(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023120412
(43)【公開日】2023-08-29
(54)【発明の名称】非組み込みウイルス送達系およびその関連方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/86 20060101AFI20230822BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20230822BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230822BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20230822BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20230822BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20230822BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20230822BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20230822BHJP
C12N 15/113 20100101ALN20230822BHJP
A61K 39/395 20060101ALN20230822BHJP
A61K 38/18 20060101ALN20230822BHJP
【FI】
C12N15/86 Z ZNA
A61P31/00
A61P43/00 105
A61K48/00
A61K35/76
A61K31/7105
A61K31/713
A61P17/02
C12N15/113 Z
A61K39/395 T
A61K39/395 E
A61K38/18
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023105190
(22)【出願日】2023-06-27
(62)【分割の表示】P 2018563822の分割
【原出願日】2017-06-07
(31)【優先権主張番号】62/347,552
(32)【優先日】2016-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】PCT/US2016/066185
(32)【優先日】2016-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/431,760
(32)【優先日】2016-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】517428713
【氏名又は名称】アメリカン ジーン テクノロジーズ インターナショナル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ デイビッド パウザ
(72)【発明者】
【氏名】テイラー ラフーゼン
(57)【要約】
【課題】非組み込みウイルス送達系およびその関連方法の提供。
【解決手段】非組み込みウイルス送達系が開示される。系は、ウイルス担体を含み、ここで、ウイルス担体は、欠陥のあるインテグラーゼ遺伝子、異種ウイルスエピソーム複製起点、異種ウイルスエピソーム複製起点に特異的な少なくとも1つのイニシエータータンパク質をコードする配列であって、異種ウイルスエピソームDNA複製起点に特異的な少なくとも1つのイニシエータータンパク質をコードする配列の発現が誘導性である、配列、および少なくとも1つの目的の遺伝子、遺伝子産物、shRNA、siRNA、miRNA、または他のRNAを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、「NON-INTEGRATING VIRAL DELIVERY SYSTEM AND METHODS OF USE THEREOF」との表題の、2016年6月8日に出願された米国仮特許出願第62/347,552号、「NON-INTEGRATING VIRAL DELIVERY SYSTEM AND METHODS RELATED THERETO」との表題の、2016年12月8日に出願された米国仮特許出願第62/431,760号、および「NON-INTEGRATING VIRAL DELIVERY SYSTEM AND METHODS RELATED THERETO」との表題の、2016年12月12日に出願されたPCT/US16/66185に対する優先権を主張し、これらの開示は、参照により本明細書に援用される。
【0002】
本開示は概して、ウイルスベクター、および遺伝子送達のための系、および他の治療、診断、または調査のための使用の分野に関する。さらに具体的には、本開示の実施形態は、非組み込みウイルスベクター、および遺伝子送達のための系、および他の治療、診断、または調査のための使用の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
ウイルスベクターは、その特異的なウイルスエンベロープ-宿主細胞受容体相互作用および遺伝子発現のためのウイルスメカニズムのために、遺伝子および他の治療用核酸構築物を標的細胞に形質導入するために使用されてきた。その結果、ウイルスベクターは、単離された組織試料、in situでの組織標的、および培養された細胞系を含むがこれらに限定されない、多くの異なる細胞型への遺伝子の移入のための媒体として使用されている。外来遺伝子を細胞内に導入し、発現させる能力は、遺伝子発現の研究、ならびに細胞系統及び経路の解明、ならびに、遺伝子療法および様々なタイプの免疫療法などの治療的介入の可能性の提供に有用である。
【0004】
レンチウイルス、マウスレトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルスを含むいくつかのウイルス系が、見込みのある治療用遺伝子移入ベクターとして提案されている。しかしながら、多くのハードルが、承認された治療薬としてこれらを旺盛に利用することを妨げてきた。研究開発のハードルとしては、限定されないが、発現の安定性および制御、ゲノムパッケージング能力、ならびに構築物依存性のベクター安定性が挙げられる。さらに、ウイルスベクターのin vivoでの適用は、ウイルス構造タンパク質および/または形質導入された遺伝子産物に対する宿主の免疫応答によって制限されることがあり、これは有害な抗ベクター免疫学的作用に至る場合がある。
【0005】
研究者は、これらのハードルの一部を克服する方法として、安定な発現系を見出すことを試みてきた。一つのアプローチは、そのような発現系で、組換えポリペプチド、または小型RNAを含む遺伝子調節分子を利用することである。これらの系は、形質導入されたレトロウイルスゲノムまたはその少なくとも一部分の、宿主細胞のゲノムへの、染色体組み込みを採用する。これらのアプローチの重要な制限は、遺伝子組み込みの部位が一般的にランダムであり、任意の特定の部位で組み込まれる遺伝子の数および比率がしばしば予測不可能であることである。したがって、染色体組み込みに依存するベクターは、治療間隔を超え得る組換え遺伝子の永続的な維持をもたらすが、プラスミドまたは他の非複製DNAは上手く制御されず、所望の治療間隔が完了する前に崩壊する場合がある。
【0006】
別のアプローチは、一過性発現系の使用である。一過性発現系の下では、目的の遺伝子の発現は非組み込み型プラスミドに基づくものであり、したがって、典型的には細胞がその後に分割するにつれ発現が失われたり、またはプラスミドベクターが内因性ヌクレアーゼによって破壊されたりする。したがって、一過性遺伝子発現系は、典型的には時間がたつにつれて十分な発現に至らず、典型的に反復処置を要することとなり、これは所望しない特長になると一般に理解されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
安定なウイルス送達系および方法が提供される。様々な態様では、送達系は、一過性発現系を含む。一態様によれば、送達系は、非組み込みである。別の態様では、送達系は、非組み込みであり一過性である。
【0008】
様々な態様および実施形態では、系は、様々に、1つまたは全てのウイルス担体を含み、ここで、ウイルス担体は、欠陥のあるインテグラーゼ遺伝子、異種ウイルスエピソームDNA複製起点、異種ウイルスエピソームDNA複製起点に特異的な少なくとも1つのイニシエータータンパク質をコードする配列であって、異種ウイルスエピソームDNA複製起点に特異的な少なくとも1つのイニシエータータンパク質をコードする配列の発現が誘導性である、配列、および少なくとも1つの目的の遺伝子、遺伝子産物、shRNA、siRNA、miRNA、または他のRNAを含む。ウイルス担体は、レンチウイルスであり得る。異種ウイルスエピソームDNA複製起点は、パピローマウイルスに由来し得る。異種ウイルスエピソームDNA複製起点は、ヒトパピローマウイルスまたはウシパピローマウイルスに由来し得る。
【0009】
異種ウイルスエピソームDNA複製起点は、ヒトパピローマウイルス16型(HPV16)に由来し得る。異種ウイルスエピソームDNA複製起点は、HPV16の長制御領域(long control region:LCR)に由来し得る。異種ウイルスエピソームDNA複製起点は、配列番号1を含み得る。任意選択で、異種ウイルスエピソームDNA複製起点は、配列番号1の5’トランケーションを含み得る。異種ウイルスエピソームDNA複製起点は、配列番号1の少なくとも約200ヌクレオチド、または少なくとも約300ヌクレオチド、または少なくとも約400ヌクレオチド、または少なくとも約500ヌクレオチド、または少なくとも約600ヌクレオチド、または少なくとも約700ヌクレオチドの5’トランケーションを含み得る。異種ウイルスエピソームDNA複製起点は、HPV16のLCRのFrag1(配列番号2)(本明細書で断片1としても参照される)、またはFrag2(配列番号3)(本明細書で断片2としても参照される)、またはFrag3(配列番号4)(本明細書で断片3としても参照される)、またはFrag4(配列番号5)(本明細書で断片4としても参照される)と少なくとも約80%の配列同一性、または少なくとも約85%の配列同一性、または少なくとも約90%の配列同一性、または少なくとも約95%の配列同一性、または少なくとも約98%の配列同一性を含み得る。異種ウイルスエピソームDNA複製起点は、HPV16のLCRのFrag1(配列番号2)、Frag2(配列番号3)、Frag3(配列番号4)、またはFrag4(配列番号5)を含み得る。
【0010】
異種ウイルスエピソームDNA複製起点に特異的な少なくとも1つのイニシエータータンパク質は、E1またはその作動可能な断片を含み得る。異種ウイルスエピソームDNA複製起点に特異的な少なくとも1つのイニシエータータンパク質は、E2またはその作動可能な断片を含み得る。異種ウイルスエピソームDNA複製起点に特異的な少なくとも1つのイニシエータータンパク質は、EBNA-1またはその作動可能な断片を含み得る。任意選択で、系は、異種ウイルスエピソーム複製起点に特異的な少なくとも2つのイニシエータータンパク質を含み得る。異種ウイルスエピソームDNA複製起点に特異的な少なくとも2つのイニシエータータンパク質は、E1とE2のいずれか単独または組合せ、またはそれらの作動可能な断片を含み得る。少なくとも1つのイニシエータータンパク質をコードする配列は、単一の別個のプラスミドまたは非組み込みウイルスベクターに存在し得る。任意選択で、系は、異種ウイルスエピソームDNA複製起点に特異的な少なくとも2つのイニシエータータンパク質を含み得、ここで、少なくとも2つのイニシエータータンパク質をコードする配列は、単一の別個のプラスミドまたは非組み込みウイルスベクターに存在し得る。任意選択で、系は、異種ウイルスエピソームDNA複製起点に特異的な少なくとも2つのイニシエータータンパク質を含み得、ここで、第1のイニシエータータンパク質のための配列および第2のイニシエータータンパク質のための配列は、別個のプラスミドまたは非組み込みウイルスベクターに存在し得る。
【0011】
開示された非組み込みウイルス送達系に関して、少なくとも1つの遺伝子産物は、抗体、抗体断片、または増殖因子を含み得る。抗体は、抗HER2抗体またはその断片を含み得る。増殖因子は、血管内皮増殖因子(VEGF)またはそのバリアントを含み得る。miRNAは、CCR5 miRNAを含み得る。
【0012】
別の態様では、医薬組成物が開示される。医薬組成物は、本明細書において開示される非組み込みウイルス送達系および少なくとも1つの薬学的に許容される担体を含む。
【0013】
別の態様では、少なくとも1つの目的の遺伝子、遺伝子産物、shRNA、siRNA、miRNA、または他のRNAを細胞中で発現させる方法が提供される。方法は、細胞を、有効量の非組み込みウイルス送達系に接触させることを含み、ここで、系は、ウイルス担体を含み、ウイルス担体は、1つまたは全ての欠陥のあるインテグラーゼ遺伝子、異種ウイルスエピソームDNA複製起点、異種ウイルスエピソームDNA複製起点に特異的な少なくとも1つのイニシエータータンパク質をコードする配列であって、異種ウイルスエピソームDNA複製起点に特異的な少なくとも1つのイニシエータータンパク質をコードする配列の発現が誘導性である、配列、および少なくとも1つの目的の遺伝子、遺伝子産物、shRNA、siRNA、miRNA、または他のRNAを含む。
【0014】
別の態様では、少なくとも1つの目的の遺伝子、遺伝子産物、shRNA、siRNA、miRNA、または他のRNAを、それを必要とする対象中で発現させる方法が提供される。方法は、それを必要とする対象に、有効量の非組み込みウイルス送達系を投与することを含み、ここで、系は、ウイルス担体を含み、ここで、ウイルス担体は、1つまたは全ての欠陥のあるインテグラーゼ遺伝子、異種ウイルスエピソームDNA複製起点、異種ウイルスエピソームDNA複製起点に特異的な少なくとも1つのイニシエータータンパク質をコードする配列であって、異種ウイルスエピソームDNA複製起点に特異的な少なくとも1つのイニシエータータンパク質をコードする配列の発現が誘導性である、配列、および少なくとも1つの目的の遺伝子、遺伝子産物、shRNA、siRNA、miRNA、または他のRNAを含む。少なくとも1つのイニシエータータンパク質をコードする配列は、単一の別個のプラスミドに存在する場合があり、少なくとも1つのイニシエータータンパク質は、E1とE2のいずれか単独または組合せ、またはそれらの作動可能な断片を含み得る。方法は、少なくとも1つの目的の遺伝子、遺伝子産物、shRNA、siRNA、miRNA、または他のRNAの第1の発現レベルを開始させるための第1の量の単一の別個のプラスミドを、それを必要とする対象に投与することをさらに含み得る。方法は、少なくとも1つの目的の遺伝子、遺伝子産物、shRNA、siRNA、miRNA、または他のRNAの第2の発現レベルを開始させるための第2の量の単一の別個のプラスミドを、それを必要とする対象に投与することをさらに含み得る。第2の量が第1の量より低いときの状況では、少なくとも1つの目的の遺伝子、遺伝子産物、shRNA、siRNA、miRNA、または他のRNAの発現レベルは減少し得る。第2の量が第1の量より高いときの状況では、少なくとも1つの目的の遺伝子、遺伝子産物、shRNA、siRNA、miRNA、または他のRNAの発現レベルは増加し得る。
【0015】
別の態様では、本明細書に開示される非組み込みウイルス送達系は、少なくとも1つの目的の遺伝子、遺伝子産物、shRNA、siRNA、miRNA、または他のRNAの低レベルの基底発現を生じるように最適化されている。異種ウイルスエピソームDNA複製起点は、配列番号1またはHPV16のLCRのFrag1(配列番号2)と少なくとも約80%の配列同一性、または少なくとも約85%の配列同一性、または少なくとも約90%の配列同一性、または少なくとも約95%の配列同一性、または少なくとも約98%の配列同一性を含み得る。
【0016】
別の態様では、本明細書に開示される非組み込みウイルス送達系は、系が、少なくとも1つの目的の遺伝子、遺伝子産物、shRNA、siRNA、miRNA、または他のRNAの低レベルの基底発現を生じるように最適化されており、異種ウイルスエピソームDNA複製起点は、配列番号1またはHPV16のLCRのFrag1(配列番号2)を含み得る。
【0017】
別の態様では、本明細書に開示される非組み込みウイルス送達系は、系が、少なくとも1つの目的の遺伝子、遺伝子産物、shRNA、siRNA、miRNA、または他のRNAの中等度レベルの基底発現を生じるように最適化されており、異種ウイルスエピソームDNA複製起点は、HPV16のLCRのFrag2(配列番号3)、Frag3(配列番号4)、またはFrag4(配列番号5)と少なくとも約80%の配列同一性、または少なくとも約85%の配列同一性、または少なくとも約90%の配列同一性、または少なくとも約95%の配列同一性、または少なくとも約98%の配列同一性を含み得る。系は、少なくとも1つの目的の遺伝子、遺伝子産物、shRNA、siRNA、miRNA、または他のRNAの中等度レベルの基底発現を生じるように最適化され得、異種ウイルスエピソームDNA複製起点は、HPV16のLCRのFrag2(配列番号3)、Frag3(配列番号4)、またはFrag4(配列番号5)を含み得る。
【0018】
別の態様では、最適化された非組み込みウイルス送達系を選択する方法が開示される。方法は、基底発現レベルを選択することを含む。その後、レベルXが選択されるとき、対応するYが選択され、ここでYは、非組み込みウイルス送達系に組み入れられるように選択される異種ウイルスエピソームDNA複製起点に対応し、X=カーゴの基底発現の第1の規定されたレベルの場合、Yは、LCR(配列番号1)またはFrag1(配列番号2)を含み、X=カーゴの基底発現の第2の規定されたレベルの場合、Yは、HPV16のLCRのFrag2(配列番号3)、Frag3(配列番号4)、またはFrag4(配列番号5)を含む。複数の実施形態では、第1の規定されたレベルは、細胞当たり0.020未満のカーゴのエピソームコピーを含む。複数の実施形態では、第2の規定されたレベルは、細胞当たり0.020またはそれよりも多くのカーゴのエピソームコピーを含む。
【0019】
さらなる態様は、例えば、感染性疾患を処置する方法を含む。さらなる態様は、感染性疾患を予防する方法を含む。別の態様では、創傷治癒を増強する方法が開示される。別の態様では、骨損傷を処置する方法が、開示される。さらなる態様は、本明細書に詳述される系を使用して遺伝性疾患を処置する方法を含む。
【0020】
先の一般的記載および以下の詳細な説明は、例示的で説明的なものであり、特許請求の範囲に記載の本発明をさらに説明することを意図したものである。他の目的、利点、および新規な特長は、以下の図面の簡単な説明および本発明の詳細な説明から当業者に容易に明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、例示的なベクター・イン・ベクター(VIV)の実施形態を示す図である。
図1(A)は、線形型のベクターを示し、
図1(B)は、環状型のベクターを示す。
【0022】
【
図2】
図2は、E1イニシエータータンパク質を含有する例示的なベクター・イン・ベクター(VIV)の実施形態(本明細書でベクター1としても参照される)を示す図である。
【0023】
【
図3】
図3は、ベクター1を使用する3つの別個の実験からの293T細胞における形質導入の結果を示す図である。
【0024】
【
図4】
図4は、E1およびE2イニシエータータンパク質の両方を含有する例示的なベクター・イン・ベクター(VIV)の実施形態(本明細書でベクター19としても参照される)を示す図である。
【0025】
【
図5】
図5は、(A)mCherryおよび(B)VEGFをそれぞれ発現する例示的なベクター・イン・ベクター(VIV)の実施形態を示す図である。
【0026】
【
図6】
図6は、E1およびE2がプラスミド(A)によってまたはレンチウイルス(B)でそれぞれ提供されるときの種々に記載の構築物についてのmCherry陽性細胞の発現を示す図である。
【0027】
【
図7】
図7は、本明細書に詳述される実施例と組み合わせて使用される例示的なベクター・イン・ベクター(VIV)の実施形態を示す図である。
【0028】
【
図8】
図8は、HPV16長制御領域(LCR)の断片1を含有する種々に記載の構築物についてのVEGFの発現レベルを示す図である。
【0029】
【
図9】
図9は、本明細書に詳述される実施例と組み合わせて使用される例示的なベクター・イン・ベクター(VIV)実施形態を示す図である。
【0030】
【
図10】
図10は、非組み込みレンチウイルスベクターのエピソーム形態の例示的な図解を示す図である。
【0031】
【
図11】
図11は、HPV16のLCRのFrag1、Frag2、Frag3およびFrag4の間のゲノム関係を示す図である。
【0032】
【
図12】
図12は、本明細書において記載されるインテグラーゼ欠損レンチウイルスベクターにおけるHPV16oriのエピソームコピー数の分析を示す図である。
【0033】
【
図13】
図13は、(A)HPV LCRおよび3’断片を含有するインテグラーゼ欠損レンチウイルスベクターからのmCherry発現、および(B)単一ベクターからのHPV16 E1-T2A-E2を発現するかまたは発現しないインテグラーゼ欠損ベクターからのmCherry発現の分析を示す図である。
【0034】
【
図14】
図14は、E1、E1-CおよびE2-11の添加後のHPV LCRを含有するインテグラーゼ欠損レンチウイルスベクターからのmCherry発現の分析を示す図である。
【0035】
【
図15】
図15は、(A)免疫ブロットおよび(B)IgG濃度により決定される、HPV LCRを含有するインテグラーゼ欠損レンチウイルスベクターを使用する抗HER2抗体の発現を示す図である。
【0036】
【
図16】
図16は、HPV ori配列を含有するインテグラーゼ欠損レンチウイルスベクターを使用する抗EGFR抗体の発現を示す図である。
【0037】
【
図17】
図17は、HPV16の全長LCRを含有するレンチウイルスベクターを使用するCCR5発現のノックダウンを示す図である。
【0038】
【
図18】
図18は、HPV16のLCRのFrag2を含有するレンチウイルスベクターを使用するCCR5発現のノックダウンを示す図である。
【0039】
【
図19】
図19は、エプスタイン・バーウイルス(EBV)oriP配列を使用するD64Vインテグラーゼ欠損レンチウイルスベクターで形質導入した細胞のGFPの発現を示す図である。
【0040】
【
図20】
図20は、HPV16のFrag1、Frag2、Frag3、Frag4および全長LCRについての基底およびE1-E2-誘導エピソームコピー数を実証する概要を示す図である。
【0041】
【
図21】
図21は、本明細書に詳述される実施例でさらに記載される、相対的な構造機能活性の知見に基づくLCR断片選択のための一実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本明細書において開示されるものは、安定なウイルス送達系および方法である。様々な態様では、送達系は、一過性発現系を含む。一態様によれば、送達系は、非組み込みである。別の態様では、送達系は、非組み込みであり一過性である。
【0043】
さらなる態様では、非組み込み性の、エピソーム複製するウイルスベクター(例えば、レンチウイルスベクター)およびその使用方法が提供される。本開示のエピソームで複製するベクターは、ウイルス様Papovaviridae(例えば、ウシパピローマウイルスまたはBPV)またはHerpesviridae(例えば、エプスタイン・バーウイルスまたはEBV)またはHepadnaviridae(例えば、B型肝炎ウイルスまたはHBV)のウイルス成分を含有し得る。これらのウイルスに由来するエピソームで複製するベクターは、複製起点および少なくとも1つのウイルストランス作用因子、例えば、BPVポリメラーゼのためのE1およびEBVもしくはHBVポリメラーゼのためのEBNA-1などのイニシエータータンパク質、またはアデノウイルスの末端結合タンパク質を含有し得る。エピソーム複製のプロセスは、典型的には、宿主細胞の複製機構およびウイルストランス作用因子の両方を組み入れる。
【0044】
異種ウイルスの複製起点を使用することによって、新規なベクターは、複製起点を認識するために必要なウイルスタンパク質の発現の「オフ」スイッチで操作され得る。DNA複製をオフに切り替えることは、治療用DNAのレベルを、時間をかけて劇的に低下させる。いかなる特定の理論にも制限されないが、非複製DNAは、例えばヌクレアーゼ活性によっておよび宿主細胞が自然のアポトーシス(細胞死)事象を受けるにつれて、時間をかけて単純に分解すると考えられる。最終的にそのような非複製DNAは検出不能となって患者から時間をかけて完全にまたはほぼ消失し得る。
【0045】
開示される系および方法は、毒性および形質導入された遺伝子の過剰発現または発現の延長から生じるあらゆる毒性効果を低減または予防する能力を含む。一旦DNA複製が停止した遺伝子を排除することで、その後の望ましくない遺伝子発現または宿主遺伝子発現のノックダウンが予防される。同様に、エピソーム複製の有益な点を異種ウイルス系に組み合わせることによって、目的の遺伝子を様々な細胞型に安全かつ効率的に形質導入し得るプラットフォームが提供される。
パピローマウイルス
【0046】
パピローマウイルスは、哺乳動物細胞において主にエピソームとして複製する。DNAヘリカーゼとして機能するウイルスE1タンパク質の、ウイルスDNA複製起点(ori)に対する作用が、感染した上皮細胞の分化状態に応じて細胞当たり数百から数千のDNAコピーの生産を駆動する。「シャトルプラスミド」として公知になっているものを使用するパピローマウイルスに基づく遺伝子送達系の開発を試みた。E.coliにおけるDNAの生産を可能にするための細菌のDNA複製起点および哺乳動物細胞におけるエピソーム複製を可能にするパピローマウイルスoriを用いて、多くの研究が遺伝子発現の安全性および耐久性を実証するために行われた。ほとんどのケースにおいて、oriはウシパピローマウイルスに由来するものであった。
【0047】
パピローマウイルスは、表皮細胞および上皮細胞に感染するように進化している。感染細胞が基底面から管腔表面に分化するにつれ、パピローマウイルスはDNA複製を増大させ、コピー数は、大量のウイルスが内腔表面で放出されるまで非常に増える。これによって、ヒトパピローマウイルスから明らかであるように、パピローマウイルスは非常に伝染性となる。コピー数の急増は、主に宿主因子に起因する。しかし、パピローマウイルスのこの特長は、一時的な遺伝子療法が表皮表面および上皮表面を標的にするために利用することができる。
【0048】
パピローマウイルスの特定の特長は、エピソームベクターの発現および複製を行わせるため、ならびにベクターの発現を特異的細胞型に標的化するために、本開示の様々な態様および実施形態に従って使用される。
エプスタイン・バーウイルス(EBV)
【0049】
ヒトヘルペスウイルス4としても公知であるエプスタイン・バーウイルス(EBV)は、ヘルペスウイルスファミリーのメンバーである。これは最も一般的なヒトウイルスの1つであり、ほとんどの人は人生で何度かEBVに感染する。
【0050】
EBVは、およそ85の遺伝子を含有し、EBVは、B細胞および上皮細胞に感染することが公知である、二本鎖DNAウイルスである。EBVは、溶解性複製および潜伏複製の両方が可能であり、潜伏複製によって、環状化型のEBVゲノムの宿主細胞核への転座が生じ、核において、EBVは宿主細胞DNAポリメラーゼによって複製され得る。
【0051】
EBVは、少なくとも3つの異なる経路を介して潜伏複製し得るが、各経路は、エピソーム複製起点を結合し宿主細胞の分割の間のエピソームの区分化を媒介するタンパク質である、エプスタイン・バーウイルス核抗原1(EBNA-1)の発現を伴う。EBNA-1は、EBV遺伝子の調節、複製、およびエピソームの維持における不可欠な役割を有する。
【0052】
EBVの特定の特長は、本開示の様々な態様および実施形態に従って使用される。
B型肝炎ウイルス(HBV)
【0053】
B型肝炎ウイルス(HBV)は、ヘパドナウイルスファミリーのメンバーである。これは、進行性肝臓線維症、肝炎、および肝細胞癌に関連する一般的なヒトウイルスである。
【0054】
HBVは、RNA中間体を介しウイルスポリメラーゼに依存して複製する、二本鎖DNAウイルスである。肝細胞におけるHBVの安定な維持は、根絶が困難な、共有結合により閉環したウイルスDNA環状形態の存在に起因する。
【0055】
したがって、HBVの特定の特長は、本開示の様々な態様および実施形態に従って使用される。
レトロウイルス
【0056】
レトロウイルスは、RNA鋳型からDNAコピーを生成することが可能な逆転写酵素をコードすること、および宿主細胞染色体へのプロウイルスの組み込みを特徴とするウイルスファミリーである。レンチウイルスは、大量のウイルス核酸を宿主細胞内に送達し得るレトロウイルスの属である。レンチウイルスは、非分裂細胞に感染する/形質導入する固有の能力を有することを特徴とし、形質導入の後、レンチウイルスは自らの核酸を宿主細胞の染色体に組み込む。
【0057】
感染性レンチウイルスは、病原性タンパク質gag、pol、およびenvをコードする3つの主要な遺伝子、ならびにtatおよびrevを含む2つの調節遺伝子を有する。特異的な血清型およびウイルスに応じて、ウイルス核酸の調節、合成、および/またはプロセシング、ならびにレンチウイルス感染に対する生来の細胞防御を打ち消すことを含む他の複製機能に関与するタンパク質をコードするさらなるアクセサリー遺伝子が存在し得る。
【0058】
レンチウイルスは、およそ600nt長であり得る長い末端反復(LTR)領域を含有する。LTRは、U3、R、およびU5領域にセグメント化され得る。LTRは、インテグラーゼの作用を介して宿主染色体へのレトロウイルスDNAの組み込みを媒介し得る。あるいは、インテグラーゼを機能化せずに、LTRは、ウイルス核酸を環状化するために使用され得る。
【0059】
レンチウイルス複製の初期段階に関与するウイルスタンパク質には、逆転写酵素およびインテグラーゼが含まれる。逆転写酵素は、ウイルスによってコードされる、RNA依存性のDNAポリメラーゼである。この酵素は、ウイルスRNAゲノムを相補的DNAコピーの合成のための鋳型として使用する。逆転写酵素はまた、組み込みの用意がされた二本鎖DNAの産生を完了するためのDNA第二鎖合成のために必要なRNA鋳型の破壊のためのRNaseH活性を有する。インテグラーゼは、ウイルスゲノムを宿主DNA内に挿入する前にLTRをプロセシングする。tatは、転写の間にトランス活性化因子として作用して、ウイルスDNAから作製されるRNAコピーの開始および伸長を増強する。rev応答性エレメントは転写後に作用し、mRNAのスプライシングおよび細胞質への輸送を調節する。
【0060】
レンチウイルスを含むレトロウイルスの特定の特長は、本開示の様々な態様および実施形態に従って使用される。
ベクター・イン・ベクター系
【0061】
様々なウイルス種の所望の特長を組み合わせることによって遺伝子の送達および発現を正確に調節し得る、新規なベクター・イン・ベクター(VIV)系が提供される。レンチウイルス(LV)プラットフォームを含む多くのウイルスベクターが使用され得る。レンチウイルスの形質導入は、安定な形質導入のほとんどの他の形態と同様に、LVペイロード(例えば、目的の遺伝子)の染色体組み込みを生じさせる。様々な態様に従って、染色体組み込みは、ウイルスインテグラーゼ遺伝子を不活化する選択的変異を介して無効にされる。パピローマウイルスoriプラスE1タンパク質、またはEBV oriプラスEBNA-1、またはヘパドナウイルス末端プラスウイルスポリメラーゼが、通常はエピソームで維持され得ない異種ウイルスの遺伝子カーゴの一部として本明細書において使用される。この異種ウイルス複製機構をレンチウイルスベクターに組み入れることで、目的の治療遺伝子を収容し得るおよそ5kbのさらなるカーゴ空間が残る。
【0062】
他の態様では、他の制御エレメントを、開示されるVIV系内に組み入れることができる。非限定的な例として、E1またはE2またはEBNA-1またはHBVポリメラーゼの発現は、誘導性プロモーターによって駆動することができる。さらに、非限定的な例として、E1および/もしくはE2またはそれらのバリアントは、プラスミドまたは非組み込みウイルスベクターを使用して発現させることができる。多くのタイプの誘導性プロモーターが当技術分野において公知であり、本開示の目的では、誘導性プロモーターには、限定はしないが、抗生物質(すなわち、テトラサイクリン、アミノグリコシド、ペニシリン、セファロスポリン、ポリミキシンなど)もしくは他の薬物、銅および他の金属、アルコール、ステロイド、光、酸素、熱、冷気、または他の物理的もしくは化学的刺激に応答するプロモーターが含まれ得る。例えば、開示されるウイルス系を使用する方法は、カーゴ遺伝子の発現のための薬物のコンスタントな供給に依存するテトラサイクリン誘導性の遺伝子発現を採用することを含む。誘導性プロモーターを誘導するために使用される化合物は、エピソーム複製の期間および所望のカーゴ送達のタイミングに応じて1回または繰り返して添加され得る。DNA複製およびエピソームの維持は、E1、E2および/またはEBNA-1の誘導に多様に依存し、次いで、この誘導は、遺伝子発現の誘導因子(すなわち、テトラサイクリン)に依存する。
【0063】
図1に例示的VIV系が示される。開示されるVIVは、目的の少なくとも1つの遺伝子またはヌクレオチド配列(例えば、
図1Aに示されるカーゴ)を含む。VIVに組み入れられる遺伝子または配列は、VIVの目的に依存する。
図1を一般に参照すると、レンチウイルスがインテグラーゼ欠陥系でパッケージングされるか、または形質導入が、インテグラーゼ活性をブロックするために使用される臨床的薬物(例えば、ドルテグラビルまたはラルテグラビル)の存在下で行われる。組み込みが失敗すると、直鎖状の二本鎖ベクターDNAは一般的に、宿主の酵素機構を使用して環状化する(例えば、
図1B)。必要に応じて、薬物誘導性プロモーターは、必要に応じてE1および/またはE2タンパク質を発現させるように活性化され得、これによって次いでDNA複製を駆動する。治療カーゴは組み込まれたカセットから発現される。様々な実施形態では、誘導性プロモーターを誘導する化合物(本明細書では「誘導因子」とも呼ばれる)は、中止されるかまたは停止される。誘導因子の停止は、E1および/またはE2の合成を下方調節する。さらなる実施形態では、E1および/またはE2の生産は効果的に停止する。いずれの事象においても、これによってエピソームDNAのレベルが低下し、最終的にベクター構築物が排除される。
【0064】
VIV系のさらなる例示的な図解を
図2に示す。E1イニシエータータンパク質が存在し、カーゴはEF1-HTLVプロモーター下のGFPである。
図1および2は、E1を含有するVIV系を示す一方で、本明細書に示される
図4は、単一のウイルスベクター上にE1およびE2の両方を含有するVIV系を示す。さらなる実施形態では、同一のmRNAからE1およびE2の両方を発現するために、内部リボソーム侵入部位(IRES)を付加して、タンパク質翻訳の再開を可能にする。E1およびE2などのイニシエータータンパク質は、別個のプラスミドまたは非組み込みレンチウイルスベクターで発現させることもできる。
【0065】
VIV系のさらなる例示的な図解を
図4に示す。遺伝子カーゴは、CMV/GFPカセットによって表される。カーゴ遺伝子配列は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって増幅し得る。例えば、合成オリゴヌクレオチドプライマー、例えば、カーゴ遺伝子の5’末端に同一であるおよび/またはカーゴ遺伝子の3’末端に相補的であるプライマーなどを使用することができる。5’プライマーは、エンドヌクレアーゼのための認識部位を有するその5’末端から伸長され得る。3’プライマーはまた、エンドヌクレアーゼ認識のための相補体を有するその3’末端で伸長され得る。得られた増幅されたカーゴ遺伝子配列は、レンチウイルスベクターなどの適切なベクターにアニーリングされ得る。遺伝子カーゴの非限定的な例には、CMV/VEGF、CMV/抗上皮増殖因子受容体(EGFR)、抗HER2抗体、またはmiRNA抑制C-Cケモカイン受容体5型(CCR5)が含まれる。
【0066】
カーゴの適切な発現は、適切なアッセイによって判定され得る。例えば、DNAのコピー数は、定量PCRによって測定され得る。ベクター1またはベクター19(本明細書において記載される)などの非限定的な例から翻訳されたタンパク質産物は、例えば分析用フローサイトメトリーによって測定され得る。ELISAアッセイは、VEGFなどの分泌型タンパク質などの特定のカーゴの存在を検出するために使用され得る。ウェスタンブロット技術もまた、抗EGFRなどの抗体などの特定のカーゴを検出するために使用され得る。さらに、カーゴタンパク質、例えばCCR5などのケモカイン受容体の細胞表面発現の減少をモニタリングすることもまた採用され得る。
【0067】
カーゴに関して、および非限定的な例として、血小板由来増殖因子(PDGF)をコードする遺伝子は、目的のshRNA、siRNA、miRNA、および/または他の遺伝子抑制RNAと共に、遺伝子として、創傷治癒を促進するために使用されるVIVに組み入れることができる。開示されるVIV系は、発現され得る遺伝子または配列の特定のタイプに限定されない。
【0068】
開示されるVIVは、例えば、感染性疾患またはがんに関連する抗原(複製している病原体上の抗原、および外因性毒素である抗原、および腫瘍細胞上の抗原を含む)に対する抗体、血小板由来増殖因子、血管内皮増殖因子、脳由来の増殖因子、神経成長因子、ヒト増殖因子、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、嚢胞性線維症の膜貫通コンダクタンス調節因子(CFTR)、ジストロフィンまたはジストロフィン関連複合体、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ、リポタンパク質リパーゼ、α-および/またはβ-サラセミア、因子VIII、骨形成タンパク質1~4、シクロオキシゲナーゼ2、血管内皮増殖因子、ケモカイン受容体CCR5、ケモカイン受容体CXCR4、ケモカイン受容体CXCR5、大腸炎、炎症性腸疾患、またはクローン病に関与する自己免疫抗原に対するアンチセンスDNAまたはRNA、アヘン剤またはアルコールに対する神経衰弱を調節するmiRNAを含む常用癖に関与する低分子干渉RNA、腫瘍サプレッサー遺伝子、プロアポトーシスまたは抗アポトーシス遺伝子およびプロ自食作用または抗自食作用遺伝子を含む細胞生存を調節する遺伝子、放射線照射耐性因子をコードする遺伝子、腫瘍細胞の転移または他の細胞輸送現象の追跡に使用される発光タンパク質をコードする遺伝子、あるいは、放射線照射、外科手術、もしくは化学療法の最大効果を得るために身体を調整して、または放射線照射、外科手術、もしくは化学療法から組織を保護して、器官の移植を改善するかまたは特に気道における過剰反応性を抑制するべく宿主組織またはグラフト組織を改変するために使用され得る様々な他の治療上有用な配列をコードする配列を含む、多くの治療的または予防的遺伝子または配列を組み入れ得る。
【0069】
前述のいずれも限定することなく、カーゴは、GFPおよびmCherryなどの診断タンパク質、ならびにcDNA、マイクロRNA、shRNAおよび抗体を含むことができる。さらに、カーゴは、本明細書において記載されるVEGFおよびBMPなどの特定のカーゴを含むことができる。
【0070】
さらなる態様では、「安全性スイッチ」として、VIV系のエピソーム形態に遺伝子を維持することが望ましい。例えば、特定の遺伝子産物が毒性である場合、誘導因子分子の中止によって、DNA複製が減少するまたは停止する。その後、エピソーム数は減少し、遺伝子およびベクターは最後には消失する。従来の調節型遺伝子発現と異なり、開示される発現構築物は内因性ヌクレアーゼによって分解され、それが効果的に消失するまで細胞分裂によって希釈され、それによって、あらゆる短期または長期のブレークスルー発現が予防される。
【0071】
さらなる態様によれば、目的の遺伝子、遺伝子産物、shRNA、siRNA、miRNA、および/または他の遺伝子抑制RNAをエピソーム形態に維持することによって、広範囲にわたり、従来のレンチウイルス形質導入によって達成されるよりもはるかに高いレベルで、コピー数を調節することも可能になる。
【0072】
開示されるVIV系は、多くの有益な点を示す。例えば、エピソームDNAは、染色体改変に対する感受性が低く、これによって、従来の形質導入ベクターの遺伝子サイレンシングが生じ得る。同様に、VIVエピソームDNAベクターは、少なくとも、約1から約4ヶ月、および場合によってはそれ以上の短期間から中期間にわたって、活性な遺伝子送達をサポートする。他の実施形態では、エピソームDNAベクターは、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、または約12週間またはそれより長い期間にわたって、活性な遺伝子送達をサポートする。他の実施形態では、エピソームDNAベクターは、約1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、またはそれ以上の期間にわたって、活性な遺伝子送達をサポートする。これらの期間のあらゆる組合せ、例えば、1ヶ月および1週間、または3ヶ月および2週間もまた、本明細書に開示された方法において使用することができる。
【0073】
開示されるVIV系の組み込みのためのレンチウイルス担体の使用に特異的に関連する有益な点があるが、開示される系は、単一のタイプのウイルスベクターに限定されない。限定はしないが、レンチウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、アデノウイルス、ワクシニア、ヘルペスウイルス、麻疹ウイルス、ヘパドナウイルス、パルボウイルス、およびマウスウイルスを含む、あらゆるDNAウイルスまたはDNA中間体を使用するウイルスを、本明細書のVIV系を組み入れるための担体として使用することができる。
【0074】
前述のいずれも限定することなく、本開示の一態様では、非組み込みウイルス送達系が開示される。系は、ウイルス担体を含み、ここで、ウイルス担体は、1つまたは複数の欠陥のあるインテグラーゼ遺伝子、異種ウイルスエピソーム複製起点、異種ウイルスエピソーム複製起点に特異的な少なくとも1つのイニシエータータンパク質をコードする配列であって、異種ウイルスエピソームDNA複製起点に特異的な少なくとも1つのイニシエータータンパク質をコードする配列の発現が誘導性である、配列、および少なくとも1つの目的の遺伝子、遺伝子産物、shRNA、siRNA、miRNA、または他のRNAを含む。ウイルス担体は、レンチウイルスであり得る。異種ウイルスエピソームDNA複製起点は、パピローマウイルスに由来し得る。異種ウイルスエピソームDNA複製起点は、ヒトパピローマウイルスまたはウシパピローマウイルスに由来し得る。
【0075】
異種ウイルスエピソームDNA複製起点は、ヒトパピローマウイルス16型(HPV16)に由来し得る。異種ウイルスエピソームDNA複製起点は、HPV16の長制御領域(LCR)に由来し得る。異種ウイルスエピソームDNA複製起点は、配列番号1を含み得る。任意選択で、異種ウイルスエピソームDNA複製起点は、配列番号1の5’トランケーションを含み得る。異種ウイルスエピソームDNA複製起点は、配列番号1の少なくとも約200ヌクレオチド、または少なくとも約300ヌクレオチド、または少なくとも約400ヌクレオチド、または少なくとも約500ヌクレオチド、または少なくとも約600ヌクレオチド、または少なくとも約700ヌクレオチドの5’トランケーションを含み得る。異種ウイルスエピソームDNA複製起点は、HPV16のLCRのFrag1(配列番号2)、Frag2(配列番号3)、Frag3(配列番号4)、またはFrag4(配列番号5)と少なくとも約80%の配列同一性、または少なくとも約85%の配列同一性、または少なくとも約90%の配列同一性、または少なくとも約95%の配列同一性、または少なくとも約98%の配列同一性を含み得る。異種ウイルスエピソームDNA複製起点は、HPV16のLCRのFrag1(配列番号2)、またはFrag2(配列番号3)、またはFrag3(配列番号4)、またはFrag4(配列番号5)を含み得る。前述のいずれかまたは本明細書に詳述される実施例を限定することなく、LCRのゲノム構成を
図11に示す。本明細書に詳述される断片に加えて、さらなる断片を、LCRの5’および3’領域の欠失によって作製することができる。さらに、変異、置換、付加および/または欠失を全長LCRまたは関連する断片に行うことができる。さらに、および上記または本明細書に詳述される実施例を限定することなく、本明細書に詳述されるベクターの成分は、新たなおよび/または修飾されたベクターを開発するために互換的に使用され得ることが理解され、そのことは本開示の実施形態の範囲内である。
ベクター・イン・ベクター系の調整可能性
【0076】
本開示の一態様では、ウイルスベクター系は、ウイルス担体、異種ウイルスエピソームDNA複製起点、異種ウイルスエピソームDNA複製起点に特異的な少なくとも1つのイニシエータータンパク質をコードする配列であって、異種ウイルスエピソームDNA複製起点に特異的な少なくとも1つのイニシエータータンパク質をコードする配列の発現が調節されている、配列、または少なくとも1つの目的の遺伝子、遺伝子産物、shRNA、siRNA、miRNA、もしくは他のRNAの1つまたは複数を修飾することによって調整可能であるかまたは最適化される。修飾は、少なくとも1つの遺伝子産物の最大用量を制御するため、標的細胞または組織における発現の持続性に影響を与えるため、ならびに一時的に必要とされる生物学的分子が間違った用量で送達されたときおよびそのような生物学的分子がもはや必要でなくなったまたは毒性となり得る後も発現が継続するときに毒性または副作用を防ぐために同じ生物学的分子を用いて疾患または損傷を処置するために行われる。
【0077】
複数の実施形態では、開示される系の修飾は、遺伝子治療試験においてプラセボ対照に必要とされ得る検出不能またはほぼ検出不能であるカーゴ発現を達成するために、生物学的分子の発現レベルを調整することおよび発現の持続時間を制御することを可能にする。複数の実施形態では、この結果は、欠陥のある遺伝子を除去または訂正する試みにおいて低レベルで短い間隔で与えられたときにより安全である遺伝子編集タンパク質およびRNAを送達するために必要となり得る、検出不能とは統計的に異なるが、誘導されたまたは高レベル発現の基準は満たさない、低レベル発現に至る。複数の実施形態では、例えば同じカーゴの検出可能であるが低い基底レベルと比較しておよそ5倍より高いピーク発現レベルを含むカーゴ発現の高または誘導レベルが生じる。複数の実施形態では、このことは、腫瘍部位でまたはその付近で生じるときにより有効で高レベルで存在する必要があるが正常組織へのオフサイト効果を回避するためにまたは自己免疫の開始を予防するために崩壊および血液から除去しなければならない腫瘍標的化生物学的薬剤を含む治療用抗体を発現させるときに最適であり得る。
【0078】
複数の実施形態では、開示される系は、がんを処置するために調整可能である。開示される系は、腫瘍部位でまたはその付近でセツキシマブ、リツキシマブまたはトラスツズマブなどの腫瘍標的化抗体の発現を可能にするため、標的細胞における遺伝子用量を増加させるためにエピソームDNAを複製することによって有効な腫瘍標的化のために十分なレベルで抗体を産生するため、ならびにその後、E1/E2タンパク質の産生が止むときにエピソームDNA複製を終了させ、これらおよび類似の生物学的薬剤の安全性および有効性を改善することがわかっている治療用抗体の予測される崩壊曲線に適合する抗体発現低下と共にエピソーム導入遺伝子分子の崩壊に至らせるために調整可能である。
【0079】
複数の実施形態では、開示される系は、感染性疾患を処置または予防するために調整可能である。開示される系は、病原体の複製を破壊または中和することができる治療用抗体を発現するため、感染部位もしくはその付近での抗体の局所産生を指示するまたは血液およびリンパ循環へ抗体を放出するため、標的細胞における遺伝子用量を増加させるためにエピソームDNAを複製することによって有効な病原体予防または根絶のために十分なレベルで抗体を産生するため、ならびにその後、E1/E2タンパク質の産生が止むときにエピソームDNA複製を終了させ、これらおよび類似の生物学的薬剤の安全性および有効性を改善することがわかっている治療用抗体の予測される崩壊曲線に適合する抗体発現低下と共にエピソーム導入遺伝子分子の崩壊に至らせるために調整可能である。
【0080】
複数の実施形態では、開示される系は、外傷または再生性疾患を処置するために調整可能である。複数の実施形態では、開示される系は、治療効力を有する生物学的に活性な分子を発現するため、損傷または疾患の部位もしくはその付近での抗体の局所産生を指示するため、標的細胞における遺伝子用量を増加させるためにエピソームDNAを複製することによって有効な治療のために十分なレベルで抗体を産生するため、ならびに、E1/E2タンパク質の産生が止むときにエピソームDNA複製を終了させ、ピークの導入遺伝子用量で高レベルの投与に達するが短期処置ウインドウの間に必要とされる生物学的治療薬の永続的または非常に長期の発現から生じる副作用または毒性は回避する生物学的治療薬の発現低下と共にエピソーム導入遺伝子分子の崩壊に至らせるために調整可能である。
【0081】
複数の実施形態では、LCR断片は、所望の処置経過または転帰に応じて選択および使用され得る。
図20~21、表1および実施例16~20に提供される非限定的な例に示すように、所望の処置経過または転帰に応じて、ウイルス送達系は、調整可能であるかまたは最適化される。
【表1-1】
【表1-2】
【0082】
本開示の複数の態様では、所望の処置経過または転帰に基づいて、ウイルス送達系が、第1象限、第2象限、第3象限、または第4象限の因子に従って調整可能であるかまたは最適化される。
【0083】
複数の実施形態では、第1象限の因子は、LCRが全長、Frag2、Frag3、Frag4、またはそれらのバリアントから選択されるウイルス送達系を含む。第1象限の因子は、記載のベクター系を使用して、遺伝子カーゴの一過性の基底発現を提供する。ほとんどの場合に、DNAコピー数は、この系で達成され得る最も高いレベルのおよそ20分の1と予想される。カーゴの発現を駆動するプロモーターを慎重に選択することにより、この系の柔軟性および組織特異性はさらに増加する。
【0084】
複数の実施形態では、第2象限の因子は、LCRがFrag2、Frag3、Frag4、またはそれらのバリアントから選択されるウイルス送達系を含む。第2象限の因子はまた、E1および/またはE2イニシエータータンパク質を含む。複数の実施形態では、E1および/またはE2イニシエータータンパク質は、プラスミドを介して提供される。複数の実施形態では、E1および/またはE2イニシエータータンパク質は、レンチウイルスベクターを介して提供される。第2象限の因子は、再びプロモーター選択に依存して、潜在的に非常に高い遺伝子発現レベルを有する高いエピソームDNAコピー数を提供する。さらに、より短いLCR断片の使用は、カーゴとして組み入れることができるDNAインサートのサイズを増加させる。
【0085】
複数の実施形態では、第3象限の因子は、LCRがLCR、Frag1、またはそれらのバリアントから選択されるウイルス送達系を含む。第3象限の因子はまた、E1および/またはE2イニシエータータンパク質を含む。複数の実施形態では、E1および/またはE2イニシエータータンパク質は、プラスミドを介して提供される。複数の実施形態では、E1および/またはE2イニシエータータンパク質は、レンチウイルスベクターを介して提供される。第3象限の因子は、高いが第2象限で得られ得るよりもわずかに低いエピソームコピー数を提供する。第3象限の利点は、E1/E2タンパク質を導入するまたはしないことによって高度に制御可能な系を作製するエピソームDNAの非常に低い基底レベルがあることである。
【0086】
複数の実施形態では、第4象限の因子は、LCRが全長LCR、Frag1、またはそれらのバリアントから選択されるウイルス送達系を含む。第4象限の因子の選択は、用量漸増治験または所望の適応症のための最大耐用レベルまたは最適レベルを確立するための用量試験におけるプラセボ対照または初期用量のために必要とされ得る非常に低い発現をもたらす。
【0087】
本開示の複数の態様では、カーゴ発現の非常に低い基底レベルが所望されるとき、第4象限の因子がウイルス送達系に導入される。複数の実施形態では、第4象限の因子は、Frag1または全長LCRまたはそれらのバリアントを含む。複数の実施形態では、カーゴ発現のわずかに高い基底レベルが所望されるとき、第1象限の因子がウイルス送達系に導入される。複数の実施形態では、第1象限の因子は、Frag2、Frag3、Frag4またはそれらのバリアントを含む。
【0088】
複数の実施形態では、カーゴ発現の高い誘導レベルが所望されるとき、第2象限の因子または第3象限の因子が、ウイルス送達系に導入される。複数の実施形態では、第2象限の因子は、Frag2、Frag3、Frag4、またはそれらのバリアントを含む。複数の実施形態では、第2象限の因子は、E1および/またはE2イニシエータータンパク質を含む。複数の実施形態では、第3象限の因子は、LCR、Frag1、またはそれらのバリアントを含む。複数の実施形態では、第3象限の因子は、E1および/またはE2イニシエータータンパク質を含む。複数の実施形態では、カーゴ発現の高い誘導レベルが所望され、より大きなカーゴのサイズが企図されるとき、第2象限の因子がウイルス送達系に導入される。複数の実施形態では、カーゴ発現の高い誘導レベルが所望され、より小さなカーゴサイズが企図されるとき、第3象限の因子がウイルス送達系に導入される。したがって、現行の系の調整可能性または最適化は、カーゴサイズに基づく調整可能性または最適化を可能にする。
【0089】
複数の実施形態では、カーゴ発現の基底レベルと誘導レベルとの間で大きな倍率変化の増加が所望されるとき、第3象限の因子がウイルス送達系に導入される。複数の実施形態では、第3象限の因子は、LCR、Frag1、またはそれらのバリアントを含む。複数の実施形態では、第3象限の因子は、E1および/またはE2イニシエータータンパク質を含む。
【0090】
複数の実施形態では、カーゴ発現の基底レベルと誘導レベルとの間で小さな倍率変化の増加が所望されるとき、第2象限の因子がウイルス送達系に導入される。さらなる実施形態では、カーゴ発現の基底レベルと誘導レベルとの間で
図12および20に示す第3象限プロファイルと比較して小さな倍率変化の増加が所望されるとき、第2象限の因子がウイルス送達系に導入される。複数の実施形態では、第2象限の因子は、Frag2、Frag3、Frag4、またはそれらのバリアントを含む。複数の実施形態では、第2象限の因子は、E1および/またはE2イニシエータータンパク質を含む。
【0091】
別の態様では、第1象限の処置経過のために対象を処置する方法が提供される。方法は、第1象限の因子を含むウイルス送達系を、対象に投与することを含む。複数の実施形態では、第1象限の因子は、LCRが全長、Frag2、Frag3、Frag4、またはそれらのバリアントから選択されるウイルス送達系を含む。
【0092】
別の態様では、第2象限の処置経過のために対象を処置する方法が提供される。方法は、第2象限の因子を含むウイルス送達系を対象に投与することを含む。複数の実施形態では、第2象限の因子は、Frag2、Frag3、Frag4、またはそれらのバリアントを含む。複数の実施形態では、第2象限の因子は、E1および/またはE2イニシエータータンパク質を含む。
【0093】
別の態様では、第3象限の処置経過のために対象を処置する方法が提供される。方法は、第3象限の因子を含むウイルス送達系を対象に投与することを含む。複数の実施形態では、第3象限の因子は、LCR、Frag1、またはそれらのバリアントを含む。複数の実施形態では、第3象限の因子は、E1および/またはE2イニシエータータンパク質を含む。
【0094】
別の態様では、第4象限の処置経過のために対象を処置する方法が提供される。方法は、第4象限の因子を含むウイルス送達系を対象に投与することを含む。複数の実施形態では、第4象限の因子は、LCR、Frag1、またはそれらのバリアントを含む。
【0095】
別の態様では、異種ウイルスエピソームDNA複製起点に特異的な少なくとも1つのイニシエータータンパク質が、ウイルス系に存在する。複数の実施形態では、異種ウイルスエピソームDNA複製起点に特異的な少なくとも1つのイニシエータータンパク質は、E1またはその作動可能な断片を含む。複数の実施形態では、異種ウイルスエピソームDNA複製起点に特異的な少なくとも1つのイニシエータータンパク質は、E2またはその作動可能な断片を含む。複数の実施形態では、異種ウイルスエピソームDNA複製起点に特異的な少なくとも1つのイニシエータータンパク質は、EBNA-1またはその作動可能な断片を含む。複数の実施形態では、系は、異種ウイルスエピソーム複製起点に特異的な少なくとも2つのイニシエータータンパク質を含む。複数の実施形態では、異種ウイルスエピソームDNA複製起点に特異的な少なくとも2つのイニシエータータンパク質は、E1およびE2またはそれらの作動可能な断片である。複数の実施形態では、少なくとも1つのイニシエータータンパク質をコードする配列は、単一の別個のプラスミドに存在する。複数の実施形態では、系は、異種ウイルスエピソーム複製起点に特異的な少なくとも2つのイニシエータータンパク質を含み、少なくとも2つのイニシエータータンパク質をコードする配列は単一の別個のプラスミドに存在し得る。複数の実施形態では、系は、異種ウイルスエピソーム複製起点に特異的な少なくとも2つのイニシエータータンパク質を含み、第1のイニシエータータンパク質に対する配列と第2のイニシエータータンパク質に対する配列とは別個のプラスミドに存在し得る。
【0096】
本開示の複数の態様では、少なくとも1つの遺伝子産物が存在する。複数の実施形態では、少なくとも1つの遺伝子産物は、抗体、抗体断片、増殖因子、または小型RNAを含む。複数の実施形態では、抗体は、抗HER2抗体またはその断片を含む。複数の実施形態では、増殖因子は、血管内皮増殖因子(VEGF)またはそのバリアントを含む。複数の実施形態では、小型RNAは、shRNA、siRNA、またはmiRNAを含む。複数の実施形態では、miRNAは、CCR5 miRNAを含む。
方法
【0097】
本開示の態様は、それを必要とする患者にVIV系を投与する方法であって、VIV系が少なくとも1つの、少なくとも2つの、少なくとも3つの、少なくとも4つの、または少なくとも5つの目的の遺伝子をコードする、方法を含む。多用途性および治療可能性および開示されるVIV系を考慮すると、本開示の態様に記載のVIV系は、限定はしないが、感染性疾患または感染性病原体によって生産される毒素に関連する抗原に対する抗体、血小板由来増殖因子、血管内皮増殖因子、脳由来の増殖因子、神経成長因子、ヒト増殖因子、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、嚢胞性線維症の膜貫通コンダクタンス調節因子(CFTR)、ジストロフィンまたはジストロフィン関連複合体、リポタンパク質リパーゼ、α-および/またはβ-サラセミア、因子VIII、骨形成タンパク質1~4、シクロオキシゲナーゼ2、血管内皮増殖因子、ケモカイン受容体CCR5、ケモカイン受容体CXCR4、ケモカイン受容体CXCR5、大腸炎、炎症性腸疾患、またはクローン病に関与する自己免疫抗原に対するアンチセンスDNAまたはRNA、アヘン剤またはアルコールに対する神経衰弱を調節するmiRNAを含む常用癖に関与する低分子干渉RNA、腫瘍サプレッサー遺伝子、プロアポトーシスまたは抗アポトーシス遺伝子およびプロ自食作用または抗自食作用遺伝子を含む細胞生存を調節する遺伝子、放射線照射耐性因子をコードする遺伝子、腫瘍細胞の転移または他の細胞輸送現象の追跡に使用される発光タンパク質をコードする遺伝子、あるいは、放射線照射、外科手術、もしくは化学療法の最大効果を得るために身体を調整して、または放射線照射、外科手術、もしくは化学療法から組織を保護して、器官の移植を改善するかまたは特に気道における過剰反応性を抑制するべく宿主組織またはグラフト組織を改変するために使用され得る様々な他の治療上有用な配列を含む遺伝子または核酸配列をコードし得る。
【0098】
さらに、前述のいずれも限定することなく、別の態様では,少なくとも1つの目的の遺伝子、遺伝子産物、shRNA、siRNA、miRNA、または他のRNAを細胞中で発現させる方法が提供される。方法は、細胞を、有効量の非組み込みウイルス送達系に接触させることを含み、ここで、系は、ウイルス担体を含み、ウイルス担体は、欠陥のあるインテグラーゼ遺伝子、異種ウイルスエピソーム複製起点、異種ウイルスエピソーム複製起点に特異的な少なくとも1つのイニシエータータンパク質をコードする配列であって、異種ウイルスエピソームDNA複製起点に特異的な少なくとも1つのイニシエータータンパク質をコードする配列の発現が誘導性である、配列、および少なくとも1つの目的の遺伝子、遺伝子産物、shRNA、siRNA、miRNA、または他のRNAを含む。
【0099】
別の態様では、少なくとも1つの目的の遺伝子、遺伝子産物、shRNA、siRNA、miRNA、または他のRNAを、それを必要とする対象中で発現させる方法が提供される。方法は、それを必要とする対象に、有効量の非組み込みウイルス送達系を投与することを含み、ここで、系は、ウイルス担体を含み、ウイルス担体は、欠陥のあるインテグラーゼ遺伝子、異種ウイルスエピソーム複製起点、異種ウイルスエピソーム複製起点に特異的な少なくとも1つのイニシエータータンパク質をコードする配列であって、異種ウイルスエピソームDNA複製起点に特異的な少なくとも1つのイニシエータータンパク質をコードする配列の発現が誘導性である、配列、および少なくとも1つの目的の遺伝子、遺伝子産物、shRNA、siRNA、miRNA、または他のRNAを含む。少なくとも1つのイニシエータータンパク質をコードする配列は、単一の別個のプラスミドに存在する場合があり、少なくとも1つのイニシエータータンパク質は、E1とE2のいずれか単独または組合せ、またはそれらの断片であり得る。方法は、任意選択で、少なくとも1つの目的の遺伝子、遺伝子産物、shRNA、siRNA、miRNA、または他のRNAの第1の発現レベルを開始させるための第1の量の単一の別個のプラスミドを、それを必要とする対象に投与することを含む。方法は、任意選択で、少なくとも1つの目的の遺伝子、遺伝子産物、shRNA、siRNA、miRNA、または他のRNAの第2の発現レベルを開始させるための第2の量の単一の別個のプラスミドを、それを必要とする対象に投与することを含む。第2の量が第1の量より低いときの状況では、少なくとも1つの目的の遺伝子、遺伝子産物、shRNA、siRNA、miRNA、または他のRNAの発現レベルは減少し得る。第2の量が第1の量より高いときの状況では、少なくとも1つの目的の遺伝子、遺伝子産物、shRNA、siRNA、miRNA、または他のRNAの発現レベルは増加し得る。
感染性疾患
【0100】
感染性疾患を処置または予防するための方法が提供される。高リスク個体、例えば、健康状態または地理的位置により感染性疾患に接触するリスクが高い個体にモノクローナル抗体の予防的送達を行うことが現在実施されている。予防的送達は、例えば、風土病地域内を移動する個体(例えば、エボラ感染地域に入る衛生兵および救援隊員)を保護するための、致命的なウイルス性因子に対する防御抗体の送達を含む。ワクチンは、エボラもしくはラッサ熱ウイルス、またはデング熱、またはチクングニヤウイルス、またはマラリアの原因であるPlasmodium spp.などの疾患についてはほとんど試験されておらず、組み込みベクターの使用を介する予防的抗体遺伝子の慢性的発現は、未知の健康上のリスクを有する。したがって、高いが一過性でなくてはならない効果的な抗体発現が医学的に非常に要求されている。
【0101】
開示されるVIV系ならびに高いコピー数の目的の遺伝子、遺伝子産物、shRNA、siRNA、miRNA、および/または他の遺伝子サイレンシングRNAを限られた期間にわたり送達する方法は、この医学的要求を満たす。感染性疾患を処置するために送達され得る遺伝子産物の非限定的な例は、問題の感染性疾患に特異的な抗体である。
【0102】
一態様では、本開示は、感染性疾患に関連する状態、症候、または副作用を処置、予防、または最小になる方法に関する。特定の実施形態では、感染性疾患は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ヒトT細胞白血病ウイルス、エボラウイルス、ラッサ熱ウイルス、デング熱、ジカウイルス、マラリア、結核、狂犬病、ワクシニアウイルス、または他の感染性疾患であり得る。一部の実施形態では、VIV系は、予防的にまたは感染性疾患に感染した後に投与され得る。
【0103】
別の態様では、VIV系は、感染性疾患を予防するために使用することができる。特定の感染疾患と接触するリスクが増加している疑いのある対象は、問題の感染性疾患を特異的に標的とする抗体をコードする予防有効量のVIVの投与を受けることができる。
【0104】
ある特定の実施形態では、感染性疾患は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ヒトT細胞白血病ウイルス、エボラウイルス、ラッサ熱ウイルス、デング熱、ジカウイルス、マラリア、結核、狂犬病、ワクシニアウイルス、または他の感染性疾患であり得る。ある特定の実施形態では、VIVベクターは、予防的にまたは感染性疾患に感染した後に投与され得る。
創傷治癒
【0105】
創傷治癒
別の実施形態では、本開示は、創傷治癒に関連する状態、症候、または副作用を処置、予防、または最小にする方法に関する。開示される組成物は、全身に、または事故、損傷、もしくは外科手術後の創傷に直接投与され得る。外科手術のケースでは、VIV系は、治癒を促進するために予防的に投与され得る。事故、損傷、または外科手術による創傷のケースでは、VIV系は、創傷形成のある程度後に投与され得る。例えば、VIV系は、創傷形成の約1、約2、約3、約4、約5、約10、約12、約24、約36、約48、約60、約72、約84、約96、約108、約120、または約168時間以内に投与され得る。
【0106】
本開示の方法および組成物の別の適用は、創傷治癒を加速させる血小板増殖因子を発現し得るVIV構築物の一時的送達である。血小板由来増殖因子(PDGF)、関連増殖因子、その断片、およびそれらに関連するヌクレオチド変異体の高用量は、非常に迅速であるが一時的であることが必要とされる。開示される系および方法は、このタイプの適用に理想的である。
【0107】
さらなる短期間の適用には、アルコール乱用の断続的処置のための脳由来の増殖因子の発現、脊髄再生のための神経成長因子、および皮膚状態のための局部適用が含まれる。
【0108】
骨の疾患または損傷
一実施形態では、本開示は、骨損傷を有する対象を識別するステップ、および治療有効量の本明細書に開示されるウイルス送達系を対象に投与するステップを含む、骨の治癒を増強する方法に関する。ウイルス送達系は、ウイルス担体、異種ウイルスエピソーム複製起点、異種ウイルスエピソーム複製起点に特異的なイニシエータータンパク質をコードする配列、ならびに目的の少なくとも1つの遺伝子、遺伝子産物、shRNA、siRNA、miRNA、および/または他の遺伝子サイレンシングRNAを含み、ここで、ウイルス担体は欠陥のあるインテグラーゼ遺伝子を有し、異種ウイルスエピソームDNA複製起点に特異的なイニシエータータンパク質をコードする配列の発現は、誘導性プロモーターの制御下にある。骨損傷は、事故、損傷、または外科手術によるものであり得、骨の癒合不全または急性骨折または所要の脊椎固定術であり得る。一部の実施形態では、目的の遺伝子、遺伝子産物、shRNA、siRNA、miRNA、および/または他の遺伝子抑制RNAは、骨形成タンパク質1~4またはシクロオキシゲナーゼ-2または血管内皮増殖因子またはそれらの断片をコードする。さらに、ある特定の実施形態では、上述の変異体は、骨損傷または関連疾患を処置するために好ましく、またそれらは本開示の範囲内である。
【0109】
一実施形態では、本開示は、骨疾患を有する対象を識別するステップ、および治療有効量の本開示に従ったウイルス送達系を対象に投与するステップを含む、骨の治癒を増強する方法に関する。ウイルス送達系は、ウイルス担体、異種ウイルスエピソーム複製起点、異種ウイルスエピソーム複製起点に特異的なイニシエータータンパク質をコードする配列、ならびに目的の少なくとも1つの遺伝子、遺伝子産物、shRNA、siRNA、miRNA、および/または他の遺伝子サイレンシングRNAを含み、ここで、ウイルス担体は欠陥のあるインテグラーゼ遺伝子を有し、異種ウイルスエピソームDNA複製起点に特異的なイニシエータータンパク質をコードする配列の発現は、誘導性プロモーターの制御下にある。骨疾患は、例えば、事故、損傷、または外科手術によるものであり得、骨の癒合不全または急性骨折または所要の脊椎固定術であり得る。さらに、骨疾患は、低い骨密度、骨への低い血流量、加齢、遺伝性の状態などであり得る。一部の実施形態では、目的の遺伝子、遺伝子産物、shRNA、siRNA、miRNA、および/または他の遺伝子サイレンシングRNAは、骨形成タンパク質1~4またはシクロオキシゲナーゼ-2または血管内皮増殖因子をコードする。
遺伝性遺伝子疾患
【表2】
【0110】
実施形態では、本開示は、遺伝性遺伝子疾患に関連する状態、症候、または副作用を処置、予防、または最小にする方法に関する。このような遺伝性遺伝子疾患のいくつかの例を、以下の命名を用いて、突然変異の原因型および関与する染色体と共に、本明細書の表2に開示する。
P-点突然変異、または全体が1つの遺伝子内にあるあらゆる挿入/欠失
D-1つまたは複数の遺伝子の欠失
C-全染色体の過剰、喪失、またはその両方(染色体異常を参照されたい)
T-トリヌクレオチド反復障害:遺伝子はその長さを伸長している
【0111】
現在の遺伝子療法には、遺伝子の欠失、置換、または再シーケンシングを介してゲノムDNAを編集する試みが含まれる。当技術分野において公知の様々な遺伝子療法系には、レンチウイルス形質導入による遺伝物質の送達に依存する、Talen、CRISPR-Cas9、ジンクフィンガーエンドヌクレアーゼ、TALENなどが含まれる。しかし、本開示とは異なり、これらの系は、活性な染色体改変系が予想外の部位を改変し得るので、延長された期間の間細胞内で活性であり続け、がんを含む新たな遺伝子疾患に至る予想外の結果を有し得る。宿主DNAの改変に真に実用的な系には、本明細書において開示されている方法などの方法を介する、一過性で良く調節された発現が必要である。
【0112】
一実施形態では、本開示は、遺伝性遺伝子疾患を有する対象を識別するステップ、および治療有効量の本開示に従ったウイルス送達系を対象に投与するステップを含む、遺伝性遺伝子疾患を処置する方法に関する。ウイルス送達系は、ウイルス担体、異種ウイルスエピソーム複製起点、異種ウイルスエピソーム複製起点に特異的なイニシエータータンパク質をコードする配列のうちの1つまたはそれより多く、ならびに目的の少なくとも1つの遺伝子、遺伝子産物、shRNA、siRNA、miRNA、および/または他の遺伝子サイレンシングRNAを含み、ここで、ウイルス担体は欠陥のあるインテグラーゼ遺伝子を有し、異種ウイルスエピソームDNA複製起点に特異的なイニシエータータンパク質をコードする配列の発現は、誘導性プロモーターの制御下にある。遺伝性遺伝子疾患は、例えば、表2に列挙する疾患であり得、一部の実施形態では、目的の遺伝子、遺伝子産物、shRNA、siRNA、miRNA、および/または他の遺伝子サイレンシングRNAは、表2に列挙する遺伝子の非突然変異型をコードする。上記を限定することなく、特定の遺伝性遺伝子疾患はCFであることができ、処置は、本明細書に詳述されるように、CFTRの非変異形態を発現することによって追跡することができる。
【0113】
別の実施形態では、ガイドRNA標的配列が開示されるVIV系に組み入れられる。ガイドRNA配列は、変異したか、または他の方法で修正を要する宿主ゲノム内の特定部位に遺伝子編集機構を向けるために使用される配列である。VIV系のカーゴ内にガイドRNAを含めることによって、修正を要する染色体セクションの改変が可能になり、同一の改変がVIV内で生じて、宿主による分解および/または希釈が加速する。1つの実施形態では、開示されるウイルス送達系は、ウイルス担体、異種ウイルスエピソーム複製起点、異種ウイルスエピソーム複製起点に特異的なイニシエータータンパク質をコードする配列のうちの1つまたはそれより多く、目的の少なくとも1つの遺伝子、shRNA、siRNA、miRNA、および/または他の遺伝子サイレンシングRNA、ならびに少なくとも1つのガイドRNAを含み、ここで、ウイルス担体は欠陥のあるインテグラーゼ遺伝子を有し、異種ウイルスエピソームDNA複製起点に特異的なイニシエータータンパク質をコードする配列の発現は、誘導性プロモーターの制御下にある。
【0114】
細胞または組織のex vivoでの改変
別の態様では、VIV系は、疾患の治療に使用される細胞または組織を改変するために使用され得る。細胞には、限定はしないが、リンパ球、幹細胞、上皮細胞、神経細胞などの一次細胞が含まれ得る。例えば、VIV系は、がん、感染性疾患、または自己免疫を含む特定疾患に再び向けられるリンパ球を改変するために、かつ遺伝子改変された細胞の長期的存在が健康上のリスクを有する場合に、使用され得る。例えば、VIV系は、高レベルの転写産物因子を要する多能性幹細胞を規定された間隔にわたりプログラムするために、そして組み込まれたウイルスベクターの長期的存在が望ましくない場合に、使用され得る。好適な上皮細胞は、合成皮膚または他の適用に使用され得る上皮細胞を含む。これらは、処置後の正常組織の機能に有害となり本明細書に開示されるVIV系によって最良に送達される栄養因子または増殖因子の、最初の処置の間の発現を要し得る。
【0115】
用量および剤形
開示されるVIV系は、目的の遺伝子または配列の短期、中期、または長期の発現、および開示されるベクターのエピソームでの維持を可能にする。したがって、投薬レジメンは、処置される状態および投与方法に基づいて変化し得る。
【0116】
一実施形態では、VIVは、必要とする対象に様々な用量で投与され得る。具体的には、対象は、≧106感染用量(1標的細胞を形質導入するために平均して1用量が必要とされる)で投与され得る。さらに具体的には、対象は、≧107、≧108、≧109、または≧1010感染用量で投与され得る。VIV投薬の上限は疾患適応症ごとに決定され、個々の製品または製品ロットについての毒性/安全性プロファイルに基づく。
【0117】
さらに、VIVは、1日に1回または2回投与され得る。あるいは、VIVは、必要とする対象に1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回、1ヶ月に1回、1ヶ月おき、3ヶ月おき、6ヶ月おき、9ヶ月おき、1年に1回、18ヶ月おき、2年おき、36ヶ月おき、または3年おきまたはそれより長い期間おきに投与され得る。
【0118】
種々の態様および実施形態では、VIVは医薬組成物として投与される。実施形態では、VIVを含む医薬組成物は、臨床適用のために、広範な、経鼻、肺、経口、局所的、または非経口剤形で製剤化され得る。剤形のそれぞれは、様々な崩壊剤、界面活性剤、充填剤、増粘剤、結合剤、湿潤剤などの希釈剤、または他の薬学的に許容される賦形剤を含有し得る。VIVを含む医薬組成物はまた、注射のために処方され得る。
【0119】
VIV組成物は、鼻腔内投与、バッカル投与、舌下投与、経口投与、直腸投与、眼投与、非経口(静脈内、皮内、筋肉内、皮下、大槽内、腹腔内)投与、肺投与、膣内投与、局所的投与、局所的投与、瘢痕化後の局部所的投与、エアロゾルを介するまたはバッカルもしくは経鼻スプレー製剤を介する粘膜投与などの、あらゆる薬学的に許容される方法を使用して投与され得る。
【0120】
さらに、VIV組成物は、固体剤形、錠剤、丸剤、トローチ剤、カプセル剤、液体分散剤、ゲル剤、エアロゾル剤、肺エアロゾル剤、鼻エアロゾル剤、軟膏剤、クリーム剤、半固体剤形、および懸濁剤などの、あらゆる薬学的に許容される剤形に製剤化され得る。さらに、組成物は、制御放出製剤、持続放出製剤、即時放出製剤、またはそのあらゆる組合せであり得る。さらに、組成物は経皮送達系であり得る。
【0121】
別の実施形態では、VIVを含む医薬組成物は、経口投与のための固体剤形に製剤化され得、固体剤形は、粉末剤、顆粒剤、カプセ剤ル、錠剤剤、またはピル剤であり得る。別の実施形態では、固体剤形は、炭酸カルシウム、デンプン、ショ糖、乳糖、微晶質セルロース、またはゼラチンなどの1つまたは複数の賦形剤を含み得る。さらに、固体剤形は、賦形剤に加えて、タルクまたはステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤を含み得る。実施形態では、経口剤形は、即時放出または改変された放出形態であり得る。改変された放出剤形には、制御または延長放出、腸溶性放出などが含まれる。改変された放出剤形で使用される賦形剤は、当業者に一般に公知である。
【0122】
実施形態では、VIVを含む医薬組成物は、舌下またはバッカル剤形として製剤化され得る。このような剤形は、舌下錠剤または舌の下に投与される溶液組成物、および頬と歯茎との間に置かれるバッカル錠剤を含む。
【0123】
別の実施形態では、VIVを含む医薬組成物は、経鼻剤形として製剤化され得る。本開示のこのような剤形は、鼻送達のための溶液剤、懸濁剤、およびゲル組成物を含む。
【0124】
実施形態では、医薬組成物は、経口投与のための液体剤形、例えば、懸濁剤、エマルジョン剤、またはシロップ剤に製剤化され得る。実施形態では、液体剤形は、水および液体パラフィンなどの一般に使用される単純な希釈剤に加えて、湿潤剤、甘味料、香料、または防腐剤などの様々な賦形剤を含み得る。実施形態では、VIVを含む組成物またはその薬学的に許容される塩は、小児患者への投与に適するように製剤化され得る。
【0125】
実施形態では、医薬組成物は、無菌水溶液剤、懸濁剤、エマルジョン剤、非水性溶液剤、または坐剤などの、非経口投与のための剤形に製剤化され得る。実施形態では、非水性溶液剤または懸濁剤には、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルなどの植物油、またはオレイン酸エチルなどの注射可能なエステルが含まれ得る。坐剤の基材として、ウイテプゾール、マクロゴール、tween 61、カカオ油、ラウリン油、またはグリセリン化されたゼラチンを使用することができる。
【0126】
医薬組成物の投薬は、患者の体重、年齢、性別、投与の時間および態様、排出速度、ならびに疾患の重症度に応じて変化し得る。
【0127】
定義
本明細書で具体的に定義されない語は、当業者によって理解される意味と同じ意味を有すると理解される。
【0128】
本明細書において使用する場合、用語「約」は当業者によって理解され、それが使用される文脈に応じてある程度変化する。その用語が使用される文脈を考慮しても当業者に自明でない用語が使用される場合には、「約」は、具体的な用語のプラスまたはマイナス10%までを意味する。
【0129】
活性物質「の投与」または活性物質「を投与する」という用語は、本開示の活性物質を、治療上有用な形態および治療有効量で個体の体内に導入し得る形態で、処置を必要とする対象に提供することを意味する。
【0130】
用語「基底レベル」は、少なくとも1つのイニシエータータンパク質が添加されていないときのカーゴの発現を指す。
【0131】
用語「BMP」は、骨形成タンパク質を指す。
【0132】
用語「カーゴ」は、本明細書に開示されるウイルス送達系を使用して発現される遺伝子または遺伝子産物を指す。
【0133】
用語「CF」は嚢胞性線維症を指し、用語「CFTR」は嚢胞性線維症の膜貫通コンダクタンス調節因子タンパク質を指す。
【0134】
用語「発現」、「発現される」、または「コードする」は、ポリヌクレオチドがmRNAに転写されるプロセス、および/または転写されたmRNAがその後、ペプチド、ポリペプチド、もしくはタンパク質に翻訳されるプロセスを指す。発現は、真核細胞におけるmRNAのスプライシング、または他の形態の転写後修飾もしくは翻訳後修飾を含み得る。
【0135】
用語「断片1」は、「F1」および「Frag1」と同義であり、本明細書で詳述されるLCRの断片1トランケーションを指す。用語「断片2」は、「F2」および「Frag2」と同義であり、本明細書で詳述されるLCRの断片2トランケーションを指す。用語「断片3」は、「F3」および「Frag3」と同義であり、本明細書で詳述されるLCRの断片3トランケーションを指す。用語「断片4」は、「F4」および「Frag4」と同義であり、本明細書で詳述されるLCRの断片1構築物を指す。
【0136】
用語「個体」、「宿主」、「対象」および「患者」は、本明細書で互換的に使用される。
【0137】
用語「誘導レベル」は、少なくとも1つのイニシエータータンパク質の添加後のカーゴの発現を指す。
【0138】
用語「LCR」は、例えば、HPV16の長制御領域を指す。
【0139】
用語「PDGF」は、血小板由来増殖因子を指す。
【0140】
用語「第1象限の処置経過」は、
図21の第1象限に含まれる処置経過への参照を含む。非限定的な例として、第1象限の処置経過は、遺伝子編集、安全性研究、および実施例17で概説される目的を含む。用語「第2象限の処置経過」は、
図21の第2象限に含まれる処置経過への参照を含む。非限定的な例として、第2象限の処置経過は、細胞リプログラミング、チェックポイント抑制、および実施例18で概説される目的を含む。用語「第3象限の処置経過」は、
図21の第3象限に含まれる処置経過への参照を含む。非限定的な例として、第3象限の処置経過は、受動免疫、免疫刺激、および実施例19で概説される目的を含む。用語「第4象限の処置経過」は、
図21の第4象限に含まれる処置経過への参照を含む。非限定的な例として、第4象限の処置経過は、プラセボ対照、および実施例20で概説される目的を含む。
【0141】
用語「第1象限の因子」は、
図20の第1象限に示すような基底エピソームコピー数プロファイルを促進する任意の生物学的因子を指す。非限定的な例として、第1象限の因子は、Frag2、Frag3およびFrag4配列を含む。用語「第2象限の因子」は、
図20の第2象限に示すような誘導性エピソームコピー数プロファイルを促進する任意の生物学的因子を指す。非限定的な例として、第2象限の因子は、E1および/またはE2イニシエータータンパク質と組み合わせたFrag2、Frag3、およびFrag4配列を含む。用語「第3象限の因子」は、
図20の第3象限に示すような誘導性エピソームコピー数プロファイルを促進する任意の生物学的因子を指す。非限定的な例として、第3象限の因子は、E1および/またはE2イニシエータータンパク質と組み合わせたLCRおよびFrag1配列を含む。用語「第4象限の因子」は、
図20の第4象限に示すような基底エピソームコピー数プロファイルを促進する任意の生物学的因子を指す。非限定的な例として、第4象限の因子は、LCRおよびFrag1配列を含む。
【0142】
用語「shRNA」はショートヘアピンRNAを指す;用語「siRNA」は小さい(または短い)干渉RNAを指す;および用語「miRNA」はマイクロRNAを指す。
【0143】
用語「治療有効量」は、および所与の病気、損傷、疾患、または状態を患っている患者において見られる合併症の症候、進行、または発病を処置または予防するために適切な組成物内の、かつ適切な剤形の、十分な量の本開示の活性物質を差す。治療有効量は、患者の状態またはその重症度、および処置される対象の年齢、体重などに応じて変化する。治療有効量は、例えば、投与経路、対象の状態、および当業者によって理解されている他の因子を含む、多くの因子のいずれかに応じて変化し得る。
【0144】
用語「処置」または「処置すること」は、概して、処置されている対象の自然経過を改変するための試みへの介入を指し、予防のためまたは臨床病理学の経過の間に行われ得る。所望の効果には、限定はしないが、疾患の発生または再発を予防すること、症候を軽減すること、疾患のあらゆる直接的なまたは間接的な病理学的結果を抑制すること、弱めること、または阻害すること、病状を改善または緩和すること、および寛解または予後の改善を生じさせることが含まれる。
【0145】
用語「非常に低い」は、基底発現レベルの文脈で使用されるとき、非常に低い発現レベルおよび/またはエピソームコピー数(必要に応じて)を指し、検出できない発現および/またはエピソームコピー数を含み得る。非限定的な例として、非常に低い発現レベルは、細胞当たり0.020未満のエピソームコピーを含む。用語「非常に低い」は、基底発現レベルの文脈で使用されるとき、本明細書で「第1の規定されたレベル」として参照される場合もある。用語「わずかに高い」は、基底発現レベルの文脈で使用されるとき、低い発現および/またはエピソームコピー数のレベルであるが、「非常に低い」基準と比較してわずかに高い発現および/またはエピソームコピー数のレベルを指す。非限定的な例として、わずかに高い発現レベルは、細胞当たり0.020またはそれよりも高いエピソームコピーであって、細胞当たり0.2未満のエピソームコピーを含む。用語「わずかに高い」は、基底発現レベルの文脈で使用されるとき、本明細書で「第2の規定されたレベル」として参照される場合もある。
【0146】
本明細書において使用する場合、用語「VIV」は、少なくとも1つの目的の遺伝子、遺伝子産物、shRNA、siRNA、miRNA、または他のRNAを発現させるためのベクター・イン・ベクター系を指す。用語「VIV」は、本明細書で使用されるとき、ウイルス送達系および一過性ベクターと同義的に使用される。
【0147】
以下の実施例は、本発明の態様を説明するために提供される。しかし、本発明はこれらの実施例において記載されている具体的な条件または詳細に限定されない。本明細書で参照される全ての発行された刊行物は、参照によって具体的に組み入れられる。
【実施例0148】
実施例1
感染性疾患を処置するためのVIV
この実施例は、感染性疾患を処置するための例示的なVIV構築物を実証する。
【0149】
この実施例では、
図1Aは、エボラウイルス感染性疾患を処置するための例示的な線形VIV構築物を表す。ここで、
図1Aに示す「カーゴ」部分の少なくとも1つは、エボラウイルスを特異的に標的とする抗体をコードする。
図1Bに示すように、例示的なVIV構築物の長末端反復(LTR)部分はウイルス核酸を環状化するために使用することができる。
【0150】
エボラウイルスを有する疑いがあるかまたはエボラウイルスを有すると診断された対象に、エボラウイルスを特異的に標的とする抗体をコードする治療有効量のVIVを、単独で、またはエボラを処置もしくは予防するための1つもしくは複数のさらなる作用物質と組み合わせて投与し得る。エボラウイルスを特異的に標的とする抗体をコードするVIVおよび/またはさらなる作用物質を、当技術分野において公知のまたは本明細書において記載される方法に従って、経口により、鼻腔内に、髄腔内に、眼内に、皮内に、経粘膜的に、イオン泳動的に、局所的に、全身に、静脈内に、皮下に、腹腔内に、または筋肉内に投与する。次いで対象を、限定はしないが、例えば、発熱、疲労、倦怠感、衰弱、目の赤み、関節および筋肉痛、頭痛、吐き気、嘔吐、出血、ならびに死亡を含むエボラウイルスに関連する徴候および症候の存在および/または重症度について毎日評価する。処置は、エボラウイルス感染の1つまたは複数の徴候または症候が改善または排除されるような時間まで維持する。
【0151】
エボラウイルスが感染した疑いがあるかまたはエボラウイルスを有すると診断され、エボラウイルスを特異的に標的とする抗体をコードする治療有効量のVIVを投与されている対象が、重症度の低減またはエボラウイルス感染に関連する1つもしくは複数の症候の排除を示すことは、合理的に予測される。さらに、エボラウイルスを特異的に標的とする抗体をコードするVIVを1つまたは複数のさらなる作用物質と組み合わせて投与することが相乗的な効果を有することが豪的に予想される。
【0152】
これらの結果は、エボラウイルスを特異的に標的とする抗体をコードするVIVがエボラウイルスの処置において有用であることを示す。
実施例2
感染性疾患を予防するためのVIV
【0153】
この実施例は、感染性疾患を予防するための例示的なVIV構築物を実証する。この実施例では、
図1Aは、エボラウイルス感染性疾患の感染を予防するための例示的な線形VIV構築物を表す。ここで、
図1Aに示す「カーゴ」部分の少なくとも1つは、エボラウイルスを特異的に標的とする抗体をコードする。
図1Bに示すように、例示的なVIV構築物の長末端反復(LTR)部分はウイルス核酸を環状化するために使用することができる。
【0154】
エボラウイルスに罹患するリスクが増大している疑いがある対象に、エボラウイルスを特異的に標的とする抗体をコードする予防有効量のVIVを、単独で、またはエボラを処置もしくは予防するための1つもしくは複数のさらなる作用物質と組み合わせて、エボラに罹患するリスクが増大している区域に入る前に投与し得る。エボラウイルスを特異的に標的とする抗体をコードするVIVおよび/またはさらなる作用物質を、当技術分野において公知のまたは本明細書において記載される方法に従って、経口的に、鼻腔内に、髄腔内に、眼内に、皮内に、経粘膜的に、イオン泳動的に、局所的に、全身に、静脈内に、皮下に、腹腔内に、または筋肉内に投与する。次いで、対象を、限定はしないが、例えば、発熱、疲労、倦怠感、衰弱、目の赤み、関節および筋肉痛、頭痛、吐き気、嘔吐、出血、ならびに死亡を含むエボラウイルスに関連する徴候および症候の存在および/または重症度について毎日評価する。処置は、エボラの1つまたは複数の徴候または症候が予防されるような時間まで維持する。
【0155】
エボラウイルスに曝露された疑いがあるかまたはエボラウイルスに曝露されたと診断され、エボラウイルスを特異的に標的とする抗体をコードする予防有効量のVIVを投与される対象は、エボラに接触するリスクが低減することが合理的に予測される。さらに、エボラウイルスを特異的に標的とする抗体をコードするVIVと1つまたは複数のさらなる作用物質とを組み合わせた投与が相乗的な効果を有することが合理的に予測される。これらの結果は、エボラウイルスを特異的に標的とする抗体をコードするVIVがエボラウイルスの予防において有用であることを示す。
実施例3
創傷治癒を増強するためのVIV
【0156】
この実施例は、創傷治癒を増強するための例示的なVIV構築物を実証する。この実施例では、
図1Aは、創傷治癒を増強するための例示的な線形VIV構築物を表す。ここで、
図1Aに示す「カーゴ」部分の少なくとも1つは、血小板由来増殖因子(PDGF)(配列番号17)をコードする。
図1Bに示すように、例示的なVIV構築物の長末端反復(LTR)部分は、ウイルス核酸を環状化するために使用することができる。
【0157】
創傷(例えば、事故、損傷、または外科手術による)を有する対象に、血小板由来増殖因子(PDGF)をコードする治療有効量のVIVを、単独で、または創傷を処置もしくは滅菌するための1つもしくは複数のさらなる作用物質と組み合わせて投与し得る。VIV PDGFおよび/またはさらなる作用物質を、当技術分野において公知のまたは本明細書において記載される方法に従って、経口的に、鼻腔内に、髄腔内に、眼内に、皮内に、経粘膜的に、イオン泳動的に、局所的に、全身に、静脈内に、皮下に、腹腔内に、または筋肉内に投与する。次いで、対象を、創傷の状態を判定するために毎日評価する。処置は、創傷が治癒し、瘢痕化が最小になるような時間まで維持する。
【0158】
創傷を有し、治療有効量のVIV PDGFを投与されている対象が、創傷治癒の増強を示すことは、合理的に予測される。さらに、PDGFをコードするVIVを1つまたは複数のさらなる作用物質と組み合わせて投与することが相乗的な効果を有することが合理的に予想される。これらの結果は、PDGFをコードするVIVが創傷治癒の増強に有用であることを示す。
実施例4
骨損傷を処置するためのVIV
【0159】
この実施例は、骨損傷を処置するための例示的なVIV構築物を実証する。この実施例では、
図1Aは、骨損傷を処置するための例示的な線形VIV構築物を表す。ここで、
図1Aに示す「カーゴ」部分の少なくとも1つは、骨形成タンパク質(BMP)(配列番号18)をコードする。
図1Bに示すように、例示的なVIV構築物の長末端反復(LTR)部分はウイルス核酸を環状化するために使用することができる。
【0160】
骨損傷を有する疑いがあるかまたは骨損傷を有すると診断された対象に、骨形成タンパク質(BMP)をコードする治療有効量のVIVを、単独で、または骨損傷を処置するための1つもしくは複数のさらなる作用物質と組み合わせて投与する。BMPをコードするVIVおよび/またはさらなる作用物質を、当技術分野において公知のまたは本明細書において記載される方法に従って、経口的に、鼻腔内に、髄腔内に、眼内に、皮内に、経粘膜的に、イオン泳動的に、局所的に、全身に、静脈内に、皮下に、腹腔内に、または筋肉内に投与する。次いで、対象を、骨損傷に関連する徴候および症候の存在および/または重症度について毎週評価して、治癒の速度および強さを判定する。処置は、骨が治癒するような時間まで維持する。
【0161】
骨損傷を有する疑いがあるかまたは骨損傷を有すると診断され、BMPをコードする治療有効量のVIVを投与されている対象が、損傷の重症度の低減および治癒の増強を示すことは、合理的に予測される。さらに、BMPをコードするVIVを1つまたは複数のさらなる作用物質と組み合わせて投与することが相乗的な効果を有することが合理的に予想される。これらの結果は、BMPをコードするVIVが骨の損傷または疾患の処置において有用であることを示す。
実施例5
遺伝性疾患を処置するためのVIV
【0162】
この実施例は、嚢胞性線維症(CF)を処置するための例示的なVIV構築物を実証する。この実施例では、
図1Aは、遺伝性疾患であるCFを処置するための例示的な線形VIV構築物を表す。ここで、
図1Aに示す「カーゴ」部分の少なくとも1つは、嚢胞性線維症の膜貫通コンダクタンス調節因子(CFTR)をコードする(NM_000492)。
図1Bに示すように、例示的なVIV構築物の長末端反復(LTR)部分はウイルス核酸を環状化するために使用することができる。
【0163】
(CF)を有する疑いがあるかまたは(CF)を有すると診断された対象に、嚢胞性線維症の膜貫通コンダクタンス調節因子(CFTR)をコードする治療有効量のVIVを、単独で、またはCFを処置するための1つもしくは複数のさらなる作用物質と組み合わせて投与し得る。CFTRをコードするVIVおよび/またはさらなる作用物質を、当技術分野において公知のまたは本明細書において記載される方法に従って、経口的に、鼻腔内に、髄腔内に、眼内に、皮内に、経粘膜的に、イオン泳動的に、局所的に、全身に、静脈内に、皮下に、腹腔内に、または筋肉内に投与する。次いで、対象を、限定はしないが、例えば、成長不良、持続性の咳、濃い喀痰および粘液、喘鳴、息切れ、運動能力の低下、肺感染の反復、鼻孔の炎症、油っぽい便、腸閉塞、ならびに体重増加不良を含むCFに関連する徴候および症候の存在および/または重症度について毎週評価する。処置は、CFの1つまたは複数の徴候または症候が改善または排除されるような時間まで維持する。
【0164】
CFを有する疑いがあるかまたはCFを有すると診断され、CFTRをコードする治療有効量のVIVを投与されている対象が、重症度の低減またはCFに関連する1つもしくは複数の症候の排除を示すことは、合理的に予測される。さらに、CFTRをコードするVIVを1つまたは複数のさらなる作用物質と組み合わせて投与することが相乗的な効果を有することが合理的に予想される。これらの結果は、CFTRをコードするVIVがCFの処置において有用であることを示す。
実施例6
カーゴを発現するためのE1を含有するVIV
【0165】
緑色蛍光タンパク質遺伝子(GFP)をカーゴとして含有する
図2に従ったベクターを作製した。ヒトパピローマウイルス16型(NCBI受託番号U89348、配列番号19)の完全な遺伝子座制御領域およびE1タンパク質を含有するDNAを化学的に合成した。個々のセグメントおよび/またはコード配列を最初に合成した。これらを、緑色蛍光タンパク質遺伝子の5’末端に同一である合成オリゴヌクレオチドプライマー、そして緑色蛍光タンパク質の3’末端に相補的な合成オリゴヌクレオチドプライマーを使用して、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって増幅した。5’プライマー(配列番号20)は、BamHIまたはEcoRIエンドヌクレアーゼのための認識部位を有するその5’末端から伸長した。3’プライマー(配列番号21)は、BamHIまたはEcoRIエンドヌクレアーゼ認識部位の相補体を有するその3’末端で伸長した。次いで、得られた増幅された緑色蛍光タンパク質遺伝子配列をBamHIおよびEcoRI制限エンドヌクレアーゼで消化した。
【0166】
レンチウイルスベクターは、System Biosciences,Incから入手した。プラスミドをBamHIおよびEcoRI酵素で切断し、過剰に増幅した緑色蛍光タンパク質遺伝子配列と、インサート対ベクターが1:3の比率で混合した。
【0167】
次いで、酵素活性を摂氏70度で20分の熱不活化によって停止させた。上記の混合物を室温まで冷却し、アニーリングを可能にした。
【0168】
アニーリング反応は、バクテリオファージT4 DNAリガーゼを用いて、30分、室温で行った。2.5マイクロリットルの得られたライゲーション混合物を、25マイクロリットルのSTBL3コンピテント細菌細胞に添加した。
【0169】
次いで、トランスフェクションを摂氏42度での簡単な(1分)熱ショックによって行った。
【0170】
細菌細胞を、アンピシリンを含有する寒天プレート上にストリークして、細菌培養物を得た。これらの培養物をLuria培養液内で増殖させた。
【0171】
増幅した緑色蛍光タンパク質遺伝子配列の、レンチウイルスベクターパッケージングプラスミド内への挿入を確認するために、DNAを上記の細菌培養物から抽出し、標準的な方法によって精製した。精製したDNAを、構築物を作製するために使用した同一のエンドヌクレアーゼで消化した。断片の長さをアガロースゲル電気泳動によって分析し、増幅した緑色蛍光タンパク質遺伝子配列を、Eurofins MWG Operon LLCから入手した特異的プライマーを使用してDNAシーケシングによって検証した。
【0172】
レンチウイルスベクターストックを以下のように作製した。少なくとも2つのレンチウイルスパッケージングプラスミドプラスカーゴプラスミドを、ウイルス遺伝子およびゲノムRNAを発現させるHEK細胞にコトランスフェクトし、インテグラーゼ欠損レンチウイルス粒子内にアセンブルし、そして培養培地内に放出させた。無細胞上清を、トランスフェクション後3~10日の間隔をあけて生成および回収した。レンチウイルス粒子を、遠心分離、一時的なフロー濾過、サイズ排除クロマトグラフィー、サイズ排除濾過、またはイオン交換クロマトグラフィーを含み得る方法の組合せを含む標準的手順によって精製した。各ストックについての濃度および生物学的活性(ml当たりの形質導入単位数)を判定した。
【0173】
293T細胞を含む哺乳動物細胞を、レンチウイルス由来エピソームの形成、コピー数、および発現を試験するために使用した。293T細胞に、インテグラーゼ欠損レンチウイルス粒子を、ポリブレンの存在下で、1から10の範囲の感染多重度で形質導入した。吸収されなかったウイルスを、適用の3時間後に細胞を洗浄することによって除去し、細胞を3日間培養した。細胞を蛍光顕微鏡で観察し、GFPを発現している細胞を計数した。形質導入されなかった293T細胞を陰性対照として使用した。データを、培養物中の生存細胞100個当たりのGFP陽性細胞として報告した。最少300個の細胞を顕微鏡視野当たりで計数し、5~10の視野を各複製実験で計数した。1つの陰性対照(最も左のデータカラム)および3つの複製実験(すなわち、実験1、実験2および実験3として指定されたデータカラム)を含む4つの独立した形質導入実験を行って、形質導入された細胞の頻度を判定した。データは
図3に示され、3つの複製実験にわたるGFPの発現を示す。
実施例7
カーゴを発現するためのE1およびE2を含有するVIV
【0174】
図4を参照するに、ベクター19は、E1(配列番号6)およびE2(配列番号7)イニシエータータンパク質の両方を含むように構築することができる。ここで、遺伝子カーゴは、誘導性プロモーターの制御下のCMV/GFP発現カセットである。
【0175】
293T細胞に、ベクター19を、細胞当たり1から20の間の範囲の形質導入単位の感染多重度で形質導入し得る。3時間後、細胞を、吸着されなかったビリオンを除去するために培地で洗浄し、培養物に戻す。形質導入の12~24時間後、細胞を、誘導性プロモーターを誘導し得る少なくとも1投薬量の化合物で処理する。誘導性プロモーターを誘導し得る化合物を添加すると、E1およびE2のmRNAがエピソームから転写され、遺伝子座制御領域断片2(LCR/F2)(配列番号3)に組み合わされ、そしてアセンブリされて、DNA複製が引き起こされる。レンチウイルス由来のエピソームは、プロモーター誘導の停止のおよそ24~36時間後に崩壊し始める。ベクター19内のカーゴからのタンパク質生成物を、分析用フローサイトメトリーによって測定する。
実施例8
カーゴを発現するためのE1およびE2の導入
【0176】
カーゴを発現するE1およびE2の効果を判定するために、293T細胞を、mCherryと全長HPV16(配列番号1)長制御領域(LCR)または本明細書で断片1(配列番号2)、断片2(配列番号3)、断片3(配列番号4)および断片4(配列番号5)に記載されるような3’断片とを発現するD64Vインテグラーゼ欠損レンチウイルスベクター(すなわち、
図5Aにおけるベクター)で形質導入した。
【0177】
なお、
図5Aを参照するに、全長LCRまたは3’断片を、
図5Aに示すLCR領域で利用した。さらに具体的に、設計された構築物の図示は、本明細書の
図7にベクター9~13として実証されている。
図7に示す追加のエレメントは、psiパッケージングエレメント(配列番号22);revエレメント(配列番号23);cPPT(セントラルポリプリン配列)エレメント(配列番号24);およびウッドチャック肝炎ウイルスの転写後調節エレメント(WPRE)(配列番号25)を指す。
【0178】
24時間後、細胞を、リポフェクタミン2000を用いて、HPV16 E1(配列番号6)およびE2(配列番号7)を含有するプラスミドでトランスフェクトした。2日後、mCherry発現を、FACSによって分析した。これらの実験結果を本明細書の
図6Aに示す。
【0179】
E1およびE2がプラスミドを介して導入された上記実験と対比するために、第2のセットの実験を以下に記載されるように実施した。簡単に述べると、293T細胞を、本明細書の
図5Aに示す一般化されたベクターに基づく、mCherryと全長HPV16長制御領域(LCR)(配列番号1)またはより短い断片1(配列番号2)とを発現するD64Vインテグラーゼ欠損レンチウイルスベクターで形質導入した。同時に、細胞を、HPV16 E1(配列番号6)およびE2(配列番号7)を発現するレンチウイルスで形質導入した。2日後、本明細書の
図6Bに示すように、mCherry発現を、FACSによって分析した。本明細書の
図6Bに示すように、E1およびE2をmCherryと全長LCR(配列番号1)またはより短い断片1(本明細書で断片1としても参照され、また本明細書で配列番号2としても参照される)とを発現するD64Vインテグラーゼ欠損レンチウイルスベクターで導入したとき、mCherry細胞のより大きなパーセンテージが達成された。
【0180】
この実施例で詳述されるデータは、E1およびE2がレンチウイルス媒介発現を介して発現されるとき、HPV ori(LCR)全長および断片のより強い発現、したがってより大きな活性化があったことを実証する。
【0181】
第2に、この実施例からのデータは、LCR領域のサイズに依存してHPV ori活性化に差異があることを実証する。例えば、
図6を参照するに、全長LCR(配列番号1)および断片1(配列番号2)を使用するとき、断片2(配列番号3)、3(配列番号4)、および4(配列番号5)を用いた場合と比較して、mCherryの発現により顕著な変化があった。
実施例9
VEGFの発現
【0182】
本明細書で述べるように、VEGFは、とりわけ、骨損傷を処置するための「カーゴ」領域として選択することができる。VEGF発現レベルをさらに分析するために、293T細胞を、VEGFのためのヒトcDNA(配列番号26)とHPV16長制御領域(LCR)の断片1(配列番号2)とを含有するD64Vインテグラーゼ欠損レンチウイルスベクターで形質導入した(VEGF含有ベクターの一般的説明について
図5B参照)。同時に、細胞を、HPV16 E1(配列番号6)およびE2(配列番号7)を含有するレンチウイルスベクターで形質導入した。2日後、細胞培養培地を回収し、VEGF用ELISAキット(Thermo Scientific)を用いて分析した。
図8に示すように、VEGF発現ベクターを用いてVEGFレベルの増加があり(3594pg/ml)、E1およびE2を用いるとさらに増加した(11856pg/ml)。
【0183】
上記実施例8からのmCherryの結果と類似した様式で、結果は、LCR領域のサイズに応じてHPVori活性化に差異があったことを実証する。
図8に示すように、E1/E2を添加した後、VEGFレベルにおよそ3倍の変化があった。したがって、全長LCR(配列番号1)または断片1(配列番号2)は目的の遺伝子(すなわち、VEGF)を低レベルで発現するが、E1/E2を導入したとき、発現の強い誘導があった。対照的に、試験した他の断片はより高い初期レベルで発現し、E1/E2を導入した際の差異は減少した。
実施例10
E1およびE2含有ベクターの開発
【0184】
標準的な分子生物学的技術(例えば、Sambrook;Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第4版)ならびに本明細書に記載の技術を使用して、HPV LCRならびにE1およびE2を含有する一連のレンチウイルスベクターを下記により詳細に記載するように開発した。これらのベクターはまた、本明細書の
図9でも示す。
【0185】
図9を参照するに、ベクター20を開発したが、これはcDNA、マイクロRNA、またはshRNAを発現するための一般的なレンチウイルスベクターである。ベクター20を参照するに、左から右へ、開発したベクターの重要な成分は、次の通りである:長末端反復部分(配列番号27);psiパッケージングエレメント(配列番号22);rev応答性エレメント(RRE)(配列番号23);プロモーター;cDNA、マイクロRNA、shRNAもしくは他のカーゴエレメント;ウッドチャック肝炎ウイルスの転写後調節エレメント(WPRE)(配列番号25)、本明細書で詳述するLCR断片を含有することができるLCR部分;ならびに長末端反復部分(配列番号28)。
【0186】
図9を参照するに、ベクター21を開発したが、これはE1を発現するためのレンチウイルスベクターである。ベクター21を参照するに、左から右へ、開発したベクターの重要な成分は、次の通りである:長末端反復部分(配列番号27);psiパッケージングエレメント(配列番号22);rev応答性エレメント(RRE)(配列番号23);CMVプロモーター(配列番号29);E1(配列番号6)ウッドチャック肝炎ウイルスの転写後調節エレメント(WPRE)(配列番号25);ならびに長末端反復部分(配列番号28)。
【0187】
図9を参照するに、ベクター22を開発したが、これはE1-C(カルボキシ末端)(配列番号8)を発現するためのレンチウイルスベクターである。ベクター22を参照するに、左から右へ、開発したベクターの重要な成分は、次の通りである:長末端反復部分(配列番号27);psiパッケージングエレメント(配列番号22);rev応答性エレメント(RRE)(配列番号23);CMVプロモーター(配列番号29);E1-C(配列番号8);ウッドチャック肝炎ウイルスの転写後調節エレメント(WPRE)(配列番号25);ならびに長末端反復部分(配列番号28)。
【0188】
図9を参照するに、ベクター23を開発したが、これはE2(HPV16)(配列番号7)を発現するためのレンチウイルスベクターである。ベクター23を参照するに、左から右へ、開発したベクターの重要な成分は、次の通りである:長末端反復部分(配列番号27);psiパッケージングエレメント(配列番号22);rev応答性エレメント(RRE)(配列番号23);UbiCプロモーター(配列番号30);E2(HPV16)(配列番号7);ウッドチャック肝炎ウイルスの転写後調節エレメント(WPRE)(配列番号25);ならびに長末端反復部分(配列番号28)。
【0189】
図9を参照するに、ベクター24を開発したが、これはE2-11(HPV11)(配列番号9)を発現するためのレンチウイルスベクターである。ベクター24を参照するに、左から右へ、開発したベクターの重要な成分は、次の通りである:長末端反復部分(配列番号27);psiパッケージングエレメント(配列番号22);rev応答性エレメント(RRE)(配列番号23);UbiCプロモーター(配列番号30);E2-11(HPV11)(配列番号9);ウッドチャック肝炎ウイルスの転写後調節エレメント(WPRE)(配列番号25);ならびに長末端反復エレメント(配列番号28)。
【0190】
図9を参照するに、ベクター25を開発したが、これはE1-T2A-E2(配列番号10)を発現するためのレンチウイルスベクターである。ベクター25を参照するに、左から右へ、開発したベクターの重要な成分は、次の通りである:長末端反復部分(配列番号27);psiパッケージングエレメント(配列番号22);rev応答性エレメント(RRE)(配列番号23);CMVプロモーター(配列番号29);E1-T2A-E2(配列番号10);ウッドチャック肝炎ウイルスの転写後調節エレメント(WPRE)(配列番号25);ならびに長末端反復部分(配列番号28)。
【0191】
図9を参照するに、ベクター26を開発したが、これはE1-T2A-E2(配列番号10)および完全長LCR(配列番号1)またはその断片(例えば、配列番号2~5)を発現するためのレンチウイルスベクターである。ベクター26を参照するに、左から右へ、開発したベクターの重要な成分は、次の通りである:長末端反復部分(配列番号27);psiパッケージングエレメント(配列番号22);rev応答性エレメント(RRE)(配列番号23);CMVプロモーター(配列番号29);E1-T2A-E2(配列番号10);ウッドチャック肝炎ウイルスの転写後調節エレメント(WPRE)(配列番号25)、LCR部分;ならびに長末端反復部分(配列番号28)。
【0192】
なお
図9を参照するに、ベクター27は、例えば、cDNA、抗体、マイクロRNA、またはshRNAを発現するための一般的なレンチウイルスベクターである。ベクター27を参照するに、左から右へ、開発したベクターの重要な成分は、次の通りである:長末端反復部分(配列番号27);psiパッケージングエレメント(配列番号22);rev応答性エレメント(RRE)(配列番号23);プロモーター;cDNA、マイクロRNA、shRNAもしくは他のカーゴエレメント;ウッドチャック肝炎ウイルスの転写後調節エレメント(WPRE)(配列番号25)、EBVori(配列番号31);ならびに長末端反復エレメント(配列番号28)。
【0193】
本明細書に詳述される線形ベクターは、例えば、ベクター20(
図9に示す)の環状化を示す
図10に示すように細胞内で環状化する。本明細書に詳述される実験の目的のために、
図10は、3’および5’長末端反復(LTR)に位置する矢印としてプライマーセットを詳述する。このプライマーセットは、エピソーム形態のレンチウイルスベクターを増幅するように設計されており、組み込まれた形態のベクターは増幅しない。レンチウイルスエピソームの検出のために適切なプライマーは、以下の配列を含有する:
3’LTRフォワード CTAATTCACTCCCAACGAAG(配列番号11);および
5’LTRリバース GCCGAGTCCTGCGTCGAGAG(配列番号12)。
【0194】
ここで詳述する実験では、インテグラーゼ欠損レンチウイルスベクターコピー数を、ベクター20とベクター21、ベクター22、ベクター23またはベクター24との組合せを利用する組合せによって調節した。代替的に、インテグラーゼ欠損レンチウイルスベクターコピー数を、ベクター20とベクター25またはベクター26との組合せを利用する組合せによって調節した。
実施例11
LCR断片および関連ベクターの開発
【0195】
本明細書で議論されるように、本明細書に詳述されるベクターのLCR部分は、断片1(配列番号2)、断片2(配列番号3)、断片3(配列番号4)および断片4(配列番号5)などの断片であることができ、それらの使用を通じて修飾した。
【0196】
LCRおよび本明細書に記載の断片のゲノム構成を
図11に示す。その図で全長LCR(上部)は、一連のAP1、YY1、E1およびE2結合部位を含んでいる。例えば
図11に示すように、断片1(配列番号2)、断片2(配列番号3)、断片3(配列番号4)および断片4(配列番号5)は、一連のAP1、YY1およびE2結合部位が減少する5’トランケーションの増加に伴ってLCRの増加を表す。LCR断片を利用するレンチウイルスベクターが、本明細書に詳述される(例えば、
図7および本明細書における関連実施例)。
実施例12
LCR断片およびE1/E2バリアントを含有するベクターの試験
【0197】
本明細書に詳述される様々なLCR断片を含有するベクターを試験するために、293T細胞を、全長HPV16長制御領域(LCR)、または本明細書において記載される断片1(配列番号2)、断片2(配列番号3)、断片3(配列番号4)および断片4(配列番号5)のいずれかを含有するD64Vインテグラーゼ欠損レンチウイルスベクターで形質導入した(例えば、
図7および本明細書における関連実施例を参照)。
【0198】
24時間後、細胞を、リポフェクタミン2000を用いて、HPV16 E1(配列番号6)およびE2(配列番号7)を含有するプラスミドでトランスフェクトした。2日後、DNAを、qPCRによる分析のために抽出した。レンチウイルスベクターのエピソーム形態に特異的な配列番号11および配列番号12によって表されるプライマーを使用してエピソームコピー数を決定した。なお、このプライマーセットは、1-および2-LTRエピソームのみを増幅した。この実施例についてのデータを
図12に示す。この図において、LCRおよびその断片に関連づけられた数は、E1およびE2添加後の条件のそれぞれについての倍率変化の増加を反映している。
【0199】
図12に示すように、全長LCRおよびFrag1についての基底エピソームコピー数は非常に低かった。例えば、これらの2つの条件(すなわち、全長LCRおよびFrag1)について、基底エピソームコピー数は、細胞当たり0.020未満のエピソームコピーであった。基底エピソームコピー数は、Frag2、Frag3およびFrag4構築物についてわずかに高かった。例えば、これらの3つの条件(すなわち、Frag2、Frag3およびFrag4)について、基底エピソームコピー数は細胞当たり0.020またはそれよりも高いエピソームコピーであった。基底エピソームコピー数のデータは、試験した条件のそれぞれについて、相対倍率変化に影響を与えた。
図12に示すように、E1/E2が系に導入されたとき、全長LCR構築物は、エピソームコピー数で267倍率変化の増加に至った。E1/E2が系に導入されたとき、Frag1構築物は、エピソームコピー数で362倍率変化の増加に至った。E1/E2が系に導入されたとき、Frag2構築物は、エピソームコピー数で6倍率変化の増加に至った。E1/E2が系に導入されたとき、Frag3構築物は、エピソームコピー数で61倍率変化の増加に至った。E1/E2が系に導入されたとき、Frag4構築物は、エピソームコピー数で7倍率変化の増加に至った。
図12で詳述されるデータはまた、本明細書の
図20において、別個の形式で再計算されている。
【0200】
別のセットの関連実験では、HPV LCRおよびその3’断片を含むインテグラーゼ欠損レンチウイルスベクターからのmCherry発現について分析を実施した。簡単に述べると、293T細胞を、mCherryならびに全長HPV16長制御領域(LCR)または断片1(配列番号2)、断片2(配列番号3)、断片3(配列番号4)および断片4(配列番号5)のいずれかを発現するD64Vインテグラーゼ欠損レンチウイルスベクターで形質導入した。同時に、細胞を、HPV16 E1(配列番号6)およびE2(配列番号7)を発現するレンチウイルスで形質導入した。2日後、mCherry発現を、FACSによって分析した。
【0201】
図13Aに示すように、mCherry細胞のパーセントを、試験した条件のそれぞれについて特定した。LCRおよびその断片に関連づけられた数は、E1およびE2添加後の条件のそれぞれについての倍率変化の増加を反映している。
【0202】
別の一組の関連実験で、293T細胞を、mCherryと、配列番号1として先に同定された全長HPV16長制御領域とを発現するD64Vインテグラーゼ欠損レンチウイルスベクターで形質導入した。同時に、細胞を、単一のベクター(
図9のベクター25参照)からのHPV16 E1-T2A-E2(配列番号10)を発現するレンチウイルスで形質導入した。2日後、mCherry発現をFACSによって分析した。データを
図13Bに示す。その図で示すように、HPV16 E1-T2A-E2(配列番号10)での形質導入は、陽性mCherry細胞の顕著な増加に至った。
【0203】
別の一組の関連実験では、E1、E1-CおよびE2-11の添加後に、HPV LCRを含有するインテグラーゼ欠損レンチウイルスベクターを使用してmCherry発現の分析を実施した。簡単に述べると、293T細胞を、mCherryとHPV16LCR(配列番号1)または断片1(配列番号2)とを発現するD64Vインテグラーゼ欠損レンチウイルスベクターで形質導入した。同時に、細胞を、HPV16 E1(すなわち、
図9におけるベクター21;および配列番号6)またはE1カルボキシ(C)末端断片(すなわち、
図9におけるベクター22;および配列番号8)ならびにHPV16 E2(すなわち、
図9におけるベクター23;および配列番号7)またはHPV11 E2(すなわち、
図9におけるベクター24;および配列番号9)で形質導入した。2日後、mCherry発現を、FACSによって分析した。
図14に示すように、mCherry細胞のパーセントを、試験した条件のそれぞれについて特定した。試験した条件に関連づけられた数は、E1およびE2添加後の条件のそれぞれについての倍率変化の増加を反映している。
実施例13
抗体発現
【0204】
本明細書で述べるように、開示される系の特長の1つは、抗体を発現させるための開示される系の有用性である。本明細書に詳述される一連の代表的実験では、抗HER2抗体を、レンチウイルスベクター系を使用して発現させた。簡単に述べると、293T細胞を、HER2に対する抗体配列(配列番号13)およびHPV LCR(配列番号1)配列を含有するD64インテグラーゼ欠損レンチウイルスベクター(すなわち、ベクター20)で感染させた。
【0205】
同時に、細胞を、E1(配列番号6)およびE2(配列番号7)を含有するレンチウイルスベクターで感染させた。3日後、細胞培養培地を回収した。抗体をタンパク質A/Gアガロースビーズを使用して培地から精製した。免疫ブロットは、ヒツジ抗ヒト抗体(Thermo Scientific)を使用して実施した。抗体産生は、
図15Aに示すように、E1およびE2の添加で増加した。さらに、
図15Bに示すように、抗HER2
IgG濃度を、EasyTiter IgGキットを使用して決定した(Thermo
Scientific)。
【0206】
さらに、本明細書の
図16に示すように、さらなる抗体は、本明細書に開示される系を使用して発現させることもできる。
図16において、抗EGFR抗体(配列番号14)の発現を実証する免疫ブロットを示す。簡単に述べると、293T細胞を、EGFRに対する抗体配列(下記配列番号14参照)およびHPV断片2(配列番号3)を含有するD64インテグラーゼ欠損レンチウイルスベクターで感染させた。
【0207】
24時間後、細胞を、E1(配列番号6)およびE2(配列番号7)を含有するレンチウイルスベクターで感染させた。3日後、細胞溶解物および細胞培養培地を回収した。抗体を、タンパク質A/Gアガロースビーズを使用して培地から精製し、細胞溶解によって細胞から抽出した。免疫ブロットは、ヒツジ抗ヒト抗体(Thermo Scientific)、および細胞溶解物についてのタンパク質ローディング対照用抗アクチン(Sigma)抗体を使用して実施した。抗体産生は、
図16に示すように、E1およびE2を添加した細胞溶解物ならびに培地の両方で増加した。
実施例14
マイクロRNA発現およびノックダウン
【0208】
本明細書で述べるように、開示される系の特長の1つは、マイクロRNAを発現させるための開示される系の有用性である。非限定的な例として、構築物を、配列番号15に基づくCCR5についてマイクロRNAを発現するように設計した。
【0209】
簡単に述べると、CCR5を発現するHeLa細胞を、CCR5(配列番号15)に対するマイクロRNA配列および全長HPV LCR(配列番号1)配列を含有するD64インテグラーゼ欠損レンチウイルスベクター(すなわち、ベクター20)で感染させた。同時に、細胞を、E1およびE2を含有するレンチウイルスベクターで感染させた。3日後、細胞を回収し、抗CCR5 APCコンジュゲート抗体を用いてFACS分析により、CCR5発現について分析した。
図17に示すように、CCR5陽性細胞のパーセンテージは、LV-LCR miR-CCR5を用いて92.6%から70.9%まで、LV-LCR miR-CCR5+E1およびE2を用いて44%まで減少した。
【0210】
関連する実験では、CCR5に対するマイクロRNA配列および断片2(配列番号3)LCR配列を含有するD64インテグラーゼ欠損レンチウイルスベクターを利用した。
図18に示すように、miR-CCR5の添加後にCCR5発現の同様の低下があり、E1およびE2を添加したときになおさらなる低下があった。
【0211】
図18をより詳細に参照するに、上部パネルは、mCherryの発現レベルに基づいた単一の点でそれぞれ表される細胞の分布を示す。下部パネルは、CCR5発現における対応する変化を示しており、この変化は、DNA複製およびCCR5に対するmiRNA産生のレベルに関係している。CCR5は、細胞表面を染色するために使用される蛍光モノクローナル抗体によって検出される。いずれのLVベクターも無い場合(左パネル)、mCherryの発現は無く(全ての細胞がセクター1にある)、CCR5発現は約200蛍光強度単位で均一に高い。miRCCR5を含有するLV-LCR(断片2;配列番号3)を添加することにより、本発明者らは、mCherryの基底発現を有する細胞(ここでセクター2において55%の細胞が見出された)と、約30強度単位に集中する蛍光強度単位を有する新たな集団を導くCCR5発現の一部減少(下部、中央パネルの破線)を見出す。LV-LCR miRCCR5とE1およびE2複製タンパク質を発現する非組み込みレンチウイルスベクターとの両方を添加することにより、本発明者らは、mCherryの最も高い発現を有する18.8%の細胞(セクター3)と、蛍光強度単位が20未満であるさらに低いCCR5発現を有する新たな集団(曲線3、灰色の破線)を見出す。これらのデータは、CCR5タンパク質の細胞表面発現の減少において生物学的に活性であるmiRCCR5の基底レベルを発現するLCR断片2(配列番号3)を含有するVIVの能力を実証する。さらに、結果は、E1/E2 DNA複製タンパク質の添加がベクターコピー数(mCherryの発現に関連)に影響を与えること、および増加したmiRCCR5発現が細胞表面CCR5発現のさらなる減少を導くことを示す。
実施例15
EBVに基づくイニシエータータンパク質
【0212】
本明細書で述べるように、E1(配列番号6)およびE2(配列番号7)などのイニシエータータンパク質は、本明細書に記載の系の効力を高めるために使用することができる。現行の系で使用される代替的イニシエータータンパク質はEBNA-1(配列番号32)である。したがって一連の実験において、293T細胞を、GFPおよびエプスタイン・バーウイルス(EBV)OriP配列(配列番号31)を発現するD64Vインテグラーゼ欠損レンチウイルスベクター(すなわち、ベクター27)で形質導入した。
【0213】
24時間後、リポフェクタミン2000を用いて、EBV EBNA-1(配列番号32)を含有するプラスミドで細胞をトランスフェクトした。2日後、GFP発現をFACSによって分析した。
図19に代表的データで示すように、EBV+EBNAは、GFP発現の増強をもたらした。したがって、このデータは、イニシエータータンパク質/ori相互作用が、E1/E2相互作用に限定されず、エプスタイン・バーウイルス成分も含むことを実証する。
実施例16
最適化されたウイルス送達系を設定するためのLCR断片の選択
【0214】
LCR断片長を、細胞における所望の発現レベルに従って選択した。
図20は、本明細書における
図12で生成されたエピソームコピー数のデータを示す。さらに具体的には、
図20は、本発明の一態様に従った選択ルブリックを説明する。細胞当たりのエピソームコピー(Y軸)をLCR断片長(X軸)に対してグラフ化した。
図20に示すように、細胞当たりのエピソームコピーによって決定される発現レベルの変動は、本明細書で試験した種々のLCR断片に起因した。
図20に示すように、右から左へ移りながら、全長LCR(配列番号1)、断片1(配列番号2)、断片2(配列番号3)、断片3(配列番号4)および断片4(配列番号5)のデータを、E1/E2有り(黒色丸データ点)および無し(薄灰色丸データ点)で示す。
図12に示されるように、細胞当たりのエピソームコピーによって決定される基底発現は、LCRおよびFrag1構築物で最も低かった。例えば、これらの2つの条件(すなわち、全長LCRおよびFrag1)について、基底エピソームコピー数は、細胞当たり0.020未満のエピソームコピーであった。基底発現は、Frag2、Frag3およびFrag4条件でわずかに高かった。例えば、これらの3つの条件(すなわち、Frag2、Frag3およびFrag4)について、基底エピソームコピー数は細胞当たり0.020またはそれよりも高いエピソームコピーであった。
【0215】
図11および20の両方を参照するに、LCRの5’末端からの欠失の増加により、重要な機能的エレメントが除去された。基底発現は、LCRまたはLCR断片がレンチウイルス由来エピソームベクター内に存在し、E1/E2タンパク質の添加が無いとき(例えば、薄灰色丸データ点)に定量PCRアッセイによって測定されるエピソームDNAコピーの数によって定義した。誘導活性は、E1およびE2を含有する発現プラスミドをトランスフェクトし(例えば、黒色丸データ点)、次いでレンチウイルス由来エピソームベクターを導入した後に、細胞当たりのエピソームDNAコピー数を定量PCRアッセイで測定することによって測定した。同様の結果が、E1/E2タンパク質発現構築物が非組み込みレンチウイルスベクターとして送達されたときに得られた。本明細書に詳述されるように、基底発現は、LCRの断片2、3および4について最も高いと決定された。このことは、基底発現が、
図11に示すようにLCRと断片1の両方に存在するが断片2~4には存在しないYY1転写因子結合部位の存在によって抑制されたことを示している。断片2~4の中では、断片2が最も高い基底発現を示し、この断片は、両方のAP1転写因子結合部位を含む唯一の断片であった。このように、基底転写は、YY1部位が除去され、両方のAP1部位が保存されたときに増加した。本明細書で詳述されるように、誘導活性は、断片1および3について最も高く、断片2および4についてはより低く、インタクトのLCRについて最も低いと決定された。LCR内にあって断片1には存在しない未特定のエレメントがあったが、それが誘導性DNA複製を抑制するように作用した。YY1およびAP1部位が存在したとき(断片1)、エピソームDNAレベルは、YY1および全てのAP1部位を除去した場合(断片3)と比較して低かった。AP1部位がYY1無しに存在したとき(断片2)、またはYY1、AP1および4つのうち2つのE2結合部位が除去されたとき(断片4)、誘導性エピソームDNA形成は中等度であり、LCRと同様であった。
【0216】
図20に要約されるように、本明細書に詳述されるデータは、発現の基底レベルの識別可能な差異およびそのような発現を誘導する能力を実証する。このデータに基づいて、活性の少なくとも4つの象限を、
図20に示すように定義した。
【0217】
図21を参照するに、4つの象限は、LCRおよびその関連断片に起因する活性の変動度合を表している。
図21に示すように、第1象限は、低活性だが第4象限より3~4倍高い活性を反映し、小さいLCR断片を有する。第2象限は、高活性を反映し、再び小さいLCR断片を有する。第3象限は、高活性を反映しているが、今度は、比較的長いLCR断片を有する。最後に、第4象限は、非常に低い活性を反映し、比較的長いLCR断片を有する。
【0218】
図21に詳述されるように、各象限は、特定の所望の処置経過または転帰に合理的に関連づけられている。代表的な例として、所望の処置経過または転帰が遺伝子編集を含むとき、第1象限から選ばれるLCRが選択される。代表的な例として、所望の処置経過または転帰が細胞リプログラミングを含むとき、第2象限からのLCRが選択される。代表的な例として、所望の処置経過または転帰が免疫刺激であるとき、第3象限からのLCRが選択される。代表的な例として、所望の処置経過または転帰がプラセボ効果であるとき、第4象限からのLCRが選択される。したがって、所望の処置経過または転帰に基づいて、様々なLCR断片が現行の系を使用して採用される。
実施例17
第1象限下での個体の処置
【0219】
処置を、鎌状赤血球貧血のために設計する。このアプローチでは、CD34+骨髄由来造血前駆幹細胞(HPSC)を取り出し、ex vivoで、遺伝子修飾で処理し、自家細胞療法として移植する。この戦略は、胎児型グロビン発現の強力なリプレッサである(Akinsheyeら、Blood、118巻:19頁、2011年)Bcl11Aタンパク質の発現を減少させる阻害性miRNAを発現させることによる。Bcl11Aレベルが減少するとき、胎児型グロビンの発現が増加し、正常細胞機能の点から成体グロビンに置き換わる。
【0220】
ウイルスベクター用量を劇的に増加させずに阻害性miRNAの十分なレベルを発現する能力が、今度は、形質導入CD34+ HPSCの生存性を減少させ、処置の効率を低下させ、治療コストを上げることになり得るという、安全性試験の懸念が生じる。レンチウイルスベクターの量を増加させずに発現を増加させるという問題を克服するために、遺伝子用量を増加させることができる非組み込みベクターが最良の選択肢であると判断される。まず、Bcl11A miRNAを発現する染色体外DNAの低用量が、Bcl11A発現を阻害し、胎児型グロビン発現を上昇させるために十分であるかを試験することが必要である。
【0221】
レンチウイルスベクター(LVmiRBcl11A)を、以下を含有する標準の一般的に許容される臨床等級ベクター骨格およびパッケージング系(変異によって不活性化されたインテグラーゼ機能を備える)を使用して構築する:適切なプロモーターの制御下にBcl11A mRNA内で見出せる配列に適合するガイド配列を備えた合成miRNA構築物;200ヌクレオチド長のLCR断片;およびE1および/またはE2複製タンパク質の付随する発現はなし。
【0222】
形質導入細胞の頻度を最大にし、HPSC細胞死を最少化する条件である5に等しい感染多重度で、LVmiRBcl11Aを使用してHPSCに形質導入する。形質導入細胞を、適切な細胞減少のコンディショニング後に、元のドナーの骨髄に生着させる。治験参加者をモニタリングして、形質導入細胞の頻度、細胞当たりの染色体外DNAのコピーおよび胎児型グロビン発現レベルを決定する。この第1象限アプローチは、低い細胞当たりの染色体外DNAコピー数を生じ、LVmiRBcl11Aの低い治療用量を構成することが合理的に予測される。
実施例18
第2象限下での個体の処置
【0223】
処置を、鎌状赤血球貧血に関連する細胞リプログラミングのために設計する。このアプローチでは、CD34+骨髄由来造血前駆幹細胞(HPSC)を取り出し、ex vivoで、遺伝子修飾で処理し、自家細胞療法として移植する。この戦略は、胎児型グロビン発現の強力なリプレッサであるBcl11Aタンパク質の発現を減少させる阻害性miRNAを発現させることによる。Bcl11Aレベルが減少するとき、胎児型グロビンの発現が増加し、正常細胞機能の点から成体グロビンに置き換わる。
【0224】
ウイルスベクター用量を劇的に増加させずに阻害性miRNAの十分なレベルを発現する能力が、今度は、形質導入CD34+ HPSCの生存性を減少させ、処置の効率を低下させ、治療コストを上げることになり得るという懸念が生じる。
【0225】
レンチウイルスベクターの量を増加させずに発現を増加させるという問題を克服するために、遺伝子用量を変動させることができる非組み込みベクターが最良の選択肢であると判断される。第1象限条件(E1および/またはE2複製タンパク質の付随する発現の無い短いLCR断片)(すなわち、実施例17)を使用する初期試験に続いて、Bcl11A miRNAを発現する染色体外DNAの高用量が、Bcl11A発現を阻害し、胎児型グロビン発現を上昇させるために十分であるかを試験することが必要である。短いLCRならびにE1および/またはE2複製タンパク質の付随する発現を使用する遺伝子用量の誘導的性質により、同一用量のLVmiRBcl11Aを、E1および/またはE2タンパク質の一過性発現のための非組み込みレンチウイルスベクターと共に送達して、CD34+ HPSC生存性を減少させるレンチウイルスベクター用量の上昇無しに、5倍を超えて遺伝子用量を増加させることができる。
【0226】
レンチウイルスベクター(LVmiRBcl11A)を、以下を含有する標準の一般的に許容される臨床等級ベクター骨格およびパッケージング系(変異によって不活性化されたインテグラーゼ機能を備える)を使用して構築する:適切なプロモーターの制御下にBcl11A mRNA内で見出せる配列に適合するガイド配列を備えた合成miRNA構築物;200ヌクレオチド長のLCR断片;DNA複製を制御するために、E1および/またはE2複製タンパク質は、LCRを含まない非組み込みレンチウイルスベクターで発現させる。
【0227】
形質導入細胞の頻度を最大にし、HPSC細胞死を最少化する条件である5に等しい感染多重度で、LVmiRBcl11Aを使用してHPSCに形質導入する。形質導入細胞を、適切な細胞減少のコンディショニング後に、元のドナーの骨髄に生着させる。治験参加者をモニタリングして、形質導入細胞の頻度、細胞当たりの染色体外DNAのコピーおよび胎児型グロビン発現レベルを決定する。第2象限アプローチは、高い細胞当たりの染色体外DNAコピー数を生じ、LVmiRBcl11Aの高治療用量を構成することが合理的に予測される。
【0228】
実施例17および18に示す試験を比較して、処置の効率および効力を最大化するためにCD34+ HPSCをLVmiRBcl11Aと共に形質導入するための最適な条件を決定する。
実施例19
第3象限下での個体の処置
【0229】
HIV疾患について提唱される受動免疫処置は、ウイルスの付着と感受性T細胞の侵入を促進する細胞表面インテグリン受容体アルファ4ベータ7を欠失させるCRISPR-Cas9遺伝子編集の使用を含む。処置戦略は、末梢血からT細胞を単離し、次いで、アルファ4ベータ7遺伝子配列に特異的なガイドRNAを含む抗アルファ4ベータ7CRISPR-Cas9構築物を保有するレンチウイルスで形質導入することを含む。単離したT細胞を治療レンチウイルスで形質導入してアルファ4ベータ7受容体を欠失させる。次いで、細胞を、注入を介して、体に戻す。循環に戻ると、これらのHIV耐性細胞は数が増加し、HIV複製に抵抗する能力を含む正常な免疫機能の提供を開始し得る。高用量のCRISPR-Cas9レンチウイルスベクターが、アルファ4ベータ7遺伝子の均一な欠失を達成するために必要であると予測される。提唱される治験(すなわち、実施例20)の一つのアームは、CRISPR-Cas9アルファ4ベータ7を発現するがE1および/またはE2複製タンパク質は含まない、かろうじて検出可能レベルを超えるコピー数を増加させるために必要な、LCRの長形態を有する非組み込みレンチウイルスベクターを利用する。
【0230】
治験のこの治療アームでは、同じLVCRISPR-Cas9アルファ4ベータ7が送達され、LCRは含有せずDNA複製できない構築物でのE1および/またはE2複製タンパク質を発現する非組み込みレンチウイルスの付随する送達がある。これによりT細胞に効率的に形質導入するために必要なLV-CRISPR-Cas9アルファ4ベータ7の量を変化させることなく遺伝子用量が増加し、治験の高用量治療アームと考えられる。
【0231】
レンチウイルスベクターを構築し、一般的に使用されるウイルスベクター骨格内に以下のエレメントを含有させる:E1および/またはE2複製タンパク質が提供されるときに誘導性である720ヌクレオチド長のLCR;CRISPR-Cas9タンパク質のための遺伝子転写の適切なプロモーターおよびアルファ4ベータ7相補的ガイドRNAを含有する発現カセット。ベクターは、通常のウイルスDNA組み込みを阻止するためのインテグラーゼ遺伝子の変異を伴ってパッケージングされる。第2の非組み込みレンチウイルスを使用して、LCRを含有せずDNAを複製することができない構築物でのE1および/またはE2 DNA複製タンパク質の一過性発現を提供する。
【0232】
遺伝子用量がE1および/またはE2タンパク質の添加により増加したため、T細胞は、高CRISPR-Cas9およびガイドRNA発現を有する非組み込みレンチウイルスベクターでex vivo修飾される。細胞を、試験の治療アームにおける治験対象に戻す。臨床転帰は、HIV存在下でのアルファ4ベータ7遺伝子欠失を保有するT細胞の比率の増加、抗レトロウイルス医薬非存在下でのT細胞機能およびHIV複製自然制御の改善に基づいて評価される。この第3象限アプローチは、HIV存在下でのアルファ4ベータ7遺伝子欠失を保有するT細胞の比率の増加、抗レトロウイルス医薬非存在下でのT細胞機能およびHIV複製自然制御の改善をもたらすことが合理的に予測される。
実施例20
第4象限下での個体の処置
【0233】
HIV疾患について提唱される処置は、ウイルスの付着と感受性T細胞の侵入を促進する細胞表面インテグリン受容体アルファ4ベータ7を欠失させるCRISPR-Cas9遺伝子編集の使用を含む。処置戦略は、末梢血からT細胞を単離し、次いで、アルファ4ベータ7遺伝子配列に特異的なガイドRNAを含む抗アルファ4ベータ7CRISPR-Cas9構築物を保有するレンチウイルスで形質導入することを含む。単離したT細胞を治療レンチウイルスで形質導入してアルファ4ベータ7受容体を欠失させ、次いで、細胞を、注入を介して、体に戻す。循環に戻ると、これらのHIV耐性細胞は数が増加し、HIV複製に抵抗する能力を含む正常な免疫機能の提供を開始し得る。
【0234】
処置の臨床試験を開始する前に、ベクターの安全性と特異性を確認することが重要である。重大な懸念は、アルファ4ベータ7特異的ガイドRNAを含む治療遺伝子カセットが組み込まれ、遺伝毒性を引き起こすかどうかということである。この懸念は、ガイドRNAがヒトゲノムと直接的な相同性を有し、長期CRISPR-Cas9発現が可能な構築物を組み込む作用が、細胞の形質転換およびがんを含む予測できない結果を生じ得ることによる。
【0235】
アルファ4ベータ7遺伝子へのベクター組み込みが高確率の事象ではないことを実証するために、対照治験は、非組み込み一過性ベクターを使用して注入前にex vivoでT細胞を修飾する1つのアームを含むように設計されている。in vitro試験は、in vitroまたはex vivo試験でシミュレートされ得るよりもin vivoで分析される事象の数が非常に大きいので、リスクを評価するために十分なものではない。
【0236】
一般的に使用されるウイルスベクター骨格内に以下のエレメントを含有するレンチウイルスベクターを構築する:E1およびE2タンパク質の付随する発現の無い720ヌクレオチド長のLCR;CRISPR-Cas9タンパク質のための遺伝子転写の適切なプロモーターおよびアルファ4ベータ7相補的ガイドRNAを含有する発現カセット。ベクターは、通常のウイルスDNA組み込みを阻止するためのインテグラーゼ遺伝子の変異を伴ってパッケージングされる。
【0237】
遺伝子用量は、E1および/またはE2タンパク質無しでは増加しないため、T細胞は、最小のCRISPR-Cas9またはガイドRNA発現を有する非組み込みレンチウイルスベクターでex vivo修飾される。細胞を試験の対照アームの治験対象に戻し、そして染色体DNAを抽出し、適切なPCRに基づく試験を実施して染色体DNAと組み換えられたウイルスDNAを同定することによって、ウイルスDNA組み込みのパターンを測定する。任意の組み込まれたDNAの組換え部位は高スループットDNA配列決定により決定され、有害事象の可能性を示す潜在的な遺伝毒性事象として報告される。この第4象限アプローチは、組換え事象をモニタリングするための有効な対照となることが、合理的に予測される。
配列
以下の配列が、本明細書で参照される。
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【表3-5】
【表3-6】
【表3-7】
【表3-8】
【表3-9】
【表3-10】
【表3-11】
【表3-12】
【表3-13】
【表3-14】
【表3-15】
【表3-16】
【表3-17】
【表3-18】
【表3-19】
【表3-20】
【表3-21】
【表3-22】
【表3-23】
【表3-24】
【表3-25】
【表3-26】
【表3-27】
【表3-28】
【表3-29】
【表3-30】
【0238】
本発明のある特定の好ましい実施形態を本明細書において記載し、具体的に例示してきたが、本発明がこのような実施形態に限定されることを意図してはいない。これに対する様々な修正が、本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく行われ得る。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
a.欠陥のあるインテグラーゼ遺伝子を含有するウイルス担体、
b.異種ウイルスエピソームDNA複製起点、
c.前記異種ウイルスエピソームDNA複製起点に特異的な少なくとも1つのイニシエータータンパク質をコードする配列であって、前記異種ウイルスエピソームDNA複製起点に特異的な前記少なくとも1つのイニシエータータンパク質をコードする配列の発現が誘導性である、配列、および
d.少なくとも1つの目的の遺伝子、遺伝子産物、shRNA、siRNA、miRNA、または他のRNA
を含む、非組み込みウイルス送達系。
(項目2)
前記ウイルス担体がレンチウイルスである、項目1に記載の非組み込みウイルス送達系。
(項目3)
前記異種ウイルスエピソームDNA複製起点がパピローマウイルスに由来する、項目1に記載の非組み込みウイルス送達系。
(項目4)
前記異種ウイルスエピソームDNA複製起点がヒトパピローマウイルスまたはウシパピローマウイルスに由来する、項目3に記載の非組み込みウイルス送達系。
(項目5)
前記異種ウイルスエピソームDNA複製起点がヒトパピローマウイルス16型(HPV16)に由来する、項目4に記載の非組み込みウイルス送達系。
(項目6)
前記異種ウイルスエピソームDNA複製起点がHPV16の長制御領域(LCR)に由来する、項目5に記載の非組み込みウイルス送達系。
(項目7)
前記異種ウイルスエピソームDNA複製起点が配列番号1を含む、項目6に記載の非組み込みウイルス送達系。
(項目8)
前記異種ウイルスエピソームDNA複製起点が配列番号1の5’トランケーションを含む、項目6に記載の非組み込みウイルス送達系。
(項目9)
前記異種ウイルスエピソームDNA複製起点が、配列番号1の少なくとも約200ヌクレオチド、または少なくとも約300ヌクレオチド、または少なくとも約400ヌクレオチド、または少なくとも約500ヌクレオチド、または少なくとも約600ヌクレオチド、または少なくとも約700ヌクレオチドの5’トランケーションを含む、項目6に記載の非組み込みウイルス送達系。
(項目10)
前記異種ウイルスエピソームDNA複製起点が、HPV16の前記LCRのFrag1(配列番号2)、Frag2(配列番号3)、Frag3(配列番号4)、またはFrag4(配列番号5)と少なくとも約80%の配列同一性、または少なくとも約85%の配列同一性、または少なくとも約90%の配列同一性、または少なくとも約95%の配列同一性、または少なくとも約98%の配列同一性を含む、項目6に記載の非組み込みウイルス送達系。
(項目11)
前記異種ウイルスエピソームDNA複製起点が、HPV16の前記LCRのFrag1(配列番号2)、Frag2(配列番号3)、Frag3(配列番号4)、またはFrag4(配列番号5)を含む、項目6に記載の非組み込みウイルス送達系。
(項目12)
前記異種ウイルスエピソームDNA複製起点に特異的な前記少なくとも1つのイニシエータータンパク質がE1またはその作動可能な断片を含む、項目1に記載の非組み込みウイルス送達系。
(項目13)
前記異種ウイルスエピソームDNA複製起点に特異的な前記少なくとも1つのイニシエータータンパク質がE2またはその作動可能な断片を含む、項目1に記載の非組み込みウイルス送達系。
(項目14)
前記異種ウイルスエピソームDNA複製起点に特異的な前記少なくとも1つのイニシエータータンパク質がEBNA-1またはその作動可能な断片を含む、項目1に記載の非組み込みウイルス送達系。
(項目15)
前記異種ウイルスエピソームDNA複製起点に特異的な少なくとも2つのイニシエータータンパク質を含む、項目1に記載の非組み込みウイルス送達系。
(項目16)
前記異種ウイルスエピソームDNA複製起点に特異的な少なくとも2つのイニシエータータンパク質がE1およびE2またはそれらの作動可能な断片である、項目15に記載の非組み込みウイルス送達系。
(項目17)
前記少なくとも1つのイニシエータータンパク質をコードする配列が単一の別個のプラスミドまたは非組み込みウイルスベクターに存在する、項目1に記載の非組み込みウイルス送達系。
(項目18)
前記系が、前記異種ウイルスエピソームDNA複製起点に特異的な少なくとも2つのイニシエータータンパク質を含み、前記少なくとも2つのイニシエータータンパク質をコードする配列が、単一の別個のプラスミドまたは非組み込みウイルスベクターに存在する、項目1に記載の非組み込みウイルス送達系。
(項目19)
前記系が、前記異種ウイルスエピソームDNA複製起点に特異的な少なくとも2つのイニシエータータンパク質を含み、ここで、第1のイニシエータータンパク質のための配列および第2のイニシエータータンパク質のための配列が、別個のプラスミドまたは非組み込みウイルスベクターに存在する、項目1に記載の非組み込みウイルス送達系。
(項目20)
前記少なくとも1つの遺伝子産物が、抗体、抗体断片、または増殖因子を含む、項目1に記載の非組み込みウイルス送達系。
(項目21)
前記抗体が、抗HER2抗体またはその断片を含む、項目20に記載の非組み込みウイルス送達系。
(項目22)
前記増殖因子が、血管内皮増殖因子(VEGF)またはそのバリアントを含む、項目20に記載の非組み込みウイルス送達系。
(項目23)
前記miRNAが、CCR5 miRNAを含む、項目1に記載の非組み込みウイルス送達系。
(項目24)
項目1に記載の前記非組み込みウイルス送達系および少なくとも1つの薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
(項目25)
少なくとも1つの目的の遺伝子、遺伝子産物、shRNA、siRNA、miRNA、または他のRNAを細胞中で発現させる方法であって、
前記細胞を、有効量の非組み込みウイルス送達系に接触させること
を含み、ここで、前記系が、
i.欠陥のあるインテグラーゼ遺伝子を含有するウイルス担体、
ii.異種ウイルスエピソームDNA複製起点、
iii.前記異種ウイルスエピソームDNA複製起点に特異的な少なくとも1つのイニシエータータンパク質をコードする配列であって、前記異種ウイルスエピソームDNA複製起点に特異的な前記少なくとも1つのイニシエータータンパク質をコードする配列の発現が誘導性である、配列、および
iv.少なくとも1つの目的の遺伝子、遺伝子産物、shRNA、siRNA、miRNA、または他のRNA
を含む、方法。
(項目26)
少なくとも1つの目的の遺伝子、遺伝子産物、shRNA、siRNA、miRNA、または他のRNAを、それを必要とする対象中で発現させる方法であって、
前記対象に、有効量の非組み込みウイルス送達系を投与することを含み、ここで、前記系が、
i.欠陥のあるインテグラーゼ遺伝子を含有するウイルス担体、
ii.異種ウイルスエピソーム複製起点、
iii.異種ウイルスエピソームDNA複製起点に特異的な少なくとも1つのイニシエータータンパク質をコードする配列であって、前記異種ウイルスエピソームDNA複製起点に特異的な前記少なくとも1つのイニシエータータンパク質をコードする配列の発現が誘導性である、配列、および
iv.少なくとも1つの目的の遺伝子、遺伝子産物、shRNA、siRNA、miRNA、または他のRNA
を含む、方法。
(項目27)
前記少なくとも1つのイニシエータータンパク質をコードする配列が、単一の別個のプラスミドに存在し、前記少なくとも1つのイニシエータータンパク質が、E1またはE2である、項目26に記載の方法。
(項目28)
前記少なくとも1つの目的の遺伝子、遺伝子産物、shRNA、siRNA、miRNA、または他のRNAの第1の発現レベルを開始させるための第1の量の前記単一の別個のプラスミドを、それを必要とする前記対象に投与することをさらに含む、項目27に記載の方法。
(項目29)
前記少なくとも1つの目的の遺伝子、遺伝子産物、shRNA、siRNA、miRNA、または他のRNAの第2の発現レベルを開始させるための第2の量の前記単一の別個のプラスミドを、それを必要とする前記対象に投与することをさらに含む、項目28に記載の方法。
(項目30)
前記第2の量が前記第1の量より低いとき、前記少なくとも1つの目的の遺伝子、遺伝子産物、shRNA、siRNA、miRNA、または他のRNAの発現レベルが減少する、項目29に記載の方法。
(項目31)
前記第2の量が前記第1の量より高いとき、前記少なくとも1つの目的の遺伝子、遺伝子産物、shRNA、siRNA、miRNA、または他のRNAの発現レベルは増加する、項目29に記載の方法。
(項目32)
前記系が、前記少なくとも1つの目的の遺伝子、遺伝子産物、shRNA、siRNA、miRNA、または他のRNAの低レベルの基底発現を生じるように最適化されており、ここで、前記異種ウイルスエピソームDNA複製起点が、配列番号1またはHPV16のLCRのFrag1(配列番号2)と少なくとも約80%の配列同一性、または少なくとも約85%の配列同一性、または少なくとも約90%の配列同一性、または少なくとも約95%の配列同一性、または少なくとも約98%の配列同一性を含む、項目1に記載の非組み込みウイルス送達系。
(項目33)
前記系が、前記少なくとも1つの目的の遺伝子、遺伝子産物、shRNA、siRNA、miRNA、または他のRNAの低レベルの基底発現を生じるように最適化されており、前記異種ウイルスエピソームDNA複製起点が、配列番号1またはHPV16のLCRのFrag1(配列番号2)を含む、項目1に記載の非組み込みウイルス送達系。
(項目34)
前記系が、前記少なくとも1つの目的の遺伝子、遺伝子産物、shRNA、siRNA、miRNA、または他のRNAの中等度レベルの基底発現を生じるように最適化されており、ここで、前記異種ウイルスエピソームDNA複製起点が、HPV16のLCRのFrag2(配列番号3)、Frag3(配列番号4)、またはFrag4(配列番号5)と少なくとも約80%の配列同一性、または少なくとも約85%の配列同一性、または少なくとも約90%の配列同一性、または少なくとも約95%の配列同一性、または少なくとも約98%の配列同一性を含む、項目1に記載の非組み込みウイルス送達系。
(項目35)
前記系が、前記少なくとも1つの目的の遺伝子、遺伝子産物、shRNA、siRNA、miRNA、または他のRNAの中等度レベルの基底発現を生じるように最適化されており、前記異種ウイルスエピソームDNA複製起点が、HPV16のLCRのFrag2(配列番号3)、Frag3(配列番号4)、またはFrag4(配列番号5)を含む、項目1に記載の非組み込みウイルス送達系。
(項目36)
最適化された非組み込みウイルス送達系を選択する方法であって、
基底発現レベルを選択すること
を含み、ここで、レベルXが選択されるとき、対応するYが選択され、ここでYは、前記非組み込みウイルス送達系に組み入れられるように選択される異種ウイルスエピソームDNA複製起点に対応し、
X=カーゴの基底発現の第1の規定されたレベルの場合、Yは、LCR(配列番号1)またはFrag1(配列番号2)を含み、
X=カーゴの基底発現の第2の規定されたレベルの場合、Yは、HPV16のLCRのFrag2(配列番号3)、Frag3(配列番号4)、またはFrag4(配列番号5)を含む、方法。
(項目37)
前記第1の規定されたレベルが、1細胞当たり0.020未満のカーゴのエピソームコピーを含む、項目36に記載の方法。
(項目38)
前記第2の規定されたレベルが、1細胞当たり0.020またはそれよりも高いカーゴのエピソームコピーを含む、項目36に記載の方法。