(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023012052
(43)【公開日】2023-01-25
(54)【発明の名称】車体傾斜装置を有した前二輪自転車
(51)【国際特許分類】
B62K 5/10 20130101AFI20230118BHJP
B62K 5/08 20060101ALI20230118BHJP
【FI】
B62K5/10
B62K5/08
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021115461
(22)【出願日】2021-07-13
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】505178860
【氏名又は名称】小林 克子
(72)【発明者】
【氏名】小林 克子
(72)【発明者】
【氏名】小林 隆
【テーマコード(参考)】
3D011
【Fターム(参考)】
3D011AA02
3D011AC01
3D011AD01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】停車状態の乗車でも転倒することなく、直立姿勢が保持でき、ハンドルの操舵で旋回方向へ機械的に車体を傾斜させ、安定したカーブ走行と、高齢者が乗り易く、取り扱いが容易な前二輪自転車を安価に提供する。
【解決手段】前輪16Lと16Rが左右に配置された前輪支持フレーム2の保持体25に、ピットマンアーム32が固着された回動金具が連結され、ハンドルポスト13に固着された揺動アーム41に、スライド軸を内蔵したリニアブシュ44が連結され、該スライド軸と、ピットマンアーム32の後部がL型リンクボール52Sで連結された構成により、ハンドル12の操舵で、ピットマンアーム32が左方へ回動し、連結棒36Mと、36Lが左方に移動してナックルアーム33Lを回動させると同時に、リニアブシュ44が可動し、揺動アーム41を揺動させてハンドルポスト13と車体1を左方に傾斜させる構造とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二つの前輪で操舵する前二輪自転車において、後輪を支持する車体のハンドルポストの前方に具備された車体支持フレームがスイング可能に連結され、前記前輪支持フレームの中央に配置された回動体と、前記ハンドルポストに内蔵された操向軸に具備された連結部材が連結され、前記ハンドルポストに固着された揺動アームと、前記回動体が、可動可能な連結体と自在継手で連結されて、前記前輪支持フレームをベースとした車体傾斜装置が構成されたことを特徴とする車体傾斜装置を有した前二輪自転車。
【請求項2】
二つの前輪で操舵する前二輪自転車において、前記二つの前輪が接続されるナックルアームに固着されたサイド軸受け体に、荷重を受ける方向が異なる自在継手が上下に配置されて、取付けボルトの軸線が同一線上で接続され、左右の前輪を支持する前輪支持フレームの接続体と、サイド支持体に、ホルダ部が接続されて、回動可能なサイド軸受けが構成されたことを特徴とする車体傾斜装置を有した前二輪自転車。
【請求項3】
前記前輪支持フレームの連結体に、複数の自在継手のシャンク部の取付けボルトの軸線が同一線上で接続され、前記ハンドルポストに具備された前記車体支持フレームに、前記複数の自在継手のホルダ部の軸線が平行状態で接続され、前記車体支持フレームがスイング可能な軸受として構成されたことを特徴とする請求項1に記載の車体傾斜装置を有した前二輪自転車。
【請求項4】
前記前輪支持フレームと、前記揺動アームに接続される前記自在継手の接続部に、金属板が略コの字状に形成され、前記自在継手のホルダ部の取付け部が緩挿可能な溝と、所定の長さと、複数の取付け孔を有した回り止め部材が設けられたことを特徴とする請求項1に記載の車体傾斜装置を有した前二輪自転車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右二つの前輪で操舵し後輪を駆動する自転車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、前二輪操舵の三輪自転車等は通常の二輪自転車に比べ、転倒し難く安定しているので高齢の人、自転車に乗り慣れない人用として開発が進められており、欠点として旋回時に車体を傾斜し難く、遠心力で外方向に転倒するという恐怖感から自転車のスピードを極端(歩くスピード以下)に落とす必要があった。この問題を解決する為、左右二つの前輪と一つの後輪を有する三輪自転車として、旋回時に機械的に車体が傾斜してカーブ走行を容易にするため、以下の提案がなされている。
【0003】
例えば、本出願人が既に出願した特許文献1は、ばねによる直立姿勢保持機能と揺動機構により車体の安定が保たれて、揺動アームの中心部に取付けられたフロントハブの軸受けに、スライド軸が組み込まれたリニアブシュが固定され、操向軸に固着された操舵用のピットマンアームの回動により前二輪が左右に向きを変えると同時に、スライド軸とリニアブシュも左右に連動して可動し、前二輪の旋回角度に連動して揺動アームの揺動により、前輪が傾斜し、それに合わせて車体を旋回方向へ機械的に傾斜させる構造で、身体を車体の傾斜方向に傾けやすく、通常の二輪自転車と同様のスムースなカーブ走行が可能となり、前二輪操舵の自転車として安定走行ができる提案がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された三輪自転車は、ばねによる直立姿勢保持機能と揺動機構により車体の安定が保たれ、停車した状態でぺダルに両足を乗せても転倒することなく安定した乗車が可能で、カーブ走行時はハンドル操舵に応じて車輪が旋回方向へ自動的に傾斜し、同時に車体も傾斜することにより、安定した走行が可能になっているが、揺動アームと板バネの組み合わせによるサスペンション機構は、車体傾斜装置が付加されたことにより、サスペンションの機能が十分に活かされなくなり、又、サスペンション機能が活かされる構造に改良した場合には傾斜面でハンドルが傾斜方向に流され(取られ)やすくなり、高齢者には乗りにくく、取り回しがやり難いという問題が発生していた。
【0006】
さらに、前二輪自転車においてはカーブ走行を容易にするため揺動機構及び車体傾斜装置を導入することで、構造が複雑化し、部品数の増加による車体の重量アップと加工時間の増加で、通常の二輪自転車に比べ製造コストがアップするという問題も発生していた。
【0007】
本発明は、このような従来の構造が有していた問題を解決しようとするものであり、停車状態で乗車した場合、従来通りの安定した状態を保ちながら、構成部品を極力少なくし
て軽量化を図り、カーブ走行時は車体傾斜装置が働いて安定した走行ができ、高齢の人、乗り慣れない人等が容易に乗車できる構造にして、前二輪自転車の取り回しやすさと、コスト低減を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
二つの前輪で操舵する前二輪自転車において、ハンドル操舵により、左右の前輪の向きが変更されても、前輪の傾斜は抑えられ、車体のみを傾斜させる構成を実現させるために、左右の前輪を支持する前輪支持フレームと、後輪を支持する車体のハンドルポストの前方に具備された車体支持フレームが自在継手で、スイング可能に連結され、前記前輪支持フレームの中央に配置されたピットマンアームの固着された回動体が、前記前輪支持フレームの保持体と、他の自在継手で連結され、前記ハンドルポストに内蔵された操向軸に具備された連結部材と前記回動体とが前記以外の自在継手で連結棒を介して連結され、前記ハンドルポストの下部に固着された揺動アームが可動可能な連結体と前記以外の自在継手で連結され、ハンドル操舵で前記前輪支持フレームをベースとして、前記回動体の回動作用で前記可動可能な連結体と自在継手の可動により、揺動アームが揺動し、前記ハンドルポストの傾斜で車体が傾斜可能となる構造を要旨とする。
【0009】
二つの前輪で操舵する前二輪自転車において、左右の前輪を支持する前輪支持フレームと、該前輪支持フレームの左右に配置された前輪を直接支持するナックルアームに固着されたサイド軸受け体に、荷重を受ける方向がアキシャル方向とラジアル方向の異なる自在継手が上下に配置され、双方のシャンク部の取付けボルトの軸線が縦方向の同一線上で接続され、左右の前輪を支持する前輪支持フレームの接続体と、サイド支持体に、ホルダ部が接続されて縦軸を基準に、回動可能なサイド軸受けが構成された構造を要旨とする。
【0010】
前記前輪支持フレームの連結体に、前記複数の自在継手の、シャンク部の取付けボルトの軸線が同一線上となる状態で接続され、前記ハンドルポストに具備された車体支持フレームに、前記複数の自在継手のホルダ部の軸線が平行状態で接続され、前記前輪支持フレームの連結体と、前記車体支持フレームが連結され、回動可能な軸受として、前記車体がスイング可能に構成されたことを要旨とする。
【0011】
前記前輪支持フレームの保持体と、前記揺動アームに接続される前記複数の自在継手のホルダ部に取り付けられる回り止め部材は、金属板が略コの字状に曲折形成されて、前記複数の自在継手のホルダ部の取付け部が緩挿可能な溝を有し、所定の長さと複数の取付け孔が設けられた構造を要旨とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、車体の傾斜装置の部品の簡素化で、軽量化を図り、車体のみを傾斜させることにより前輪が安定し、ハンドルの切れ角に応じて車体が傾斜する機構は、高齢の人、乗り慣れない人等も乗り易く、安定したカーブ走行が可能となり、品質が十分確保された安価な市販部品を主要部にも使用し、コスト低減を可能にした。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の車体傾斜装置を有した前二輪自転車の実施例を示す正面図である。
【
図2】
図1の状態から、左旋回時での車体傾斜状態を示す正面図である。
【
図3】
図1のA-A要部拡大断面図(側面図)である。
【
図5】
図3のB-B要部拡大断面図(正面図)である。
【
図6】
図5の状態から、左旋回時の車体が傾斜した状態の要部拡大断面図である。
【
図7】
図3のC-C要部拡大断面図(上面図)である。
【
図8】
図7の状態から、左旋回時の車体が傾斜した状態の要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態に係わる前二輪自転車は後輪が一輪の場合と二輪の場合が考えられるが本願では、一般的な後輪が一輪の三輪自転車1により、車体傾斜装置1Aに関係する二つの実施例を、以下
図1~
図8を参照して説明する。
【0015】
本実施形態においては、
図1に示す、第一実施例と第二実施例共に、三輪自転車1に乗車して、直進状態でハンドル12を握って前を向いた直進状態を基準として、前輪16L,16R側が前方で、後輪17側を後方とし、握り部19Lを左側、19Rを右側として三輪自転車1の説明をする。又、三輪自転車1を文面の状況に応じ、車体1として説明し、ブレーキ、ペダル類等、三輪自転車1の車体傾斜装置1Aに直接関係しない装置については説明を省略する。
【0016】
図3と
図4に示す、軸受け金具34L,34R(サイド軸受け体)に接続されるI型リンクボール51M(自在継手)と、L型リンクボール52M(自在継手)の上下の軸線と、前輪支持フレーム2の保持体25に、回動金具35(回動体)を接続しているリンクボール52S(自在継手)の取付け部の上下の軸線が、前輪16L,16Rのキャスター角として、乗用自動車、バギーカー等のキャスター角と同様の後方に約3~5度程度傾けた設定がなされてキャスター角となり、走行に直接影響し、走行への影響は少ないハンドルポスト13は通常の二輪自転車と同様に後方へ15~20度傾けた設定がなされている。キャンバー角は、直進安定性を良好にするため、
図1に示す、前輪16L,16Rが直立状態から、上部を内側に2~3度傾けた設定の状態に前輪支持フレーム2が構成され、これ等の条件に第一実施例、第二実施例ともに適合するよう構成されている。
【0017】
車体傾斜装置を有した前二輪自転車の第一実施例について、
図1から
図8を参照して詳細に説明する。
図1と
図3と
図5と
図7に示す、三輪自転車1の車体傾斜装置1Aは、車体1を左右へスイング可能にするため、前輪16L,16Rを支持する前輪支持フレーム2と、車体1のハンドルポスト13の前方に具備された車体支持フレーム11H,11M,11Kとはそれぞれ独立した状態で構成され、前輪支持フレーム2の連結体27と、車体支持フレーム11Hが、複数のL型リンクボール52M(自在継手)で連結されて前輪支持フレーム2をベースとして車体1がスイング可能な状態で連結されている。
【0018】
前輪支持フレーム2の保持体25に、ピットマンアーム32が固着された回動金具35(回動体)が、複数のL型リンクボール52Sで連結されて、ハンドルポスト13に内蔵された操向軸14の下部に固着された連結板31(連結部材)と、回動金具35(回動体)の上部の取付け部35aが連結棒36Sを介して複数のL型リンクボール52Sで連結されて転向機構3が構成され、ハンドルポスト13の下方に固着された揺動アーム41の接続孔を有した揺動部と、スライド軸45(可動可能な連結体)を内蔵したリニアブシュ44(可動可能な連結体)が取り付けられた接続金具43が、複数のL型リンクボール52Sで連結されると共に、ピットマンアーム32の後部に接続されたL型リンクボール52Sと、スライド軸45が連結されて車体傾斜機構4が構成される。
【0019】
前輪支持フレーム2と、転向機構3と、車体傾斜機構4の各機構が連係し、ハンドル12の操舵で連結板31が回動し、回動金具35の回動を介して揺動アーム41の揺動により、ハンドルポスト13が傾斜し、前輪16L,16Rを支持した前輪支持フレーム2をベースとした車体1の傾斜が可能な車体傾斜装置1Aが構成される。
【0020】
図3と
図5に示す、ハンドルポスト13の前方の車体支持フレーム11Hは、L型リンクボール52Mのシャンク部の取付け部が緩挿可能な溝と複数の接続孔を有し、略コの字状に金属板が形成され、ハンドルポスト13に固着されている。
【0021】
車体支持フレーム11Mと11Kは、車体支持フレーム11Hを支える目的で、車体支持フレーム11Hと同様、略コの字状に金属板が形成され、
図3に示す車体支持フレーム11Mは11Hの先端部から略垂直に配置され、その上部に、車体支持フレーム11Kが略水平に配置されて固着された後、ハンドルポスト13に固着され 車体支持フレーム11H,11M,11Kが形成されている。
【0022】
車体支持フレーム11Kは、荷物用のかご受けフレームの役割もあり、前方へ部品の取り
付けスペースも確保されている。
車体支持フレーム11Hと11Mと11Kは軽量化を図るため、金属板が略コの字状に形成されているが、角パイプ等の使用も可能で、車体1としての強度を確保できれば他の形状でも任意に使用可能である、
【0023】
図3~
図5と
図7に示す、前輪支持フレーム2は、金属板が略コの字状に形成された上部支持体21と、平鋼が台形状に曲折形成された下部支持体23を基準として、両サイドに金属板が略コの字状に形成されて接続孔を有したサイド支持体22L,22Rの配置で骨格が形成され、平鋼が曲折形成されて複数の接続孔を有した保持体25が中央部前方に配置され、上部支持体21の左右上部に、金属板が略コの字状に形成されて接続孔を有した接続体24L,24Rと、上部支持体21の上部中央に金属板が略コの字状に形成されて複数の接続孔を有した連結体27が配置されて、それぞれが固着され、
図1に示す、正面から見て略台形状に前輪支持フレーム2が形成されている。
【0024】
車体支持フレーム11Hと、前輪支持フレーム2の連結は、
図3に示す、2個のL型リンクボール52Mが左右向き合って配置され、シャンク部の取付けボルトの軸線が同一線上となる状態で前輪支持フレーム2の連結体27に、接続され、車体支持フレーム11Hに、L型リンクボール52Mのホルダ部の軸線が平行状態となり、取付け部が上向きで車体支持フレーム11Hに、ボルト61で接続されて軸受けとして構成され、前輪支持フレーム2に、車体1がスイング可能状態で支持される構成となる。
【0025】
L型リンクボール52Mはホルダ部の軸線が平行で、シャンク部の取付けボルトの軸線が同一線上で、固定した部材に接続された場合は、自在継手としての機能は限定されるが、回動可能な軸受けとしての十分な機能が発揮され、取付けも簡単で使用が容易である。
車体支持フレーム11Hと前輪支持フレーム2との連結による軸受け部は、L型リンクボール52Mに限定される必要はなく、ボールベアリングを使用した通常の軸受けを使用することも可能である。
【0026】
図3と
図6と
図7に示す、転向機構3は、回動金具35(回動体)が基準となる構成で、
回動金具35は、金属板が複数個所曲折形成されて複数の接続孔を有し、回動金具35の下部と、ピットマンアーム32の中央上部が固着され、前輪支持フレーム2の中央の下部にピットマンアーム32が前向きで位置し、中央部に回動金具35が配置されて保持体25に回り止め53Mを介して複数のリンクボール52Sで回動可能に連結されている。
【0027】
ピットマンアーム32は、金属板が曲折形成されて先端部と後部に接続孔を有し、
図3と
図4に示す、回動金具35に固着された状態で、前方の先端部に、リンクボール52Sが接続され、連結棒36Mを介してナックルアーム33Rに連結され、後方に、リンクボール52Sが接続管46を介してボルト61で接続されている。
【0028】
回動金具35の上端部に設けられた取付け部35aと、ハンドルポスト13に内蔵され、操向軸14に具備された連結板31(連結部材)が連結棒36Sを介して複数のリンクボール52Sで連結されて転向機構3が構成されている。
【0029】
図3と
図5~
図8に示す、車体傾斜機構4の揺動アーム41は、金属板の曲折形成でハンドルポスト13に緩挿可能な固着部41aと、複数の接続孔を有した揺動部が形成され、固着部41aがハンドルポスト13の下部に固着され、揺動作用に耐えるための補強板42が固着部41aと、複数の接続孔を有した揺動部の間に固着されている。
【0030】
接続金具43は金属板で略コの字状に曲折形成され、左右の面に複数の接続孔が設けられ、下方にリニアブシュ44の接続部が設けられてスライド軸45を内蔵したリニアブシュ44が接続され、左右の面には、複数のリンクボール52Sのシャンク部が接続され、ホルダ部は、揺動アーム41の揺動部の複数の接続孔に、回り止め53Sを介して接続され、リニアブシュ44に内蔵されたスライド軸45が、ピットマンアーム32の後方に接続されたリンクボール52Sのシャンク部と接続されて、車体傾斜機構4が構成され、車体支持フレーム11Hと、前輪支持フレーム2と、転向機構3と、車体傾斜機構4のすべてが連結されて車体傾斜装置1Aが構成される。
【0031】
図2と
図5と
図7に示す、回り止め53S、53Mは、揺動アーム41と、接続金具43を連結するL型リンクボール52S及び、前輪支持フレーム2の保持体25と、回動金具35を連結するL型リンクボール52Sのホルダ部の軸線が平行で、シャンク部の取り付けボルトの軸線が同一線上となる位置決め用として、金属板が略コの字状に曲折形成され、ホルダ部の取付け部が緩挿できる溝と複数の接続孔を有した形状に形成されている。この回り止め53S、53Mの導入で、部材の補強と、L型リンクボール52Sの位置決めと取り付けが容易となり作業性が向上する。
【0032】
車体傾斜装置1Aの作用は、
図2に示す、ハンドル12を左方に旋回させた場合、
図7と
図8に示す、ハンドルポスト13に内蔵され、操向軸受け15に支持された操向軸14に固着された連結板31が左に回動し、連結棒36Sを介して回動金具35が左に回動すると同時に、ピットマンアーム32が左に回動して、
図2に示す、連結棒36Mと36Lを介して、ナックルアーム33Lが、前輪16L,16Rを左方に向ける動作と連動して
図3と
図8に示す、ピットマンアーム32の後部と、スライド軸45が連結されたリンクボール52Sも回動金具と連動して、左に回動し、スライド軸45の回動とスライドにより、リニアブシュ44の下部が
図6に示す右方へ可動し、接続金具43を介して、揺動アーム41を揺動させ、前輪支持フレーム2と、車体支持フレーム11Hを連結したリンクボール52Mのホルダ部の軸線を基点に、ハンドルポスト13が左方へスイングして傾斜し、同時に車体1も左方へ傾斜する。
【0033】
ハンドル12の左への旋回は
図8に示す保持体25の下端部のストッパー26に、連結棒36Lが当たり、ハンドル12の旋回が停止する。車体傾斜装置1Aは、ハンドル12の操舵により、全ての部品が連動して瞬時に車体1の傾斜と、前輪16L,16Rの転向に作用する。
上記は左旋回での説明であるが右旋回も同様の作用となる。
【0034】
前輪支持フレーム2は、回動金具35の配置された位置を保持し、回動作用が可能な状態を保ちつつ前輪16L,16Rを支持し、車体1の傾斜に対しての位置変動はないが、前輪16L,16Rのキャンバー角が後方へ3~5度傾斜されたことにより、前輪16L,16Rも車体1の傾斜方向に若干傾斜し、良好なカーブ走行が可能になる。
【0035】
これにより、前輪のサスペンション機構による前輪と車体の傾斜は無くても、車体1を傾斜させながらカーブ走行が可能になり、前輪支持フレーム2が前輪16L,16Rを支持した状態でハンドル12が揺動しても、前輪16L,16Rの左右への傾斜が発生しないので、車輪が安定し、悪路走行時のハンドルへのキックバックが少なく安定した走行を可能にしている。
【0036】
操向軸14の中心からハンドル12の握り部19L,19Rまでの距離に対し、回動金具35を回動可能に連結しているL型リンクボール52Sの軸線と、ピットマンアーム32の後部と、スライド軸45を連結しているL型リンクボール52Sのボールの中心部までの距離が約、1/5に設定されているので、ハンドル12の操舵で、車体1を傾斜させる為に、ハンドル12の握り部19L,19Rにかかる回動負荷を1として、揺動アームが車体1を傾斜させるために約5倍の回動負荷をかけることができ、少ない力で車体1を傾斜させることができる。
【0037】
前輪16L,16Rの内、いずれか一方の車輪が突起物に乗り上げた際には、片側の前輪16L又は、16Rの左右への回動負荷がナックルアーム33L,33Rを介して回動金具から揺動アーム41を経てハンドル12に伝達されるが、負荷に対する連結の距離が前記とは逆になり、ハンドル12への負荷は約1/5となり、ハンドル12を軽く握っていれば車体1が左右に揺れることなく、又、停車した状態で車体1に寄り掛かった状態でも乗車することができる。
【0038】
車体傾斜装置1Aによる車体1の傾斜角度は、前輪支持フレーム2と、車体支持フレーム11Hが連結された複数のL型リンクボール52Mのホルダ部の軸線から、ピットマンアーム32とスライド軸45を連結したL型リンクボール52Sに内蔵されたボールの中心部までの距離の大小、又は、回動金具35と、保持体25を連結したL型リンクボール52Sのホルダ部の軸線から、スライド軸45を連結したL型リンクボール52Sに内蔵されたボールの中心部までの距離の大小により、変化させることができるので、乗車者に合わせ、可能な範囲で部品寸法を変更し、傾斜角度を任意に設定することが可能である。
【0039】
車体傾斜装置を有した前二輪自転車の第二実施例について、
図1から
図4を参照して詳細に説明する。
図4の要部拡大正面図は、連結棒36Mと、その両サイドに連結されているL型リンクボール52S以外は左右対称である。
【0040】
本実施例は、部品の簡素化で軽量化を図り、大量生産された市販の安価な汎用部品を使用した量産化と品質の安定化を図ることを目的として構成されている。
【0041】
図1と
図4に示す、回動可能なサイド軸受けは、前輪支持フレーム2の両サイドに固着された、接続体24L,24Rと、サイド支持体22L,22Rに、ナックルアーム33L,33Rに固着された軸受け金具34R(サイド軸受け体)が、アキシャル方向に荷重を受けるI型リンクボール51M(自在継手)と、ラジアル方向に荷重を受けるL型リンクボール52M(自在継手)が上下の縦軸方向に組み合わされて接続され、回動可能なサイド軸受けとして前輪16L,16Rを直接支持する構成がなされている。
【0042】
ナックルアーム33L,33Rは、
図1と
図2と
図4に示す、金属板が曲折形成され、軸受け金具34L,34Rの下部面を支持する補強部と、前方に複数の接続孔と中央部に接続孔と取り付け部を有し、上部に設けられた固着部に、軸受け金具34L,34Rが固着され、前方の接続孔には、連結棒36Lと36Mに接続されたリンクボール52Sが接続され、中央部の取付け部に前輪取付け具37L,37Rが固着されている。
【0043】
軸受け金具34L,34Rは金属板が略コの字状に形成され、両面に接続孔と、横面の一方が曲折形成されて補強部が設けられ、上面の接続孔がI型リンクボール51Mのシャンク部の接続部で、下面の接続孔がL型リンクボール52Mのシャンク部の接続部となり、双方のシャンク部の取付けボルトの軸線が同一線上で接続可能となる形成がなされ、三輪自転車に乗車する人と積載荷物の重量に耐える強度を有した部材として形成されている。
【0044】
I型リンクボール51Mと、L型リンクボール52Mの組み合わせは、リンクボールの特性を考慮し、アキシャル荷重用のI型リンクボール51Mで上下の縦方向の荷重を受け持ち、ラジアル荷重用のL型リンクボール52Mで前後左右の横方向の荷重を受け持つ配置で、通常の自転車に用いられるヘッドチューブと、コラムと、ヘッド小物(専用ベアリング)等の組み立てられたサイドポストと同様の機能が確保可能となる。
【0045】
前輪支持フレーム2への接続は、
図4に示す、軸受け金具34L,34Rの上部にI型リンクボール51Mと、下部にL型リンクボール52Mが配置され、シャンク部のボルトの軸線が同一線上となる状態で、ナット62と、ばね座金63で双方が接続された後、I型リンクボール51Mのホルダ部が、前輪支持フレーム2の接続体24L,24Rにボルト61と、ばね座金63で接続され、L型リンクボール52Mのホルダ部がサイド支持体22L,22Rにボルト61とばね座金63で接続される。
【0046】
前輪取付け具37L,37Rが固着されたナックルアーム33L,33Rに、ブレーキ71L,71Rを介して前輪16L,16Rが取り付けられ、前輪支持フレーム2に、サイド軸受け金具34L,34Rが支持されて回動可能な前二輪部分が構成される。
【0047】
I型リンクボール51Mと、L型リンクボール52Mのホルダ部と、シャンク部がそれぞれ一体化された部材に接続されることにより、自在継手としての機能は制約されるが、各ボール間の軸線が固定され、従来のサイドポストと同様、縦方向の軸受けとして前輪16L,16Rの支持と、回動可能な機能が発揮される。I型リンクボール51MとL型リンクボール52Mの上下の位置が変更されても軸受けの機能は同様となるが、取付けスペースの関係を考慮した場合は今回の方法が望ましい。
【0048】
I型リンクボール51MとL型リンクボール52Mの特徴は、双方とも工作機械では一般的に使用され、大量生産により安価で品質も安定し、比較的軽量であり、ボルト、ナットで簡単に接続可能なため、作業性も良好となり、前二輪自転車を安価に製造可能にする部品の一つである。
【0049】
前記第一実施例及び、第二実施例で述べた、I型リンクボール51Mと、L型リンクボール52Mは、車体1と、前輪16L,16Rを直接支持する部位に使用されるため、連結棒36S、36M、36L、回動金具35等の連結に使用されるL型リンクボール52Sに対し、サイズアップ品が使用され、強度アップが図られている。
本願実施例では、52SのS表示に対し、51Mと52MのM表示はサイズアップ品となる。
【0050】
車体傾斜装置1Aの主な構成部品は、量産化されて品質が安定した市販部品のI型リンクボール51Mと、L型リンクボール52S,52M以外にも、リニアブシュ44、連結棒36S、36M、36L等の部品についても市販品を使用することにより、品質の確保と安価な製造方法を可能にしたが、今後優れた品質で安価な製品が開発されると考えられるので、本実施例と同様の機能が確保できれば現行部品にこだわることなく他の部品及び、自転車用として専用に製作された部品等の使用も可能である。
【0051】
以上、本発明の実施の形態を詳述したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の改変は可能である。
例えば、本実施例では回動金具35、ピットマンアーム32、前輪支持フレーム2は、金属板が形成された状態で説明したが、強度の確保が可能であれば形状を含め特に限定されることはなく、プラスチック等の使用も可能である。
【0052】
上記は前二輪の三輪自転車1として説明したが、三輪自転車1にとらわれることなく、車体の傾斜が可能であれば、後輪17が複数輪の自転車、又は、電動アシスト自転車等においても車体傾斜装置1Aを構成することは可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 ・・・・・・・・・・・・ 三輪自転車(車体)
1A ・・・・・・・・・・・ 車体傾斜装置
11H,11M, 11K ・・ 車体支持フレーム
12 ・・・・・・・・・・・ ハンドル
13 ・・・・・・・・・・・ ハンドルポスト
14 ・・・・・・・・・・・ 操向軸
15 ・・・・・・・・・・・ 操向軸受
16L,16R ・・・・・・ 前輪
17 ・・・・・・・・・・・ 後輪
18 ・・・・・・・・・・・ サドル
19L,19R ・・・・・・ 握り部
2 ・・・・・・・・・・・ 前輪支持フレーム
21 ・・・・・・・・・・・ 上部支持体
22L, 22R ・・・・・・ サイド支持体
23 ・・・・・・・・・・・ 下部支持体
24L, 24R ・・・・・・ 接続体
25 ・・・・・・・・・・・ 保持体
26 ・・・・・・・・・・・ ストッパー
27 ・・・・・・・・・・・ 連結体
3 ・・・・・・・・・・・・ 転向機構
31 ・・・・・・・・・・・ 連結板(連結部材)
32 ・・・・・・・・・・ ピットマンアーム
33L,33R ・・・・・・ ナックルアーム
34L,34R ・・・・・・ 軸受け金具(サイド軸受け体)
35 ・・・・・・・・・・・ 回動金具(回動体)
35a ・・・・・・・・・・ 取付け部
36S,36M,36L ・・ 連結棒
37L,37R・・・・・・・ 前輪取付け具
4 ・・・・・・・・・・・・ 車体傾斜機構
41 ・・・・・・・・・・・ 揺動アーム
41a ・・・・・・・・・・ 固着部
42 ・・・・・・・・・・・ 補強板
43 ・・・・・・・・・・・ 接続金具
44 ・・・・・・・・・・・ リニアブシュ(可動可能な連結体)
45 ・・・・・・・・・・・ スライド軸(可動可能な連結体)
46 ・・・・・・・・・・・ 接続管
51M ・・・・・・・・・・ I形リンクボール(自在継手)
52S,52M ・・・・・・ L形リンクボール(自在継手)
53S,53M ・・・・・・ 回り止め
61 ・・・・・・・・・・・ ボルト
62 ・・・・・・・・・・・ ナット
63 ・・・・・・・・・・・ ばね座金
64 ・・・・・・・・・・・ 平座金
71L,71R ・・・・・・ ブレーキ
【手続補正書】
【提出日】2021-11-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二つの前輪で操舵する前二輪自転車において、前記二つの前輪を支持する前輪支持フレームに、後輪を支持する車体のハンドルポストの前方に具備された車体支持フレームがスイング可能に連結され、前記前輪支持フレームの中央に配置された回動体と、前記ハンドルポストに内蔵された操向軸に具備された連結部材が連結され、前記ハンドルポストに固着された揺動アームと、前記回動体が、可動可能な連結体と自在継手で連結されて、前記前輪支持フレームをベースとした車体傾斜装置が構成されたことを特徴とする車体傾斜装置を有した前二輪自転車。
【請求項2】
二つの前輪で操舵する前二輪自転車において、前記二つの前輪が接続されるナックルアームに固着されたサイド軸受け体に、荷重を受ける方向が異なる自在継手が上下に配置されて、前記自在継手のシャンク部の取付けボルトの軸線が同一線上で接続され、前記二つの前輪を支持する前輪支持フレームの接続体と、サイド支持体に、前記上下に配置された自在継手のホルダ部が接続されて、前記サイド軸受け体が回動可能なサイド軸受けが構成されたことを特徴とする車体傾斜装置を有した前二輪自転車
【請求項3】
前記前輪支持フレームの連結体に、複数の自在継手のシャンク部の取付けボルトの軸線が同一線上で接続され、前記ハンドルポストに具備された前記車体支持フレームに、前記複数の自在継手のホルダ部の軸線が平行状態で接続され、前記車体支持フレームがスイング可能な軸受として構成されたことを特徴とする請求項1に記載の車体傾斜装置を有した前二輪自転車。
【請求項4】
前記前輪支持フレームと、前記揺動アームに接続される前記自在継手の接続部に、金属板が略コの字状に形成され、前記自在継手のホルダ部の取付け部が緩挿可能な溝と、所定の長さと、複数の取付け孔を有した回り止め部材が設けられたことを特徴とする請求項1に記載の車体傾斜装置を有した前二輪自転車。