(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023120399
(43)【公開日】2023-08-29
(54)【発明の名称】低反射物品ならびに関連するシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
C25D 11/16 20060101AFI20230822BHJP
C25D 11/04 20060101ALI20230822BHJP
C25D 11/06 20060101ALI20230822BHJP
C25D 11/18 20060101ALI20230822BHJP
C25D 11/26 20060101ALI20230822BHJP
C25D 11/30 20060101ALI20230822BHJP
C25D 11/34 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
C25D11/16 301
C25D11/04 302
C25D11/06 B
C25D11/18 301C
C25D11/18 301F
C25D11/18 305
C25D11/26 301
C25D11/26 302
C25D11/26 303
C25D11/30
C25D11/34 303
【審査請求】有
【請求項の数】26
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023104099
(22)【出願日】2023-06-26
(62)【分割の表示】P 2020527728の分割
【原出願日】2018-07-02
(31)【優先権主張番号】62/537,147
(32)【優先日】2017-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】520029963
【氏名又は名称】パシフィック ライト アンド ホログラム,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】ヴィーンシュ,ジュシュア ディー.
(72)【発明者】
【氏名】シン,ティナ
(72)【発明者】
【氏名】ブラックリー,ジョナサン シーマス
(57)【要約】 (修正有)
【課題】可視波長範囲内において比較的低い反射性を示す高品質物品、および前記物品を提供するための比較的効率的でコスト効果の高い方法を提供する。
【解決手段】物品は、一次細孔および二次細孔を有する表面を有する。二次細孔の少なくともいくつかは、例えば光吸収性染料等の薬剤を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属を含む基板を備える物品であって、
前記基板の表面は、一次細孔および二次細孔を含み;
前記一次細孔の平均直径は、前記二次細孔の平均直径より少なくとも4倍大きい、前記
物品。
【請求項2】
金属を含む基板を備える物品であって、
前記基板の表面は、一次細孔および二次細孔を含み;
前記一次細孔の平均直径は、500nm~15μmであり;
前記二次細孔の平均直径は、50nm~約250nmである、前記物品。
【請求項3】
前記一次細孔の平均直径が、前記二次細孔の平均直径より少なくとも4倍大きい、請求
項2に記載の物品。
【請求項4】
前記一次細孔の平均直径が、前記二次細孔の平均直径より少なくとも5倍大きい、請求
項1または請求項3に記載の物品。
【請求項5】
前記一次細孔の平均直径が、前記二次細孔の平均直径より少なくとも10倍大きい、請
求項1または請求項3に記載の物品。
【請求項6】
前記一次細孔の平均直径が、前記二次細孔の平均直径より少なくとも25倍大きい、請
求項1または請求項3に記載の物品。
【請求項7】
前記一次細孔の平均直径が、前記二次細孔の平均直径より大きくとも100倍大きい、
請求項1および請求項3~6のいずれか一項に記載の物品。
【請求項8】
前記一次細孔の平均直径が、少なくとも500nmである、請求項1および請求項3~
7のいずれか一項に記載の物品。
【請求項9】
前記一次細孔の平均直径が、少なくとも750nmである、請求項1~8のいずれか一
項に記載の物品。
【請求項10】
前記一次細孔の平均直径が、少なくとも900nmである、請求項1~9のいずれか一
項に記載の物品。
【請求項11】
前記一次細孔の平均直径が、少なくとも1μmである、請求項1~10のいずれか一項
に記載の物品。
【請求項12】
前記一次細孔の平均直径が、大きくとも15μmである、請求項1~11のいずれか一
項に記載の物品。
【請求項13】
前記一次細孔の平均直径が、大きくとも10μmである、請求項1~12のいずれか一
項に記載の物品。
【請求項14】
前記一次細孔の平均直径が、大きくとも5μmである、請求項1~13のいずれか一項
に記載の物品。
【請求項15】
前記物品が、前記一次細孔を含む領域を有し、前記物品の前記領域が、少なくとも0.
1の細孔比率を有する、請求項1~14のいずれか一項に記載の物品。
【請求項16】
前記物品が、前記一次細孔を含む領域を有し、前記物品の前記領域が、少なくとも0.
15の細孔比率を有する、請求項1~15のいずれか一項に記載の物品。
【請求項17】
前記物品が、前記一次細孔を含む領域を有し、前記物品の前記領域が、少なくとも0.
2の細孔比を有する、請求項1~16のいずれか一項に記載の物品。
【請求項18】
前記物品が、前記一次細孔を含む領域を有し、前記物品の前記領域が、少なくとも0.
25の細孔比率を有する、請求項1~17のいずれか一項に記載の物品。
【請求項19】
前記物品が、前記一次細孔を含む領域を有し、前記物品の前記領域が、大きくとも0.
3の細孔比率を有する、請求項1~18のいずれか一項に記載の物品。
【請求項20】
前記物品が、前記一次細孔を含む領域を有し、前記物品の前記領域が、大きくとも0.
25の細孔比率を有する、請求項1~17のいずれか一項に記載の物品。
【請求項21】
前記物品が、前記一次細孔を含む領域を有し、前記物品の前記領域が、大きくとも0.
2の細孔比率を有する、請求項1~16のいずれか一項に記載の物品。
【請求項22】
前記二次細孔の平均直径が、大きくとも250nmである、請求項1および請求項3~
21のいずれか一項に記載の物品。
【請求項23】
前記二次細孔の平均直径が、大きくとも200nmである、請求項1~22のいずれか
一項に記載の物品。
【請求項24】
前記二次細孔の平均直径が、大きくとも150nmである、請求項1~23のいずれか
一項に記載の物品。
【請求項25】
前記二次細孔の平均直径が、少なくとも50nmである、請求項1および請求項3~2
4のいずれか一項に記載の物品。
【請求項26】
前記二次細孔の平均直径が、少なくとも75nmである、請求項1~25のいずれか一
項に記載の物品。
【請求項27】
前記二次細孔の平均直径が、少なくとも90nmである、請求項1~26のいずれか一
項に記載の物品。
【請求項28】
前記二次細孔の平均直径が、少なくとも100nmである、請求項1~27のいずれか
一項に記載の物品。
【請求項29】
前記二次細孔が、少なくとも10の平均アスペクト比を有する、請求項1~28のいず
れか一項に記載の物品。
【請求項30】
前記二次細孔が、少なくとも15の平均アスペクト比を有する、請求項1~29のいず
れか一項に記載の物品。
【請求項31】
前記二次細孔が、少なくとも20の平均アスペクト比を有する、請求項1~30のいず
れか一項に記載の物品。
【請求項32】
前記二次細孔が、少なくとも25の平均アスペクト比を有する、請求項1~31のいず
れか一項に記載の物品。
【請求項33】
前記二次細孔が、大きくとも40の平均アスペクト比を有する、請求項1~32のいず
れか一項に記載の物品。
【請求項34】
前記二次細孔が、大きくとも35の平均アスペクト比を有する、請求項1~33のいず
れか一項に記載の物品。
【請求項35】
光吸収剤をさらに含む、請求項1~34のいずれか一項に記載の物品。
【請求項36】
前記二次細孔の少なくともいくつかが、前記光吸収剤を含む、請求項35に記載の物品
。
【請求項37】
前記光吸収剤が、可視光吸収剤を含む、請求項35または請求項36に記載の物品。
【請求項38】
前記光吸収剤が、染料を含む、請求項35~37のいずれか一項に記載の物品。
【請求項39】
前記染料が、水溶性染料を含む、請求項38に記載の物品。
【請求項40】
前記染料が、黒色ジアゾ染料を含む、請求項38に記載の物品。
【請求項41】
前記染料が、6-アミノ-4-ヒドロキシ-3-[[7-スルホナト-4-[(4-ス
ルホナトフェニル)アゾ]-1-ナフチル]アゾ]ナフタレン-2,7-ジスルホン酸四
ナトリウム;(6Z)-4-アセトアミド-5-オキソ-6-[[7-スルホナト-4-
(4-スルホナトフェニル)アゾ-1-ナフチル]ヒドラゾノ]ナフタレン-1,7-ジ
スルホン酸四ナトリウム;ニグロシン;CaswellブラックHBL染料;スダンブラ
ックB、ニグロシン(Nigrosin);アシッドバイオレット5;アシッドバイオレ
ット7;アシッドバイオレット9;アシッドバイオレット17;アシッドバイオレット1
9;およびプロセスブラックからなる群から選択される要素を含む、請求項38に記載の
物品。
【請求項42】
前記光吸収剤が、金属不含アゾ染料、スルホン化クマリン染料、金属化アゾ染料、アゾ
/アントラキノン染料、金属不含染料、トリフェニルメタン染料および官能化アントラキ
ノン染料からなる群から選択される要素を含む、請求項38に記載の物品。
【請求項43】
前記光吸収剤が、カーボンブラックを含む、請求項35~37のいずれか一項に記載の
物品。
【請求項44】
前記カーボンブラックが、親水性カーボンブラックを含む、請求項43に記載の物品。
【請求項45】
前記カーボンブラックが、カーボンブラックナノ粒子を含む、請求項43または請求項
44に記載の物品。
【請求項46】
前記カーボンブラックナノ粒子が、大きくとも50nmの平均直径を有する、請求項4
5に記載の物品。
【請求項47】
前記光吸収剤が、カーボンナノチューブを含む、請求項35~37のいずれか一項に記
載の物品。
【請求項48】
前記カーボンナノチューブが、親水性カーボンナノチューブを含む、請求項47に記載
の物品。
【請求項49】
前記物品の表面が、400nm~700nmの波長で大きくとも0.0002の反射率
を有する、請求項1~48のいずれか一項に記載の物品。
【請求項50】
前記物品の表面が、400nm~700nmの波長で大きくとも0.00015の反射
率を有する、請求項1~49のいずれか一項に記載の物品。
【請求項51】
前記物品の表面が、400nm~700nmの波長で大きくとも0.00013の反射
率を有する、請求項1~50のいずれか一項に記載の物品。
【請求項52】
前記物品の表面が、400nm~700nmの波長で大きくとも0.0001の反射率
を有する、請求項1~51のいずれか一項に記載の物品。
【請求項53】
前記物品の表面が、400nm~700nmの波長で0.0001~0.0002の反
射率を有する、請求項1~52のいずれか一項に記載の物品。
【請求項54】
前記反射率が、少なくとも450nmの波長で測定される、請求項49~53のいずれ
か一項に記載の物品。
【請求項55】
前記反射率が、少なくとも500nmの波長で測定される、請求項49~53のいずれ
か一項に記載の物品。
【請求項56】
前記反射率が、少なくとも520nmの波長で測定される、請求項49~53のいずれ
か一項に記載の物品。
【請求項57】
前記反射率が、大きくとも650nmの波長で測定される、請求項48~56のいずれ
か一項に記載の物品。
【請求項58】
前記反射率が、大きくとも600nmの波長で測定される、請求項48~56のいずれ
か一項に記載の物品。
【請求項59】
前記反射率が、大きくとも550nmの波長で測定される、請求項48~56のいずれ
か一項に記載の物品。
【請求項60】
前記反射率が、532nmの波長で測定される、請求項48~59のいずれか一項に記
載の物品。
【請求項61】
前記物品の表面が、400nm~700nmの第1の波長で第1の反射率を有し;
前記物品の表面が、400nm~700nmの第2の波長で第2の反射率を有し;
前記第1の波長は、前記第2の波長と異なり;
前記第1の反射率は、前記第2の反射率と異なる、請求項1~60のいずれか一項に記
載の物品。
【請求項62】
前記第1の波長が、前記第2の波長より少なくとも25nm長い、請求項61に記載の
物品。
【請求項63】
前記第1の波長が、前記第2の波長より少なくとも50nm長い、請求項61に記載の
物品。
【請求項64】
前記第1の波長が、前記第2の波長より少なくとも75nm長い、請求項61に記載の
物品。
【請求項65】
前記第1の波長が少なくとも635nmであり、前記第2の波長が大きくとも560n
mである、請求項61に記載の物品。
【請求項66】
前記第1の波長が少なくとも635nmであり、前記第2の波長が大きくとも490n
mである、請求項61に記載の物品。
【請求項67】
前記第1の波長が少なくとも520nmであり、前記第2の波長が大きくとも490n
mである、請求項61に記載の物品。
【請求項68】
前記物品の表面が、10nm~400nmの波長で大きくとも0.0002の反射率を
有する、請求項1~67のいずれか一項に記載の物品。
【請求項69】
前記反射率が、6°の入射角で測定される、請求項48~68のいずれか一項に記載の
物品。
【請求項70】
前記反射率が、6°の反射角で測定される、請求項48~69のいずれか一項に記載の
物品。
【請求項71】
前記反射率が、入射角および前記入射角と等しい反射角で測定される、請求項48~6
8のいずれか一項に記載の物品。
【請求項72】
前記金属が、アルミニウム、チタン、ニオブ、タンタル、マグネシウムおよび亜鉛から
なる群から選択される要素を含む、請求項1~71のいずれか一項に記載の物品。
【請求項73】
前記金属が、アルミニウムを含む、請求項1~72のいずれか一項に記載の物品。
【請求項74】
前記基板が、前記金属を含む合金を含む、請求項1~73のいずれか一項に記載の物品
。
【請求項75】
前記合金が、1000シリーズアルミニウム合金、2000シリーズアルミニウム合金
、3000シリーズアルミニウム合金、4000シリーズアルミニウム合金、5000シ
リーズアルミニウム合金、6000シリーズアルミニウム合金、および7000シリーズ
アルミニウム合金からなる群から選択される要素を含む、請求項74に記載の物品。
【請求項76】
前記基板の一部が、酸化物を含み、前記酸化物は、前記金属を含む、請求項1~75の
いずれか一項に記載の物品。
【請求項77】
前記二次細孔が、前記酸化物の部分に存在する、請求項76に記載の物品。
【請求項78】
前記物品の表面が、フルオロ-アルミネートを含む、請求項1~77のいずれか一項に
記載の物品。
【請求項79】
前記物品の表面が、水和酸化アルミニウムを含む、請求項1~77のいずれか一項に記
載の物品。
【請求項80】
請求項1~79のいずれか一項に記載の物品を含むシステム。
【請求項81】
光学システムを含む、請求項80に記載のシステム。
【請求項82】
ホログラフィック投影装置、カメラ、望遠鏡、色選択フィルタ、フォトニックセンサ用
の筐体、太陽光集光器、太陽熱システム、情報表示システム、および感光性材料を保存す
るためのシステムからなる群から選択される要素を含む、請求項80に記載のシステム。
【請求項83】
ホログラフィック投影装置を含む、請求項80に記載のシステム。
【請求項84】
請求項1~79のいずれか一項に記載の物品を形成するステップを含む方法。
【請求項85】
湿式エッチングするステップをさらに含む、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
陽極酸化するステップをさらに含む、請求項84または請求項85に記載の方法。
【請求項87】
封孔するステップをさらに含む、請求項84~86のいずれか一項に記載の方法。
【請求項88】
金属を含む物品を化学エッチングして、前記物品に一次細孔を形成するステップと;
前記一次細孔を含む前記物品を陽極酸化して二次細孔を形成し、それにより前記一次細
孔および前記二次細孔を含む表面を有する物品を提供するステップと
を含む方法であって、
i)前記一次細孔の平均直径は、前記二次細孔の平均直径より少なくとも10倍大きい
こと;および
ii)前記一次細孔の平均直径は、500nm~15μmであり、前記二次細孔の平均
直径は、50nm~約150nmであること
の条件のうち少なくとも1つが成立する、前記方法。
【請求項89】
i)が成立する、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
ii)が成立する、請求項88または請求項89に記載の方法。
【請求項91】
前記二次細孔の少なくともいくつかの中に光吸収剤を配置するステップをさらに含む、
請求項88~90のいずれか一項に記載の方法。
【請求項92】
前記光吸収剤が、少なくとも10℃の温度で二次細孔内に配置される、請求項91に記
載の方法。
【請求項93】
前記光吸収剤が、高くとも90℃の温度で二次細孔内に配置される、請求項91または
請求項92に記載の方法。
【請求項94】
一次細孔および二次細孔を含む前記基板を、封孔プロセスに供するステップをさらに含
む、請求項88~93のいずれか一項に記載の方法。
【請求項95】
前記封孔プロセスが、前記二次細孔の少なくともいくつかの中に前記光吸収剤を配置す
るステップの後に行われる、請求項93または請求項94に記載の方法。
【請求項96】
前記封孔プロセスが、熱水封孔を含む、請求項94または請求項95に記載の方法。
【請求項97】
前記封孔プロセスが、前記一次細孔および二次細孔を含む前記物品の少なくとも一部を
、少なくとも80℃の温度を有する水中に配置することを含む、請求項96に記載の方法
。
【請求項98】
前記封孔プロセスが、蒸気を使用することを含む、請求項96または請求項97に記載
の方法。
【請求項99】
前記封孔プロセスが、水性酢酸ニッケルを使用することを含む、請求項96~98のい
ずれか一項に記載の方法。
【請求項100】
前記封孔プロセスが、中温封孔を含む、請求項94または請求項95に記載の方法。
【請求項101】
前記封孔プロセスが、前記一次細孔および二次細孔を含む前記物品の少なくとも一部を
、高くとも80℃の温度を有する水中に配置することを含む、請求項100に記載の方法
。
【請求項102】
前記水が、金属塩および有機添加剤からなる群から選択される少なくとも1つの要素を
含む、請求項100または請求項101に記載の方法。
【請求項103】
前記封孔プロセスが、低温封孔を含む、請求項94または請求項95に記載の方法。
【請求項104】
前記封孔プロセスが、高くとも30℃の温度を有する水中に前記一次細孔および二次細
孔を含む前記物品の少なくとも一部を含む、請求項103に記載の方法。
【請求項105】
化学エッチングが、腐食性溶液を使用することを含む、請求項88~104のいずれか
一項に記載の方法。
【請求項106】
前記腐食性溶液が、酸性溶液を含む、請求項105に記載の方法。
【請求項107】
前記酸溶液が、硫酸、塩酸、リン酸、クロム酸、硝酸、過塩素酸、臭化水素酸、ヨウ化
水素酸、ホウ酸、フッ化水素酸、トリフルオロ酢酸、p-トルエンスルホン酸、アミノメ
チルホスホン酸、およびトリフルオロメタンスルホン酸からなる群から選択される要素を
含む、請求項106に記載の方法。
【請求項108】
前記酸性溶液が、少なくとも1重量パーセントの酸を含む、請求項106または請求項
107に記載の方法。
【請求項109】
前記酸性溶液が、多くとも75重量パーセントの酸を含む、請求項106~108のい
ずれか一項に記載の方法。
【請求項110】
前記腐食性溶液が、アルカリ性溶液を含む、請求項105に記載の方法。
【請求項111】
前記アルカリ性溶液が、無機水酸化物を含む、請求項110に記載の方法。
【請求項112】
前記無機酸化物が、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、水酸化
セシウム、水酸化リチウム、および水酸化ルビジウムからなる群から選択される要素を含
む、請求項111に記載の方法。
【請求項113】
前記アルカリ性溶液が、少なくとも5重量パーセントの水酸化物を含む、請求項111
または請求項112に記載の方法。
【請求項114】
前記アルカリ性溶液が、多くとも30重量パーセントの水酸化物を含む、請求項111
~113のいずれか一項に記載の方法。
【請求項115】
前記アルカリ性溶液が、少なくとも12のpHを有する、請求項110~114のいず
れか一項に記載の方法。
【請求項116】
前記腐食性溶液が、酸化性ハロゲン化物塩を含む、請求項105に記載の方法。
【請求項117】
前記腐食性溶液が、少なくとも5重量パーセントの酸化性ハロゲン化物塩を含む、請求
項116に記載の方法。
【請求項118】
前記腐食性溶液が、多くとも40重量パーセントの酸化性ハロゲン化物塩を含む、請求
項116または請求項117に記載の方法。
【請求項119】
化学エッチングが、少なくとも25℃の温度で行われる、請求項88~118のいずれ
か一項に記載の方法。
【請求項120】
陽極酸化が、少なくとも10℃の温度で行われる、請求項88~119のいずれか一項
に記載の方法。
【請求項121】
陽極酸化が、少なくとも20℃の温度で行われる、請求項88~119のいずれか一項
に記載の方法。
【請求項122】
陽極酸化が、少なくとも30℃の温度で行われる、請求項88~119のいずれか一項
に記載の方法。
【請求項123】
陽極酸化が、少なくとも35℃の温度で行われる、請求項88~119のいずれか一項
に記載の方法。
【請求項124】
陽極酸化が、高くとも50℃の温度で行われる、請求項119~123のいずれか一項
に記載の方法。
【請求項125】
陽極酸化が、高くとも40℃の温度で行われる、請求項119~123のいずれか一項
に記載の方法。
【請求項126】
陽極酸化が、無機酸を含む溶液を使用して行われる、請求項88~125のいずれか一
項に記載の方法。
【請求項127】
前記溶液が、少なくとも1重量パーセントの無機酸を含む、請求項126に記載の方法
。
【請求項128】
前記溶液が、少なくとも5重量パーセントの無機酸を含む、請求項126に記載の方法
。
【請求項129】
前記溶液が、多くとも90重量パーセントの無機酸を含む、請求項126~128のい
ずれか一項に記載の方法。
【請求項130】
前記溶液が、多くとも85重量パーセントの無機酸を含む、請求項126~128のい
ずれか一項に記載の方法。
【請求項131】
前記無機酸が、硫酸、塩酸、リン酸、クロム酸、硝酸、過塩素酸、臭化水素酸、ヨウ化
水素酸、ホウ酸、およびフッ化水素酸からなる群から選択される要素を含む、請求項12
6~128のいずれか一項に記載の方法。
【請求項132】
陽極酸化が、少なくとも5ボルトの電圧を前記物品に印加することを含む、請求項88
~131のいずれか一項に記載の方法。
【請求項133】
印加電圧が、大きくとも30ボルトである、請求項132に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、35U.S.C.§119に従い、2017年7月26日に出願した米国特
許出願第62/537,147号、名称「Low Visible-Light Ref
lection Anodized Aluminum Surfaces」に基づく優
先権を主張し、参照によりその全内容が本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本開示は、低反射物品ならびに関連するシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
低反射表面は、様々な用途において望ましい。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、特に可視波長範囲内において比較的低い反射性を示す高品質物品を提供する
。物品は、例えば、典型的には可視波長範囲内において比較的高い反射性を示すアルミニ
ウム等の材料で作製され得る。物品は、様々な設定で、例えば、ホログラフィックシステ
ム、カメラ、望遠鏡、色選択フィルタ、フォトニックセンサ用の筐体、太陽光集光器、太
陽熱システム、情報表示システム、および感光性材料を保存するためのシステムを含む光
学システム等で、有利に使用され得る。物品の比較的低い反射性は、さもなくば望ましく
ない反射可視光の比較的大きいバックグラウンドとなり得るものを劇的に低減し、それに
より光学システムの正確性、信頼性および実用性を向上させ得るという点で、特に有益と
なり得る。
【0005】
本開示はまた、そのような物品を提供するための比較的効率的でコスト効果の高い方法
、およびそのような物品を含むシステムを提供する。
【0006】
アルミニウム、アルミニウム合金および/または他の金属で形成された物品の使用は、
材料が比較的安価で、入手可能であり、所望の形状およびサイズに容易に機械加工され得
るため、光学産業および多くの他の産業において普遍的である。したがって、本明細書に
おいて開示される技術は、商業的に極めて適用可能である。
【0007】
一般的な態様において、本開示は、金属を含む基板を含む物品を提供する。基板の表面
は、一次細孔および二次細孔を含む。一次細孔の平均直径は、二次細孔の平均直径より少
なくとも4倍大きい。
【0008】
別の一般的な態様において、本開示は、金属を含む基板を含む物品を提供する。基板の
表面は、一次細孔および二次細孔を含む。一次細孔の平均直径は、500nm~15μm
である。二次細孔の平均直径は、50nm~約250nmである。
【0009】
いくつかの実施形態において、一次細孔の平均直径は、二次細孔の平均直径より少なく
とも4(例えば、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも25、少なくとも50、少
なくとも75)倍大きい。
【0010】
いくつかの実施形態において、一次細孔の平均直径は、二次細孔の平均直径より大きく
とも100倍大きい。
【0011】
いくつかの実施形態において、一次細孔の平均直径は、少なくとも500nm(例えば
、少なくとも750nm、少なくとも900nm、少なくとも1μm)である。
【0012】
いくつかの実施形態において、一次細孔の平均直径は、大きくとも15μm(例えば、
大きくとも10μm、大きくとも5μm)である。
【0013】
いくつかの実施形態において、物品は、一次細孔を含む領域を有し、物品のその領域は
、少なくとも0.1(例えば、少なくとも0.15、少なくとも0.2、少なくとも0.
25)および/または大きくとも0.3(例えば、大きくとも0.25、大きくとも0.
2)の細孔比率を有する。
【0014】
いくつかの実施形態において、二次細孔の平均直径は、大きくとも250nm(例えば
、大きくとも200nm、大きくとも150nm)である。
【0015】
いくつかの実施形態において、二次細孔の平均直径は、少なくとも50nm(例えば、
少なくとも75nm、少なくとも90nm、少なくとも100nm)である。
【0016】
いくつかの実施形態において、二次細孔は、少なくとも10(例えば、少なくとも15
、少なくとも20、少なくとも25)、および/または大きくとも40(例えば大きくと
も35)の平均アスペクト比を有する。
【0017】
いくつかの実施形態において、物品は、光吸収剤をさらに含む。光吸収剤は、例えば、
二次細孔内にあってもよい。光吸収剤は、可視光吸収剤であってもよい。光吸収剤は、染
料(例えば、水溶性染料、黒色ジアゾ染料)であってもよい。いくつかの実施形態におい
て、染料は、6-アミノ-4-ヒドロキシ-3-[[7-スルホナト-4-[(4-スル
ホナトフェニル)アゾ]-1-ナフチル]アゾ]ナフタレン-2,7-ジスルホン酸四ナ
トリウム;(6Z)-4-アセトアミド-5-オキソ-6-[[7-スルホナト-4-(
4-スルホナトフェニル)アゾ-1-ナフチル]ヒドラゾノ]ナフタレン-1,7-ジス
ルホン酸四ナトリウム;ニグロシン;CaswellブラックHBL染料;スダンブラッ
クB、ニグロシン(Nigrosin);アシッドバイオレット5;アシッドバイオレッ
ト7;アシッドバイオレット9;アシッドバイオレット17;アシッドバイオレット19
;およびプロセスブラックからなる群から選択される要素である。いくつかの実施形態に
おいて、光吸収剤は、金属不含アゾ染料、スルホン化クマリン染料、金属化アゾ染料、ア
ゾ/アントラキノン染料、金属不含染料、トリフェニルメタン染料および官能化アントラ
キノン染料からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、光吸収剤は、カー
ボンブラック(例えば、親水性カーボンブラック、カーボンブラックナノ粒子)である。
カーボンブラック粒子は、大きくとも50nmの平均直径を有し得る。いくつかの実施形
態において、光吸収剤は、カーボンナノチューブ(例えば親水性カーボンナノチューブ)
を含む。
【0018】
いくつかの実施形態において、物品の表面は、400nm~700nmの波長で大きく
とも0.0002(例えば、大きくとも0.00015、大きくとも0.00013、大
きくとも0.0001)の反射率を有する。
【0019】
いくつかの実施形態において、物品の表面は、400nm~700nmの波長で0.0
001~0.0002の反射率を有する。
【0020】
いくつかの実施形態において、反射率は、少なくとも450nm(例えば、少なくとも
500nm、少なくとも520nm)および/または大きくとも650nm(例えば、大
きくとも600nm、大きくとも550nm)の波長で測定される。例えば、反射率は、
532nmの波長で測定され得る。
【0021】
いくつかの実施形態において、物品の表面は、400nm~700nmの第1の波長で
第1の反射率を有し;物品の表面は、400nm~700nmの第2の波長で第2の反射
率を有し;第1の波長は、第2の波長と異なり;第1の反射率は、第2の反射率と異なる
。第1の波長は、第2の波長より少なくとも25nm(例えば、少なくとも50nm、少
なくとも75nm)長くてもよい。第1の波長は、少なくとも635nmであり、第2の
波長は、大きくとも560nmであってもよい。第1の波長は、少なくとも635nmで
あってもよく、第2の波長は、大きくとも490nmであってもよい。第1の波長は、少
なくとも520nmであってもよく、第2の波長は、大きくとも490nmであってもよ
い。
【0022】
いくつかの実施形態において、物品の表面は、10nm~400nmの波長で大きくと
も0.0002の反射率を有する。
【0023】
いくつかの実施形態において、反射率は、6°の入射角で測定される。
【0024】
いくつかの実施形態において、反射率は、6°の反射角で測定される。
【0025】
いくつかの実施形態において、反射率は、入射角および前記入射角と等しい反射角で測
定される。
【0026】
いくつかの実施形態において、金属は、アルミニウム、チタン、ニオブ、タンタル、マ
グネシウムおよび亜鉛からなる群から選択される要素を含む。金属は、例えば、アルミニ
ウムであってもよい。
【0027】
いくつかの実施形態において、基板は、金属を含む合金を含む。合金は、例えば、10
00シリーズアルミニウム合金、2000シリーズアルミニウム合金、3000シリーズ
アルミニウム合金、4000シリーズアルミニウム合金、5000シリーズアルミニウム
合金、6000シリーズアルミニウム合金、および7000シリーズアルミニウム合金か
らなる群から選択され得る。
【0028】
いくつかの実施形態において、基板の一部は、酸化物を含み、酸化物は、金属を含む。
【0029】
いくつかの実施形態において、二次細孔は、酸化物の部分に存在する。
【0030】
いくつかの実施形態において、物品の表面は、フルオロ-アルミネートを含む。
【0031】
いくつかの実施形態において、物品の表面は、水和酸化アルミニウムを含む。
【0032】
一般的な態様において、本開示は、本明細書に記載の物品を含むシステムを提供する。
システムは、光学システムであってもよい。システムは、ホログラフィック投影装置、カ
メラ、望遠鏡、色選択フィルタ、フォトニックセンサ用の筐体、太陽光集光器、太陽熱シ
ステム、情報表示システム、および感光性材料を保存するためのシステムからなる群から
選択され得る。
【0033】
一般的な態様において、本開示は、本明細書に開示される物品を形成する方法を提供す
る。方法は、湿式エッチングするステップ、陽極酸化するステップ、および/または封孔
(sealing)するステップを含んでもよい。
【0034】
一般的な態様において、本開示は、金属を含む物品を化学エッチングして、物品に一次
細孔を形成するステップを含む方法を提供する。方法はまた、一次細孔を含む物品を陽極
酸化して二次細孔を形成し、それにより一次細孔および二次細孔を含む表面を有する物品
を提供するステップを含む。i)一次細孔の平均直径は、二次細孔の平均直径より少なく
とも10倍大きい;およびii)一次細孔の平均直径は、500nm~15μmであり、
二次細孔の平均直径は、50nm~約150nmである、という条件の少なくとも1つが
成立する。
【0035】
いくつかの実施形態において、方法は、二次細孔の少なくともいくつかの中に光吸収剤
を配置するステップをさらに含む。光吸収剤は、少なくとも10℃および/または高くと
も90℃の温度で二次細孔内に配置され得る。
【0036】
いくつかの実施形態において、方法は、一次細孔および二次細孔を含む基板を、封孔プ
ロセスに供するステップをさらに含む。
【0037】
いくつかの実施形態において、封孔プロセスは、二次細孔の少なくともいくつかの中に
光吸収剤を配置するステップの後に行われてもよい。
【0038】
いくつかの実施形態において、封孔プロセスは、熱水封孔を含む。封孔プロセスは、一
次細孔および二次細孔を含む物品の少なくとも一部を、少なくとも80℃の温度を有する
水中に配置することを含んでもよい。封孔プロセスは、蒸気を使用することを含んでもよ
い。封孔プロセスは、水性酢酸ニッケルを使用することを含んでもよい。
【0039】
いくつかの実施形態において、封孔プロセスは、中温封孔(mid-temperature sealing
)を含む。封孔プロセスは、一次細孔および二次細孔を含む物品の少なくとも一部を、高
くとも80℃の温度を有する水中に配置することを含んでもよい。水は、金属塩および有
機添加剤からなる群から選択される少なくとも1つの要素を含んでもよい。
【0040】
いくつかの実施形態において、封孔プロセスは、低温封孔を含む。封孔プロセスは、高
くとも30℃の温度を有する水中に一次細孔および二次細孔を含む物品の少なくとも一部
を含んでもよい。
【0041】
いくつかの実施形態において、化学エッチングは、腐食性溶液を使用することを含む。
【0042】
いくつかの実施形態において、腐食性溶液は、酸性溶液を含む。酸溶液は、硫酸、塩酸
、リン酸、クロム酸、硝酸、過塩素酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、ホウ酸、フッ化水素
酸、トリフルオロ酢酸、p-トルエンスルホン酸、アミノメチルホスホン酸、およびトリ
フルオロメタンスルホン酸からなる群から選択される要素を含んでもよい。酸性溶液は、
少なくとも1重量パーセントの酸および/または多くとも75重量パーセントの酸を含ん
でもよい。
【0043】
いくつかの実施形態において、腐食性溶液は、アルカリ性溶液を含む。アルカリ性溶液
は、無機水酸化物を含んでもよい。無機水酸化物は、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニ
ウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化リチウム、および水酸化ルビジウムから
なる群から選択される要素を含んでもよい。アルカリ性溶液は、少なくとも5重量パーセ
ントの水酸化物および/または多くとも30重量パーセントの水酸化物を含んでもよい。
アルカリ性溶液は、少なくとも12のpHを有してもよい。
【0044】
いくつかの実施形態において、腐食性溶液は、酸化性ハロゲン化物塩を含む。腐食性溶
液は、少なくとも5重量パーセントの酸化性ハロゲン化物塩および/または多くとも40
重量パーセントの酸化性ハロゲン化物塩を含んでもよい。
【0045】
いくつかの実施形態において、化学エッチングは、少なくとも25℃の温度で行われる
。
【0046】
いくつかの実施形態において、陽極酸化は、少なくとも10℃(例えば、少なくとも2
0℃、少なくとも30℃、少なくとも35℃)および/または高くとも50℃(例えば高
くとも40℃)の温度で行われる。
【0047】
いくつかの実施形態において、陽極酸化は、無機酸を含む溶液を使用して行われる。溶
液は、少なくとも1重量パーセント(例えば少なくとも5重量パーセントの無機酸)の無
機酸および/または多くとも90重量パーセント(例えば多くとも85重量パーセント)
の無機酸を含んでもよい。
【0048】
いくつかの実施形態において、無機酸は、硫酸、塩酸、リン酸、クロム酸、硝酸、過塩
素酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、ホウ酸、およびフッ化水素酸からなる群から選択され
る要素を含む。
【0049】
いくつかの実施形態において、陽極酸化は、少なくとも5ボルト(例えば少なくとも3
0ボルト)の電圧を物品に印加することを含む。
【0050】
図面は、全般的に、限定ではなく例示として、本明細書において議論される実施形態を
示す。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図2】
図1に示される物品を作製する方法の一実施形態におけるステップのフローチャートである。
【
図3-1】
図3A~Bは、
図2に示されるプロセスにおけるステップ中に作製された物品の断面図である。
【
図3-2】
図3C~Dは、
図2に示されるプロセスにおけるステップ中に作製された物品の断面図である。
【
図4】物品の走査型電子顕微鏡写真(SEM)である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
図1は、本開示による物品100を示す。物品100は、システム、例えば光学システ
ム、例えばホログラフィック投影装置、カメラ、望遠鏡、色選択フィルタ、フォトニック
センサ用の筐体、太陽光集光器、太陽熱システム、情報表示システム、および感光性材料
を保存するためのシステムの構成要素であってもよい。例えば、物品100は、そのよう
なシステムの筐体の一部であってもよい。任意選択で、物品100は、そのようなシステ
ムの内部構成要素の一部であってもよい。例えば、物品100は、光導体の一部であって
もよい。
【0053】
物品100は、比較的低い反射率(表面120に衝突する光のうち、表面120から反
射される光の割合)を示し得る表面120を有する基板110を有する。いくつかの実施
形態において、表面120は、大きくとも0.0002(例えば、大きくとも0.000
15、大きくとも0.00013、大きくとも0.0001)の反射率を有する。
【0054】
一般に、反射率は、対象となる1つまたは複数の波長で測定される。いくつかの実施形
態において、反射率は、400nm~700nmの波長(可視光)で決定される。例えば
、ある特定の実施形態において、反射率は、少なくとも450nm(例えば、少なくとも
500nm、少なくとも520nm)および/または大きくとも650nm(例えば、大
きくとも600nm、大きくとも550nm)の波長で測定される。いくつかの実施形態
において、反射率は、532nmで測定される。ある特定の実施形態において、反射率は
、10nm~400nm(紫外光)の波長範囲で決定される。
【0055】
一般に、反射率は、任意の所望の入射角および任意の所望の反射角を使用して決定され
得る。いくつかの実施形態において、反射率を決定する際、入射角は反射角と同じである
(鏡面反射)。ある特定の実施形態において、反射率を決定する際、反射角は入射角と異
なる。いくつかの実施形態において、反射率は、6°の入射角を使用して決定され、およ
び/または、反射率は、6°の反射角を使用して決定される。
【0056】
いくつかの実施形態において、表面120の反射率は、光の波長の関数である。例えば
、400nm~700nmの第1の波長における表面120の反射率は、400nm~7
00nmの異なる(第2の)波長における表面120の反射率と異なってもよい。ある特
定の実施形態において、第1の波長は、第2の波長より少なくとも25nm(例えば、少
なくとも50nm、少なくとも75nm)長い。いくつかの実施形態において、第1の波
長は、少なくとも635nmであり、第2の波長は、大きくとも560nmである。ある
特定の実施形態において、第1の波長は、少なくとも635nmであり、第2の波長は、
大きくとも490nmである。いくつかの実施形態において、第1の波長は、少なくとも
520nmであり、第2の波長は、大きくとも490nmである。
【0057】
図1に示されるように、物品は、一次細孔130、二次細孔140、および二次細孔1
40の少なくともいくつかの中に配置された光吸収剤150を含む。一次および二次細孔
のこの構成は、本明細書において「細孔内細孔」構造と呼ぶことができる。理論に束縛さ
れることを望まないが、これは、上で議論された有益な反射率特性をもたらす細孔および
光吸収材料のこの構成の独特の性質であると考えられる。
【0058】
物品100のいくつかの基本的特徴を記載したが、ここで物品100のある特定の詳細
を示す。
【0059】
一般に、基板110は、任意の適切な材料で形成され得る。典型的には、基板110は
、少なくとも1種の金属を含む材料で形成される。例示的な金属は、アルミニウム、チタ
ン、ニオブ、タンタル、マグネシウムおよび亜鉛を含む。いくつかの実施形態において、
基板110は、複数の異なる金属を含む材料、例えば合金(例えばアルミニウム合金)で
形成される。ある特定の実施形態において、基板110は、アルミニウム、銅、マンガン
、ケイ素、マグネシウム、および亜鉛から選択される少なくとも1種の追加の元素とを含
む合金で形成される。例示的なアルミニウム合金は、1000シリーズ、2000シリー
ズ、3000シリーズ、4000シリーズ、5000シリーズ、6000シリーズ、およ
び7000シリーズのアルミニウム合金を含む。
【0060】
基板110の表面120は、基板110が形成される金属または合金の酸化物で形成さ
れてもよい。以下でより詳細に議論されるように、いくつかの実施形態において、酸化物
は、物品100を作製するために使用される陽極酸化プロセスの副生成物であってもよい
。酸化物の厚さは、例えば、0.5ミクロン~50ミクロンの厚さ(例えば5ミクロン~
25ミクロンの厚さ)であってもよい。典型的には、二次細孔140は、物品100の酸
化物部分に形成されるが、本開示はこの様式に限定されない。
【0061】
図1を参照すると、一次細孔130は、一般に所望に応じて選択され得る平均長さを有
するように延在する。いくつかの実施形態において、この長さは、1ミクロン~20ミク
ロン(例えば5ミクロン~15ミクロン)である。
【0062】
いくつかの実施形態において、一次細孔130の平均直径は、二次細孔140の平均直
径の少なくとも4倍(例えば、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも25倍、
少なくとも50倍、少なくとも75倍)および/または大きくとも100倍(例えば、大
きくとも75倍、大きくとも50倍)である。細孔の群の平均直径は、細孔の群を含む物
品の表面のSEMを撮影することにより測定され得る。
【0063】
ある特定の実施形態において、一次細孔130の平均直径は、少なくとも500nm(
例えば、少なくとも750nm、少なくとも900nm、少なくとも1μm)および/ま
たは大きくとも15μm(例えば、大きくとも10μm、大きくとも5μm、大きくとも
1μm)である。一次細孔130の平均直径の例示的範囲は、500nm~15μm、7
50nm~1.25μm、1μm~1.5μm、および900nm~1.5μmを含む。
【0064】
いくつかの実施形態において、一次細孔130は、少なくとも0.1(例えば、少なく
とも0.15、少なくとも0.2、少なくとも0.25)および/または大きくとも0.
3(例えば、大きくとも0.25、大きくとも0.2)の細孔比率(金属体積に対する空
隙容積の比)を有する。一次細孔130の細孔比率の例示的範囲は、0.1~0.3、0
.1~0.2、0.15~0.25、0.2~0.3、および0.1~0.25を含む。
細孔比率は、Nova Quantachrome 4200e機器を使用して、77K
で吸着したN2量から全細孔容積を計算し、吸着等温線を決定することにより決定される
。データから、細孔比率を外挿することができる。
【0065】
ある特定の実施形態において、一次細孔130は、0.2~10(例えば、0.5~1
0、1~5)の平均アスペクト比を有する。
【0066】
いくつかの実施形態において、二次細孔140は、大きくとも250nm(例えば、大
きくとも200nm、大きくとも150nm、100nm)および/または少なくとも7
5nm(例えば、少なくとも90nm、少なくとも100nm)の二次細孔の平均直径を
有する。二次細孔140の平均直径の例示的範囲は、50nm~250nm、50nm~
100nm、75nm~125nm、100nm~250nm、および90nm~250
nmを含む。
【0067】
いくつかの実施形態において、二次細孔140は、0.5~5(例えば、0.5~4、
1~3)の細孔比率を有する。
【0068】
ある特定の実施形態において、二次細孔140は、少なくとも10(例えば、少なくと
も15、少なくとも20、少なくとも25)および/または大きくとも40(例えば大き
くとも35)の平均アスペクト比を有する。二次細孔140の平均アスペクト比の例示的
範囲は、10~40、15~35、20~40、25~40、および25~35を含む。
【0069】
光吸収剤150は、例えば、可視光吸収剤(400nm~700nmの波長範囲内の光
を吸収する薬剤)であってもよい。ある特定の実施形態において、光吸収剤150は、紫
外光吸収剤(10nm~400nmの波長範囲内の光を吸収する薬剤)である。
【0070】
いくつかの実施形態において、光吸収剤150は、染料、例えば水溶性染料である。そ
のような染料の例は、黒色ジアゾ染料を含む。例示的な黒色ジアゾ染料は、6-アミノ-
4-ヒドロキシ-3-[[7-スルホナト-4-[(4-スルホナトフェニル)アゾ]-
1-ナフチル]アゾ]ナフタレン-2,7-ジスルホン酸四ナトリウム;(6Z)-4-
アセトアミド-5-オキソ-6-[[7-スルホナト-4-(4-スルホナトフェニル)
アゾ-1-ナフチル]ヒドラゾノ]ナフタレン-1,7-ジスルホン酸四ナトリウム;ニ
グロシン;CaswellブラックHBL染料;スダンブラックB;ニグロシン(Nig
rosin);アシッドバイオレット5;アシッドバイオレット7;アシッドバイオレッ
ト9;アシッドバイオレット17;アシッドバイオレット19;およびプロセスブラック
を含む。また、光吸収剤である例示的な染料は、金属不含アゾ染料、スルホン化クマリン
染料、金属化アゾ染料、アゾ/アントラキノン染料、金属不含染料、トリフェニルメタン
染料および官能化アントラキノン染料を含む。
【0071】
ある特定の実施形態において、光吸収剤150は、特定色の吸収性を高め、他の波長の
光の存在が低減されたより狭い色帯域の反射をもたらすことができる。例えば、光学デバ
イスが緑色光を出力するように構成されるが、光源は赤色光および緑色光の両方を生成す
る場合、光吸収剤150として緑色染料が使用され得る。そのような構成では、緑色光の
実質的な成分が反射され、赤色光の実質的な成分が反射されない。
【0072】
ある特定の実施形態において、光吸収剤150は、カーボンブラックを含む。いくつか
の実施形態において、カーボンブラックは、親水性カーボンブラックの形態である。親水
性カーボンブラックは、例えば分散組成物の0.1~1重量パーセントの範囲内(例えば
0.4重量パーセント)の量の分散液の形態であってもよい。親水性カーボンブラック水
性分散液は市販されており、その炭素粒子は、親水性物質でコーティングされ、例えばア
クリルコーティングカーボンブラック粒子等である。市販の親水性カーボンブラック水性
分散液の例は、Aqua-Black162(親水性カーボンブラック、東海カーボン株
式会社製、平均二次粒子直径:110nm、カーボンブラック濃度:20重量%)および
Aqua-Black001を含む。任意選択で、カーボンブラック粒子は、炭素粒子の
表面上にカルボキシル基および/またはヒドロキシル基等の親水性官能基を提供すること
により親水性を付与するために、液相酸化または気相酸化によって酸化されてもよい。い
くつかの実施形態において、カーボンブラック粒子は、50nm以下(例えば、40nm
以下、30nm以下、20nm以下、10nm以下、1nm~50nm、10nm~50
nm、5nm~45nm)の平均直径を有するカーボンブラックナノ粒子である。
【0073】
いくつかの実施形態において、光吸収剤150は、カーボンナノチューブ、例えば、他
の方法の中でも共有結合表面修飾(例えばカルボン酸またはエステル基の導入)によって
親水化された親水性カーボンナノチューブ(例えば親水性カーボンナノ粒子およびカーボ
ンナノチューブの混合物として)を含む。
【0074】
物品100の様々な態様を説明したが、ここでそのような物品を作製する方法を示す。
【0075】
図2は、物品100を作製するために使用され得る方法200におけるある特定のステ
ップのフローチャートである。
図3A~3Dは、方法200におけるステップの結果を示
す。
【0076】
ステップ210において、事前物品(pre-article)310が準備される(
図3A)。
事前物品310は、金属または合金で形成される(上記の議論を参照されたい)。
【0077】
ステップ220において、事前物品310の表面320が化学エッチングされ、一次細
孔322を有する物品320を生成する(
図3B)。
【0078】
ステップ230において、物品320は陽極酸化され、一次細孔322および二次細孔
332を有する物品330を生成し、二次細孔332の少なくともいくつかは、一次細孔
322内に位置する(
図3C)。
【0079】
ステップ240において、光吸収剤342は、二次細孔332の少なくともいくつかの
中に配置され、物品340を生成する(
図3D)。
【0080】
ステップ250において、物品340は、封孔プロセスに供される。肉眼では、ステッ
プ250において行われた封孔プロセスは、物品340の表面の外観を実質的に変化させ
得ない。しかしながら、ステップ250において行われた封孔プロセスは、例えば物品3
40が溶媒中に浸漬された場合に二次細孔332の外に拡散する光吸収剤342の能力を
実質的に低減する。
【0081】
方法200を全般的に説明したが、ここでプロセスのある特定の詳細を示す。
【0082】
一般に、ステップ220は、任意の好適な方法により、および事前物品の少なくとも一
部に複数の一次細孔を生成するのに好適な任意の条件下で行うことができる。いくつかの
実施形態において、ステップ220は、所望の一次細孔を生成するのに十分に酸性または
十分にアルカリ性である腐食性溶液を使用することを含む。腐食性溶液の例は、1重量%
~75重量%の無機酸(例えば、硫酸、塩酸、リン酸、クロム酸、硝酸、過塩素酸、臭化
水素酸、ヨウ化水素酸、ホウ酸、フッ化水素酸等、およびそれらの好適な組合せ)を含む
酸性溶液、有機酸(例えば、トリフルオロ酢酸、p-トルエンスルホン酸、アミノメチル
ホスホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、シュウ酸等)を含む酸性溶液、5重量%~
30重量%の無機水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カ
リウム、水酸化セシウム、水酸化リチウム、水酸化ルビジウム)を含むアルカリ性溶液、
12超のpHを有するように調製された金属水酸化物溶液、5重量%~40重量%の酸化
性ハロゲン化物塩(例えば、塩化第二鉄および他の強酸化剤、例えば酸化セリウム)を含
む溶液、ならびに無機酸(例えば1重量%~75重量%)および反応性過酸化物または超
酸化物(例えば、1重量%~30重量%の過酸化水素、金属過酸化物、例えば過酸化ナト
リウム、過酸化バリウム、超酸化ナトリウム、超酸化カリウム等)の組合せを含む溶液を
含む。
【0083】
一般に、ステップ220は、一次細孔を生成するために、任意の好適な温度で、および
任意の好適な量に対して行うことができる。いくつかの実施形態において、ステップ21
0は、25℃で行われる。ある特定の実施形態において、ステップ220は、25℃超(
例えば、35℃~90℃、35℃~65℃、40℃~60℃、50℃~75℃)の温度で
行われる。ある特定の実施形態において、ステップ210は、少なくとも15秒間(例え
ば15秒~5分間)行われる。
【0084】
いくつかの実施形態において、事前物品が形成される材料(例えば、金属、金属合金)
は、ステップ220中の一次細孔の形成の速度に影響し得る。一例として、いくつかの実
施形態において、一次細孔は、比較的高いマグネシウムおよび亜鉛含量を有する合金で、
おそらくはそのような合金化金属のより高い反応性および/またはより低い酸化還元電位
に起因して比較的急速に形成し得る。別の例として、ある特定の実施形態において、一次
細孔は、比較的高いケイ素およびマンガン含量を有する合金で比較的緩やかに形成し得る
が、これは、潜在的により異方性の低いエッチングをもたらし得る。
【0085】
いくつかの実施形態において、物品は、ステップ220とステップ230との間で、好
適な溶媒(例えば脱イオン水)で洗浄され、中でも表面酸化物を除去し得る溶液中に短時
間浸漬される。そのような溶液の例は、アルカリ性溶液(例えば3重量%の水酸化ナトリ
ウム)である。
【0086】
一般に、ステップ230は、任意の好適な方法により、および二次細孔を生成するのに
好適な任意の条件下で達成され得る。いくつかの実施形態において、ステップ230は、
少なくとも10℃(例えば、少なくとも20℃、少なくとも30℃、少なくとも35℃)
の温度および/または高くとも50℃の温度で行われる。例示的な温度範囲は、15℃~
40℃、15℃~30℃、および10℃~35℃を含む。ある特定の実施形態において、
ステップ230は、少なくとも1分間(例えば、1分~500分間、10分~250分間
、20分~150分間、30分~150分間、50分~200分間)行われる。
【0087】
一般に、ステップ230は、好適な陽極酸化浴内で行われる。いくつかの実施形態にお
いて、陽極酸化浴は、1重量%~90重量%(例えば、5重量%~85重量%)の強無機
酸(上記の例を参照されたい)を含む。いくつかの実施形態において、陽極酸化浴は、硫
酸またはリン酸を含む。
【0088】
ステップ230は、典型的には電圧の印加を含む。いくつかの実施形態において、電圧
は、5~30ボルト(例えば、10ボルト~20ボルト、10ボルト~15ボルト、10
ボルト~30ボルト、20ボルト~30ボルト、5ボルト~15ボルト)である。
【0089】
任意選択で、物品は、ステップ230とステップ240との間で、好適な溶媒(例えば
脱イオン水)で洗浄されてもよい。黒色化剤および/または着色剤(その例は本明細書に
記載される)が、化学エッチングおよび陽極酸化された金属部分に組み込まれ、少なくと
も二次細孔内に黒色化剤および/または着色剤が組み込まれた封孔されていない金属部分
が得られる。
【0090】
ステップ240は、二次細孔の少なくともいくつかの中に配置された光吸収剤を望まし
くはもたらす任意の適切な技術を使用して行うことができる。いくつかの実施形態におい
て、ステップ240は、光吸収剤(例えば0.5重量%~10重量%の光吸収剤)を含む
溶液中に、一次および二次細孔を有する物品の少なくとも一部を浸漬することを含む。あ
る特定の実施形態において、溶液は、1種または複数種の水混和性溶媒(例えば、エタノ
ール、または任意の好適なC1~C5アルカノール、テトラヒドロフラン、アセトン、お
よびアセトニトリル)を含んでもよい水溶液である。
【0091】
一般に、ステップ240の間、物品は、そのような溶液中に、二次細孔内に光吸収剤を
所望通り配置させる期間浸漬され得る。いくつかの実施形態において、物品は、そのよう
な溶液中に、少なくとも1分間(例えば、1分~1時間、15分~45分間、5分~20
分間、20分~50分間、20分~40分間)浸漬される。
【0092】
一般に、ステップ240は、任意の適切な温度で行うことができる。ある特定の実施形
態において、ステップ240は、少なくとも10℃(例えば、10℃~80℃、40℃~
60℃、40℃~80℃)の温度で行われる。
【0093】
任意選択で、物品は、ステップ240とステップ250との間で、封孔の前に好適な溶
媒(例えば脱イオン水)で洗浄されてもよい。
【0094】
一般に、ステップ250は、中でも、ステップ240の後に存在する多孔質酸化アルミ
ニウム層を改変(例えば閉鎖)し、例えば物品が溶媒中に浸漬された際に二次細孔から出
ていく光吸収剤の能力を実質的に低減するために行われる。そのような封孔ステップがな
いと、陽極コーティングは粘着性を有し得る、ならびに/またはゴミ、グリース、油およ
び汚れの吸収性が比較的高くなり得る。封孔は、耐腐食性の向上をもたらし、陽極酸化さ
れた酸化物層の耐摩耗性に対する影響が比較的小さい。
【0095】
いくつかの実施形態において、ステップ250は、物品を沸騰水(例えば沸騰脱イオン
水)中に配置することにより行われる。封孔塩の様々な追加による他の解決策も使用され
得る。その例は、中温封孔および低温封孔を含む。
【0096】
ステップ250における熱水封孔は、一般に、物品を熱水(例えば96℃~100℃)
に浸漬することを含む。理論に束縛されることを望まないが、これは、水和酸化アルミニ
ウム(べーマイト)が細孔内に形成することをもたらすと考えられる。このプロセスは、
まず擬ベーマイトのゲルとしての水和酸化アルミニウムの沈殿が関与すると考えられる。
さらに、この沈殿は、封孔溶液の拡散、pHおよび化学組成により制御され得ると考えら
れる。pHの増加は、ゲルの濃縮を開始させると考えられ、結晶性擬ベーマイトが形成し
、実質的に細孔を充填する。本明細書に記載の様々な実施形態の金属部分の場合、封孔に
おいて二次細孔がほとんど充填されると考えられる。また、表面から擬ベーマイトが再結
晶してべーマイトを形成し、この水和酸化アルミニウム(べーマイト)は酸化アルミニウ
ムより大きい体積を有すると考えられる。
【0097】
高温脱イオン水中の封孔時間は様々となり得る。いくつかの実施形態において、封孔時
間は、15分未満であってもよい。高温封孔(例えば高温脱イオン水による封孔)の速度
は、一般に、封孔溶液の温度およびpHに依存する。例えば、96℃での封孔は、98℃
での封孔よりも6%長い封孔時間を伴い得る。この温度の依存性により、60~80℃で
作用する中温封孔は、より色が溶出しやすいプロセスとなり得る。
【0098】
いくつかの実施形態において、熱水封孔は、封孔されていない金属部分の少なくとも一
部を酢酸ニッケル水溶液(例えば水中0.1重量%~22.2重量%)中に浸漬すること
、および/または封孔されていない金属部分の少なくとも一部を蒸気で処理することを含
む。
【0099】
任意選択で、中温封孔が使用されてもよい。中温封孔溶液は、多くの場合、金属塩およ
び有機添加剤を含むが、エネルギーコストがより低い。中温封孔も依然として、酸化アル
ミニウムがべーマイトに水和することを利用している。
【0100】
低温封孔は、異なるメカニズムが関与する。このプロセスでは、封孔は、25~30℃
での含侵プロセスにより生じる。いくつかの実施形態において、封孔溶液中のフッ化物が
多孔質陽極酸化層を溶解し、次いで層の上部3~6μmにフルオロ-アルミネートとして
堆積する。このプロセスは、緩やかとなり得、また加熱により加速され得る。
【実施例0101】
アルミニウムの物品を清浄化し(石鹸を用いて洗浄し、水で完全に濯ぐことにより)、
脱脂して(油抽出溶媒を用いて)、油、グリースおよび汚れを表面から実質的に除去した
。次いで物品を3重量%の水酸化ナトリウム水溶液に3分間浸漬し、物品から酸化物を除
去した。物品の表面のSEM(図示せず)では、表面が一次および二次細孔を有さないこ
とが明らかであった。
【0102】
次に、物品を脱イオン水で洗浄し、1重量%の過酸化水素および6重量%の塩酸を含む
水溶液中に、50℃で2分間物品を浸漬することにより湿式エッチングした。湿式エッチ
ング後、物品を脱イオン水で洗浄し、次いで3重量%の水酸化ナトリウム中に3分間浸漬
して、表面酸化物を除去した。物品の表面のSEMを、
図4に示す。SEMは、物品の表
面における一次細孔の存在を示している。SEMはまた、表面がより粗く、実質的に増加
した表面積を有することを示している。
【0103】
次に、15重量%の硫酸水溶液中で試料を15ボルトで90分間陽極分極した。その後
、試料を希硫酸、脱イオン水中で濯いだ。得られた物品の表面のSEMを、
図5に示す。
SEMは、物品の表面における一次細孔および二次細孔の存在を示している。
【0104】
その後、Caswellブラック染料を使用して物品を染色し、次いで、封孔プロセス
として、表面を40℃の1.5重量%Ni(OAc)2水溶液に15分間暴露した。
【0105】
他の実施形態
ある特定の実施形態を示したが、本開示はそのような実施形態に限定されない。
【0106】
一例として、いくつかの実施形態において、二次細孔の少なくともいくつかは、2種以
上の光吸収剤を含んでもよい。
【0107】
別の例として、物品を作製するある特定の方法を説明したが、そのような物品を作製す
る他の方法が使用されてもよい。
【0108】
さらなる例として、物品を作製するある特定の方法を説明したが、そのような方法は、
異なる物品を作製するために使用されてもよい。
【0109】
さらに別の例として、光反射を低減するために光吸収剤が使用される実施形態を説明し
たが、本開示はこの様式に限定されない。例えば、ある特定の実施形態において、例えば
美的目的で物品に金属表面上の所望の艶消し仕上げを提供するために、1種または複数種
の光吸収剤が使用される。
【0110】
追加の例として、
図2はプロセスの一実施形態の態様を示しているが、本開示はそのよ
うな態様に限定されない。本開示による方法は、追加のステップおよび/または異なるス
テップを含んでもよい。例えば、事前物品を準備することは、まず所望の切断および/ま
たは成形を含んでもよい。事前物品は、ラッキングおよび操作のための任意の好適な方法
によって電気的に接続されていてもよく、その後、油、グリースまたは汚れ等の望ましく
ない汚染物を除去するために清浄化および脱脂されてもよい。事前物品は、例えば3重量
%の水酸化ナトリウム水溶液への短時間の浸漬により除去され得る表面酸化物を除去する
ために処理されてもよい。その後、事前物品は、好適な溶媒(例えば脱イオン水)で洗浄
されてもよい。一般に、この段落で示されたステップは、ステップ210の前に行われる
。
ホログラフィック投影装置、カメラ、望遠鏡、色選択フィルタ、フォトニックセンサ用の筐体、太陽光集光器、太陽熱システム、情報表示システム、および感光性材料を保存するためのシステムからなる群から選択される要素を含む、請求項1に記載のシステム。
ホログラフィック投影装置、カメラ、望遠鏡、色選択フィルタ、フォトニックセンサ用の筐体、太陽光集光器、太陽熱システム、情報表示システム、および感光性材料を保存するためのシステムからなる群から選択される要素を含む、請求項23に記載のシステム。