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  • 特開-検査治療用パンツ 図1
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  • 特開-検査治療用パンツ 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023120467
(43)【公開日】2023-08-30
(54)【発明の名称】検査治療用パンツ
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/12 20060101AFI20230823BHJP
【FI】
A41D13/12 154
A41D13/12 190
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022023352
(22)【出願日】2022-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】504155293
【氏名又は名称】国立大学法人島根大学
(74)【代理人】
【識別番号】100116861
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 義博
(72)【発明者】
【氏名】矢野 牧江
(72)【発明者】
【氏名】中村 守彦
【テーマコード(参考)】
3B011
【Fターム(参考)】
3B011AA05
3B011AB09
3B011AC22
(57)【要約】
【課題】操作性よく、患者の尊厳にも配慮した検査治療用パンツを提供すること。
【解決手段】 人の陰部を検査または治療する際に着用してもらう検査治療用パンツであって、下辺長が上辺長以上である台形様の布体を基調とし、上辺は所定長にわたり重なりを持った輪となっており、当該輪にはゴム紐111が縫着されて腰ゴム部11が形成され、重なりの中央が正中線に位置し、当該重なりに接合して輪の内側から下辺に向けて延伸する前垂部20を設け、検査または治療の直前の開脚時に下辺両側の布体部分を大腿部にそれぞれ巻き付け、検査時または治療時のみ前垂部20をめくり上げて陰部を露出させることを可能としたことを特徴とする検査治療用パンツ1。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人の陰部を検査または治療する際に着用してもらう検査治療用パンツであって、
下辺長が上辺長以上である長方形様ないし台形様の布体を基調とし、上辺は所定長にわたり重なりを持った輪となっており、当該輪にはゴム紐その他の伸縮部材が縫着または貼着されて腰ゴム部が形成され、
前記重なりの中央が正中線に位置し、当該重なりに接合して輪の内側から下辺に向けて延伸する所定幅の垂れ部を設け、
検査または治療の直前の開脚時に下辺両側の布体部分を大腿部にそれぞれ巻き付け、検査時または治療時のみ垂れ部をめくり上げて陰部を露出させることを可能としたことを特徴とする検査治療用パンツ。
【請求項2】
垂れ部の延伸長さを布体の略長方形高さまたは略台形高さとしたことを特徴とする請求項1に記載の検査治療用パンツ。
【請求項3】
前記重なりの外側もしくは内側と、垂れ部外側もしくは内側の所定位置とに、面ファスナーを備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の検査治療用パンツ。
【請求項4】
太ももに捲回して自身に結びつけ可能な長さの紐体を下辺両端にそれぞれ設けたことを特徴とする請求項1、2または3に記載の検査治療用パンツ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、泌尿器科等で陰部を検査または治療する際に患者に着用してもらうパンツに関し、特に、羞恥心を極力起こさせない、患者の尊厳に配慮した検査治療用パンツに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば婦人科や泌尿器科における検査時や治療時には、肛門に近い位置があけられている大腸内視鏡用の不織布パンツを代用し、前後逆にして更に横にカットを数カ所入れて使用している。
【0003】
しかしながら従来では、以下の問題点があった。
患者には、足台に脚を乗せて載石位をとってもらうが、カット部分が小さいと視野が取りづらく、十分に消毒や拭き取りができないなど、作業性が悪いという問題点があった。逆にカットが大きいと、移動時に陰部が外から見えてしまい、また、破れたものを履かされているという印象も持ってしまい、患者の心理的な抵抗が極めて高いという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-321330号
【特許文献2】特許第6832027号
【特許文献3】特開2019-023364号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記に鑑みてなされたものであって、操作性よく、患者の尊厳にも配慮した検査治療用パンツを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の検査治療用パンツは、人の陰部を検査または治療する際に着用してもらう検査治療用パンツであって、下辺長が上辺長以上である長方形様ないし台形様の布体を基調とし、上辺は所定長にわたり重なりを持った輪となっており、当該輪にはゴム紐その他の伸縮部材が縫着または貼着されて腰ゴム部が形成され、前記重なりの中央が正中線に位置し、当該重なりに接合して輪の内側から下辺に向けて延伸する所定幅の垂れ部を設け、検査または治療の直前の開脚時に下辺両側の布体部分を大腿部にそれぞれ巻き付け、検査時または治療時のみ垂れ部をめくり上げて陰部を露出させることを可能としたことを特徴とする。
【0007】
すなわち、請求項1にかかる発明は、検査治療時以外は三重に陰部が隠れ露出することなく、巻きスカート様として開脚にも追従しつつ、必要時にだけ陰部を簡便に露出させることができ、これにより、操作性よく、患者の尊厳にも配慮した検査、治療用パンツを提供することができる。
【0008】
布体の素材は透けるようなものでなければ特に限定されず、たとえば、不織布や紙とすることができる。また、布体は、一枚物である必要はない。立体裁断、立体縫製されていてもよい。
台形様とは広義であって下辺が上辺より長ければよく、下辺の端部は丸みがあってもよいものとする。また、斜辺も直線的でなく、曲線であってもよいものとする。大腿部に巻き付けやすい形状としあっても、台形様に含まれるものとする。
長方形様も同様に広義であって、角は丸みがあってもよく、短辺も直線的でなく曲線であってもよいものとする。大腿部に巻き付けやすい角ないし端部形状としてあっても、長方形様に含まれるものとする。
腰ゴム部はある程度幅があってよい。また、伸縮部材は全周にわたって逢着もしくは貼着されていなくてもよく、たとえば、重なり部分には伸縮部材を設けなくてもよい。逢着もしくは貼着は広義であって、ゴム紐が通し孔に通されているだけであって、自身に結びついて円を形成する態様も当然ながら含まれるものとする。
垂れ部も、長方形様ないし台形様の布体と同一素材の布体とすることができる。また、垂れ部は、たとえば、帯形状とすることができるが、これに限定されず、幅が変化してもよい。垂れ部は、前垂れ部または後ろ垂れ部、ということもできる。
重なりの中央が正中線に位置し、とは、重なりの中央が、体の正面中央または背面中央に位置することをいう。重なりの中央が、前身頃または後身頃の中心となり、と言い換えることもできる。
なお、子供や成人女性、成人男性、肥満体など考慮して、ウエストサイズやパンツ長さ(台形様布体の高さ、長方形様布体の高さ(短辺長さ))は、複数パタンあっても当然によい。
【0009】
請求項2に記載の検査治療用パンツは、請求項1に記載の検査治療用パンツにおいて、垂れ部の延伸長さを布体の略長方形高さまたは略台形高さとしたことを特徴とする。
【0010】
すなわち、請求項2にかかる発明は、検査時治療時直前まで、陰部を十全に被覆することができる。
【0011】
前垂部の長さ(≒パンツ長さ)は、概ね膝または膝上程度とすることができ、たとえば、30cm~60cmとすることができる。
【0012】
請求項3に記載の検査治療用パンツは、請求項1または2に記載の検査治療用パンツにおいて、前記重なりの外側もしくは内側と、垂れ部外側もしくは内側の所定位置とに、面ファスナーを備えたことを特徴とする。
【0013】
すなわち、請求項3にかかる発明は、検査時、治療時に垂れ部が戻ってくることなく、安定して視野を確保できる。肌に触れる態様である場合には、刺激の少ない面ファスナー側を用いる様にする。
【0014】
面ファスナーを取り付ける、前記重なり、の位置は略重なりの位置であって、若干下に位置していてもよいものとする。また、面ファスナーは、横長に取り付けるが、この部分の輪には伸縮部材を設けず、貼り合わせ性を高めてもよい。
所定位置とは、たとえば、延伸長さの半分の位置や上1/3の位置、下1/3の位置とすることができる。たとえば垂れ部外側に設け、この位置と重なり内側とで、垂れ部を腹部との間に折り込みながら貼り付け、折り返すようにすれば垂れ部の収容性および保持性が高まる。
【0015】
請求項4に記載の検査治療用パンツは、請求項1、2または3に記載の検査治療用パンツにおいて、太ももに捲回して自身に結びつけ可能な長さの紐体を下辺両端にそれぞれ設けたことを特徴とする。
【0016】
すなわち、請求項4にかかる発明は、大腿部への布の巻き付け安定性を高める。
【0017】
紐は適宜下辺に何カ所か仮接着して収容しておき、使用時に剥がすようにして用いることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、操作性よく、患者の尊厳にも配慮した検査治療用パンツを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の検査治療用パンツの本体部を展開した説明図である。
図2】本発明の検査治療用パンツの正面図である。
図3】本発明の検査治療用パンツの裾を広げた様子を示した説明図である。
図4】本発明の検査治療用パンツの検査時の着用の様子(a)と、前垂部の面ファスナーの貼着の様子と折り込みの様子(b)を示した説明図である。なお、陰部の描画は省略してある。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の検査治療用パンツの本体部を展開した説明図である。図2は、本発明の検査治療用パンツの正面図である。図3は、本発明の検査治療用パンツの裾を広げた様子を示した説明図である。図4は、本発明の検査治療用パンツの検査時の着用の様子を示した説明図である。
【0021】
以降では、検査治療用パンツを単にパンツと適宜称するものとする。また、検査または治療、という表現は、単に検査と表現するものとする。
【0022】
パンツ1は、大きく本体部10と、前垂部20と、により構成される。
【0023】
本体部10は、ポリエステル製の台形形状の不透明な不織布を用いて形成される。本実施の形態では、上辺(上底)、下辺(下底)、高さを、それぞれ、85cm、100cm、55cmとしている。ただし、台形はこの大きさに限定されず、SS,S,M,L,LL,3L、また、男女別にして、複数のサイズを適宜採用することができる。
【0024】
上辺部分については、左右10cmをそれぞれのこし、65cmにわたって長さ50cmのゴム紐111を縫い付ける。縫い付けに際しては、まず、上辺を高さ方向に二回折り返して長手方向に縫い合わせ、通し孔112を形成する。次に、通し孔112にゴム紐111を挿通して、上記の位置関係となるようにゴム紐111両端を通し孔112に縫い付ける(図1)。
また、上辺の左右10cm部分は右前になるように重ねて縫い合わせる(以降では、このゴム紐111の通っていない重なり部分を重ね部113と適宜称することとする)。
【0025】
以上の縫い合わせにより、上辺部分は重ね部113を含んだ輪となり、腰ゴム部11が形成される。腰ゴム部11はゴム紐111の収縮力により縮み、適当にヒダのついたパンツ1が形成される(図2)。
【0026】
前垂部20は、本体部10の布地と同素材の帯形状(長手の長方形形状)であって、幅15cm、長さ50cmの不織布からなる。片方の短辺は、重ね部113に揃えて重ね部113の内側に縫着する。すなわち、帯の短辺の中心が重ね部113の中央に位置するようにして前垂部20を本体部10の内側に縫い合わせる。
【0027】
パンツ1は以上の構成とすることにより、重ね部113が前(腹側)に来るようにして患者に穿いてもらう。穿く際には腰ゴム部11を広げて足を通して簡便に穿け、また、腰ゴム部11の収縮により腰の位置でとまり、ずり落ちることがない。
また、検査前のまたは検査後の移動の際でも、本体部10が二重となっているので、陰部が外から見えるようなことがない。仮に裾がめくれるようなことがあっても、前垂部20により陰部はさらに被覆されて、露出しないので、患者に高い安心感を持たせることができる。
【0028】
一方、検査に際しては、たとえば、載石位をとり、開脚する場合であっても、検査に邪魔になる裾の部分は、台形形状で下側が広い(長い)ので、これを利用してそのまま大腿部にそれぞれ巻きつけて、安定的に裾の保持ができる(安定的に十全な視認性を確保できる)。そしてこのときも、検査の直前まで前垂部20を延伸させたままで陰部を被覆できるので、患者の羞恥心を極力引き起こさないようにすることができる。
【0029】
そして、検査時のみ、前垂部20をめくり上げ、操作性よく、かつ、視認性よく、検査が可能となる。また、検査が終了すれば素早く前垂部20を戻し、陰部を最被覆可能であるので、患者の尊厳を損ねないようにすることができる。
【0030】
なお、パンツ1は、次のようにして、検査時の、めくり上げた前垂部20の保持安定性を高めている。
すなわち、前垂部20の半分程度の位置の外側に、幅1.5cm×長さ7cmのフック側面ファスナー21fが水平方向(巾方向)に接着され、重ね部113の内側には、同じ大きさのループ側面ファスナー21lが接着されている(図3)。
これにより、検査開始時に、医者が前垂部20をめくり上げてフック側面ファスナー21fをループ側面ファスナー21lに着合させつつ、5cm~10cm程度そのまま押し込と、折り返された前垂れ端部が重ね部113から10cm程度顔をだすだけに止まり検査の邪魔にならない(図4)。
【0031】
また、パンツ1は、本体下辺の端部(裾の端部)にそれぞれ一本の紐114の片端を合着し、かつ、下辺に沿わせて紐114の数カ所を仮接着している(長さは80cmとしている。検査時の姿勢によっては、裾の大腿部への巻き付けがほどける場合があるので、このようなときは紐114の仮接着を剥がし大腿部に巻き付け、自身に結びつけるようにして裾の巻き付き安定性を高める。なお、検査後は紐114をほどいて、適宜抜き取るなどすればよい。紐114は、検査時に必ず剥がす必要はなく、適宜利用すればよい。
【0032】
以上説明したように、本発明によれば、操作性よく、患者の尊厳にも配慮した検査治療用パンツを提供することができる。
なお、本発明は、上記に限定されない。たとえば、腰ゴム部でパンツ1は絞り込まれ、逆に言えば足先に向かっては拡径した形状となっており、重ね部も設けているので、仕様の態様によっては、本体部10は台形基調でなく長方形基調としてもよい。
前垂部20も、帯形状でなく中途がくびれた双曲線のような形状であってもよい。下側を幅広にするような形状としてもよい。
面ファスナー21の取り付けも、ループとフックを逆にして、また、重ね部113の外側に貼り付けるようにしてもよい。
ゴム紐111も腰ゴム部11の全周にわたって設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の検査治療用パンツは、検査や治療を臀部側からおこなう際には、前後を逆にして穿いてもらい使用することも可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 パンツ
10 本体部
11 腰ゴム部
111 ゴム紐
112 通し孔
113 重ね部
114 紐
20 前垂部
21 面ファスナー(21f:フック側面ファスナー,21l:ループ側面ファスナー)
図1
図2
図3
図4