IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コー. ドン アクチエンゲゼルシャフトの特許一覧

特開2023-1205移植可能な軟骨組織およびその選択方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023001205
(43)【公開日】2023-01-04
(54)【発明の名称】移植可能な軟骨組織およびその選択方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 27/38 20060101AFI20221222BHJP
   A61K 35/32 20150101ALI20221222BHJP
   A61P 19/00 20060101ALI20221222BHJP
【FI】
A61L27/38 112
A61K35/32
A61P19/00
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172251
(22)【出願日】2022-10-27
(62)【分割の表示】P 2019571234の分割
【原出願日】2018-06-22
(31)【優先権主張番号】17177756.8
(32)【優先日】2017-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】502096255
【氏名又は名称】コー. ドン アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】特許業務法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロエル,ジュリエッタ
(72)【発明者】
【氏名】カプス,クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】エッシェン,クラウディア
(57)【要約】
【課題】改善された特性、特に天然の軟骨細胞との同一性などの十分な品質を有する改善された移植可能な軟骨組織と、関節軟骨欠損の治療および療法の奏効のために高品質な移植片を得ることができるような改善された品質のスフェロイドと、を提供する。
【解決手段】本発明は、軟骨細胞またはスフェロイドから選択し選ぶことによる軟骨組織の製造方法、および、医薬組成物、医薬品または移植片としてのその使用に関する。特に、本発明は、特に移植のための軟骨組織を製造するための適切な軟骨細胞を同定するためのマーカーに関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移植可能な軟骨組織の製造のための軟骨細胞の選択方法であって、KAL1、CRTAC1のグループから選ばれる同一性マーカー、およびNRN1、EBF3のグループから選ばれる純度マーカーがin vitroで測定され、プロテオグリカン、特にアグリカンがin vitroでさらに測定されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
移植可能な軟骨組織を製造するために、第1ステップにおいて、前記軟骨細胞を単層培養物で増殖させ、第2ステップにおいて、集合させてスフェロイドを形成させることを特徴とする、請求項1に記載の軟骨細胞の選択方法。
【請求項3】
前記軟骨細胞を集合させてスフェロイドを形成させ、それからスフェロイドを選ぶことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の軟骨細胞の選択方法。
【請求項4】
i.)前記同一性マーカーKAL1を有する、単層培養物中の軟骨細胞をin vitroで測定し、および/またはii.)少なくとも1つの同一性マーカーCRTAC1を有する、スフェロイド中の軟骨細胞をin vitroで測定することを特徴とする、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の軟骨細胞の選択方法。
【請求項5】
本発明のマーカーを参照遺伝子と比較して測定することを特徴とする、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の軟骨細胞の選択方法。
【請求項6】
CRTAC1/R>0.003
NRN1/R≧0.1
KAL1/R>1.0
EBF3/R≦0.4
ACAN/R≧0.29
のグループから選択される遺伝子発現の少なくとも1つの比を測定することを特徴とする、請求項5に記載の軟骨細胞の選択方法。
【請求項7】
CRTAC1/R≧0.006、特に≧0.009および≧0.012
NRN1/R≧0.2、特に≧0.3および≧0.4
KAL1/R≧2.0、特に≧3.0および≧4.0
EBF3/R≦0.3、特に≦0.2および≦0.1
ACAN/R≧0.39、特にv≧0.49および≧0.59
のグループから選択される遺伝子発現の少なくとも1つの比を測定することを特徴とする、請求項5に記載の軟骨細胞の選択方法。
【請求項8】
増殖後の単離軟骨細胞または得られたスフェロイドにおける総細胞数に対する滑膜細胞の割合が9%以下であり、特に5%以下であることを特徴とする、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の軟骨細胞の選択方法。
【請求項9】
請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の方法によって単離スフェロイドを得る方法。
【請求項10】
前記スフェロイドにおける総細胞数に対する滑膜細胞の割合が9%以下であることを特徴とする、請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の方法によって単離スフェロイドを得る方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法によってスフェロイドを含む移植可能な軟骨組織を得る方法。
【請求項12】
移植可能な軟骨組織を関節軟骨欠損の治療または自家軟骨細胞移植に使用する、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟骨細胞またはスフェロイドから選択し選ぶことによる軟骨組織の製造方法、および、医薬組成物、医薬または移植材料としてのその使用に関する。特に、本発明は、特に移植のための軟骨組織の製造のための適切な軟骨細胞を同定するためのマーカーに関する。
【背景技術】
【0002】
関節軟骨は著しい復元力を示すが、この組織はそれ自身を修復または再生することが不可能であるかまたはほとんど不可能であり、未治療のレギオンは変形性関節症を引き起こす可能性がある。この低い自然再生能力が、関節軟骨欠損の、痛みを伴わない機能修復を提供することを目的とする自家軟骨細胞移植(ACT)などの細胞療法の開発をもたらした。たとえば外傷性病変を有し、またはさらに軟骨変性の症状も有する若くて活動的な患者における軟骨再生法および軟骨欠損の治療法が強く求められている。
【0003】
ヒト軟骨細胞を用いる生化学・分子学的研究は、生検材料において入手可能な細胞がごく少数であること、増殖能が限定的であること、および、培養した軟骨細胞の表現型の不安定性が高いことと関連する、ヒト組織の利用可能性の欠如などの一連の要因によって妨げられてきた。
【0004】
軟骨細胞は、軟骨芽細胞に由来し、軟骨組織において形成される細胞である。軟骨細胞は、細胞間質(細胞外基質(ECM))とともに、軟骨、特に関節軟骨の主な構成要素を形成する。
【0005】
胚発生の特定のプロセスの模倣によって、たとえば、分化能に関して単層細胞よりも優れ、たとえば軟骨様特性を有する細胞集合体が製造されるようにアガロース基質上に三次元的にヒト軟骨細胞を培養することはすでに公知である。天然の関節軟骨組織をできるだけ正確に反映するこれらの特性は、コラーゲンII(硝子軟骨の細胞外基質における主要構造タンパク質)の発現、プロテオグリカン、たとえばアグリカンの発現、および、細胞内軟骨細胞特異的タンパク質S100の発現によって特徴付けられる。
【0006】
さらに、単層培養物の細胞増殖期において必然的にアップレギュレートされるI型コラーゲンの発現は、その細胞集合体において再度低下することが望ましい。なぜなら、このタンパク質は天然の関節軟骨にはほとんど存在しないからである。若年患者において外傷によって引き起こされる軟骨欠損を治療するために、本出願人は、2002年以来、このようにして作成された細胞集合体(スフェロイド)を提案してきた。この目的のために、患者から天然の関節軟骨組織を摘出し、健康な軟骨領域から硝子軟骨の生検材料を摘出する。コラゲナーゼ溶液による軟骨組織の酵素消化によって軟骨組織中の軟骨細胞を単離し、自家血清の存在下、細胞培養フラスコ中で標準的な細胞培養条件下(単層培養)で増殖し、移植可能な軟骨組織の製造のための十分な軟骨細胞を提供する。増殖した細胞は、細胞集合体、すなわちスフェロイドとして公知のものを形成するが、これは移植してもよい。しかしながら、このようにして製造される細胞集合体は、それらの分化状態が限定的であり、通例、重要な物質であるII型コラーゲンの比較的弱い局所発現とプロテオグリカンのわずかな合成とを示し、望ましくない物質であるI型コラーゲンの比較的強い発現を示す。これらの細胞集合体の分化をさらに改善するために、特定の生物活性物質で培地を強化することは可能である。これらには、主として、多くの場合文献にコラーゲン合成の補因子として記載されている増殖因子TGF-β1~3およびアスコルビン酸(ビタミンC)が含まれる。しかしながら、この生化学的刺激は、一方では、多くの場合、軟骨に特
有な構築物が産生される程度にまで3D細胞集合体における軟骨細胞の分化を誘導するには不十分であり、他方では、TGF-βなどの増殖因子の使用は、特にヒトにおける臨床使用に関して問題視されている。
【0007】
3次元細胞集合体、たとえばスフェロイドとして知られている形態でのヒト細胞の培養は、ヒトにおける臨床使用のために、たとえば、骨幹細胞、軟骨幹細胞または間葉系幹細胞からの3次元軟骨組織および骨組織のin vitro製造方法に関する特許文献1において自家軟骨移植片としてすでに記載されている。この場合、最初に細胞が単層培養物で培養され、次いで、分化細胞が埋め込まれた少なくとも40体積%の細胞外基質を含む細胞集合体が製造されるまで懸濁液中で培養される。
【0008】
この方法では、アガロースでコーティングした細胞培養器において少なくとも1~2週間細胞を培養することによって細胞集合体が製造される。
【0009】
特許文献2は、3次元軟骨組織および骨組織のin vitro製造方法であって、1×10個の細胞を少なくとも2週間培養することによって骨幹細胞、軟骨幹細胞または間葉系幹細胞から移植可能なスフェロイドを製造することを特徴とする方法を開示している。
【0010】
非特許文献1も、3次元軟骨組織のin vitro製造方法を開示している。この方法によれば、スフェロイドを製造するために、1×10個または2×10個の軟骨細胞が5日間、2週間、1、2および3ヶ月間培養される。
【0011】
従来技術に記載されている、in vitroで製造される軟骨組織は、天然組織と同様なII型コラーゲンなどの最も重要なマトリックスタンパク質の発現パターンを示さない。軟骨細胞からin vitroで産生される細胞外基質(ECM)の組成は、むしろ、天然の軟骨組織からかなり外れている。しかしながら、ECMの組成は、軟骨の生物学的機能性、たとえば機械的耐荷重能力にとって鍵である。したがって、軟骨組織を製造するための新しい技術が求められており、品質管理も求められている。
【0012】
「移植可能な軟骨組織」とは、製造される組織が天然組織と十分に一致するかまたは天然組織と同一であるex-vivo製造またはin-vitro技術を用いての製造を意味する。本発明の意味において、移植可能な軟骨組織は、たとえば細胞外基質の発現または発現パターンに関して、たとえばII型コラーゲンなどの構造タンパク質もしくはプロテイドおよび/またはS100タンパク質および/または組織特異的プロテオグリカン、たとえばアグリカンなどの軟骨特異的プロテオグリカンの発現または発現パターンに関して、天然組織と十分に一致する。この発現または発現パターンは、たとえば組織学的または免疫組織学的に検出することができる。
【0013】
軟骨細胞を単離する組織は、たとえば筋骨格組織、骨格組織、軟骨、骨、関節半月板、椎間板、骨髄、関節または腱から選択される。本発明の方法によって製造される移植可能な軟骨組織は、組成およびタンパク質発現に関して天然組織と同様である(上記参照)。
【0014】
天然の関節軟骨組織は、関節組織の湿重量に対しておおよそ60~80%の水で構成される細胞外基質の組成を有する。高い水分含有量は軟骨組織の機械的耐荷重能力に重要であり、プロテオグリカンとともに「スポンジ効果」に重要である。天然の関節軟骨は、水のほかにも構造タンパク質または基質タンパク質を含む。この場合、構造高分子は関節軟骨組織の湿重量のおおよそ20~40%を占める。
【0015】
天然の関節軟骨組織の場合は、軟骨の乾燥重量に対して、コラーゲンの割合は60%で
あり、プロテオグリカンの割合は25~35%であり、非コラーゲンタンパク質および糖タンパク質の割合は15~20%である。II型コラーゲンは、天然の関節軟骨組織の全コラーゲン含有量のおおよそ90~95%を占める。
【0016】
天然のヒト関節軟骨組織は、その組織量に対しておおよそ1~5%の軟骨細胞を含む。この場合、軟骨細胞は機能性天然組織のマトリックス分子の本質的な生産者である。
【0017】
このように、十分な品質を有し、治療の奏効を期待することができるような、天然組織に一致する適切な移植可能な軟骨組織を製造することができる軟骨細胞を提供することが強く求められている。この治療の奏効は、主として移植可能な軟骨組織の品質に依存する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】独国特許出願公開第10013223号明細書
【特許文献2】米国特許第7887843(B2)号明細書
【特許文献3】欧州特許第2345450(B1)号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第102009025347(A1)号明細書
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】Andererら,Journal of Bone and Mineral Research(2002),New York,NY,US,Vol.17,no.8,p.1420-1429
【非特許文献2】Michael W. Pfaffl,A new mathematical model for relative quantification in real-time RT-PCR,Nucleic Acids Research,2001,Vol.29,No.9
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
したがって、本発明の目的は、特に、改善された特性、特に天然の軟骨細胞との同一性などの十分な品質を有する改善された移植可能な軟骨組織と、特に関節軟骨欠損の治療および療法の奏効のために高品質な移植片を得ることができるような改善された品質のスフェロイドと、を提供することである。
【0021】
本発明者らは、驚くべきことに、移植可能な軟骨組織の製造のための十分な品質を可能にする、単離軟骨細胞におけるマーカーを同定することができた。本発明のマーカーは、特に、培養物における単離軟骨細胞の、天然の軟骨細胞に対する軟骨細胞の同一性(「同一性マーカー」)の測定を可能にする。
【0022】
適切な軟骨細胞の同一性が、今度は、適切な移植可能な軟骨組織の製造を可能にする。なぜなら、一方では十分な軟骨特異的細胞外基質(ECM)を得ることができ、他方では関節軟骨欠損の改善された治療が実現されるからである。
【0023】
さらなる実施形態において、本発明のマーカーは、単離軟骨細胞またはスフェロイドの純度または夾雑物(「純度マーカー」)の測定を可能にする。
【0024】
前述のマーカーは十分な品質を保証し、それによって「品質マーカー」となる。
【0025】
したがって、本発明は、移植可能な軟骨組織の製造のための軟骨細胞またはスフェロイ
ドの選択方法であって、少なくとも1つの品質マーカーまたは同一性マーカーまたは純度マーカーが測定されることを特徴とする方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明による、移植可能な軟骨組織の製造のための軟骨細胞またはスフェロイドの選択方法は、第1ステップにおいて、軟骨細胞を単層培養物(上記参照、2次元拡大培養物として公知のもの)で増殖させ、第2ステップにおいて、軟骨細胞を集合させてスフェロイドを形成させ、それからスフェロイドを選択してもよいように、集合させてスフェロイド(上記参照、3D培養として公知のもの)を形成させることができることを含む。
【0027】
好ましい実施形態において、品質マーカーまたは同一性マーカーまたは純度マーカーはKAL1、CRTAC1、NRN1またはEBF3のグループから選択され、これ(これら)はin vitroで測定される。
【0028】
好ましい実施形態において、品質マーカーまたは同一性マーカーはKAL1、CRTAC1のグループから選択され、および/または純度マーカーはEBF3、NRN1である。特に、滑膜細胞は、純度マーカーEBF3によってin vitroで測定されてもよい不都合な夾雑物である。このような夾雑物は、軟骨細胞の品質を低下させる場合があり、スフェロイドの品質も低下させる場合がある。
【0029】
さらに好ましい実施形態において、前述のマーカーに加えて、潜在的マーカーとして公知のものが本発明により求められてもよい。この潜在的マーカーはスフェロイドから得られる移植可能な軟骨組織の活性および再生能力の予測を可能にする。本発明によるこのような潜在的マーカーは、好ましくはプロテオグリカンであり、特に好ましくはアグリカン(ACAN)である。
【0030】
【表1】
【0031】
関連付けられたDNA配列は、アクセッション番号(たとえばNCBI)によって明確に特定することができる。
【0032】
本発明のマーカーのin vitro測定は、好ましくは、これらのマーカーの遺伝子発現を測定することによって、そして単離軟骨細胞および得られたスフェロイドにおける遺伝子発現レベルも測定することによって達成され、これらは、たとえば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR、特にqPCR)によってルーチンに測定することができる。実施例を参照のこと。
【0033】
本発明によれば、マーカーは、遺伝子発現だけでなく、本発明の方法における遺伝子発現の増減も示し、したがってマーカーとしてのそれらの適合性も示す。
【0034】
さらなる実施形態において、遺伝子発現または遺伝子発現レベルは、参照遺伝子の存在下で、かつその遺伝子発現または遺伝子発現レベルと比較して測定してもよい。これによって、そしてソフトウェア支援によっても、遺伝子発現の正規化およびその定量が可能となる。非特許文献2を参照のこと。
【0035】
【表2】
【0036】
関連付けられたDNA配列は、アクセッション番号(たとえばNCBI)によって明確に特定することができる。
【0037】
本発明の範囲内で、用語「選択」とは、たとえば、本発明のマーカーの遺伝子発現を示さない軟骨細胞またはスフェロイド、または、他の軟骨細胞またはスフェロイドと比較して比較的低い遺伝子発現または遺伝子発現レベルを示す軟骨細胞またはスフェロイドを廃棄することを意味する。当業者は、得られた遺伝子発現パターンに基づいて、1以上の軟骨細胞/スフェロイドのより強い遺伝子発現とより弱い遺伝子発現とを区別することと、それに応じてこのような軟骨細胞/スフェロイドを選ぶことができる。
【0038】
さらに好ましい実施形態において、増殖後、それから得られる、1つ/両方の参照遺伝子(R)、より具体的にはB2Mおよび/またはTOP1に対する以下の遺伝子発現の比を有する単離軟骨細胞およびスフェロイドを選択し選ぶものとする:
CRTAC1/R>0.003
NRN1/R≧0.1
KAL1/R>1.0
EBF3/R≦0.4
ACAN/R≧0.29
さらに好ましい比は、
CRTAC1/R≧0.006、特に≧0.009および≧0.012
NRN1/R≧0.2、特に≧0.3および≧0.4
KAL1/R≧2.0、特に≧3.0および≧4.0
EBF3/R≦0.3、特に≦0.2および≦0.1
ACAN/R≧0.39、特に≧0.49および≧0.59
である。
【0039】
これらの記載されている値は適切な閾値であると考えられる。
【0040】
したがって、本発明は、移植可能な軟骨組織の製造のための軟骨細胞またはスフェロイドの選択方法であって、本発明のマーカーを参照遺伝子と比較して測定することを特徴とする方法に関する。
【0041】
さらに好ましい実施形態において、実施される純度マーカーEBF3の測定の過程で、増殖後の単離軟骨細胞または得られたスフェロイドにおける細胞の総数に対する夾雑物としての滑膜細胞の割合は9%以下であり、特に5%以下である。
【0042】
本発明の方法は、特に移植用軟骨組織として選ばれる軟骨細胞およびスフェロイドの選択を可能にする。これは、本発明のマーカー、特に品質マーカーまたは同一性マーカーまたは純度マーカーの特定の特性に基づく。したがって、特定の遺伝子発現を示す軟骨細胞およびスフェロイドが選ばれ、対応する遺伝子産物はたとえばPCRによって検出することができる。
【0043】
したがって、本発明は、本発明の方法によって得られる単離軟骨細胞または得られた単離スフェロイドに関する。特に、関節軟骨欠損および/または自家軟骨細胞移植の治療に使用するための、特に薬物または医薬品の形態での、またはこのような軟骨細胞もしくはスフェロイドを含む医薬組成物の形態での移植可能な軟骨組織も含まれる。
【0044】
本発明のさらに好ましい実施形態において、本発明による移植可能な軟骨組織は、アプリケーター(特許文献3(出願人のco.fix 150)または特許文献4を参照のこと)を用いて患者に移植される。移植軟骨組織は、好ましくは、さらなる補助剤および添加剤を加えた生理食塩水中で医薬組成物の形態で保存されてもよい。
本発明の精神および範囲は、添付する特許請求の範囲の中に存在するが、本願の出願時に特許請求の範囲として存在し、その一部は補正により削除された、以下の[予備的な特許請求の範囲]の中にも潜在する。この[予備的な特許請求の範囲]の記載事項は、本願明細書の開示に含まれるものとする。
[予備的な特許請求の範囲]
[予備請求項1]・・・
移植可能な軟骨組織の製造のための軟骨細胞の選択方法であって、KAL1、CRTAC1、NRN1またはEBF3のグループから選択される少なくとも1つの同一性マーカーまたは純度マーカーをin vitroで測定することを特徴とする、方法。
[予備請求項2]
移植可能な軟骨組織を製造するために、第1ステップにおいて、前記軟骨細胞を単層構造体で増殖させ、第2ステップにおいて、集合させてスフェロイドを形成させることを特徴とする、予備請求項1に記載の軟骨細胞の選択方法。
[予備請求項3]
前記軟骨細胞を集合させてスフェロイドを形成させ、それからスフェロイドを選ぶことを特徴とする、前記予備請求項1または2のいずれか1項に記載の軟骨細胞の選択方法。[予備請求項4]
前記同一性マーカーがKAL1、CRTAC1のグループから選ばれ、および/または前記純度マーカーがNRN1、EBF3のグループから選ばれることを特徴とする、予備請求項1~3のいずれか1項に記載の軟骨細胞の選択方法。
[予備請求項5]
i.)前記同一性マーカーKAL1を有する、単層培養物中の軟骨細胞をin vitroで測定し、および/またはii.)少なくとも1つの同一性マーカーCRTAC1を有する、スフェロイド中の軟骨細胞をin vitroで測定することを特徴とする、予備請求項1~4のいずれか1項に記載の軟骨細胞の選択方法。
[予備請求項6]
プロテオグリカン、特にアグリカンをin vitroでさらに測定することを特徴とする、予備請求項1~5のいずれか1項に記載の軟骨細胞の選択方法。
[予備請求項7]
本発明のマーカーを参照遺伝子と比較して測定することを特徴とする、予備請求項1~6のいずれか1項に記載の軟骨細胞の選択方法。
[予備請求項8]
CRTAC1/R>0.003
NRN1/R≧0.1
KAL1/R>1.0
EBF3/R≦0.4
ACAN/R≧0.29
のグループから選択される遺伝子発現の少なくとも1つの比を測定することを特徴とする、予備請求項7に記載の軟骨細胞の選択方法。
[予備請求項9]
CRTAC1/R≧0.006、特に≧0.009および≧0.012
NRN1/R≧0.2、特に≧0.3および≧0.4
KAL1/R≧2.0、特に≧3.0および≧4.0
EBF3/R≦0.3、特に≦0.2および≦0.1
ACAN/R≧0.39、v≧0.49および≧0.59
のグループから選択される遺伝子発現の少なくとも1つの比を測定することを特徴とする、予備請求項7に記載の軟骨細胞の選択方法。
[予備請求項10]
増殖後の単離軟骨細胞または得られたスフェロイドにおける総細胞数に対する滑膜細胞の割合が9%以下であり、特に5%以下であることを特徴とする、予備請求項1~9のいずれか1項に記載の軟骨細胞の選択方法。
[予備請求項11]
予備請求項1~10のいずれか1項に記載の方法によって得られる単離軟骨細胞。
[予備請求項12]
予備請求項1~10のいずれか1項に記載の方法によって得られる単離スフェロイド。[予備請求項13]
前記スフェロイドにおける総細胞数に対する滑膜細胞の割合が9%以下であることを特徴とする、予備請求項1~10のいずれか1項に記載の方法によって得られる単離スフェロイド。
[予備請求項14]
予備請求項10~13のいずれか1項に記載の軟骨細胞および/またはスフェロイド、または予備請求項1~9のいずれか1項に記載の方法によって得られる軟骨細胞および/またはスフェロイドを含む移植可能な軟骨組織。
[予備請求項15]
関節軟骨欠損の治療または自家軟骨細胞移植に使用するための、予備請求項14に記載の移植可能な軟骨組織。
【0045】
以下の図面および実施例は、本発明を説明するために役に立つが、図面および実施例を限定するものではない。
実施例1:
軟骨生検材料および細胞培養物からの軟骨細胞の単離
軟骨特異的細胞
軟骨特異的細胞(軟骨細胞)は、コラゲナーゼ(350単位/ml)を用いる酵素消化によって軟骨生検材料から単離した。酵素消化は4~6時間続け、37℃で行った。軟骨生検材料は、膝関節の大腿骨顆部から採取した。酵素消化後、軟骨細胞を遠心分離し、洗浄し、計数して、細胞培養培地(アルファMEM/ハムF12培地1:1、1%グルタミン)および自家血清(10~15%ヒト血清)とともに組織培養フラスコに播種した。増殖のために、2次元拡大培養(単層)で、37℃で7~38日間、in vitroで細胞を培養した。3~6日毎に細胞培養培地を交換した。細胞培養物がコンフルエントになると、パパインを用いて細胞培養物を継代培養し、いくつかの培養フラスコに分けた。
【0046】
単層培養によって十分な細胞数に達した後、2%アガロースでコーティングされたマイクロタイタープレートに1ウェル当たり200,000個の細胞を播種した。細胞は集合して3次元の丸い構造体(スフェロイド)を形成した。スフェロイドの培養中、10%自家血清と混合した細胞培養培地(アルファMEM/ハムF12培地1:1、1%グルタミン)は定期的(3~6日毎)に交換した。14~42日間、3D培養を続けた。
【0047】
スフェロイド培養後、医療品担体(0.9%NaCl)中にスフェロイドを採取することによって移送および移植のための軟骨細胞移植片を調製し、次いでそれをアプリケーターシステムco.fix 150またはシリンジに移した。
【0048】
要約すれば、軟骨細胞移植片の製造は、単離軟骨細胞を増殖させるための単層培養段階と、軟骨細胞を集合させてスフェロイドを形成させるための3D培養段階とからなった。軟骨細胞移植片は、自家適用を目的とするもの、すなわち、同じ患者の膝への移植を目的とするものであった。
実施例2:
a.)RNAの単離
スフェロイドの製造まで2次元拡大培養(単層)で軟骨細胞を培養し、次いで酵素溶液(パパイン)を用いて細胞培養フラスコの底部から、かつその細胞複合体から軟骨細胞を摘出した。同一性試験のために、細胞浮遊液から1×10個のこれらの軟骨細胞を摘出し、反応容器に移し、残りの細胞はその後のスフェロイドの製造に用いた。試験に関連する単層細胞は遠心分離除去し、その細胞ペレットを適切な溶解緩衝液(PeqGOLD、Peqlab社)に溶解し、ショック凍結し、RNAの単離まで-70℃で保存した。軟骨細胞スフェロイドのマーカー試験のために、2週間の培養時間後に、ウェルプレートから8個のスフェロイドを摘出し、PBSで洗浄し、適切な溶解緩衝液(PeqGOLD、Peqlab社)に溶解した。最善の細胞破壊のために、溶解緩衝液に入れたスフェロイドをシリンジおよびカニューレで吸引し排出することによって機械的にホモジナイズした。次いで溶解物を液体窒素中でショック凍結し、RNAの単離まで-70℃で保存した。
【0049】
製造業者の使用説明書に従って、Peqlab社製のpeqGOLD Total RNA Kitによって、またはQuiagen社製のRNeasy Plus Mini
Kitを用いて軟骨細胞のスフェロイドおよび単層細胞から全RNAの抽出を行った。単離RNAはヌクレアーゼフリー水で溶出し、cDNA合成まで-70℃で保存した。RNAの単離後、製造業者の使用説明書に従って、分光光度計(NanoDrop、Thermo Scientific社)およびバイオアナライザ(Agilent社)によってRNAの量、品質および完全性を測定した。
b.)cDNA合成
製造業者の使用説明書に従って、Transcriptor First Strand cDNA Synthesis Kit(Roche社)によってcDNA合成を行った。各試料について、ランダムヘキサマープライマーを用いて80ngの全RNAを転写した。滅菌反応容器中に鋳型プライマー混合物を入れ、反応容量を20μlにした。鋳型プライマー混合物に、以下のさらなる成分をピペットで移した:トランスクリプターリバーストランスクリプターゼ反応緩衝液、プロテクターRNaseインヒビター、デオキシヌクレオチドミックス、トランスクリプターリバーストランスクリプターゼ。反応バッチを混合し、あわせて遠心分離し、次いでサーモサイクラー中でインキュベートした。次いで、逆転写されたcDNAをヌクレアーゼフリー水で最終濃度1ng/μlに希釈した。qPCR解析においてさらに使用するまで、-20℃で試料を保存した。
c.)qPCR
qPCR解析のために、384ウェルフォーマットのLightCYcler(登録商標)480インスツルメントII(Roche社)によるqPCT技術を用いた。プライマーをHPLC精製し、ヌクレアーゼフリー水に10μMの濃度に溶解した。試料は10μMの濃度で用いた。測定されるマーカーのために、プライマーと試料濃度と添加剤使用とに関する既定のqPCR反応条件を作成した。全試料に対して、特異的プライマーの反応条件に応じてマスターミックスを作成した。各標的遺伝子に特異的な8μlの反応混合物を、384ウェルプレートの対応するウェルにピペットで移し、次いで2μlのcDNA試料(1ng/μl)を加え、それによって各qPCR反応の全量を10μlにした。
【0050】
qPCR解析は、対象の遺伝子の蛍光標識PCR増幅産物の指数的増加に基づく。qPCRデータは、Advanced Relative Quantificationソフトウェアモジュール(Roche社)を使用するLightCYcler(登録商標)
480ソフトウェアを用いて解析した。用いた検出フォーマットは、以下のパラメータ:励起フィルター483nm、発光フィルター533nm、フィルターコンビネーションFAMでの、いわゆるMono Colour Hydrolysis sample/URL Sample Programであった。相対定量のためのソフトウェアモジュールを用いてqPCRデータを作成し解析した。様々な標的遺伝子の絶対qPCRデータ(CP値)は、Abs Quant/2nd Derivative Max法によって作成した。Cp値(クロッシングポイント値またはサイクル閾値)は、設定した蛍光シグナル閾値を超えるために必要なPCRサイクル数である。各サイクルの終わりに、72℃で蛍光シグナルの検出を行った。
【0051】
参照遺伝子に対する標的遺伝子のmRNA発現レベルの正規化は、Advanced Relative Quantificationソフトウェアモジュール(Roche社)を用いるいわゆる「効率」法を用いて行った。2つの参照遺伝子、TOP1およびB2Mも、それぞれ、各試料の内部正規化対照として測定した。この参照遺伝子に対して標的遺伝子の発現が正規化され、正規化されたデータは、標的値/参照値(T/R)として、Software Module Advanced Relative Quantificationから自動的に提供された。このソフトウェアモジュールの基礎を形成する数学モデルは、参照遺伝子に比べた標的遺伝子のCp値間の関係に基づき、また、特にプライマー特異的増殖効率に関する考察に基づく。
【0052】
正規化された発現値は、軟骨細胞移植片の品質の試験のために用いた。重要な品質属性は同一性、純度および潜在能力であったが、各品質パラメータについて少なくとも1つの特異的マーカーが特定され、十分な品質を確認するために測定することができた。正規化されたマーカー発現値は、十分な品質の確認のために設定された許容限度を満足しなければならなかった。品質パラメータの値は、単層軟骨細胞(KAL1)またはスフェロイド(CRTAC1、NRN1、EBF3およびACAN)におけるmRNA発現レベルに基づいた。
【0053】
表3-1~表3-2は、軟骨移植体に対する、記載されている選択の適用を示す。記載されているように、全部で48の軟骨移植体を製造し、本発明のマーカーを用いる同一性、純度(夾雑物)および潜在能力の試験に供した。48の軟骨移植片のうち、48が、単層(KAL1)およびスフェロイド(CRTAC1)における同一性の基準を満たした。48の軟骨移植片のうち4つが純度(夾雑物)(EBF3、NRN1)の基準を満たすことができず、48の軟骨移植片のうち19が潜在能力の基準を満たすことができなかった。全体として、48の軟骨移植片のうち22が、軟骨細胞品質(同一性、純度/夾雑物または潜在能力)の基準を満たすことができなかった。48の軟骨細胞移植片のうち26が、移植可能な軟骨組織の製造に適しており、選ばれた。
【0054】
【表3-1】
【0055】
【表3-2】
【0056】
実施例3:
設定された品質(本例においては同一性)の、単層培養で増殖された軟骨細胞による移植用軟骨組織の製造
軟骨欠損を有する治療対象の患者の健康な軟骨領域から硝子軟骨の生検材料を採取した。コラゲナーゼ溶液による軟骨組織の酵素消化によって、軟骨組織中の軟骨細胞を単離し、自家血清の存在下、最大集団倍加レベル(PDL)が10を超えないような細胞培養フラスコでの標準的な細胞培養条件(単層培養)で増殖し、移植可能な軟骨組織の製造のための十分な軟骨細胞を入手することができた。単層で増殖された軟骨細胞の一部は軟骨細胞の同一性を測定するために用い、残りの部分は移植可能な軟骨組織を製造するために用いた。単層培養物中の軟骨細胞の同一性マーカーは、軟骨細胞が軟骨細胞培養物中に含まれていることを示した。単層培養物中の軟骨細胞の同一性のために、単層中の培養した軟骨細胞の全RNAを従来の分子生物学技術によって単離し、逆転写酵素によってcDNAに転写した。少なくとも1つの参照遺伝子(上記、表2)および同一性マーカー「KAL1」の発現を従来のポリメラーゼ連鎖反応によって測定した。参照遺伝子の発現と「KAL1」の発現とを比較して、正規化された同一性マーカー「KAL1」の遺伝子発現値を得た。「KAL1」の発現は、移植可能な軟骨組織の製造のための十分な品質(同一性)の軟骨細胞が存在することを示した。
【0057】
移植可能な軟骨組織を製造するために、標準的な細胞培養培地および自家血清の存在下で、細胞培養器に、単層で増殖された十分な品質(同一性)の、少なくとも100,000個の軟骨細胞を移した。たとえば細胞培養の底部のアガロースコーティングによって軟骨細胞の細胞培養器への付着を防いだ。数日後、軟骨細胞は互いに付着して集合体、すなわちスフェロイドとして公知のものを形成した。このスフェロイドを少なくとも1~2週間にわたって培養し、軟骨様細胞外基質を形成させた(スフェロイド培養)。この軟骨組織(十分な品質(同一性)の軟骨細胞および軟骨様細胞外基質)は、治療対象の患者の軟骨欠損への挿入後に、欠損を充填し、天然の軟骨組織の機能を果たす置換軟骨組織を構築するのに適していた。
【0058】
品質(単層培養物における同一性)の不十分な軟骨組織は置換軟骨組織を構築するのには適しておらず、廃棄した。
実施例4:
設定された品質(本例においては同一性)のスフェロイド培養物中の軟骨細胞による移植用軟骨組織の製造
移植可能な軟骨組織の製造のために、実施例3で単離され、単層で増殖された軟骨細胞を用いた。
【0059】
実施例3に記載されているように、単層で増殖された軟骨細胞を、軟骨細胞の付着を防ぐ特別な細胞培養器中に移し、それによって数日後、集合体、すなわちスフェロイドとして公知のものが形成された。このスフェロイドを少なくとも1~2週間にわたって培養し、軟骨様細胞外基質を形成させた(スフェロイド培養)。
【0060】
スフェロイド培養物中の軟骨細胞の同一性マーカーは、軟骨細胞がスフェロイド培養物中に含まれていることを示した。スフェロイド培養物中の軟骨細胞の同一性を測定するために、スフェロイド中の培養した軟骨細胞の一部の全RNAを従来の分子生物学技術によって単離し、逆転写酵素によってcDNAに転写した。少なくとも1つの参照遺伝子(上記、表2)および同一性マーカー「CRTAC1」の発現を標準的なポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって測定した。参照遺伝子の発現と「CRTAC1」の発現とを比較して、正規化された同一性マーカー「CRTAC1」の遺伝子発現値を得た。「CRTAC1」の発現は、軟骨組織の移植のための十分な品質(同一性)の軟骨細胞がスフェロイドに含まれていることを示した。
【0061】
この軟骨組織(十分な品質(同一性)の軟骨細胞および軟骨様細胞外基質)は、治療対象の患者の軟骨欠損への挿入後に、欠損を充填し、天然の軟骨組織の機能を果たす置換軟
骨組織を構築するのに適していた。品質(単層培養物における同一性)の不十分な軟骨組織は置換軟骨組織を構築するのには適しておらず、廃棄した。
実施例5:
設定された品質(本例においては純度)のスフェロイド培養物中の軟骨細胞による移植用軟骨組織の製造
移植可能な軟骨組織の製造のために、実施例3で単離され、単層で増殖された軟骨細胞を用いた。
【0062】
実施例3に記載されているように、単層で増殖された軟骨細胞を、軟骨細胞の付着を防ぐ特別な細胞培養器中に移し、それによって数日後、集合体、すなわちスフェロイドとして公知のものが形成された。このスフェロイドを少なくとも1~2週間にわたって培養し、軟骨様細胞外基質を形成させた(スフェロイド培養)。
【0063】
軟骨細胞の純度マーカーは、スフェロイド培養物中の軟骨細胞の含有量を示した。スフェロイド培養物中の軟骨細胞の純度を測定するために、スフェロイド中の培養した軟骨細胞の一部の全RNAを従来の分子生物学技術によって単離し、逆転写酵素によってcDNAに転写した。少なくとも1つの参照遺伝子(上記、表2)および同一性マーカー「NRN1」の発現を標準的なポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって測定した。参照遺伝子の発現と「NR1」の発現とを比較して、正規化された同一性マーカー「NRN1」の遺伝子発現値を得た。「NRN1」の発現が純度の既定の閾値、たとえば1.0を超える場合、これは軟骨組織の移植のための十分な品質(純度)の軟骨細胞がスフェロイドに含まれていることを示す。この純度の閾値に届かない場合、不十分な品質(純度)の軟骨細胞が、軟骨組織の移植のためのスフェロイドに含まれている。
【0064】
この軟骨組織(十分な品質(純度)の軟骨細胞および軟骨様細胞外基質)は、治療対象の患者の軟骨欠損への挿入後に、欠損を充填し、天然の軟骨組織の機能を果たす置換軟骨組織を作成するのに適している。品質(単層培養物における同一性)の不十分な軟骨組織は置換軟骨組織を作成するのには適しておらず、廃棄した。
実施例6:
スフェロイド培養物中の軟骨細胞と設定された細胞夾雑物とによる移植用軟骨組織の製造
移植可能な軟骨組織の製造のために、実施例3で単離され、単層で増殖された軟骨細胞を用いた。
【0065】
実施例3に記載されているように、軟骨様細胞外基質を形成させるために、少なくとも1~2週間にわたってスフェロイドを形成させ培養した(スフェロイド培養)。
【0066】
軟骨細胞の夾雑物マーカーは、スフェロイド培養物中の滑膜細胞、骨細胞および/または脂肪細胞による細胞夾雑物の含有量を示す。スフェロイド培養物中の軟骨細胞の細胞夾雑物を測定するために、スフェロイド中の培養した軟骨細胞の一部の全RNAを従来の分子生物学技術によって単離し、逆転写酵素によってcDNAに転写した。少なくとも1つの参照遺伝子(上記、表2)および夾雑物マーカー「EBF3」の発現を標準的なポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって測定した。参照遺伝子の発現と「EBF3」の発現とを比較して、正規化された同一性マーカー「EBF3」の遺伝子発現値を得た。「EBF3」の発現が夾雑物の既定の閾値、たとえば0.8に届かない場合、これは軟骨組織の移植のためのスフェロイド中に滑膜細胞による過剰な細胞夾雑物が存在しないことを示す。夾雑物の閾値を超える場合、軟骨組織の移植のためのスフェロイドに不十分な品質(夾雑物)の軟骨細胞が存在する。
【0067】
この軟骨組織(十分な品質(夾雑物)の軟骨細胞および軟骨様細胞外基質)は、治療対象の患者の軟骨欠損への挿入後に、欠損を充填し、天然の軟骨組織の機能を果たす置換軟
骨組織を構築するのに適していた。不十分な品質(細胞夾雑物の含有量の増加)の軟骨組織は置換軟骨組織を構築するのには適しておらず、廃棄した。
実施例7:
設定された潜在能力のスフェロイド培養物中の軟骨細胞による移植用軟骨組織の製造
移植可能な軟骨組織の製造のために、実施例3で単離され、単層で増殖された軟骨細胞を用いた。
【0068】
実施例3に記載されているように、軟骨様細胞外基質を形成させるために、少なくとも1~2週間にわたってスフェロイドを形成させ培養した(スフェロイド培養)。
【0069】
軟骨細胞の潜在能力マーカーは、スフェロイド培養物中の軟骨細胞が軟骨様細胞外基質を形成する能力を有していることを示した。スフェロイド培養物中の軟骨細胞の潜在能力を測定するために、スフェロイド中の培養した軟骨細胞の一部の全RNAを従来の分子生物学技術によって単離し、逆転写酵素によってcDNAに転写した。少なくとも1つの参照遺伝子および潜在能力マーカー「アグリカン」の発現を標準的なポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって測定した。参照遺伝子の発現と「アグリカン」の発現とを比較して、正規化された夾雑物マーカー「アグリカン」の遺伝子発現値を得た。「アグリカン」の発現が潜在能力の既定の閾値、たとえば0.1を超える場合、これは十分な品質(潜在能力)の軟骨細胞が軟骨組織の移植のためのスフェロイドに含まれていることを示す。潜在能力の閾値に届かない場合、不十分な品質(不十分な潜在能力)の軟骨細胞が軟骨組織の移植のためのスフェロイドに含まれる。
【0070】
この軟骨組織(十分な品質(潜在能力)の軟骨細胞および軟骨様細胞外基質)は、治療対象の患者の軟骨欠損への挿入後に、欠損を充填し、天然の軟骨組織の機能を果たす置換軟骨組織を構築するのに適していた。不十分な品質(潜在能力)の軟骨組織は置換軟骨組織を構築するのには適しておらず、廃棄した。
実施例8:
設定された品質の軟骨細胞による移植用軟骨組織の製造
移植可能な軟骨組織の製造のために、実施例3で単離され、単層で増殖された軟骨細胞を用いた。
【0071】
実施例3に記載されているように、軟骨様細胞外基質を形成させるために、少なくとも1~2週間にわたってスフェロイドを形成させ培養した(スフェロイド培養)。
【0072】
関節軟骨欠損の移植および再生のための高品質スフェロイド培養物を検出するために、実施例3に記載されているように、同一性マーカー「KAL1」によって同一性を測定し、実施例4に記載されているように、同一性マーカー「CRTAC1」によって同一性を測定した。さらに、実施例5に記載されているように純度マーカー「NRN1」を測定し、実施例6に記載されているように純度マーカー「EBF3」を測定した。実施例7に記載されているように、潜在能力マーカー「アグリカン」も測定した。
【0073】
軟骨組織(十分な品質(単層培養および/またはスフェロイド培養における同一性、十分な純度および/または許容される細胞夾雑物の程度および軟骨様細胞外基質を形成する十分な潜在能力)の軟骨細胞および軟骨様細胞外基質)は、治療対象の患者の軟骨欠損への挿入後に、欠損を充填し、天然の軟骨組織の機能を果たす置換軟骨組織を構築するのに適していた。不十分な品質(単層培養物および/またはスフェロイド培養物における証明されていない同一性、不十分な純度および/または細胞夾雑物の不十分な程度および軟骨様細胞外基質を形成するのに不十分な潜在能力)の軟骨組織は置換軟骨組織を構築するのには適しておらず、廃棄した。
実施例9:
20名の患者からの移植用軟骨組織に対するここでの実施例8に記載した手順を後ろ向き研究に用いた。ここでは、関節軟骨損傷の再生のための軟骨組織を用いた。置換軟骨組織を構築する移植軟骨組織の能力を、確立された軟骨修復スコア(KOOS‐膝外傷および変形性膝関節症転帰スコア:Roos EM&Lohmander LS,Health and Quality of Life Outcomes 2003,I:64)、すなわち治療の臨床的奏効に基づいて臨床的に評価した。この目的のために、移植用軟骨組織による治療の前に患者質問票によって各患者のKOOSを決定した(基準値)。移植用軟骨組織による治療の1年後に、患者質問票によって再度各患者のKOOSを決定した(1年後の経過観察値)。この治療の臨床的奏効または治療奏効は、1年後の経過観察値と基準値との差(KOOSΔ)が少なくとも8ポイントであった場合に確定された(Roos EM&Lohmander LS,Health and Quality of Life Outcomes 2003,I:64)。1年後の経過観察値と基準値との差(KOOSΔ)が8ポイント未満であった場合、治療の結果としての臨床的改善は見られなかった。すなわち治療は不成功に終わったと見なした。
【0074】
20名の患者のうち4名(5697-1607、5862-1311、6070-2413、6988-2423)からの移植可能な軟骨組織において、潜在能力マーカー「アグリカン」は設定された限度値を下回ったが、同一性マーカー「KAL1」および「CRTAC1」に基づいて軟骨細胞の同一性を決定することができることが見出された。発現値は、設定された限度値を上回った。移植用軟骨組織の純度も、夾雑物マーカー「EBF3」に基づいて測定することができ、確定されたが、ここで発現値は設定された限度値を下回った。したがって、これらの4つの移植用軟骨組織は、置換軟骨組織の構築のためには不十分であることが立証され、廃棄された。これは20%の棄却率(20の移植用軟骨組織のうち4つ)に該当する。
【0075】
20名の患者のうち16名(6266-2601、6658-2420、7494-2284、8528-2286、9070-2709、9110-2294、5669-2263、9110-2294、6094-1312、6340-2277、6611-2418、8315-2434、8916-2440、8931-1126、8948-2706、8966-2441)からの移植可能な軟骨組織において、潜在能力マーカー「アグリカン」も設定された限度値を上回り、軟骨細胞の同一性は同一性マーカー「KAL1」および「CRTAC1」に基づいて決定することができることが見出された。発現値も、設定された限度値を上回った。移植用軟骨組織の純度も、夾雑物マーカー「EBF3」に基づいて測定することができ、確定されたが、ここで発現値は設定された限度値を下回った。したがって、これらの16の移植用軟骨組織は置換軟骨組織の構築のために十分な品質であることが立証され、移植に用いられた。これは80%の成功率(20の移植用軟骨組織のうち16)に該当する。
【0076】
このように、20名の患者のうち4名(5697-1607、5862-1311、6070-2413、6988-2423)の移植可能な軟骨組織は不十分な品質(単層構造体および/またはスフェロイド構造体における証明されていない同一性、不十分な純度および/または細胞夾雑物の不十分な程度および軟骨様細胞外基質を形成するのに不十分な潜在能力)の軟骨組織であることが立証されたが、20名の患者のうち16名(6266-2601、6658-2420、7494-2284、8528-2286、9070-2709、9110-2294、5669-2263、9110-2294、6094-1312、6340-2277、6611-2418、8315-2434、8916-2440、8931-1126、8948-2706、8966-2441)からの移植可能な骨組織は、十分な品質(単層構造体および/またはスフェロイド構造体における同一性、十分な純度および/または細胞夾雑物の十分な程度および軟骨様細胞外基質を形成するのに十分な潜在能力)の軟骨組織を有していた。
【0077】
この治療の臨床的奏効または治療奏効に関して、後ろ向き研究において不十分な品質の移植可能な軟骨組織が決定された、20名の患者のうち4名の患者(5697-1607、5862-1311、6070-2413、6988-2423)において、治療の結果としての臨床的改善が見られなかったことが見出された(表4参照)。KOOSの1年後の経過観察値とKOOSの基準値との差は8ポイント未満であり、したがってその治療は不成功に終わった。一方、十分な品質の移植可能な軟骨組織が決定された、20名の患者のうちの16名の患者(6266-2601、6658-2420、7494-2284、8528-2286、9070-2709、9110-2294、5669-2263、9110-2294、6094-1312、6340-2277、6611-2418、8315-2434、8916-2440、8931-1126、8948-2706、8966-2441)において、治療の結果としての臨床的改善が見られたことが見出された。KOOSの1年後の経過観察値とKOOSの基準値との差は少なくとも8ポイントであり、したがってその治療は成功した。
【0078】
【表4】
【手続補正書】
【提出日】2022-11-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移植可能な軟骨組織を製造するために、単離され増殖された軟骨細胞であって、
当該軟骨細胞またはそれらの軟骨細胞を集合させて形成されたスフェロイドが、 次の3つの条件(1)(2)および(4)を満たしている、軟骨細胞。
(1)KAL1および/またはCRTAC1の遺伝子が、参照遺伝子と比較して、軟骨細胞の同一性を示す既定の閾値を超えて発現している、
(2)NRN1の遺伝子が、参照遺伝子と比較して、軟骨組織の移植のために必要な純度を示す既定の閾値を超えて発現している、
(4)プロテオグリカン、好ましくはアグリカン(ACAN)の遺伝子が、参照遺伝子と比較して、移植可能な軟骨組織の活性および再生能力の予測可能性を示す既定の閾値を超えて発現している。
【請求項2】
KAL1/R>1.0、
CRTAC1/R>0.003、
NRN1/R≧0.1、
ACAN/R≧0.29、
のいずれかの式に基づいて、参照遺伝子(R)に対する遺伝子発現の比が求められる、請求項1に記載の軟骨細胞。
【請求項3】
KAL1/R≧2.0、 ≧3.0、または ≧4.0、
CRTAC1/R≧0.006、 ≧0.009、または≧ 0.012、
NRN1/R≧0.2、 ≧0.3、または ≧0.4、
ACAN/R≧0.39、≧0.49、または ≧0.59、
のいずれかの式に基づいて、参照遺伝子(R)に対する遺伝子発現の比が測定される、請求項1に記載の軟骨細胞。
【請求項4】
移植可能な軟骨組織を製造するために、単離され増殖された軟骨細胞であって、
当該軟骨細胞またはそれらを集合させて形成されたスフェロイドが、 次の3つの条件(1)(3)および(4)を満たしている、軟骨細胞。
(1)KAL1および/またはCRTAC1の遺伝子が、参照遺伝子と比較して、軟骨細胞の同一性を示す既定の閾値を超えて発現している、
(3)EBF3の遺伝子が、参照遺伝子と比較して、軟骨組織の移植のために不要な夾雑物を示す既定の閾値に届かないで発現している、
(4)プロテオグリカン、好ましくはアグリカン(ACAN)の遺伝子が、参照遺伝子と比較して、移植可能な軟骨組織の活性および再生能力の予測可能性を示す既定の閾値を超えて発現している。
【請求項5】
KAL1/R>1.0、
CRTAC1/R>0.003、
EBF3/R≦0.4、
ACAN/R≧0.29
のいずれかの式に基づいて、参照遺伝子(R)に対する遺伝子発現の比が求められる、請求項4に記載の軟骨細胞。
【請求項6】
KAL1/R≧2.0、 ≧3.0、または ≧4.0、
CRTAC1/R≧0.006、 ≧0.009、または ≧ 0.012、
EBF3/R≦0.3、≦0.2、または≦0.1、
ACAN/R≧0.39、≧0.49、または≧0.59、
のいずれかの式に基づいて、参照遺伝子に対する遺伝子発現の比が測定される、請求項4に記載の軟骨細胞。
【請求項7】
増殖後の単離軟骨細胞または得られたスフェロイドの総細胞数に対する滑膜細胞の割合が9%以下であり、好ましくは5%以下である、請求項5または請求項6に記載の軟骨細胞。
【請求項8】
移植可能な軟骨組織を製造するために、単離され増殖された軟骨細胞を選択する方法であって、
軟骨細胞の同一性を示す同一性マーカーとして、KAL1および/またはCRTAC1から選ばれるマーカーを当該軟骨細胞またはそれらを集合させて形成されたスフェロイドでin vitroで測定するステップと、
天然の軟骨細胞に対する軟骨細胞の純度を示す純度マーカーとして、NRN1から選ばれるマーカーを当該軟骨細胞またはそれらを集合させて形成されたスフェロイドでin vitroで測定するステップと、
移植可能な軟骨組織の活性および再生能力の予測を可能にする潜在的マーカーとして、プロテオグリカン、好ましくはアグリカン(ACAN)を含むマーカーを当該軟骨細胞またはそれらを集合させて形成されたスフェロイドでin vitroで測定するステップと、
を含む、軟骨細胞の選択方法。
【請求項9】
前記同一性マーカー、前記純度マーカーまたは潜在的マーカーを測定するステップにおいて、参照遺伝子に対する遺伝子発現の比を測定する、請求項8に記載の軟骨細胞の選択方法。
【請求項10】
KAL1/R>1.0、
CRTAC1/R>0.003、
NRN1/R≧0.1、
ACAN/R≧0.29、
のいずれかの式に基づいて、参照遺伝子(R)に対する遺伝子発現の比が求められる、請求項9に記載の軟骨細胞の選択方法。
【請求項11】
KAL1/R≧2.0、 ≧3.0、または ≧4.0、
CRTAC1/R≧0.006、 ≧0.009、または≧ 0.012、
NRN1/R≧0.2、 ≧0.3、または ≧0.4、
ACAN/R≧0.39、≧0.49、または ≧0.59、
のいずれかの式に基づいて、参照遺伝子(R)に対する遺伝子発現の比が測定される、請求項9に記載の軟骨細胞の選択方法。
【請求項12】
移植可能な軟骨組織を製造するために単離され増殖された軟骨細胞を選択する方法であって、
軟骨細胞の同一性を示す同一性マーカーとして、KAL1および/またはCRTAC1から選ばれるマーカーを当該軟骨細胞またはそれらを集合させて形成されたスフェロイドでin vitroで測定するステップと、
天然の軟骨細胞に対する夾雑物を示す純度マーカーとして、EBF3から選ばれるマーカーを当該軟骨細胞またはそれらを集合させて形成されたスフェロイドでin vitroで測定するステップと、
移植可能な軟骨組織の活性および再生能力の予測を可能にする潜在的マーカーとして、プロテオグリカン、好ましくはアグリカン(ACAN)を含むマーカーを当該軟骨細胞またはそれらを集合させて形成されたスフェロイドでin vitroで測定するステップと、
を含む、軟骨細胞の選択方法。
【請求項13】
前記同一性マーカー、前記純度マーカーまたは潜在的マーカーを測定するステップにおいて、参照遺伝子(R)に対する遺伝子発現の比を測定する、請求項12に記載の軟骨細胞の選択方法。
【請求項14】
KAL1/R>1.0、
CRTAC1/R>0.003、
EBF3/R≦0.4、
ACAN/R≧0.29
のいずれかの式に基づいて、参照遺伝子(R)に対する遺伝子発現の比が求められる、請求項13に記載の軟骨細胞の選択方法。
【請求項15】
KAL1/R≧2.0、 ≧3.0、または ≧4.0、
CRTAC1/R≧0.006、 ≧0.009、または ≧ 0.012、
EBF3/R≦0.3、≦0.2、または≦0.1、
ACAN/R≧0.39、≧0.49、または≧0.59、
のいずれかの式に基づいて、参照遺伝子(R)に対する遺伝子発現の比が測定される、請求項13に記載の軟骨細胞の選択方法。
【請求項16】
移植可能な軟骨組織を製造するために、第1ステップにおいて、前記軟骨細胞を単層培養物で増殖させ、第2ステップにおいて、集合させてスフェロイドを形成させる、請求項8または請求項12に記載の軟骨細胞の選択方法。
【請求項17】
(i)前記同一性マーカーKAL1を有する、単層培養物中の軟骨細胞をin vitroで測定し、および/または(ii)少なくとも1つの同一性マーカーCRTAC1を有する、スフェロイド中の軟骨細胞をin vitroで測定する、請求項8または請求項12に記載の軟骨細胞の選択方法。
【請求項18】
請求項16に記載の軟骨細胞の選択方法によって形成されたスフェロイドを用いて移植可能な軟骨組織を製造する方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
本発明は、軟骨細胞またはスフェロイドから選択し採用することによる軟骨組織の製造方法、および、医薬組成物、医薬または移植材料としてのその使用に関する。特に、本発明は、特に移植のための軟骨組織の製造のための適切な軟骨細胞を同定するためのマーカーに関する。