(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023120483
(43)【公開日】2023-08-30
(54)【発明の名称】二重環縫いの縫い目構造
(51)【国際特許分類】
D05B 1/10 20060101AFI20230823BHJP
【FI】
D05B1/10 Z
D05B1/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022023385
(22)【出願日】2022-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】000113229
【氏名又は名称】株式会社PEGASUS
(72)【発明者】
【氏名】當銘 文郎
【テーマコード(参考)】
3B150
【Fターム(参考)】
3B150AA05
3B150AA12
3B150CB14
3B150CD10
3B150CE01
3B150CE23
3B150CE27
3B150DF02
3B150DF06
3B150DF08
3B150QA01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】複雑な機構や装置を使用せずともルーパ糸のほつれの発生を防止することができる新たな二重環縫いの縫い目構造を提供する。
【解決手段】生地を貫く針糸4,5が該生地の裏面側に形成する針糸ループとルーパ糸3で他糸ルーピングすることによって前記生地の形成される二重環縫いの縫い目構造において、前記針糸4,5は左右に並列する複数の針糸であって、前記針糸ループのうち縫い終わり部分に位置する少なくとも1つの右側の針糸ループ5bが、該右側の針糸ループ5bの1針前の左側の針糸ループ4aによって他糸ルーピングするように形成する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生地を貫く針糸が該生地の裏面側に形成する針糸ループとルーパ糸で他糸ルーピングすることによって前記生地の形成される二重環縫いの縫い目構造において、
前記針糸は左右に並列する複数の針糸であって、前記針糸ループのうち縫い終わり部分に位置する少なくとも1つの右側の針糸ループが、該右側の針糸ループの1針前の左側の針糸ループによって他糸ルーピングされていることを特徴とする二重環縫いの縫い目構造。
【請求項2】
生地を貫く針糸が該生地の裏面側に形成する針糸ループとルーパ糸で他糸ルーピングすることによって前記生地の形成される二重環縫いの縫い目構造において、
前記針糸は左右に並列する複数の針糸であって、前記針糸ループのうち縫い終わり部分に位置する少なくとも1つの右側の針糸ループが左側針糸の1針前の針糸ループに外接されていることを特徴とする二重環縫いの縫い目構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は二重環縫いミシンや偏平縫いミシン等のミシンを使用し針糸とルーパ糸とによって生地に形成される二重環縫いの縫い目構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来公知の二重環縫いの縫い目はミシンの針とルーパが協働して、生地の下方に形成される針糸ループとルーパ糸とを他糸ルーピングすることによって形成される。
上記の二重環縫いの縫い目においては、縫い終わりにおいて切断されたルーパ糸の端部が最終の針糸ループから抜け出すとルーパ糸がほつれていく問題を有していた。
【0003】
上記したようなルーパ糸のほつれの発生を防止する方法として、縫い終わり部分において。針糸ループを自糸ルーピングした縫い目構造が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
生地の裏側にて切断されたルーパ糸は針糸と針糸ループによって形成された結び目によって強固に押さえられるため、縫い終わり部分におけるルーパ糸のほつれの発生が防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-239975号公報(
図19-21)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の二重環縫いの縫い目を形成するためには、針糸ループに離接可能に駆動する糸掛けフックおよびその駆動機構をミシンの針落ちの下方に設ける必要があるが、糸掛けフックの駆動機構は構成が複雑でかつ調整が難しいという問題があった。
また、ミシンの針落ちの下方のスペースは限られており、上記した糸掛けフックの駆動機構を配置するのが困難であった。
【0006】
本発明は、複雑な機構や装置を使用せずともルーパ糸のほつれの発生を防止することができる新たな二重環縫いの縫い目構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、
生地を貫く針糸が該生地の裏面側に形成する針糸ループとルーパ糸で他糸ルーピングすることによって前記生地の形成される二重環縫いの縫い目構造において、
前記針糸は左右に並列する複数の針糸であって、前記針糸ループのうち縫い終わり部分に位置する少なくとも1つの右側の針糸ループが、該右側の針糸ループの1針前の左側の針糸ループによって他糸ルーピングされていることを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、
生地を貫く針糸が該生地の裏面側に形成する針糸ループとルーパ糸で他糸ルーピングすることによって前記生地の形成される二重環縫いの縫い目構造において、
前記針糸は左右に並列する複数の針糸であって、前記針糸ループのうち縫い終わり部分に位置する少なくとも1つの右側の針糸ループが左側針糸の1針前の針糸ループに外接されている特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の二重環縫いの縫い目構造によれば、縫い終わり部分に位置する少なくとも1つの右側の針糸ループが該右側の針糸ループの1針前の左側の針糸ループと係合し複雑に絡み合うため、ルーパ糸が抜け出してほつれが発生するのを防止できる。
【0010】
また、本発明の二重環縫いの縫い目構造は従来公知の二重環縫いミシンや偏平縫いミシンを使用し、後述するように縫い終わりにおいて針糸とルーパ糸の張力を変更することによって形成されるので、ミシンの針落ちの下方に複雑な機構や装置を設ける必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施例の縫い終わりにおける縫製過程を示す概略斜視図。
【
図3】第1実施例の縫い終わり後各糸を切断した状態の縫い目を示す概略斜視図。
【
図4】
図3の縫い目の切断された左側針糸の端部をルーパ糸のループから外した状態を示す概略斜視図。
【
図5】第2実施例の縫い終わりにおける縫製過程を示す概略斜視図。
【
図7】第2実施例の縫い終わり後各糸を切断した状態の縫い目を示す概略斜視図。
【
図8】
図7の縫い目の切断された左側針糸の端部をルーパ糸のループから外した状態を示す概略斜視図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の第1実施例について
図1乃至
図4を参照して説明する。
図1に示すように、左右に併設される針2,2によって図示しない生地を貫く左側針糸4,右側針糸5の針糸ループが生地の裏面側に逐次形成されている。縫い始め(図の上側)から中途にかけて(通常縫製)は、左側針糸4の針糸ループ,右側針糸5の針糸ループは生地の下方においてルーパ糸3で他糸ルーピングすることによって従来公知の二重環縫い目が形成されている。左側針糸4と右側針糸5のステッチは左右に並列して形成されている。
【0013】
縫い終わりの1針を縫製する際、左側針糸4にかかる張力を通常縫製時よりも小さく、ルーパ糸3にかかる張力を通常縫製時よりも大きく設定する。そうすると
図1に示すように、ルーパ1が右側に後退し針2,2が生地を貫いてルーパ1とルーパ1から後方に連なるルーパ糸3との間を降下する時に、右側の針2は左側針糸4の1針前の針糸ループ4aの中を降下する。
【0014】
次いで
図2に示すように、ルーパ1は左側針糸4の最終針糸ループ4bおよび右側針糸5の最終ループ5bを貫いて左方へ進出し、針2,2は図示しない生地の上方へ進出する。この時縫い終わり部分においては、右側針糸5の最終針糸ループ5bは左側針糸4の1針前の針糸ループ4aと他糸ルーピングされていると共にルーパ糸3と他糸レーシングされている。
【0015】
図2に示す状態で縫い終わり部分にて左側針糸4,右側針糸5,ルーパ糸3を切断すると
図3に示す縫い目構造となる。右側針糸5の最終針糸ループ5bの端部は垂下してルーパ糸3,左側針糸4の1針前の針糸ループ4aとは夫々他糸レーシングされた状態となっている。
また、左側針糸4の最終針糸ループ4bの端部は垂下してルーパ糸3と他糸レーシングされた状態となっている。
【0016】
以上説明したように、右側針糸5の最終針糸ループ5bはルーパ糸3だけでなく左側針糸4の1針前の針糸ループ4aとも係合して複雑に絡み合っている。また、
図2では各糸の絡みを明示するために左側針糸4の1針前の針糸ループ4aは緩んだ状態で示されているが、実際は通常縫製時よりも張力を大きく設定されたルーパ糸3に引っ張られることによって左側針糸4の1針前の針糸ループ4aと右側針糸5の最終針糸ループ5bとの係合は引き締められて結び目となっている。したがって
図4に示すように左側針糸4の最終針糸ループ4bの切断された端部がルーパ糸3から抜けても、上記した左側針糸4の1針前の針糸ループ4aと右側針糸5の最終針糸ループ5bとの係合部分に押さえられてそれ以上ほつれ難くなっている。
【0017】
図5乃至
図6は本発明の第2実施例を説明したものである。通常縫製時は第1実施例と同様であるが、
図5に示すように縫い終わりの1針を縫製する際左側針糸4にかかる張力を通常縫製時よりも小さく、ルーパ糸3にかかる張力を通常縫製時よりも大きく設定し、右側の針2は左側針糸4の1針前の針糸ループ4aの左側を下降させる。そうすると縫い終わりは
図6に示すように右側針糸5の最終ループ5bは左側針糸4の1針前の針糸ループ4aに外接すると共にルーパ糸3と他糸レーシングする。
【0018】
第2実施例においても、縫い終わり部分にて各糸を切断すると
図7乃至
図8に示すように右側針糸5の最終ループ5bは左側針糸4の1針前の針糸ループ4aやルーパ糸3と複雑に絡むため、第1実施例と同様にルーパ糸3がほつれ難くなっている。
【0019】
第1実施例,第2実施例とも縫い終わりの1針の縫製を複数回繰り返すことによってルーパ糸のほつれの防止がより確実にできる。
また、実施例は2本針のものであるが、3本以上の針による二重環縫いの縫い目についても同様の効果を奏するものである。
【符号の説明】
【0020】
1 ルーパ
2 針
3 ルーパ糸
4 左側針糸
4a 1針前の針糸ループ
4b 最終針糸ループ
5 右側針糸
5a 1針前の針糸ループ
5b 最終針糸ループ