(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023120426
(43)【公開日】2023-08-29
(54)【発明の名称】電解コンデンサの製造方法及び電解コンデンサ
(51)【国際特許分類】
H01G 9/00 20060101AFI20230822BHJP
H01G 9/145 20060101ALI20230822BHJP
H01G 9/15 20060101ALI20230822BHJP
H01G 9/028 20060101ALI20230822BHJP
H01G 9/035 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
H01G9/00 290H
H01G9/145
H01G9/15
H01G9/00 290A
H01G9/00 290F
H01G9/00 290E
H01G9/028 G
H01G9/028 Z
H01G9/035
H01G9/028 E
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106215
(22)【出願日】2023-06-28
(62)【分割の表示】P 2018186031の分割
【原出願日】2018-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松下 瞬平
(72)【発明者】
【氏名】田代 智之
(72)【発明者】
【氏名】松本 貴行
(72)【発明者】
【氏名】青山 達治
(57)【要約】
【課題】導電性高分子分散体をコンデンサ素子の内部まで含浸しやすい電解コンデンサの製造方法を提供する。
【解決手段】第1工程、第2工程、第3工程を有する。第1工程では表面に誘電体層210が形成された陽極体21と陰極体22と陽極体21及び陰極体22の間に設けられたセパレータ23とを含むコンデンサ素子10を形成する。第2工程ではコンデンサ素子10に酸成分としてのホウ酸と、塩基成分とを含有する処理液を含浸させた後、コンデンサ素子10を乾燥させる。第3工程では第2工程の後、コンデンサ素子10に処理液の一部が残存する状態でポリアニオンを含む導電性高分子250の微粒子が溶媒中に分散した導電性高分子分散体をコンデンサ素子10に含浸する。処理液のpHは導電性高分子分散体より高い。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に誘電体層が形成された陽極体と、陰極体と、前記陽極体及び陰極体の間に設けられたセパレータと、を含むコンデンサ素子を形成する第1工程と、
前記コンデンサ素子に酸成分としてホウ酸と、塩基成分とを含有する処理液を含浸させた後、前記コンデンサ素子を乾燥させる第2工程と、
前記第2工程の後、前記コンデンサ素子に前記処理液に含有されていた前記ホウ酸が残存する状態で、ポリアニオンを含む導電性高分子の微粒子が溶媒中に分散した導電性高分子分散体を前記コンデンサ素子に含浸する第3工程と、を有する、
電解コンデンサの製造方法。
【請求項2】
前記処理液の温度は45℃以下である、請求項1に記載の電解コンデンサの製造方法。
【請求項3】
前記処理液は、ホウ酸化合物を溶解したものであり、前記ホウ酸化合物は水和物である、請求項1又は2に記載の電解コンデンサの製造方法。
【請求項4】
前記ホウ酸化合物はホウ酸アンモニウムである、請求項3に記載の電解コンデンサの製造方法。
【請求項5】
前記処理液における前記ホウ酸化合物の含有量は0.1重量%以上5.0重量%以下である、請求項3又は4に記載の電解コンデンサの製造方法。
【請求項6】
前記第3工程の直前において、前記セパレータの繊維の表面には前記ホウ酸が付着している部分がある、請求項1~5の何れか1項に記載の電解コンデンサの製造方法。
【請求項7】
前記第3工程の後に、前記コンデンサ素子に電解液を含浸する第4工程を有する、請求項1~6の何れか1項に記載の電解コンデンサの製造方法。
【請求項8】
前記第3工程の後、前記第4工程の前に前記塩基成分を揮発させる工程を含む、請求項7に記載の電解コンデンサの製造方法。
【請求項9】
前記セパレータはセルロース繊維を含む、請求項1~8の何れか1項に記載の電解コンデンサの製造方法。
【請求項10】
表面に誘電体層が形成された陽極体と、陰極体と、前記陽極体及び陰極体の間に設けら
れたセパレータと、を含むコンデンサ素子を有し、
前記コンデンサ素子にはポリアニオンを含む導電性高分子の微粒子が含浸されているとともに、
前記セパレータの表面に結晶化したホウ酸が存在している、電解コンデンサ。
【請求項11】
前記セパレータはセルロース繊維を含む、請求項10に記載の電解コンデンサ。
【請求項12】
前記コンデンサ素子に電解液が含浸されている、請求項10又は11に記載の電解コンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般には、電解コンデンサの製造方法及び電解コンデンサに関する。本開示は、詳細には、コンデンサ素子を形成する工程と、このコンデンサ素子に導電性高分子分散体を含浸する工程とを含む電解コンデンサの製造方法及び電解コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、固体電解コンデンサの製造方法が開示されている。特許文献1の製造方法では、陽極箔と陰極箔とをセパレータを介して巻回したコンデンサ素子に、ポリスチレンスルホン酸を付着させた後に、導電性高分子分散体に浸漬・乾燥させて固体電解質層を形成し、さらにコンデンサ素子内の空隙部に電解液を充填している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の製造方法では、導電性高分子分散体をコンデンサ素子の内部まで十分に含浸することができず、そのため、セパレータに導電性高分子を十分に付着させられないことがあった。
【0005】
本開示の目的は、導電性高分子分散体をコンデンサ素子の内部まで含浸しやすい電解コンデンサの製造方法と、電解コンデンサとを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る電解コンデンサの製造方法は、第1工程と、第2工程と、第3工程とを有する。前記第1工程では、表面に誘電体層が形成された陽極体と、陰極体と、前記陽極体及び陰極体の間に設けられたセパレータと、を含むコンデンサ素子を形成する。前記第2工程では、前記コンデンサ素子に酸成分及び塩基成分を含有する処理液を含浸する。前記第3工程では、前記第2工程の後、コンデンサ素子に前記処理液の一部が残存する状態で、ポリアニオンを含む導電性高分子の微粒子が溶媒中に分散した導電性高分子分散体を前記コンデンサ素子に含浸する。前記処理液のpHは前記導電性高分子分散体のpHより高い。
【0007】
本開示の一態様に係る電解コンデンサの製造方法は、第1工程と、第2工程と、第3工程とを有する。前記第1工程では、表面に誘電体層が形成された陽極体と、陰極体と、前記陽極体及び陰極体の間に設けられたセパレータと、を含むコンデンサ素子を形成する。前記第2工程では、前記コンデンサ素子に酸成分としてホウ酸と、塩基成分とを含む処理液を含浸する。前記第3工程では、前記第2工程の後、ポリアニオンを含む導電性高分子の微粒子が溶媒中に分散した導電性高分子分散体を前記コンデンサ素子に含浸する。
【0008】
本開示の一態様に係る電解コンデンサは、表面に誘電体層が形成された陽極体と、陰極体と、前記陽極体及び陰極体の間に設けられたセパレータと、を含むコンデンサ素子を有する。前記コンデンサ素子にはポリアニオンを含む導電性高分子の微粒子が含浸されているとともに、前記セパレータの表面にホウ酸が存在している。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一態様に係る電解コンデンサの製造方法では、導電性高分子分散体をコンデンサ素子の内部まで含浸しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係る電解コンデンサ一例を示す概略の断面図である。
【
図2】
図2は、同上の電解コンデンサが備えるコンデンサ素子を一部展開した概略の斜視図である。
【
図3】
図3は、同上のコンデンサ素子において、陽極体と陰極体の間に固体電解質が形成された状態を示す概略の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.概要
本開示の一実施形態に係る電解コンデンサ1の製造方法は、第1工程と、第2工程と、第3工程とを有する。第1工程では、表面に誘電体層210が形成された陽極体21と、陰極体22と、陽極体21及び陰極体22の間に設けられたセパレータ23と、を含むコンデンサ素子10を形成する(
図2参照)。第2工程では、コンデンサ素子10に酸成分及び塩基成分を含有する処理液を含浸する。第3工程では、第2工程の後、コンデンサ素子10に処理液の一部が残存する状態で、ポリアニオンを含む導電性高分子250の微粒子が溶媒中に分散した導電性高分子分散体をコンデンサ素子10に含浸する(
図3参照)。処理液のpHは導電性高分子分散体のpHより高い。
【0012】
また本開示の一実施形態に係る電解コンデンサ1の製造方法は、第1工程と、第2工程と、第3工程とを有する。第1工程では、表面に誘電体層210が形成された陽極体21と、陰極体22と、陽極体21及び陰極体22の間に設けられたセパレータ23と、を含むコンデンサ素子10を形成する(
図2参照)。第2工程では、コンデンサ素子10に酸成分としてホウ酸と、塩基成分とを含有する処理液を含浸する。第3工程では、第2工程の後、コンデンサ素子10に処理液の一部が残存する状態で、ポリアニオンを含む導電性高分子250の微粒子が溶媒中に分散した導電性高分子分散体をコンデンサ素子10に含浸する(
図3参照)。
【0013】
本実施形態では、処理液中の酸成分と、塩基成分とによって、導電性高分子分散体をコンデンサ素子10の内部に含浸しやすい。
【0014】
また処理液のpHが導電性高分子分散体のpHよりも高いことによっても、導電性高分子分散体を、コンデンサ素子10の内部に含浸しやすい。
【0015】
また処理液の酸成分がホウ酸であることによっても、導電性高分子分散体をコンデンサ素子10の内部に含浸しやすい。
【0016】
そのため、本実施形態の電解コンデンサ1の製造方法によると、導電性高分子分散体をコンデンサ素子10の内部まで含浸しやすく、そのため、セパレータ23に付着する導電性高分子250の量を多くすることができる。
【0017】
2.詳細
2-1.電解コンデンサ
以下、本実施形態に係る電解コンデンサ1の構成を詳細に説明する。
【0018】
電解コンデンサ1は、
図1に示すように、コンデンサ素子10と、有底ケース11と、封止部材12と、座板13と、リード線14A、14Bと、リードタブ15A、15Bとを含む。
【0019】
(1)有底ケース
有底ケース11は、コンデンサ素子10を収容可能なように構成されている。具体的には、有底ケース11は、筒状の部材であって、底部が開口しておらず、頂部が開口している。このため、有底ケース11の開口から有底ケース11の内部にコンデンサ素子10を入れることができる。有底ケース11は、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、銅、鉄、真鍮及びこれらの合金からなる群から選択される一種以上の材料製である。
【0020】
(2)封止部材及び座板
有底ケース11の開口は、封止部材12で塞がれている。封止部材12は、例えば、EPT(ethylene-propyleneterpolymer)、IIR(isobutylene‐isoprenerubber)等のゴム材料、又はエポキシ樹脂等の樹脂材料製である。封止部材12は、一対の貫通孔を備える。有底ケース11は、その開口端近傍が内側に向かって絞り加工され、その開口端はカール加工されており、これによって封止部材12がかしめられている。さらに、この封止部材12は、座板13で覆われている。座板13は、例えば電気絶縁性の樹脂材料製である。
【0021】
(3)リード線及びリードタブ
一対のリード線14A及びリード線14Bは、封止部材12の貫通孔から引き出され、かつ座板13を貫通している。一対のリードタブ15A及びリードタブ15Bは、封止部材12に埋め込まれている。リードタブ15Aは、リード線14Aとコンデンサ素子10の電極(陽極体21)とを電気的に接続している。またリードタブ15Bは、リード線14Bとコンデンサ素子10の電極(陰極体22)とを電気的に接続している。
【0022】
(4)コンデンサ素子
以下、有底ケース11内に収容されるコンデンサ素子10について、詳細に説明する。
【0023】
本実施形態のコンデンサ素子10は、
図2に示すように、巻回体である。
図2に示す巻回体は、
図1に示す電解コンデンサ1からコンデンサ素子10を取り出して、一部展開した状態を示している。
【0024】
コンデンサ素子10は、陽極体21と、陰極体22と、セパレータ23とを含む。
図2に示すように、陽極体21にはリードタブ15Aが電気的に接続され、陰極体22にはリードタブ15Bが電気的に接続されている。このため、陽極体21は、リードタブ15Aを介して、リード線14Aと電気的に接続され、陰極体22は、リードタブ15Bを介して、リード線14Bと電気的に接続されている。
【0025】
セパレータ23は、陽極体21と陰極体22との間に設けられている。陽極体21と陰極体22とセパレータ23とは、この状態で巻回されている。セパレータ23は、例えば、セルロース繊維、クラフト、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ナイロン、芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、レーヨン、ガラス質、ビニロン又はアラミド繊維等を含有する不織布である。本実施形態では、セパレータ23がセルロース繊維を含むことが好ましい。コンデンサ素子10の最外周は、巻留めテープ24で留められて固定される。
【0026】
コンデンサ素子10において、陽極体21と陰極体22との間には、固体電解質25が形成されている。この状態を示す概略の拡大図を
図3に示す。
図3に示すように、セパレータ23は、固体電解質25を保持している。
【0027】
(4-1)陽極体
図3に示すように、陽極体21は、金属箔と、金属箔の表面に形成された誘電体層210と、を含む。すなわちコンデンサ素子10は、表面に誘電体層210が形成された陽極体21を含む。
【0028】
金属箔は、その表面が粗面化されている。これにより、金属箔の表面積を増やすことができ、金属箔の表面に形成される誘電体層210の面積も増やすことができる。粗面化する方法は、特に限定されず、例えば、エッチング法を採用することができる。金属箔の材料は、特に限定されないが、例えば、アルミニウム、タンタル、ニオブ又はチタンなどの弁作用金属又は弁作用金属を含む合金であることが好ましい。
【0029】
誘電体層210は、金属箔の表面を化成処理することで形成される。この化成処理によって、金属箔の表面に酸化皮膜が形成され、この酸化皮膜が誘電体層210となる。化成処理は、例えば、金属箔を処理液に浸漬した状態で、金属箔に電圧を印加する方法を採用することができる。処理液としては、特に限定されないが、例えば、アジピン酸アンモニウム溶液を用いることができる。
【0030】
(4-2)陰極体
陰極体22としては、陽極体21の製造で使用される金属箔と同様の金属箔を用いることができる。陰極体22は、その表面が粗面化されていてもよい。陰極体22は、その表面に、例えばチタン又はカーボンを含む層が形成されていてもよい。
【0031】
(4-3)固体電解質
図3に示すように、固体電解質25は、誘電体層210と接触し、かつ、陽極体21及び陰極体22との間に介在する。固体電解質25は、内部に微細な空隙を有する多孔質である。固体電解質25は、内部に微細な空隙を有する多孔質である。固体電解質25は、溶媒と、この溶媒に分散された導電性高分子250の微粒子を含む高分子分散体を、コンデンサ素子10に含浸し、コンデンサ素子10から溶媒を揮発させることで形成され得る。すなわち、コンデンサ素子10には導電性高分子250の微粒子が含浸されている。導電性高分子250は、誘電体層210の表面の少なくとも一部に付着され、且つ、セパレータ23及び陰極体22の表面の少なくとも一部に付着されている。
【0032】
本実施形態では、セパレータ23の表面にホウ酸が存在していることが好ましい。このホウ酸によって、セパレータ23に対する導電性高分子分散体の含浸性を向上させることができる。そのため、セパレータ23に付着した導電性高分子250の量を多くすることができる。またコンデンサ素子10に対する電解液26の含浸性も向上させることができる。なお、セパレータ23の表面に存在するホウ酸は、セパレータ23の繊維の表面を覆っていてもよく、セパレータ23の表面に島状に付着していてもよい。
【0033】
上記溶媒としては、揮発性液状成分を使用することができる。揮発性液状成分としては、例えば、水、非水溶媒、又は水と非水溶媒との混合物を使用することができる。非水溶媒としては、プロトン性溶媒又は非プロトン性溶媒を使用することができる。プロトン性溶媒は、例えば、アルコール類及びエーテル類のうち少なくとも一方を含むことができる。アルコール類は、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール及びプロピレングリコールからなる群から選択される一種以上を含むことができる。エーテル類は、例えば、ホルムアルデヒド及び1,4-ジオキサンのうち少なくとも一方を含むことができる。非プロトン性溶媒は、例えば、アミド類、エステル類及びケトン類からなる群から選択される一種以上を含むことができる。アミド類は、例えば、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド及びN-メチル-2-ピロリドンからなる群から選択される一種以上を含むことができる。エステル類は、例えば、酢酸メチルを含むことができる。ケトン類は、例えば、メチルエチルケトンを含むことができる。
【0034】
導電性高分子250は、例えば、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン及びこれらの誘導体からなる群から選択される一種以上の成分を含むことが好ましい。例えば、ポリチオフェンの誘導体には、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)等が含まれる。導電性高分子250は、単独重合体を含んでいてもよく、共重合体を含んでいてもよい。導電性高分子250の重量平均分子量は、特に限定されないが、例えば1000以上100000以下である。導電性高分子250の微粒子の平均粒径は、特に限定されないが、例えば50nm以上1000nm以下が好ましく、100nm以上500nm以下がより好ましい。本明細書で用いる平均粒径は、粒径分布ピークを構成する粒子および/または凝集体の粒子径の平均値を意味する。なお、動的光散乱法による粒径分布測定においては、測定対象となる導電性高分子の粒子の少なくとも一部が、媒体中で凝集して凝集体を形成している場合には、該凝集体に関しては、凝集体としての粒径が測定されることとなる。粒径分布ピークの平均粒径は、動的光散乱法による粒径分布測定から得ることができる。
【0035】
本実施形態の導電性高分子250はポリアニオンを含む。ポリアニオンは、ドーパントとして機能する。このドーパントによって、導電性高分子250が導電性を発現できる。ポリアニオンは、例えば高分子スルホン酸である。この場合、ドーパントとして単分子酸成分を含む場合よりも、導電性高分子250からドーパントが離れにくく、特に高温下でも導電性高分子250からドーパントが離れにくい。
【0036】
高分子スルホン酸は、例えば、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリルスルホン酸、ポリメタクリルスルホン酸、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸)、及びポリイソプレンスルホン酸からなる群から選択される一種以上を含むことができる。
【0037】
ポリアニオンは、ポリスチレンスルホン酸を含むことが特に好ましい。この場合、導電性高分子250が、ポリスチレンスルホン酸の側鎖に、島状に分散して結合した状態になると考えられる。このため、導電性高分子250からドーパントが離れにくく、特に高温下でも導電性高分子250からドーパントが離れにくい。
【0038】
(4-4)電解液
コンデンサ素子10には電解液26が含浸されている。具体的には、固体電解質25の複数の空隙内に電解液26が入り込んでいる。このため、電解液26は、誘電体層210及び固体電解質25と接触している。
【0039】
電解液26は、溶媒及び酸成分(後述の第2酸成分に該当する)を含む。この酸成分の酸化作用によって、誘電体層210の欠陥を修復することができる。具体的には、誘電体層210において、陽極体21の金属箔が露出した部分を酸化させて、誘電体層210を形成することができる。
【0040】
溶媒は、例えば、グリコール化合物、スルホン化合物、ラクトン化合物、カーボネート化合物、アルコール、及びポリオールからなる群から選択される一種以上の成分を含むことができる。
【0041】
グリコール化合物は、例えば、エチレングリコール(EG)、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール(PEG)及びポリアルキレングリコールからなる群から選択される一種以上を含むことができる。
【0042】
スルホン化合物は、例えば、スルホラン、3-メチルスルホラン、ジメチルスルホキシド及びジエチルスルホキシドからなる群から選択される一種以上の成分を含むことができる。
【0043】
ラクトン化合物は、例えば、γ-ブチロラクトン、β-ブチロラクトン、α-バレロラクトン及びγ-バレロラクトンからなる群から選択される一種以上を含むことができる。
【0044】
カーボネート化合物は、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)及びフルオロエチレンカーボネート(FEC)からなる群から選択される一種以上の成分を含むことができる。
【0045】
アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、シクロブタノール、シクロヘキサノール、メチルセロソルブ、及びエチルセロソルブからなる群から選択される一種以上を含むことができる。
【0046】
溶媒は、グリコール化合物を含むことが好ましく、エチレングリコールまたはプロピレングリコールを含むことが特に好ましい。この場合、溶媒が蒸発して、有底ケース11と封止部材12との隙間や、封止部材12自体を通過し、電解液26中の溶媒が減少することを抑制することができる。
【0047】
溶媒は、水酸基を3以上含むポリオールを含んでもよく、グリセリンとポリグリセリンとの少なくとも一方を含むことが特に好ましい。この場合、電解液26中の溶媒の減少を抑制しやすく、導電性高分子250の周囲に電解液26が存在する状態を持続しやすい。
【0048】
酸成分は、有機酸を含むことが好ましい。有機酸は、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、アジピン酸、安息香酸、トルイル酸、エナント酸、マロン酸、1,6-デカンジカルボン酸、1,7-オクタンジカルボン酸、アゼライン酸、サリチル酸、蓚酸、及びグリコール酸からなる群から選択される一種以上を含むことができる。
【0049】
酸成分は、無機酸を含んでもよい。無機酸は、例えば、ホウ酸、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ホウ酸エステル、リン酸エステル、炭酸、及びケイ酸からなる群から選択される一種以上を含むことができる。
【0050】
酸成分が、例えば上記の有機酸及び無機酸の複合酸化合物を含むことも好ましい。複合酸化合物は、ボロジサリチル酸、ボロジグリコール酸、及びボロジシュウ酸からなる群から選択される一種以上を含むことが好ましい。
【0051】
また、酸成分として高分子酸成分を用いてもよい。高分子酸成分は、例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリルスルホン酸、ポリメタクリルスルホン酸、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸)及びポリイソプレンスルホン酸からなる群から選択される一種以上を含むことができる。
【0052】
電解コンデンサ1は、リプル電流が流れることにより発熱することがある。このような場合、複合酸化合物や高分子酸成分は、熱安定性に優れるため好ましい。
【0053】
電解液26は、溶媒及び酸成分以外の成分を含むことができる。電解液26は、例えば
、塩基成分(後述の第2塩基成分に該当する)を含むことができる。この場合、酸成分の少なくとも一部を中和させることができ、酸成分の濃度を高めながら、酸成分による電極の腐食を抑制できる。
【0054】
電解液26において、酸成分の当量比は塩基成分の当量比よりも大きいことが好ましい。この場合、脱ドープ現象を効果的に抑制できる。塩基成分に対する酸成分の当量比は1.0~30であることが望ましい。また、液状成分中の塩基成分の濃度は、0.1質量%以上20質量%以下が好ましく、3質量%以上10質量%以下がより好ましい。
【0055】
塩基成分は、第1級アミン化合物、第2級アミン化合物、第3級アミン化合物、アンモニウム化合物、第4級アンモニウム化合物及びアミジン化合物からなる群から選択される1種以上の成分を含むことが好ましい。これらの成分は耐熱性が高いため、熱による電解液26の劣化を抑制することができる。これらの成分の例には、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、ジメチルエチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、スペルミジン、スペルミン、アマンタジン、アニリン、フェネチルアミン、トルイジン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、イミダゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、4-ジメチルアミノピリジン、アンモニウム、ジエチルジメチルアンモニウム、1,2,3-トリメチルイミダゾリニウム、1,2,3,4-テトラメチルイミダゾリニウム、1,3-ジメチル-2-エチル-イミダゾリニウム、1,3,4-トリメチル-2-エチルイミダゾリニウム、1,3-ジメチル-2-ヘプチルイミダゾリニウム塩等が含まれる。塩基成分は、これらの成分のうち一種以上を含むことができる。
【0056】
溶媒は、溶媒、酸成分、塩基成分以外の成分、添加剤等を含んでいてもよい。
【0057】
電解液26のpHは4以下が好ましく、3.8以下がより好ましく、3.6以下が更に好ましい。電解液26のpHを4以下とすることで、脱ドープ現象を抑制しやすい。電解液26のpHの下限値は、特に限定されないが、例えば2.0以上である。
【0058】
2-2.電解コンデンサの製造方法
以下、本実施形態の電解コンデンサ1の製造方法の一例を、工程ごとに説明する。本実施形態の電解コンデンサ1の製造方法は、第1工程、第2工程、第3工程を含み、さらに第4工程と、第5工程とを含む。
【0059】
(1)第1工程
第1工程では、表面に誘電体層210が形成された陽極体21と、陰極体22と、陽極体21及び陰極体22との間に設けられたセパレータ23と、を含むコンデンサ素子10を作製する。第1工程では、陽極体21の作製と、陰極体22の作製と、コンデンサ素子10の作製と、を行うことが好ましい。
【0060】
(1-1)陽極体の作製
陽極体21の原料である金属箔を準備する。具体的には、ロール状の大判の金属板を裁断することにより、陽極体21を作製することができる。
【0061】
この金属箔の表面を粗面化することにより、金属箔の表面に複数の微細な凹凸を形成することができる。金属箔の表面の粗面化は、例えば、金属箔をエッチング処理することで行うことができる。エッチング処理としては、例えば、直流電解法又は交流電解法を採用することができる。
【0062】
次に、粗面化された金属箔の表面に誘電体層210を形成する。誘電体層210を形成する方法は、特に限定されないが、例えば、金属箔を化成処理することで形成できる。化成処理では、例えば、粗面化された金属箔を、アジピン酸アンモニウム溶液等の化成液に浸漬してから、加熱するか、又は電圧を印加する。これにより、表面に誘電体層210が形成された陽極体21が得られる。陽極体21にはリード線14Aを電気的に接続する。陽極体21とリード線14Aとの接続方法は、特に限定されないが、例えば、カシメ接合又は超音波溶着などを使用することができる。本実施形態では、陽極体21とリード線14Aとをリードタブ15Aを介して電気的に接続する。
【0063】
(1-2)陰極体の作製
陰極体22は、陽極体21と同様の方法により、金属箔から作製することができる。具体的には、ロール状の大判の金属板を裁断することにより、陰極体22を作製することができる。
【0064】
この陰極体22にリード線14Bを電気的に接続する。陰極体22とリード線14Bの接続方法は、特に限定されないが、例えば、カシメ接合又は超音波溶着などを使用することができる。本実施形態では、陰極体22とリード線14Bとをリードタブ15Bを介して電気的に接続する。
【0065】
必要に応じて、陰極体22の表面を粗面化してもよく、陰極体22の表面に酸化皮膜又はチタン及びカーボンなどの導電層を含む層を形成してもよい。
【0066】
(1-3)コンデンサ素子の作製
上述の陽極体21と、陰極体22と、セパレータ23とを用いて、
図2に示すような巻回体(コンデンサ素子10)を作製する。具体的には、陽極体21とセパレータ23と陰極体22とをこの順に重ねて同心円状に巻き取ることにより、巻回体を作製する。巻回体の最外層に位置する陰極体22の端部は、巻止めテープ24で固定される。これにより、
図2に示すコンデンサ素子10を作製することができる。さらに、陽極体21及び陰極体22から取り出されたリード線14A、14Bを、封止部材12の貫通孔から引き出して、封止部材12を配置する。
【0067】
(2)第2工程
第2工程では、第1工程で作製したコンデンサ素子10に、酸成分及び塩基成分を含有する処理液を含浸する。ここで、本明細書において、後述の第4工程で使用する電解液に含有される酸成分及び塩基成分と、第2工程で使用する処理液に含有される酸成分及び塩基成分とを区別するために、処理液に含有される酸成分及び塩基成分を、それぞれ、第1酸成分及び第1塩基成分という。また電解液に含まれる酸成分及び塩基成分を、それぞれ、第2酸成分及び第2塩基成分という。
【0068】
第1酸成分は、セパレータ23の表面に存在する水酸基と反応する性質を有する成分であり、例えば、ホウ酸、リン酸、アジピン酸、クエン酸、マロン酸、及び酒石酸からなる群から選択される一種以上の成分を含有できる。この第1酸成分と、セパレータ23の表面の水酸基とが反応することにより、セパレータ23の表面を改質することができる。
【0069】
第1塩基成分は、セパレータ23の表面の水酸基と、導電性高分子のポリアニオンが有するスルホ基などの酸性の官能基と、を結合するプロトンを取り込むことができる成分であり、例えば、アンモニウムを含有する。セパレータ23の表面の水酸基と、導電性高分子のポリアニオンが有する酸性の官能基とは、プロトンを介して結合すると考えられる。このプロトンを第1塩基成分で取り込むことにより、セパレータ23の表面と、導電性高分子のポリアニオンとの相互作用を弱くできる。この相互作用が弱くなることにより、コンデンサ素子10の端面101、102付近に導電性高分子分散体が留まることを抑制でき、コンデンサ素子10の内部まで、導電性高分子分散体が含浸しやすくなる。よって、コンデンサ素子10において、セパレータ23を通じてコンデンサ素子10の内部(端面101、102から離れたセパレータ23の繊維の表面や誘電体層210の表面や陰極体22の表面)まで導電性高分子250の微粒子を配置できる。なお、第1酸成分及び第1塩基成分は処理液中でイオン化していてもよい。
【0070】
第1酸成分としてのホウ酸は、導電性高分子分散体中の導電性高分子250の微粒子を凝集させにくく、導電性高分子分散体の粘度が上昇させにくい点で好ましい。導電性高分子分散体中の導電性高分子250の微粒子が凝集したり、導電性高分子分散体の粘度が上昇すると、コンデンサ素子10の内部に導電性高分子分散体が含浸しにくくなる。
【0071】
また、本実施形態では、コンデンサ素子10に、第1酸成分としてホウ酸と第1塩基成分とを含む処理液を含浸することで、セパレータ23にホウ酸を付着させることができる。ホウ酸は吸湿性を有するため、セパレータ23に付着したホウ酸によってセパレータ23中の水分を吸収することができ、セパレータ23中の導電性高分子分散体が含浸するためのスペースを多くすることができる。このため、セパレータ23に対する導電性高分子分散体の含浸性が向上し、コンデンサ素子10に対する導電性高分子分散体の含浸性も向上させられる。
【0072】
処理液中の第1酸成分及び第1塩基成分は、第1酸成分と第1塩基成分との塩が処理液に溶解することで形成されることも好ましい。例えば、処理液中のホウ酸は、水和物であるホウ酸化合物由来であることも好ましい。すなわち、処理液が、ホウ酸化合物が溶解したものであり、ホウ酸化合物が水和物であることも好ましい。処理液中でホウ酸化合物が溶解することによって、ホウ酸が生成されるため、このホウ酸によってセパレータ23の表面を改質できる。またセパレータ23にホウ酸を付着させることができ、セパレータ23に対する導電性高分子分散体の含浸性を向上させることができ、またコンデンサ素子10に対する導電性高分子分散体の含浸性も向上させることができる。
【0073】
また第2工程の後、コンデンサ素子10に導電性高分子分散体を含浸する前(第3工程前)には、コンデンサ素子10に、処理液中の第1酸成分の一部が残存することが好ましく、処理液中の第1塩基成分の一部が残存することが好ましい。導電性高分子分散体をコンデンサ素子10に含浸する際に、コンデンサ素子10に残存した第1酸成分が再溶解することで、コンデンサ素子10の内部に導電性高分子分散体が含浸しやすくなる。例えば、第1酸成分がホウ酸である場合には、セパレータ23の繊維の表面にホウ酸が存在している。このホウ酸が導電性高分子分散体に再溶解することで、コンデンサ素子10の内部に導電性高分子分散体を含浸しやすくなる。またコンデンサ素子10に残存した第1塩基成分によっても、コンデンサ素子10の内部への導電性高分子分散体の含浸性を向上させることができる。第1酸成分の残存量及び第1塩基成分の残存量は、コンデンサ素子10に処理液を含浸した後に乾燥する際の乾燥条件(温度及び時間)と、処理液中の第1酸成分及び第1塩基成分の濃度とに影響される。なお、残存した第1酸成分には、第1酸成分と他の成分との反応物が含まれてもよく、残存した第1塩基成分には、第1塩基成分と他の成分との反応物が含まれてもよい。
【0074】
またコンデンサ素子10に残存した第1塩基成分の種類によっては、第1塩基成分がコンデンサ素子10内に残存する場合、導電性高分子の電導度(電気伝導率)が低下して電解コンデンサ1のESRが増加するおそれがある。この点、第1塩基成分がアンモニウムである場合、導電性高分子の電導度の低下が生じにくい。これは、アンモニウムは揮発性に優れるため、コンデンサ素子10中にアンモニウムが残りにくいためと考えられる。このため、本実施形態の第1塩基成分はアンモニウムが好ましい。
【0075】
また、上記ホウ酸化合物は、ホウ酸アンモニウムであることが好ましい。具体的には、ホウ酸アンモニウムの水和物であることが好ましい。ホウ酸アンモニウムの水和物としては、四ホウ酸アンモニウム四水和物((NH4)2B4O7・4H2O)、五ホウ酸アンモニウム八水和物((NH4)20・5B2O3・8H2O)等が挙げられるが、特に五ホウ酸アンモニウム八水和物が好ましい。ホウ酸化合物がホウ酸アンモニウムである場合、ホウ酸によって、セパレータ23への導電性高分子分散体の含浸性を向上させながら、第1塩基成分であるアンモニウムは、導電性高分子分散体の粘度の上昇を抑制し、コンデンサ素子10の内部まで導電性高分子分散体が含浸できる。
【0076】
処理液におけるホウ酸化合物の含有量は、0.1重量%以上5.0重量%以下であることが好ましい。この場合、処理液におけるホウ酸化合物の含有量が0.1重量%以上であることにより、導電性高分子分散体をセパレータ23に十分に含浸することができる。処理液におけるホウ酸化合物の含有量が5.0重量%以下であることにより、コンデンサ素子10に残存する第1塩基成分を低減でき、導電性高分子の電導度が低下することを抑制できる。
【0077】
本実施形態では、処理液のpHが、導電性高分子分散体のpHよりも高い。この場合、処理液に含まれる第1塩基成分によるプロトンの取り込みを、効果的に行うことができる。また、導電性高分子分散体よりもpHが高い処理液をコンデンサ素子10に予め含浸しておくことで、処理液よりもpHが低い導電性高分子分散体であっても、セパレータ23及び箔(陽極体21及び陰極体22)の濡れ性を改善することができる。この効果は、導電性高分子250の微粒子の表面電位がゼロに近い値となり、導電性高分子250と、セパレータ23及び箔との干渉を抑制できるためと考えられる。これらの結果、導電性高分子分散体をコンデンサ素子10の内部まで含浸しやすく、セパレータ23に付着する導電性高分子250の量を多くできる。
【0078】
処理液のpHは、6以上であることが好ましい。この場合、セパレータ23に導電性高分子分散体を特に含浸しやすく、コンデンサ素子10の内部に導電性高分子分散体を特に含浸しやすい。処理液のpHは、7.0以上であることがより好ましい。処理液のpHの上限値は特に限定されないが、9.5以下であることが好ましく、9.0以下であることがより好ましい。
【0079】
処理液の温度は、45℃以下が好ましく、35℃以下がより好ましい。この場合、処理液に含まれる第1塩基成分の蒸発を抑制できる。それにより、処理液のpHの変化を抑制することができ、第1塩基成分によるプロトンの取り込みを効果的に行うことができる。特に第1塩基成分がアンモニウムである場合、アンモニウムの蒸発を抑制しやすく、処理液のpHの変化を抑制しやすい。
【0080】
第2工程では、コンデンサ素子10を処理液に浸漬した状態で、陽極体21と、陰極体22との間に電圧を印加してもよい。この場合、コンデンサ素子10の端面101、102に位置する陽極体21の断面、及び誘電体層210が形成されずに陽極体21が露出した部分に、誘電体層210を形成することができる。その後、コンデンサ素子10を洗浄してもよく、コンデンサ素子10を洗浄しなくてもよい。コンデンサ素子10を洗浄する場合には、コンデンサ素子10に処理液の一部が残存するように洗浄することが好ましい。
【0081】
第2工程において、コンデンサ素子10に処理液を含浸した後には、コンデンサ素子10を乾燥させることが好ましい。上述の通り、コンデンサ素子10には、処理液中の第1酸成分及び第1塩基成分が残存することが好ましいため、コンデンサ素子10の乾燥温度は、第1酸成分及び第1塩基成分が残存可能な温度であることが好ましい。またコンデンサ素子10の乾燥時間は、第1酸成分及び第1塩基成分が残存可能な時間であることが好ましい。またコンデンサ素子10に導電性高分子分散体を含浸する際には、コンデンサ素子中の水分を蒸発させることが好ましいため、コンデンサ素子10の乾燥温度は、少なくとも水を蒸発可能な温度であることが好ましい。
【0082】
(3)第3工程
第3工程では、処理液の一部がコンデンサ素子10に残存する状態で、導電性高分子分散体をコンデンサ素子10に含浸する。この導電性高分子分散体は、溶媒と、溶媒中に分散した導電性高分子250の微粒子とが含まれる。第3工程では、誘電体層210の表面に、導電性高分子250を含む固体電解質25を形成できると共に、セパレータ23の表面及び陰極体22の表面にも固体電解質25を付着させられる。
【0083】
上述の第2工程において、コンデンサ素子10に第1酸成分及び第1塩基成分を含む処理液を含浸することにより、第3工程では、導電性高分子分散体をコンデンサ素子10の内部まで含浸しやすい。具体的には、処理液中の第1酸成分で、セパレータ23の表面が改質されている。またセパレータ23の表面に付着した第1酸成分が、導電性高分子分散体に再溶解することで、導電性高分子分散体の含浸性が向上する。また処理液中の第1塩基成分でプロトンが取り込まれて、セパレータ23の表面とポリアニオンとの相互作用が弱くなる。その結果、導電性高分子分散体が、コンデンサ素子10の端面101、102付近に留まりにくく、コンデンサ素子10の内部に含浸しやすくなり、巻回体内部の隙間にも含浸しやすくなる。
【0084】
特に本実施形態のように、第1酸成分がホウ酸である場合、第三工程の直前において、セパレータ23の繊維の表面にはホウ酸が付着している部分があることが好ましい。具体的には、処理液を含浸したコンデンサ素子10を乾燥させることにより、結晶化したホウ酸がセパレータ23に付着していると考えられる。このホウ酸によって、セパレータ23中の水分が吸収されて、セパレータ23中の導電性高分子分散体が含浸可能な空間が広がると考えられる。この場合、セパレータ23がセルロース繊維を含むことが好ましい。セルロース繊維はセパレータ23として使用可能な繊維の中でも比較的多くの水分を含むため、ホウ酸による導電性高分子分散体の含浸性の向上が、より発揮されやすい。またホウ酸が導電性高分子分散体に再溶解されることで、導電性高分子分散体の含浸性が向上する。その結果、導電性高分子分散体がコンデンサ素子10の内部まで含浸しやすくなり、セパレータ23に付着する導電性高分子250の量を多くすることができる。
【0085】
また本実施形態では、処理液のpHが導電性高分子分散体のpHよりも高いことで、第1塩基成分によるプロトンの取り込みが効果的に行われるため、導電性高分子分散体をコンデンサ素子10の内部に含浸しやすくなり、巻回体内部の隙間にも含浸しやすくなる。またpHが低い導電性高分子分散体であっても、セパレータ23及び箔(陽極体21及び陰極体22)に対する濡れ性が改善される。具体的には、導電性高分子分散体のpHは、5以下であってもよい。この場合であっても、導電性高分子分散体をコンデンサ素子10の内部まで含浸しやすくなり、巻回体内部の隙間にも含浸しやすくなる。
【0086】
また本実施形態では、上述の通り、導電性高分子分散体をコンデンサ素子10の内部まで含浸しやすいため、セパレータ23に付着した導電性高分子250の量を多くすることができる。そのため、電解コンデンサ1のESRを低減することができる。また電解コンデンサ1に例えばリプル電流が流れるような状態で電解コンデンサ1が使用されて、電解コンデンサ1が発熱しても、電解コンデンサ1のESRが上昇したり静電容量が低下したりしにくく、電解コンデンサ1を長寿命化することができる。
【0087】
導電性高分子分散体をコンデンサ素子10に含浸する工程は、2回以上を繰り返しても良い。この場合、誘電体層210と接触する固体電解質25の量を多くすることができる。
【0088】
(4)第4工程
第4工程では、導電性高分子分散体が含浸したコンデンサ素子10に、電解液26を含浸する。すなわち、本実施形態の電解コンデンサ1の製造方法は、第3工程の後に、コンデンサ素子10に電解液26を含浸する第4工程を有する。これにより、固体電解質25内の微細な空隙内に電解液26を含浸することができる。また電解液26は、誘電体層210及び固体電解質25に接触した状態となる。またコンデンサ素子10に処理液を含浸することによって、電解液26もコンデンサ素子10の内部に含浸しやすくなり、巻回体内部の隙間にも含浸しやすくなる。
【0089】
またコンデンサ素子10に電解液26を含浸する前には、予め、第1塩基成分を揮発させておくことが好ましい。すなわち、本実施形態の電解コンデンサ1の製造方法は、第3工程の後、第4工程の前に第1塩基成分を揮発させる工程を含むことが好ましい。この場合、電解液26中に残存する第1塩基成分によって、導電性高分子の電導度が低下することを抑制することができる。具体的には、コンデンサ素子10に導電性高分子分散体を含浸した(第3工程)後、コンデンサ素子10に電解液26を含浸する前に、コンデンサ素子10を乾燥させることにより、第1塩基成分を揮発させることができる。
【0090】
本実施形態では、上述の第2工程においてコンデンサ素子10に処理液を含浸することにより、コンデンサ素子10に電解液を含浸しやすくなる。
【0091】
(5)第5工程
第5工程では、第4工程の後に、コンデンサ素子10を有底ケース11に封止して電解コンデンサ1を完成させる。すなわち、有底ケース11の開口側にリード線14A、14Bが位置するようにコンデンサ素子10を有底ケース11に収納し、リード線14A、14Bが貫通するように形成された封止部材12をコンデンサ素子10の上方に配置して、コンデンサ素子10を有底ケース11内に封止する。そして、有底ケース11の開口端近傍に絞り加工を施し、更に開口端をカール加工し、カール部分に座板13を配置する。
【0092】
これらの工程によって、
図1に示すような電解コンデンサ1が得られる。その後、定格電圧を印加しながら、エージング処理を行ってもよい。
【0093】
2-3.電解コンデンサの用途
電解コンデンサ1の用途は、特に限定されない。電解コンデンサ1は、例えば、自動車のECU(エンジンコントロールユニット)の基板、又はスイッチング電源等に使用することができる。この自動車としては、主として、電気自動車又はハイブリッド車等を想定するが、ガソリンエンジン車又はディーゼルエンジン車であってもよい。また電解コンデンサ1は、例えば、二輪車(電動バイクを含む)、航空機、船舶、ドローン等に用いられてもよい。また電解コンデンサ1は、例えば、サーバ装置、コンピュータ装置及び家庭用ゲーム機等のCPU(Central Processing Unit)の電源装置に用いられてもよい。その他にも、電解コンデンサ1は、例えば、通信機器及び産業機器等のFPGA(Field-Programmable Gate Array)の電源装置、並びにグラフィックボード等のGPU(Graphics Processing Unit)の電源装置等に用いられてもよい。電解コンデンサ1の用途は、これらに限定されず、多岐の分野に使用することができる。
【0094】
2-4.変形例
電解コンデンサ1の構成は、上述の実施形態の構成に限定されない。
【0095】
例えば、コンデンサ素子10が、巻回体ではなく、陽極体として金属の焼結体を用いるチップ型であってもよく、金属板を陽極体として用いる積層型であってもよい。
【0096】
例えば、電解コンデンサ1が電解液26を含んでいなくてもよい。すなわち、コンデンサ素子10に電解液26を含浸しなくてもよい。この場合の電解コンデンサ1は、いわゆる固体電解コンデンサである。また電解コンデンサ1が電解液26を含んでいない場合には、電解コンデンサ1の製造方法は、コンデンサ素子10に電解液26を含浸する工程(第4工程)を含まなくてもよい。
【実施例0097】
以下、実施例に基づいて、本実施形態の電解コンデンサ1の製造方法を、より詳細に説明するが、電解コンデンサ1の製造方法は、以下の実施例の内容に限定されない。
【0098】
《実施例1~8、比較例1、2》
以下、実施例1~8、比較例1、2の電解コンデンサの製造方法を具体的に説明する。
【0099】
(陽極体の準備)
厚さ100μmのアルミニウム箔にエッチング処理を行い、アルミニウム箔の表面を粗面化した。その後、アルミニウム箔の表面に、化成処理により、誘電体層を形成した。化成処理は、アジピン酸アンモニウム溶液にアルミニウム箔を浸漬し、これに45Vの電圧を印加することにより行った。その後、アルミニウム箔を、縦×横が9mm×220mmとなるように裁断して、陽極体を準備した。
【0100】
(陰極体の準備)
厚さ50μmのアルミニウム箔にエッチング処理を行い、アルミニウム箔の表面を粗面化した。その後、アルミニウム箔を、縦×横が9mm×230mmとなるように裁断して、陰極体を準備した。
【0101】
(巻回体の作製)
陽極体および陰極体に陽極リードタブおよび陰極リードタブを接続し、陽極体と陰極体とを、リードタブを巻き込みながら、セパレータを介して巻回した。巻回体から突出する各リードタブの端部には、陽極リード線および陰極リード線をそれぞれ接続した。
【0102】
(処理液の調製)
表1に示す第1酸成分、第1塩基成分及び水を含む処理液を調製した。処理液中の第1酸成分及び第1塩基成分は、第1酸成分と第1塩基成分との塩の状態で、表1に示す割合で配合した。処理液のpHは、表1に示す値であった。
【0103】
(処理液への含浸)
所定容器に収容された処理液を35℃に保持し、巻回体を浸漬することにより、巻回体に処理液を含浸させた。
【0104】
(巻回体の乾燥)
処理液から引き揚げた巻回体を、105℃、1時間の条件で乾燥させることにより、処理液に含まれる第1酸成分を巻回体に残存させながら、処理液に含まれる第1塩基成分を巻回体から揮発させた。また巻回体の外側表面の端部は巻止めテープで固定した。
【0105】
(高分子分散体の調製)
3,4-エチレンジオキシチオフェンと、高分子ドーパントであるポリスチレンスルホ
ン酸(PSS、重量平均分子量10万)とを、イオン交換水(液状成分)に混合して、混合溶液を調製した。混合溶液を撹拌しながら、イオン交換水に溶かした硫酸鉄(III)(酸化剤)を添加し、重合反応を行った。反応後、得られた反応液を透析し、未反応モノマーおよび過剰な酸化剤を除去し、PSSがドープされた約5質量%のポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT/PSS)を含む高分子分散体を得た。この高分子分散体のpHを、表1に示す値に調整した。
【0106】
(固体電解質層の形成)
減圧雰囲気(40kPa)中で、所定容器に収容された高分子分散体に巻回体を5分間浸漬し、その後、高分子分散体から巻回体を引き上げた。次に、高分子分散体を含浸した巻回体を、150℃の乾燥炉内で20分間乾燥させ、誘電体層の少なくとも一部を被覆する固体電解質層を形成した。
【0107】
(電解液の調製)
電解液の溶媒には、エチレングリコールと、スルホランとを用いた。溶質の酸成分(第2酸成分)には、フタル酸を用いた。溶質の塩基成分(第2塩基成分)には、トリエチルアミンを用いた。上記の溶媒および溶質を用いて、電解液を調製した。
【0108】
電解液としては、エチレングリコールとスルホランとを質量比1:1で含む溶媒に、溶質としてフタル酸およびトリエチルアミンを溶解させた溶液を用いた。電解液中、フタル酸成分およびトリエチルアミン成分の濃度は、それぞれ、20質量%および5質量%であった。
【0109】
(電解液の含浸)
減圧雰囲気(40kPa)中で、電解液にコンデンサ素子を5分間浸漬し、コンデンサ素子に電解液を含浸させた。
【0110】
(コンデンサ素子の封止)
電解液を含浸させたコンデンサ素子を封止して、電解コンデンサを完成させた。具体的には、有底ケースの開口側にリード線が位置するようにコンデンサ素子を有底ケースに収納し、リード線が貫通するように形成された封止部材(ゴム成分としてブチルゴムを含む弾性材料)をコンデンサ素子の上方に配置して、コンデンサ素子を有底ケース内に封止した。そして、有底ケースの開口端近傍に絞り加工を施し、更に開口端をカール加工し、カール部分に座板を配置することによって、
図1に示すような電解コンデンサを完成させた。その後、32Vの電圧を印加しながら、100℃で2時間エージング処理を行った。
【0111】
[評価]
(1)初期ESRの測定
20℃の環境下で、4端子測定用のLCRメータを用いて、電解コンデンサの周波数100kHzにおけるESR値(初期ESR値)(mΩ)を測定した。その結果を、表1に示す。
【0112】
(2)初期静電容量の測定
20℃の環境下で、4端子測定用のLCRメータを用いて、電解コンデンサの周波数120kHzにおける静電容量(初期静電容量)(μF)を測定した。その結果を、表1に示す。
【0113】
(3)信頼性
信頼性の評価として、145℃の温度にて、電解コンデンサに定格電圧(25V)を1000時間印加した後、上記と同様の方法でESR値(mΩ)及び静電容量(μF)を測定した。その結果を、表1に示す。なお、信頼性後の静電容量については、静電容量の変化率(%)[100×(初期静電容量-信頼性後の静電容量)/(初期容量)]を示している。
【0114】
【0115】
実施例1~8の電解コンデンサでは、第1酸成分及び第1塩基成分を含む処理液に巻回体を含浸しており、かつ、処理液のpHが高分子分散体のpHよりも高いため、pHが高分子分散体のpHよりも低い処理液に巻回体を含浸している比較例1、2の電解コンデンサよりも、初期ESRを低減でき、初期静電容量を高くでき、また信頼性後のESR及び静電容量の変化を抑制できた。これは、実施例1~8の電解コンデンサは、比較例1、2の電解コンデンサよりも、コンデンサ素子の内部に導電性高分子分散体が含浸されやすく、セパレータに付着する導電性高分子の量を多くすることができるためと考えられる。
【0116】
また実施例1、2、4~7の電解コンデンサでは、第1酸成分としてホウ酸を含む処理液に巻回体を含浸しているため、第1酸成分としてホウ酸を含まない処理液に巻回体を含浸している比較例1、2の電解コンデンサよりも、初期ESRを低減でき、初期静電容量を高くでき、また信頼性後のESR及び静電容量の変化を抑制できた。これは、実施例1、2、4~7の電解コンデンサでは、比較例1、2の電解コンデンサよりも、コンデンサ素子の内部に導電性高分子分散体が含浸されやすく、セパレータに付着する導電性高分子の量を多くすることができるためと考えられる。
【0117】
(まとめ)
第1の態様に係る電解コンデンサ(1)の製造方法は、第1工程と、第2工程と、第3工程とを有する。第1工程では、表面に誘電体層(210)が形成された陽極体(21)と、陰極体(22)と、陽極体(21)及び陰極体(22)の間に設けられたセパレータ(23)と、を含むコンデンサ素子(10)を形成する。第2工程では、コンデンサ素子(10)に酸成分及び塩基成分を含有する処理液を含浸する。第3工程では、第2工程の後、コンデンサ素子(10)に処理液の一部が残存する状態で、ポリアニオンを含む導電性高分子(250)の微粒子が溶媒中に分散した導電性高分子分散体をコンデンサ素子(10)に含浸する。処理液のpHは導電性高分子分散体のpHより高い。
【0118】
この場合、処理液中の酸成分と、塩基成分とによって、導電性高分子分散体をコンデンサ素子(10)の内部に含浸しやすくなる。また処理液のpHが導電性高分子分散体のpHよりも高いことによっても、導電性高分子分散体を、コンデンサ素子(10)の内部に含浸しやすくなる。そのため、セパレータ(23)に付着する導電性高分子(250)の量を多くすることができる。
【0119】
第2の態様に係る電解コンデンサ(1)の製造方法は、第1工程と、第2工程と、第3工程とを有する。第1工程では、表面に誘電体層(210)が形成された陽極体(21)と、陰極体(22)と、陽極体(21)及び陰極体(22)の間に設けられたセパレータ(23)と、を含むコンデンサ素子(10)を形成する。第2工程では、コンデンサ素子(10)に酸成分としてホウ酸と、塩基成分とを含有する処理液を含浸する。第3工程では、第2工程の後、コンデンサ素子(10)に処理液の一部が残存する状態で、ポリアニオンを含む導電性高分子(250)の微粒子が溶媒中に分散した導電性高分子分散体をコンデンサ素子(10)に含浸する。
【0120】
この場合、この場合、処理液中の酸成分と、塩基成分とによって、導電性高分子分散体をコンデンサ素子(10)の内部に含浸しやすくなる。また処理液の酸成分がホウ酸であることによっても、導電性高分子分散体をコンデンサ素子(10)の内部に含浸すやすくなる。そのため、セパレータ(23)に付着する導電性高分子(250)の量を多くできる。
【0121】
第3の態様に係る電解コンデンサ(1)の製造方法は、第1又は第2の態様において、前記処理液のpHは6以上である。
【0122】
この場合、セパレータ(23)に導電性高分子分散体を特に含浸しやすくなり、コンデンサ素子(10)の内部に導電性高分子分散体を特に含浸しやすい。
【0123】
第4の態様に係る電解コンデンサ(1)の製造方法は、第1から第3のいずれか一の態様において、前記導電性高分子分散体のpHは5以下である。
【0124】
この場合であっても、導電性高分子分散体をコンデンサ素子(10)の内部まで含浸しやすくなる。
【0125】
第5の態様に係る電解コンデンサ(1)の製造方法は、第1から第4のいずれか一の態様において、前記処理液の温度は45℃以下である。
【0126】
この場合、処理液に含まれる塩基成分の蒸発を抑制できる。それにより、処理液のpHの変化を抑制することができ、塩基成分によるプロトンの取り込みを効果的に行うことができる。特に塩基成分がアンモニウムである場合、アンモニウムの蒸発を抑制しやすく、処理液のpHの変化を抑制しやすい。
【0127】
第6の態様に係る電解コンデンサ(1)の製造方法は、第1から第5のいずれか一の態様において、前記処理液は、ホウ酸化合物を溶解したものであり、前記ホウ酸化合物は水和物である。
【0128】
この場合、ホウ酸によってセパレータ(23)の表面を改質できる。またセパレータ(23)の表面にホウ酸を付着させることができる。そのため、セパレータ(23)に対する導電性高分子分散体の含浸性が向上し、コンデンサ素子(10)に導電性高分子分散体が含浸しやすくなる。
【0129】
第7の態様に係る電解コンデンサ(1)の製造方法は、第6の態様において、前記ホウ酸化合物はホウ酸アンモニウムである。
【0130】
この場合、ホウ酸によって、セパレータ(23)への導電性高分子分散体の含浸性を向上させながら、導電性高分子分散体の粘度が上昇されにくい。さらに、コンデンサ素子(10)の内部まで導電性高分子分散体が含浸しやすくなると共に、アンモニウムによっては電解液(26)の電導度が低下されにくい。
【0131】
第8の態様に係る電解コンデンサ(1)の製造方法は、第6又は第7の態様において、前記処理液における前記ホウ酸化合物の含有量は0.1重量%以上5.0重量%以下である。
【0132】
この場合、導電性高分子分散体のセパレータ(23)への含浸性を効果的に向上させることができる。
【0133】
第9の態様に係る電解コンデンサ(1)の製造方法は、第6から第8のいずれか一の態様において、前記第3工程の直前において、セパレータ(23)の繊維の表面にはホウ酸が付着している部分がある。
【0134】
この場合、セパレータ(23)中の水分がホウ酸で吸収されることで、セパレータ(23)中の導電性高分子分散体が含浸可能な空間が広がると考えられる。またホウ酸が導電性高分子分散体に再溶解させることで、導電性高分子分散体の含浸性が向上する。その結果、導電性高分子分散体がコンデンサ素子(10)の内部まで含浸しやすくなり、セパレータ(23)に付着する導電性高分子(250)の量を多くすることができる。
【0135】
第10の態様に係る電解コンデンサ(1)の製造方法は、第1から第8のいずれか一の態様において、前記第3工程の後に、コンデンサ素子(10)に電解液を含浸する第4工程を有する。
【0136】
この場合、固体電解質(25)内の微細な空隙内に電解液(26)を含浸することができる。また電解液(26)は、誘電体層(210)及び固体電解質(25)に接触した状態となる。またコンデンサ素子(10)に処理液を含浸することにより、電解液(26)もコンデンサ素子(10)の内部まで含浸しやすい。
【0137】
第11の態様に係る電解コンデンサ(1)の製造方法は、第10の態様において、前記第3工程の後、前記第4工程の前に前記塩基成分を揮発させる工程を含む。
【0138】
この場合、塩基成分によって、電解液(26)の電導度が低下することを抑制することができる。
【0139】
第12の態様に係る電解コンデンサ(1)の製造方法は、第1から第11のいずれか一の態様において、セパレータ(23)はセルロース繊維を含む。
【0140】
この場合、セルロース繊維は多くの水分を含むため、セルロース繊維は多くの水分を含むため、ホウ酸による導電性高分子分散体の含浸性の向上が、より発揮されやすい。
【0141】
第13の態様に係る電解コンデンサ(1)は、表面に誘電体層(210)が形成された陽極体(21)と、陰極体(22)と、陽極体(21)及び陰極体(22)の間に設けられたセパレータ(23)と、を含むコンデンサ素子(10)を有する。コンデンサ素子(10)にはポリアニオンを含む導電性高分子(250)の微粒子が含浸しているとともに、セパレータ(23)の表面にホウ酸が存在する。
【0142】
この場合、ホウ酸によって、セパレータ(23)に対する導電性高分子分散体の含浸性を向上させることができ、セパレータ(23)に対する導電性高分子(250)の被着量を多くできる。またコンデンサ素子(10)に対する電解液(26)の含浸性も向上させられる。
【0143】
第14の態様に係る電解コンデンサ(1)は、第13の態様において、セパレータ(23)はセルロース繊維を含む。
【0144】
この場合、ホウ酸による導電性高分子分散体の含浸性の向上が、より発揮されやすい。
【0145】
第15の態様に係る電解コンデンサ(1)は、第13又は第14の態様において、コンデンサ素子(10)に電解液が含浸されている。
【0146】
この場合、固体電解質(25)内の微細な空隙内に電解液(26)を含浸することができる。また電解液(26)は、誘電体層(210)及び固体電解質(25)に接触した状態となる。