(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023120517
(43)【公開日】2023-08-30
(54)【発明の名称】燃焼ガス分析システム及び燃焼ガス分析方法
(51)【国際特許分類】
G01N 1/00 20060101AFI20230823BHJP
G01M 15/10 20060101ALI20230823BHJP
G01N 1/22 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
G01N1/00 101S
G01M15/10
G01N1/22 G
G01N1/00 101R
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022023447
(22)【出願日】2022-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】501204525
【氏名又は名称】国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボンダレンコ オレクシー
(72)【発明者】
【氏名】福田 哲吾
【テーマコード(参考)】
2G052
2G087
【Fターム(参考)】
2G052AA02
2G052AB02
2G052AB06
2G052AC20
2G052AD02
2G052AD42
2G052BA03
2G052BA17
2G052CA04
2G052CA35
2G052HC04
2G052HC10
2G052HC32
2G087AA01
2G087AA15
2G087BB28
2G087CC19
2G087DD01
2G087EE11
(57)【要約】
【課題】燃焼ガスの酸素濃度と二酸化炭素濃度を高い精度で分析し、2サイクル式の内燃機関における燃焼状態や性能を評価することを可能にする。
【解決手段】内燃機関102のシリンダと排気レシーバ104との間の接続管16に設けたサンプリングポイントと、サンプリングポイントに接続されるサンプリング管20と、サンプリング管20に設けたサンプリング弁22と、内燃機関102の作動状態を検出するピストンポジションセンサ40、クランク角度エンコーダ42と、当該検出結果に応じて所定のタイミングでサンプリング弁22を開閉制御する制御コンピュータ36と、サンプリング管20の下流端に設けたガス分析器32とを備えた燃焼ガス分析システム100とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2サイクル式の内燃機関の燃焼ガスを分析する燃焼ガス分析システムであって、
前記内燃機関のシリンダと排気レシーバとの間の接続管に設けたサンプリングポイントと、
前記サンプリングポイントに接続されるサンプリング管と、
前記サンプリング管に設けたサンプリング弁と、
前記内燃機関の作動状態を検出する作動状態検出手段と、
前記作動状態検出手段の検出結果に応じて所定のタイミングで前記サンプリング弁を開閉制御する制御手段と、
前記サンプリング管の下流端に設けた燃焼ガス分析手段とを備えたことを特徴とする燃焼ガス分析システム。
【請求項2】
請求項1に記載の燃焼ガス分析システムであって、
前記所定のタイミングは、前記シリンダに設けた排気弁の開き始めから開き切るまでの間のタイミングであることを特徴とする燃焼ガス分析システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の燃焼ガス分析システムであって、
前記作動状態検出手段は、前記シリンダ内のピストンの位置を検出するピストンポジションセンサと、前記内燃機関の回転数を検出するクランク角度エンコーダを用いることを特徴とする燃焼ガス分析システム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の燃焼ガス分析システムであって、
前記接続管が前記シリンダの上部から横引きされて前記排気レシーバに合流する構成であり、
前記サンプリングポイントは、前記接続管の上部から下方に向けて設けられることを特徴とする燃焼ガス分析システム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の燃焼ガス分析システムであって、
前記サンプリング管の前記サンプリング弁と前記燃焼ガス分析手段との間にバッファタンクを備えたことを特徴とする燃焼ガス分析システム。
【請求項6】
請求項5に記載の燃焼ガス分析システムであって、
前記バッファタンクへの前記燃焼ガスの貯留状況を検出する貯留状況検出手段をさらに備え、
前記貯留状況検出手段で前記燃焼ガスの貯留状態が所定の条件を満たすことを検出したときに、前記燃焼ガス分析手段による前記燃焼ガスの分析を行うことを特徴とする燃焼ガス分析システム。
【請求項7】
請求項6に記載の燃焼ガス分析システムであって、
前記燃焼ガス分析手段は、前記貯留状況検出手段を兼ねており、
前記バッファタンクに貯留された前記燃焼ガスの酸素濃度を検出することを特徴とする燃焼ガス分析システム。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の燃焼ガス分析システムであって、
前記サンプリング管及び前記バッファタンクの少なくとも一方にパージ手段をさらに備えたことを特徴とする燃焼ガス分析システム。
【請求項9】
請求項8に記載の燃焼ガス分析システムであって、
前記制御手段は、前記燃焼ガス分析手段による前記燃焼ガスの分析を行わないときに、前記サンプリング弁と前記パージ手段を開状態とし、前記サンプリング管又は前記バッファタンクの少なくとも一方から連続的に前記燃焼ガスを排出することを特徴とする燃焼ガス分析システム。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の燃焼ガス分析システムであって、
前記燃焼ガス分析手段が、前記燃焼ガスの酸素濃度と二酸化炭素濃度の検出を行うことを特徴とする燃焼ガス分析システム。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の燃焼ガスの分析システム用いた燃焼ガスの分析方法であって、
前記内燃機関のサイクル毎に前記燃焼ガスを採取し前記燃焼ガス分析手段で連続的に分析する、又は、前記バッファタンクに複数の前記サイクルの前記燃焼ガスを貯留した後に前記燃焼ガス分析手段でまとめて分析することを特徴とする燃焼ガス分析方法。
【請求項12】
請求項11に記載の燃焼ガス分析方法であって、
前記燃焼ガス分析手段で連続的に分析する場合、複数の前記サイクルの前記燃焼ガスの分析結果を平均化処理することを特徴とする燃焼ガス分析方法。
【請求項13】
請求項11又は請求項12に記載の燃焼ガス分析方法であって、
燃焼ガスの酸素濃度と二酸化炭素濃度を分析し、分析結果に基づいて空気過剰率を算出して前記内燃機関の前記シリンダにおける燃焼状態及び内燃機関性能の少なくとも一方を評価することを特徴とする燃焼ガス分析方法。
【請求項14】
請求項13に記載の燃焼ガス分析方法であって、
前記燃焼状態の評価結果及び前記内燃機関性能の評価結果の少なくとも一方を前記内燃機関の制御に利用することを特徴とする燃焼ガス分析方法。
【請求項15】
請求項13又は請求項14に記載の燃焼ガス分析方法であって、
前記燃焼状態の評価結果及び前記内燃機関性能の評価結果の少なくとも一方を前記内燃機関を管理する管理部門に情報通信網を介して伝達することを特徴とする燃焼ガス分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼ガス分析システム及び燃焼ガス分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼル機関は船舶の推進プラントとして、信頼性と熱効率の高さ、及び各種燃料に対応できる適用性からその主流を占めており、今後もその座を維持すると思われる。しかしながら、近年の排ガス規制の強化と燃料経済性に対応するために益々その燃焼プロセスに目を向ける必要がある。最適燃焼プロセスはシリンダへの空気の供給具合によって大きく変わり、空気の供給はエンジンの各種運転状態と過給機の性能に大きく影響される。そこで、実際の運航状態において、簡単に空気の供給状態を知ることは重要で、これができれば燃焼プロセスとエンジン性能の評価ができるばかりでなく、ますます複雑になるエンジンコントロールシステムの開発に役立つ。
【0003】
往復動エンジンのシリンダ内圧力計測可能とし且つシリンダ内の燃焼ガスを1サイクル中の制御された期間に採取することを可能にするガス採取装置が開示されている(特許文献1)。また、サンプリングガスを採取するガス導入管の一端を燃焼室内に挿入し、ガスサンプリング用電磁弁を介して分析器にガスを抽出するガスサンプリング装置が開示されている(特許文献2)。さらに、内燃機関において、各シリンダ出口に接続された主排気管と、主排気管の一部を迂回するバイパス管とを設け、バイパス管には排気成分を測定するためのセンサを挿入するための測定開口部を備えた構成が開示されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-298080号公報
【特許文献2】特開平2-201239号公報
【特許文献3】特開2020-8020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、燃焼室(シリンダ)から燃焼ガスを直接取り出し、分析し、燃焼状態を観測する方法では、燃焼室に穴をあける必要があると共に、サンプリング弁は高温及び高圧に曝されるために耐久性を高めることが難しく、高価な物になってしまうという課題があった。また、2サイクル式の内燃機関においては、排気弁が開成した状態で排気として燃焼ガスの排出に続いて掃気が行われるため、燃焼ガスだけを取り出すためのタイミングを適切に設定する必要があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に対応した燃焼ガス分析システムは、2サイクル式の内燃機関の燃焼ガスを分析する燃焼ガス分析システムであって、前記内燃機関のシリンダと排気レシーバとの間の接続管に設けたサンプリングポイントと、前記サンプリングポイントに接続されるサンプリング管と、前記サンプリング管に設けたサンプリング弁と、前記内燃機関の作動状態を検出する作動状態検出手段と、前記作動状態検出手段の検出結果に応じて所定のタイミングで前記サンプリング弁を開閉制御する制御手段と、前記サンプリング管の下流端に設けた燃焼ガス分析手段とを備えたことを特徴とする燃焼ガス分析システムである。
【0007】
ここで、前記所定のタイミングは、前記シリンダに設けた排気弁の開き始めから開き切るまでの間のタイミングであることが好適である。
【0008】
また、前記作動状態検出手段は、前記シリンダ内のピストンの位置を検出するピストンポジションセンサと、前記内燃機関の回転数を検出するクランク角度エンコーダを用いることが好適である。
【0009】
また、前記接続管が前記シリンダの上部から横引きされて前記排気レシーバに合流する構成であり、前記サンプリングポイントは、前記接続管の上部から下方に向けて設けられることが好適である。
【0010】
また、前記サンプリング管の前記サンプリング弁と前記燃焼ガス分析手段との間にバッファタンクを備えたことが好適である。
【0011】
また、前記バッファタンクへの前記燃焼ガスの貯留状況を検出する貯留状況検出手段をさらに備え、前記貯留状況検出手段で前記燃焼ガスの貯留状態が所定の条件を満たすことを検出したときに、前記燃焼ガス分析手段による前記燃焼ガスの分析を行うことが好適である。
【0012】
また、前記燃焼ガス分析手段は、前記貯留状況検出手段を兼ねており、前記バッファタンクに貯留された前記燃焼ガスの酸素濃度を検出することが好適である。
【0013】
また、前記サンプリング管及び前記バッファタンクの少なくとも一方にパージ手段をさらに備えたことが好適である。
【0014】
また、前記制御手段は、前記燃焼ガス分析手段による前記燃焼ガスの分析を行わないときに、前記サンプリング弁と前記パージ手段を開状態とし、前記サンプリング管又は前記バッファタンクの少なくとも一方から連続的に前記燃焼ガスを排出することが好適である。
【0015】
また、前記燃焼ガス分析手段が、前記燃焼ガスの酸素濃度と二酸化炭素濃度の検出を行うことが好適である。
【0016】
請求項11に対応した燃焼ガス分析方法は、上記燃焼ガスの分析システム用いた燃焼ガスの分析方法であって、前記内燃機関のサイクル毎に前記燃焼ガスを採取し前記燃焼ガス分析手段で連続的に分析する、又は、前記バッファタンクに複数の前記サイクルの前記燃焼ガスを貯留した後に前記燃焼ガス分析手段でまとめて分析することが好適である。
【0017】
ここで、前記燃焼ガス分析手段で連続的に分析する場合、複数の前記サイクルの前記燃焼ガスの分析結果を平均化処理することが好適である。
【0018】
また、燃焼ガスの酸素濃度と二酸化炭素濃度を分析し、分析結果に基づいて空気過剰率を算出して前記内燃機関の前記シリンダにおける燃焼状態及び内燃機関性能の少なくとも一方を評価することが好適である。
【0019】
また、前記燃焼状態の評価結果及び前記内燃機関性能の評価結果の少なくとも一方を前記内燃機関の制御に利用することが好適である。
【0020】
また、前記燃焼状態の評価結果及び前記内燃機関性能の評価結果の少なくとも一方を前記内燃機関を管理する管理部門に情報通信網を介して伝達することが好適である。
【発明の効果】
【0021】
請求項1に対応した燃焼ガス分析システムは、2サイクル式の内燃機関の燃焼ガスを分析する燃焼ガス分析システムであって、前記内燃機関のシリンダと排気レシーバとの間の接続管に設けたサンプリングポイントと、前記サンプリングポイントに接続されるサンプリング管と、前記サンプリング管に設けたサンプリング弁と、前記内燃機関の作動状態を検出する作動状態検出手段と、前記作動状態検出手段の検出結果に応じて所定のタイミングで前記サンプリング弁を開閉制御する制御手段と、前記サンプリング管の下流端に設けた燃焼ガス分析手段とを備えたことによって、2サイクル式の内燃機関の排気から燃焼ガスのみをサンプリングし、燃焼ガスの酸素濃度や二酸化炭素濃度等を高い精度で分析することが可能になる。これに伴って、内燃機関における燃焼状態や性能を評価することができる。
【0022】
ここで、前記所定のタイミングは、前記シリンダに設けた排気弁の開き始めから開き切るまでの間のタイミングであることによって、掃気の混じらない適切なタイミングで燃焼ガスのみをサンプリングし、燃焼ガスの酸素濃度や二酸化炭素濃度等を高い精度で分析することが可能になる。
【0023】
また、前記作動状態検出手段は、前記シリンダ内のピストンの位置を検出するピストンポジションセンサと、前記内燃機関の回転数を検出するクランク角度エンコーダを用いることによって、正確に検出されたピストンの位置とクランク角度に基づいて、掃気の混じらないより適切なタイミングで燃焼ガスをサンプリングし、燃焼ガスの酸素濃度や二酸化炭素濃度等を高い精度で分析することが可能になる。
【0024】
また、前記接続管が前記シリンダの上部から横引きされて前記排気レシーバに合流する構成であり、前記サンプリングポイントは、前記接続管の上部から下方に向けて設けられることによって、煤や異物等の混入を抑制し、燃焼ガスの酸素濃度や二酸化炭素濃度等を正確に測定及び分析できる。
【0025】
また、前記サンプリング管の前記サンプリング弁と前記燃焼ガス分析手段との間にバッファタンクを備えたことによって、燃焼ガスの短期的な変動に依らず、燃焼ガスの性状を測定及び分析することができる。
【0026】
また、前記バッファタンクへの前記燃焼ガスの貯留状況を検出する貯留状況検出手段をさらに備え、前記貯留状況検出手段で前記燃焼ガスの貯留状態が所定の条件を満たすことを検出したときに、前記燃焼ガス分析手段による前記燃焼ガスの分析を行うことによって、バッファタンクに貯留された燃焼ガスの状態が安定し、内燃機関の燃焼状態をより正しく示す状況において燃焼ガスの性状を測定及び分析することができる。
【0027】
また、前記燃焼ガス分析手段は、前記貯留状況検出手段を兼ねており、前記バッファタンクに貯留された前記燃焼ガスの酸素濃度を検出することによって、酸素濃度に基づいてバッファタンクに貯留された燃焼ガスの状態が安定し、内燃機関の燃焼状態をより正しく示す状況において燃焼ガスの性状を測定及び分析することができる。
【0028】
また、前記サンプリング管及び前記バッファタンクの少なくとも一方にパージ手段をさらに備えたことによって、サンプリング管、サンプリング弁、逆止弁、バッファタンク、パージ弁等に燃焼ガスに含まれる煤や異物等が残留することを抑制することができる。
【0029】
また、前記制御手段は、前記燃焼ガス分析手段による前記燃焼ガスの分析を行わないときに、前記サンプリング弁と前記パージ手段を開状態とし、前記サンプリング管又は前記バッファタンクの少なくとも一方から連続的に前記燃焼ガスを排出することによって、燃焼ガスの分析を行わないときにサンプリング管、サンプリング弁、逆止弁、バッファタンク、パージ弁等から燃焼ガスに含まれる煤や異物等を排出することができ、掃気による排出も期待できる。
【0030】
また、前記燃焼ガス分析手段が、前記燃焼ガスの酸素濃度と二酸化炭素濃度の検出を行うことによって、検出された酸素濃度や二酸化炭素を分析することで内燃機関における燃焼状態や性能を分析及び把握することができる。
【0031】
また、請求項11に対応した燃焼ガス分析方法は、上記燃焼ガスの分析システム用いた燃焼ガスの分析方法であって、前記内燃機関のサイクル毎に前記燃焼ガスを採取し前記燃焼ガス分析手段で連続的に分析する、又は、前記バッファタンクに複数の前記サイクルの前記燃焼ガスを貯留した後に前記燃焼ガス分析手段でまとめて分析することによって、2サイクル式の内燃機関の排気から燃焼ガスのみをサンプリングし、燃焼ガスの酸素濃度や二酸化炭素濃度等を高い精度で分析することが可能になる。これに伴って、内燃機関における燃焼状態や性能を評価することができる。
【0032】
ここで、前記燃焼ガス分析手段で連続的に分析する場合、複数の前記サイクル前記燃焼ガスの分析結果を平均化処理することによって、平均化された分析結果に基づいて内燃機関における燃焼状態や性能を評価することができる。
【0033】
また、燃焼ガスの酸素濃度と二酸化炭素濃度を分析し、分析結果に基づいて空気過剰率を算出して前記内燃機関の前記シリンダにおける燃焼状態及び内燃機関性能の少なくとも一方を評価することによって、内燃機関における燃焼状態及び内燃機関の性能の少なくとも一方を高い精度で評価することができる。
【0034】
また、前記燃焼状態の評価結果及び前記内燃機関性能の評価結果の少なくとも一方を前記内燃機関の制御に利用することによって、内燃機関における燃焼状態及び内燃機関の性能に基づいて内燃機関の燃焼を制御することができる。
【0035】
また、前記燃焼状態の評価結果及び前記内燃機関性能の評価結果の少なくとも一方を前記内燃機関を管理する管理部門に情報通信網を介して伝達することによって、管理部門において内燃機関の燃焼状態や性能を把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】第1の実施の形態における燃焼ガス分析システムの構成を示す図である。
【
図2】第1の実施の形態における燃焼ガス分析方法を示すフローチャートである。
【
図3】ピストンのクランク角度の検出信号の例を示す図である。
【
図4】ピストンの上死点の検出信号の例を示す図である。
【
図5】燃焼ガスのサンプリングタイミングを制御するための処理を示すフローチャートである。
【
図6】燃焼ガスのサンプリングタイミングの例を示す図である。
【
図7】サンプリング信号の生成処理の例を示す図である。
【
図8】燃焼ガスのサンプリング時におけるバッファタンク内圧力及び酸素濃度の変化を示す図である。
【
図9】燃焼ガスの酸素濃度及び空気過剰率の時間変化の例を示す図である。
【
図10】第2の実施の形態における燃焼ガス分析システムの構成を示す図である。
【
図11】第2の実施の形態における燃焼ガス分析方法を示すフローチャートである。
【
図12】第3の実施の形態における燃焼ガス分析システムの構成を示す図である。
【
図13】第3の実施の形態における燃焼ガス分析方法を示すフローチャートである。
【
図14】サンプリングポイントによる影響を説明するための図である。
【
図15】サンプリングポイントによる影響を説明するための空気過剰率の理想値と実測値との関係を示す図である。
【
図16】サンプリングポイントによる影響を説明するための図である。
【
図17】サンプリングポイントによる影響を説明するための空気過剰率の理想値と実測値との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
[第1の実施の形態]
第1の実施の形態における燃焼ガス分析システム100は、
図1に示すように、内燃機関102、排気レシーバ104、サンプリング評価装置106及び制御部108を含んで構成される。
【0038】
内燃機関102は、2サイクル式の内燃機関であれば特に限定されるものではないが、例えばディーゼルエンジンとすることができる。内燃機関102は、シリンダ10及びピストン12を備える。内燃機関102は、シリンダ10とピストン12とによって形成される燃焼室に空気を取り入れ、その空気をピストン12の上昇工程で圧縮し、最大に圧縮される付近で燃料をシリンダ10内に噴射することで燃料と空気を爆発燃焼させることによってピストン12に駆動力を発生させる。燃焼終了後、所定のタイミングで排気弁14が開状態とされ、ピストン12によって燃焼ガスが押し出されて接続管16へ排出される。燃焼ガスは、接続管16を通じて排気レシーバ104へ排出される。
【0039】
サンプリング評価装置106は、内燃機関102の接続管16から燃焼ガスを取り出してサンプリングするための手段を含む。サンプリング評価装置106は、サンプリング管20、サンプリング弁22、逆止弁24、バッファタンク26、パージ弁28、30、ガス分析器32及び分析コンピュータ34を含んで構成される。
【0040】
内燃機関102の接続管16に挿入されたサンプリング管20のガス取出部から燃焼ガスの一部が取り出される。サンプリング管20のガス取出部付近には開閉のタイミングを調整できるサンプリング弁22が設けられる。また、サンプリング管20の途中には燃焼ガスの逆流を防ぐための逆止弁24が配置される。排気弁14の開閉のタイミングに連動させてサンプリング弁22を掃気の混じらない適切なタイミングで開状態にすることにより、新たな空気が混ざることなく内燃機関102における燃焼によって生じた燃焼ガスがサンプリング管20を介してバッファタンク26へサンプリングされる。燃焼ガスは、バッファタンク26を通じてガス分析器32に送気される。なお、サンプリング管20及びバッファタンク26に煤等が蓄積されることを防ぐために、サンプリング管20及びバッファタンク26の内部の燃焼ガスを掃気する必要がある場合、パージ弁28やパージ弁30を用いて燃焼ガスや掃気(空気)を外部へ放出することができる。
【0041】
ガス分析器32は、燃焼ガスの酸素(O2)と二酸化炭素(CO2)の濃度を検出する。ガス分析器32は、検出した酸素濃度及び二酸化炭素濃度を分析コンピュータ34へ送信する。ガス分析器32の測定方式は、特に限定されるものではなく、例えば赤外線ガス分析方式、レーザガス分析方式等を適用することができる。分析コンピュータ34は、ガス分析器32によって得られた酸素濃度及び二酸化炭素濃度から燃焼ガスの空気過剰率を算出する。
【0042】
制御部108は、内燃機関102の運転状況に応じて掃気の混じらない適切なタイミングで燃焼ガスをサンプリングするための制御を行う。制御部108は、制御コンピュータ36、バルブドライバ38、ピストンポジションセンサ40及びクランク角度エンコーダ42を備える。ピストンポジションセンサ40は、内燃機関102のピストン12の回転数を計測する。クランク角度エンコーダ42は、内燃機関102のピストン12のクランク角度を計測する。バルブドライバ38は、サンプリング弁22の開閉制御を行うためのドライバである。制御コンピュータ36は、ピストンポジションセンサ40によるピストン12の上死点の検出信号及びクランク角度エンコーダ42によるピストン12のクランク角度の検出信号に応じてサンプリング弁22を適切なタイミングで開閉させる。具体的には、制御コンピュータ36は、バルブドライバ38にサンプリング信号を送信する。バルブドライバ38は、サンプリング信号に応じてサンプリング弁22を適切なタイミングで開閉制御する。なお、排気弁14の開閉のタイミングを検出する手段は、ピストンポジションセンサ40とクランク角度エンコーダ42の組み合わせ以外にも各種の手段が選択できる。例えば、排気弁14の動作を直接検出する手段であってもよい。
【0043】
以下、
図2のフローチャートを参照して、燃焼ガス分析システム100を用いた燃焼ガス分析処理について説明する。
【0044】
燃焼ガスのサンプリングが開始されると、制御コンピュータ36によって内燃機関102の作動状態が検出される(ステップS10)。制御コンピュータ36は、内燃機関102のピストン12のクランク角度の検出信号及びピストン12の上死点の検出信号を取得する。
図3は、エンコーダによるピストン12のクランク角度の検出信号の検出例を示す。
図3において、1つのパルスがピストン12のクランク角度における1°を示している。また、
図4は、ピストン12の上死点の検出信号の検出例を示す。
図4において、パルスを検出したタイミングがピストン12の上死点のタイミングを示す。制御コンピュータ36は、ピストン12が上死点を迎えたタイミングからピストン12のクランク角度を示すパルスの数をカウントすることによってピストン12のクランク角度を算出することができる。
【0045】
制御コンピュータ36は、クランク角度の検出信号及び上死点の検出信号に応じてサンプリング弁22の開閉制御を行う(ステップS12~S16)。具体的には、
図5に示すフローチャートによってサンプリング弁22の開閉制御が行われる。まず、上死点の検出信号に基づいてピストン12が上死点に達したか判定される(ステップS40)。ピストン12が上死点に達したならカウンターを0に初期化し(ステップS42)、上死点に達していなければステップS44に処理を移行させる。続いて、クランク角度の検出信号においてパルスがハイ(High)になったか否かが判定される(ステップS44)。パルスがHighになったらカウンターを1増加させる(ステップS46)。そして、カウンターの値がセット値になったか否かが判定される(ステップS48)。ここで、セット値は、燃焼ガスのサンプリングを行うためにサンプリング弁22を開弁させるときのクランク角度に対応するパルス数に予め設定される。カウンターの値がセット値になった場合にはサンプリング信号をハイ(High)に設定し(ステップS50)、カウンターの値がセット値でない場合にはステップS52に処理を移行させる。さらに、カウンターの値がリセット値になったか否かが判定される(ステップS52)。ここで、リセット値は、燃焼ガスのサンプリングを止めるためにサンプリング弁22を閉弁させるときのクランク角度に対応するパルス数に予め設定される。カウンターの値がリセット値になった場合にはサンプリング信号をロー(Low)に設定し(ステップS54)、カウンターの値がリセット値でない場合にはステップS56に処理を移行させる。ユーザから終了指示があれば燃焼ガスのサンプリングを終了し、終了指示がなければステップS40に処理を戻す。
【0046】
燃焼ガスの適切なサンプリングタイミングは、排気弁14が開き始めてから開ききるまでの期間とすることが好適である。例えば、
図6に示すように、排気弁14が開き始めるクランク角度が120°であり、排気弁14が開ききるクランク角度が150°であれば、クランク角度が120°~150°の期間においてサンプリング弁22が開状態となり、他のクランク角度の期間においてサンプリング弁22が閉状態となるように制御を行う。
【0047】
当該例示において、クランク角度の検出信号における1つのパルスがピストン12のクランク角度における1°を示している場合、ピストン12のクランク角度が120°でサンプリング弁22を開弁させるためにはセット値を120に設定する。また、クランク角度が150°でサンプリング弁22を閉弁させるためにはリセット値を150に設定する。これによって、
図7に示すように、ピストン12のクランク角度が120°~150°においてハイ(High)及びその他の角度領域においてロー(Low)となるサンプリング信号が生成される。バルブドライバ38は、当該サンプリング信号に基づいて、サンプリング信号がハイ(High)のときにサンプリング弁22を開状態とし、ロー(Low)のときにサンプリング弁22を閉状態とする。なお、排気弁14が開き切っても2サイクル式の内燃機関102の掃気ポートが開成し出すクランク角度(例えば165°)迄は、掃気が入って来ないため燃焼ガスのサンプリングタイミングとしては適しているとも言えるが、排気弁14の開き始めから開き切るまでの間のタイミングでサンプリングした方が排気の流れ速度が早く、バラツキや経年劣化等も考慮して、より確実なサンプリングタイミングであると言える。
【0048】
排気弁14を基準とした具体的なタイミングとしては、排気弁14が開き始めるクランク角度120°を少し超えたタイミング(例えば121°~122°)に、また排気弁14が開き切るクランク角度150°と同一か少し超えたタイミング(例えば150°~152°)に所定のタイミングを設定することが好適である。この場合、排気弁14の開きはじめのタイミングとは、クランク角度120°を少し超えたタイミングを言い、開き切るタイミングとは、クランク角度150°と同一か少し超えたタイミングを言うが、開き切るタイミングは、掃気ポートが開成し出すクラン角度まで余裕があるところ、広めの範囲に設定できる。
【0049】
サンプリング弁22が開状態とされることで、バッファタンク26に燃焼ガスが貯留される(ステップS18)。
図8は、バッファタンク26に燃焼ガスが貯蔵されるときの時間に対するバッファタンク26内の圧力及び酸素濃度の変化を示す。
図8に示すように、サンプリング弁22を開状態とする毎に時間経過と共にバッファタンク26内の圧力は大気圧から徐々に増加し、それと共に酸素濃度は低下する。そして、時間経過と共にサンプリング回数が増加するとバッファタンク26内の圧力及び酸素濃度は一定値に収束する。
【0050】
バッファタンク26に燃焼ガスを貯留させると、ガス分析器32によってバッファタンク26内の酸素(O2)の濃度が計測される(ステップS20)。そして、バッファタンク26内の酸素濃度が所定の基準濃度範囲に安定したか否かが判定される(ステップS22)。この処理によって、ガス分析器32は貯留状況検出手段としても機能する。バッファタンク26内の酸素濃度が所定の基準濃度範囲内であればステップS22に処理を移行させ、基準濃度範囲外であればステップS10に処理を戻す。その後、ガス分析器32によってバッファタンク26内の燃焼ガスの二酸化炭素(CO2)の濃度が計測される(ステップS24)。また、ステップS20において計測された酸素濃度とステップS24において計測された二酸化炭素濃度に基づいて、分析コンピュータ34によって燃焼ガスの空気過剰率が計算される(ステップS26)。
【0051】
空気過剰率の算出後、サンプリング弁22が閉状態のときに制御コンピュータ36からの制御によってパージ弁28が開状態とされてバッファタンク26内の燃焼ガスがパージされる(ステップS28)。燃焼ガスをパージする目的は、燃焼ガスに含まれる煤や異物等がサンプリング管20、サンプリング弁22、逆止弁24、バッファタンク26等を詰まらせることを抑制するためである。また、掃気による排出も期待できる。したがって、パージ弁28が開弁させてパージを行う処理は、必要に応じて、又は、所定の時間間隔で適宜行えばよい。
【0052】
制御コンピュータ36に対してユーザ等からサンプリングを終了するための指示であるサンプリング終了信号が入力されると燃焼ガス分析処理を終了し、サンプリング終了信号が入力されてなければステップS10に処理を戻して燃焼ガス分析処理を継続する(ステップS30)。
【0053】
図9は、燃焼ガスのサンプリング及び測定を行ったときの時間経過に対する酸素濃度及び空気過剰率の変化の例を示す。
図9の領域Aにおいて燃焼ガスのサンプリング及び測定が開始されると、サンプリングが行われる度にバッファタンク26に燃焼ガスが蓄積され、時間経過と共に定常状態となった。また、領域B1~領域B5において内燃機関102の運転条件を変更すると酸素濃度及び空気過剰率の変化を示した。また、
図9のパージ領域においてパージを行うと、サンプリング管20、サンプリング弁22、逆止弁24、バッファタンク26の燃焼ガスがパージされて酸素濃度及び空気過剰率が変化を示した。このように、内燃機関102の運転条件を変更することによって酸素濃度及び空気過剰率は共に変化した。
【0054】
酸素濃度及び空気過剰率から内燃機関102の運転状況を把握することが可能である。例えば、酸素濃度及び空気過剰率が低下することによって内燃機関102の運転において負荷が増大していることを把握することができる。逆に、酸素濃度及び空気過剰率が増加することによって内燃機関102の運転において負荷が低減していることを把握することができる。
【0055】
以上のように、内燃機関102のサイクル毎に燃焼ガスをバッファタンク26に採取し、ガス分析器32及び分析コンピュータ34によってバッファタンク26に貯留された燃焼ガスを連続的に分析し、内燃機関102の運転状況や性能を評価することができる。
【0056】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態における燃焼ガス分析システム110は、
図10に示すように、内燃機関102、排気レシーバ104、サンプリング評価装置112及び制御部108を含んで構成される。内燃機関102、排気レシーバ104及び制御部108の構成は、第1の実施の形態における燃焼ガス分析システム100と同様であるので説明を省略する。
【0057】
サンプリング評価装置112は、内燃機関102の接続管16から燃焼ガスを取り出してサンプリングするための手段を含む。サンプリング評価装置112は、サンプリング管20、シャット弁44、逆止弁24、バッファタンク26、パージ弁28、30、サンプリング弁46、パージ弁48、ガス分析器32及び分析コンピュータ34を含んで構成される。
【0058】
内燃機関102の接続管16に挿入されたサンプリング管20のガス取出部から燃焼ガスの一部が取り出される。サンプリング管20のガス取出部付近にはシャット弁44及び逆止弁24が配置される。
【0059】
排気弁14の開閉のタイミングに連動させてサンプリング弁46を掃気の混じらない適切なタイミングで開状態にすることにより、新たな空気が混ざることなく内燃機関102における燃焼によって生じた燃焼ガスがサンプリング管20を介してバッファタンク26へサンプリングされる。燃焼ガスは、バッファタンク26を通じてガス分析器32に送気される。なお、サンプリング管20及びバッファタンク26の内部の燃焼ガスを排出する必要がある場合、パージ弁28やパージ弁48を用いて燃焼ガスを外部へ放出することができる。ガス分析器32では、燃焼ガスの酸素(O2)と二酸化炭素(CO2)の濃度を検出する。分析コンピュータ34は、ガス分析器32によって得られた酸素濃度及び二酸化炭素濃度から燃焼ガスの空気過剰率を算出する。
【0060】
制御部108は、内燃機関102の運転状況に応じて掃気の混じらない適切なタイミングで燃焼ガスをサンプリングするための制御を行う。バルブドライバ38は、サンプリング弁46の開閉制御を行うためのドライバである。制御コンピュータ36からバルブドライバ38にサンプリング信号を送信することによって、バルブドライバ38はサンプリング信号に応じてサンプリング弁46を適切なタイミングで開閉制御する。
【0061】
以下、
図11のフローチャートを参照して、燃焼ガス分析システム110を用いた燃焼ガス分析処理について説明する。
【0062】
本実施の形態における燃焼ガス分析処理においてステップS10~S22の処理は第1の実施の形態における燃焼ガス分析処理と同様であるので説明を省略する。燃焼ガスのサンプリング後、バッファタンク26内の酸素濃度が所定の基準濃度範囲内であればステップS32に処理を移行させ、基準濃度範囲外であればステップS10に処理を戻す。その後、燃焼ガスのサンプリングが停止される(ステップS32)。そして、ガス分析器32によってバッファタンク26内の燃焼ガスの二酸化炭素(CO2)の濃度が計測され(ステップS24)、ステップS20において計測された酸素濃度とステップS24において計測された二酸化炭素濃度に基づいて燃焼ガスの空気過剰率が計算される(ステップS26)。空気過剰率の算出後、サンプリング弁46が閉状態のときに制御コンピュータ36からの制御によってパージ弁28が開状態とされてバッファタンク26内の燃焼ガスがパージされる(ステップS28)。
【0063】
そして、制御コンピュータ36に対してユーザ等からサンプリングを終了するための指示であるサンプリング終了信号が入力されたか否かが判定される(ステップS30)。サンプリング終了信号が入力された場合、燃焼ガス分析処理を終了する。また、サンプリング終了信号が入力されていない場合、ステップS32において停止されていた燃焼ガスのサンプリングが再開され(ステップS34)、ステップS10に処理を戻して燃焼ガス分析処理を継続する(ステップS30)。
【0064】
このような処理によって内燃機関102のサイクル毎に燃焼ガスをバッファタンク26に採取し、ガス分析器32及び分析コンピュータ34によってバッファタンク26に貯留された燃焼ガスをバッチ処理的に分析することができる。
【0065】
[第3の実施の形態]
第3の実施の形態における燃焼ガス分析システム120は、
図12に示すように、内燃機関102、排気レシーバ104、サンプリング評価装置114及び制御部108を含んで構成される。内燃機関102、排気レシーバ104及び制御部108の構成は、第1の実施の形態における燃焼ガス分析システム100と同様であるので説明を省略する。
【0066】
サンプリング評価装置114は、内燃機関102の接続管16から燃焼ガスを取り出してサンプリングするための手段を含む。サンプリング評価装置112は、サンプリング管20、サンプリング弁50、逆止弁24、パージ弁28、ガス分析器32及び分析コンピュータ34を含んで構成される。
【0067】
内燃機関102の接続管16に挿入されたサンプリング管20のガス取出部から燃焼ガスの一部が取り出される。サンプリング管20のガス取出部付近にはサンプリング弁50及び逆止弁24が配置される。
【0068】
排気弁14の開閉のタイミングに連動させてサンプリング弁50を適切なタイミングで開状態にすることにより、新たな空気が混ざることなく内燃機関102における燃焼によって生じた燃焼ガスがサンプリング管20を介してサンプリングされる。燃焼ガスは、ガス分析器32に送気される。なお、サンプリング管20の内部の燃焼ガスを排出する必要がある場合、パージ弁28を用いて燃焼ガスを外部へ放出することができる。ガス分析器32では、燃焼ガスの酸素(O2)と二酸化炭素(CO2)の濃度を検出する。分析コンピュータ34は、ガス分析器32によって得られた酸素濃度及び二酸化炭素濃度から燃焼ガスの空気過剰率を算出する。
【0069】
制御部108は、内燃機関102の運転状況に応じて掃気の混じらない適切なタイミングで燃焼ガスをサンプリングするための制御を行う。バルブドライバ38は、サンプリング弁50の開閉制御を行うためのドライバである。制御コンピュータ36からバルブドライバ38にサンプリング信号を送信することによって、バルブドライバ38はサンプリング信号に応じてサンプリング弁50を適切なタイミングで開閉制御する。
【0070】
以下、
図13のフローチャートを参照して、燃焼ガス分析システム120を用いた燃焼ガス分析処理について説明する。
【0071】
本実施の形態における燃焼ガス分析処理においてステップS10~S16の処理は第1の実施の形態における燃焼ガス分析処理と同様であるので説明を省略する。燃焼ガスがサンプリング管20内にサンプリングされると、サンプリング管20を通じてガス分析器32へ送気された燃焼ガスの酸素(O2)の濃度及び二酸化炭素(CO2)の濃度が連続的に計測される(ステップS36,S38)。
【0072】
その後、サンプリング管20内の燃焼ガスのパージが必要か否かが判定される(ステップS40)。パージが必要である場合にはステップS28に処理を移行させ、サンプリング弁50が閉状態のときにパージ弁28を開弁させてサンプリング管20内の燃焼ガスをパージし(ステップS28)、ステップS30に処理を移行させる。このとき、ガス分析器32によって燃料ガスを吸引して排出するようにしてもよい。
【0073】
パージが不要である場合にはステップS42に処理を移行させ、連続的に計測されている酸素濃度及び二酸化炭素濃度を時間的に平均化する処理を行う(ステップS42)。ステップS42において平均化された酸素濃度と二酸化炭素濃度に基づいて燃焼ガスの空気過剰率が計算される(ステップS26)。
【0074】
そして、制御コンピュータ36に対してユーザ等からサンプリングを終了するための指示であるサンプリング終了信号が入力されたか否かが判定される(ステップS30)。サンプリング終了信号が入力された場合、燃焼ガス分析処理を終了する。また、サンプリング終了信号が入力されていない場合、ステップS10に処理を戻して燃焼ガス分析処理を継続する(ステップS30)。
【0075】
このような処理によって内燃機関102のサイクル毎に燃焼ガスをバッファタンク26に採取することなく、ガス分析器32及び分析コンピュータ34によってバッファタンク26に貯留された燃焼ガスを連続的に分析することができる。
【0076】
以上のように、第1~第3の実施の形態によれば、内燃機関102の運転状況を把握することによって内燃機関102を制御することができる。例えば、負荷が増大している場合には内燃機関102への燃料供給を増やし、負荷が低下している場合には内燃機関102への燃料供給を減らす等の内燃機関102の制御に適用することができる。また、燃焼状態から内燃機関102の異常を把握することができる。また、燃焼ガスの窒素酸化物(NOx)や硫黄酸化物(SOx)を分析対象とすることもできる。燃焼ガスの窒素酸化物(NOx)や硫黄酸化物(SOx)の濃度は空気過剰率に依存するので、空気過剰率に応じて内燃機関102への空気の供給量を制御することによって窒素酸化物(NOx)や硫黄酸化物(SOx)の排出量を抑制することができる。
【0077】
また、内燃機関102の燃焼状態の評価結果及び内燃機関102の性能の評価結果の少なくとも一方を内燃機関102を管理する管理部門に情報通信網を介して伝達するような処理を行ってもよい。これにより、内燃機関102の燃焼状態や性能の評価結果を管理部門においても連続的、又はバッチ的に取得し内燃機関102や運航の管理に役立てることができる。なお、管理部門としては、例えば船舶のブリッジや運航管理会社等が挙げられる。
【0078】
[燃焼ガスのサンプリングポイントの最適化]
以下、内燃機関102から排出された燃焼ガスをサンプリング管20によってサンプリングする際の好適な場所(サンプリングポイント)について考察する。
【0079】
図14は、サンプリング管20の端部を内燃機関102の排気弁箱に挿入して、内燃機関102の排気弁箱に燃焼ガスのサンプリングポイントを設けた構成を示す。このような構成では、
図15に示すように、空気過剰率の実測値(丸印)が理想値(太実線)から大きく外れてしまう。
【0080】
これに対して、
図16は、サンプリング管20の端部を内燃機関102の排気弁箱と排気レシーバ104とを繋ぐ接続管16に挿入して、接続管16に燃焼ガスのサンプリングポイントを設けた構成を示す。接続管16は、内燃機関102のシリンダの上部に設けられた排気弁箱から横引きされて排気レシーバ104に繋げられる。また、サンプリングポイントは、接続管16の上部から下方に向けてサンプリング管20の端部を挿入するように設けている。このような構成では、
図17に示すように、空気過剰率の実測値(丸印)と理想値(太実線)との一致度が高くなる。
【0081】
以上のように、燃焼ガスのサンプリングポイントは、内燃機関102のシリンダの上部から横引きされ、排気レシーバ104に繋がる接続管16に設けることが好適である。また、サンプリングポイントは、接続管16の上部から下方に向けて設けることが好適である。なお、サンプリングポイントとは、サンプリングする場所、サンプリングする端部、サンプリングを行うパーツのいずれも指すものと解釈できる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、2サイクル式の舶用ディーゼル機関等の内燃機関における燃焼ガスを分析するために適用することができる。例えば、本発明における燃焼ガス分析システム及び燃焼ガス分析方法は、内燃機関の運転制御に適用することができる。また、例えば、内燃機関メーカーや石油会社等での内燃機関における燃料の燃焼に対する評価に適用することができる。
【符号の説明】
【0083】
10 シリンダ、12 ピストン、14 排気弁、16 接続管、20 サンプリング管、22 サンプリング弁、24 逆止弁、26 バッファタンク、28、30 パージ弁、32 ガス分析器、34 分析コンピュータ、36 制御コンピュータ、38 バルブドライバ、40 ピストンポジションセンサ、42 クランク角度エンコーダ、44 シャット弁、46 サンプリング弁、48 パージ弁、50 サンプリング弁、100,110,120 燃焼ガス分析システム、102 内燃機関、104 排気レシーバ、106,112,114 サンプリング評価装置、108 制御部。