(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023120464
(43)【公開日】2023-08-30
(54)【発明の名称】画像形成装置及びノイズキャンセル方法
(51)【国際特許分類】
G03G 15/00 20060101AFI20230823BHJP
G03G 21/14 20060101ALI20230823BHJP
G03G 15/02 20060101ALI20230823BHJP
B41J 29/00 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
G03G15/00 303
G03G21/14
G03G15/02 102
B41J29/00 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022023341
(22)【出願日】2022-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147304
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 知哉
(74)【代理人】
【識別番号】100148493
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 浩二
(72)【発明者】
【氏名】大塚 雅之
【テーマコード(参考)】
2C061
2H200
2H270
【Fターム(参考)】
2C061AP01
2C061AQ06
2C061BB08
2C061CP09
2H200GA12
2H200GA23
2H200GA34
2H200HA02
2H200HB12
2H200HB22
2H200HB48
2H200JA02
2H200JC03
2H200NA06
2H200NA08
2H200NA09
2H200NA10
2H200PB02
2H200PB38
2H270KA09
2H270KA32
2H270LA04
2H270LA18
2H270LA64
2H270LA98
2H270LA99
2H270LD05
2H270LD09
2H270LD11
2H270LD14
2H270MA02
2H270MA40
2H270MB11
2H270MB25
2H270MB28
2H270MB32
2H270MB39
2H270MB41
2H270MB43
2H270MB45
2H270NC01
2H270ZC03
2H270ZC04
2H270ZC05
(57)【要約】
【課題】センサが電磁部材の近傍に配置されている場合でも、ノイズが抑制された正確なセンサ出力値を検出できる画像形成装置及びノイズキャンセル方法を提供する。
【解決手段】画像形成装置は、交流電流成分を周囲に出力する電磁部材と、前記電磁部材の近傍に設けられたセンサと、前記交流電流成分の周波数と、前記センサのサンプリング周期とに基づいて、目標サンプリング回数を算出する目標回数算出部と、前記センサが連続して出力した前記目標サンプリング回数分のセンサ出力値に基づいて、前記センサ出力値の実効値を算出する実効値算出部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電流成分を周囲に出力する電磁部材と、
前記電磁部材の近傍に設けられたセンサと、
前記交流電流成分の周波数と、前記センサのサンプリング周期とに基づいて、目標サンプリング回数を算出する目標回数算出部と、
前記センサが連続して出力した前記目標サンプリング回数分のセンサ出力値に基づいて、前記センサ出力値の実効値を算出する実効値算出部と、
を備えた画像形成装置。
【請求項2】
前記実効値算出部は、前記目標サンプリング回数分のセンサ出力値の平均値を、前記センサ出力値の実効値として算出する、
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記実効値算出部は、前記目標サンプリング回数分のセンサ出力値の中央値を、前記センサ出力値の実効値として算出する、
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記目標回数算出部は、
前記交流電流成分の周波数f(Hz)に対応するノイズ周期をλ(ms)、前記センサのサンプリング周期をsp(ms)としたとき、以下の数式を満たす目標サンプリング時間であるsp_tm(ms)を算出し、
sp_tm=Mod(λ,sp)/(λ-Mod(λ,sp))+sp
前記目標サンプリング回数をNとしたとき、以下の数式を満たすNを算出する、
N=sp_tm/sp(但し、Nはsp_tm/spの小数点以下を切り捨てた正の整数)
請求項1から3の何れかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
像担持体を備え、
前記電磁部材は、直流電圧と交流電圧との重畳バイアスが印加され、前記像担持体を接触して帯電させる帯電装置である、
請求項1から4の何れかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記像担持体は、中間転写ベルトにトナー像を転写する感光体ドラムであり、
前記センサは、前記中間転写ベルトに転写されたトナー像であるパッチを測定するプロコンセンサである、
請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
交流電流成分を周囲に出力する電磁部材と、前記電磁部材の近傍に設けられたセンサと、を備えた画像形成装置のノイズキャンセル方法であって、
前記交流電流成分の周波数と、前記センサのサンプリング周期とに基づいて、目標サンプリング回数を算出し、
前記センサが連続して出力した前記目標サンプリング回数分のセンサ出力値に基づいて、前記センサ出力値の実効値を算出する、
ノイズキャンセル方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像形成装置及びノイズキャンセル方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式、静電記録方式等によって画像形成を行う画像形成装置において、感光体の表面を帯電させる手法として接触帯電方式が知られている(例えば、特許文献1参照)。接触帯電方式では、ローラ型の帯電部材を感光体の表面に接触配置または近接配置し、この帯電部材に直流電圧と交流電圧との重畳バイアスを印加することによって、感光体の表面を均一に帯電させる。
【0003】
画像形成装置に設けられたセンサに対する電磁気の影響を抑制する手法として、電子部品から発生する電磁気がセンサに到達しないように、この電磁気を金属板の電磁シールドによって遮断することが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-87855号公報
【特許文献2】特開2021-30517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のような接触帯電方式の画像形成装置では、帯電部材が重畳バイアスの交流電流成分(AC成分)を周囲に出力する。このようにAC成分を出力する電磁部材の近傍にセンサが配置されると、電磁部材から出力されるAC成分がセンサに作用して、センサ信号にノイズを生じるおそれがある。
【0006】
そこで、センサに対するAC成分の影響を抑制するため、特許文献2のようにAC成分を電磁シールドによって遮断することが考えられる。しかしながら、画像形成装置に電磁シールドを設けると、画像形成装置の製造コスト及び重量が増加するおそれがある。また、電磁シールドを設けた場合でも、漏れ電磁波がセンサに影響を与えるおそれがある。
【0007】
本開示の一態様は、センサが電磁部材の近傍に配置されている場合でも、ノイズが抑制された正確なセンサ出力値を検出できる画像形成装置及びノイズキャンセル方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る画像形成装置は、交流電流成分を周囲に出力する電磁部材と、前記電磁部材の近傍に設けられたセンサと、前記交流電流成分の周波数と、前記センサのサンプリング周期とに基づいて、目標サンプリング回数を算出する目標回数算出部と、前記センサが連続して出力した前記目標サンプリング回数分のセンサ出力値に基づいて、前記センサ出力値の実効値を算出する実効値算出部と、を備える。
【0009】
本開示の一態様に係るノイズキャンセル方法は、交流電流成分を周囲に出力する電磁部材と、前記電磁部材の近傍に設けられたセンサと、を備えた画像形成装置のノイズキャンセル方法であって、前記交流電流成分の周波数と、前記センサのサンプリング周期とに基づいて、目標サンプリング回数を算出し、前記センサが連続して出力した前記目標サンプリング回数分のセンサ出力値に基づいて、前記センサ出力値の実効値を算出する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】画像形成装置の装置構成を説明するための図である。
【
図2】画像形成装置の機能構成を説明するための図である。
【
図3】プロセスコントロール処理のフローチャートである。
【
図4】ノイズキャンセルを説明するためのグラフである。
【
図5】ノイズキャンセルに関する計算結果の一例である。
【
図6】ノイズキャンセルに基づくパッチの長さを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、図面については、同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0012】
[画像形成装置の装置構成]
図1は、画像形成装置1の装置構成を説明するための図である。画像形成装置1は、読み取った原稿の画像データやネットワーク等を介して送信された画像データに基づいて、用紙に多色および単色の画像を形成する。画像形成装置1は、露光ユニット3、中間転写ベルト11、クリーニングユニット12、画像形成部13A~13D、二次転写ローラ14、定着装置15、用紙搬送路P1~P3、用紙カセット16、手差し給紙トレイ17、排紙トレイ18、センサ20等を備えている。
【0013】
画像形成部13A~13Dは、ブラック(K)及びカラー画像を色分解して得られる減法混色の3原色であるシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の4色の各色相に対応した画像データを用いて画像形成を行う。画像形成部13A~13Dは、何れも同様の構成であり、中間転写ベルト11の移動方向(副走査方向)に沿って一列に並ぶ。画像形成部13A~13Dの各々は、感光体ドラム101、現像装置102、帯電ローラ103、クリーニングユニット104、一次転写ローラ105等を含む。
【0014】
帯電ローラ103は、像担持体である感光体ドラム101の表面を所定の電位に均一に帯電させる接触方式の帯電装置である。帯電ローラ103には、例えば電源回路によって交流成分を含む電力が供給される。電源回路は、直流電圧に交流電圧を重畳した電圧を、帯電ローラ103に供給する。このように直流電圧と交流電圧との重畳バイアスが印加されることで、帯電ローラ103の表面と感光体ドラム101との間に電位差が発生する。帯電ローラ103の表面と感光体ドラム101との電位差が所定値以上になると放電が生じ、感光体ドラム101が帯電する。
【0015】
一方、重畳バイアスが印加される帯電ローラ103から、その重畳バイアスの交流電流成分(AC成分)が周囲に出力される。即ち、本実施形態の帯電ローラ103は、交流電流成分を周囲に出力する電磁部材である。この電磁部材は、直流電圧と交流電圧との重畳バイアスが印加され、像担持体を接触して帯電させる帯電装置である。
【0016】
露光ユニット3は、図示しない半導体レーザ、ポリゴンミラー4及び第一反射ミラー7及び第二反射ミラー8等を含む。露光ユニット3は、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエローの各色相の画像データによって変調されたレーザビーム等の光ビームのそれぞれを、各画像形成部13A~13Dの感光体ドラム101に照射する。各画像形成部13A~13Dの感光体ドラム101には、それぞれブラック、シアン、マゼンタ及びイエローの各色相の画像データによる静電潜像が形成される。
【0017】
現像装置102は、静電潜像が形成された感光体ドラム101の表面にトナーを供給し、静電潜像をトナー像に現像する。各画像形成部13A~13Dの現像装置102は、それぞれブラック、シアン、マゼンタ及びイエローの各色相のトナーを収納している。各画像形成部13A~13Dでは、現像装置102が感光体ドラム101に形成された各色相の静電潜像を、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエローの各色相のトナー像に顕像化する。クリーニングユニット104は、現像・画像転写後における感光体ドラム101上の表面に残留したトナーを除去・回収する。
【0018】
感光体ドラム101の上方に配置されている中間転写ベルト11は、駆動ローラ11Aと従動ローラ11Bとの間に張架されてループ状の移動経路を形成している。各画像形成部13A~13Dでは、中間転写ベルト11を挟んで感光体ドラム101と対向する位置に、一次転写ローラ105が配置されている。中間転写ベルト11が感光体ドラム101と対向する位置が、一次転写位置である。
【0019】
一次転写ローラ105には、感光体ドラム101の表面に担持されたトナー像を中間転写ベルト11上に転写するために、トナーの帯電極性と逆極性の一次転写バイアスが定電圧制御によって印加される。各画像形成部13A~13Dの一次転写位置において、感光体ドラム101に形成された各色相のトナー像が中間転写ベルト11の外周面に順次重ねて転写される。これにより中間転写ベルト11の外周面にフルカラーのトナー像が形成される。
【0020】
但し、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの色相の一部のみの画像データが入力された場合には、各画像形成部13A~13Dの感光体ドラム101のうち、入力された画像データの色相に対応する一部の感光体ドラム101のみにおいて静電潜像及びトナー像の形成が行われる。例えば、モノクロ画像形成時には、ブラックの色相に対応した感光体ドラム101のみにおいて静電潜像の形成及びトナー像の形成が行われ、中間転写ベルト11の外周面にはブラックのトナー像のみが転写される。
【0021】
中間転写ベルト11の外周面に転写されたトナー像は、中間転写ベルト11の回転によって、中間転写ベルト11と二次転写ローラ14との対向位置である二次転写位置に搬送される。用紙カセット16又は手差し給紙トレイ17から給紙された用紙が二次転写ローラ14と中間転写ベルト11との間を通過する際に、二次転写ローラ14にトナーの帯電極性とは逆極性の高電圧が印加される。これによって、中間転写ベルト11の外周面から用紙の表面にトナー像が転写される。
【0022】
トナー像が転写された用紙は、定着装置15に導かれ、加熱ローラ15A,15Bの間を通過して加熱及び加圧を受ける。これによりトナー像が、用紙の表面に定着する。トナー像が定着した用紙は、排紙ローラ18Aによって排紙トレイ18上に排出される。なお、感光体ドラム101から中間転写ベルト11に付着したトナーのうち、用紙上に転写されずに中間転写ベルト11上に残存したトナーは、次工程での混色を防止するために、クリーニングユニット12によって回収される。
【0023】
センサ20は、帯電ローラ103の近傍に設けられている。換言するとセンサ20は、帯電ローラ103の周囲にあり、且つ帯電ローラ103から出力されるAC成分がセンサ20に作用する範囲内にある。本実施形態では、帯電ローラ103が交流電流成分を周囲に出力する電磁部材であるため、センサ20は電磁部材の近傍に設けられている。
【0024】
中間転写ベルト11の搬送方向において、各画像形成部13A~13Dのうちで最下流側にあるのは、ブラックの画像形成部13Aである。センサ20は、ブラックの画像形成部13Aよりも下流側、且つ二次転写位置よりも上流側にある。センサ20は、中間転写ベルト11の外周面に転写されたトナー像の光学反射濃度を測定する光センサである。
【0025】
また画像形成装置1は、感光体ドラム101や現像剤の劣化、環境条件の変化などの影響を受けて印刷画質が変化してしまうことを防止するため、所定のタイミングで画質調整(プロセスコントロール)を実行する。センサ20は、プロセスコントロールにおいて中間転写ベルト11に形成されるテストパターンであるパッチの光学反射濃度を測定するプロコンセンサである。
【0026】
画像形成装置1には、用紙カセット16に収納されている用紙を、二次転写位置及び定着装置15を経由して排紙トレイ18に送るための用紙搬送路P1が設けられている。用紙搬送路P1には、ピックアップローラ16A、レジストローラ19、及び排紙ローラ18Aが配置されている。ピックアップローラ16Aは、用紙カセット16内の用紙を用紙搬送路P1内に繰り出す。搬送ローラRは、繰り出された用紙を上方に向けて搬送する。レジストローラ19は、搬送されてきた用紙を所定のタイミングで二次転写位置に導く。
【0027】
また、画像形成装置1の内部には、手差し給紙トレイ17からレジストローラ19に至る間に、ピックアップローラ17A及び搬送ローラRを配置した用紙搬送路P2が形成されている。ピックアップローラ17Aは、手差し給紙トレイ17内の用紙を用紙搬送路P2内に繰り出す。
【0028】
排紙ローラ18Aから用紙搬送路P1におけるレジストローラ19の上流側に至る間には、用紙搬送路P3が形成されている。両面画像形成における第一面の画像形成時には、排出ローラ18aは用紙の後端が定着装置15を通過するまで駆動された後、その用紙を用紙搬送路P3内に導くように反転する。これにより、第一面のみに画像が形成された用紙が表裏面及び前後端を反転した状態で用紙搬送路P1に導かれ、第二面の画像形成が行われる。
【0029】
[画像形成装置の機能構成]
図2は、画像形成装置1の機能構成を説明するための図である。画像形成装置1は、画像形成装置1を制御する制御部200を備える。制御部200は、例えばCPU及びメモリを含むコントローラである。制御部200は、MCU(Micro Control Unit)又はMPU(Micro Processor Unit)でもよいし、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、その他の演算機能を有する回路でもよい。
【0030】
画像形成装置1では、制御部200のCPUがメモリに記憶されるプログラムを実行することで、
図2に例示する各機能ブロックが実現される。これらの機能ブロックは、画像形成処理部201、画質調整部202、目標回数算出部203、実効値算出部204を含む。これらの機能ブロックは、予め回路として組み込まれてもよい。
【0031】
画像形成処理部201は、印刷ジョブに基づく印刷処理を実行して、上述した手順によって用紙に画像を形成する。画質調整部202は、所定のタイミングでプロセスコントロールを実行する。例えば所定のタイミングは、積算印刷枚数が規定枚数に達した場合や、温度又は湿度の変化が閾値を越えた場合等である。
【0032】
目標回数算出部203は、交流電流成分の周波数と、センサ20のサンプリング周期とに基づいて、目標サンプリング回数を算出する。実効値算出部204は、センサ20が連続して出力した目標サンプリング回数分のセンサ出力値に基づいて、センサ出力値の実効値を算出する。これらの機能ブロックの具体的な処理態様は、後述する。
【0033】
[プロセスコントロール処理の実施態様]
図3を参照して、本実施形態の画像形成装置1で実行されるプロセスコントロール処理を説明する。
図3は、プロセスコントロール処理のフローチャートである。画像形成装置1の制御部200は、先述したプロセスコントロールを実行するタイミングで、以下のプロセスコントロール処理を開始する。
【0034】
図3に示すように、プロセスコントロール処理が開始されると、S301において制御部200は、AC成分のノイズ周期を決定する。ノイズ周期は、帯電ローラ103に印加される重畳バイアスのAC成分の周波数に対応する周期である。
【0035】
本例の画像形成装置1は、帯電ローラ103に印加される重畳バイアスのAC周波数を変えることで、感光体ドラム101の表面に生じる電位の大きさを制御できる。一方、感光体ドラム101に目標電位を生じさせるAC周波数は、感光体ドラム101の劣化や周囲環境の温度及び湿度に応じて異なる。
【0036】
そこで制御部200は、感光体ドラム101の使用履歴、温度センサによって検出した周囲温度、及び湿度センサによって検出した周囲湿度の少なくとも一つに応じて、目標電位を生じさせるAC周波数を決定する。例えば、これらの使用履歴、周囲湿度、周囲湿度の少なくとも一つに対応して、感光体ドラム101に目標電位を生じさせるAC周波数を定めたテーブルが、制御部200のメモリに予め記憶されている。
【0037】
制御部200は、このテーブルを参照して、感光体ドラム101の使用履歴、周囲湿度、周囲湿度の少なくとも一つに対応するAC周波数を決定する。制御部200は、帯電ローラ103に重畳バイアスを印加する場合に、このように決定したAC周波数のAC成分を含む重畳バイアスを、電源回路から帯電ローラ103に印加する。
【0038】
S301において制御部200は、上記のようにテーブルを参照してAC周波数を決定し、この決定したAC周波数を周期に変換することで、このAC周波数に対応するノイズ周期を決定する。
【0039】
S303において目標回数算出部203は、S301で決定されたノイズ周期と、サンプリング周期とに基づいて、目標サンプリング時間を算出する。サンプリング周期は、センサ20による対象物の測定時において毎回のサンプリングが実行される時間間隔であり、換言すると一のセンサ出力値が出力されてから次のセンサ出力値が出力されるまでの時間間隔である。目標サンプリング時間は、センサ20がパッチの測定時にサンプリングを連続して実行する時間の長さの目標値である。
【0040】
本例では、センサ20のサンプリング周期が、制御部200のメモリに予め記憶されている。目標回数算出部203は、制御部200のメモリからサンプリング周期を取得すればよい。これに代えて目標回数算出部203は、センサ20のサンプリング周期を測定することで、サンプリング周期を取得してもよい。
【0041】
一例として、目標回数算出部203は、重畳バイアスのAC成分の周波数f(Hz)に対応するノイズ周期をλ(ms)、センサ20のサンプリング周期をsp(ms)としたとき、以下の(数1)を満たす目標サンプリング時間であるsp_tm(ms)を算出する。
sp_tm=Mod(λ,sp)/(λ-Mod(λ,sp))+sp・・・(数1)
【0042】
なお、本実施形態では、サンプリング周期spの一周期とノイズ周期λの複数周期とが同期しないように、サンプリング周期spとノイズ周期λとの少なくとも一つが、sp/λが整数とはならない値に調整されている。
【0043】
S305において目標回数算出部203は、S303で算出された目標サンプリング時間に基づいて、目標サンプリング回数を算出する。目標サンプリング回数は、センサ20がパッチの測定時に実行するサンプリングの目標回数である。一例として、目標回数算出部203は、目標サンプリング回数をNとしたとき、以下の(数2)を満たすNを算出する。
N=sp_tm/sp(但し、Nはsp_tm/spの小数点以下を切り捨てた正の整数)・・・(数2)
【0044】
S307において画質調整部202は、画像形成部13A~13D等を制御して、像担持体にパッチを印刷する。詳細には、画質調整部202は、S303で算出された目標サンプリング時間と、プロセス速度とに基づいて、パッチの長さを算出する。プロセス速度は、像担持体にトナー像が形成される印刷速度であり、本例では像担持体の移動速度(即ち、帯電ローラ103の回転速度及び中間転写ベルト11の搬送速度)と同義である。一例として、画質調整部202は、プロセス速度をprs(mm/s)、パッチの長さの下限値である最小パッチサイズをL(mm)としたとき、以下の(数2)を満たすLを算出する。
L=sp_tm×prs・・・(数3)
【0045】
画質調整部202は、像担持体の移動方向におけるパッチの長さが最小パッチサイズ以上となるように、帯電ローラ103を介して中間転写ベルト11にパッチのトナー像を形成する。中間転写ベルト11に形成されたパッチは、中間転写ベルト11の搬送に伴って、センサ20の測定光が照射される測定位置を通過する。
【0046】
S309において画質調整部202は、センサ20等を制御して、像担持体に印刷されたパッチを測定する。詳細には、センサ20は、測定位置を通過するパッチに光照射して光学反射濃度を測定し、その光学反射濃度を示すセンサ出力値をサンプリング周期毎に出力する。画質調整部202は、センサ20から出力されるセンサ出力値を取得し、これらのセンサ出力値を測定日時と関連付けて、制御部200のメモリに記憶する。
【0047】
S311において実効値算出部204は、S305で算出された目標サンプリング回数分のセンサ出力値に基づいて、センサ出力値の実効値を算出する。詳細には、実効値算出部204は、目標サンプリング回数分のセンサ出力値を、制御部200のメモリから読み出す。目標サンプリング回数分のセンサ出力値は、S309で測定された最新のセンサ出力値と、この最新のセンサ出力値から測定日時順で連続する直近のセンサ出力値とで構成される。
【0048】
実効値算出部204は、読み出した目標サンプリング回数分のセンサ出力値の平均値を算出し、最新のセンサ出力値の実効値として出力する。実効値算出部204は、実効値を例えば最新の測定日時と関連付けて、制御部200のメモリに記憶する。なお、実効値算出部204は、目標サンプリング回数分のセンサ出力値が制御部200のメモリに記憶されていない場合、S311をスキップする。
【0049】
S313において画質調整部202は、パッチ測定が終了したかを判断する。中間転写ベルト11に形成されたパッチがセンサ20の測定位置を移動している場合、画質調整部202はパッチ測定が終了していないと判断する。この場合、画質調整部202は、前回のパッチ測定からサンプリング周期が経過した場合、処理をS309に戻して最新のパッチ測定を実行する。これにより、サンプリング周期毎にパッチ測定が実行され、その時点における最新の実効値が出力される。
【0050】
中間転写ベルト11に形成されたパッチの全体がセンサ20の測定位置を通過した場合、画質調整部202はパッチ測定が終了したと判断する。この場合、画質調整部202は、S309のパッチ測定を終了して、S315において画質調整を実行する。詳細には、画質調整部202は、制御部200のメモリに記憶されているセンサ出力値の実効値に基づいて、パッチの光学反射濃度を特定する。画質調整部202は、制御部200のメモリに記憶されている画像形成条件(例えば現像バイアス)を、パッチの光学反射濃度に応じて変更する。
【0051】
S315の実行後、プロセスコントロール処理が終了される。その後、画像形成装置1で画像印刷が行われる場合、画像形成処理部201は、制御部200のメモリに記憶されている変更後の画像形成条件に基づいて、濃度及び階調の少なくとも一つが調整された画像を用紙に形成する。
【0052】
[ノイズキャンセルの具体例]
図4~
図6を参照して、プロセスコントロール処理によるセンサ20のノイズキャンセルを具体的に説明する。
図4は、ノイズキャンセルを説明するためのグラフである。
図5は、ノイズキャンセルに関する計算結果の一例である。
図6は、ノイズキャンセルに基づくパッチの長さを説明するための図である。
【0053】
図4及び
図6では、帯電ローラ103に印加される重畳バイアスのAC成分のMAX電圧を「1」、MIN電圧を「-1」、MAX電圧とMIN電圧との中央値を「0」に換算した場合において、AC成分の波形を実線で示す。重畳バイアスのAC成分は、帯電ローラ103の近傍にあるセンサ20に影響を与えるノイズ振幅として作用する。センサ20がノイズ振幅の影響を受けると、センサ20のセンサ出力値は本来の測定値とは異なる値を示す。
【0054】
図4及び
図6では、センサ20のセンサ出力値を、点▲で示す。点▲は、現実に出力されるセンサ出力値に対する、ノイズ振幅の影響の大きさを表す。点▲がノイズ振幅「0」から大きく離れているほど、センサ出力値に対するノイズ振幅の影響が大きく、本来の測定値とのズレが大きいことを示す。センサ出力値の点▲は、ノイズ振幅の上下範囲(-1.00~1.00)で影響を受ける。
【0055】
図5に示すように、本例では重畳バイアスのAC成分の周波数fが1950(Hz)であり、センサ20のサンプリング周期spは1.000(ms)である。本例のプロセスコントロール処理(
図3参照)では、S301において、AC成分の周波数fが周期に変換されて、ノイズ周期λが0.513(ms)と決定される。この場合、サンプリング周期spとノイズ周期λとは異なる周期であるため、センサ出力値に対するノイズ振幅の影響の大きさが経時的に変化する。その結果、
図4及び
図6に示すように、経時的に並ぶ複数の点▲は、ノイズ振幅の波形W1よりも周期が大きい波形W2を描く。
【0056】
S303において、目標サンプリング時間sp_tmが(数1)に基づいて決定される。以下では、(数1)の技術的意義を、
図5の例に基づいて具体的に説明する。
【0057】
Mod(λ,sp)は、ノイズ周期λをサンプリング周期spで除算した余り時間示し、これにより0.487(ms)が算出される。
λ-Mod(λ,sp)は、サンプリング周期spとノイズ周期λとが同期するのに足りない時間を示し、これにより0.026が算出される。
Mod(λ,sp)/(λ-Mod(λ,sp))は、サンプリング周期spの波形とノイズ周期λとが同期できる一周期の時間であり、これにより(18.73≒)19(ms)が算出される。
【0058】
上記のMod(λ,sp)/(λ-Mod(λ,sp))で算出された時間は、サンプリング周期spとノイズ周期λとが同期する始点を含む一方、サンプリング周期spとノイズ周期λとが同期する終点を含まない場合がある。そこで、この終点を含めた時間を目標サンプリング時間sp_tmとするために、更に1回分のサンプリング周期spを加算する。つまりMod(λ,sp)/(λ-Mod(λ,sp))+spは、目標サンプリング時間sp_tmを示し、これにより20.00(ms)が算出される。
【0059】
このようにS303において、ノイズ振幅の波形W1とセンサ出力値の波形W2とが同期する目標サンプリング時間sp_tmが算出される。さらにS305において、目標サンプリング回数Nが(数2)に基づいて決定される。(数2)によれば、目標サンプリング時間sp_tmをサンプリング周期spで除算する(但し、小数点以下は切り捨て)。これにより、目標サンプリング時間sp_tm内に実行されるサンプリングの回数である目標サンプリング回数Nが、20回と算出される。
【0060】
S307では、パッチの最小パッチサイズLが(数3)に基づいて算出される。本例では、プロセス速度prsは190(mm/s)であるため、目標サンプリング時間sp_tmとプロセス速度prsとを乗算した3.8(mm)が、最小パッチサイズLとして算出される。最小パッチサイズL以上のパッチが、中間転写ベルト11に形成される。
【0061】
S309では、センサ20によってパッチが測定される。パッチの長さは最小パッチサイズL以上であるため、センサ20がサンプリング周期sp毎にパッチを測定すると、目標サンプリング回数N以上の数量のセンサ出力値を検出できる。
【0062】
図4及び
図6の例では、目標サンプリング時間sp_tmは、先述のように算出された0.02(s)である。パッチの測定開始から目標サンプリング時間sp_tmに達するまでは、パッチを測定したセンサ出力値の数量が目標サンプリング回数N未満であるため、S311は実行されずにスキップされる。パッチの測定開始から目標サンプリング時間sp_tmに達した後は、パッチを測定したセンサ出力値の数量が目標サンプリング回数N以上であるため、S311が実行される。
【0063】
本例のS311では、センサ20がセンサ出力値を出力する毎に、そのセンサ出力値から起算して目標サンプリング回数N分のセンサ出力値の平均値が算出されて、最新のセンサ出力値の実効値として出力される。このように、パッチの測定開始から目標サンプリング時間sp_tmに達した後は、パッチの測定が終了するまで、センサ20がセンサ出力値を出力する毎に、最新のセンサ出力値の実効値が算出及び出力される。
【0064】
図4及び
図6では、S311で算出されるセンサ出力値の実効値を、点●で示す。点●は、ノイズ振幅「0」付近に配置され、実効値に対するノイズ振幅の影響が実質的にないことを示す。センサ出力値の実効値は、センサ出力値の波形W2の一周期(つまり目標サンプリング時間sp_tm)に取得された目標サンプリング回数N分のセンサ出力値を平均化したものである。これによりセンサ出力値の実効値は、AC成分に由来するノイズがキャンセルされており、本来の測定値とのズレが抑制される。
【0065】
S313においてパッチ測定が終了したと判断されると、S315が実行される。S315において、S311で算出されたセンサ出力値の実効値に基づいて、制御部200のメモリに記憶されている画像形成条件が変更される。センサ出力値の実効値は、AC成分に由来するノイズがキャンセルされているため、パッチの光学反射濃度を正確に表す。従って、センサ出力値の実効値に基づいて、正確なプロセスコントロールを実行して、画像形成装置1の印刷品質を向上できる。
【0066】
以上説明したように、本実施形態の画像形成装置1によれば、センサ20が電磁部材の近傍に配置されている場合でも、画像形成装置1の製造コスト及び重量を増加させることなく、ノイズが抑制された正確なセンサ出力値を検出できる。
【0067】
<備考>
本開示は、上記実施形態に限定されるものではなく、上記実施形態で示した構成と実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成で置き換えてもよい。
【0068】
画像形成装置1において、交流電流成分を周囲に出力する電磁部材は、帯電ローラ103に限定されず、他の電磁部材(例えば、電源回路)でもよい。帯電ローラ103によって帯電される感光体ドラム101も、交流電流成分を周囲に出力する場合がある。この場合、電磁部材は感光体ドラム101であってもよい。電磁部材の近傍に設けられたセンサ20は、プロコンセンサに限定されず、他の用途のセンサ(例えば、人感センサ)でもよい。
【0069】
S311において実効値算出部204は、目標サンプリング回数分のセンサ出力値の平均値に代えて、目標サンプリング回数分のセンサ出力値の中央値を、センサ出力値の実効値として算出してもよい。また実効値算出部204は、目標サンプリング回数の倍数分のセンサ出力値に基づいて、これらのセンサ出力値の平均値又は中央値を、センサ出力値の実効値として算出してもよい。
【0070】
本開示は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態に夫々開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。更に、各実施形態に夫々開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0071】
1 画像形成装置、20 センサ、101 感光体ドラム、103 帯電ローラ、203 目標回数算出部、204 実効値算出部