナノ粒子の濃度は、全組成物重量の0.05、0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.75、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.25、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.75、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.25、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.75、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.25、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.75、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.25、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.75、4.8、4.9、5、6、7、8、9、もしくは10重量%またはその中で誘導可能な任意のパーセンテージであり得る。いくつかの態様において、タキサンナノ粒子は、パクリタキセルナノ粒子、ドセタキセルナノ粒子、またはカバジタキセルナノ粒子である。他の態様において、タキサンナノ粒子はパクリタキセルナノ粒子である。いくつかの態様において、パクリタキセルナノ粒子は、組成物中約0.05~3重量%未満、または約0.05~約2重量%、または約0.05~約1重量%、または約0.05~約0.3重量%、または約0.05~約0.2重量%、または約0.05~約0.15重量%、または約0.1~約2重量%、または約0.1~約1重量%、または約0.1~約0.3重量%、または約0.1~約0.2重量%、または約0.15~約2重量%、または約0.15~約1重量%、または約0.15~約0.3重量%、または約0.3~約2重量%、または約0.3~約1重量%、または約1~約2重量%、または約0.2~約0.4重量%、または約0.5~約1.5重量%、または約1.5~約2.5重量%の濃度である。他の態様において、パクリタキセルナノ粒子の濃度は、1重量%の80~120%(すなわち、0.8~1.2重量%)、または0.05重量%の80~120%、または0.1重量%の80~120%、または0.15重量%の80~120%、または0.2重量%の80~120%、または0.25重量%の80~120%、または0.3重量%の80~120%、または0.35重量%の80~120%、または0.4重量%の80~120%、または0.45重量%の80~120%、または0.5重量%の80~120%、または0.55重量%の80~120%、または0.6重量%の80~120%、または0.65重量%の80~120%、または0.7重量%の80~120%、または0.75重量%の80~120%、または0.8重量%の80~120%、または0.85重量%の80~120%、または0.9重量%の80~120%、または0.95重量%の80~120%、または1.5重量%の80~120%、または2重量%の80~120%、または2.5重量%の80~120%である。
【0115】
いくつかの態様において、疎水性組成物は無菌である。他の態様において、疎水性組成物は非滅菌である。他の態様において、疎水性組成物は低い生物汚染度を有する。他の態様において、疎水性組成物は無水である。いくつかの態様において、疎水性組成物は半固体組成物である。さらに他の態様において、疎水性組成物は軟膏である。いくつかの態様において、疎水性組成物は、軟膏を含む半固体組成物であり、かつブルックフィールドRV粘度計により、SC4-14スピンドルおよび6Rチャンバーを備えた少量試料アダプターを用い、5rpm、平衡化時間2分、室温で測定して、12,500cps~247,500cps、または25,000cps~150,000cpsの粘度を有する。疎水性、半固体組成物の粘度測定を実施するための代替法は、T-Eスピンドルを備えヘリパスをオンにしたヘリパススタンド上のブルックフィールドRV粘度計を、10RPM、室温で45秒間用いることである。いくつかの態様において、疎水性組成物は、軟膏を含む半固体組成物であり、かつT-Eスピンドルを備えヘリパスをオンにしたヘリパススタンド上のブルックフィールドRV粘度計を、10RPM、室温で45秒間用いて、25,000cps~500,000cps、または25,000cps~400,000cps、または25,000cps~350,000cps、または25,000cps~300,000cps、または50,000cps~500,000cps、または50,000cps~400,000cps、または50,000cps~350,000cps、または50,000cps~300,000cps、または75,000cps~500,000cps、または75,000cps~400,000cps、または75,000cps~350,000cps、または75,000cps~300,000cps、または100,000cps~500,000cps、または100,000cps~400,000cps、または100,000cps~350,000cps、または100,000cps~300,000cpsの粘度を有する。いくつかの態様において、疎水性組成物は噴霧剤ではなく、噴霧可能ではない。いくつかの態様において、組成物は乾燥粉末ではない。いくつかの態様において、組成物はタキサンナノ粒子だけを含むものではない。
【0116】
いくつかの態様において、皮膚悪性腫瘍は皮膚癌である。本発明の方法を、黒色腫、基底細胞癌、扁平上皮癌、およびカポジ肉腫(エイズ関連カポジ肉腫を含む)を含むが、それらに限定されない、様々な皮膚癌を処置するために用いることができる。他の態様において、皮膚悪性腫瘍は皮膚転移である。本発明の方法を、様々な原発癌由来の皮膚転移を処置するために用いることができる。皮膚転移は、以下の原発悪性腫瘍の1つまたは複数に由来し得るが、それらに限定されない:乳房、肺、鼻腔、喉頭、口腔、結腸(大腸)、直腸、胃、卵巣、精巣、膀胱、前立腺、子宮頸部、膣、甲状腺、子宮内膜、腎臓、食道、膵臓、肝臓、黒色腫、およびカポジ肉腫。いくつかの態様において、皮膚転移は肺癌、乳癌、結腸癌、口腔癌、卵巣癌、腎臓癌、食道癌、胃癌、または肝臓癌に由来する。いくつかの態様において、皮膚転移は乳癌に由来する。いくつかの態様において、皮膚転移は非黒色腫皮膚転移である。
【0117】
皮膚悪性腫瘍の患部に局所適用する疎水性組成物の量は、患部のサイズおよび組成物中のパクリタキセルの濃度に依存して変動し得るが、一般にはほぼ硬貨の厚さで患部を完全に覆うように適用することができる。適用する組成物の量を決定するためのもう1つの適切な方法は、「フィンガーティップユニット」(FTU)アプローチである。1FTUは、成人の指先に沿って標準のチューブから絞り出される局所組成物の量である(チューブのノズルが標準の5mmであると仮定する)。指先は指の先端から第一の皮線までである。組成物を、手袋をはめた手もしくはスパチュラまたは局所投与の他の手段で適用することができる。いくつかの態様において、組成物を、無傷の皮膚被覆(上皮/真皮の被覆)を有する皮膚悪性腫瘍に適用する。いくつかの態様において、組成物を、皮膚悪性腫瘍病変が皮膚の表面上にある、または皮膚被覆が劣化し、皮膚悪性腫瘍病変が露出している、潰瘍領域に適用する。いくつかの態様において、組成物を潰瘍領域に適用しない。適用前に患部を水(および必要な場合はマイルドな石鹸)で優しく洗浄し、乾燥することができる。組成物を適用したら、適用部位をTEGADERM(登録商標)またはSOLOSITE(登録商標)などの密封包帯で覆うことができる。組成物の投薬は変動し得るが、一般には1日に1、2、または3回、毎日ほぼ同じ時刻の、状態が改善または除去されるまでの適用を含み得る。本明細書に開示する処置法の結果としての、皮膚悪性腫瘍の状態の治療的改善は、処置後の患部の目視観察および測定により示すことができ、以下の成果の少なくとも1つを含む:(a)皮膚悪性腫瘍病変(腫瘍)のサイズの低減;(b)皮膚悪性腫瘍病変(腫瘍)の数の減少;(c)皮膚悪性腫瘍病変(腫瘍)の除去;および(d)皮膚悪性腫瘍病変(腫瘍)の部位の疼痛の低減。
【実施例0118】
本発明を具体的な実施例によってより詳細に記載する。以下の実施例は例示のために示すにすぎず、いかなる様式でも本発明を限定する意図はない。当業者であれば、変更または改変して本質的に同じ結果を生じ得る、様々な重大ではないパラメーターを容易に認識するであろう。
【0119】
実施例1-様々な溶媒中のパクリタキセルの溶解度
パクリタキセルの溶解度を以下の方法により様々な溶媒中で判定した:(a) 各溶媒について、約2gの溶媒を透明ガラスバイアル中に秤量し、(b) 約0.1gのパクリタキセルを各バイアルに加え、(c) 各バイアルを磁気撹拌機上、室温で2時間、撹拌子により混合し、(d) 次いで、各バイアルを1~2時間ごとに、溶液が透明になったかどうかを見るためにチェックした。透明であれば、さらに約0.1gのパクリタキセルをバイアルに加え、混合を続けた。段階「d」を各バイアルについて合計48時間続けた。
【0120】
各バイアルからの溶液を、パクリタキセル濃度について、Agilent Technical Application Note for Paclitaxel ''Analysis of Taxol by HPLC'', 2002に基づき、204nmではなく227nmの検出波長を用いるよう改変して(USPパクリタキセルモノグラフでは227nmの波長が用いられ、より低い波長で見られる溶媒効果を低減する)測定した。
【0121】
溶解度の値を表1に示す。
【0122】
(表1)
【0123】
実施例2 様々な物質および物質の溶液中のパクリタキセルナノ粒子結晶の観察
パクリタキセルナノ粒子を様々な物質および物質の水溶液中に分散させ、結晶成長を観察した。結果を表2に示す。
【0124】
(表2)
【0125】
パクリタキセルナノ粒子結晶は、いかなる疎水性担体中でも成長しなかった。また、ナノ粒子は塩化ベンザルコニウム、CARBOPOL ULTREZ 10、またはポロキサマー407の水溶液中でも成長しなかった。
【0126】
実施例3 パクリタキセルナノ粒子の粒径、SSA、および容積密度分析
表3および表16~19に挙げる製剤において用いたパクリタキセルナノ粒子ロットの粒径を、ACCUSIZER 780を用いて、以下の粒径法により分析した:
【0127】
器具パラメーター:最大濃度:9000粒子/mL、容器数:1、センサー範囲:合計、検出下限:0.5μm、流速:30mL/分、分析プル数:4、プル間の時間:1秒、プル量:10mL、風袋容量:1mL、プライム容量:1mL、最初のプルを含める:選択しない。
【0128】
試料調製:ひとすくいのパクリタキセルナノ粒子APIを清浄な20mLバイアル中に入れ、ろ過(0.22μm)したSDSの0.1重量%溶液約3mLを加えてAPIを湿らせ、次いでバイアルの残りをSDS溶液で充填した。5~10分間ボルテックス処理し、水浴中で1分間超音波処理した。
【0129】
方法:プラスティック瓶にろ過(0.22μm)した0.1重量%SDS溶液を充填し、バックグラウンドを分析した。少量のパクリタキセルナノ粒子試料懸濁液、<100μLを、0.1重量%SDS溶液の瓶中に、撹拌しながらピペットで加え;ACCUSIZER注入チューブを瓶中に入れ、器具に試料を通過させた。必要に応じて、さらにSDS溶液またはパクリタキセル試料懸濁液を加えて、6000~8000粒子数の所望の運転濃度に到達させた。
【0130】
粒径結果(数加重特異分布に基づく):表3に挙げる製剤において用いたパクリタキセルナノ粒子ロット:平均:0.861μm、モード:0.572μm、メジアン:0.710μm。表16~19に挙げる製剤において用いたパクリタキセルナノ粒子ロット:平均:0.83μm。
【0131】
表3および表16~19に挙げる製剤において用いたパクリタキセルナノ粒子ロットの比表面積(SSA)を、前述のブルナウアー-エメット-テラー(「BET」)吸着等温式法により分析した。表3に挙げる製剤において用いたパクリタキセルナノ粒子ロットは、41.24m2/gのSSAを有した。表16~19に挙げる製剤において用いたパクリタキセルナノ粒子ロットは、26.72 m2/gのSSAを有した。
【0132】
表3に挙げる製剤において用いたパクリタキセルナノ粒子ロットの容積密度(タッピングなし)は0.05g/cm3であった。表16~19に挙げる製剤において用いたパクリタキセルナノ粒子ロットの容積密度(タッピングなし)は0.09g/cm3であった。
【0133】
実施例4 パクリタキセルナノ粒子の疎水性担体との無水疎水性組成物
パクリタキセルナノ粒子の疎水性担体との無水疎水性組成物を表3に挙げる。
【0134】
(表3)
【0135】
F4~F13のための手順:パクリタキセルナノ粒子およびシクロメチコン(または鉱油(F4)またはFOMBLIN(F7))の一部のスラリーを調製した。ワセリンを52±3℃まで加熱し、残りの成分を加え、融解して均質になるまで混合した。パクリタキセルスラリーを加え、均質になるまで混合した。バッチを混合し、35℃以下になるまで冷却した。軟膏が生成した。
【0136】
実施例5 パクリタキセルナノ粒子の疎水性担体との無水組成物の物理的および化学的安定性
無水疎水性組成物試料を20mLガラスシンチレーションバイアル中、25℃および30℃で保存した。パクリタキセルの定量をHPLCを用いて行った。定量および外観安定性試験の結果を以下の表4および表5に示す。粘度は、SC4-14スピンドルおよび6Rチャンバーを備えた少量試料アダプターを用い、Brookfield RV粘度計により、5rpm、平衡化時間2分、室温で測定した。粘度の結果を以下の表6に示す。
【0137】
(表4)25℃での安定性
**反復バッチ
【0138】
(表5)30℃での安定性
**反復バッチ
【0139】
(表6)粘度安定性
【0140】
実施例6 疎水性担体との無水組成物中のパクリタキセルナノ粒子の粒径分析
ACCUSIZERモデル770/770Aを用いての粒径法。
器具パラメーター:センサー:LE 0.5μm~400μm、センサー範囲:合計、検出下限:0.5μm、収集時間:60秒、チャンネル数:128、容器流量:100mL、流速:60mL/分、最大同時計数:8000粒子/mL、試料容器:Accusizer容器、試料計算:なし、電圧検出器:10Vよりも高い、粒子濃度計算:なし、濃度範囲:5000~8000粒子/mL、自動データ保存:選択、バックグラウンド減算:はい、自動サイクル数:1。
【0141】
試料調製:一定量の試料製剤をシンチレーションバイアル中に加えた。スパチュラを用いて、試料をバイアルの内壁に塗りつけた。ISOPAR-G(商標)(C10-11イソパライン)中2%レシチン溶液約20mLをバイアルに加えた。バイアルを1分間超音波処理した。確実に試料を溶液中に十分分散させた。
【0142】
方法:試料容器にろ過(0.22μm)したISOPAR-G中2%レシチン溶液を充填し、バックグラウンドを分析した。ピペットを用いて、調製した試料の一部を容器に撹拌しながら移した。必要に応じて試料を容器に希釈または添加して、5000~8000粒子/mLの間の同時計数レベルとした。器具を通じて分析を開始し、分析の同時計数レベルが5000~8000粒子/mLであることを検証した。
【0143】
粒径分析の結果を以下の表7および表8に示す。
【0144】
(表7)25℃での粒径安定性
**反復バッチ
【0145】
(表8)30℃での粒径安定性
**反復バッチ
【0146】
データから明らかなとおり、試料F4~F6におけるパクリタキセルナノ粒子の粒径は、室温(25℃)および30℃で1ヶ月間保存した場合に、初期平均粒径の20%よりも大きく成長することはなかった。試料F6におけるパクリタキセルナノ粒子の粒径は、室温(25℃)および30℃で6ヶ月間および12ヶ月間保存した場合に、初期平均粒径の20%よりも大きく成長することはなかった。試料F6**(F6と同じ製剤での反復バッチ)およびF8~F13におけるパクリタキセルナノ粒子の粒径は、室温(25℃)および30℃で3ヶ月間保存した場合に、初期平均粒径の20%よりも大きく成長することはなかった。
【0147】
実施例7 パクリタキセルナノ粒子の水性組成物
パクリタキセルナノ粒子の水性組成物を表9に示す。
【0148】
(表9)
【0149】
試料をパクリタキセルナノ粒子の結晶成長について観察した。結果を以下の表10に示す。
【0150】
(表10)
【0151】
データから明らかなとおり、塩化ベンザルコニウム、CARBOPOL 974P、またはCARBOPOL ULTREZ 10の存在は、水性組成物中の結晶の成長を阻害した。
【0152】
実施例8 水性組成物中のパクリタキセルナノ粒子の粒径分析
ACCUSIZERモデル770/770Aを用いての粒径法。
器具パラメーター:センサー:LE 0.5μm~400μm、センサー範囲:合計、検出下限:0.5μm、収集時間:60秒、チャンネル数:128、容器流量:100mL、流速:60mL/分、最大同時計数:8000粒子/mL、試料容器:Accusizer容器、試料計算:なし、電圧検出器:10Vよりも高い、粒子濃度計算:なし、濃度範囲:5000~8000粒子/mL、自動データ保存:選択、バックグラウンド減算:はい、自動サイクル数:1。
【0153】
試料調製:一定量の試料製剤をシンチレーションバイアル中に加えた。スパチュラを用いて、試料をバイアルの内壁に塗りつけた。0.2μmでろ過した蒸留水約20mLをバイアルに加えた。バイアルを1分間超音波処理した。確実に試料を溶液中に十分分散させた。
【0154】
方法:試料容器に0.2μmでろ過した蒸留水を充填し、バックグラウンドを分析した。ピペットを用いて、調製した試料の一部を容器に撹拌しながら移した。必要に応じて試料を容器に希釈または添加して、5000~8000粒子/mLの間の同時計数レベルとした。器具を通じて分析を開始し、分析の同時計数レベルが5000~8000粒子/mLであることを検証した。
【0155】
粒径分析の結果を以下の表11に示す。
【0156】
(表11)水性組成物中の粒径
【0157】
表11の製剤F1、F2、およびF3のデータから明らかなとおり、塩化ベンザルコニウム、CARBOPOL 974P、またはCARBOPOL ULTREZ 10の存在は、組成物を室温で6ヶ月間保存した場合に、薬物ナノ粒子の平均粒径が初期平均粒径の20%よりも大きく成長することのないように、水性組成物中の結晶の成長を阻害した。
【0158】
実施例9 インビトロ皮膚浸透拡散試験
フランツ拡散セルシステムを用いて、製剤F1~F13の無傷のヒト死体皮膚の中への、およびそれを通過してのインビトロ皮膚浸透の速度および程度を判定するための試験を実施した。パクリタキセルの濃度を、様々な時点で、拡散セルのレセプターチャンバー中で測定した。拡散試験終了後、皮膚をテープ剥離し、表皮および真皮層に分けた。表皮および真皮層中のパクリタキセルを、抽出溶媒を用いて抽出し、分析もした。
【0159】
分析法:パクリタキセルを分析するための質量分析(MS)法を開発した。MS条件は以下の表12のとおりであった。
【0160】
(表12)
【0161】
フランツ拡散セル(FDC)試験-方法
皮膚調製:無傷のヒト死体皮膚はNew York Firefighters Tissue Bank(NFFTB)から購入した。組織バンクが皮膚を上背から採取し、約500μmの厚さにデルマトームで切断した。組織バンクから皮膚を受領後、実験日の朝まで-20℃で凍結保存した。使用前に、皮膚をフリーザーから取り出し、室温で完全に解凍させた。次いで、皮膚をPBS浴に短時間浸漬して、任意の残存する凍結保護物質および保存剤を除去した。実験中、目視により無傷の皮膚領域のみを用いた。各試験について、2名の別々の供与者を用い、各供与者は対応する3つの複製を有した。
【0162】
レセプター液調製:予備溶解度データの結果に基づき、pH7.4の96重量%リン酸緩衝生理食塩水(「PBS」)および4重量%ヒドロキシルプロピルベータシクロデキストリン(HPBCD)のレセプター液を選択した。レセプター液中の活性物質の溶解度(約0.4μg/mL)は、試験中に皮膚の状態を維持するのに十分であることが判明した。レセプター液をZapCap CR 0.2μmメンブレンを通して減圧ろ過することにより、レセプター液を脱気した。ろ過したレセプター液を、減圧を維持しながらさらに20分間撹拌して、完全に脱気した。
【0163】
拡散セルアセンブリ:死体皮膚をフリーザーから取り出し、バイオセイフティーフード内で30分間解凍した。皮膚を完全に解凍した後、開封した。死体皮膚を包装から取り出し、バイオセイフティーフードの台上に角質層側を上にして置いた。皮膚をキムワイプで軽くたたいて水分を除去し、次いで新鮮PBSを噴霧し、再度水分を除去した。この工程をさらに3回繰り返して、皮膚上の任意の残渣を除去した。次いで、レセプターウェルに脱気したレセプター液を充填した。テフロンコーティングした撹拌子を各レセプターウェルに加えた。解凍した死体皮膚を検査し、厚さが均一で、表面に目に見える損傷のない領域だけを用いた。皮膚を約2cm×2cmの正方形に切断した。皮膚片をドナーウェルの中央に角質層(SC)側を上にして置いた。皮膚を中央に置き、端を平らにした。次いで、ドナーおよびレセプターウェルを並べ、クランプで一緒に固定した。適宜、レセプター液を追加した。気泡があれば、セルを傾けて試料ポートから空気を逃がして除去した。次いで、拡散セルを撹拌中のドライブロックヒーター中に置き、レセプター液から20分間再水和させた。ブロックヒーターは実験の間中持続的に撹拌しながら32℃に維持した。皮膚を20分間水和させ、各皮膚切片のバリア完全性を試験した。膜完全性チェック試験が完了した後、全レセプターチャンバー容積をレセプター液で置き換えた。
【0164】
製剤適用手順:製剤を皮膚の角質層に適用した。一回投与法をこの試験のために用いた。試験品を、ポジティブディスプレイスメント方式ニチリョーピペッターを用いて10μl用量で皮膚に適用した。次いで、製剤をガラス棒を用いて皮膚の表面全体に拡げた。実験中、セルは蓋をしないままにした。セルあたりのパクリタキセルの理論用量を、以下の表13に示す。
【0165】
(表13)
*反復分析
【0166】
レセプター液のサンプリング:3、6、12および24時間の時点で、試料の300μL一定量をレセプターウェルから目盛付きハミルトン型インジェクターシリンジを用いて引き出した。新鮮レセプター媒質を加えて、試料の300μL一定量を置き換えた。
【0167】
テープ剥離および熱分離:24時間の時点で、皮膚をPBS/エタノールに浸漬したキムワイプで拭いて清浄にした。残存製剤を拭き取り、皮膚をキムワイプで乾燥した後、角質層を3回テープ剥離し-各テープ剥離はセロハンテープを皮膚に均一な圧で適用すること、およびテープを剥がすことで構成された。テープ片を回収し、後日分析するために凍結した。最初の3つのテープ片は角質層の最も上の層を除去し、追加の皮膚清浄段階としてはたらく。活性物質は典型的にはこの領域に完全に吸収されるとは考えられない。これらのテープ片は通常は物質収支定量のために分析するにすぎない。皮膚をテープ剥離した後、各片の表皮を次いでピンセットまたはスパチュラを用いて下にある真皮組織から分離した。表皮および真皮組織を回収し、4mLホウケイ酸ガラスバイアルに入れた。すべての皮膚片を分離した後、抽出溶媒の一定量をガラスバイアルに加えた。この工程は、2mLのDMSOをバイアルに加えること、および32℃で24時間インキュベートすることで構成された。抽出時間がすぎた後、抽出液の試料一定量300μLを回収してろ過した。
【0168】
試料の分析:試料一定量を、前述の分析法を用いて、パクリタキセルについて分析した。
【0169】
結果:
以下の表14の結果は、製剤F1~F13の様々な時点のレセプター液中のパクリタキセルの送達用量(μg/cm2)(経皮フラックス)および24時間経過後の表皮および真皮中に送達されたパクリタキセルの濃度(μg/cm2)(浸透)を示す。図1は、製剤F1~F7について、表皮中に送達されたパクリタキセルの濃度(μg/cm2)をグラフで示す。図2は、製剤F6*(反復分析)およびF8~F13について、表皮中に送達されたパクリタキセルの濃度(μg/cm2)をグラフで示す。図3は、製剤F1~F7について、真皮中に送達されたパクリタキセルの濃度(μg/cm2)をグラフで示す。図4は、製剤F6*(反復分析)およびF8~F13について、真皮中に送達されたパクリタキセルの濃度(μg/cm2)をグラフで示す。
【0170】
注:製剤F1~F6は1つのインビトロ試験で試験し、製剤F6*およびF8~F13は、異なる死体皮膚ロットによる、第二の別のインビトロ試験で試験した。製剤F6の分析は、第二の試験で評価し、他の製剤と比較し得るように、第二の試験でくり返した(F6*と記録した)。
【0171】
(表14)
*反復分析
【0172】
表14の結果から明らかなとおり、パクリタキセルの皮膚(表皮および真皮)を通過しての経皮フラックスは、なし、または無視できる量、すなわち0.01μg/cm2未満にすぎなかった。表14および図1、2、3&4の結果から明らかなとおり、パクリタキセルの皮膚(表皮および真皮)中への浸透は、水性製剤は皮膚浸透増強剤DGME(TRANSCUTOL P)を含んでいたにもかかわらず、水性製剤(F1~F3)よりも無水疎水性製剤(F4~F13)ではるかに高かった。結果から、シクロメチコンを含む無水疎水性製剤は、シクロメチコンなしの無水疎水性製剤よりも高い皮膚浸透(表皮および真皮)を示したことも明らかである。加えて、結果は、他の皮膚浸透増強剤をシクロメチコンを含む無水疎水性製剤に加えても、これらの組成物の皮膚浸透(表皮および真皮)にほとんど、またはまったく効果がなかったことも示している。
【0173】
実施例10-皮膚転移試験のための製剤
表15に示す以下の軟膏製剤を、皮膚転移試験で用いるために調製した。
【0174】
(表15)
【0175】
パクリタキセルナノ粒子を含む、表15に挙げる製剤を、それぞれ6Kgのバッチサイズで製造した。次いで、製剤を15gmのラミネートチューブに包装した。
【0176】
ロットF14、F15、およびF16の製造工程は以下のとおりであった:ワセリン、鉱油、パラフィンワックス、およびシクロメチコンの一部を容器に加え、プロペラミキサーで混合しながら融解し、均質になるまで、52±3℃に加熱した。パクリタキセルナノ粒子を、シクロメチコンの別の一部を含む容器に加え、まずスパチュラで混合してナノ粒子を湿らせ、次いで容器を氷/水浴中に維持しながら、S25-25G分散ツールを備えたIKA Ultra Turrax Homogenizerで均質なスラリーが得られるまで混合した。次いで、スラリーをワセリン/パラフィンワックス容器に、プロペラミキサーで混合しながら加え、続いてシクロメチコンの残りの部分ですすぎ、バッチが52±3℃で目視により均質になるまで混合した。次いで、バッチをSilversonホモジナイザーを用いてホモジナイズした。その後、バッチをプロペラミキサーで均質な軟膏が形成されるまで混合し、35℃以下に冷却した。
【0177】
ロットF17の製造工程は以下のとおりであった:ワセリンおよびパラフィンワックスを容器に加え、プロペラミキサーで混合しながら融解し、均質になるまで、52±3℃に加熱した。パクリタキセルナノ粒子を、シクロメチコンおよび鉱油の一部を含む容器に加え、まずスパチュラで混合してナノ粒子を湿らせ、次いで容器を氷/水浴中に維持しながら、S25-25G分散ツールを備えたIKA Ultra Turrax Homogenizerで均質なスラリーが得られるまで混合した。次いで、スラリーをワセリン/パラフィンワックス容器に、プロペラミキサーで混合しながら加え、続いて鉱油の残りの部分ですすぎ、バッチが52±3℃で目視により均質になるまで混合した。次いで、バッチをSilversonホモジナイザーを用いてホモジナイズした。その後、バッチをプロペラミキサーで均質な軟膏が形成されるまで混合し、35℃以下に冷却した。
【0178】
表15における各製剤の化学および物理分析結果を、表16~19に25℃でT=0、1ヶ月、および3ヶ月について示す。
【0179】
(表16)
注1:灰白色~黄色の軟膏
注2:T-Eスピンドルを備えヘリパスをオンにしたヘリパススタンド上のBrookfield RV粘度計により、10RPM、室温で45秒間。
【0180】
(表17)
注1:灰白色~黄色の軟膏
注2:T-Eスピンドルを備えヘリパスをオンにしたヘリパススタンド上のBrookfield RV粘度計により、10RPM、室温で45秒間。
【0181】
(表18)
注1:灰白色~黄色の軟膏
注2:T-Eスピンドルを備えヘリパスをオンにしたヘリパススタンド上のBrookfield RV粘度計により、10RPM、室温で45秒間。
【0182】
(表19)
注1:灰白色~黄色の軟膏
注2:T-Eスピンドルを備えヘリパスをオンにしたヘリパススタンド上のBrookfield RV粘度計により、10RPM、室温で45秒間。
【0183】
実施例11-皮膚転移乳癌の局所処置のための個人患者拡大利用試験(Expanded Access Trial)
表15の製剤は、皮膚転移乳癌の局所処置のための個人ヒト患者拡大利用試験で用いるためのものである。この拡大利用試験において、乳癌由来皮膚転移を有する対象に、0.3%パクリタキセルナノ粒子軟膏(表15の製剤F15)を患部に局所適用する。試験登録前に、手術歴、放射線照射歴、化学療法、および他の皮膚転移の潰瘍化までの時間を含む、病歴情報を対象から収集する。処置の開始前に、診療所で転移の写真(物差し付き)を撮り、計測(処置領域)を行う。生検または血液検査は行わない。適用前に処置領域を水(および必要な場合はマイルドな石鹸)で優しく洗浄し、乾燥する。対象は軟膏を、手袋をはめた手で皮膚被覆(上皮/真皮の被覆)を有する転移に適用する。軟膏を潰瘍化領域には適用しない。初回の処置時に臨床医療スタッフによって指示されるとおり、「硬貨の厚さ」の層の軟膏を転移に適用する。軟膏適用部位を密封包帯(TEGADERMまたはSOLOSITE)で覆う。対象は、1日1回、ほぼ同じ時刻に2週間、最初の適用と同じ技術を用いて転移を再処置する。対象は次いで、反応の検討のために来院し、有害事象があれば診療記録に記録する。処置部位の写真(物差し付き)を撮り、病変を計測する。対象は医師の承認があればさらに2週間処置を行うことができ、次いで最終の受診のために来院し、処置部位の写真(物差し付き)を撮り、病変を計測する。有害事象を診療記録に記録する。対象および医師が要求すれば、データの検討および医師との相談後、前述のプランに続いてより高用量または低用量を許可してもよい。休薬期間は必要ない。対象および医師が要求すれば、データの検討および医師との相談後、同じ用量(0.3%パクリタキセルナノ粒子軟膏)、用量漸増(1.0%および/または2.0%パクリタキセルナノ粒子軟膏)、または用量漸減(0.15%パクリタキセルナノ粒子軟膏)でのさらなる処置を許可してもよい。紅斑、ひび割れまたは潰瘍化が発生すれば、対象は処置部位を水(および必要な場合はマイルドな石鹸)で洗浄し、評価のために来院する。処置部位の写真(物差し付き)を撮り、病変を計測し、医師が承認するまでさらなる軟膏を適用しない。試験の終点は、皮膚転移状態の治療的改善を示す、皮膚転移の低減を示す。
【0184】
実施例12-皮膚転移の第1/2相用量増加、安全性、耐容性および有効性試験
前記表15の製剤の3つを、ヒトの皮膚転移に対するFDA承認第1/2相用量増加、安全性、耐容性および有効性試験において用いた。試験は現在進行中である。これは、表15の製剤の3つ:F14(0.15%)、F16(1.0%)、およびF17(2.0%)を非黒色腫皮膚転移に1日2回、28日間局所適用して、安全性、耐容性、および予備的有効性を評価する、第1/2相、非盲検、用量増加試験であった。
【0185】
少なくとも1つの適格病変を含む、体幹または四肢上の50cm2の処置領域を、測定可能な腫瘍(最長の直径10mm以上)のRECIST(バージョン1.1)定義により基準線で判定した。処置領域内のすべての病変をカリパスで測定して、適格性を確認した。手袋をはめた手で、対象は製剤の1フィンガーティップユニット(FTU)を50cm2の処置領域に1日2回、毎日ほぼ同じ時刻に28日間適用した。1FTUは、成人の示指の遠位皮線から先端まで適用する、直径5mmのノズルのチューブから絞り出した軟膏製剤の量と定義される。対象は、用量適用訓練および初回処置適用の観察のために、第1日に来院した。さらなる受診は第8、15、29、および43日であった。最終受診は、有害事象を検討するために、最後の試験薬投与の30日後に完了した。試験参加は用量漸増相および用量拡大相に分ける。
【0186】
用量漸増相:用量漸増相の間、試験は、対象3名の第一のコホートが製剤F14(0.15%)での処置を開始する、標準の3+3用量上昇デザインに従った。安全性監視委員会は、対象3名の各コホートの最後の対象が15日間の処置を完了した後、すべての入手できたデータを検討して、用量漸増を継続し得るかどうかを決定した。
【0187】
用量拡大相:用量拡大相において、用量漸増相で決定した用量レベルで、対象の合計が最大12名に達するまで、さらなる対象を登録した。用量拡大相の対象は、同じ受診日に来院し、前述の用量漸増相と同じ評価を受けた。
【0188】
目的:試験の第一の目的は、製剤の予備的安全性および耐容性を判定することであった。第二の目的は、製剤の予備的有効性を判定して、処置領域の疼痛低減の可能性を試験し、転移病変に適用した製剤の薬物動態を記載することであった。
【0189】
母集団:非黒色腫皮膚転移を有する、18歳以上の、最低2名から最大24名の男性および女性ヒト対象。
【0190】
第一の終点:有害事象、臨床評価における変化、身体検査所見、およびバイタルサインによって示される、安全性および耐容性。
【0191】
第二の終点:以下の有効性に対する第二の終点のために、適格病変を測定可能な腫瘍(最長の直径10mm以上)のRECIST(バージョン1.1)定義により基準線で判定した(EISENHAUER et al. New response evaluation criteria in solid tumors: revised RECIST guideline (version 1.1). European Journal of Cancer. 2009; 45; 228-247)。
【0192】
客観的腫瘍反応、基準線と第43日(すなわち、投与計画に応じて用量漸増および拡大相における最後の投与の14日後)との間の処置領域内の適格腫瘍の直径合計における差と定義。腫瘍表面積および反応をすべての受診時に評価した。表面積の変化を、米国立衛生研究所(NIH)によって提供される較正グリッド測定システム(ImageJフリーウェア)を用いて評価した。病変をImageJを用いて測定し、分析した。
【0193】
客観的臨床反応は、完全奏効(CR)+部分奏効(PR)を有する対象と定義され、さらに最終処置の14日後の処置領域内の適格標的病変の最長直径の合計における変化として測定した、製剤による最終処置の14日後の完全奏効または部分奏効を達成した患者のパーセンテージとして定義される。処置に対する反応を、処置後の合計直径を処置前の合計直径で除した関数として評価した。
【0194】
最良総合反応は、試験処置の開始から処置の終わり、すなわち第43日までに記録された最良反応と定義される。
【0195】
完全奏効(CR)は、処置領域内の適格病変においていかなる検出可能な残存疾患もないと定義され;部分奏効(PR)は、基準線に比べて、処置領域内の適格病変の直径の合計における少なくとも30%の低減であり;かつ進行性疾患(PD)は、試験における最小合計を基準として、処置領域内の適格病変の直径の合計における少なくとも20%の増大である。加えて、合計は少なくとも5mmの絶対増大も示さなければならない。安定疾患(SD)は、PRまたはPDと定義されたものの間の適格病変の直径の合計と定義される。
【0196】
本試験への参加中の新しい非標的病変の出現は進行性疾患とはみなされない。
【0197】
処置領域の疼痛を数値評価スケール(NRS-11)により評価する。疼痛の変化を基準線から第43日まで分析する。
【0198】
全身曝露は下記により判定:Tmax、Cmax、AUC。
【0199】
予備的結果:進行中の試験の予備的結果は、ステージ4乳癌を有する女性の胸部の皮膚転移病変の写真を含む。図5は、基準線(第1日)に撮影した写真で、潰瘍化病変からの凝結した滲出液で覆われた指標病変(矢印)を示す。図6は、同じ処置部位に1日2回適用した製剤F14(0.15%)の局所処置後第8日に撮影した写真である。病変の表面は表皮欠損の領域を含み、推定的潰瘍化は真皮に限定される。図7は、同じ処置部位に1日2回適用した製剤F14(0.15%)の局所処置後第15日の写真である。病変の中央部に少量の古い滲出液が見られると共に、明らかな表皮潰瘍化は見られない。図8は、同じ処置部位に1日2回適用した製剤F14(0.15%)の局所処置後第29日の写真である。病変は、潰瘍化の証拠はなく、上皮化したようである。これに対し、潰瘍性皮膚乳癌転移の自然歴は、いったん表皮表面が腫瘍によって破られれば、急速に拡大し、真皮を通してさらに浸透する。したがって、処置製剤の皮膚転移疾患への局所適用は、患者に対する利益を提供する。
【0200】
実施例13-皮膚毒性試験
皮膚毒性試験を、表20に示す製剤を用いて行った。
【0201】
(表20)
【0202】
GLP対応試験をゲッティンゲンミニブタで実施して、体表面積の10%に毎日、28日間、局所適用した製剤の毒性を特徴づけた。表20に示す4つの製剤を、0.0、0.3、1.0、および3%の用量濃度に相関する、2mL/kgの最大可能量で適用し、これはそれぞれ0、4.9、16.5、および49.9mg/kg/日の用量レベルに変換される。知見の可逆性も、2週間の回復期間後に評価した。評価したパラメーターには、臨床所見、死亡率および瀕死チェック、皮膚スコア、体重、摂食量、眼検査、試験部位の写真、心電図、臨床病理学、生体分析および毒物動態評価、臓器重量、巨視的病理学ならびに組織病理学が含まれた。生存率、臨床徴候、皮膚刺激、体重、体重増加、摂食量、眼科所見、または心臓学パラメーターに製剤関連の影響はなかった。投薬期間中、すべての群で最小限の皮膚刺激が観察され、所見の頻度および重症度はプラシーボ対照と活性製剤処置群との間で同等であったため、媒体または手順関連と考えられた。したがって、製剤中のパクリタキセルナノ粒子の存在は、皮膚刺激に対して無視できる影響しかなかった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2023-07-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処置を必要とする対象における皮膚悪性腫瘍の処置法であって、複数のタキサンナノ粒子を含む組成物を該対象の患部に局所投与する段階を含む、方法。