(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023120497
(43)【公開日】2023-08-30
(54)【発明の名称】沈下計測システムおよび沈下計測方法
(51)【国際特許分類】
G01C 5/04 20060101AFI20230823BHJP
E02D 17/04 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
G01C5/04 A
E02D17/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022023406
(22)【出願日】2022-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】597010628
【氏名又は名称】協立電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 淳太
(72)【発明者】
【氏名】平口 進也
(72)【発明者】
【氏名】鍋田 忍
(72)【発明者】
【氏名】中 浩一
(57)【要約】
【課題】支保工などの構造物の沈下量をリアルタイムに把握することができる沈下計測システムおよび沈下計測方法を提供する。
【解決手段】計測用の液体を収容する基準タンク16と、構造物(支保工14)と地盤Gにそれぞれ設定した計測点Pに設置されるとともに、収容する液体の圧力と所定の基準圧力との圧力差を差圧信号として出力する差圧検出器18と、基準タンク16と差圧検出器18とを連通する導圧管20と、差圧検出器18からの差圧信号に基づいて、基準面と計測点Pとの高低差を求め、この高低差に基づいて、所定の基準値からの計測点Pの沈下量を演算する沈下量演算部22Aと、沈下に伴う構造物(支保工14)の変形量を演算する変形量演算部22Bとを有する演算手段22と、ユーザーからの要求に応じて演算手段22による演算結果をユーザー側の端末24に提示する提示手段とを備えるようにする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤または基礎上に設けられる構造物の沈下量を計測するシステムであって、
基準面に設置されるとともに、計測用の液体を収容する基準タンクと、前記構造物と前記地盤または基礎にそれぞれ設定した計測点に設置されるとともに、収容する液体の圧力と所定の基準圧力との圧力差を差圧信号として出力する差圧検出器と、前記基準タンクと前記差圧検出器とを連通する導圧管と、前記差圧検出器からの差圧信号に基づいて、前記基準面と前記計測点との高低差を求め、この高低差に基づいて、所定の基準値からの前記計測点の沈下量を演算する沈下量演算部と、沈下に伴う前記構造物の変形量を演算する変形量演算部とを有する演算手段と、ユーザーからの要求に応じて前記演算手段による演算結果を前記ユーザー側の端末に提示する提示手段とを備えることを特徴とする沈下計測システム。
【請求項2】
前記構造物は、上部工を下側から支持しながら地盤または基礎上に設けられる支保工であり、前記計測点は、前記支保工の上端の近傍と下端の近傍にそれぞれ設定されることを特徴とする請求項1に記載の沈下計測システム。
【請求項3】
演算された前記構造物の変形量が、予め設定した許容量を超えているか否かを判定する判定手段と、前記判定手段によって前記構造物の変形量が前記許容量を超えたと判定された場合に、前記ユーザー側の端末に警報を出力する警報出力手段とをさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の沈下計測システム。
【請求項4】
地盤または基礎上に設けられる構造物の沈下量を計測する方法であって、
基準面に計測用の液体を収容する基準タンクを設置するステップと、前記構造物と前記地盤または基礎にそれぞれ設定した計測点に、収容する液体の圧力と所定の基準圧力との圧力差を差圧信号として出力する差圧検出器を設置するステップと、前記基準タンクと前記差圧検出器とを連通する導圧管とを設置するステップと、前記差圧検出器からの差圧信号に基づいて、前記基準面と前記計測点との高低差を求め、この高低差に基づいて、所定の基準値からの前記計測点の沈下量と、沈下に伴う前記構造物の変形量を演算手段で演算するステップと、ユーザーからの要求に応じて前記演算手段による演算結果を前記ユーザー側の端末に提示するステップとを備えることを特徴とする沈下計測方法。
【請求項5】
前記構造物は、上部工を下側から支持しながら地盤または基礎上に設けられる支保工であり、前記計測点は、前記支保工の上端の近傍と下端の近傍にそれぞれ設定されることを特徴とする請求項4に記載の沈下計測方法。
【請求項6】
演算された前記構造物の変形量が、予め設定した許容量を超えているか否かを判定するステップと、前記構造物の変形量が前記許容量を超えたと判定された場合に、前記ユーザー側の端末に警報を出力するステップとをさらに備えることを特徴とする請求項4または5に記載の沈下計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支保工などの構造物の沈下量を計測する沈下計測システムおよび沈下計測方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、架設場所に固定支保工を組み立てて、その固定支保工上でコンクリート製の上部工(例えば橋梁、高架橋)を施工する場合に、コンクリート打設中の支保工の沈下量(支保工変形量+地盤沈下量)を随時把握する必要がある。そのためコンクリート打設中は、沈下量計測専門の人員を配置している。
【0003】
従来の沈下量の計測方法として、
図4に示すように、作業員1が支保工2の外側からレベル測量器3で支保工2の内部の図示しない目標物を視準して、沈下量を計測する方法が知られている。また、人手に頼らない計測方法として、例えば特許文献1~3に記載のものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8-50019号公報
【特許文献2】特開平11-153431号公報
【特許文献3】特開2000-130068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記の従来の方法で計測した沈下量データは、随時整理して工事関係者間でデータ共有する必要があるが、コンクリート打設作業で忙しい中、コミュニケーションをとることは難しく、データ共有が困難となるおそれがあった。また、従来の
図4のレベル測量では、視界が開けていない支保工中心付近の計測は困難となっていた。こうしたことから、工事関係者が沈下量をリアルタイムに把握することができ、支保工中心付近など視界が開けていない場所についても容易に計測できる技術が求められていた。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、支保工などの構造物の沈下量をリアルタイムに把握することができる沈下計測システムおよび沈下計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る沈下計測システムは、地盤または基礎上に設けられる構造物の沈下量を計測するシステムであって、基準面に設置されるとともに、計測用の液体を収容する基準タンクと、前記構造物と前記地盤または基礎にそれぞれ設定した計測点に設置されるとともに、収容する液体の圧力と所定の基準圧力との圧力差を差圧信号として出力する差圧検出器と、前記基準タンクと前記差圧検出器とを連通する導圧管と、前記差圧検出器からの差圧信号に基づいて、前記基準面と前記計測点との高低差を求め、この高低差に基づいて、所定の基準値からの前記計測点の沈下量を演算する沈下量演算部と、沈下に伴う前記構造物の変形量を演算する変形量演算部とを有する演算手段と、ユーザーからの要求に応じて前記演算手段による演算結果を前記ユーザー側の端末に提示する提示手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る他の沈下計測システムは、上述した発明において、前記構造物は、上部工を下側から支持しながら地盤または基礎上に設けられる支保工であり、前記計測点は、前記支保工の上端の近傍と下端の近傍にそれぞれ設定されることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る他の沈下計測システムは、上述した発明において、演算された前記構造物の変形量が、予め設定した許容量を超えているか否かを判定する判定手段と、前記判定手段によって前記構造物の変形量が前記許容量を超えたと判定された場合に、前記ユーザー側の端末に警報を出力する警報出力手段とをさらに備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る他の沈下計測方法は、上述した発明において、地盤または基礎上に設けられる構造物の沈下量を計測する方法であって、基準面に計測用の液体を収容する基準タンクを設置するステップと、前記構造物と前記地盤または基礎にそれぞれ設定した計測点に、収容する液体の圧力と所定の基準圧力との圧力差を差圧信号として出力する差圧検出器を設置するステップと、前記基準タンクと前記差圧検出器とを連通する導圧管とを設置するステップと、前記差圧検出器からの差圧信号に基づいて、前記基準面と前記計測点との高低差を求め、この高低差に基づいて、所定の基準値からの前記計測点の沈下量と、沈下に伴う前記構造物の変形量を演算手段で演算するステップと、ユーザーからの要求に応じて前記演算手段による演算結果を前記ユーザー側の端末に提示するステップとを備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る他の沈下計測方法は、上述した発明において、前記構造物は、上部工を下側から支持しながら地盤または基礎上に設けられる支保工であり、前記計測点は、前記支保工の上端の近傍と下端の近傍にそれぞれ設定されることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る他の沈下計測方法は、上述した発明において、演算された前記構造物の変形量が、予め設定した許容量を超えているか否かを判定するステップと、前記構造物の変形量が前記許容量を超えたと判定された場合に、前記ユーザー側の端末に警報を出力するステップとをさらに備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る沈下計測システムによれば、地盤または基礎上に設けられる構造物の沈下量を計測するシステムであって、基準面に設置されるとともに、計測用の液体を収容する基準タンクと、前記構造物と前記地盤または基礎にそれぞれ設定した計測点に設置されるとともに、収容する液体の圧力と所定の基準圧力との圧力差を差圧信号として出力する差圧検出器と、前記基準タンクと前記差圧検出器とを連通する導圧管と、前記差圧検出器からの差圧信号に基づいて、前記基準面と前記計測点との高低差を求め、この高低差に基づいて、所定の基準値からの前記計測点の沈下量を演算する沈下量演算部と、沈下に伴う前記構造物の変形量を演算する変形量演算部とを有する演算手段と、ユーザーからの要求に応じて前記演算手段による演算結果を前記ユーザー側の端末に提示する提示手段とを備えるので、支保工などの構造物の沈下量をリアルタイムに把握することができるという効果を奏する。
【0014】
また、本発明に係る他の沈下計測システムによれば、前記構造物は、上部工を下側から支持しながら地盤または基礎上に設けられる支保工であり、前記計測点は、前記支保工の上端の近傍と下端の近傍にそれぞれ設定されるので、支保工の沈下量をリアルタイムに把握することができるという効果を奏する。
【0015】
また、本発明に係る他の沈下計測システムによれば、演算された前記構造物の変形量が、予め設定した許容量を超えているか否かを判定する判定手段と、前記判定手段によって前記構造物の変形量が前記許容量を超えたと判定された場合に、前記ユーザー側の端末に警報を出力する警報出力手段とをさらに備えるので、支保工などの構造物の変形量に異常が発生した場合に早期に発見することができるという効果を奏する。
【0016】
また、本発明に係る他の沈下計測方法によれば、地盤または基礎上に設けられる構造物の沈下量を計測する方法であって、基準面に計測用の液体を収容する基準タンクを設置するステップと、前記構造物と前記地盤または基礎にそれぞれ設定した計測点に、収容する液体の圧力と所定の基準圧力との圧力差を差圧信号として出力する差圧検出器を設置するステップと、前記基準タンクと前記差圧検出器とを連通する導圧管とを設置するステップと、前記差圧検出器からの差圧信号に基づいて、前記基準面と前記計測点との高低差を求め、この高低差に基づいて、所定の基準値からの前記計測点の沈下量と、沈下に伴う前記構造物の変形量を演算手段で演算するステップと、ユーザーからの要求に応じて前記演算手段による演算結果を前記ユーザー側の端末に提示するステップとを備えるので、支保工などの構造物の沈下量をリアルタイムに把握することができるという効果を奏する。
【0017】
また、本発明に係る他の沈下計測方法によれば、前記構造物は、上部工を下側から支持しながら地盤または基礎上に設けられる支保工であり、前記計測点は、前記支保工の上端の近傍と下端の近傍にそれぞれ設定されるので、支保工の沈下量をリアルタイムに把握することができるという効果を奏する。
【0018】
また、本発明に係る他の沈下計測方法によれば、演算された前記構造物の変形量が、予め設定した許容量を超えているか否かを判定するステップと、前記構造物の変形量が前記許容量を超えたと判定された場合に、前記ユーザー側の端末に警報を出力するステップとをさらに備えるので、支保工などの構造物の変形量に異常が発生した場合に早期に発見することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明に係る沈下計測システムの実施の形態を示す概略構成図である。
【
図2】
図2は、本発明に係る沈下計測システムおよび沈下計測方法の実施の形態を示す正面断面図である。
【
図3】
図3は、本実施の形態による計測結果表示例を示す図である。
【
図4】
図4は、従来の沈下計測方法の一例を示す写真図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明に係る沈下計測システムおよび沈下計測方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0021】
図1および
図2に示すように、本発明の実施の形態に係る沈下計測システム10は、コンクリート打設中の上部工12を下側から支持する支保工14(構造物)の沈下量を計測するシステムである。この沈下計測システム10は、基準面に設置されるとともに、計測用の水(液体)を収容する基準タンク16と、複数の計測点Pにそれぞれ設置されるレベル計18(差圧検出器)と、基準タンク16と各レベル計18とを連通する導圧管20と、沈下量などを演算する演算装置22と、ユーザーが所持する携帯端末24とを備える。支保工14は、地盤G上に設置される。基準タンク16は、各レベル計18よりも高い位置に設置される。
【0022】
レベル計18は、支保工14および地盤Gの沈下量をリアルタイムに計測するためのものであり、支保工14の上端の近傍と下端の近傍にそれぞれ設定した計測点Pに設けられる。上端側の計測点Pは、例えば、支保工14の上端に設けられた大引ジャッキ26付近に設定することができる。下端側の計測点Pは、例えば、支保工14の下端のジャッキベース28付近に設定することができる。各測定点Pは、平面的に互いに離隔した位置に設けられる。このレベル計18は、収容する水の圧力と大気圧(所定の基準圧力)との圧力差を差圧信号として出力する。より具体的には、レベル計18は、図示しないダイヤフラムによって隔離された2つの受圧室を有しており、一方の受圧室には水が充填され、他方の受圧室は大気に通じて大気圧に等しくなっている。ダイヤフラムは、2つの受圧室の圧力差に応じて撓み変形し、その撓みは、圧電素子等を介して電気信号である差圧信号に変換され、この差圧信号は、信号ケーブルCおよび制御盤Sを介して、施工管理室などに設置される演算装置22へと送出されるようになっている。
【0023】
導圧管20は、基準タンク16と各レベル計18の一方の受圧室とをそれぞれ連通するように配置される。レベル計18の一方の受圧室には、水が充填されているので、上側に設置された基準タンク16の内部の水から受ける圧力を導圧する。
【0024】
演算装置22は、支保工14および地盤Gの沈下量を演算する沈下量演算部22Aと、沈下に伴う支保工14の変形量を演算する変形量演算部22Bとを有する演算手段である。演算装置22は、例えばコンピュータ端末などを用いて構成することができる。沈下量演算部22Aは、各レベル計18からの差圧信号に基づいて、基準面と各計測点Pとの高低差を求め、この高低差に基づいて、基準値(例えば、計測初期値)からの各計測点Pの沈下量を演算する。そして、この演算結果に基づいて、支保工14および地盤Gの沈下量を求める。一方、変形量演算部22Bは、地盤Gの沈下量、支保工14に作用する荷重変化に伴う弾性変形を考慮した支保工14の収縮量、ジョイント部などのなじみ量等を勘案して、沈下に伴う支保工14の変形量を演算する。これらの演算結果は、演算装置22を構成するコンピュータ端末の画面に表示して、確認可能としてもよい。これに代えて、またはこれに加えて、計測値と、計測値と計画値との差を表示してもよい。
【0025】
携帯端末24は、工事関係者であるユーザーが所持するものであり、無線通信網などのネットワークNを介して演算装置22と接続している。この携帯端末24は、ユーザーからの要求に応じて演算装置22による演算結果を提示する提示手段として機能する。携帯端末24から演算装置22に提示要求指令を送信すると、演算装置22は携帯端末24に向けて所定の演算結果を出力し、携帯端末24の画面には演算結果が表示される。さらに計測値と、計測値と計画値との差を表示してもよい。ユーザーは携帯端末24の画面を見ることで、支保工14の沈下量、地盤Gの沈下量、支保工14の変形量などをリアルタイムに把握することができる。これにより、支保工14を含む周辺全体の挙動を把握することができる。
【0026】
上記構成の動作および作用について説明する。
上部工12のコンクリート打設の進捗に伴って、支保工14の上下の測定点Pの高さ位置が変化すると、測定点Pのレベル計18に備わる受圧室内の水の位置水頭が変化する。水の容量は一定であり、導圧管20によって受圧室に連通された基準タンク16内の水の位置水頭および圧力水頭は変化していないので、ベルヌーイの定理により、この受圧室の位置水頭の変化は、受圧室の圧力水頭の変化となり、大気と連通した受圧室との間の圧力差が変化する。この変化がダイヤフラムの撓みの変化となり、差圧信号となって出力される。
【0027】
このように、ダイヤフラムの撓みと高さ位置の変化との間には、予め決められた関係式が成り立つため、演算装置22の沈下量演算部22Aで基準面と各計測点Pとの高低差を演算することにより、支保工14の上下に設けた各計測点Pの沈下量を求めることができる。また、変形量演算部22Bで地盤Gの沈下量、支保工14に作用する荷重変化に伴う支保工14の収縮量、なじみ量等を勘案して、沈下に伴う支保工14の変形量を求めることができる。また、これらの演算結果は、ユーザーからの要求に応じてネットワークNを介して携帯端末24で随時確認することができる。
【0028】
このため、本実施の形態によれば、支保工14の沈下量、地盤Gの沈下量、支保工14の変形量などを各ユーザーの携帯端末24でリアルタイムに把握することができる。また、直接地盤上でなく、杭基礎等の基礎構造の沈下量も把握可能である。これにより、支保工14を含む周辺全体の挙動を把握することができる。また、コンクリート打設進捗と沈下量の関係を把握することができる。特に、計測点Pを平面的に離散した複数の位置に配置すれば、コンクリート打設箇所と沈下量の関係を把握することができる。計測点Pに設置したレベル計18を用いて沈下計測するため、計測したい場所に支保工支柱などがあり視界が開けていない場合でも、沈下量を計測可能である。また、従来のように沈下計測専門の人員を配置する必要はなくなる。
【0029】
上記の実施の形態において、所定の場合に、携帯端末24に対してアラーム情報などの警報を出力する警報出力手段をさらに備えてもよい。この場合、支保工14の沈下量や変形量が、予め設定した許容量を超えているか否かを判定する判定手段を設けておき、演算した沈下量や変形量が許容量を超えたと判定された場合に、携帯端末24に警報を出力する。例えば、所定の計画値の80%を許容量とし、この許容量を超えた変化があった場合に携帯端末24にアラート表示してもよい。こうすることで、支保工14の変形量や沈下量に異常が発生した場合にこれを早期に発見することができ、万一の緊急避難等の対応を迅速に行うことが可能となる。
【0030】
(実施例)
図3は、携帯端末24や演算装置22の画面に表示される計測結果の一例を示している。
図3(1)は、上部工12のコンクリート打設範囲を概念的な斜視図として表したものである。この図に示すように、計測点P(計測点番号1~9)は、打設範囲の長手方向に沿って起点側、支間中央部、終点側の短手方向に間隔をあけた3箇所に設置されている。凡例に示されるように、計測した沈下量の計画値に対する比率が、計測点を表す下三角形マークの内部のハッチングの種類によって表現されている。具体的には、計測した沈下量が所定の許容範囲にある場合は通常のハッチング、計画値の80%を超える場合は無地、計画値の100%を超える場合は黒塗りで示されている。このような表示を見ることで、コンクリート打設箇所と沈下量の関係を容易に把握することができる。
【0031】
また、
図3(2)は、打設範囲の長手方向(橋軸方向)の支保工変化量(横断方向の平均値)の分布例をグラフで示したものである。この図では、地盤の沈下量の計画値(計画値(地盤))、計画値の80%に相当する値(計画値(80%))、計画値の100%に相当する値(計画値(100%))のラインが示されており、さらに、コンクリート打設の進捗に応じた時刻(9:00、10:00、11:00)において計測した支保工の変化量がそれぞれ計画値に対する比率とともに示されている。このような表示を見ることで、コンクリート打設進捗と沈下量の関係を容易に把握することができる。
【0032】
また、上記の実施の形態においては、構造物が支保工である場合を例にとり説明したが、本発明はこれに限るものではなく、支保工以外の他の構造物の沈下量を計測する場合に適用してもよい。このようにしても、上記と同様の作用効果を奏することができる。また、上記の実施の形態においては、計測用の液体が水である場合を例にとり説明したが、本発明はこれに限るものではなく、水以外の蒸発しない他の液体を使用してもよい。このようにしても、上記と同様の作用効果を奏することができる。また、レベル計18の配置は、
図2に示した配置に限るものではなく、現場の状況に応じて変更可能である。
【0033】
以上説明したように、本発明に係る沈下計測システムによれば、地盤または基礎上に設けられる構造物の沈下量を計測するシステムであって、基準面に設置されるとともに、計測用の液体を収容する基準タンクと、前記構造物と前記地盤または基礎にそれぞれ設定した計測点に設置されるとともに、収容する液体の圧力と所定の基準圧力との圧力差を差圧信号として出力する差圧検出器と、前記基準タンクと前記差圧検出器とを連通する導圧管と、前記差圧検出器からの差圧信号に基づいて、前記基準面と前記計測点との高低差を求め、この高低差に基づいて、所定の基準値からの前記計測点の沈下量を演算する沈下量演算部と、沈下に伴う前記構造物の変形量を演算する変形量演算部とを有する演算手段と、ユーザーからの要求に応じて前記演算手段による演算結果を前記ユーザー側の端末に提示する提示手段とを備えるので、支保工などの構造物の沈下量をリアルタイムに把握することができる。
【0034】
また、本発明に係る他の沈下計測システムによれば、前記構造物は、上部工を下側から支持しながら地盤または基礎上に設けられる支保工であり、前記計測点は、前記支保工の上端の近傍と下端の近傍にそれぞれ設定されるので、支保工の沈下量をリアルタイムに把握することができる。
【0035】
また、本発明に係る他の沈下計測システムによれば、演算された前記構造物の変形量が、予め設定した許容量を超えているか否かを判定する判定手段と、前記判定手段によって前記構造物の変形量が前記許容量を超えたと判定された場合に、前記ユーザー側の端末に警報を出力する警報出力手段とをさらに備えるので、支保工などの構造物の変形量に異常が発生した場合に早期に発見することができる。
【0036】
また、本発明に係る他の沈下計測方法によれば、地盤または基礎上に設けられる構造物の沈下量を計測する方法であって、基準面に計測用の液体を収容する基準タンクを設置するステップと、前記構造物と前記地盤または基礎にそれぞれ設定した計測点に、収容する液体の圧力と所定の基準圧力との圧力差を差圧信号として出力する差圧検出器を設置するステップと、前記基準タンクと前記差圧検出器とを連通する導圧管とを設置するステップと、前記差圧検出器からの差圧信号に基づいて、前記基準面と前記計測点との高低差を求め、この高低差に基づいて、所定の基準値からの前記計測点の沈下量と、沈下に伴う前記構造物の変形量を演算手段で演算するステップと、ユーザーからの要求に応じて前記演算手段による演算結果を前記ユーザー側の端末に提示するステップとを備えるので、支保工などの構造物の沈下量をリアルタイムに把握することができる。
【0037】
また、本発明に係る他の沈下計測方法によれば、前記構造物は、上部工を下側から支持しながら地盤または基礎上に設けられる支保工であり、前記計測点は、前記支保工の上端の近傍と下端の近傍にそれぞれ設定されるので、支保工の沈下量をリアルタイムに把握することができる。
【0038】
また、本発明に係る他の沈下計測方法によれば、演算された前記構造物の変形量が、予め設定した許容量を超えているか否かを判定するステップと、前記構造物の変形量が前記許容量を超えたと判定された場合に、前記ユーザー側の端末に警報を出力するステップとをさらに備えるので、支保工などの構造物の変形量に異常が発生した場合に早期に発見することができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
以上のように、本発明に係る沈下計測システムおよび沈下計測方法は、に有用であり、特に、支保工などの構造物の沈下量をリアルタイムに把握するのに適している。
【符号の説明】
【0040】
10 沈下計測システム
12 上部工
14 支保工(構造物)
16 基準タンク
18 レベル計(差圧検出器)
20 導圧管
22 演算装置
22A 沈下量演算部
22B 変形量演算部
24 携帯端末
26 大引ジャッキ
28 ジャッキベース
G 地盤
P 計測点