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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023120428
(43)【公開日】2023-08-29
(54)【発明の名称】操縦可能なカテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/24 20060101AFI20230822BHJP
   A61M 25/092 20060101ALI20230822BHJP
   A61M 25/14 20060101ALI20230822BHJP
   A61F 2/95 20130101ALI20230822BHJP
   A61M 25/10 20130101ALN20230822BHJP
【FI】
A61F2/24
A61M25/092 500
A61M25/092 510
A61M25/14 512
A61F2/95
A61M25/10
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023106394
(22)【出願日】2023-06-28
(62)【分割の表示】P 2020521870の分割
【原出願日】2018-10-17
(31)【優先権主張番号】16/159,966
(32)【優先日】2018-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/574,875
(32)【優先日】2017-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500218127
【氏名又は名称】エドワーズ ライフサイエンシーズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】Edwards Lifesciences Corporation
【住所又は居所原語表記】One Edwards Way, Irvine, CALIFORNIA 92614, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー・リー・ハンフリー
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・アール・ビアラス
(57)【要約】      (修正有)
【課題】操縦可能なカテーテル装置を提供する。
【解決手段】操縦可能な医療器具は、シャフト14と、操縦機構と、作動機構48と、を含む。シャフトは、近位部分16と、遠位部分18と、第1のプルワイヤ20と、第2のプルワイヤ22と、を有する。第1のプルワイヤの遠位端部20bおよび第2のプルワイヤの遠位端部22bは、シャフトの遠位部分に連結される。操縦機構は、差動機構によって連結された第1のホイールおよび第2のホイールを有する。第1のプルワイヤの近位端部および第2のプルワイヤの近位端部はそれぞれ、第1および第2のホイールに連結される。作動機構48は、操縦機構に連結される。作動機構48を第1の動作モードで作動させると、シャフトの遠位部分18が第1の平面内で湾曲する。作動機構48を第2の動作モードで作動させると、シャフトの遠位部分18が第1の平面から離れて湾曲する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実施例のうちのいずれか1つに、または添付された図面のうちのいずれか1つに関して上記のように実質的に説明された物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、概して、操縦可能な血管内送達装置および関連方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血管内送達装置は、手術で容易にアクセスできないか、または手術なしのアクセスが望ましい、身体内の場所に、医療用プロテーゼ装置または器具を送達するためにさまざまな処置で使用される。身体内の標的場所へのアクセスは、いくつか挙げると、血管、食道、気管、胃腸管の任意の部分、リンパ管が含まれるがこれらに制限されない、身体内の経路または管腔を通じて送達装置を挿入しガイドすることによって、達成され得る。具体的な一例では、人工心臓弁が、送達装置の遠位端部上にクリンプされた状態で装着され、人工弁が心臓内の植え込み部位に到達するまで患者の脈管構造を通して(例えば、大腿動脈および大動脈を通じて)前進され得る。人工弁は次に、例えば、人工弁が装着されたバルーンを膨張させることによって、または、人工弁がその機能的サイズまで自己拡張し得るように人工弁を送達装置のシースから配備することによって、その機能的サイズまで拡張される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2013/0030519号
【特許文献2】米国特許出願公開第2012/0123529号
【特許文献3】米国特許出願公開第2010/0036484号
【特許文献4】米国特許出願公開第2010/0049313号
【特許文献5】米国特許出願公開第2010/0239142号
【特許文献6】米国特許出願公開第2009/0281619号
【特許文献7】米国特許出願公開第2008/0065011号
【特許文献8】米国特許出願公開第2007/0005131号
【特許文献9】米国特許出願公開第2015/0305865号
【特許文献10】米国特許出願公開第2016/0158497号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
送達装置の有用性は、装置が、小血管を通って、脈管構造の狭い屈曲部の周り、例えば大動脈弓の周りを首尾よく通過する能力によって、大部分は制限される。さまざまな技術が、送達装置のあるセクションの湾曲を調節し、脈管構造の屈曲部を通して人工弁を「操縦する」のを助けるために採用されてきた。それにもかかわらず、改善された送達装置が引き続き必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書には、医療装置、ツール、物質、または他の治療を被験者の身体内部の場所に送達するのに使用され得る、操縦可能なカテーテル装置および関連方法が開示される。いくつかの実装では、操縦可能なカテーテル装置は、脈管構造を通して、例えば被験者の心臓まで、医療装置を送達するのに使用され得る。
【0006】
本開示の特定の実施形態は、近位部分および遠位部分を有するシャフトを含む操縦可能な医療器具に関する。送達器具は、近位端部および遠位端部を有する第1のプルワイヤを含み得、第1のプルワイヤの遠位端部は、シャフトの遠位部分に連結され得る。送達器具は、近位端部および遠位端部を有する第2のプルワイヤを含み得、第2のプルワイヤの遠位端部は、シャフトの遠位部分に連結され得る。送達器具は、シャフトの近位部分に連結されたハンドルを含み得る。ハンドルは操縦機構を有し得、これは、差動機構によって動作的に連結された第1のホイールおよび第2のホイールを含む。第1のプルワイヤの近位端部は第1のホイールに連結され得、第2のプルワイヤの近位端部は第2のホイールに連結され得る。第1および第2のホイールの両方を第1の回転方向に回転させると、第1および第2のプルワイヤの張力が増大され得、それによって、シャフトの遠位部分は、第1の平面内で第1の角度方向に湾曲する。さらに、第1のホイールのみを第1の回転方向に回転させると、第2のホイールが第1の回転方向とは反対の第2の回転方向に回転し、第1のプルワイヤの張力が増大され、第2のプルワイヤの張力が減少され、それによって、シャフトの遠位部分は、第1の平面から離れて第2の角度方向に湾曲する。
【0007】
いくつかの実施形態では、第1および第2のホイールの両方を第2の回転方向に回転させると、第1および第2のプルワイヤの張力が減少され得、それによって、シャフトの遠位部分は、第1の平面内で第1の角度方向とは反対の第3の角度方向に湾曲する。
【0008】
いくつかの実施形態では、第2のホイールのみを第1の回転方向に回転させると、第1のホイールが第2の回転方向に回転することができ、第2のプルワイヤの張力が増大され、第1のプルワイヤの張力が減少され、それによって、シャフトの遠位部分は、第1の平面から離れて第2の角度方向とは反対の第4の角度方向に湾曲する。
【0009】
いくつかの実施形態では、第1および第2のプルワイヤの遠位端部は、180°だけ角度をつけて互いから離間され得る。
【0010】
いくつかの実施形態では、第2の角度方向および第4の角度方向は、第1の平面に対して実質的に垂直な第2の平面内にあってよい。
【0011】
いくつかの実施形態では、第1のプルワイヤの遠位端部および第2のプルワイヤの遠位端部は、シャフトの遠位端部から等しい距離だけ離間する。
【0012】
いくつかの実施形態では、送達器具は、第1のプルワイヤ導管および第2のプルワイヤ導管をさらに含み得、これらはそれぞれ、少なくとも部分的にシャフトの近位部分および遠位部分を通って延びる。第1のプルワイヤは、第1のプルワイヤ導管を通って延びることができ、第2のプルワイヤは、第2のプルワイヤ導管を通って延びることができる。
【0013】
いくつかの実施形態では、ハンドルは、操縦機構に動作的に連結された第1の作動機構を含み得、それによって、第1の作動機構を動作させると、第1および第2のホイールの両方が第1または第2の回転方向に選択的に回転し得る。
【0014】
いくつかの実施形態では、ハンドルは、操縦機構に動作的に連結された第2の作動機構を含み得、それによって、第2の作動機構を動作させると、第1または第2のホイールのみが第1の回転方向に選択的に回転し得る。
【0015】
いくつかの実施形態では、第1のプルワイヤの遠位端部および第2のプルワイヤの遠位端部は、シャフトの長手方向軸に対してある角度だけ角度をつけて互いから離間され得、この角度は、0°超かつ180°未満とすることができる。
【0016】
本開示の特定の実施形態は、シャフトと、第1のプルワイヤと、第2のプルワイヤと、操縦機構と、作動機構と、を含む、操縦可能な医療器具にも関する。シャフトは、近位部分および遠位部分を含み得る。第1のプルワイヤは、近位端部および遠位端部を有し得、第1のプルワイヤの遠位端部はシャフトの遠位部分に連結される。第2のプルワイヤは、近位端部および遠位端部を有し得、第2のプルワイヤの遠位端部はシャフトの遠位部分に連結される。操縦機構は、差動機構によって動作的に連結された第1のホイールおよび第2のホイールを含み得る。第1のプルワイヤの近位端部は、第1のホイールに連結され得、第2のプルワイヤの近位端部は、第2のホイールに連結され得る。作動機構は、操縦機構に動作可能に連結され得る。作動機構を第1の動作モードで作動させると、第1および第2のホイールが同じ方向に回転し、シャフトの遠位部分が第1の平面内で湾曲することができる。作動機構を第2の動作モードで作動させると、第1および第2のホイールがそれぞれ反対の方向に回転し、シャフトの遠位部分が第1の平面から離れて湾曲することができる。
【0017】
特定の実施形態では、第1および第2のホイールの両方を第1の回転方向に回転させると、第1および第2のプルワイヤの張力が増大され得、それによって、シャフトの遠位部分は、第1の平面内で第1の角度方向に湾曲する。
【0018】
特定の実施形態では、第1および第2のホイールの両方を第1の回転方向とは反対の第2の回転方向に回転させると、第1および第2のプルワイヤの張力が減少され得、それによって、シャフトの遠位部分は、第1の平面内で第1の角度方向とは反対の第2の角度方向に湾曲する。
【0019】
特定の実施形態では、第1のホイールのみを第1の回転方向に回転させると、第2のホイールが第1の回転方向とは反対の第2の回転方向に回転することができ、第1のプルワイヤの張力が増大され、第2のプルワイヤの張力が減少され、それによって、シャフトの遠位部分は、第1の平面から離れて第1の角度方向に湾曲する。
【0020】
特定の実施形態では、第2のホイールのみを第1の回転方向に回転させると、第1のホイールが第2の回転方向に回転することができ、第2のプルワイヤの張力が増大され、第1のプルワイヤの張力が減少され、それによって、シャフトの遠位部分は、第1の平面から離れて第1の角度方向とは反対の第2の角度方向に湾曲する。
【0021】
特定の実施形態では、作動機構を第2の動作モードで作動させると、シャフトの遠位部分は第1の平面に垂直な第2の平面内で湾曲し得る。
【0022】
本明細書には、送達器具を被験者の脈管構造内で操縦する方法も開示される。この方法は、送達器具の差動機構を作動させて送達器具のシャフトの遠位部分を第1の平面内で湾曲させるステップと、差動機構を作動させてシャフトの遠位部分を第1の平面から離れる方向に湾曲させるステップと、を含む。
【0023】
特定の実施形態では、差動機構は、第1のホイールと第2のホイールとを動作的に連結し得る。第1のホイールは第1のプルワイヤに連結され得、第2のホイールは第2のプルワイヤに連結され得る。
【0024】
特定の実施形態では、差動機構を作動させて送達器具のシャフトの遠位部分を第1の平面内で湾曲させる行為は、第1および第2のホイールの両方を第1の回転方向に回転させて第1および第2のプルワイヤの張力を増大させ、それによって、シャフトの遠位部分が第1の平面内で第1の角度方向に湾曲し得るようにするステップを含み得る。
【0025】
特定の実施形態では、差動機構を作動させて送達器具のシャフトの遠位部分を第1の平面内で湾曲させる行為は、第1および第2のホイールの両方を第1の回転方向とは反対の第2の回転方向に回転させて第1および第2のプルワイヤの張力を減少させ、それによって、シャフトの遠位部分が第1の平面内で第1の角度方向とは反対の第2の角度方向に湾曲し得るようにするステップをさらに含み得る。
【0026】
特定の実施形態では、差動機構を作動させてシャフトの遠位部分を第1の平面から離れる方向に湾曲させる行為は、第1のホイールのみを第1の回転方向に回転させ、第2のホイールを第1の回転方向とは反対の第2の回転方向に回転させ、それにより、第1のプルワイヤの張力を増大させ、第2のプルワイヤの張力を減少させて、それによって、シャフトの遠位部分が第1の平面から離れて第1の角度方向に湾曲し得るようにするステップを含み得る。
【0027】
特定の実施形態では、差動機構を作動させてシャフトの遠位部分を第1の平面から離れる方向に湾曲させる行為は、第2のホイールのみを第1の回転方向に回転させ、第1のホイールを第2の回転方向に回転させ、それにより、第2のプルワイヤの張力を増大させ、第1のプルワイヤの張力を減少させ、それによって、シャフトの遠位部分が第1の平面から離れて第2の角度方向に湾曲し得るようにするステップをさらに含み得る。
【0028】
特定の実施形態では、差動機構を作動させてシャフトの遠位部分を第1の平面から離れる方向に湾曲させる行為により、シャフトの遠位部分は第1の平面に垂直な第2の平面内で湾曲し得る。
【0029】
本発明の前述した目的、特徴、および利点ならびに他の目的、特徴、および利点は、添付図面を参照してなされる、以下の詳細な説明から、さらに明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】一実施形態による代表的な送達器具の斜視図を示す。
図2図1に描かれた送達器具の遠位部分の断面側面立面図を示す。
図3A】一実施形態による、図2の線3-3に沿った、図1に描かれた送達器具の断面図を示す。
図3B】別の実施形態による、図2の線3-3に沿った、図1に描かれた送達器具の断面図を示す。
図4図1に描かれた送達器具のハンドルに含まれる操縦機構の平面図を示す。
図5図4に描かれた操縦機構の斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
特定の実施形態では、医療装置、ツール、物質、または他の治療を、被験者の身体内部の場所に送達するのに使用され得る、操縦可能な医療器具は、1つまたは複数の操縦可能なカテーテルおよび/またはシースを含み得る。操縦可能なカテーテルおよびシースが有用である処置の例としては、心血管、神経学、泌尿器、婦人科、生殖力(例えば、体外受精、人工授精)、腹腔鏡検査、関節鏡検査、経食道、経膣、経膀胱、経直腸の処置、および、任意の身体導管または空洞におけるアクセスを含む処置が含まれる。具体的な例としては、ステント、グラフト、塞栓コイルなどを含む、インプラントの設置;撮像装置および/または超音波トランスデューサーを含むその構成要素の位置付け;ならびに、例えば砕石術を行うためのエネルギー源、RF源、超音波エミッター、電磁波源、レーザー光源、熱源などの位置付けが含まれる。特定の実施形態では、操縦可能な医療器具は、人工心臓弁などの植え込み可能な医療装置を、患者の脈管構造を通して患者の心臓まで送達するように構成された送達器具である。よって、以下の説明は、操縦可能な送達器具に関して行われる。しかしながら、本明細書に開示される実施形態は、患者に対して医療処置を実行するために患者の身体に挿入可能である、任意の操縦可能な医療器具に組み込まれ得ることを理解されたい。
【0032】
いくつかの実施形態では、送達器具は、操縦可能なシャフト、例えば、1つまたは複数の送達カテーテルが内部に同軸に配されたガイドシースを含む。特定の構成では、送達カテーテルは、人工心臓弁などの植え込み可能な医療装置を拡張させるために、1つもしくは複数のバルーンまたは別のタイプの拡張装置を、その遠位端部に、またはその付近に含み得る。
【0033】
典型的には、送達装置は、操縦可能なセクションにしっかりと固定された遠位端部と、身体の外側の送達装置のハンドル上に位置する調節ノブに動作的に接続された近位端部と、を有するプルワイヤを利用する。プルワイヤは、典型的には、送達装置、例えばシースまたはカテーテルの、壁内またはこれに隣接して長手方向に延びるプルワイヤ内腔内に配される。調節ノブを調節する、例えばノブを回転させると、牽引力がプルワイヤに加えられ、プルワイヤが操縦可能なセクションを曲げる。
【0034】
いくつかの送達装置は、操縦可能なセクションを多次元に湾曲させることができるように、複数のプルワイヤを利用する。例えば、いくつかの送達装置は、2つのプルワイヤを有し、これらはそれぞれ、操縦可能なセクションにしっかりと連結された遠位端部を有し、2つのプルワイヤの遠位端部は、角度をつけて互いから離間されている。各プルワイヤの近位端部は、ハンドル上のそれぞれの調節ノブに動作的に接続されて、プルワイヤの張力を調節することができる。したがって、両方のプルワイヤに張力をかけると、操縦可能なセクションが第1の平面内で屈曲することができる(例えば、ハンドルに向かって後方に湾曲する)が、プルワイヤのうちの一方の張力を増大させると共に、他方のプルワイヤの張力を解放すると、操縦可能なセクションが第1の平面を横断する第2の平面内で屈曲することができる(例えば、横向きに湾曲する)。
【0035】
二重プルワイヤを備えた多くの送達装置の1つの問題は、操縦可能なセクションを所望の方向に屈曲させるためには各プルワイヤが独立して調節されなければならないことである。例えば、操縦可能なセクションを第1の平面内で屈曲させるためには、等しい張力が両方のプルワイヤに加えられることを確実にするのは困難となり得る。操縦可能なセクションを第2の平面内で屈曲させるためには、一方のプルワイヤにおける張力の増大は、他方のプルワイヤにおける張力の減少によって適切に相殺され得ない。したがって、送達装置の操縦精度は、制御するのが困難となり得る。さらに、2つのプルワイヤに対して独立した調節機構を有することにより、送達装置のデザインの複雑さおよび寸法外形(dimensional profile)が増大し得る。よって、デザインおよび操縦性が改善された送達装置に対する必要性が存在する。
【0036】
図1を参照すると、送達器具10は、一実施形態によると、ハンドル12と、ハンドルから遠位に延びるシャフト14と、を含む。シャフト14は、近位部分16および遠位部分18を有する。シャフト14の近位部分16はハンドル12に連結され得る。ハンドル12は、以下でさらに説明するように、シャフト14を位置付け、かつ/または操作するように構成され得る。
【0037】
図示されていないが、送達器具10は、シャフト14内部に同軸に配され、かつ/またはシャフト14を取り囲み、これに対して移動可能である、1つまたは複数のカテーテルを含み得る。例えば、送達器具10は、シャフト14の上に延び、かつシャフト14に対して長手方向に移動可能である、外側シースを含み得る。送達器具は、シャフト14の中央内腔30内部に同軸に配され、かつこれに対して移動可能なインプラントカテーテルとして構成された、内側カテーテルも有することができ、インプラントカテーテルは、インプラントカテーテルの遠位端部上に装着された、バルーンで膨張可能または自己拡張可能な人工心臓弁を有し得る。人工心臓弁およびインプラントカテーテルの例示的な構成は、米国特許出願公開第2013/0030519号、同2012/0123529号、同2010/0036484号、同2010/0049313号、同2010/0239142号、同2009/0281619号、同2008/0065011号、および同2007/0005131号にさらに開示されている。さらに、送達器具10は、さまざまな他の植え込み可能な装置、例えばドッキング装置、弁尖クリップ(leaflet clips)などのいずれかを送達するのに使用され得ることを理解されたい。
【0038】
図2を参照すると、シャフト14は、側壁32によって囲まれた中央内腔30を有し得る。シャフト14の側壁32は、いくつかの実施形態では、可撓性の、軸方向に非圧縮性の材料および/または構造で作られ得る。いくつかの実施形態では、シャフト14は、中央内腔および側壁32を形成するように押し出された、押出ポリマーチューブとすることができる。別の実施形態では、側壁32は、螺旋コイルを含み得、これは、望ましくは、クローズドピッチコイル(closed pitch coil)であり、コイルの軸方向圧縮を回避するため、コイルの隣り合う巻きの間に間隔がない。このコイルは、任意の適切な生体適合性金属、ポリマー、またはそれらの組合せで作られ得る。シャフトは、コイルの内側表面の上を延びる内側ポリマー層、および/または、コイルの外側表面の上を延びる外側ポリマー層を含み得る。
【0039】
代替的な実施形態では、側壁32は、細長いスロット付きチューブ(例えば、金属チューブ)を含み得、これは、チューブの長さに沿って(例えばレーザー切断によって)形成された、軸方向に離間し、周方向に延びる複数のスロットを有する。スロット付きチューブの例示的な構成は、米国特許出願公開第2015/0305865号に記載されている。
【0040】
別の例では、側壁32は、編組金属層で補強されたポリマーチューブ、例えば編組ステンレス鋼層で補強されたポリイミドチューブを含み得る。いくつかの実施形態では、内側ポリマー層が、編組層の内側表面に固定され得、かつ/または、外側ポリマー層が、編組層の外側表面に固定され得る。
【0041】
図2および図3A図3Bに示すように、シャフト14は、側壁32に形成されたそれぞれのプルワイヤ導管24、26内に配され、かつそれらを通って長手方向に延びる、複数のプルワイヤ20、22をさらに含み得る。プルワイヤ20、22は、シャフト14の遠位部分18の湾曲を制御および/または操作するのに使用され得る。プルワイヤ導管24、26は、シャフト14の近位部分16および遠位部分18を少なくとも部分的に通って延びることができる。
【0042】
図3A図3Bに示すように、プルワイヤ導管24、26は、中央内腔30に対して偏心的に配され、シャフト14の遠位部分18において互いに対して周方向に離間され得る。
【0043】
いくつかの実施形態では、プルワイヤ導管24、26は、シャフト14の全長にわたって、互いから空間的に離間されている。あるいは、プルワイヤ導管24、26は、シャフト14の近位部分16において互いに結合されるが、シャフト14の遠位部分18において別々に枝分かれすることができる。言い換えれば、プルワイヤ20、22は、シャフト14の近位部分16に沿って同じ内腔を共有するが、シャフト14の遠位部分18において、別々の長手方向に延びるプルワイヤ導管24、26を通って延びることができる。
【0044】
他の実施形態では、プルワイヤ導管24、26は、近位部分16の近くのシャフト14の側壁32上に開口部を有し得、それによって、プルワイヤ20、22の近位部分は、ハンドル12の内側に位置する操縦機構38に接続される前に、そのような開口部を通ってシャフト14の外側に延びることができる。プルワイヤ導管の他の構成は、米国特許出願公開第2016/0158497号に記載されている。近位部分16におけるプルワイヤ導管24、26の構成にかかわらず、プルワイヤ導管24、26は、シャフト14の遠位部分18に沿って互いに実質的に平行とすることができる。
【0045】
いくつかの実施形態では、中央内腔30および/またはプルワイヤ導管24、26は、内腔/導管の内側表面を覆う低摩擦および/または可撓性ライナー(図示せず)を有し得、ライナーは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、または別の適切な材料を含み得る。
【0046】
第1のプルワイヤ20の近位端部20aおよび第2のプルワイヤ22の近位端部22aは、ハンドル12の操縦機構38に接続され得る。以下でさらに十分に説明するように、操縦機構38は、プルワイヤ20、22の張力を選択的に増大および/または減少させて、例えば、シャフト14の遠位部分18の湾曲を調節するように構成され得る。
【0047】
いくつかの実施形態では、シャフト14の遠位部分18は、シャフト14の近位部分16より相対的に可撓性の材料から構築され得、かつ/または、別様に、シャフト14の近位部分16より相対的に可撓性になるように構築され得、それによって、近位部分16の湾曲は、以下でさらに説明するように、遠位部分18の湾曲がプルワイヤ20、22によって張力を加えられることにより調節された場合に、実質的に不変のままとなり得る。シャフト14の構築、ハンドル12、および/またはプルワイヤの張力の調節に関するさらなる詳細は、米国特許出願公開第2013/0030519号、同2009/0281619号、同2008/0065011号、および同2007/0005131号に記載されている。
【0048】
図2を参照すると、シャフト14の遠位端部28は、低デュロメータの非外傷性先端部として形成され得、これは、特定の実施形態では放射線不透過性とすることができる。第1のプルワイヤ20の遠位端部20bおよび第2のプルワイヤ22の遠位端部22bは、シャフト14の遠位部分18に連結され得る。特定の実施形態では、第1のプルワイヤ20の遠位端部20bおよび第2のプルワイヤ22の遠位端部22bは、シャフト14の遠位端部28において、同じかまたは少なくとも実質的に同じ軸方向場所に連結され得る。例えば、いくつかの実施形態では、プルワイヤ20、22の遠位端部20b、22bは、シャフト14の遠位端部28の近位に隣接したプルリング34にしっかりと固定され得る。シャフト14の遠位部分18と同軸とすることができる、プルリング34は、プルワイヤ導管24、26の遠位端部において、またはそれに隣接して、シャフト14に埋め込まれるか、または別様に固定され得る。
【0049】
図3A図3Bは、プルワイヤ導管24、26(よって、プルワイヤ20、22)をシャフト14の遠位部分18に沿って角度をつけて位置付ける例示的な実施形態を示す。例示された実施形態では、プルワイヤ導管24、26は、シャフト14の側壁32内部に配される。他の実施形態では、プルワイヤ導管24、26は、例えば、側壁32の内部または外部表面に隣接して、異なる場所を有し得る。
【0050】
シャフト14の遠位部分18に沿って、第1のプルワイヤ導管24は、シャフト14の中心軸36から半径方向に第1のプルワイヤ導管24まで延びる第1の軸B1に沿って位置付けられ得る。第2のプルワイヤ導管26は、シャフト14の中心軸36から半径方向に第2のプルワイヤ導管26まで延びる第2の軸B2に沿って位置付けられ得る。図示のように、プルワイヤ導管24、26は、軸B1と軸B2との間の角度(α)だけ角度をつけて互いから離間され得る。
【0051】
図3Aに描く実施形態では、角度αは、約180°とすることができる(すなわち、プルワイヤ20、22の遠位端部20b、22bは、中心軸36に対して互いに直径方向に向かい合っている)。
【0052】
図3Bに描く他の実施形態では、角度αは、0°超かつ180°未満の任意の角度とすることができる。いくつかの実施形態では、角度αは、約90°~約150°とすることができる。図示する実施形態では、角度αは約120°である。
【0053】
以下でさらに十分に説明するように、図3A図3Bに描くような二重ワイヤ構成により、シャフト14の遠位部分18は三次元(3D)空間内の複数の平面上でさまざまな方向に屈曲し、シャフト14の遠位端部28(および非外傷性先端部)を正確かつ都合よく位置付け、整列させることができる。
【0054】
図4図5を参照すると、操縦機構38の動作が示されている。前述したように、プルワイヤ20、22の近位端部20a、22aは、操縦機構38に連結され得る。いくつかの実施形態では、操縦機構は、ハンドル12の内側に配され得る。
【0055】
操縦機構38は、心棒46によって接続された第1のスプールまたはホイール40および第2のスプールまたはホイール42を含み得る。具体的には、第1のホイール40および第2のホイール42は、心棒46上に位置する差動機構44によって動作的に連結され得る。
【0056】
差動機構44は、駆動シャフトと、第1の出力シャフトと、第2の出力シャフトと、駆動シャフトと、第1および第2の出力シャフトとを連結するギアトレーンと、を含み得る。差動機構44は、例えば、第1および第2の出力シャフトが共にかつ/または個別に回転することを可能にし得る。差動機構44は、例えば、第1および第2の出力シャフトが共に同じ方向に、かつ/または互いに対してそれぞれ反対方向に回転することを可能にし得る。差動機構44は、さまざまな手段によって構築および/または実装され得、受動的または能動的のいずれであってもよい。例えば、いくつかの実施形態では、差動機構44は、オープン・ディファレンシャル、ロッキング(例えば、選択的ロック可能)ディファレンシャル、またはリミテッド・スリップ・ディファレンシャルとすることができる。本明細書で説明するように、すべての既知のディファレンシャルが、操縦機構38において使用され得、それらは、本開示の範囲内とみなされる。
【0057】
特定の一実施形態では、差動機構44の第1の出力シャフトは、第1のホイール40に連結され得、差動機構44の第2の出力シャフトは、第2のホイール42に連結され得る。したがって、操縦機構38は、第1のホイール40および第2のホイール42を選択的に回転させることによって、第1のプルワイヤ20および第2のプルワイヤ22の張力を調節することができる。
【0058】
図4に示すように、第1のプルワイヤ20の近位端部20aは、第1のホイール40に連結され得、第2のプルワイヤ22の近位端部22aは、第2のホイール42に連結され得る。第1のプルワイヤ20および第2のプルワイヤ22は、それぞれ、第1のホイール40および第2のホイール42に巻かれるか、または巻き付けられ得る。例示された実施形態では、プルワイヤ20、22は、概して、同じ方向、例えば、時計回りまたは反時計回りに巻かれるか、または巻き付けられる。
【0059】
第1の動作モードでは、概ね等しい張力が、両方のホイール40、42を同じ方向に回転させることによって、両方のプルワイヤ20、22に加えられ得る。これは、例えば差動機構44の駆動シャフトを回転させることによって、達成され得る。特定の実施形態では、ロッキング・ディファレンシャルおよび/またはリミテッド・スリップ・ディファレンシャルは、駆動シャフトが回転するにつれて両方のホイール40、42が共に同じ方向に回転することを確実にすることによって、両方のプルワイヤにおける等しい張力を維持するのを助けることができる。
【0060】
例えば、図4に示すように、第1のホイール40および第2のホイール42の両方を第1の回転方向D1(例えば、時計回り)に回転させると、プルワイヤ20、22がホイール40、42上に巻き付けられて、プルワイヤ20、22の張力を増大させることができる。これにより、シャフト14の遠位部分18は、図3A図3Bに示すように、第1の平面P1内で第1の角度方向Uに湾曲することができる。
【0061】
逆に、第1のホイール40および第2のホイール42の両方を第1の回転方向D1とは反対の第2の回転方向D2(例えば、反時計回り)に回転させると、プルワイヤ20、22がホイール40、42からほどかれ、プルワイヤ20、22の張力を減少させることができる。これにより、シャフト14の遠位部分18は、図3A図3Bに示すように、第1の平面P1内で第1の角度方向Uとは反対の第2の角度方向Dに湾曲することによって、シャフト14の静止構成に戻ることができる。
【0062】
第1のホイール40および第2のホイール42を共に同じ方向に回転させることによってプルワイヤ20、22の張力を同時に調節する代わりに、またはそれに加えて、プルワイヤ20、22の張力は、操縦機構38をシャフト14に対して長手方向に並進運動させることによって、同時に調節され得る。例えば、差動機構44の駆動シャフトおよび/または心棒46に接続される独立した駆動シャフトは、心棒46をシャフト14に対して遠位および/または近位に並進運動させる(例えば、スライドさせる)ように構成され得る。第1のホイール40および第2のホイール42が心棒46によって連結されているので、心棒46の遠位または近位への動きにより、ホイール40、42の対応する遠位または近位への動きが生じる。プルワイヤ20、22の近位端部20a、22aがホイール40、42に接続されているので、シャフト14に対するホイール40、42の近位への動き(例えば、図4の示される矢印D1によって示す方向への長手方向の動き)は、プルワイヤ20、22の張力を増大させ得るが、シャフトに対するホイール40、42の遠位への動き(例えば、図4の矢印D2によって示す方向への長手方向の動き)は、プルワイヤ20、22の張力を減少させ得る。
【0063】
前述したように、導管24、26は、シャフト14の遠位部分18に沿って互いに実質的に平行とすることができる。したがって、遠位部分18における第1のプルワイヤ20および第2のプルワイヤ22は、互いに実質的に平行とすることができ、それによって、これらは第2の平面P2を画定し得る。
【0064】
プルワイヤ20、22の遠位端部20b、22bが中心軸36に対して互いに直径方向に向かい合っている、図3Aに描かれた実施形態では、第2の平面P2は、中心軸36において第1の平面P1に交差し得る。さらに、第2の平面P2は、第1の平面P1に対して実質的に垂直とすることができる。
【0065】
シャフト14の遠位部分18は、両方のプルワイヤ20、22に張力がかけられたときに遠位部分18が第1の角度方向Uに湾曲することを可能にする、付勢構造を有し得る。例えば、第1の角度方向Uに面する遠位部分18の側壁エリアは、反対側の(すなわち、第2の角度方向Dに面する)側壁エリアより低いデュロメータを有し得る。さまざまな構造が、そのようなデュロメータ差を達成するために利用され得る。例えば、遠位部分18の向かい合った側壁は、異なる材料、または異なる密度、もしくは異なる構造(例えば、遠位部分18は、スロットが第1の角度方向Uに面する側壁エリア上に位置するスロット付きチューブ部分を有し得る)を有する同じ材料、またはそれらの任意の組合せを使用することにより構築され得る。
【0066】
プルワイヤ20、22の遠位端部20b、22bが180°未満の角度だけ角度をつけて互いから離間されている、図3Bに描かれた実施形態では、第2の平面P2は、中心軸36に対して偏心した場所で第1の平面P1に交差し得る。さらに、第2の平面P2は、第1の平面P1に対して実質的に垂直とすることができる。
【0067】
シャフト14の遠位部分18は、両方のプルワイヤ20、22に張力がかけられたときに第1の角度方向Uに湾曲するように固有のバイアスを有し得る。プルワイヤ20、22の遠位端部20b、22bが第1の角度方向Uに沿って中心軸36の同じ側に配されているので、両方のプルワイヤ20、22に張力をかけることにより、中心軸36から離れて第1の角度方向Uに曲げ力を生成し得る。
【0068】
特定の実施形態では、遠位部分18は、中立または静止構成にあるときに、直線状とすることができる。両方のプルワイヤ20、22における張力を増大させると、シャフト14の遠位部分18は第1の角度方向Uに屈曲することができ、よって、シャフト14の遠位端部28をハンドル12に向かってわずかに近位に動かす。他方、プルワイヤ20、22における張力を解放すると、遠位部分18は第2の角度方向Dに直線状になり、シャフト14の遠位端部28をハンドル12から離れてわずかに遠位に動かすことができる。
【0069】
代替的な実施形態(図示せず)では、遠位部分18は、中立構成にあるとき、事前に湾曲され得る(例えば、方向Dに湾曲する)。そのような実施形態では、両方のプルワイヤ20、22における張力を増大させると、遠位部分18は、直線状になり、かつ/または方向Uに屈曲することができるが、張力を減少させると、シャフト14の遠位部分18は、その事前に湾曲した中立構成に戻ることができる(例えば、方向Dに湾曲する)。
【0070】
第2の動作モードでは、張力が、プルワイヤ20、22のうちの一方のみに加えられ得るが、他方のプルワイヤの張力が減少される。これは、一方のプルワイヤが巻かれると同時に他方のプルワイヤがほどけるように、例えば、ホイール40、42をそれぞれ反対の方向に回転させることによって、達成され得る。その結果、シャフト14の遠位部分18は、第1の平面P1から離れて湾曲し得る。
【0071】
例えば、図5に示すように、差動機構44により、第1のホイール40のみを第1の回転方向D1(例えば、時計回り)に回転させると、第2のホイール42が第1の回転方向D1とは反対の第2の回転方向D2(例えば、反時計回り)に同時に回転し得る。これにより、第1のプルワイヤ20の張力が増大し、第2のプルワイヤ22の張力が減少し得る。その結果、シャフト14の遠位部分18は、第1の平面P1から離れて第1の角度方向Lに湾曲し得る(例えば、図3A図3Bを参照のこと)。
【0072】
逆に、第2のホイール42のみを第1の回転方向D1(例えば、時計回り)に回転させると、第1のホイール40が第2の回転方向D2(例えば、反時計回り)に同時に回転し得る。これにより、第1のプルワイヤ20の張力が減少し、第2のプルワイヤ22の張力が増大し得る。その結果、シャフト14の遠位部分18は、第1の平面P1から離れて第2の角度方向Rに湾曲し得る(例えば、図3A図3Bを参照のこと)。第2の角度方向Rは、第1の角度方向Lとは概ね反対とすることができる。
【0073】
プルワイヤ20、22の遠位端部20b、22bが中心軸36に対して互いに直径方向に向かい合っている、図3Aに描かれた実施形態では、ホイール40、42をそれぞれ反対方向に回転させると、シャフト14の遠位部分18は、第1の平面P1に垂直な第2の平面P2内で湾曲し得る。言い換えれば、第1の角度方向Lおよび第2の角度方向Rは第2の平面P2内にあってよく、中心軸36から離れてそれぞれ反対の方向(例えば、図3Aではそれぞれ左および右)を指す。
【0074】
プルワイヤ20、22の遠位端部20b、22bが180°未満の角度だけ角度をつけて互いから離間されている、図3Bに描かれた実施形態では、ホイール40、42をそれぞれ反対の方向に回転させると、中心軸36に対するプルワイヤ20、22の偏心性により、シャフト14の遠位部分18は、第1の平面P1から離れて非垂直的に湾曲することができる。
【0075】
例えば、第1の角度方向Lは、第1の平面P1内の第1の成分L1(例えば、図3Bでは上)と、第2の平面P2内の第2の成分L2(例えば、図3Bでは左)と、に分解され得る。同様に、第2の角度方向Rは、第1の平面P1内の第1の成分R1(例えば、図3Bでは上)と、第2の平面P2内の第2の成分R2(例えば、図3Bでは右)と、に分解され得る。第2の成分L2およびR2は、第2の平面P2内部にあり、中心軸36から離れてそれぞれ反対の方向(例えば、図3Bではそれぞれ左および右)を指し、第1の成分L1およびR1は、第2の平面P2から離れ、同じ方向(例えば、図3Bでは上)を指す。
【0076】
特定の実施形態では、シャフト14の遠位部分18は、中立または静止構成にあるときに直線状とすることができる。プルワイヤのうちの一方のみの張力を増大させると同時に他方のプルワイヤの張力を減少させると、遠位部分18は、第1の平面P1から離れて1つの角度方向(例えば、LまたはR)に湾曲することができる。プルワイヤの張力印加および/または張力解除を逆転させることで、シャフト14の遠位部分18がその直線状構成に戻り、かつ/または、第1の平面P1から離れて反対の角度方向に湾曲することを可能にし得る。
【0077】
代替的な実施形態(図示せず)では、遠位部分18は、中立構成にあるときに、事前に湾曲され得る(例えば、方向LまたはRに向かって湾曲する)。プルワイヤのうちの一方のみの張力を増大させると同時に他方のプルワイヤの張力を減少させると、遠位部分18が反対の角度方向(例えば、RまたはL)に屈曲することができ、遠位部分18を直線状にするか、または、その中立の、事前に湾曲された構成に対して反対側に向かって湾曲させる。プルワイヤの張力印加および/または張力解除を逆転させることで、遠位部分18がその事前に湾曲された構成に戻り、かつ/または、その中立の、事前に湾曲された構成を越えて湾曲することを可能にし得る。
【0078】
送達器具10は、作動機構48を含み得、これは、ハンドル12上に位置付けられ、操縦機構38に動作可能に連結され得る。作動機構48は、複数の動作モードで動作され得る。例えば、作動機構48を第1の動作モードで作動させると、両方のホイール40、42が同じ方向に回転し、シャフト14の遠位部分18が第1の平面P1内で湾曲することができ、作動機構48を第2の動作モードで作動させると、ホイール40、42が互いに対してそれぞれ反対の方向に回転し、シャフト14の遠位部分18が第1の平面P1から離れて湾曲することができる。
【0079】
図1に描かれた例示的な実施形態では、作動機構48は、第1の作動機構50および第2の作動機構52を含む。第1の作動機構50は、操縦機構38に動作的に連結され得、それによって、第1の作動機構50を動作させると、第1のホイール40および第2のホイール42の両方が第1または第2の回転方向(すなわち、D1もしくはD2)のいずれかに選択的に回転することができる。第2の作動機構52は、操縦機構38に動作的に連結され得、それによって、第2の作動機構52を動作させると、ホイール40、42のうちの一方のみが第1の回転方向D1に選択的に回転することができ、その結果、他方のホイールが第2の回転方向D2に同時に回転する。
【0080】
第1の作動機構50および第2の作動機構52のユーザーインターフェースは、図1に描かれるような回転可能なノブの形態をとることができる。例えば、第1の作動機構50の時計回り(または反時計回り)の回転は、両方のプルワイヤ20、22の張力を同時に増大させ得るが、そのノブの反時計回り(または時計回り)の回転は、両方のプルワイヤ20、22の張力を同時に減少させ得る。別の例では、第2の作動機構52の時計回り(または反時計回り)の回転は、プルワイヤ20の張力を増大させると同時にプルワイヤ22の張力を減少させ得るが、そのノブの反時計回り(または時計回り)の回転は、プルワイヤ22の張力を増大させると同時にプルワイヤ20の張力を減少させ得る。
【0081】
しかしながら、作動機構48のユーザーインターフェースは、押しボタン、操作レバー、音声制御式アクチュエータなどといった任意の他の形態をとり得ることを理解されたい。図1に描かれる実施形態は、2つの独立した回転可能なノブを示しているが、作動機構48のユーザーインターフェースは、単一ユニットへと統合され得るか、または代わりに、3つ以上のユニットの集合を含み得ることを理解されたい。1つの例示的な非限定的実施形態(図示せず)では、作動機構48のユーザーインターフェースは、4つのボタン、すなわち、両方のプルワイヤ20、22の張力を増大させるように構成された第1のボタンと、両方のプルワイヤ20、22の張力を減少させるように構成された第2のボタンと、プルワイヤ20の張力を増大させ、プルワイヤ22の張力を減少させるように構成された第3のボタンと、プルワイヤ22の張力を増大させ、プルワイヤ20の張力を減少させるように構成された第4のボタンと、を含み得る。
【0082】
図示されていないが、作動機構48と操縦機構38との間の動作的連結は、さまざまな形態をとることもできることを理解されたい。例えば、第1の作動機構50は、差動機構44の駆動シャフトによって操縦機構38に連結され得る。第1の作動機構50を作動させると、駆動シャフト、および差動機構44の内側の駆動ギアが回転することができ、よって、第1および第2の出力シャフトが時計回りまたは反時計回りに回転する。その結果、両方のホイール40、42は、第1および第2の出力シャフトと同じ方向に回転することができ、両方のプルワイヤ20、22の張力を増大または減少させ得る。代わりに、第1の作動機構50は、それぞれのホイール40、42にプルワイヤを同時に巻き付けるか、またはほどくことによって、両方のプルワイヤ20、22の張力を直接増大または減少させることができる。第2の作動機構52は、出力シャフトおよび/またはホイール40、42のうちの一方のみを選択的に駆動することができるように、操縦機構38に連結され得る。例えば、第2の作動機構52は、1つのみのホイールを1つの回転方向(D1またはD2)に駆動するように構成され得、他方のホイールを差動機構44により反対方向に回転させる。
【0083】
いくつかの実施形態では、送達器具10は、プルワイヤ20、22それぞれの引張力をそれぞれ測定する少なくとも2つのセンサー(図示せず)をさらに含み得る。それらのセンサーは、ハンドル12上に位置付けられた1つまたは複数のインジケータ(図示せず)に動作的に連結され得る。インジケータは、針インジケータ、LEDライト、デジタルディスプレイなどといった、さまざまな形態をとり得る。このようなインジケータは、それぞれのセンサーによって測定された各プルワイヤの張力に関して、ユーザが知覚できるフィードバックおよび情報をオペレーターに提供するのに使用され得る。よって、オペレーターは、作動機構48を通じて各プルワイヤの張力を調節することによって、シャフト14の遠位部分18の屈曲を正確に制御することができる。
【0084】
総論
開示された実施形態は、人工装置を送達して心臓の生来の弁輪(例えば、肺弁輪、僧帽弁輪、および三尖弁輪)のいずれかに植え込むように適合され得、さまざまな送達アプローチ(例えば、逆行性、順行性、経中隔、経心室、経心房など)のいずれかと共に使用され得ることを理解されたい。
【0085】
この説明の目的で、本開示の実施形態の特定の態様、利点、および新奇な特徴が本明細書に記載される。開示された方法、器具、およびシステムは、決して限定するものとして解釈すべきではない。代わりに、本開示は、単独の、また互いのさまざまな組合せおよび部分的組合せにおける、開示されるさまざまな実施形態のすべての新奇かつ非自明な特徴および態様に向けられている。方法、器具、およびシステムは、任意の特定の態様もしくは特徴またはそれらの組合せに限定されず、開示される実施形態は、任意の1つもしくは複数の特定の利点が存在するか、または問題が解決されることを必要とするわけでもない。任意の例からのテクノロジーは、その他の例のうちの任意の1つまたは複数に記載されたテクノロジーと組み合わせられ得る。開示されるテクノロジーの原理が適用され得る多くの可能な実施形態に鑑みて、例示される実施形態は単に好適な例であり、開示されるテクノロジーの範囲を限定するものとして理解すべきでないことを、認識されたい。
【0086】
開示される実施形態のうちのいくつかの動作は、提示に好都合なように特定の順序で記載されているが、この記載方式は、特定の順序化が以下に記載する特定の言葉によって必要とされない限り、並べ替えを包含することを理解されたい。例えば、連続して記載される動作は、場合によっては、並べ替えられるか、または同時に実行され得る。さらに、単純化のため、添付図面は、開示される方法が他の方法と共に使用され得る、さまざまな方法を示すわけではない可能性がある。さらに、説明では、開示される方法を説明するために「提供する」または「達成する」のような用語を使用することがある。これらの用語は、実行される実際の動作の高レベルな抽象的概念である。これらの用語に対応する実際の動作は、特定の実装に応じて変化する場合があり、また、当業者には容易に識別され得る。
【0087】
本出願および特許請求の範囲で使用される、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈で明確に他の規定がなされていない限り、複数形を含む。さらに、用語「含む(includes)」は「含む(comprises)」を意味する。さらに、用語「連結された(coupled)」および「接続された(connected)」は、概して、電気的、電磁的、および/または物理的に(例えば、機械的もしくは化学的に)連結されるかもしくはリンクされることを意味し、特に逆の言葉がなければ、連結されるかまたは関連付けられたアイテム間にある中間要素の存在を排除するものではない。
【0088】
方向および他の相対的指示(例えば、内側、外側など)は、図面および本明細書中の原理の論考を容易にするのに使用され得るが、限定することを意図していない。例えば、「内側」、「外側」、「内部」、「外部」などといった特定の用語が使用され得る。このような用語は、適用可能な場合、特に例示される実施形態に関して、相対的な関係を論じる際に説明をいくらか明確にするために使用される。しかしながら、このような用語は、絶対的関係、位置、および/または向きを意味することを意図していない。本明細書で使用される、「および/または」は、「および」または「または」、ならびに「および」および「または」を意味する。
【0089】
本開示の原理が適用され得る多くの可能な実施形態に鑑みて、例示される実施形態は単なる例であり、特許請求される主題の範囲を限定するものとして理解すべきでないことを、認識されたい。むしろ、特許請求される主題の範囲は、以下の特許請求の範囲およびそれらの等価物によって定義される。
【0090】
本願には、下記の発明も提示される。
[項1]
近位部分および遠位部分を含むシャフトと、
近位端部および遠位端部を有する第1のプルワイヤであって、前記第1のプルワイヤの前記遠位端部は、前記シャフトの前記遠位部分に連結されている、第1のプルワイヤと、
近位端部および遠位端部を有する第2のプルワイヤであって、前記第2のプルワイヤの前記遠位端部は、前記シャフトの前記遠位部分に連結されている、第2のプルワイヤと、
前記シャフトの前記近位部分に連結され、操縦機構を含むハンドルであって、前記操縦機構は、差動機構によって動作的に連結された第1のホイールおよび第2のホイールを含む、ハンドルと、を含み、前記第1のプルワイヤの前記近位端部は前記第1のホイールに連結され、前記第2のプルワイヤの前記近位端部は前記第2のホイールに連結され、
前記第1および第2のホイールの両方を第1の回転方向に回転させると、前記第1および第2のプルワイヤの張力が増大され、それによって、前記シャフトの前記遠位部分は、第1の平面内で第1の角度方向に湾曲し、
前記第1のホイールのみを前記第1の回転方向に回転させると、前記第2のホイールが前記第1の回転方向とは反対の第2の回転方向に回転し、前記第1のプルワイヤの張力が増大され、前記第2のプルワイヤの張力が減少され、それによって、前記シャフトの前記遠位部分は、前記第1の平面から離れて第2の角度方向に湾曲する、操縦可能な医療器具。
[項2]
前記第1および第2のホイールの両方を前記第2の回転方向に回転させると、前記第1および第2のプルワイヤの張力が減少され、それによって、前記シャフトの前記遠位部分は、前記第1の平面内で前記第1の角度方向とは反対の第3の角度方向に湾曲する、項1に記載の器具。
[項3]
前記第2のホイールのみを前記第1の回転方向に回転させると、前記第1のホイールが前記第2の回転方向に回転し、前記第2のプルワイヤの張力が増大され、前記第1のプルワイヤの張力が減少され、それによって、前記シャフトの前記遠位部分は、前記第1の平面から離れて前記第2の角度方向とは反対の第4の角度方向に湾曲する、項1または2に記載の器具。
[項4]
前記第1および第2のプルワイヤの前記遠位端部は、180°だけ角度をつけて互いから離間されている、項1から3のいずれか一項に記載の器具。
[項5]
前記第2の角度方向および前記第4の角度方向は、前記第1の平面に対して実質的に垂直な第2の平面内にある、項4に記載の器具。
[項6]
前記第1のプルワイヤの前記遠位端部および前記第2のプルワイヤの前記遠位端部は、前記シャフトの遠位端部から等しい距離だけ離間している、項1から5のいずれか一項に記載の器具。
[項7]
第1のプルワイヤ導管および第2のプルワイヤ導管をさらに含み、これらはそれぞれ、少なくとも部分的に前記シャフトの前記近位部分および前記遠位部分を通って延び、前記第1のプルワイヤは、前記第1のプルワイヤ導管を通って延び、前記第2のプルワイヤは、前記第2のプルワイヤ導管を通って延びる、項1から6のいずれか一項に記載の器具。
[項8]
前記ハンドルは、前記操縦機構に動作的に連結された第1の作動機構を含み、それによって、前記第1の作動機構を動作させると、前記第1および第2のホイールの両方が前記第1または第2の回転方向に選択的に回転し得る、項1から7のいずれか一項に記載の器具。
[項9]
前記ハンドルは、前記操縦機構に動作的に連結された第2の作動機構を含み、それによって、前記第2の作動機構を動作させると、前記第1または第2のホイールのみが前記第1の回転方向に選択的に回転し得る、項1から8のいずれか一項に記載の器具。
[項10]
前記第1のプルワイヤの前記遠位端部および前記第2のプルワイヤの前記遠位端部は、前記シャフトの長手方向軸に対してある角度だけ角度をつけて互いから離間され、前記角度は、0°超かつ180°未満である、項1から9のいずれか一項に記載の器具。
[項11]
近位部分および遠位部分を含むシャフトと、
近位端部および遠位端部を有する第1のプルワイヤであって、前記第1のプルワイヤの前記遠位端部は、前記シャフトの前記遠位部分に連結されている、第1のプルワイヤと、
近位端部および遠位端部を有する第2のプルワイヤであって、前記第2のプルワイヤの前記遠位端部は、前記シャフトの前記遠位部分に連結されている、第2のプルワイヤと、
差動機構によって動作的に連結された第1のホイールおよび第2のホイールを含む操縦機構であって、前記第1のプルワイヤの前記近位端部は、前記第1のホイールに連結され、前記第2のプルワイヤの前記近位端部は、前記第2のホイールに連結されている、操縦機構と、
前記操縦機構に動作可能に連結された作動機構と、を含み、
前記作動機構を第1の動作モードで作動させると、前記第1および第2のホイールが同じ方向に回転し、前記シャフトの前記遠位部分が第1の平面内で湾曲し、
前記作動機構を第2の動作モードで作動させると、前記第1および第2のホイールがそれぞれ反対の方向に回転し、前記シャフトの前記遠位部分が前記第1の平面から離れて湾曲する、操縦可能な医療器具。
[項12]
前記第1および第2のホイールの両方を第1の回転方向に回転させると、前記第1および第2のプルワイヤの張力が増大され、それによって、前記シャフトの前記遠位部分は、前記第1の平面内で第1の角度方向に湾曲する、項11に記載の器具。
[項13]
前記第1および第2のホイールの両方を前記第1の回転方向とは反対の第2の回転方向に回転させると、前記第1および第2のプルワイヤの張力が減少され、それによって、前記シャフトの前記遠位部分は、前記第1の平面内で前記第1の角度方向とは反対の第2の角度方向に湾曲する、項12に記載の器具。
[項14]
前記第1のホイールのみを第1の回転方向に回転させると、前記第2のホイールが前記第1の回転方向とは反対の第2の回転方向に回転し、前記第1のプルワイヤの張力が増大され、前記第2のプルワイヤの張力が減少され、それによって、前記シャフトの前記遠位部分は、前記第1の平面から離れて第1の角度方向に湾曲する、項11に記載の器具。
[項15]
前記第2のホイールのみを前記第1の回転方向に回転させると、前記第1のホイールが前記第2の回転方向に回転し、前記第2のプルワイヤの張力が増大され、前記第1のプルワイヤの張力が減少され、それによって、前記シャフトの前記遠位部分は、前記第1の平面から離れて前記第1の角度方向とは反対の第2の角度方向に湾曲する、項14に記載の器具。
[項16]
前記第1のプルワイヤの前記遠位端部および前記第2のプルワイヤの前記遠位端部は、前記シャフトの遠位端部から等しい距離だけ離間している、項11から15のいずれか一項に記載の器具。
[項17]
第1のプルワイヤ導管および第2のプルワイヤ導管をさらに含み、これらはそれぞれ、少なくとも部分的に前記シャフトの前記近位部分および前記遠位部分を通って延び、前記第1のプルワイヤは、前記第1のプルワイヤ導管を通って延び、前記第2のプルワイヤは、前記第2のプルワイヤ導管を通って延びる、項11から16のいずれか一項に記載の器具。
[項18]
前記第1のプルワイヤの前記遠位端部および前記第2のプルワイヤの前記遠位端部は、前記シャフトの長手方向軸に対してある角度だけ角度をつけて互いから離間され、前記角度は、0°超かつ180°未満である、項11から17のいずれか一項に記載の器具。
[項19]
前記第1のプルワイヤの前記遠位端部および前記第2のプルワイヤの前記遠位端部は、180°だけ角度をつけて互いから離間されている、項11から17のいずれか一項に記載の器具。
[項20]
前記作動機構を前記第2の動作モードで作動させると、前記シャフトの前記遠位部分が、前記第1の平面に垂直な第2の平面内で湾曲する、項19に記載の器具。
[項21]
送達器具を被験者の脈管構造内で操縦する方法であって、
前記送達器具の差動機構を作動させて前記送達器具のシャフトの遠位部分を第1の平面内で湾曲させるステップと、
前記差動機構を作動させて前記シャフトの前記遠位部分を前記第1の平面から離れる方向に湾曲させるステップと、を含む、方法。
[項22]
前記差動機構は、第1のホイールと第2のホイールとを動作的に連結し、前記第1のホイールは第1のプルワイヤに連結され、前記第2のホイールは第2のプルワイヤに連結される、項21に記載の方法。
[項23]
前記差動機構を作動させて前記送達器具の前記シャフトの前記遠位部分を前記第1の平面内で湾曲させる行為は、前記第1および第2のホイールの両方を第1の回転方向に回転させて前記第1および第2のプルワイヤの張力を増大させ、それによって、前記シャフトの前記遠位部分が前記第1の平面内で第1の角度方向に湾曲するようにするステップを含む、項22に記載の方法。
[項24]
前記差動機構を作動させて前記送達器具の前記シャフトの前記遠位部分を前記第1の平面内で湾曲させる行為は、前記第1および第2のホイールの両方を前記第1の回転方向とは反対の第2の回転方向に回転させて前記第1および第2のプルワイヤの張力を減少させ、それによって、前記シャフトの前記遠位部分が前記第1の平面内で前記第1の角度方向とは反対の第2の角度方向に湾曲するようにするステップをさらに含む、項23に記載の方法。
[項25]
前記差動機構を作動させて前記シャフトの前記遠位部分を前記第1の平面から離れる方向に湾曲させる行為は、前記第1のホイールのみを第1の回転方向に回転させ、前記第2のホイールを前記第1の回転方向とは反対の第2の回転方向に回転させ、それにより、前記第1のプルワイヤの張力を増大させ、前記第2のプルワイヤの張力を減少させて、それによって、前記シャフトの前記遠位部分が前記第1の平面から離れて第1の角度方向に湾曲するようにするステップを含む、項22に記載の方法。
[項26]
前記差動機構を作動させて前記シャフトの前記遠位部分を前記第1の平面から離れる方向に湾曲させる行為は、前記第2のホイールのみを前記第1の回転方向に回転させ、前記第1のホイールを前記第2の回転方向に回転させ、それにより、前記第2のプルワイヤの張力を増大させ、前記第1のプルワイヤの張力を減少させ、それによって、前記シャフトの前記遠位部分が前記第1の平面から離れて第2の角度方向に湾曲するようにするステップをさらに含む、項25に記載の方法。
[項27]
前記差動機構を作動させて前記シャフトの前記遠位部分を前記第1の平面から離れる方向に湾曲させる行為は、前記シャフトの前記遠位部分を前記第1の平面に垂直な第2の平面内で湾曲させる、項22から26のいずれか一項に記載の方法。
【符号の説明】
【0091】
10 送達器具
12 ハンドル
14 シャフト
16 近位部分
18 遠位部分
20 プルワイヤ
20a 近位端部
20b 遠位端部
22 プルワイヤ
22a 近位端部
22b 遠位端部
24 プルワイヤ導管
26 プルワイヤ導管
28 遠位端部
30 中央内腔
32 側壁
34 プルリング
36 中心軸
38 操縦機構
40 第1のホイール
42 第2のホイール
44 差動機構
46 心棒
48 作動機構
50 第1の作動機構
52 第2の作動機構
B1 第1の軸
B2 第2の軸
D 第2の角度方向
D1 第1の回転方向
D2 第2の回転方向
L 第1の角度方向
L1 第1の成分
L2 第2の成分
P1 第1の平面
P2 第2の平面
R 第2の角度方向
R1 第1の成分
R2 第2の成分
U 第1の角度方向
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
【外国語明細書】